タイトル: | 公開特許公報(A)_ポリイミドフィルムの評価方法 |
出願番号: | 2013016283 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 21/3559 |
宮内 恭子 JP 2014149151 公開特許公報(A) 20140821 2013016283 20130131 ポリイミドフィルムの評価方法 住友金属鉱山株式会社 000183303 宮内 恭子 G01N 21/3559 20140101AFI20140725BHJP JPG01N21/35 B 1 OL 5 2G059 2G059AA05 2G059BB10 2G059EE02 2G059EE10 2G059EE12 2G059HH01 2G059KK01 2G059MM01 本発明は、ポリイミドフィルムの評価方法に関するものであり、更に詳しくはポリイミドフィルムの極表面層の分子配向性の評価方法に関する。 従来、ポリイミドフィルムは耐熱性、力学特性、電気的性質、耐環境特性、難燃性などの各種物性に優れ、しかも柔軟性を有しているため、フレキシブルプリント基板等に広く用いられているだけでなく、人工衛星、スペ−スシャトルなどの宇宙飛行体の熱制御材料としても多く用いられてきた。しかし、近年、種々の産業分野におけるポリイミド材料に対する要求特性の多様化あるいは高度化に対して、ポリイミド単体での対応が難しくなってきており、ポリイミドとは異なる特性を有する異種材料との複合化が行われており、そのためにポリイミドフィルムの極表面層の分子配向性などの表面状態を把握しておくことが重要になっている。 一般に、赤外分光光度計による測定は、多重反射した赤外線を入射させ、被測定部より放出される赤外線を検出し、これを分析することによりフィルムの表面状態を把握することが可能である(例えば、特許文献1参照)。 また、特許文献2には他の主要な構造解析法の一つとしてX線回折法が挙げられており、多様な測定雰囲気が選択でき、その場観察が可能であることや、多重散乱が少ないために、回折強度の定量が比較的容易であるので精密な構造解析をしやすいなどの利点があるとされている。この様な利点を有するX線回折法を特に表面近傍の構造解析に応用する方法としては、X線を試料に数度の微小角度(臨界角度αcの20倍以上に相当)で入射するX線反射率測定法や微小角入射X線回折法が使用されてきた。 例えば、X線の入射角を極低角にすることでフィルムの表面配向状態を測定する事が可能となるが、解析を実施する為に必要な情報を得る為の測定には、約1日と時間がかかるという問題があった。このように、これらの測定方法では各置換基の分子配向性を知ることは難しく、より短時間で簡便な手法が求められていた。特開2002−236101号公報特開2000−266698号公報 本発明は、上記した従来の評価方法の問題点に鑑み、ポリイミドフィルムの極表面層の分子配向性を簡便かつ短時間に測定することを可能とするポリイミドフィルムの評価方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記目的を達成するために、ポリイミドフィルムをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により測定する際に、ポリイミドフィルムの延伸方向に対して偏光方向を平行、及び垂直となるように設置した偏光子を介して、少なくとも2つの異なる角度から多重反射する赤外光を入射して赤外スペクトルを測定し、得られた赤外反射スペクトルから特定の波長における赤外光吸収強度の相対比を算出することで、ポリイミドフィルムの極表面層の分子配向性を評価することができるという知見を得て、本発明を完成するに至った。 本発明によれば、ポリイミドフィルムをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により測定する評価方法において、ポリイミドフィルムの延伸方向に対して偏光方向を平行、及び垂直となるように設置した偏光子を介して、少なくとも2つの異なる角度から多重反射する赤外光を入射して赤外スペクトルを測定し、得られた赤外反射スペクトルから特定の波長における赤外光吸収強度の相対比を算出することで、従来法と比べて非常に短時間で、かつ簡便な測定方法により、ポリイミドフィルムの極表面層の分子配向性を評価することができ、例えば金属材料との複合化を行うためのポリイミドフィルムの極表面層の評価方法として極めて有効である。 本発明の実施形態について説明する。 本発明のポリイミドフィルムの評価方法は、ポリイミドフィルムをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により測定するときに、ポリイミドフィルムの延伸方向に対して偏光方向が平行となるように設置した偏光子を介して多重反射する赤外光を入射して測定した赤外スペクトルと、ポリイミドフィルムの延伸方向に対して偏光方向が垂直となるように設置した偏光子を介して多重反射する赤外光を入射して測定した赤外スペクトルを測定し、その赤外反射スペクトル中の特定の波数における強度を求め、他の波数における強度との相対比を算出することで、ポリイミドフィルム極表面の分子配向性を評価することを特徴とするポリイミドフィルムの評価方法である。 一般に赤外分光分析法は、試料に赤外線を照射し、双極子能率の変化を起こす分子振動に起因する吸収スペクトルを測定する方法であり、この赤外吸収スペクトル測定方法は、有機化合物、高分子化合物や、一部無機化合物の分析に広く用いられている。 本発明者は、かかる問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、FT−IRの測定時にポリイミドフィルムの延伸方向に対して例えば平行及び垂直の少なくとも2つの異なる角度から赤外光を入射して得られる赤外反射スペクトルから特定の波数あるいは波長における赤外光吸収強度を測定することにより、光方向に対する分子配向性に関する知見を得ることを見出した。 具体的に本発明のポリイミドフィルムの評価方法を説明する。本発明の評価方法は、1)フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)による測定2)得られた赤外スペクトルからの特定波長の強度比の算出による解析という手順で行う。 まず、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)による測定について説明する。1)評価するポリイミドフィルムの延伸方向、すなわち連続製造時における長さ方向(MD)及びMDに垂直な方向(TD)それぞれに対して偏光方向が平行となるように設置した偏光子を介して多重反射する赤外光を入射して測定した赤外スペクトルと、ポリイミドフィルムの延伸方向に対して連続製造時における長さ方向(MD)及びMDに垂直な方向(TD)それぞれに対して偏光方向が垂直となるように設置した偏光子を介して多重反射する赤外光を入射して、波長に対する吸光度として赤外スペクトルを測定する。 測定の対象とするポリイミドフィルムは特に限定されないが、赤外光の入射方向が延伸方向に対して垂直または平行になるように測定試料を準備する必要がある。 なお、ポリイミドフィルムは吸湿性が高い為に測定の際に水蒸気吸着によるピークを検出する可能性がある為、真空内にて多重反射する赤外光を入射することが望ましい。 また、多重反射の際に使用するプリズムについては特に限定されないが、実際の測定範囲において潜り込み深さの波数依存性が低いゲルマニウム結晶を用い、入射角60°以上で測定することが望ましい。入射角が60°未満で測定すると、特に1500cm−1より低波長側において、潜り込み深さに対する依存性が高くなる傾向があるため好ましくない。 その他、測定条件についても、特に限定はされないが、積算回数は20回以上、解像度は2cm−1以下が望ましい。積算回数が20回未満の場合は、ノイズが高くなりベースライン補正が難しくなる為に強度値比較の際に誤差となりやすい。一方、解像度が2cm−1より大きいと、解像度未満のピーク位置の比較の際に誤差となりやすいため好ましくない。 また、測定に際しては、ポリイミドフィルム表裏両面の測定を実施することで、各面での配向性を評価することができ、金属層と貼り合わせする場合の有用な情報を得ることができる。2)上記手順で得られた赤外吸収スペクトルについて以下の手順で特定波長のピーク強度を求めて相対比を算出する。例えば、(1)まず、1500cm−1付近のベンゼン環由来のC=C結合伸縮振動ピークの強度値Rを求める。(2)次に、1770〜1780cm−1付近のC=O結合対称伸縮振動ピークの強度値Aと、1700〜1750cm−1付近のC=O結合非対称伸縮振動ピークの強度値Bを求める。(3)(1)、(2)で得られた強度値A、B、Rより、強度値の相対比A/R、B/Rを求める。(4)(3)で得られた延伸方向に対する偏光方向(平行および垂直方向)の相対比A/R、B/Rを比較し、相対値が大きい方向に該当置換基C=Oが配向していると判定することができる。 以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。今回の測定に際しては日本分光製FT/IR−680Plus(V)を使用し、入射角60°のゲルマニウム結晶を用いて4回の多重反射にて赤外光を入射した。また、積算回数は100回、解像度を1cm−1とした。 [実施例1] 測定試料のポリイミドフィルムを、延伸方向(MD方向)に対して多重反射赤外光が平行に入射するように設置した。偏光方向がフィルムに対して平行になるように偏光子を設定し、波数に対する吸光度として上記の測定条件で赤外スペクトルを得た。その後、偏光方向をポリイミドフィルムに対して垂直になるように偏光子を設定し、同様の赤外スペクトルを得た。 次に、得られた赤外スペクトルから、1770〜1780cm−1付近のC=O結合対称伸縮振動ピークの強度値Aと、1700〜1750cm−1付近のC=O結合非対称伸縮振動ピークの強度値Bとを求め、偏光方向が平行の場合の相対比を求めるとA/R=0.155、B/R=0.254であり、偏光方向が垂直の場合の相対比を求めるとA/R=0.811、B/R=1.618であり、それぞれの置換基の配向方向は延伸方向(MD)に対して垂直方向であると判定された。 [実施例2] 実施例1と同じポリイミドフィルムを、延伸方向(TD方向)に対して多重反射赤外光が平行に入射するように設置した。偏光方向がフィルムに対して平行になるように偏光子を設定し、波数に対する吸光度として上記の測定条件で赤外スペクトルを得た。次に、得られた赤外スペクトルから、1770〜1780cm−1付近のC=O結合対称伸縮振動ピークの強度値Aと、1700〜1750cm−1付近のC=O結合非対称伸縮振動ピークの強度値Bとを求め、偏光方向が平行の場合の相対比を求めるとA/R=0.158、B/R=0.243であり、偏光方向が垂直の場合の相対比を求めるとA/R=0.841、B/R=1.557であり、それぞれの置換基の配向方向は延伸方向(TD)に対して垂直方向であると判定された。 ポリイミドフィルムをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により測定する際に、ポリイミドフィルムの延伸方向に対して偏光方向を平行、及び垂直となるように設置した偏光子を介して、少なくとも2つの異なる角度から多重反射する赤外光を入射して赤外スペクトルを測定し、得られた赤外反射スペクトルから1500cm―1付近のベンゼン環由来ピークの強度値R、及び1770〜1780cm−1付近のC=O結合対称伸縮振動ピークの強度値Aと、1700〜1750cm−1付近のC=O結合非対称伸縮振動ピークの強度値Bを求め、赤外光吸収強度の相対比A/R、B/Rを算出し、相対比の大きい方向に当該置換基は配向していると判定することを特徴とするポリイミドフィルムの評価方法。 【課題】ポリイミドフィルムの極表面層の分子配向性を簡便かつ短時間に測定することを可能とするポリイミドフィルムの評価方法を提供する。【解決手段】ポリイミドフィルムをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により測定する際に、ポリイミドフィルムの延伸方向に対して偏光方向を平行、及び垂直となるように設置した偏光子を介して、少なくとも2つの異なる角度から多重反射する赤外光を入射して赤外スペクトルを測定し、得られた赤外反射スペクトルから1500cm―1付近のベンゼン環由来ピークの強度値R、及び1770〜1780cm−1付近のC=O結合対称伸縮振動ピークの強度値Aと、1700〜1750cm−1付近のC=O結合非対称伸縮振動ピークの強度値Bを求め、赤外光吸収強度の相対比A/R、B/Rを算出し、相対比の大きい方向に置換基は配向していると判定することを特徴とするポリイミドフィルムの評価方法。【選択図】なし