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タイトル:公開特許公報(A)_5−ニトロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン部位を有する新規超原子価ヨウ素化合物
出願番号:2013028323
年次:2014
IPC分類:C07D 347/00


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東郷 秀雄 飯沼 雅崇 森山 克彦 高月 健一 JP 2014148494 公開特許公報(A) 20140821 2013028323 20130130 5−ニトロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン部位を有する新規超原子価ヨウ素化合物 東京化成工業株式会社 591105993 東郷 秀雄 飯沼 雅崇 森山 克彦 高月 健一 C07D 347/00 20060101AFI20140725BHJP JPC07D347/00 1 書面 7 本発明は5−ニトロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン部位を有する新規超原子価ヨウ素化合物に関するものであって、有機合成の属する分野、および他の分野で要求される反応試剤に供するものである。 第一級アルコールをアルデヒドに、第二級アルコールをケトンに酸化する反応は有機合成上最も重要な反応の一つであり、古くはJones試薬、Sarett試薬、Collins試薬など酸化クロムを利用する酸化剤が用いられてきた。このアルコールからアルデヒドあるいはケトンへの酸化反応は、より効率的な酸化法の開発を志向して活発な研究が行われ、数多くの優れた方法が次々と開発されている。例えば、E.J.Coreyらはジクロロメタン中、ピリジニウムクロロクロマート(以下、PCC)を用いてアルコールを酸化し、高収率でアルデヒドあるいはケトンを得ている。同じくE.J.Coreyらはジクロロメタン中、ピリジニウムジクロマート(以下、PDC)を用いてデカノールを酸化し、収率98%でデカナールを得ている(非特許文献1、2)。しかしながら、これらの酸化剤は、いずれも毒性の強い重金属酸化物を酸化剤として利用している。しかも、反応終了後、重金属副生物を目的物から完全に除く操作が繁雑になると言う問題点も有している。近年、3価の超原子価ヨウ素化合物であるビス(アセトキシ)ヨードベンゼンと触媒量の2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン1−オキシル(以下、TEMPO)を用いた系で、アリルアルコールや糖類の水酸基をアルデヒドあるいはケトンに収率よく酸化できることが報告されている(特許文献1、非特許文献3)。しかも3価の超原子価ヨウ素化合物は毒性が低い。そのため、有用な酸化剤として有機合成化学において広く用いられるようになった。3価の超原子価ヨウ素化合物の例としては、以下の構造を持つビス(アセトキシ)ヨードベンゼン、4−ニトロ−[ビス(アセトキシ)]ヨードベンゼン、およびビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼンを挙げることができる。 特開2002−20322号公報 E.J.Corey,J.W.Suggs,Tetrahedron Lett.1975,2647.E.J.Corey,G.Schmidt,Tetrahedron Lett.1979,399.A.D.Mico,R.Margarita,L.Parlanti,A.Vescovi,G.Piancatelli,J.Org.Chem.1997,62,6974. 従来の3価の超原子価ヨウ素化合物は、毒性の低い優れた酸化剤である。しかしながら、これらの3価の超原子価ヨウ素化合物の反応性は一般に低いため、第二級アルコールの酸化には適用できないか、できたとしても収率が低くなることがある。また、これらの3価の超原子価ヨウ素化合物を用いる酸化反応では副生する1価のヨードベンゼンを目的物から除去するために、クロマトグラフィーなどの煩雑な手段を伴う場合もある。反応性が良く、かつ後処理の容易な酸化剤が求められている。 そこで、発明者は鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は構造式(1)で示される5−ニトロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン部位を有する新規超原子価ヨウ素化合物(以下、Nobel−DIB)に関するものである。 本発明の実施形態について説明する。本発明化合物をアルコールの酸化反応に用いると、従来の3価の超原子価ヨウ素化合物では酸化できなかった化合物でも酸化することができる。また、副生する1価の2−ヨード−5−ニトロ安息香酸は洗浄と抽出操作により容易に回収することができ、後処理が容易である。なお、Nobel−DIBは、文献未掲載の新規化合物である。以下に、Nobel−DIBの代表例として構造式(2)で示される1−アセトキシ−5−ニトロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オンの合成法を明らかにするが、これは例示であり、これに限定されるものではない。 Nobel−DIB(2)は下記反応式に従って2段階で合成される。 第1工程は2−ヨード安息香酸(A)と硫酸、硝酸を反応させることで2−ヨード−5−ニトロ安息香酸(B)を得る工程である。反応温度は、反応を進行させることができる限りにおいて限定されるものではないが、例えば室温から140℃の範囲が好ましい。反応時間は反応温度により異なるが、30分から12時間の間で適宜選択される。 第2工程は2−ヨード−5−ニトロ安息香酸(B)に酢酸を3−クロロ過安息香酸(MCPBA)存在下で反応させることで、Nobel−DIB(2)を得る工程である。反応温度は、反応を進行させることができる限りにおいて限定されるものではないが、例えば室温から70℃の範囲が好ましい。反応時間は反応温度により異なるが、3時間から72時間の間で適宜選択される。 以下に、本発明の代表的例としてNobel−DIB(2)を取り上げ、アルコール類からアルデヒドあるいはケトンへの酸化反応への応用を参考例として示し、従来の3価の超原子価ヨウ素化合物の酸化反応への応用を比較例として示すことで、本発明の有用性を明らかにする。 反応は、下記反応式に従って進行する。すなわちNobel−DIBが酸化剤として働き、アルコール類をアルデヒドあるいはケトンに収率よく変換する。反応温度は、反応を進行させることができる限りにおいて限定されるものではないが、例えば−20℃から70℃の範囲が好ましい。反応時間は、使用する溶媒の種類、反応温度により異なるが、30分から72時間の間で適宜選択される。 参考例1 4−メチルベンジルアルコール122mg(1mmol)のDMF(4mL)溶液にNobel−DIB(2)351mg(1mmol)を加えて65℃で12時間撹拌した。次いで、Nobel−DIB(2)351mg(1mmol)を加えてさらに12時間撹拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mLとヘキサン/エーテル=2/1の混合溶媒10mLを加えて分液した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層を濃縮することで4−メチルベンズアルデヒド117mgを得た(収率97%、純度98%)。 比較例1−1 Nobel−DIB(2)の代わりにビス(アセトキシ)ヨードベンゼン322mg(1mmol)を用いて参考例1と同様の反応操作を行い、シルカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで4−メチルベンズアルデヒド19mgを得た(収率16%)。 比較例1−2 Nobel−DIB(2)の代わりに4−ニトロ−ビス(アセトキシ)ヨードベンゼン367mg(1mmol)を用いて参考例1と同様の反応操作を行い、シルカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで4−メチルベンズアルデヒド42mgを得た(収率35%)。 参考例2 4−クロロベンジルアルコール143mg(1mmol)のDMF(4mL)溶液にNobel−DIB(2)351mg(1mmol)を加えて65℃で12時間撹拌した。次いで、Nobel−DIB(2)351mg(1mmol)を加えてさらに12時間撹拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mLとヘキサン/エーテル=2/1の混合溶媒10mLを加えて分液した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層を濃縮することで4−クロロベンズアルデヒド122mgを得た(収率87%、純度86%)。 比較例2−1 Nobel−DIB(2)の代わりにビス(アセトキシ)ヨードベンゼン322mg(1mmol)を用いて参考例2と同様の反応操作を行い、シルカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで4−クロロベンズアルデヒド32mgを得た(収率23%)。 比較例2−2 Nobel−DIB(2)の代わりに4−ニトロ−ビス(アセトキシ)ヨードベンゼン367mg(1mmol)を用いて参考例2と同様の反応操作を行い、シルカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで4−クロロベンズアルデヒド49mgを得た(収率35%)。 参考例3 1−フェニル−1−プロパノール136mg(1mmol)のDMF(4mL)溶液にNobel−DIB(2)351mg(1mmol)を加えて65℃で12時間撹拌した。次いで、Nobel−DIB(2)351mg(1mmol)を加えてさらに12時間撹拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mLとヘキサン/エーテル=2/1の混合溶媒10mLを加えて分液した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層を濃縮することでプロピオフェノン117mgを得た(収率87%、純度86%)。 比較例3−1 Nobel−DIB(2)の代わりにビス(アセトキシ)ヨードベンゼン322mg(1mmol)を用いて参考例3と同様の反応操作を行い、シルカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでプロピオフェノン27mgを得た(収率20%)。 比較例3−2 Nobel−DIB(2)の代わりに4−ニトロ−ビス(アセトキシ)ヨードベンゼン367mg(1mmol)を用いて参考例3と同様の反応操作を行い、シルカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでプロピオフェノン42mgを得た(収率31%)。 参考例4 シクロドデカノール184mg(1mmol)のDMF(4mL)溶液にNobel−DIB(2)351mg(1mmol)を加えて65℃で12時間撹拌した。次いで、Nobel−DIB(2)351mg(1mmol)を加えてさらに12時間撹拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mLとヘキサン/エーテル=2/1の混合溶媒10mLを加えて分液した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層を濃縮することでシクロドデカノン146mgを得た(収率90%、純度95%) 比較例4−1 Nobel−DIB(2)の代わりにビス(アセトキシ)ヨードベンゼン322mg(1mmol)を用いて参考例4と同様の反応操作を行い、シルカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したがシクロドデカノンは痕跡量しか得られなかった。 比較例4−2 Nobel−DIB(2)の代わりに4−ニトロ−ビス(アセトキシ)ヨードベンゼン367mg(1mmol)を用いて参考例4と同様の反応操作を行い、シルカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでシクロドデカノン9mgを得た(収率5%)。 以上のように、本発明に係るNobel−DIBをアルコール酸化反応に用いると、従来の3価の超原子価ヨウ素化合物では酸化できなかった化合物でも酸化することができる。また、副生する1価の2−ヨード−5−ニトロ安息香酸は洗浄と抽出操作により容易に回収することができ、後処理が容易である。 次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、これは例示の目的であり、本発明を制限するものではない。本発明の範囲内で変形が可能なことは当業者には明らかであろう。 実施例1 1−アセトキシ−5−ニトロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン(Nobel−DIB(2)の合成)フラスコに2−ヨード安息香酸1.24g(5mmol)を加えて0℃に冷却した。硝酸4mLと硫酸6mLの混合溶液をゆっくり滴下後、室温で30分間、さらに130℃で3時間撹拌した。室温にした反応液に氷水30mLを加え、析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥することで前駆体(B)に相当する2−ヨード−5−ニトロ安息香酸を得た(1.244g、85%)。 フラスコに2−ヨード−5−ニトロ安息香酸1.46g(5mmol)、次いで酢酸30mLを加えて均一になるまで撹拌した。3−クロロ過安息香酸(純度65%)1.59g(6mmol)を加えて65℃で48時間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、エーテルを加える。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥することで1−アセトキシ−5−ニトロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン(Nobel−DIB(2))が得られた(1.666g、95%)。以下に得られた(Nobel−DIB(2))の物性を示す。融点:175−179℃IR(neat):1697(C=O),1665(C=O),1525(−NO2),1346(−NO2),cm−1;1H−NMR(500MHz,CDCl3):δ=2.30(s,3H),8.28(d,J=8.9Hz,1H),8.71(dd,J=2.6Hz,J=2.5Hz,1H),9.04(d,J=2.6Hz,1H). 以上の様に本発明に関わる5−ニトロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン部位を有する新規超原子価ヨウ素化合物(Nobel−DIB)は、酸化反応に用いることができる。3価の超原子価状態を持つ超原子価ヨウ素化合物は、温和な酸化剤として有機合成化学において広く用いられているが、一般にその反応性は低いため、第二級アルコールの酸化に適用できないか、もしくは酸化収率が低くなることがある。また、これらの3価の超原子価ヨウ素化合物を用いる酸化反応では副生する1価のヨードベンゼンを目的物から除去することが必要があり、その操作はクロマトグラフィーなどの煩雑な手段を伴う。これらのことが問題点として挙げられており、その解決が強く望まれている。本発明に関わるNobel−DIBを酸化反応に用いた場合、従来の3価の超原子価ヨウ素化合物では酸化できなかった化合物でも酸化することができる。また、副生する1価の2−ヨード−5−ニトロ安息香酸は洗浄と抽出操作により容易に回収することができ、後処理が容易である。参考例と比較例からも明らかなように、本発明に係るNobel−DIBを用いる酸化反応は、従来の3価の超原子価ヨウ素化合物を用いる方法に比べてより反応性が高く扱い易い方法である。 下記構造式(1) (式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立した水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−のプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、またはふっ素原子)で示される新規超原子価ヨウ素化合物。 【課題】本発明の課題は、3価の超原子価ヨウ素化合物を用いる酸化反応において、反応性に優れ、かつ副生する1価のヨウ素化合物を抽出操作により容易に除去、回収することができる新規3価超原子価ヨウ素化合物の開発にある。【解決手段】上記課題解決のため、5−ニトロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン部位を有する新規3価超原子価ヨウ素化合物を開発した。このことにより従来の3価の超原子価ヨウ素化合物では酸化できなかった化合物も酸化できるようになり、また酸化反応終了後に副生する1価のヨウ素化合物は洗浄と抽出操作により除去、回収されることになり、課題を解決した。【選択図】なし


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