タイトル: | 公開特許公報(A)_歯科用硬化性組成物 |
出願番号: | 2013020076 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 6/083,A61K 6/00 |
沖汐 和彦 JP 2014152107 公開特許公報(A) 20140825 2013020076 20130205 歯科用硬化性組成物 株式会社トクヤマデンタル 391003576 塩田 伸 100125298 沖汐 和彦 A61K 6/083 20060101AFI20140730BHJP A61K 6/00 20060101ALI20140730BHJP JPA61K6/083 530A61K6/00 A 11 OL 24 4C089 4C089AA02 4C089AA06 4C089AA10 4C089AA12 4C089BA04 4C089BA05 4C089BA11 4C089BA13 4C089BA14 4C089BA18 4C089BC02 4C089BC03 4C089BC06 4C089BC08 4C089BC10 4C089BC13 4C089BC20 4C089BD02 4C089BD10 4C089CA03 本発明は、化学重合型の歯科用硬化性組成物又はデュアルキュア型の歯科用硬化性組成物として利用可能な歯科用硬化性組成物に関する。 歯科分野において、重合性単量体と重合開始剤とを含む重合性組成物が歯科用レジンセメント、歯科用接着材、歯科用コート材、小窩裂溝填塞材、コンポジットレジン、歯科用常温重合レジン、歯科用前処理材、義歯床用材料等として広く利用されている。前記重合性組成物に使用される前記重合開始剤は、光重合開始剤と化学重合開始剤に大別される。光重合による前記重合性組成物は、歯科用光照射器を用いて光照射を行うことで光重合が開始される。他方、化学重合による前記重合性組成物は、前記重合性組成物の成分を少なくとも二つの包装に分割させて保管され、使用時に各包装を混合・練和することで、化学重合が開始される。 一般に、前記化学重合開始剤は、前記光重合開始剤と比較して、その重合活性が低い傾向にある。特に歯科用のセメントや接着剤として使用される場合には、歯質界面に水分等が存在することから、強い接着性を付与するための高い重合活性が求められる。 高い重合活性を有する前記化学重合開始剤としては、有機過酸化物と、還元性物質であるアミン化合物とを組合せたレドックス重合開始剤が知られ、歯科分野においても汎用されている(例えば、特許文献1〜2参照)。 前記有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類が高い前記重合活性を付与し、常温でも硬化が円滑に進行するため、大変有用である。しかし、その重合活性の高さから、室温で保管中において長期間が経過すると分解してラジカルが生成し、失活する問題や、重合性単量体と混合されている場合には、硬化が進行する問題がある。 また、前記有機過酸化物と組合せる前記アミン化合物としては、芳香族三級アミン化合物が優れた重合促進作用を有し、好適に使用されている。しかし、前記芳香族三級アミン化合物は、着色物質に変化し易く、硬化体において審美性が損なわれる問題がある。 ところで、口腔内という過酷な環境下で歯牙と修復物とを高強度に接着するため、前記歯科用のセメントや接着剤においては、その接着成分としてリン酸基やカルボン酸等の酸性基を含有する重合性単量体を配合し、歯質の脱灰能を付与することが一般的となっている。 しかしながら、前記重合性単量体として、酸性基含有重合性単量体を配合する場合、前記化学重合開始剤として前記レドックス重合開始剤を適用すると、還元性物質である前記アミン化合物が前記酸性基含有重合性単量体の酸性基により中和され、その重合活性が大幅に低下する問題、及び歯質の脱灰能が低下する問題がある。 ここで、酸性基含有重合性単量体を用いる場合の前記化学重合開始剤として、ハイドロパーオキサイドとチオ尿素化合物との組み合わせが提案されている(特許文献3及び4参照)。前記ハイドロパーオキサイドは、過酸化ベンゾイル等と比較して熱的安定性が高いため、室温下でも長期間にわたって保存が可能であり、また、前記チオ尿素化合物は、前記アミン化合物のように着色し易いということもないため、使用制約が少ないことから、前記化学重合開始剤に好適に用いることができる。 しかしながら、前記ハイドロパーオキサイドと前記チオ尿素化合物の組み合わせでは、前記過酸化ベンゾイルと前記アミン化合物の組み合わせよりも、酸性条件下における活性を向上させるものの、依然として活性が低く、接着強さが不十分となる問題がある。また、硬化性組成物の硬化時間が比較的短く、延いては、歯科治療者が前記化学重合開始剤における各包装を混合して施術するまでの操作時間が短くなることから、治療者側に高い技術が求められ、治療に対する負担が大きくなるという問題がある。 ところで、前記歯科用硬化性組成物において、前記化学重合開始剤と前記光重合開始剤の機能を兼用し、前記化学重合での硬化に加え、前記光重合で硬化するデュアルキュア型の歯科用硬化性組成物が用いられることがある。 このデュアルキュア型の歯科用硬化性組成物は、歯科の支台築造用レジンや接着性レジンセメント等の光照射を十分に行うことができない臨床用途として有用であり、操作性、実用性の観点からその性質が要求されることも多々ある。 化学重合型の前記歯科用硬化性組成物を前記デュアルキュア型とする場合には、通常、歯科用途で最も汎用的に前記光重合開始剤として用いられているα−ジケトン化合物であるカンファーキノンと、着色物質に変化し易い前記芳香族三級アミン化合物の組み合わせを使用することが一般的である。 前記特許文献3においては、前記酸性基含有重合性単量体を含む歯科用硬化性組成物を前記化学重合型として使用する場合には、前記芳香族三級アミン化合物を用いないとされているが、前記デュアルキュア型として使用する場合には、前記カンファーキノンと前記芳香族三級アミン化合物を用いるとされている。 また、前記特許文献4においては、前記光重合開始剤を添加することができるとされているが、どのように前記デュアルキュア型の歯科用硬化性組成物を構成するのかの提示がされていない。 したがって、前記化学重合型の歯科用硬化性組成物を前記デュアルキュア型の歯科用硬化性組成物とする場合には、依然として、審美性が損なわれる問題があり、歯科用途としては、不十分なものである。 一方、メルカプトベンゾオキサゾール化合物、メルカプトベンゾチアゾール化合物をα−ジケトン化合物と組み合わせた光重合開始剤が提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、この光重合開始剤では、審美性が改善されるものの、重合活性が不十分であり、前記硬化性組成物から得られる硬化体の硬度が低いという問題がある。また、前記化学重合型の歯科用硬化性組成物として使用する場合の構成については、何ら開示されていない。特開2009−114221号公報特公平 6− 2651号公報特開2005− 8622号公報特開2009−144054号公報特開昭53− 702号公報 本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、化学重合型の歯科用硬化性組成物として、歯科治療に必要な操作時間を確保でき、高重合活性で接着強度、曲げ強度が高く、色調安定性に優れるとともに、デュアルキュア型の歯科用硬化性組成物としても利用可能な歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。 前記課題を前記目的を達成するため、本発明者が鋭意検討を行ったところ、前記酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体に対する重合開始剤として、前記ハイドロパーオキサイドを用いる場合、還元剤としてメルカプトベンゾオキサゾール化合物、メルカプトベンゾチアゾール化合物を用いると、前記課題を解決することができることの知見を得た。 本発明は、前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、 <1> (A)酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体と、(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と、(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかと、を含むことを特徴とする歯科用硬化性組成物。 <2> (C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物が下記一般式(1)で表される化合物である前記<1>に記載の歯科用硬化性組成物。 ただし、前記一般式(1)中、R1〜R4は、相互に独立して、水素、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、及びハロゲン原子のいずれかを示し、Xは、酸素原子及び硫黄原子のいずれかを示す。 <3> 一般式(1)で表される化合物が、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール及びこれらの混合物のいずれかである前記<2>に記載の歯科用硬化性組成物。 <4> 更に、(E)アリールボレート化合物を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 <5> 更に、フルオロアルミノシリケートガラスを含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 <6> 更に、(F)銅化合物を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 <7> (F)銅化合物が水溶性銅化合物である前記<6>に記載の歯科用硬化性組成物。 <8> 更に、(D)光重合開始剤を含み、デュアルキュア型として用いられる前記<1>から<7>のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 <9> (D)光重合開始剤がカンファーキノンである前記<8>に記載の歯科用硬化性組成物。 <10> 少なくとも2つの包装に分割されて保管され、(A)重合性単量体のうち、酸性基含有重合性単量体と(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかが一の包装に内包され、(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物が他の一の包装に内包される前記<1>から<9>のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 <11> (C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかが内包される包装と別の包装に水溶性銅化合物が内包される前記<7>から<10>に記載の歯科用硬化性組成物。 本発明によれば、従来技術における前記諸問題を解決することができ、化学重合型の歯科用硬化性組成物として、歯科治療に必要な操作時間を確保でき、高重合活性で接着強度、曲げ強度が高く、色調安定性に優れるとともに、デュアルキュア型の歯科用硬化性組成物としても利用可能な歯科用硬化性組成物を提供するこができる。(歯科用硬化性組成物) 本発明の歯科用硬化性組成物は、(A)酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体と、(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と、(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかと、を含み、必要に応じて、その他の成分を含む。<(A)重合性単量体> 前記(A)重合性単量体は、一分子中に、少なくとも一つのラジカル重合性不飽和基を有す化合物を意味する。 前記ラジカル重合性不飽和基としては、特に制限はなく、その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基等の(メタ)アクリロイル基の誘導体基、ビニル基、アリル基、スチリル基等を挙げることができ、歯科用途として生体への為害性を考慮すると、前記(メタ)アクリロイル基が好ましい。 前記(A)重合性単量体は、少なくとも一部として、酸性基含有重合性単量体を含む。ここで、酸性基とは、該基を有する重合性単量体の水溶液又は水懸濁液が酸性を呈す基であり、単なる酸性基だけでなく、当該酸性基の二つが脱水縮合した酸無水物構造や、酸性基がハロゲン化された酸ハロゲン化物基であってもよい。具体的には、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)2}、カルボキシル基{−C(=O)OH}、リン酸二水素モノエステル基{−O−P(=O)(OH)2}、リン酸水素ジエステル基{(−O−)2P(=O)OH}、スルホ基(−SO3H)、及び酸無水物骨格{−C(=O)−O−C(=O)−}等が挙げられ、水に対する安定性が高く、歯面のスメアー層の溶解や歯牙脱灰を緩やかに実施できることから、前記カルボキシル基、前記リン酸二水素モノエステル基、前記リン酸水素ジエステル基が好ましく、中でも前記リン酸二水素モノエステル基、前記リン酸水素ジエステル基がより好ましい。 前記リン酸二水素モノエステル基又は前記リン酸水素ジエステル基を有する前記重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。 前記カルボキシル基を有する前記重合性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。 前記スルホ基を有する前記重合性単量体としては、例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸等が挙げられる。 こうした酸性基含有重合性単量体としては、特に制限はなく、前記(A)重合性単量体の全量として用いてもよいが、接着性組成物の歯質に対する浸透性を調節したり、硬化体の強度を向上させたりする観点から、酸性基非含有重合性単量体と併用することが好ましい。 併用する場合の前記酸性基含有重合性単量体の含有量としては、特に制限はないが、エナメル質及び象牙質の両方に対する接着強度を良好にする観点から、前記(A)重合性単量体の全量中、5質量%以上が好ましく、5質量%〜60質量%がより好ましく、10質量〜50質量%が特に好ましい。 前記酸性基非含有重合性単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルオキシエチルアセチルアセテート等のモノ(メタ)アクリレート系モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス{4−[3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート系モノマーなどを挙げることができる。<(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物> 前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物は、ハイドロパーオキサイド基を少なくとも1つ以上含む化合物であり、レドックス反応の酸化剤としての作用を有する。 前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合性組成物としたときの保存安定性の点から、10時間半減期温度が100℃以上の化合物が好ましい。なお、ここでの10時間半減期温度とは、前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物をラジカルに対して比較的不活性な溶媒、例えば、ベンゼンに溶解させ、窒素置換されたガラス容器中で熱分解させた場合に、10時間で初期から半分の濃度になる温度のことである。 こうしたハイドロパーオキサイド系有機過酸化物としては、例えば、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−アミルハイドロパーオキサイド、ピナンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらのうち、高い重合活性が得られることから、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイドが好ましい。 なお、前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記(A)重合性単量体100質量部当り、0.1〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜2質量部がより好ましい。前記配合量が0.1質量部未満であると重合が不十分となることがあり、10質量部を超えると重合硬化体の強度が低下することがある。<(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物> 前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物は、レドックス反応の還元剤の作用を有する。本発明の前記歯科用硬化性組成物においては、この(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかを用いることで、歯科治療に必要な操作時間をより長時間確保することができる。 前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メルカプトベンゾオキサゾール、メルカプトベンゾチアゾール及びこれらの誘導体を挙げることができるが、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。なお、前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物しては、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 ただし、前記一般式(1)中、R1〜R4は、相互に独立して、水素、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、及びハロゲン原子のいずれかを示し、Xは、酸素原子及び硫黄原子のいずれかを示す。 なお、前記アルキル基の炭素数としては、1〜4が好ましく、また、前記アルコキシ基の炭素数としては、1〜4が好ましい。 中でも、前記一般式(1)で表される化合物として、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−エトキシベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−エチルベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−ベンゾオキサゾールカルボン酸、5−クロロ−2−メルカプトベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾチアゾールが好ましい。 前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記(A)重合性単量体100質量部当り、0.1質量部〜5質量部が好ましく、0.5質量部〜3質量部がより好ましい。前記配合量が0.1質量部未満であると、十分な硬化性の向上効果が発揮出来ないことがあり、5質量部を超えると、重合硬化体の強度が低下することがある。<その他の成分> 前記その他の成分は、本発明の効果を妨げない限り、任意成分として目的に応じて配合することができる。 前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、(D)光重合開始剤、(E)アリールボレート化合物、(F)銅化合物、(G)充填材、他の化学重合開始剤、他の重合促進剤、水、有機溶媒、増粘剤、重合禁止材等が挙げられる。−(D)光重合開始剤− 前記歯科用硬化性組成物としては、更に、前記(D)光重合開始剤を配合することで、操作性に優れるデュアルキュア型の硬化性組成物とすることができる。 前記(D)光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の光重合開始剤を使用することができる。 代表的な光重合開始剤としては、ジアセチル、アセチルベンゾイル、ベンジル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4'−ジメトキシベンジル、4,4'−オキシベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等のα−ジケトン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、2,4−ジエトキシチオキサントン、2−クロロチオキサントン、メチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンゾフェノン、p,p'−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p'−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、及びアリールボレート化合物/色素/光酸発生剤からなる系が挙げられる。これらの中でも特に好ましいのは、歯科用光照射器に適した吸収波長域を有するα−ジケトン系の光重合開始剤である。 なお、前記光重合開始剤としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 前記α−ジケトンとしては、特に制限はないが、カンファーキノン、ベンジルが好ましく、特に高い活性を発揮するカンファーキノンが最も好ましい。 一般的に、前記歯科用硬化性組成物に前記カンファーキノンを使用する場合には、併用する重合促進剤として芳香族三級アミン化合物が汎用されている。この汎用されている開始剤を前記酸性基含有重合性単量体を含む歯科用硬化性組成物に使用する場合には、前記芳香族三級アミン化合物と前記酸性基含有重合性単量体が塩を形成し活性が低下してしまうため、配合する前記芳香族三級アミン化合物、前記カンファーキノンの配合量が多くなる傾向にある。 また、前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物を含む歯科用硬化性組成物では、前記芳香族三級アミン化合物が酸化されて着色物質に変化し易いことから、色調変化により審美性が低下する傾向にある。 前記歯科用硬化性組成物では、前記芳香族三級アミン化合物を使用しない場合にも高い光重合活性が示される。これは、前記酸性基含有重合性単量体を含む前記歯科用硬化性組成物では、前記カンファーキノンの重合活性が前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物、メルカプトベンゾチアゾール化合物との組み合わせで大きく向上するためであると考えられる。その詳細な原因は不明であるが、前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物のチオール基が、チオカルボニル基と互変異性を有しており、チオール基の場合にカンファーキノンと反応しラジカルが発生しやすいと考えられる。前記酸性基含有重合性単量体により、前記チオール基側に平衡がずれ、ラジカルが発生しやすいため重合活性が向上すると推察される。 ただし、本願発明の効果を損なわない程度であれば、前記芳香族三級アミン化合物を配合してもよく、その配合量としては、前記(A)重合性単量体100質量部当り、0.3質量部以下が好ましく、0.001質量部〜0.2質量部がより好ましい。 前記(D)光重合開始剤の配合量としては、特に制限はないが、前記(A)重合性単量体100質量部当たり、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜2質量部がより好ましい。このような配合量であれば、前記(A)重合性単量体を、より高い重合活性で硬化させることができる。−(E)アリールボレート化合物− 前記(E)アリールボレート化合物とは、1分子中に少なくとも1つのホウ素−アリール結合を有する化合物を意味する。前記(E)アリールボレート化合物は、硬化促進剤として、前記歯科用硬化性組成物の硬化を促進させ、接着強度を向上させる作用を有する。 前記(E)アリールボレート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高保存安定性、取り扱い容易性、入手容易性の観点から、1分子中に4つのホウ素−アリール結合を有するアリールボレートが好ましい。 前記1分子中に4つのホウ素−アリール結合を有するアリールボレートとしては、例えば、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素などのホウ素化合物の塩を挙げることができる。 前記ホウ素化合物と塩を形成する陽イオンとしては、金属イオン、第3級又は第4級アンモニウムイオン、第4級ピリジニウムイオン、第4級キノリニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン等が挙げられる。 前記ホウ素化合物の塩としては、特に制限はないが、テトラフェニルホウ素ナトリウム、テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩、テトラフェニルホウ素ジメチル−p−トルイジン塩、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素ナトリウム、ブチルトリ(p−フルオロフェニル)ホウ素ナトリウム等が好ましい。 前記(E)アリールボレート化合物の配合量としては、前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物100質量部に対して、10質量部〜1,000質量部が好ましく、50質量部〜500質量部がより好ましい。前記配合量が10質量部未満であると十分な重合活性を発揮することができないことがあり、1,000質量部を超えると硬化時間が短くなりすぎることがある。−(F)銅化合物− 前記(F)銅化合物は、前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物、メルカプトベンゾチアゾール化合物とにより開始されるレドックス反応を促進させる作用を有するために配合される。 前記(F)銅化合物としては、特に制限はなく、アセチルアセトン銅(II)、オレイン酸銅(II)、オクチル酸銅(II)、ナフテン酸銅(II)、ベンゾイルアセトン銅(II)等の難溶性の銅化合物のほか、水溶性銅化合物が挙げられるが、接着強さを向上させる観点から、前記水溶性銅化合物が好ましい。前記水溶性銅化合物を含有させたときに、接着強さが向上する理由は必ずしも定かではないが、前記銅化合物として前記水溶性銅化合物を用いると、親水的な歯面界面での重合活性が向上することに起因されるものと推察される。即ち、歯質、特に象牙質では、コラーゲン線維に水分が含まれているため、界面が親水的である。接着強さを高めるためには、その親水的な歯質界面に前記歯科用接着性組成物の前記(A)重合性単量体が浸透した樹脂含浸層を形成させ、重合率を高めて強固な接着層とする必要がある。通常の歯科用組成物に用いられる重合開始剤は、親水性が低いため、そのような界面での活性が低下する傾向にある。これに対して、前記水溶性銅化合物は、活性の低下を起こさないため、高い接着強さを有するものと考えられる。 なお、前記(F)銅化合物としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 ここで「水溶性」とは、20℃の水への溶解度が1g/100mL以上であることを意味し、前記水溶性銅化合物としては、前記溶解度が小さくとも1g/100mL以上であり、10g/100mL以上である銅化合物が好ましい。 前記水溶性銅化合物としては、例えば、硫酸銅、クロロフィリン銅ナトリウム、酢酸銅、塩化銅、臭化銅、グルコン酸銅、硝酸銅、ぎ酸銅、テトラクロロ銅酸カリウム、硫酸テトラアンミン銅及びこれらの混合物が挙げられる。 また、前記水溶性銅化合物としては、操作時間の延長の観点から、20℃での前記(A)重合性単量体への溶解度が大きくとも0.1g/100g未満であることが好ましく、理想的には、0である。なお、前記水溶性銅化合物の前記(A)重合性単量体への溶解度は、配合される前記(A)重合性単量体の種類ごとに異なるものの、前記(A)重合性単量体中で、微細化した前記水溶性銅化合物を2時間撹拌した際に完全に溶解する点を溶解度とすることにより測定することができる。重合性単量体への溶解性が低い水溶性の銅化合物を用いた場合には、親水的な界面でのみ開始剤が溶解するため、施術前における硬化時間が長くなり、延いては、歯科治療者が前記化学重合開始剤における各包装を混合して施術するまでの操作時間が長くなることから、治療者側の負担が小さくなる。 前記(F)銅化合物の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記(A)重合性単量体100質量部当り、0.001〜3質量部が好ましく、0.01質量部〜0.3質量部がより好ましい。前記配合量が0.001質量部未満であると接着性の向上効果が不十分になることがあり、3質量部を超えると操作時間が極端に短くなってしまう場合や吸水性、溶解性が悪化してしまうことがある。−(G)充填材− 前記(G)充填材は、前記歯科用硬化性組成物の硬化体における機械的強度や操作性を向上させるために配合される。 前記(G)充填材としては、特に制限はなく、公知の無機充填材、有機充填材、無機−有機複合フィラーを用いることができる。 前記有機充填材としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合体等の非架橋性ポリマー、又は、メチル(メタ)アクリレート・エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとブタジエン系単量体との共重合体等の(メタ)アクリレート重合体などを挙げることができる。 前記無機充填材としては、例えば、周期律第I、II、III、IV族、遷移金属、若しくはそれらの酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩、又は珪酸塩等を挙げることができる。なお、これらは、混合物や複合塩であってもよい。 好適には、石英、シリカ、アルミナ、ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ヒュームドシリカ、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラスが挙げられる。 また、前記無機充填材としては、前記酸性基含有重合性単量体とのイオン架橋による、硬化体強度と接着強さの向上効果が期待できることから、フルオロアルミノシリケートガラス等のカチオン溶出性フィラーも好適に用いることができる。 これらの無機充填材の中でも、前記シリカ、前記アルミナ、前記ジルコニア、前記シリカ−チタニア、前記シリカ−ジルコニア、前記フルオロアルミノシリケートガラスがより好ましく、中でも、前記フルオロアルミノシリケートガラスが特に好ましい。 前記無機−有機複合フィラーとしては、特に制限はないが、無機フィラーに重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合させ、粒状物に粉砕したものが好ましい。 前記(G)充填材として、前記無機充填材又は無機−有機複合フィラーを用いる場合、重合性単量体との親和性、分散性を良好にして、前記歯科用硬化性組成物の硬化体における機械的強度及び耐水性を向上させるため、シランカップリング剤等で表面処理して用いるのが好ましい。 前記シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランあるいはヘキサメチルジシラザン等を好適に用いることができる。 また、前記シランカップリング剤以外にも、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコ−アルミネート系カップリング剤等により表面処理してもよい。 また、充填材粒子の表面に前記重合性単量体をグラフト重合させて用いてもよい。 なお、これらの充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。きる。 前記(G)充填材の屈折率としては、特に制限はないが、1.4〜2.2であることが好ましい。 また、前記充填材粒子の平均粒子径としては、大きすぎる場合に前記歯科用硬化性組成物の表面に凹凸が生じることがあるため、0.001μm〜100μmが好ましく、0.001μm〜10μmがより好ましい。なお、前記平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で充填材粒子の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の数、及び粒子径を測定し、その測定値の平均から算出することができる。 前記(G)充填材の配合量としては、特に制限はないが、得られる硬化体の粘度(操作性)、機械的物性を考慮して、前記(A)重合性単量体100質量部当り、10質量部〜1,000質量部が好ましく、100質量部〜700質量部がより好ましい。−他の化学重合開始剤及び重合促進剤− 前記歯科用硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の化学重合開始剤及び重合促進剤を併用してもよい。 前記他の化学重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル等のジアシルパーオキサイド類、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジクミル等のジアルキルパーオキサイド類等の有機過酸化物が挙げられる。 また、前記他の重合促進剤としては、バルビツール酸、アルキルボラン、金属錯体等が挙げられる。 前記バルビツール酸としては、例えば、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等を挙げられる。 前記アルキルボランとしては、例えば、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、トリフェニルボラン等が挙げられる。 前記金属錯体としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)、等のバナジウム化合物が挙げられる。ただし、前記金属錯体の多くは濃い色調を有しており、配合量が少ない場合でも色調に影響がある場合がある。従って、色調に影響を与える金属錯体を用いる場合、その配合量は、前記(A)重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以下とし、少量の配合とすることが好ましい。 前記水としては、接着に悪影響を与える不純物がないように、蒸留水、イオン交換水を用いることが好ましい。 また、前記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。 また、前記増粘剤としては、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物、高分散性シリカなどが挙げられる。 前記重合禁止剤としては、例えば、2,6−ジt−ブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。 なお、歯牙の色調に合わせるために、更に、顔料、蛍光顔料、染料、紫外線に対する変色防止のための紫外線吸収剤を配合してもよい。<歯科用硬化性組成物の保管形態> 前記歯科用硬化性組成物において、各成分を同一包装に共存させると化学重合が開始されしまうため、保管の際は、少なくとも2包装に分割し、これら全成分が一の包装内に共存しないように分ける必要がある。 先ず、前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物とが混合されると、重合が促進されるため、別包装とすることが好ましい。 また、前記(A)重合性単量体のうち、前記酸性基含有重合性単量体は、前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物を混合すると、保存安定性が低下する場合があるため、別包装とすることが好ましい。 したがって、前記歯科用硬化性組成物の保管形態としては、前記(A)重合性単量体のうち、前記酸性基含有重合性単量体と前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかとが一の包装に内包され、前記(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物が他の一の包装に内包される形態が好ましい。 また、前記水溶性銅化合物を配合する場合、前記水溶性銅化合物は、前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかと同一包装すると、操作時間の短縮を招くことがあるため、これと別包装にすることが好ましい。操作時間の短縮が生じる理由はおそらく、水溶性銅化合物がメルカプトベンゾオキサゾール化合物又はメルカプトベンゾチアゾール化合物と複合体を形成し、重合性単量体に溶解しやすくなり、親水的な歯面界面以外の部分で溶解し活性が高まるためと考えられる。 したがって、前記水溶性銅化合物としては、前記(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかが内包される包装と別の包装に内包させて保管することが好ましい。<光重合> 前記光重合開始剤を配合し、前記デュアルキュア型の歯科用硬化性組成物として使用する場合には、光硬化に際し、公知の光源を用いればよく、例えば、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、LED、ハロゲンランプ、ヘリウムカドミウムレーザー、アルゴンレーザー等の可視光線の光源を用いることができる。 一般的には、これら光源を用い、被照射面における光強度が20mW/cm2以上、好適には100mW/cm2以上になるように光照射を行えばよい。なお、前記光照射の時間としては、前記光源の波長、強度、硬化体の形状や材質によって異なるため、予備的な実験によって予め決定しておけばよい。<用途> 前記歯科用硬化性組成物は、前記酸性基含有重合性単量体を含むので、歯科用レジンセメント、歯科用前処理材、歯科用接着材、歯科用コート材、小窩裂溝填塞材、充填材、支台築造材料等の歯牙の表面に接着させて層形成させる材料として用いることができる。特に、齲蝕や事故等により損傷を受けた歯牙と、この歯牙を修復するための材料(例えばコンポジットレジン、金属、セラミックス等の歯冠修復材料)とを接着するために、両者の間に介在させる、歯科用レジンセメント、歯科用前処理材、歯科用接着材や、自己接着性のコンポジットレジンとして好適に用いることができる。 以下、本発明を具体的に説明するために、実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明の技術的思想は、これらにより何ら制限されるものではない。なお、前記実施例及び前記比較例の製造に用いた各成分並びにその略称及び略号については、以下の通りである。(各成分並びにその略称及び略号)<(A)重合性単量体>−酸性基含有重合性単量体− PM:2−メタクリルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート及びビス(2−メタクリルオキシエチル)ジハイドロジェンホスフェートの混合物 MAC−10:11−メタクロイルオキシー1,1−ウンデカンジカルボン酸 MDP:10−メタクリルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート−酸性基非含有重合性単量体− BisGMA:2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン 3G:トリエチレングリコールジメタクリレート D2.6E:2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン UDMA:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサン<(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物> パーメンタH:p−メンタンハイドロパーオキサイド パーオクタH:1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド<(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物又はメルカプトベンゾチアゾール化合物> MBO:2−メルカプトベンゾオキサゾール MBT:2−メルカプトベンゾチアゾール MMOBT:2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール<その他の成分>−(D)光重合開始剤− CQ:カンファーキノン−(E)アリールボレート化合物− PhBTEOA:テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩−(F)銅化合物− 硫酸銅:硫酸銅(II)・・・前記硫酸銅(II)は、20℃での水への溶解度が30g/100mLである。 CuAcAc:アセチルアセトン銅・・・前記アセチルアセトン銅は、20℃での水への溶解度が0.02g/100mLである。前記銅化合物のうち、硫酸銅(II)は、実施例に使用している重合性単量体への溶解度が0.1g/100mL未満であり、アセチルアセトン銅は、前記重合性単量体への溶解度が0.1g/100mL以上である。−(G)充填材− F1:球状シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒子径0.2μm、粒子径の範囲0.08μm〜0.60μm F2:定形シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒子径3.5μm、粒子径の範囲0.8μm〜7.0μm F3:ヒュームドシリカ、メチルトリクロロシラン表面処理物、平均粒子径0.01μm、粒子径の範囲0.005μm〜0.04μm F4:フルオロアルミノシリケートガラス、平均粒子径1.0μm、粒子径の範囲0.001μm〜5μm−ハイドロパーオキサイド系以外の有機過酸化物− BPO:ベンゾイルパーオキサイド−芳香族三級アミン化合物− DEPT:N,Nジエタノール−p−トルイジン DMBE:4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル−チオ尿素化合物− ATU:アセチルチオ尿素 ETU:エチレンチオ尿素−重合禁止剤− BHT:2,6−ジt−ブチルヒドロキシトルエン(化学重合型歯科用硬化性組成物の製造)<実施例1> 下記組成に従い、各成分を均一になるまで攪拌混合して、ペースト状組成物(I)を調製した。−組成−・(A)重合性単量体 酸性基含有重合性単量体 MDP 15g 酸性基非含有重合性単量体 D2.6E 15g 3G 20g・(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物 MBO 1.5g・その他の成分 (G)充填材 F1 45g F2 75g 重合禁止剤 BHT 0.05g また、下記組成に従い、各成分を均一になるまで攪拌混合して、ペースト状組成物(II)を調製した。以上により、前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)とで構成される実施例1に係る歯科用重合性組成物を製造した。なお、前記ペースト状組成物(I)を包装したものを包装1とし、前記ペースト状組成物(II)を包装したものを包装2とする。−組成−・(A)重合性単量体 酸性基非含有重合性単量体 BisGMA 12.5g UDMA 12.5g 3G 25g・(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物 パーオクタH 1.0g・その他の成分 (G)充填材 F1 43g F2 75g F3 2g 重合禁止剤 BHT 0.05g<実施例2〜15、比較例1〜7> 前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)の調製を後掲の表1に記載の組成に基づいて実施したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜15及び比較例1〜7に係る各歯科用重合性組成物を製造した。(化学重合型歯科用硬化性組成物に対する物性の測定及び評価)<操作時間> 実施例1〜15及び比較例1〜5,7に係る歯科用硬化性組成物を用いて、重合開始から硬化するまでの操作時間を測定した。前記操作時間の測定は、JIST6611:2009に準じて行い、具体的には、前記包装1と前記包装2から1:1の質量比で前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)を量り取り、これらを20秒間攪拌混合して均一な混合ペーストとした。この混合ペーストを所定時間静置後、ガラス板上に載せ、直ちに2枚目のガラス板で挟み、薄い層状にした。ここでは、前記攪拌混合処理の終了から前記薄層の均一性に変化が出るとき(例えば、薄層に亀裂や空洞が観察されたとき、または、粘度上昇により薄層が形成できないとき)までの時間を前記操作時間とし、前記操作時間の測定は、23℃の恒温条件で行った。 前記操作時間の評価としては、前記操作時間が2分以上ある場合を良好であると判断することができる。<接着強さ> 屠殺後24時間以内に抜去した牛前歯を、流水下、#600のエメリーペーパーで研磨し、唇側面が咬合方向に平行かつ平坦になるように象牙質平面を顕出させた。次に、顕出させた前記象牙質平面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させた後、前記象牙質平面に直径3mmの穴を有する両面テープを貼り付け、模擬窩洞とした。 次いで、実施例1〜15及び比較例1〜5,7に係る各歯科用硬化性組成物を用いて、前記包装1と前記包装2から1:1の質量比で前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)を量り取り、これらを20秒間攪拌混合して均一な混合ペーストとした。この混合ペーストをステンレス製アタッチメントに盛り付け、前記模擬窩洞に圧接し、余剰のペーストを除去したものを接着試験片とした。 次いで、前記接着試験片を37℃・湿度100%の恒温高湿箱中で1時間静置して、実施例1〜15及び比較例1〜5,7に係る各歯科用硬化性組成物を化学重合させた。 この重合済み接着試験片を37℃の水中に24時間浸漬した後、引張り試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG5000D)を用いて前記ステンレス製アタッチメントを引張り、前記重合済み接着試験片の前記象牙質平面との引張り接着強さを測定した。なお、前記引張り試験機の引張りは、クロスヘッドスピードを1mm/minとして実施した。 この引張り接着強さの測定では、前記歯科用硬化性組成物ごとに前記接着試験片を4本ずつ作製して行い、その平均値を該当する前記引張り接着強さの値とした。 前記引張り接着強さの評価としては、前記引張り接着強さの値が5MPa以上の場合に接着強さが良好であると判断することができる。<色調安定性> 実施例1〜15及び比較例1〜5,7に係る各歯科用硬化性組成物を用いて、前記包装1と前記包装2から1:1の質量比で前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)を量り取り、これらを20秒間攪拌混合して均一な混合ペーストとした。 次いで、前記混合ペーストを15mmφの穴の空いた1mm厚のテトラフルオロエチレン製モールドに流し込んだ後、前記混合ペーストの外表面側からポリエチレン製のフィルムで圧接し、37℃の恒温条件下で1時間静置して硬化させた硬化体を試験サンプルとした。 次いで、前記試験サンプルを37℃の蒸留水中に30日間浸漬させ、浸漬前後の色調変化(ΔE)を東京電色社製のTC−1800MK2を用いて測定した。 前記色調変化は、ΔEが小さいほど変化が小さいことを意味し、ΔEが4.0以下であれば目視でその変化を認識することは難しいため、前記色調安定性の評価としては、ΔEが4.0以下の場合に色調安定性が良好であると判断することができる。<硬化体の破壊強度(曲げ強さ)> 実施例1〜15及び比較例1〜5,7に係る各歯科用硬化性組成物を用いて、前記包装1と前記包装2から1:1の質量比で前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)を量り取り、これらを20秒間攪拌混合して均一な混合ペーストとした。 混合後直ちに、前記混合ペーストを2mm×2mm×25mmの角柱状のポリテトラフルオロエチレン製のモールドに流し込んだ後、前記混合ペーストの外表面側からポリエチレン製のフィルムで圧接し、37℃の恒温条件下で1時間静置して硬化させた硬化体を試験サンプルとした。 前記試験サンプルのばりを除去した後、37℃の水中にて練和し、練和開始から24時間経過するまで水中に浸漬させた。24時間経過後、前記試験サンプルを水中から取り出し、試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG5000D)を用いて、3点曲げ破壊強度を測定した。なお、前記破壊強度の測定は、クロスヘッドスピードを1mm/minとして実施した。 前記曲げ強さの評価としては、前記曲げ強さの値が100MPa以上の場合に曲げ強さが良好であると判断することができる。 化学重合型の実施例1〜15及び比較例1〜5,7に係る各歯科用硬化性組成物における前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)の組成、前記操作時間、前記接着強さ、前記色調安定性及び前記曲げ強さを下記表1に示す。 なお、下記表1中の「組成物」の欄では、前記包装1を(I)、前記包装2を(II)と表記している。 この表1に示すように、実施例1〜15に係る各歯科用硬化性組成物は、前記操作時間、前記接着強さ、前記色調安定性及び前記曲げ強さについて、全て良好な結果を示している。 これに対して、比較例1〜5、7に係る各歯科用硬化性組成物は、全て前記接着強さが不十分であり、また、実施例に係る各歯科用硬化性組成物と比較して、劣る結果となっている。 即ち、還元剤として、前記チオ尿素化合物を用いた比較例1〜4に係る各歯科用硬化性組成物は、そのチオ尿素化合物の種類、酸化剤の添加量に関わらず、前記メルカプトベンゾオキサゾール化合物を用いた実施例14に係る歯科用硬化性組成物に比べ、前記操作時間、前記接着強さ、前記色調安定性、前記曲げ強さの各項目において、効果が劣る結果となっている。 同様に、還元剤として、前記チオ尿素化合物を用いた比較例4に係る歯科用硬化性組成物は、前記メルカプトベンゾオキサゾール化合物又は前記メルカプトベンゾチアゾール化合物を用いた実施例1〜3に係る各歯科用硬化性組成物に比べ、前記操作時間、前記接着強さ、前記曲げ強さの各項目において、効果が劣る結果となっている。 同様に、還元剤として、前記チオ尿素化合物を用いた比較例5に係る歯科用硬化性組成物は、前記メルカプトベンゾオキサゾール化合物を用いた実施例11に係る各歯科用硬化性組成物に比べ、前記操作時間、前記接着強さ、前記曲げ強さの各項目において、効果が劣る結果となっている。 なお、比較例6に係る歯科用硬化性組成物は、硬化しなかったため、各測定を行っていない。この比較例6に係る歯科用硬化性組成物では、前記酸性基含有重合性単量体により、前記有機過酸化物と前記芳香族三級アミン化合物とのレドックス反応が阻害されたものと考えられる。 また、比較例7に係る歯科用硬化性組成物では、前記酸性基含有重合体単量体を添加していないため、前記接着強さが著しく低く、前記色調安定性も極めて大きくなっている。 また、実施例1に係る歯科用硬化性組成物に対して、前記(E)アリールボレート化合物、前記(F)銅化合物、(G)前記充填材としてのフルオロアルミノシリケートガラスを添加した実施例8〜13、15に係る歯科用硬化性組成物においては、前記接着強さを向上させることができており、水分を含み、過酷な接着環境となる口腔内での強固な接着性を十分に期待することができる。(デュアルキュア型の歯科用硬化性組成物の製造)<実施例16> 下記組成に従い、各成分を均一になるまで攪拌混合して、ペースト状組成物(I)を調製した。−組成−・(A)重合性単量体 酸性基含有重合性単量体 MDP 15g 酸性基非含有重合性単量体 D2.6E 15g 3G 20g・(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物 MBO 1.5g・(D)光重合開始剤 CQ 0.3g・その他の成分 (G)充填材 F1 45g F2 75g 重合禁止剤 BHT 0.05g また、下記組成に従い、各成分を均一になるまで攪拌混合して、ペースト状組成物(II)を調製した。以上により、前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)とで構成される実施例16に係る歯科用重合性組成物を製造した。なお、前記ペースト状組成物(I)を包装したものを包装1とし、前記ペースト状組成物(II)を包装したものを包装2とする。−組成−・(A)重合性単量体 酸性基非含有重合性単量体 BisGMA 12.5g UDMA 12.5g 3G 25g・(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物 パーオクタH 1.0g・その他の成分 (G)充填材 F1 43g F2 75g F3 2g 重合禁止剤 BHT 0.05g<実施例17〜23、比較例8〜10> 前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)の調製を後掲の表2に記載の組成に基づいて実施したこと以外は、実施例16と同様にして、実施例17〜23及び比較例8〜10に係る各歯科用重合性組成物を製造した。(デュアルキュア型歯科用硬化性組成物に対する物性の測定及び評価)<色調安定性> 実施例16〜23及び比較例8〜10に係る各歯科用硬化性組成物を用いて、前記包装1と前記包装2から1:1の質量比で前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)を量り取り、これらを20秒間攪拌混合して均一な混合ペーストとした。 次いで、前記混合ペーストを15mmφの穴の空いた1mm厚のテトラフルオロエチレン製モールドに流し込んだ後、前記混合ペーストの外表面側からポリプロピレン製のフィルムで圧接し、歯科用光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマデンタル社製;光出力密度600mW/cm2)を前記フィルムに密着させて、光を10秒間照射し、得られた硬化体を試験サンプルとした。 次いで、前記試験サンプルを37℃の蒸留水中に30日間浸漬させ、浸漬前後の色調変化(ΔE)を東京電色社製のTC−1800MK2を用いて測定した。 前記色調変化は、ΔEが小さいほど変化が小さいことを意味し、ΔEが4.0以下であれば目視でその変化を認識することは難しいため、前記色調安定性の評価としては、ΔEが4.0以下の場合に良好であると判断することができる。<硬化体の硬度(ヴィッカース硬度)> 実施例16〜23及び比較例8〜10に係る各歯科用硬化性組成物を用いて、前記包装1と前記包装2から1:1の質量比で前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)を量り取り、これらを20秒間攪拌混合して均一な混合ペーストとした。 混合後直ちに、前記混合ペーストを6mmφ×1.0mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のモールドに流し込んだ後、前記混合ペーストの外表面側からポリプロピレン製のフィルムで圧接し、歯科用光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマデンタル社製;光出力密度600mW/cm2)を前記フィルムに密着させて、光を10秒間照射し、得られた硬化体を試験サンプルとした。 微小硬度計(松沢精機製MHT−1型)を用いて前記試験サンプルの硬度を測定した。前記硬度は、ヴィッカース硬度で評価することとし、ヴィッカース圧子を用いて、荷重100gf、荷重保持時間30秒で前記硬化体にできた窪みの対角線長さにより求めた。 前記硬度の評価としては、前記ヴィッカース硬度が30以上の場合に前記試験用サンプルの硬度が良好であると判断した。 実施例16〜23及び比較例8〜10に係る各歯科用硬化性組成物における前記ペースト状組成物(I)と前記ペースト状組成物(II)の組成、前記色調安定性及び前記ヴィッカース硬度を下記表2に示す。 なお、下記表2中の「組成物」の欄では、前記包装1を(I)、前記包装2を(II)と表記している。 この表2に示すように、実施例16〜23に係る各歯科用硬化性組成物は、前記色調安定性及び前記硬化体の硬度(ヴィッカース硬度)について、全て良好な結果を示している。 これに対して、比較例8に係る歯科用硬化性組成物は、光照射後に硬化しておらず、記色調安定性及び前記硬化体の硬度の測定を行うことができない状況であった。また、比較例9に係る歯科用硬化性組成物は、前記硬化体の硬度が不十分であった。また、色調安定性も実施例に係る各歯科用硬化性組成物と比較して、劣る結果となっている。 即ち、還元剤として、前記チオ尿素化合物を用いた比較例8〜9に係る各歯科用硬化性組成物は、前記メルカプトベンゾオキサゾール化合物を用いた実施例22に係る歯科用硬化性組成物に比べ、前記色調安定性及び前記ヴィッカース硬度が劣る結果となっている。 ここで、比較例8に係る歯科用硬化性組成物において、硬化が見られなかった原因として、前記チオ尿素化合物が前記光重合開始剤の還元剤として作用しなかったことが考えられる。この点を考慮して、比較例9に係る歯科用硬化性組成物では、前記芳香族3級アミン化合物を添加しているが、前述の通り、実施例22に係る歯科用硬化性組成物に比べ、前記色調安定性及び前記ヴィッカース硬度が劣る結果となっている。 なお、比較例10に係る歯科用硬化性組成物は、(A)前記重合性単量体として、前記酸性基含有重合性単量体を含まない組成であるため、前記硬化体の硬度が極めて低く、光硬化性が十分ではない結果となっている。 以上のように、本発明の歯科用硬化性組成物によれば、デュアルキュア型の歯科用硬化性組成物としても利用することができる。 (A)酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体と、 (B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と、 (C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかと、 を含むことを特徴とする歯科用硬化性組成物。 (C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物が下記一般式(1)で表される化合物である請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。 ただし、前記一般式(1)中、R1〜R4は、相互に独立して、水素、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、及びハロゲン原子のいずれかを示し、Xは、酸素原子及び硫黄原子のいずれかを示す。 一般式(1)で表される化合物が、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール及びこれらの混合物のいずれかである請求項2に記載の歯科用硬化性組成物。 更に、(E)アリールボレート化合物を含む請求項1から3のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 更に、フルオロアルミノシリケートガラスを含む請求項1から4のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 更に、(F)銅化合物を含む請求項1から5のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 (F)銅化合物が水溶性銅化合物である請求項6に記載の歯科用硬化性組成物。 更に、(D)光重合開始剤を含み、デュアルキュア型として用いられる請求項1から7のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 (D)光重合開始剤がカンファーキノンである請求項8に記載の歯科用硬化性組成物。 少なくとも2つの包装に分割されて保管され、(A)重合性単量体のうち、酸性基含有重合性単量体と(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかが一の包装に内包され、(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物が他の一の包装に内包される請求項1から9のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 (C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくともいずれかが内包される包装と別の包装に水溶性銅化合物が内包される請求項7から10のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。 【課題】化学重合型の歯科用硬化性組成物として、歯科治療に必要な操作時間を確保でき、高重合活性で接着強度、曲げ強度が高く、色調安定性に優れるとともに、デュアルキュア型の歯科用硬化性組成物としても利用可能な歯科用硬化性組成物を提供することを課題とする。【解決手段】本発明の歯科用硬化性組成物は、(A)酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体と、(B)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と、(C)メルカプトベンゾオキサゾール化合物及びメルカプトベンゾチアゾール化合物の少なくもいずれかと、を含むことを特徴とする。【選択図】なし