タイトル: | 公開特許公報(A)_γ−オリザノール含有機能性食品と糖尿病改善医薬 |
出願番号: | 2013009341 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 31/575,A61P 3/10,A61P 5/50,A61P 43/00,A23L 1/30 |
益崎 裕章 屋比久 浩市 小塚 智沙代 JP 2014141423 公開特許公報(A) 20140807 2013009341 20130122 γ−オリザノール含有機能性食品と糖尿病改善医薬 国立大学法人 琉球大学 504145308 大久保 秀人 100152180 島袋 勝也 230115473 益崎 裕章 屋比久 浩市 小塚 智沙代 A61K 31/575 20060101AFI20140711BHJP A61P 3/10 20060101ALI20140711BHJP A61P 5/50 20060101ALI20140711BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140711BHJP A23L 1/30 20060101ALI20140711BHJP JPA61K31/575A61P3/10A61P5/50A61P43/00 105A23L1/30 Z 19 1 OL 28 特許法第30条第2項適用申請有り 1.ウェブページでの公開 米国糖尿病学会(American Diabetes Association) URL:http://diabetes.diabetesjournals.org/content/61/12.toc内の次のタイトル部分のAbstract、Full Textほか(論文) 『Brown Rice and Its Component,Y−Oryzanol,Attenuate the Preference for High−Fat Diet by Decreasing Hypothalamic Endoplasmic Reticulum Stress in Mice』 公開日:平成24年7月23日 なお、前記論文は、全く同じものが米国糖尿病学会発行の学会誌「Diabetes」12月号の、電子版としてオンライン上で平成24年11月21日に公開され、さらに雑誌版(vol.61)として平成24年12月1日に発行されている。 2.記者会見による公開 会見場所:国立大学法人琉球大学医学部管理棟3階大会議室 会見日:平成24年7月25日 3.ウェブページでの公開 国立大学法人琉球大学医学部 URL:http://www.med.u−ryukyu.ac.jp/topics/3662.html 公開日:平成24年7月26日 4.学会雑誌による公開 日本体質医学会雑誌(日本体質医学会) 学会抄録集号,第74巻3号137頁 発行日:平成24年10月12日 5.学会による公開 第62回 日本体質医学会総会 開催日:平成24年11月4日 4B018 4C086 4B018MD07 4B018ME03 4B018ME04 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA19 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086MA66 4C086NA14 4C086ZB22 4C086ZC35 4C086ZC61 4C086ZC80本発明は、中枢神経を介さずに膵臓に直接作用して、小胞体ストレスの亢進及びグルカゴンの分泌を抑制し、さらにインスリンの分泌を促進することができる、γ−オリザノールを有効成分とするヒトまたは動物用の医薬及び機能性食品に関する。近年、食習慣の欧米化を背景に、肥満症や、2型糖尿病といわれる糖尿病が、世界的規模で増加の一途をたどっており、大きな社会問題となっている。特に、2型糖尿病患者においては、膵β細胞量が減少していることが明らかにされ、この膵β細胞量の低下の一因として、小胞体ストレスによる細胞死(アポトーシス)が注目されている。膵β細胞は、膵臓のランゲルハンス島にある細胞であり、血中グルコース濃度の上昇により、血糖量を低下させるホルモンであるインスリンを分泌することで知られているが、インスリンが多量に産生される膵β細胞では、異常な立体構造をとる不良品(変性タンパク質)が産生されることがあり、これが小胞体に蓄積すると、小胞体ストレスと呼ばれる状態を引き起こす。細胞は、小胞体ストレス応答とよばれる適応反応により対処するが、変性タンパク質が過剰に蓄積し、小胞体ストレスの強さが細胞の回避機能を越えると、細胞死が誘導される。このようにして、膵β細胞が多数失われる結果、インスリン分泌量が低下し、糖尿病を発症する危険性が高まることから、糖尿病の症状を改善するには、膵β細胞における小胞体ストレス亢進を抑制して、膵β細胞を細胞死から保護し、個々の膵β細胞が含有するインスリン量を積極的に増加させることが有効である。しかしながら、糖尿病患者の90%以上を占めるといわれている2型糖尿病に対して、これまで多くの治療薬が開発されてきてはいるものの、十分な臨床結果が得られていないものや、精神症状や心臓に対する副作用を引き起こすものなどがあることから、抗肥満、抗糖尿病作用を発揮する安全性と有効性が保障された天然食品由来の物質の探求が強く求められていた。ところで、沖縄県では、玄米を粥状にして黒糖などで風味を付けたものを飲むなど、古くから玄米を食する習慣があるが、この玄米が血糖値の上昇を抑制することは、従来から知られていた(例えば、特許文献1)。また、高脂肪食を摂取すると、摂食中枢である視床下部での小胞体ストレスと呼ばれる代謝ストレスが高まり、高脂肪食への依存性がさらに高まることも、従来から知られていた。そこで、本発明者らは、この玄米に多く含まれるγ−オリザノールに着目し、γ−オリザノールが、高脂肪食習慣によって視床下部で亢進する小胞体ストレスを低下させ、高脂肪食への依存性を軽減させることを明らかにした(非特許文献1)。γ−オリザノールを摂取することで、高脂肪食への依存性が軽減される結果、低脂肪食を選ぶようになり、血糖値が低下したり、体重が軽減することが期待できるのである。そして、本発明者らは、さらにγ−オリザノールについて鋭意研究を行った結果、次のことを明らかにした。(1)γ−オリザノールは、膵β細胞における小胞体ストレスの亢進を抑制することで、これを原因とする膵β細胞の細胞死を抑制し、膵β細胞の新生または再生を促し、インスリン分泌能を高め、インスリン分泌の低下を抑制する。(2)γ−オリザノールは、中枢神経を介すことなく、膵β細胞に直接的に作用して、インクレチンに依存することなく、cAMP−PKA回路を経由して、グルコース応答性のインスリン分泌を促進する。(3)γ−オリザノールは、膵α細胞からのグルカゴンの分泌を抑制する。なお、特許文献1には、玄米食による血糖値の上昇抑制とともに、インスリンの分泌抑制の効果が書かれているが、本発明者らによる前記知見は、これに反する。特開2005−110583公報益崎 裕章、外14名、「Brown Rice and Its Component,g-Oryzanol,Attenuate the Preference for High-Fat Diet by Decreasing Hypothalamic Endoplasmic Reticulum Stress in Mice」、米国糖尿病学会(American Diabetes Association)、Diabetes誌、平成24年12月、VOL61従来、γ−オリザノールが、前記(1)乃至(3)の知見のように作用することは知られていなかった。そこで、本発明は、膵島細胞における小胞体ストレスの亢進及びグルカゴンの分泌を抑制し、膵β細胞におけるインスリンの分泌を促進することができる、γ−オリザノールを有効成分とするヒトまたは動物用の医薬及び機能性食品を提供することを課題とする。本発明者らは、上記課題を解決する手段として、次の発明をなした。(1)γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物の膵β細胞において小胞体ストレスの亢進を抑制するための医薬。(2)γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物の膵β細胞において小胞体ストレスが生じることによって発現するChop、ERdj4、スプライス型Xbp1(Xbp1s)のいずれか1以上の遺伝子の発現を抑制するための医薬。(3)γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物の小胞体ストレス亢進を原因とする膵β細胞の細胞死を抑制するためのアポトーシス抑制剤。(4)γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物の膵β細胞の新生または再生を促進するための医薬。(5)ヒトまたは動物の膵臓に局所投与することによる、前記(1)乃至(4)のいずれかの医薬。(6)ヒトまたは動物に1日20μg/g体重以上を経口投与することを特徴とする、前記(1)乃至(5)のいずれかの医薬。(7)γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物用のインスリン分泌促進剤。(8)ヒトまたは動物の膵臓に局所投与することによる、前記のインスリン分泌促進剤。(9)ヒトまたは動物に1日20μg/g体重以上を経口投与することを特徴とする、前記(7)または(8)のインスリン分泌促進剤。(10)γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物用のグルカゴン分泌抑制剤。(11)ヒトまたは動物の膵臓に局所投与することによる、前記のグルカゴン分泌抑制剤。(12)ヒトまたは動物に1日20μg/g体重以上を経口投与することを特徴とする、前記(10)または(11)のグルカゴン分泌抑制剤。(13)γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物用の血糖値上昇抑制剤。(14)γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物用の糖尿病治療薬。(15)ヒトまたは動物の膵臓に局所投与することによる前記(13)または(14)の医薬。(16)ヒトまたは動物に1日20μg/g体重以上を経口投与することを特徴とする前記(13)乃至(15)の医薬。(17)γ−オリザノールを含有する、ヒトまたは動物用の機能性食品である。(18)γ−オリザノールを含有する、ヒトまたは動物用の食品添加物である。(19)γ−オリザノールをヒトまたは動物に投与することにより糖尿病を治療する方法。「γ−オリザノール(γ-oryzanol)」は、フェルラ酸とステロールとが縮合したエステル類の総称であり、天然由来のものでは、米(米糠等)から得られる米油から抽出及び精製することができるが、本発明におけるγ−オリザノールは、その由来や抽出方法、精製方法については限定されない。例えば、天然物から抽出、精製して得られたもの以外でも、その全部もしくは一部が合成して得られたもの、または、市販品を使用したものでも良い。γ−オリザノールに含まれる成分としては、例えば、フェルラ酸シクロアルテニル(CAF)、24-メチレンシクロアルタニルフェルレート、ベーターシトステリルフェルレート、及びカンペステリルフェルレート等が挙げられ、一般には、γ−オリザノールは、CAF及びその他のフェルラ酸エステル体を含む複数成分からなる。本発明における「中枢神経を介さない」とは、中枢神経を介して膵臓に作用する経路によらず、膵臓に直接作用する経路によって、γ−オリザノールが作用することを意味する。また、γ−オリザノールの作用とは、本発明におけるγ−オリザノールによる効果を意味し、γ−オリザノールが膵臓、膵島、膵β細胞または膵α細胞に直接働きかけて、その効果を生じさせることを意味する。1)γ−オリザノールは、米糠等から抽出することができるため、天然由来の安全性と有効性が保障された抗肥満作用、抗糖尿病作用を発揮するヒトまたは動物用の医薬を提供できる。2)γ−オリザノールの、膵β細胞における小胞体ストレス亢進抑制作用、グルコース応答性のインスリン分泌促進作用により、ヒトまたは動物の食後血糖値の上昇を抑制できる。3)γ−オリザノールが、中枢神経を介さずに、膵臓に直接的に作用してインスリン分泌を促進し、血糖値を下げることから、ヒトまたは動物の膵臓に対して直接的な投与または治療が可能になる。4)γ−オリザノールは、安全性と有効性が保障された天然食品由来であり、経口投与しても効果が得られるものであるため、γ−オリザノールを含有するヒトまたは動物用の機能性食品、食品添加物として利用できる。膵島における小胞体ストレス応答遺伝子の発現レベルを調べた試験結果を表すグラフである。膵島におけるアポトーシスが起こると発現が上昇する遺伝子の発現率を調べた試験結果を表すグラフである。MIN6細胞における小胞体ストレス応答遺伝子の発現レベルを調べた試験結果を表すグラフである。小胞体ストレス亢進後の細胞死を起こしたMIN6細胞の顕微鏡写真である。図4でした試験の細胞生存率を表すグラフである。小胞体ストレスを亢進させた状況下でのMIN6細胞のインスリン分泌量を調べた試験結果を表すグラフである。小胞体ストレスを亢進させた状況下でのマウスのプロインスリン及びインスリンの分泌量を調べた試験結果を表すグラフである。高脂肪食を給餌したマウスの膵島を撮影した顕微鏡写真である。図8の膵島の大きさを表したグラフである。図8の膵島に占める膵α細胞の割合を表したグラフである。グルコース投与下における膵島のインスリン分泌量を調べた試験結果を表すグラフである。グルコース投与下におけるMIN6細胞のインスリン分泌量を調べた試験結果を表すグラフである。マウスのブドウ糖負荷試験における血糖値を調べた試験結果を表すグラフである。マウスのブドウ糖負荷試験におけるインスリン値を調べた試験結果を表すグラフである。迷走神経を切断したマウスのブドウ糖負荷試験における血糖値を調べた試験結果を表すグラフである。迷走神経を切断したマウスのブドウ糖負荷試験におけるインスリン値を調べた試験結果を表すグラフである。マウスのブドウ糖負荷試験における血糖値を調べてγ−オリザノールの有効量を確認した試験結果を表すグラフである。マウスの膵島におけるグルカゴン分泌量を調べた試験結果を表したグラフである。マウスの血中のグルカゴン分泌量を調べた試験結果を表したグラフである。γ−オリザノールが、これを含む、もしくは有効成分とする各発明(小胞体ストレス亢進抑制剤、小胞体ストレスが生じることによって発現するChop、ERdj4、スプライス型Xbp1(Xbp1s)のいずれか1以上の遺伝子に対する発現抑制剤、膵β細胞に対するアポトーシス抑制剤、膵β細胞の新生または再生を促進するための医薬、インスリン分泌促進剤、グルカゴン分泌抑制剤、血糖値上昇抑制剤、糖尿病治療薬、機能性食品、食品添加物)として有効であることを、次の各試験結果をもって示す。1.小胞体ストレス抑制効果(試験1)膵島において、小胞体ストレスが亢進した際に発現上昇がみられる小胞体ストレス応答遺伝子と呼ばれる遺伝子の発現レベルについて試験した。生後8週目のマウス(雄性,C57BL/6J,日本チャールス・リバー株式会社)を3群に分けて、12週間(生後20週目まで)、次のAからCのとおり給餌した。A)chow群:通常食(CE-2(日本クレア,東京)、1日8kcal)B)HFD-Veh群:高脂肪食(Western diet(Research Diet,New Brunswick,NJ)、1日11kcal)C)HFD-Orz群:高脂肪食(Bに同じ)に加え、Orz(γ−オリザノール(和光純薬,大阪)、1日320μg/g体重)をゾンデを用いて経口投与「Orz」の語は、本明細書において「γ−オリザノール」の意味で用いている。また、γ-オリザノールは、0.5w/v%メチルセルロース溶液400cP(和光純薬,大阪)を用いて2〜32mg/mlの濃度に懸濁している。各群のマウスから採取した膵島をもとに、小胞体ストレス応答遺伝子と呼ばれる遺伝子群(Chop、ERdj4、スプライス型Xbp1(Xbp1s))の発現レベルを調べた。遺伝子発現レベルの試験は、TRIzol(登録商標) RNA Isolation Reagents (Life technologies, Inc., Carlsbad, CA, USA)、iScriptTM cDNA Synthesis Kit (BIO RAD, Hercules, CA, USA)を用いてRNAを抽出し、cDNAを合成した後、StepOnePlus Real-Time PCR Systems及び Fast SYBR(登録商標) Green Master Mix (Life technologies, Inc., Carlsbad, CA, USA)を使用し、合成したcDNAより遺伝子発現量を比較解析した。結果を表1及び図1(左のグラフからChop、ERdj4、スプライス型Xbp1(Xbp1s))に示す。表1中の値は、平均値(n=6)±標準偏差を示す。HFD-Veh群は、chow群に比べて、いずれの遺伝子も発現が上昇した。したがって、HFD-Veh群は、高脂肪食を摂食したことによって、膵島の小胞体ストレスが亢進していることが確認できる。しかし、HFD-Orz群は、HFD-Veh群と同じように高脂肪食を摂食したにもかかわらず、chow群と同程度にまで遺伝子の発現が抑えられている。したがって、HFD-Orz群は、高脂肪食を摂食したことによって亢進した膵島の小胞体ストレスが、γ−オリザノールによって抑制されていることが確認できる。この試験結果から、γ−オリザノールは、膵島に対する小胞体ストレスの亢進を抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、膵島において小胞体ストレスの亢進を抑制するための医薬として効果があることが認められる。また、γ−オリザノールが、膵島において小胞体ストレスが生じることによって発現するChop、ERdj4、スプライス型Xbp1(Xbp1s)のいずれか1以上の遺伝子の発現を抑制するための医薬として効果があることが認められる。さらに、試験1の膵島に対して、アポトーシスが起こると発現が上昇する遺伝子(Bcl2、Casp3、Casp8、CAD)の各発現率を調べた。結果を表2及び図2(左のグラフからBcl2、Casp3、Casp8、CAD)に示す。表2中の値は、平均値(n=6)±標準偏差を示す。HFD-Veh群は、chow群に比べて、いずれの遺伝子も発現率が上昇した。したがって、HFD-Veh群は、高脂肪食を摂食したことによって亢進した小胞体ストレスが原因として、膵島細胞の細胞死が起きていることが確認できる。しかし、HFD-Orz群は、HFD-Veh群と同じように高脂肪食を摂食したにもかかわらず、chow群と同程度にしか遺伝子が発現していない。したがって、HFD-Orz群は、高脂肪食を摂食し、膵島細胞内の小胞体ストレスが亢進したことを原因として生じる膵島細胞の細胞死が、γ−オリザノールによって抑制されていることが確認できる。この試験結果から、γ−オリザノールは、高脂肪食を摂食して亢進した膵島細胞内の小胞体ストレスを原因として生じる膵島細胞の細胞死を抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、小胞体ストレス亢進を原因とする膵島細胞の細胞死を抑制するためのアポトーシス抑制剤として効果があることが認められる。(試験2)膵β細胞において、小胞体ストレスが亢進した際に発現上昇がみられる小胞体ストレス応答遺伝子と呼ばれる遺伝子の発現レベルについて試験した。マウス膵β細胞由来の培養細胞株MIN6細胞(大阪大学;MTA11-155)に対して、次のAからEのとおり、小胞体ストレス惹起剤「tunicamycin(ツニカマイシン)」、γ−オリザノール(Orz)、4−フェニル酪酸(4-PBA)をそれぞれ添加した。A)Cont群:無添加B)Veh群:ツニカマイシン(0.5μg/ml)C)Orz0.2群:ツニカマイシン(0.5μg/ml)+Orz(0.2μg/ml)D)Orz2群:ツニカマイシン(0.5μg/ml)+Orz(2μg/ml)E)PBA群:ツニカマイシン(0.5μg/ml)+4-PBA(5mM)γ-オリザノールは、ジメチルスルホキシド(DMSO)(ナカライテスク,京都)に溶かして添加した。各群のMIN6細胞を4時間培養した後、小胞体ストレス応答遺伝子と呼ばれる遺伝子群(Chop、ERdj4、スプライス型Xbp1(Xbp1s))の発現レベルを調べた。遺伝子発現レベルの試験は、TRIzol(登録商標) RNA Isolation Reagents (Life technologies, Inc., Carlsbad, CA, USA)、iScriptTM cDNA Synthesis Kit (BIO RAD, Hercules, CA, USA)を用いてRNAを抽出し、cDNAを合成した後、StepOnePlus Real-Time PCR Systems及び Fast SYBR(登録商標) Green Master Mix (Life technologies, Inc., Carlsbad, CA, USA)を使用し、合成したcDNAより遺伝子発現量を比較解析した。結果を表3及び図3に示す。表3中の値は、平均値(n=7)±標準偏差を示す。Veh群は、Cont群に比べて、遺伝子発現が上昇した。したがって、Veh群は、ツニカマイシンを添加することによって、膵β細胞の小胞体ストレスが亢進していることが確認できる。しかし、PBA群は、Veh群と同じように、ツニカマイシンを添加したにもかかわらず、Veh群に比べて遺伝子の発現が抑えられている。つまり、PBA群は、ツニカマイシン添加が原因として生じた膵β細胞の小胞体ストレスの亢進が、4−フェニル酪酸によって抑制されていることが確認できる。もともと4−フェニル酪酸は、小胞体ストレスの亢進を抑制する効果を有することが知られているが、Orz0.2群、Orz2群でも、4−フェニル酪酸を添加したBA群と同様に、Veh群に比べて遺伝子の発現が抑えられている。したがって、Orz0.2群、Orz2群は、ツニカマイシンの添加が原因として生じた膵β細胞の小胞体ストレスの亢進が、γ−オリザノールによって抑制されていることが確認できる。この試験結果から、γ−オリザノールは、膵β細胞に対するツニカマイシン添加を原因として生じる小胞体ストレスの亢進を抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、膵β細胞において小胞体ストレスの亢進を抑制するための医薬として効果があることが認められる。また、γ−オリザノールが、膵β細胞において小胞体ストレスが生じることによって発現するChop、ERdj4、スプライス型Xbp1(Xbp1s)のいずれか1以上の遺伝子の発現を抑制するための医薬として効果があることが認められる。(試験3)小胞体ストレス亢進後の細胞死を起こした膵β細胞を観察することで、γ−オリザノールの膵β細胞に対する小胞体ストレス亢進の抑制効果について試験した。マウス膵β細胞由来の培養細胞株MIN6細胞(大阪大学;MTA11-155)に対して、次のAからEのとおり、小胞体ストレス惹起剤「tunicamycin(ツニカマイシン)」、γ−オリザノール(Orz)、4−フェニル酪酸(4-PBA)をそれぞれ添加した。A)Cont群:無添加B)Veh群:ツニカマイシン(0.5μg/ml)C)Orz0.2群:ツニカマイシン(0.5μg/ml)+Orz(0.2μg/ml)D)Orz2群:ツニカマイシン(0.5μg/ml)+Orz(2μg/ml)E)PBA群:ツニカマイシン(0.5μg/ml)+4-PBA(5mM)γ-オリザノールは、ジメチルスルホキシド(DMSO)(ナカライテスク,京都)に溶かして添加した。各群のMIN6細胞を24時間培養した後、小胞体ストレスが亢進したことでMIN6細胞がどのくらい細胞死を起こしているか調べた。Hoechst 33342(Dosindo,熊本県)を培養液中に添加し、37℃で15分反応させることで各細胞の核を染色し、クロマチンの凝集を蛍光顕微鏡下で観察、撮影した。このときの顕微鏡写真を図4に示す。図4において白く染まって見えるのが細胞である(図4はモノクロのため白く見えるが、実際は青く染まって見えている)。その中でも、濃い白色(実際は濃い青色)に染まって見えるのが細胞死を起こしている細胞である(傍に白の矢印を打ってあるもの)。Cont群では細胞死を起こしている細胞が見られないのに対し、Veh群では複数個見られる。これに対し、Orz0.2群、Orz2群、PBA群では、細胞死を起こしている細胞が見られないか、またはごく僅かである。さらに、このときの細胞生存率を、Cell Count Reagent SF(ナカライテスク,京都)を用いて調べた。上記培養液中にCell Count Reagent SF試薬を添加し、試薬が生細胞により代謝されて生じる蛍光色素を、蛍光プレートリーダーを用いて検出した。Cont群を基準として細胞の生存率を示したものを表4及び図5に示す。表4中の値は、平均値(n=7)±標準偏差を示す。Veh群は、細胞死を起こしている細胞が複数個見られ、細胞生存率が他の群に比べて最も低い。したがって、Veh群は、ツニカマイシンの添加によって亢進したMIN6細胞の小胞体ストレスが原因として、MIN6細胞の細胞死が起きていることが確認できる。しかし、PBA群は、Veh群と同じように、ツニカマイシンを添加したにもかかわらず、Veh群に比べて細胞死が見られず、細胞生存率が高い。つまり、PBA群は、ツニカマイシン添加によって亢進したMIN6細胞の小胞体ストレスを原因とするMIN6細胞の細胞死が、4−フェニル酪酸によって抑制されていることが確認できる。もともと4−フェニル酪酸は、小胞体ストレスの亢進を抑制する効果を有することが知られているが、Orz0.2群、Orz2群でも、4−フェニル酪酸を添加したPBA群と同様に、Veh群に比べて細胞死が見られず、細胞生存率が高い。したがって、Orz0.2群、Orz2群は、ツニカマイシン添加によって亢進した小胞体ストレスを原因とするMIN6細胞の細胞死が、γ−オリザノールによって抑制されていることが確認できる。この試験結果から、γ−オリザノールは、膵β細胞に対するツニカマイシン添加によって亢進した小胞体ストレスを原因とする膵β細胞の細胞死を抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、小胞体ストレス亢進を原因とする膵β細胞の細胞死を抑制するための医薬として効果があることが認められる。(試験4)膵β細胞の小胞体ストレスを亢進させた状況下で、膵β細胞のインスリン分泌量を調べることで、γ−オリザノールの膵β細胞に対する、小胞体ストレス亢進を原因とするインスリン分泌の低下を抑制する効果について試験した。マウス膵β細胞由来の培養細胞株MIN6細胞(大阪大学;MTA11-155)に対して、次のAからEのとおり、小胞体ストレス惹起剤「tunicamycin(ツニカマイシン)」、γ−オリザノール(Orz)、4−フェニル酪酸(4-PBA)をそれぞれ添加し、グルコースを添加したときのインスリン分泌量を調べた。A)Cont群:無添加B)Veh群:ツニカマイシン(1μg/ml)C)Orz0.2群:ツニカマイシン(1μg/ml)+Orz(0.2μg/ml)D)Orz2群:ツニカマイシン(1μg/ml)+Orz(2μg/ml)E)PBA群:ツニカマイシン(1μg/ml)+4-PBA(5mM)γ-オリザノールは、ジメチルスルホキシド(DMSO)(ナカライテスク,京都)に溶かして添加した。グルコース(2.5mM)を加えたクレブス・リンガー・重炭酸緩衝液中で、B〜E群にツニカマイシン(1μg/ml)を添加したあと、さらにC、D群にはγ−オリザノール(0.2、2μg/ml)を、E群には4−フェニル酪酸(5mM)をそれぞれ添加して、4時間放置した。その後、2.5mM、25mMのグルコースをそれぞれ加えたクレブス・リンガー・重炭酸緩衝液中で、C及びD群にγ−オリザノール(0.2、2μg/ml)を添加し、2時間で緩衝液中に分泌されるインスリン量を調べた。インスリンは、超高感度マウスインスリン測定キット(森永生化学研究所、神奈川)を用いて測定した。結果を表5及び図6に示す。表5中の値は、平均値(n=4〜5)±標準偏差を示す。2.5mMグルコース下においては、Veh群、Orz0.2群、Orz2群、PBA群のいずれも、Cont群に比して、インスリン分泌量の低下は見られない。しかし、25mMグルコース下においては、次のような違いが見られた。Veh群は、Cont群に比して、顕著にインスリン分泌量が低下している。したがって、Veh群は、ツニカマイシンの添加によって亢進したMIN6細胞の小胞体ストレスや、さらには小胞体ストレス亢進を原因とするMIN6細胞の細胞死に起因して、インスリン分泌量(分泌能)の低下が起きていることが確認できる。しかし、PBA群は、Veh群と同じように、ツニカマイシンを添加したにもかかわらず、Veh群に比べてインスリン分泌量の低下が見られず、Cont群に近い量のインスリンが分泌されていることが確認できる。つまり、PBA群は、ツニカマイシンの添加を原因として生じたMIN6細胞の小胞体ストレスの亢進が、4−フェニル酪酸によって抑制されていることが確認できる。もともと4−フェニル酪酸は、小胞体ストレスの亢進を抑制する効果を有することが知られているが、Orz0.2群、Orz2群でも、4−フェニル酪酸を添加したPBA群と同様に、Veh群に比べてインスリン分泌量の低下が見られず、Cont群に近い量(PBA群とほぼ同量)のインスリンが分泌されていることが確認できる。したがって、Orz0.2群、Orz2群は、ツニカマイシン添加によって亢進したMIN6細胞の小胞体ストレスや、さらには小胞体ストレス亢進を原因とするMIN6細胞の細胞死に起因して低下するインスリン分泌が、γ−オリザノールによって抑制されていることが確認できる。この試験結果から、γ−オリザノールは、ツニカマイシン添加によって亢進した小胞体ストレスを原因とする膵β細胞のインスリン分泌量の低下、もしくは、小胞体ストレス亢進を原因とした膵β細胞の細胞死に起因する膵β細胞のインスリン分泌の低下を抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、膵β細胞において小胞体ストレスの亢進を原因として生じるインスリン分泌量の低下を抑制するための医薬として効果があることが認められる。また、γ−オリザノールが、膵β細胞の小胞体ストレス亢進によって生じる膵β細胞の細胞死に起因するインスリン分泌量の低下を抑制するための医薬として効果があることが認められる。(試験5)マウスのP/I比を調べることで、γ−オリザノールの小胞体の機能障害に対する改善効果(小胞体ストレス抑制効果)を試験した。マウス(8週齢雄,C57BL/6J,日本チャールス・リバー株式会社)に10週間、高脂肪食(Western diet (Research Diet, New Brunswick, NJ)、1日11kcal)を給餌したVeh群と、高脂肪食(同)に加えてγ−オリザノール(和光純薬,大阪、1日20、80、320μg/g体重)をゾンデを用いて連日経口投与したOrz群(20、80、320)とによるプロインスリン及びインスリンの分泌量を調べた。なお、γ-オリザノールは、0.5w/v%メチルセルロース溶液400cP(和光純薬,大阪)を用いて2〜32mg/mlの濃度に懸濁している。4時間絶食後、採血して、抗凝固剤EDTAで処理し、タンパク分解阻害剤アプロチニンで処理して血漿を分離し、血漿中のプロインスリン量、インスリン量を測定した。プロインスリンは、レビス(登録商標)プロインスリン‐マウス/ラット(シバヤギ,群馬)、インスリンは、超高感度マウスインスリン測定キット(森永生化学研究所,神奈川)をそれぞれ用いて測定し、濃度比をとった。結果を表6及び図7に示す。表6中の値は、平均値(n=6)±標準偏差を示す。γ−オリザノールを投与していないVeh群は、γ−オリザノールを投与した他の群に比べて、最もP/I比が高い。これは、高脂肪食の摂取を原因として、プロインスリンからインスリンに加工される過程でプロインスリンが異常タンパク質として小胞体に蓄積し、小胞体ストレスが悪化して小胞体の機能障害が起きていることが想定される。しかし、γ−オリザノールを投与した群は、P/I比が低い。したがって、γ−オリザノールを経口投与することで、小胞体の機能障害が改善されている(小胞体ストレスが抑制されている)と想定される。この試験結果から、γ−オリザノールは、経口摂取しても、高脂肪食の摂取を原因とする小胞体の機能障害を抑制する効果、または、高脂肪食の摂取によって亢進した小胞体ストレスを抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、経口摂取により、高脂肪食に起因する小胞体の機能障害を抑制するための医薬、または、高脂肪食に起因する小胞体ストレスの亢進を抑制するための医薬として効果があることが認められる。(試験6)膵島内に占めるβ細胞とα細胞の分布、割合を調べることで、高脂肪食を給餌したマウスに対するγ−オリザノールの小胞体ストレス抑制、インスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制の各効果について試験した。マウス(8週齢雄,C57BL/6J,日本チャールス・リバー株式会社)を3群に分けて、10週間、次のAからCのとおり給餌した。A)chow群:通常食(CE-2(日本クレア,東京)、1日8kcal)B)HFD群:高脂肪食(Western diet(Research Diet,New Brunswick,NJ)、1日11kcal)C)HFD+Orz320群:高脂肪食(Bに同じ)に加え、Orz(γ−オリザノール(和光純薬,大阪)、1日320μg/g体重)をゾンデを用いて経口投与なお、γ-オリザノールは、0.5w/v%メチルセルロース溶液400cP(和光純薬,大阪)を用いて2〜32mg/mlの濃度に懸濁している。各群のマウスから採取した膵臓を4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋して連続切片を作成したのち、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、及び、抗インスリン抗体(DAKO:A0564,東京都)、抗グルカゴン抗体(DAKO:A0565,東京都)を用いて免疫染色を行い、顕微鏡(倍率200倍)で観察、撮影した。このときの顕微鏡写真を図8に示す。また、上記各群の膵島サイズの平均値を比較したグラフを図9に、上記各群の膵島に占めるα細胞の割合の平均値を比較したグラフを図10に、それぞれ示す。図9、10の結果は、各群100個以上の膵島の平均値をとったもので、WinROOF V7.0 software (三谷商事株式会社,福井県)を使って解析した。高脂肪食下や糖尿病の病態では、小胞体ストレスの亢進によって、膵島内のα細胞、β細胞、δ細胞、PP産生細胞などが増殖、肥大化して膵島が大きくなることが知られているが、HFD群はchow群に比べて膵島が大きくなっていることが確認できる。これに対して、HFD+Orz320群は、chow群と同程度の大きさであり、γ−オリザノールが膵島の肥大化(小胞体ストレスの亢進)を抑制していることが確認できる。また、HFD群は、形態的には大きくなっているものの、機能的には廃絶し、インスリンの産生能力は低下しているため、インスリン免疫染色に染まりにくくなっていることが確認できる。これに対して、HFD+Orz320群は、chow群と同じように、インスリン免疫染色に染まっており、γ−オリザノールが小胞体ストレスの亢進を抑制してインスリンの分泌を促進(インスリン分泌機能が回復)していることが確認できる。さらに、HFD群は、グルカゴン免疫染色に染まっていることからも分かるとおり、小胞体ストレスの亢進によって膵島細胞の機能が低下し、低血糖状態に陥り、グルカゴンの分泌が促進されていることが確認できる。これに対して、HFD+Orz320群は、chow群と同じように、グルカゴン免疫染色に染まっておらず、γ−オリザノールが小胞体ストレスの亢進を抑制して膵島細胞の機能を正常化させ、グルカゴンの分泌を抑制していることが確認できる。この試験結果から、γ−オリザノールは、膵島細胞における高脂肪食の摂取に起因して亢進した小胞体ストレスを抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、膵島細胞における高脂肪食の摂取に起因して亢進した小胞体ストレスを抑制するための医薬として効果があることが認められる。また、γ−オリザノールは、膵島細胞における高脂肪食の摂取に起因する小胞体ストレスの亢進を抑制してインスリンの分泌を促進(インスリン分泌機能が回復)する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、膵島細胞における高脂肪食の摂取に起因する小胞体ストレスの亢進を抑制して膵島細胞の新生または再生を促進するための医薬として効果があることが認められる。また、γ−オリザノールは、膵島細胞の小胞体ストレスの亢進を抑制して膵島細胞の機能を正常化させ、グルカゴンの分泌を抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、膵島細胞の小胞体ストレスの亢進を抑制して膵島細胞の機能を正常化させ、グルカゴンの分泌を抑制するための医薬として効果があることが認められる。2.インスリン分泌促進効果(試験1)γ−オリザノールによるインスリンの分泌促進効果について試験した。マウス(10週齢雄,C57BL/6J,日本チャールス・リバー株式会社)から採った膵島と、マウス膵β細胞由来の培養細胞株MIN6細胞(大阪大学;MTA11-155)を用いて、それぞれ培養液中にグルコースとγ−オリザノールを添加し、培養液中に分泌されたインスリンの量を調べた。グルコース(2.5mM)を加えたクレブス・リンガー・重炭酸緩衝液中で、膵島に無添加(Veh群)とγ−オリザノール添加(0.2μg/ml=Orz0.2群、2μg/ml=Orz2群)、MIN6細胞に無添加(Veh群)とγ−オリザノール添加(0.2μg/ml=Orz0.2群、2μg/ml=Orz2群、10μg/ml=Orz10群)の前処置を各群に対して1時間行った。その後、2.5mM、25mMのグルコースをそれぞれ加えたクレブス・リンガー・重炭酸緩衝液中で、膵島に無添加(Veh群)とγ−オリザノール添加(0.2μg/ml=Orz0.2群、2μg/ml=Orz2群)、MIN6細胞に無添加(Veh群)とγ−オリザノール添加(0.2μg/ml=Orz0.2群、2μg/ml=Orz2群、10μg/ml=Orz10群)の各処置をし、1時間で緩衝液中に分泌されるインスリン量を調べた。なお、γ-オリザノールは、ジメチルスルホキシド(DMSO)(ナカライテスク,京都)に溶かして添加した。インスリンは、超高感度マウスインスリン測定キット(森永生化学研究所,神奈川)を用いて測定した。膵島の結果を表7及び図11に示す。表7中の値は、平均値(n=9〜15)±標準偏差を示す。MIN6細胞の結果を表8及び図12に示す。表8中の値は、平均値(n=6)±標準偏差を示す。2.5mMグルコース下においては、膵島、MIN6細胞のいずれも、Veh群とOrz群との間に、インスリン分泌量の差は見られなかった。しかし、25mMグルコース下においては、次のような違いが見られた。膵島、MIN6細胞のいずれも、Orz群は、Veh群に比して、顕著にインスリン分泌量が増加している。したがって、膵島、MIN6細胞のいずれも、Orz群は、グルコースに応答して、インスリンの分泌が促進されていることが確認できる。この試験結果から、γ−オリザノールは、グルコースに応答して、インスリンの分泌を促進する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、膵島細胞、膵β細胞において、グルコースに応答してインスリンの分泌を促進するための医薬として効果があることが認められる。(試験2)γ−オリザノールによるインスリンの分泌促進効果について試験した。マウス(20週齢雄,C57BL/6J,日本チャールス・リバー株式会社)に、γ−オリザノールを経口投与し、その直後に、ブドウ糖負荷試験を行い、血糖値及びインスリン分泌量を調べた。ブドウ糖負荷試験は、18時間絶食後、γ−オリザノールをゾンデを用いて経口投与(320μg/g体重)したうえで、体重(kg)当たり2.0gのブドウ糖を腹腔内投与し、その後、2時間後までの血糖値、インスリン値を測定した。γ-オリザノールは、0.5w/v%メチルセルロース溶液400cP(和光純薬,大阪)を用いて2〜32mg/mlの濃度に懸濁している。血糖値の測定には、簡易血糖測定機(メディセーフミニ;テルモ,東京)を用いた。インスリン値の測定には、超高感度マウスインスリン測定キット(森永生化学研究所、神奈川)を用いた。血糖値の結果を表9及び図13に示す。表9中の値は、平均値(n=11〜14)±標準偏差を示す。インスリン値の結果を表10及び図14に示す。表10中の値は、平均値(n=11〜14)±標準偏差を示す。γ−オリザノールを経口投与したマウス(Oryzanol群)は、非投与マウス(Vehicle群)に比べて、血糖値の上昇が抑えられ、インスリンの分泌量が増加している。この試験結果から、γ−オリザノールは、経口投与によって、インスリンの分泌を促進する効果があることが確認できる。また、γ−オリザノールは、インスリンの分泌を促進する結果、血糖値の上昇を抑える効果があることが確認できる。したがって、γ−オリザノールが、経口投与によって、血糖値の上昇抑制及びインスリンの分泌促進のための医薬として効果があることが認められる。(試験3)γ−オリザノールが、中枢神経を介さずに、膵臓に直接作用してインスリンの分泌を促進するか否かについて試験した。迷走神経を切断したマウス(C57BL/6J,7週齢雄,日本チャールス・リバー株式会社)にγ-オリザノールを投与し、ブドウ糖負荷試験を行った。マウスをバルビタールで麻酔し開腹したのち、迷走神経を横隔膜下で切断して縫合した。上記施術から1週間後、マウスにγ−オリザノールを経口投与し、その直後に、ブドウ糖負荷試験を行い、血糖値及びインスリン分泌量を調べた。ブドウ糖負荷試験は、18時間絶食後、γ−オリザノールをゾンデを用いて経口投与(320μg/g体重)したうえで、体重(kg)当たり2.0gのブドウ糖を腹腔内投与し、その後、2時間後までの血糖値、インスリン値を測定した。γ-オリザノールは、0.5w/v%メチルセルロース溶液400cP(和光純薬,大阪)を用いて2〜32mg/mlの濃度に懸濁している。血糖値の測定には、簡易血糖測定機(メディセーフミニ;テルモ,東京)を用いた。インスリン値の測定には、超高感度マウスインスリン測定キット(森永生化学研究所、神奈川)を用いた。血糖値の結果を表11及び図15に示す。表11中の値は、平均値(n=8〜19)±標準偏差を示す。インスリン値の結果を表12及び図16に示す。表12中の値は、平均値(n=8〜19)±標準偏差を示す。γ−オリザノールの作用は、中枢神経を介して膵臓に作用する経路と、膵臓に直接作用する経路の2つが想定されていた。しかし、迷走神経を切断したγ−オリザノール投与マウス(切断群-Orz)でも、迷走神経を切断していないγ−オリザノール投与マウス(sham-Orz)と同様にインスリンの分泌が促進され、血糖値の上昇が抑えられている。この試験結果から、γ-オリザノールによる作用(本明細書における各試験の効果)は、中枢神経を介さずに膵臓に直接なされていることが確認できる。したがって、本発明における医薬は、膵臓に局所投与しても有効であることを認めることができる。(試験4)γ−オリザノールの有効投与量(摂取量)について試験した。マウス(22週齢雄,C57BL/6J,日本チャールス・リバー株式会社)に、γ−オリザノールを経口投与し、その直後に、ブドウ糖負荷試験を行い、血糖値を調べた。ブドウ糖負荷試験は、18時間絶食後、γ−オリザノールをゾンデを用いて経口投与(5μg/g体重)したうえで、体重(kg)当たり2.0gのブドウ糖を腹腔内投与し、その後、2時間後までの血糖値を測定した。γ-オリザノールは、0.5w/v%メチルセルロース溶液400cP(和光純薬,大阪)を用いて2〜32mg/mlの濃度に懸濁している。血糖値の測定には、簡易血糖測定機(メディセーフミニ;テルモ,東京)を用いた。血糖値の結果を表13及び図17に示す。表13中の値は、平均値(n=6)±標準偏差を示す。γ−オリザノールを経口投与したマウスは、血糖値において、非投与マウス(Vehicle)と差がないことが確認できる。この試験結果から、γ−オリザノールは、1日5μg/g体重の投与量では、血糖値を低下させる効果は認められないことが確認できる。したがって、γ−オリザノールは、本明細書における各試験において効果が確認できている1日当たり20μg/g体重以上の投与量が有効である。3.グルカゴン分泌抑制効果γ−オリザノールによるグルカゴン分泌抑制効果について試験した。(試験1)マウス(10週齢雄,C57BL/6J,日本チャールス・リバー株式会社)から採った膵島の培養液中にグルコースとγ−オリザノールを添加し、培養液中に分泌されたグルカゴン量を調べた。グルコース(2.5mM)を加えたクレブス・リンガー・重炭酸緩衝液中で、膵島に無添加(Veh群)とγ−オリザノール添加(0.2μg/ml=Orz0.2群、2μg/ml=Orz2群)の前処置を各群に対して1時間行った。その後、2.5mM、25mMのグルコースをそれぞれ加えたクレブス・リンガー・重炭酸緩衝液中で、膵島に無添加(Veh群)とγ−オリザノール添加(0.2μg/ml=Orz0.2群、2μg/ml=Orz2群)の各処置をし、1時間で緩衝液中に分泌されるグルカゴン量を調べた。γ-オリザノールは、ジメチルスルホキシド(DMSO)(ナカライテスク,京都)に溶かして添加した。グルカゴンは、ラットグルカゴンELISAキットワコー(和光純薬,大阪)を用いて測定した。結果を表14及び図18に示す。表14中の値は、平均値(n=9〜15)±標準偏差を示す。2.5mMグルコース下においては、Veh群とOrz群との間に、グルカゴン分泌量の差は見られなかった。しかし、25mMグルコース下においては、Orz群は、Veh群に比して、顕著にグルカゴン分泌量が少ない。高脂肪食下や糖尿病の病態では、膵α細胞からのグルカゴン分泌が抑えられない状態になることが知られている。しかし、この試験結果から、上記病態下にあっても、γ−オリザノールは、グルカゴンの分泌を抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、膵島細胞において、グルカゴンの分泌を抑制するための医薬として効果があることが認められる。(試験2)マウス(8週齢雄,C57BL/6J,日本チャールス・リバー株式会社)に10週間、高脂肪食(Western diet (Research Diet, New Brunswick, NJ)、1日11kcal)を給餌したVeh群と、高脂肪食(同)に加えてγ−オリザノール(和光純薬,大阪、1日20、80、320μg/g体重)をゾンデを用いて連日経口投与したOrz群(20、80、320)によるグルカゴン濃度を測定した。4時間絶食後、採血して、抗凝固剤EDTAとタンパク分解阻害剤アプロチニンで処理して血漿を分離し、血漿中のグルカゴン濃度を測定した。測定には、ラットグルカゴンELISAキットワコー(和光純薬,大阪)を用いた。結果を表15及び図19に示す。表15中の値は、平均値(n=8)±標準偏差を示す。γ−オリザノールを経口投与したマウス(Orz群)では、非投与マウス(Veh群)に比べて、血漿中のグルカゴン濃度が低い。高脂肪食下や糖尿病の病態では、膵α細胞からのグルカゴン分泌が抑えられない状態になることが知られている。しかし、この試験結果から、上記病態下にあっても、γ−オリザノールは、グルカゴンの分泌を抑制する効果があることが認められる。したがって、γ−オリザノールが、経口投与によって、グルカゴンの分泌を抑制するための医薬として効果があることが認められる。上記1乃至3の試験結果から、γ−オリザノールの優れた効果が確認できるが、このγ−オリザノールを、小胞体ストレス亢進抑制剤、小胞体ストレスが生じることによって発現するChop、ERdj4、スプライス型Xbp1(Xbp1s)のいずれか1以上の遺伝子に対する発現抑制剤、膵β細胞に対するアポトーシス抑制剤、膵β細胞の新生または再生を促進するための医薬、インスリン分泌促進剤、グルカゴン分泌抑制剤、血糖値上昇抑制剤、糖尿病治療薬の有効成分として利用することで、これらヒトまたは動物用の医薬において優れた効果が発揮される。なお、上記した各医薬は、医薬組成物であってもよい。医薬または医薬組成物の投与方法として、例えば、経口、経管及び経腸などの方法で投与することができ、これらの投与方法または治療目的に応じて、一般的な医薬製剤の形態として、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等を選択できる。製剤化にあたっては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の一般的に医薬組成物に用いられている種々の添加剤を使用できる。また、γ−オリザノールは、上記試験結果から明らかなとおり、経口投与によっても優れた効果を有することが認められるが、天然由来のものでは、米(米糠等)から得られる米油から容易に抽出または精製することができ、安全性と有効性が保障された天然食品由来であることから、これを食品または飲料に含有もしくは添加することができ、例えば、γ−オリザノールを含有するヒトまたは動物用の機能性食品(飲料を含む)や食品添加物(液状や粉状など、その性状は問わない)として利用できる。また、γ−オリザノールの有効投与量については、ブドウ糖負荷試験による血糖値の測定結果のみではあるが、γ−オリザノールを5μg/g体重の量を経口投与したマウスでは、血糖値を低下させる効果が認められず、他の各試験では1日20μg/g体重以上の投与量(添加量)で効果を確認できた。したがって、γ−オリザノールの有効投与量もしくは有効摂取量は、経口投与もしくは摂食の場合、患者(摂食対象者)であるヒトまたは動物の年齢等によっても異なるが、1日20μg/g体重以上が好ましい。γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物の膵β細胞において小胞体ストレスの亢進を抑制するための医薬。γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物の膵β細胞において小胞体ストレスが生じることによって発現するChop、ERdj4、スプライス型Xbp1(Xbp1s)のいずれか1以上の遺伝子の発現を抑制するための医薬。γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物の小胞体ストレス亢進を原因とする膵β細胞の細胞死を抑制するためのアポトーシス抑制剤。γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物の膵β細胞の新生または再生を促進するための医薬。ヒトまたは動物の膵臓に局所投与することによる、請求項1乃至4のいずれかに記載の医薬。ヒトまたは動物に1日20μg/g体重以上を経口投与することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の医薬。γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物用のインスリン分泌促進剤。ヒトまたは動物の膵臓に局所投与することによる、請求項7に記載のインスリン分泌促進剤。ヒトまたは動物に1日20μg/g体重以上を経口投与することを特徴とする、請求項7または8に記載のインスリン分泌促進剤。γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物用のグルカゴン分泌抑制剤。ヒトまたは動物の膵臓に局所投与することによる、請求項10に記載のグルカゴン分泌抑制剤。ヒトまたは動物に1日20μg/g体重以上を経口投与することを特徴とする、請求項10または11に記載のグルカゴン分泌抑制剤。γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物用の血糖値上昇抑制剤。γ−オリザノールを有効成分とする、ヒトまたは動物用の糖尿病治療薬。ヒトまたは動物の膵臓に局所投与することによる、請求項13または14に記載の医薬。ヒトまたは動物に1日20μg/g体重以上を経口投与することを特徴とする、請求項13乃至15のいずれかに記載の医薬。γ−オリザノールを含有する、ヒトまたは動物用の機能性食品。γ−オリザノールを含有する、ヒトまたは動物用の食品添加物。γ−オリザノールをヒトまたは動物に投与することにより糖尿病を治療する方法。 【課題】本発明は、中枢神経を介さずに膵臓に直接作用して、小胞体ストレスの亢進またはグルカゴンの分泌を抑制し、インスリンの分泌を促進することができる、γ−オリザノールを有効成分とする医薬または機能性食品、食品添加物を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、1日あたり20μg/g体重以上を経口投与することで、膵臓における小胞体ストレス亢進を原因とするインスリン分泌の低下を抑制させ、膵臓からのインスリン分泌を促進させ、膵臓からのグルカゴン分泌を抑制させるように作用する、γ−オリザノールを有効成分とする小胞体ストレス亢進抑制剤、インスリン分泌促進剤、並びにグルカゴン分泌抑制剤である。【選択図】図1