生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_Cepathiolanesを有効成分とする脂質代謝改善用組成物、及び食品添加剤
出願番号:2013007111
年次:2014
IPC分類:A61K 36/00,A61P 3/04,A61P 3/06,A61P 1/16,A61P 43/00,A61K 31/381,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

加藤 雅博 正村 典也 鴨井 享宏 正野 仁慈 JP 2014136699 公開特許公報(A) 20140728 2013007111 20130118 Cepathiolanesを有効成分とする脂質代謝改善用組成物、及び食品添加剤 ハウス食品グループ本社株式会社 000111487 加藤 雅博 正村 典也 鴨井 享宏 正野 仁慈 A61K 36/00 20060101AFI20140701BHJP A61P 3/04 20060101ALI20140701BHJP A61P 3/06 20060101ALI20140701BHJP A61P 1/16 20060101ALI20140701BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140701BHJP A61K 31/381 20060101ALI20140701BHJP A23L 1/30 20060101ALI20140701BHJP JPA61K35/78 XA61P3/04A61P3/06A61P1/16A61P43/00 111A61K31/381A23L1/30 Z 5 OL 16 4B018 4C086 4C088 4B018MD08 4B018ME04 4B018ME14 4C086AA01 4C086AA02 4C086BB02 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA70 4C086ZA75 4C086ZC01 4C086ZC33 4C088AB87 4C088AC13 4C088BA09 4C088CA05 4C088CA14 4C088NA14 4C088ZA70 4C088ZA75 4C088ZC01 4C088ZC33本発明は、脂肪肝等の肝臓への脂肪蓄積に起因する疾患を予防、治療、及び/又は改善するのに有効な肝臓への脂肪蓄積抑制医薬組成物及び食品添加剤に関する。脂肪肝とは、食べ過ぎや飲みすぎによって肝臓に中性脂肪等が蓄積されることによって生じる症状である。脂肪肝を放置すると肝硬変や肝臓がんになりかねないばかりか、糖尿病の発症リスクの上昇、動脈硬化の促進といった危険性もある。これまでに、肝臓への脂肪蓄積を抑制する効果を有する物質がいくつか見出されており、このような物質として例えば、ブルーベリー葉の加工処理物や、海藻発酵食品、大豆タンパクが挙げられる(特許文献1、2、非特許文献5)。その他にもお茶、Fish oil、不飽和脂肪酸などにも肝臓への脂肪蓄積抑制効果があることが論文で報告されている。また、タマネギ、あるいはタマネギエキスに脂肪肝抑制作用、体脂肪蓄積抑制作用があることも示されている(特許文献4、5)。しかしタマネギ中のどの成分がその作用に寄与してるのかについては、特定されていなかった。タマネギは古くから世界中で広く食されている野菜の一つであり、人に対して有効な生理作用を示すことに関しては多くの報告がある(非特許文献1)。さらに、2002年に催涙成分生成酵素(Lachrymatory Factor Synthase、以下、LFSという)が発見され、タマネギの催涙成分(Lachrymatory Factor、以下、LFという)であるpropanthial S-oxideが、前駆物質であるS-1-プロペニル-システインスルフォキシド(以下、PRENCSOという)に酵素アリイナーゼが作用して1-プロペニルスルフェン酸(E-1-propenylsulfenic acid)となり、1-プロペニルスルフェン酸がLFSにより異性化されて生じる機構が明らかとなった。このため、LFSの発現を抑制できれば、タマネギ中の有用成分の量が増加し、有用な生理作用の効果も強くなるのではないかと期待されていた(非特許文献2)。RNAi技術を用いて作出したLFS抑制タマネギについての成分分析の結果から、LFS抑制タマネギでは、通常のタマネギに比べてチオスルフィネート量が増加していることや、Zwiebelene isomerと呼ばれる成分が増加していることを確認していた(非特許文献3)。しかし、増加する当該化合物にどんな有用性があるのかについては、含硫化合物の反応性が高いこともあって明らかにされていなかった。非特許文献4では、LFS抑制タマネギで増加する成分の平面構造が、式1であることを明らかとしていた。またその化合物がシクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)を阻害する活性、及びα-グルコシダーゼを阻害する活性を有していることを明らかとしていた。しかし、式1の成分(以下、Cepathiolanesという)の脂肪蓄積抑制作用については検討されていなかった。また、式1で示される化合物のうちの1つの光学異性体については、ネギ香を有するタマネギ成分として報告されている(特許文献3)。しかし健康機能性については、一切ふれられていなかった。特開2008−189631号公報特開2003−000201号公報特開2010−143866号公報特開2009−089703号公報特開2007−326800号公報Griffiths G et al.; Onions-A Global Benefitto Health. Phytother. Res., 16, 603-615 (2002)Imai S et al.; An onion enzyme that makes theeyes water. Nature, 419, 685 (2002)Eady C. C. et al.; Silencing OnionLachrymatory Factor Synthase Causes a Significant Change in the SulfurSecondary Metabolite Profile. Plant Physiology, 147, 2096-2106 (2008)Aoyagi M et al.; Structure and Bioactivity ofThiosulfinates Resulting from Suppression of Lachrymatory Factor Synthase in Onion.J. Agric. Food Chem, 59, 10893–10900, (2011)Ascencio C et al.; Soy Protein Affects SerumInsulin and Hepatic SREBP-1 mRNA and Reduces Fatty Liver in Rats. J. Nutr, 134,522–529, (2004) 本発明は、肝臓への脂肪の蓄積を抑制し脂肪肝の発症を抑制することが可能な新規手段を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、LFS抑制タマネギで増加する、又はLFS非存在下で基質PRENCSOを酵素アリイナーゼで分解した際に得られる平面構造が式1の成分、すなわちCepathiolanesが肝臓への脂肪蓄積を抑制する効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の発明を包含する。[1] Cepathiolanesを含有することを特徴とする、肝臓への脂肪蓄積抑制医薬組成物。[2] Cepathiolanesを含有することを特徴とする、肝臓中のトリグリセライド合成に関わる遺伝子の発現抑制剤。[3] Cepathiolanesを含有することを特徴とする、肝臓への脂肪蓄積抑制作用を有する食品添加剤。[4] [3]の食品添加剤を含む、飲食品。[5] 飲食品組成物の材料にCepathiolanesを配合することを含む、肝臓への脂肪蓄積抑制作用を有する飲食品組成物の製造方法。 本発明によれば、肝臓への脂肪蓄積を抑制することが可能な新規医薬組成物等が提供される。本発明の医薬組成物等を摂取することにより、肥満、高脂血症または耐糖能異常などの肝臓への脂肪の蓄積に起因する疾患を予防、治療、及び/又は改善することができる。図1は被験マウス各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群)の体重の推移を示した図である。(実施例2)図2は被験マウス各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群)の摂餌量の推移を示した図である。(実施例2)図3は被験マウス各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群)の摂水量の推移を示した図である。(実施例2)図4は被験マウス各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群)の血漿中のLDL-コレステロール濃度を示した図である。(実施例2)図5は被験マウス各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群)の血漿中のHDL -コレステロール濃度を示した図である。(実施例2)図6は被験マウス各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群)の血漿中の総トリグリセライド濃度を示した図である。(実施例2)図7は被験マウス各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群)の肝臓中の総コレステロール濃度を示した図である。(実施例2)図8は被験マウス各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群)の肝臓中の総トリグリセライド濃度を示した図である。(実施例3)図9はトリグリセライド合成に関わる各遺伝子の発現量を示した図である。(実施例3)図10は被験ラット各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群)の体重の推移を示した図である。(実施例4)図11は被験ラット各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群)の摂餌量の推移を示した図である。(実施例4)図12は被験ラット各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群)の摂水量の推移を示した図である。(実施例4)図13は被験ラット各群(コントロール群、Cepathiolanes投与群)の肝臓中の総トリグリセライド濃度を示した図である。(実施例4) 1.式1で記す成分の調整式1で表される化合物は、式2で表されるPRENCSOをアリイナーゼにより処理して分解することにより得られる。タマネギを粉砕することによりこの分解反応は進行するが、通常のタマネギ粉砕物中にはLFSが含まれるため、PRENCSOのアリイナーゼによる分解物はLFSによるLF(催涙成分)の合成に用いられて速やかに消費され、蓄積され難い。しかし次の2種類の方法で、式1で表される化合物を調製することができる。具体的には、第一の製造方法は、LFSの活性が低減された低LFSタマネギを粉砕する方法。第二の製造方法は、LFS非存在下で、PRENCSOをアリイナーゼにより分解する方法である。上記第一の方法について記す。低LFSタマネギは通常のタマネギと比較してLFSの活性が低減したタマネギであり、遺伝子組み換えや突然変異処理により得ることができる。好ましい低LFSタマネギは、親株(通常のタマネギ)のLFS活性の20分の1以下、好ましくは40分の1以下、より好ましくは160分の1以下、特に好ましくは400分の1以下のLFS活性を有する。次に、上記第二の製造方法について詳述する。原料として用いられるS-1-プロペニル-システインスルフォキシド(PRENCSO)は、天然由来の場合、式2で表される構造を有する。ただし当該天然型とは異なるPRENCSOの立体異性体(例えばスルフォキシドの立体配置が異なる異性体)もまた原料PRENCSOとして利用可能である。原料として用いるPRENCSOは合成されたものであってもよいし、タマネギ等に由来するものであってもよい。更に、PRENCSOを含む組成物を、PRENCSO原料として使用することもできる。例えば、タマネギを加熱処理して酵素を失活させ、次いで粉砕して調製されたジュースやペースト(加熱タマネギジュース、加熱タマネギペースト)はPRENCSOを含む組成物であり、PRENCSO原料としてアリイナーゼ処理に供することができる。アリイナーゼ(E.C.4.4.1.4, S-alk(en)yl-L-cysteine sulfoxidelyase)はアルキルシステインスルフォキシドをデヒドロアラニンとスルフェン酸に分解する酵素であり、アリインを分解する事からその名がつけられた。現在ではC-Sリアーゼとも呼ばれている(出典:香辛料成分の食品機能 岩井和夫、中谷延二 編集、(株)光生館 P174-175 (1989))。上記第二の製造方法に用いることができるアリイナーゼの起源は特に限定されず、タマネギ、ニンニク、ネギ、ニラ、ラッキョなどのネギ属の他、アブラナ科のブロッコリーやカリフラワー、マメ科の灌木Albizzia lophantha (出典は上記と同じ) 等に由来するものを使用することができる。PRENCSOをアリイナーゼで処理する条件は特に限定されない。しかし、アリイナーゼの特性は由来によって異なるため、反応条件を使用する個々のアリイナーゼの特性に合わせるとPRENCSOの分解を効率化できる。例えば、アリイナーゼがニンニク由来の場合は、至適pHの範囲は広いのでpHは5〜8の範囲でよく、温度は37℃が最適である。一方、タマネギ由来のアリイナーゼを使う場合は、pHを7.5〜8.6にすると酵素活性が最適化され、Welsh onionの葉由来のアリイナーゼを用いる場合は、pHを7.0にすると最適化される(出典:香辛料成分の食品機能 岩井和夫、中谷延二 編集、(株)光生館 P174-175 (1989))。なお、アリイナーゼは、ピリドキサールリン酸を補酵素とするため、実施例1の様に、ピリドキサールリン酸を添加したバッファーを使う事も、アリイナーゼの活性を最適化するのに役立つ。CepathiolanesはPRENCSOをアリイナーゼで処理したのち短時間で生成し、その後は経時的に分解してしまうことから、反応液後は速やかに、好ましくは2時間以内に、当該化合物を抽出することが好ましい。PRENCSOをアリイナーゼで分解することにより得られた生成物は、必要に応じて、ろ過または遠心分離などの操作により固形物を除去する。次の工程で行われる操作に応じては、抽出物をそのまま用いるか、または溶媒を留去して一部濃縮もしくは乾燥して用いてもよい。また得られた抽出物は、濃縮もしくは乾燥後、さらに適正な溶媒、例えば、非溶解性溶媒で洗浄精製して用いても、またこれを更に適当な溶媒に溶解若しくは懸濁して用いることもできる。さらに本発明においては、例えば、得られた溶媒抽出液を、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段に供して、タマネギ由来成分の乾燥抽出物として使用することもできる。2.用途本発明による有効成分Cepathiolanesは、後述の実施例で示すように、肝臓コレステロール、トリグリセライド蓄積抑制作用を有している。具体的には、図7、8に示すように、Cepathiolanesを投与していないマウス/又はラット被験群に比して、当該処理物を投与したマウス/又はラット被験群は、肝臓トリグリセリド濃度が低下している。またその作用機序は、図9に示すように、肝臓でのトリグリセライド合成に関わる遺伝子であるLXRα、及びその下流の遺伝子群(例えばSREBP1c、FAS、DGAT2等)の発現を抑制することにより、肝中トリグリセライドの蓄積を抑制し、脂肪肝の発症を抑制するものと考えられる。従って、CepathiolanesおよびCepathiolanesを含むタマネギ由来成分は、LXRα、SREBP1cなど肝臓でのトリグリセリド合成に関わる遺伝子の発現を抑制することにより、それらの遺伝子が関わる疾患を治療、予防、または改善することが出来る。LXRαの発現抑制により治療、予防、または改善しうる疾患または症状としては脂質代謝異常(例えば、高脂血症、動脈硬化症、および脂肪肝)、特に、高脂血症(例えば、高コレステロール血症、低HDL-コレステロール血症、高中性脂肪血症);肥満症;および体重増加が挙げられる。本発明の肝臓への脂肪蓄積抑制剤、脂肪肝改善剤は、上記Cepathiolanesを単独で、固体または液体状で利用することもできるが、これに薬学上許容される担体または添加剤を配合して、固体又は液体状の医薬組成物として調製することもできる。本発明の医薬組成物は、その形態に特に制限はないが、経口に適した形態であることが好ましい。例えば、経口投与用固体組成物(固形医薬製剤)としては、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤等の形態を、また経口投与用液状組成物(液状医薬製剤)としては、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などの形態をとることができる。これらの製剤には、有効成分に加えて、剤形に応じて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色料、矯味矯臭剤、pH調整剤等を適宜配合することができ、常法に従って製剤化することができる。また本発明の医薬組成物には、有効成分であるCepathiolanes、及び前記担体または添加剤に加えて、ビタミン等の他の機能性成分が含まれていてもよい。医薬組成物の有効成分の組成比は、使用目的等によって異なるので特定はできないが、後述の有効投与量を基準値として、適宜調整可能である。本発明による食品添加剤は、本発明による有効成分を有効量含有した食品添加剤である。ここで「有効成分を有効量含有した」とは、個々の飲食品において通常喫食される量を摂取した場合に、後述するような範囲で有効成分が摂取されるような含有量をいう。本発明による食品には本発明による有効成分をそのままあるいは上記のような組成物の形態で、食品に配合することができる。本発明において「食品」とは、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品を含む意味で用いられる。本発明による組成物および食品添加剤は、人類が飲食品として長年摂取してきたタマネギ由来成分または誘導物であることから、毒性も低く、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、等)に対し安全に用いられる。本発明による有効成分の投与量または摂取量は、受容者、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、本発明による有効成分を経口摂取する場合、基質PRENCSO換算で、成人1人当たり0.3〜4mg/kg体重で摂取することが出来る。実施例1-1. 精製PRENCSO溶液の調製(1)加熱タマネギからPRENCSOの抽出 生タマネギ3玉(1Kg)の外皮をはがし、ラップをして電子レンジで600W、 12分間加熱した。加熱したタマネギをミキサーに入れ、等量の蒸留水を加えてから粗砕し、粗砕液を8000rpmで10分間遠心分離した。上清を回収し、陽イオン交換樹脂IR120B(Hタイプ)を加えて攪拌したのち、吸引濾過により、樹脂を回収した。回収した樹脂に蒸留水1Lを加え、これに濃アンモニア水を加えてpH8.5に調整した。吸引濾過により、上清を回収し、残った樹脂に再度pH8.5のアンモニア水を加えた。再度、吸引濾過により、上清を回収した。得られた溶液に1N塩酸を加えてpH7.0に中和した。エバポレーターを用いて溶液を濃縮乾固した。(2)PRENCSOの精製 残留物に蒸留水50mlを加えて溶解させた。得られた粗PRENCSO溶液を中圧逆相クロマトグラフィーによって精製した。必要に応じて、さらにHPLC(カラム:ODS,移動相:酸性水pH3.3,温度:35℃,UV:230nm)によって精製した。カラムから得られた溶出液をエバポレーターおよび凍結乾燥機を用いて乾固し、精製PRENCSO粉末(約100mg)を得た。上記(1)、(2)の操作を繰り返し、下記の試験に必要な量を作製し、20mg/ml又は40mg/mlの濃度になるように蒸留水に溶解し、使用時まで-20℃以下で保存した。実施例1-2. 精製アリイナーゼ溶液の調製(1)ニンニクを粉砕・酸沈 まず、ミキサーのジョッキを冷蔵庫に入れて冷やしておいた。また、低温遠心機にローターをセットし、温度を4℃にセットして冷却しておいた。ニンニク片(100g)に等量のバッファー A(後述)を加えて、ミキサーで粉砕した。氷上に置いたジョッキの口に二重にしたガーゼを輪ゴムでとめ。粉砕物をそのガーゼの上に流して、濾した。ろ液がある程度得られた後で、ガーゼ上の粉砕物をガーゼで包んで絞った。得られたろ液を4℃、12000rpmで10 分間遠心分離し、上清を回収した。回収した遠心上清を氷上に置いた状態で攪拌しつつ、pHをモニターしながら、酢酸を加えていき、pHを4.0に調整した。pHが4.0になったら、そのまま5分間静置した。沈殿の出てきたサンプルを4℃、12000rpmで10分間遠心分離し、遠心ペレットを回収した(バッファー Aを使用した)。 回収したペレットを50ml〜100mlにして(バッファー A)、そのまま、5℃で30分間静置した。サンプルを4℃、12000rpmで10分間遠心分離した。1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、回収した遠心上清のpHを6.5に調整した。これをアリイナーゼ粗抽出液とした。(2)ハイドロキシアパタイトカラム処理 上記アリイナーゼ粗抽出液(遠心上清)をバッファー Aで平衡化したハイドロキシアパタイトカラムにアプライした。ハイドロキシアパタイトカラムに黄色のバンドとなって吸着された。サンプルをアプライしたハイドロキシアパタイトカラムを300mlのバッファー Aで洗浄した。洗浄の終了したハイドロキシアパタイトカラムに300mlのバッファー C(後述)を流して、溶出させた。溶出液はフラクションコレクターを使って10 mlずつ分画し、黄色の溶出液が分画されているフラクションを集めた。(3)ConAカラムによるアリイナーゼの精製 集めたフラクション(20ml)の1/20倍volの20mM塩化カルシウム、塩化マグネシウム溶液を加えて、サンプル溶液のカルシウムイオン、マグネシウムイオン濃度を上げた。そうした上で、startingバッファー(ConA Sepharose 4Bのマニュアルに記載されている推奨バッファー)で平衡化したConAカラムにアプライした。サンプルをアプライした後のConAカラムを50mlのstartingバッファーで洗浄した。洗浄の終了したConAカラムに50mlのConA溶出バッファー(ConA Sepharose 4Bのマニュアルに記載されている推奨バッファー)を流して、溶出させた。黄色の溶出液を回収した。なお、上記バッファーA(pH7.0)(アリイナーゼ精製用50mMバッファーA)は次のように調製した。50mMリン酸水素2カリウム溶液(5.22gを600mlに溶解)と50mMリン酸二水素カリウム溶液(3.4gを500mlに溶解)を調製した。pHをモニターしながら、両者を混合して、pHを7.0に調整した。出来上がったバッファー9倍volに対して、グリセロールを1倍vol加えてよく混合した。出来上がったグリセロール入りバッファー 1Lに対して、5.3 mgのピリドキサールリン酸を添加して混合した。出来上がったバッファーは、10℃で保存した。また、バッファーC(pH7.0)(アリイナーゼ精製用500mMバッファーC)は、次のように調製した。500mMリン酸水素2カリウム溶液(43.6gを500mlに溶解)と500mMリン酸二水素カリウム溶液(34.0gを500mlに溶解)を調製した。pHをモニターしながら、両者を混合して、pHを7.0に調整した。出来上がったバッファー9倍volに対して、グリセロールを1倍vol加えてよく混合した。出来上がったグリセロール入りバッファー 1Lに対して、5.3mgのピリドキサールリン酸を添加して混合した。出来上がったバッファーは、10℃で保した。上記(1)、(2)、(3)の操作を繰り返し、下記の試験に必要な量を作製した。作製したアリイナーゼは500U/mlになるように適宜100mMリン酸カリウムバッファー pH6.5で希釈し、使用時まで-80℃以下で保存した。脂質代謝改善効果についてC57BL/6Nマウス(雌)を用いて評価を行なった。即ち、1群5〜7匹の5週齢C57BL/6NCrlCrlj雌(日本チャールズリバー社)を市販粉末飼料MF(オリエンタル酵母工業株式会社)、および水を自由摂取させ一週間飼育した。その後、コンピュータを用いた完全無作為抽出法により各群の平均体重が等しくなるようコントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群の3群に分け、飼料をMFから高脂肪・高コレステロール食へ切り替えた。コントロール群には蒸留水、Cepathiolanes投与群には、実施例1-1,1-2で作製した40mg/ml精製PRENCSOと500U/ml精製アリイナーゼを1:1の割合で混合し室温で一分間反応させた反応物、PRENCSO投与群には、実施例1-1で作製した40mg/ml精製PRENCSOと蒸留水を1:1の割合で混合したものを、それぞれ200 μL/20g(マウス体重)になるようにディスポーザブルシリンジ及び経口ゾンデを用いて強制経口投与した。また投与は午前9時から12時の間に行い、投与期間は42日間とした。ちなみに高脂肪・高コレステロール食は、粉末一般飼料:ラード:コレステロール:コール酸=78.7:20:1:0.3の割合で混合した。作製方法は、まず必要量の粉末飼料、コレステロール及びコール酸を秤量し、ケンミックスミキサー(株式会社愛工製作所)に移し、ケンミックスミキサーで充分撹拌しながら必要量のラードを少量ずつ加え、さらに充分混合した。調製は週1回の頻度で行い、調製後は容器に入れて室温保存した。試験期間中は、全例について一般状態及び生死を1日1回の観察、及び週1回の体重、摂餌量、摂水量の測定を行った(図1〜3)。また投与42日目の16:00から絶食を行い、翌日エーテル麻酔下で腹部大動脈から全採血を行った。採取した血液は、EDTA 2Kの入ったヌンクチューブに入れ4℃、1700×gで15分間遠心分離して血漿を採取した。全採血終了後、全例の肝臓を摘出した。採取した血漿、肝臓は各種測定に用いるまで−80℃で凍結保存した。血漿はLDL-コレステロール、HDL-コレステロール、総トリグリセライドを、肝臓は総コレステロール、総トリグリセライドをそれぞれ定量した。血漿中のLDL-コレステロール、HDL-コレステロール、総トリグリセライドは、二本のゲル濾過カラムを直列に繋いだHPLCにより粒子サイズに従って分離し、オンラインで酵素反応をさせることにより、濃度を定量するシステムを用いて定量した(Skylight Biotech, Inc., Akita, Japan)。肝臓中の総コレステロール、総トリグリセライドは、Folch法(Folch J et al., J Biol Chem226:497-509 (1957))に従って肝臓から総脂質を抽出した後、総コレステロールはコレステストCHO(積水メディカル社製)、総トリグリセライドはコレステストTG (積水メディカル社製)を用いて定量した。それぞれの結果を図4〜8に示す。尚、測定値は平均値±標準誤差で表し、統計解析は、Bartlett検定により分散に一様性が認められたので、Dunnett検定を用いた。有意水準は5%(*)及び1%(**)で表示した。試験期間中、コントロール群、Cepathiolanes投与群、PRENCSO投与群で、摂餌量、摂水量に差は確認されなかった(図2、3)。Cepathiolanes投与群では、肝臓中の総コレステロール、及びトリグリセライド濃度をコントロールと比較して有意に減少させた。しかしPRENCSO投与群ではこのような効果は確認されなかった(図7、8)。また体重、血漿中の総トリグリセライドに関しても、Cepathiolanes投与群では、有意な減少ではないもののコントロール群と比較して減少する傾向にあった(図1、6)。実施例2で肝臓への脂肪蓄積抑制効果のあったCepathiolanes群について、その作用機序解明を実施した。実施例2において、-80℃で凍結保存した肝臓組織の内、コントロール群、Cepathiolanes投与群の200mgをRNAlater®-ICE(Life Technologies Corporation製)に浸し-20℃で保存した。RNAlater®-ICEで保存した肝臓組織約50mgから、Isogen (ニッポンジーン社製)を用いて、添付のマニュアルに従ってRNAを採取した。採取したRNAはNanoDrop1000(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて濃度測定を行った後、ReverTra Ace® qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(TOYOBO製)を用いて添付のマニュアルに従い逆転写反応を行いcDNAを合成した。各遺伝子の定量は、下表のプライマーセット、及びTHUNDERBIRD® SYBR® qPCR Mix(TOYOBO製)を用いて、7900 HT Fast Real-Time PCR System(AppliedBiosystems)で行った。結果は、ハウスキーピング遺伝子の一つである36B4の発現量で補正し、コントロール群の発現量を100%として、各遺伝子の発現量を示した(図9)。尚、測定値は平均値±標準誤差で表し、統計解析は、F検定により分散に一様性が認められる場合にはStudent t検定を、分散に一様性が認められない場合にはMann-Whitney検定を用いた。有意水準は5%(*)及び1%(**)で表示した。表1はqRT-PCRに用いたプライマー配列である。統計解析の結果、LXRα、SREBP1c、FAS、GPAT、DGAT2の発現が有意に抑制されていた。またSCD1、DGAT1、PPARγ、CD36も有意な差ではないものの抑制傾向にあった。これらの遺伝子はいずれも肝臓でのトリグリセライド合成に関わる遺伝子であると報告されている。以上の結果より、Cepathiolanes摂取による脂質代謝改善作用は、肝臓でのトリグリセライド合成抑制によって引き起こされていることが示唆された。 Cepathiolanesが実施例2よりも低濃度で脂質代謝改善効果を示すか確認する目的で、SDラット(雌)を用いて評価を行なった。即ち、1群6匹の5週齢Slc:SDラット雌(日本エスエルシー株式会社)を市販粉末飼料MF(オリエンタル酵母工業株式会社)、および水を自由摂取させ8日間飼育した。その後、コンピュータを用いた完全無作為抽出法により各群の平均体重が等しくなるようCepathiolanes投与群とコントロール群の2群に分け、飼料をMFから実施例2に記した高脂肪・高コレステロール食へ切り替えた。Cepathiolanes投与群には、実施例1-1,1-2で作製した20mg/ml精製PRENCSOと500U/ml精製アリイナーゼを2:1の割合で混合し、室温で一分間反応させた。その後、氷につけて反応物を150μl/200g(ラット体重)になるようにディスポーザブルシリンジ及び経口ゾンデを用いて強制経口投与した。またコントロール群には蒸留水を150 μL/200g(ラット体重)になるようにディスポーザブルシリンジ及び経口ゾンデを用いて強制経口投与した。それぞれ投与は午前9時から12時の間に行い、投与期間は56日間とした。試験期間中は、全例について一般状態及び生死を1日1回の観察、及び週2回の体重測定と、週1回の摂餌量、摂水量の測定を行った。また投与55日目の16:00から絶食を行い、投与56日目の投与終了2時間後(55日目の投与から24時間後)にエーテル麻酔下でラット腹部大動脈より全採血した。全採血終了後、全例の肝臓を摘出して重量測定を行った。採取した肝臓は各種測定に用いるまで−80℃で凍結保存した。肝臓の総トリグリセライドを定量した。肝臓中の総トリグリセライドは、Folch法(Folch Jet al., J Biol Chem 226:497-509 (1957))に従って肝臓から総脂質を抽出した後、コレステストTG (積水メディカル社製)を用いて定量した。結果を図10〜13に示す。尚、測定値は平均値±標準誤差で表し、統計解析は、F検定により分散に一様性が認められる場合にはStudent t検定を、分散に一様性が認められない場合にはMann-Whitney検定を用いた。有意水準は5%(*)及び1%(**)で表示した。試験期間中、コントロール群、Cepathiolanes投与群で、摂餌量、摂水量に差は確認されなかった(図11、12)。Cepathiolanes投与群は、体重、及び肝臓中のトリグリセライド濃度がコントロールと比較して減少傾向にあった。(図10、13)。以上の結果と実施例2の結果から、Cepathiolanesはラット、マウスなどげっ歯類においては15mg/kg〜200mg/kgの範囲において肝臓中トリグリセライド低減効果を示すことが確認できた。この濃度を人との感受性を考慮し人での投与量に換算するとおおよそ0.3〜4mg/kgで効果を示すと推測された。 式1の成分(以下、Cepathiolanesという)を含有することを特徴とする、肝臓への脂肪蓄積抑制医薬組成物。 Cepathiolanesを含有することを特徴とする、肝臓中のトリグリセライド合成に関わる遺伝子の発現抑制剤。 Cepathiolanesを含有することを特徴とする、肝臓への脂肪蓄積抑制作用を有する食品添加剤。 請求項3に記載の食品添加剤を含む、飲食品。 飲食品組成物の材料にCepathiolanesを配合することを含む、肝臓への脂肪蓄積抑制作用を有する飲食品組成物の製造方法。 【課題】肝臓への脂肪蓄積を抑制することが可能な新規手段を提供すること。【解決手段】Cepathiolanesを含有することを特徴とする、肝臓への脂肪蓄積抑制医薬組成物【選択図】なし


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