タイトル: | 特許公報(B2)_環状オレフィン開環重合体、その水素化体および該水素化体組成物、ならびにトリシクロペンタジエン |
出願番号: | 2012547799 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C08G 61/08,C08L 65/00,C07C 13/64 |
多田羅 了嗣 木村 優 糸見 健 神谷 育代 海津 充孝 丸山 洋一郎 鈴木 義信 中村 和洋 柴田 拓 金山 泰三 菅原 哲徳 JP 5742853 特許公報(B2) 20150515 2012547799 20111130 環状オレフィン開環重合体、その水素化体および該水素化体組成物、ならびにトリシクロペンタジエン JSR株式会社 000004178 和気 操 100100251 和気 光 100174090 多田羅 了嗣 木村 優 糸見 健 神谷 育代 海津 充孝 丸山 洋一郎 鈴木 義信 中村 和洋 柴田 拓 金山 泰三 菅原 哲徳 JP 2010271894 20101206 JP 2010273812 20101208 JP 2011051172 20110309 20150701 C08G 61/08 20060101AFI20150611BHJP C08L 65/00 20060101ALI20150611BHJP C07C 13/64 20060101ALI20150611BHJP JPC08G61/08C08L65/00C07C13/64 C08G 61/00 C08L 65/00 C07C 13/64 CAplus/REGISTRY(STN) 特開平05−239192(JP,A) 特開平03−146516(JP,A) 特開昭63−092625(JP,A) 特開昭52−062192(JP,A) 特開2008−052119(JP,A) 特開2004−182968(JP,A) 10 JP2011077634 20111130 WO2012077546 20120614 27 20140703 阪野 誠司 本発明は、光学材料に有用な高屈折率・高abbe数を有する環状オレフィン開環重合体、その水素化体および該環状オレフィン開環重合水素化体組成物、ならびにトリシクロペンタジエンに関する。 環状オレフィン開環重合体、特に水素添加された環状オレフィン開環重合体(以下、環状オレフィン開環重合体、水素添加された環状オレフィン開環重合体を、共重合体を含めて、環状オレフィン開環重合体ともいう)は、光線透過率や耐熱性に優れた熱可塑性透明樹脂として着目されている。この重合体は、光学レンズや光ファイバー、光学フィルムなどの光学材料分野への用途が広がっている。また、これら光学レンズ等が組み込まれている携帯電話などのモバイル機器は、より小型化・高性能化する方向で開発が進められている。そのため、その構成デバイスには、より一層の小型化・軽量化・高機能化が求められている。そしてレンズ用樹脂にも、小さく、また薄くても機能できるように、より高い屈折率と高いabbe数をもつことが要求されている。 一方、光学レンズの薄肉化に伴い、薄くしても割れにくい、靭性の高い成形体が得られる透明樹脂が求められている。この樹脂の靭性を確保するためには、環状オレフィン開環重合体の分子量を一定量以上の高分子量にする必要がある。 しかし、環状オレフィン開環重合体は、高分子量化すると重合の過程で重合体の溶媒への溶解性が低下して析出してしまうので、従来の溶液重合・水素化法では製造できなくなってしまうという問題が生じていた。 既存の溶液重合プロセスにて、高屈折率・高abbe数を有し、かつレンズ用樹脂に必要な分子量を有する重合体を製造するためには、高い光学性能と高い溶解性を両立させる重合体設計を実現する必要がある。 環状オレフィン開環重合体の溶解性を高めるには、側鎖にエステル基などの官能基を導入することが有効であることが知られている(特許文献1)。一方で官能基の存在は高屈折率化の妨げとなる。そこで本発明者等は、官能基を持たない単量体と共重合させることで、溶解性と高屈折率化の両立を図れる重合体の予備検討を行なった。しかし、官能基を持たない単量体として代表的なトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)やテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(DMON)などでは、屈折率の改善効果が小さく、既存樹脂より劣る屈折率の値(nD<1.525)しか実現できなかった。 環状オレフィン開環重合体の高屈折率化と溶媒への溶解性を両立させる他の技術としては、官能基を導入した重合体とポリスチレンとをブレンドする技術がある(特許文献2)。この技術では、ポリスチレンのブレンド量が大きくなるのに比例して高屈折率化を図ることができるが、一方で、abbe数が低下してしまい、レンズの色収差が大きくなるという欠点があった。 このため、ポリスチレンをブレンドせず、環状オレフィン開環重合体の単体のみで、高abbe数を有し、かつ、高屈折率を示す環状オレフィン開環重合体の出現が求められていた。すなわち、トルエンなどの溶媒への溶解性、高屈折率、高abbe数を全て実現するためには、屈折率改善効果の高い新たな単量体の探索と、目標の諸特性を両立するために共重合させる単量体組成の開発が必要であった。 この背景のもと、本発明者等は、高屈折率・高abbe数を実現するために共重合させる単量体を探索した。その結果、ペンタシクロ[6.5.1.02,7.13,6.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン(トリシクロペンタジエン)等のシクロペンタジエンの3〜5量体を共重合することで、従来の単量体を凌駕する高屈折率化と高abbe数化を実現した。また官能基を有する単量体との適当な組成の共重合体とすることで、溶媒への溶解性も確保できることを見出した。 更に本発明者等は、ペンタシクロ[6.5.1.02,7.13,6.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン(トリシクロペンタジエン)等のシクロペンタジエンの3〜5量体中の幾何異性体の量比が、得られる重合体の屈折率へ影響を与えることを見出し、本発明の完成に至った。 上述したように、本発明者等は、シクロペンタジエンの多量体を環状オレフィンの構成単量体として重合し、その後、水素添加した重合体が、光学用途に非常に優れた特性を発揮することを見出した。しかしながら、シクロペンタジエンの多量体において、4量体以上では、重合時の反応率(重合収率)が十分でない場合があった。また、未反応の単量体が存在すると、成形時にアウトガス量が多く、欠陥などの原因となり光学材料や医療材料に用いることができなくなるという問題がある。 また、シクロペンタジエンの3量体以上の多量体においては、フルオレン型の多量体が多く含まれると、重合反応時に、架橋反応を起こす。このため、得られる重合体が高分子量化して、不溶化およびゲル発生等の不具合を引き起こすことがあるという問題がある。 シクロペンタジエンの3量体であるトリシクロペンタジエンの製造方法としては、たとえば、特許文献3などが知られている。しかし、この方法で得られるトリシクロペンタジエンは後述する式(6)で表される1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロ−1,4;5,8−ジメタノ−1H−フルオレンと、式(5)で表される3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−4,9;5,8−ジメタノ−1H−ベンゾ[f]インデンの異性体混合物であり、このうち式(6)で表される1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロ−1,4;5,8−ジメタノ−1H−フルオレンは、上述のように、重合反応時に架橋反応をおこすため、得られる重合体が高分子量化して溶剤への溶解性を低下させたり、ゲルを発生させたりするなどの問題を引き起こす。特開平1−240517号公報特開平1−158029号公報特開平2001−10983号公報 本発明は、屈折率およびabbe数が高く、溶媒への溶解性を有し、光学材料用途に有用な環状オレフィン開環共重合体、その水素化体および環状オレフィン開環重合水素化体組成物、ならびにトリシクロペンタジエンを提供することを課題とする。 本発明の環状オレフィン開環重合体は、下記式(1)で表される化合物(1)を含む環状オレフィン単量体類を重合させて得られる。 上記式(1)において、nは1、2、または3であり、 上記化合物(1)が、幾何異性体(2)としてn=1〜3のそれぞれの下記場合における化合物をそれぞれの幾何異性体中に55モル%以上含ことを特徴とする。 n=1のとき、下記式(2−1)で表される化合物であり、 n=2のとき、下記式(2−2)で表される化合物であり、 n=3のとき、下記式(2−3)で表される化合物である。但し、これらの化合物において、鏡像異性体が存在する場合には、それをも含む化合物である。 本発明の環状オレフィン開環重合体は、上記環状オレフィン単量体類が下記式(3)で表される化合物(3)を更に含むことが好ましい。 式(3)中、mは0〜3の整数であり、A1〜A4は、それぞれ独立に下記(i)〜(iv)のいずれかを表し、このうちの少なくとも1つは、(iii)を表す。(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)アルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミノ基およびチオール基よりなる群から選ばれた極性基、(iv)ハロゲン原子または前記極性基(iii)により置換されていてもよい、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基。 本発明の環状オレフィン開環重合体は、上記環状オレフィン単量体類が下記式(4)で表される化合物(4)を更に含むことが好ましい。 式(4)中、B1〜B4は、それぞれ独立に、下記(i)〜(iii)のいずれかを表すか、(iv)あるいは(v)を表す。(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)ハロゲン原子により置換されていてもよい、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基、(iv)B1とB2、またはB3とB4が、相互に結合してアルキリデン基を形成し、上記結合に関与しないB1〜B4は相互に独立に上記(i)〜(iii)より選ばれるものを表す、(v)B1とB3、B1とB4、B2とB3、またはB2とB4が、相互に結合して、それぞれが 結合する炭素原子とともに環状構造を形成し、上記結合に関与しないB1〜B4は相互に独立に上記(i)〜(iii)より選ばれるものを表す。 本発明の環状オレフィン開環重合水素化体は、上記いずれか記載の環状オレフィン開環重合体を水素化して得られることが好ましい。 また、本発明の環状オレフィン開環重合水素化体組成物は、環状オレフィン開環重合水素化体90〜99.99質量%および該水素化体に非相溶である配合剤が10〜0.01質量%含まれている。この配合剤成分は該水素化体中にミクロドメインとなって分散している。 本発明のトリシクロペンタジエンは、下記式(5)で表される。 該トリシクロペンタジエンは、以下の(a)、(b)および(c)で示される少なくとも1つの特性を有する。(a)下記式(6)で表される1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロ−1,4;5,8−ジメタノ−1H−フルオレンが1質量%以下である、(b)下記式(5)で表されるトリシクロペンタジエンは、下記式(2−1)で表される3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−4,9;5,8−ジメタノ−1H−ベンゾ[f]インデンのエンド体が、該エンド体と下記式(2−1a)で表される3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−4,9;5,8−ジメタノ−1H−ベンゾ[f]インデンのエキソ体との全体量に対して、50モル%以上含まれている、(c)下記式(5)および下記式(6)全体量に含まれる酸化物の含有量が100ppm以下である。 特に、上記(a)、(b)および(c)で示される特性を有することが好ましい。 本発明によれば、屈折率およびabbe数が高く、光学材料用途に有用な環状オレフィン開環重合体を提供することができる。また、上記(a)、(b)および(c)で示される少なくとも1つの特性を有するトリシクロペンタジエンは、環状オレフィン重合体を製造するための単量体として重合転化率に優れる。さらに、得られる重合体の屈折率およびabbe数が高く優れた光学材料となる。DCPとCPDとのディールス−アルダー反応図である。単量体実施例1で得られた化合物のガスクロマトグラフィーチャートである。 以下、本発明について具体的に説明する。 環状オレフィン開環重合体 本発明の環状オレフィン開環重合体は、環状オレフィン化合物を含む環状オレフィン単量体を、開環重合することにより製造される。 <環状オレフィン単量体> 本発明で用いる環状オレフィン単量体は、下記式(1)で表される少なくとも一種の化合物(1)(以下、「環状オレフィン化合物(1)」ともいう。)を含む混合物からなり、上記環状オレフィン化合物(1)が、その幾何異性体(2)としてn=1〜3のそれぞれの下記場合における化合物をそれぞれの幾何異性体中に55モル%以上含んでいることを特徴とする。n=1のとき下記式(2−1)で表される化合物n=2のとき下記式(2−2)で表される化合物n=3のとき下記式(2−3)で表される化合物但し、これらの化合物において、鏡像異性体が存在する場合には、それをも含む式であることを意味する。 式(1)において、nは1〜3の整数である。 本発明の環状オレフィン開環共重合体の製造方法において、環状オレフィン単量体中に含まれる環状オレフィン化合物(1)の量は、特に限定されない。好ましい環状オレフィン化合物(1)の含有量は、環状オレフィン単量体中に、10〜90モル%、好ましくは30〜80モル%である。環状オレフィン単量体中に環状オレフィン化合物(1)を10モル%以上含有すると、得られる開環共重合体の屈折率が高いものとなるため好ましい。また、環状オレフィン化合物(1)が90モル%以下の含有量であると、開環共重合体のトルエンなどの溶媒への溶解性が得られやすくなるため好ましい。 また、環状オレフィン化合物(1)中に含まれる幾何異性体(2)は55モル%以上であり、好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上である。幾何異性体(2)の割合が高い程、得られる環状オレフィン開環重合体の屈折率が向上する。 なお、環状オレフィン化合物(1)は、ペンタシクロ[6.5.1.02,7.13,6.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン(トリシクロペンタジエン、n=1)、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]イコサ−5,13−ジエン(テトラシクロペンタジエン、n=2)およびノナシクロ[10.9.1.13,10.15,8.114,20.02,11.04,9.013,21.015,19]ペンタコサ−6,16−ジエン(ペンタシクロペンタジエン、n=3)である。 環状オレフィン化合物(1)の中で、n=1であるトリシクロペンタジエンについて、更に説明する。 本発明のトリシクロペンタジエン(以下、TCPという)は、ジシクロペンタジエン(以下、DCPという)のディールス−アルダー反応型の熱付加反応を行なうことによって、またはDCPとシクロペンタジエン(以下、CPDという)のディールス−アルダー反応によって合成され、さらに蒸留精製により目的とする単量体が得られる。このTCPは、環状オレフィン開環重合体を製造するための単量体として使用できる。 TCPには、式(5)および式(6)で表される異性体(以下、式(5)で表されるTCPを6,6,5−TCP、式(6)で表されるTCPを6,5,6−TCPともいう)が存在し、さらにそれらの異性体にはエンド(以下、endoという)、エキソ(以下、exoという)と記される立体配置を有する異性体が存在する。上記式(2−1)で表される化合物は6,6,5−TCPのendo体であり、上記式(2−1a)で表される化合物は6,6,5−TCPのexo体である。なお、式(2−1)および式(2−1a)で表される化合物は鏡像体を含むものとする。 DCPとCPDとのディールス−アルダー反応を図1により説明する。DCPには立体異性としてendo−DCPと、このendo−DCPが反応時の熱で転移して生成するexo−DCPとが存在する。このため、endo−DCPに対して、CPDがendo付加してTCPが生成する場合(図1(α))と、exo付加してTCPが生成する場合(図1(β))との2通りがある。同様に、exo−DCPに対して、CPDがendo付加する場合(図1(γ))と、exo付加する場合(図1(δ))との2通りがある。合計4通りの付加体がTCPとして生成する。 上記の説明は、CPDが反応性の高いDCPのノルボルネン環側と反応する場合についての説明であるが、CPDがDCPのシクロペンテン環側と反応する場合も理論的には可能である。ノルボルネン環側の反応と比較して、反応性の低いシクロペンテン環側と反応する場合は6,5,6−TCPが生成する。そのため、TCPの異性体には、理論的に合計8通りの立体異性体が存在する。 しかしながら、下記に説明する条件での合成結果によれば、endo−DCPへのexo付加体(β)、exo−DCPへのexo付加体(δ)は殆ど生成しないことが判明した。このため、本願明細書において、6,6,5−TCPのendo体とは、endo−DCPへのendo付加体を、6,6,5−TCPのexo体とは、exo−DCPへのendo付加体を、それぞれ言うものとする。 本発明のTCPは、6,6,5−TCPは、以下の(a)、(b)および(c)で示される少なくとも1つの特性を有する。(a)上記式(6)で表される6,5,6−TCPが1質量%以下、好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。6,5,6−TCPが1質量%をこえると、この単量体を用いる重合時にゲル化が生じたり、得られる重合体の分子量分布が広くなったりする不具合が生じる。(b)上記式(2−1)で表される6,6,5−TCPのendo体が50モル%以上、好ましくは55モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。endo体が50モル%未満であると、得られる重合体の屈折率が低下する。また、重合体の分子量分布が広がる不具合も生じる。ここで、endo体が50モル%以上とは、endo/exo比において、50/50以上であることを表す。(c)上記式(5)および上記式(6)で表される単量体の合計量に含まれる酸化物の含有量が100ppm以下である。100ppmをこえると重合活性が著しく低下する。このため本発明のTCPは、酸化防止剤を10ppm〜500ppm程度加えて、窒素雰囲気下で保管することが好ましい。なお、酸化物は上記TCPの酸化物と考えられる。 本発明のTCPは、上記(a)、(b)および(c)で示される特性を全て有することが好ましい。このようなTCPは以下の方法で製造できる。 原料となるDCPおよび/またはCPDの純度は90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。DCPの不純物としては、主に、テトラヒドロメチルインデンのほか、C5からC9の鎖状または環状ジエン化合物とジシクロペンタジエンとの付加物が多く、これらの量が多くなり、原料DCPの純度が90質量%未満になると製造過程で重質の副生成物が多くなる。 また、原料となるDCP中のendo/exo比は80/20以上が好ましく、より好ましくは90/10以上、さらに好ましくは95/5以上である。endo/exo比が80/20未満であると、ディールス−アルダー反応後に生成するTCP中のendo/exo比が低下するため、蒸留後の6,6,5−TCP中のendo比も低下する。 ディールス−アルダー反応条件は、反応温度が好ましくは120℃〜250℃、より好ましくは130℃〜230℃、さらに好ましくは150℃〜210℃であり、反応時間が好ましくは0.1〜50時間、より好ましくは0.5〜10時間である。 上記反応条件内で、DCPの転化率は30%〜50%程度が好ましい。DCP転化率が50%をこえると、CPD4量体以上の重沸分が多く生成するために、TCPの選択率が低下し、また、蒸留中に重沸分が濃縮されると、析出して固化やラインの閉塞のおそれがある。DCP転化率が30%未満であると、TCPの収率が低下して、生産効率が落ちてしまう。 上記ディールス−アルダー反応工程により、例えばDCP(endo/exo=80/20〜95/5)が80〜70質量%、6,5,6−TCPが4〜6質量%、6,6,5−TCP(endo/exo=80/20〜95/5)が22〜34質量%、CPD4量体以上の重沸分が4〜10質量%程度の粗TCPが得られる。 上記粗TCPは蒸留精製工程で精製される。蒸留方法は特には問わないが、粗蒸留塔および精密蒸留塔を用いる2段階で蒸留精製することが好ましい。 粗蒸留塔では、未反応DCPを除去した後、好ましくはCPD4量体以上の重沸分を除去する。CPD4量体以上の重沸分を除去することで、精留中の蒸留釜温度を低下させて、反応を抑制することができる。 粗蒸留後は、例えばDCPが0〜5質量%、6,5,6−TCPが10〜20質量%、6,6,5−TCP(endo/exo=80/20〜95/5)が70〜90質量%、CPD4量体以上の重沸分が0〜5質量%程度の精密蒸留前TCPが得られる。 粗蒸留工程で回収されたDCPはディールス−アルダー反応工程の原料として再利用できる。 精密蒸留塔では、粗蒸留後のTCP含有物から式(6)で表される6,5,6−TCPを除去するために精密蒸留を行なう。式(6)で表される6,5,6−TCPと式(5)で表される6,6,5−TCPは沸点が非常に近く、相対揮発度が小さいため、1回の蒸留で分離するためには、高理論段数の蒸留塔で、高真空下で行なうのが好ましい。理論段数は好ましくは20段以上、より好ましくは25段以上である。塔頂の圧力は0.01kPa〜10kPa、好ましくは0.1kPa〜5kPaである。 精留時の蒸留釜温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは170℃以下である。釜温度が200℃をこえると、蒸留中にTCPの分解・合成反応が顕著に起こり、6,5,6−TCPやCPD4量体以上が生成してしまう。 回分蒸留では、6,6,5−TCP回収時に還流比を高めることで、[(わずかに沸点の低いendo)/(exo)]比の高い6,6,5−TCPを回収することができる。 上記精密蒸留工程により、6,5,6−TCPが1質量%以下、6,6,5−TCPのendo/exo比が50以上の6,6,5−TCPが得られる。 精製後の6,6,5−TCPは、酸化されやすく、酸化物量が100ppmをこえると重合活性が著しく低下する。このため、酸化防止剤を10ppm〜1000ppm程度加えて、窒素雰囲気下で、酸化物量が100ppm以下で保管することが好ましい。酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジブチルヒドロキシトルエン等を用いることができる。 精製後の6,6,5−TCPは、環状オレフィン重合体を製造するための単量体として使用できる。6,6,5−TCPは単独でも、あるいは共重合体の一成分としても使用できる。また、DCPを単量体として用いることができる。 本発明で用いる環状オレフィン単量体は、下記式(3)で表わされる少なくとも一種の環状オレフィン化合物(以下、「環状オレフィン化合物(3)」ともいう。)をさらに含むことが好ましい。環状オレフィン単量体が、環状オレフィン化合物(3)を4〜45モル%含むことにより、溶媒への溶解性を向上させることが可能である。 式(3)中、mは0〜3の整数であり、A1〜A4は、それぞれ独立に下記(i)〜(iv)のいずれかを表し、このうちの少なくとも1つは、(iii)を表す。(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)アルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミノ基およびチオール基よりなる群から選ばれた極性基、(iv)ハロゲン原子または上記極性基(iii)により置換されていてもよい、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基。 さらに本発明に用いる環状オレフィン単量体は、下記式(4)で表わされる少なくとも一種の環状オレフィン化合物(以下、「環状オレフィン化合物(4)」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。環状オレフィン単量体が、環状オレフィン化合物(4)を0〜50モル%含むことにより、得られる共重合体のガラス転移点を容易に調整することができる。 式(4)中、B1〜B4は、それぞれ独立に、下記(i)〜(iii)のいずれかを表すか、(iv)あるいは(v)を表す。(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)ハロゲン原子により置換されていてもよい、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基、(iv)B1とB2、またはB3とB4が、相互に結合してアルキリデン基を形成し、上記結合に関与しないB1〜B4は相互に独立に上記(i)〜(iii)より選ばれるものを表す、(v)B1とB3、B1とB4、B2とB3、またはB2とB4が、相互に結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環状構造を形成し、上記結合に関与しないB1〜B4は相互に独立に上記(i)〜(iii)より選ばれるものを表す。 上記環状オレフィン化合物(3)および環状オレフィン化合物(4)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。 上記環状オレフィン化合物(3)において、極性基としては、アルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミノ基およびチオール基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ、炭素原子数1〜10のアルコキシ基が好ましい。エステル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などのアリーロキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1〜10のものが好ましい。アミノ基としては第1級アミノ基が好ましく挙げられる。 上記環状オレフィン化合物(3)および(4)において、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基が挙げられる。脂環族炭化水素基としては、炭素原子数5〜10のものが好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基が挙げられる。この脂環族炭化水素基は、環内に二重結合を有さない。芳香族炭化水素基としては、炭素原子数6〜20のものが好ましく、たとえばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、インデニル基、フルオレニル基、アントラセニル基などが挙げられる。 環状オレフィン化合物(3)として、具体的には、以下の化合物が例示される。5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−トリフロオロメチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−トリフロオロメチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン。 本発明ではこのうち、環状オレフィン化合物(3)として、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンが好ましく用いられる。 本発明の環状オレフィン開環共重合体の製造方法では、環状オレフィン単量体中に含まれる環状オレフィン化合物(3)の量は、特に限定されるものではない。好ましくは、環状オレフィン単量体中の環状オレフィン化合物(3)の含有割合が、4〜45モル%である。環状オレフィン単量体中の環状オレフィン化合物(3)の含有割合が4モル%以上であると、得られる開環共重合体がトルエンなどの溶媒への溶解性を示しやすくなるため好ましく、また、45モル%以下であると、得られる開環共重合体の屈折率低下を抑制することができるため好ましい。 環状オレフィン化合物(4)として、具体的には、以下の化合物が例示される。ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、7,8,9−トリメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、7,8,9−トリクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン。このうち、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンなどが好ましく用いられる。 環状オレフィン単量体が、このような環状オレフィン化合物(4)を含有することにより、環状オレフィン単量体を開環共重合して得られる本発明の環状オレフィン重合体、およびその水素化物は、そのガラス転移温度(Tg)を容易に調節することができる。たとえば、成形体用途として望ましい110℃〜180℃の範囲の所望のTg温度とすることが可能となる。 本発明の環状オレフィン開環共重合体の製造方法において、環状オレフィン単量体が環状オレフィン化合物(4)を含有する場合には、環状オレフィン化合物(4)の含有量が多いほど、得られる開環共重合体のTgが低下する傾向を示すため、単量体中の化合物(1)、および化合物(4)の必要量とのバランスにより、開環共重合体のTgが所望の温度となる量を適宜選択することができ、これによりTgを調節することができる。 本発明に係る環状オレフィン単量体は、上述した環状オレフィン化合物(1)、(3)および(4)以外の共重合性単量体を含んでいてもよいが、その含有量は20モル%以下、好ましくは10モル%以下が望ましい。 <開環共重合> 本発明の環状オレフィン開環重合体は、環状オレフィン化合物を含む環状オレフィン単量体類を、開環共重合することにより製造される。 開環共重合工程には、環状オレフィン化合物の開環共重合に使用可能な触媒を制限なく用いることができる。好ましい触媒は、下記触媒成分(a)、(b)および(c)を用いる触媒である。(a)有機アルミニウム化合物、(b)ニトリル基含有化合物、ケトン、エーテル基含有化合物、アルコール、およびエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物、(c)タングステン化合物、モリブデン化合物、レニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物。 触媒成分(a)である有機アルミニウム化合物としては、下記式(7)で表されるものが好ましい。 式(7)において、Rは、直鎖アルキル基あるいは分枝アルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。 また、有機アルミニウム化合物(a)として、アルミニウムオキシ化合物を用いることもできる。 有機アルミニウム化合物(a)として、具体的には、例えば、(C2H5)3Al、(i−Bu)3Al、(C2H5)2AlCl、(C2H5)1.5AlCl1.5、(C2H5)AlCl2、メチルアルモキサンなどが挙げられる。 これらの有機アルミニウム化合物(a)は、一種単独でも、二種以上を組み合わせても使用することができる。 触媒成分(b)としては、ニトリル基含有化合物、ケトン化合物、エーテル基含有化合物、アルコール化合物およびエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を特に制限なく用いることができる。 ニトリル基含有化合物としては、たとえば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどが挙げられる。 ケトン化合物としては、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどが挙げられる。 エーテル基含有化合物としては、たとえば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。 アルコール化合物としては、たとえば、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等が挙げられる。 エステル化合物としては、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステル、酢酸フェニルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸ブチルエステル、安息香酸メチルエステル、安息香酸エチルエステル、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、2−メチル−2−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、2−メチル−2−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなどが挙げられる。 これらの触媒成分(b)は、一種単独でも、二種以上を組み合わせても使用することができる。 触媒成分(c)としては、タングステン化合物、モリブデン化合物、レニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を特に制限なく使用することができる。 触媒成分(c)として好適に用いられる化合物としては、Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN, J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている化合物、たとえば、WCl6、WOCl4、W(CO)6、MoCl5、MoCl5、MoO3、Mo(CO)6、ReCl5、Re2O7、ReOCl3、VCl4、VOCl3、V2O5、TiCl4などが挙げられる。これらは、一種単独でも、二種以上を組み合わせても使用することができる。 本発明の環状オレフィン開環共重合体の製造方法においては、開環共重合触媒として、上述した触媒成分(a)、(b)および(c)を併用することが好ましい。より好ましくは、触媒成分(a)および(b)を予め接触させてなる混合物(A)と、触媒成分(b)および(c)を予め接触させてなる混合物(B)とを用いることである。 触媒成分(a)および(b)を接触させて、混合物(A)を調製する操作は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、室温から100℃の範囲で実施することができる。混合比は特に限定されないが、触媒活性を向上させるためには、(b)/(a)のモル比で、0.01/1〜10/1の範囲が好ましい。混合時に使用する溶媒は、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒を用いることができる。この混合液は、作製後、直ちに重合に使用することができる。 また、触媒成分(b)および(c)を接触させて、混合物(B)を調製する操作も、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、室温から100℃の範囲で実施することができる。混合比は特に限定されないが、触媒活性を向上させるためには、(b)/(c)のモル比で、1/1〜100/1の範囲が好ましい。混合時に使用する溶媒も同じく、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒を用いることができる。この混合液についても、作製後、直ちに重合に使用することができるが、添加する触媒成分(b)の種類によって経時的に変質する場合があるため、作製後1時間以内に使用することが望ましく、更に30分以内に使用することがより望ましい。 重合系に添加する混合物(A)((a)+(b)成分)と、混合物(B)((b)+(c)成分)の使用割合は、特に限定はないが、触媒活性を向上させるためには、(a)/(c)の金属原子(モル)比が、0.5/1〜50/1を満たす範囲であるのが好ましく、更に1.5/1〜30/1を満たす範囲がより好ましい。 環状オレフィン単量体に対する触媒成分(c)の使用量は、単量体全量とのモル比、「単量体全量/触媒成分(c)」が、500/1より大きい範囲が好ましく、更に1,000/1より大となる範囲がより好ましい。この比率が小さく、触媒量が多い範囲だと、得られる共重合体中に残留する触媒量が多くなってしまい、重合体の色相、劣化性に大きな影響をおよぼす場合がある。 重合溶媒としては、環状オレフィン単量体と、触媒成分(a)〜(c)とを溶解あるいは分散するものを用いることができる。重合溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素、クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチルなどの飽和カルボン酸エステル類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類を挙げることができる。これらの重合溶媒は単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。 本発明の環状オレフィン開環共重合体の製造方法においては、得られる環状オレフィン共重合体が、用途に応じて所望の分子量となるよう、適宜開環共重合反応条件を調整することができる。また、開環共重合反応において、分子量調節剤を用いることもできる。 好適に用いることのできる分子量調節剤の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンなどを挙げることができる。これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。これらの化合物は、単独であるいは二種以上を組み合わせて分子量調節剤として用いることができる。 分子量調節剤の使用量としては、特に限定されるものではないが、開環共重合反応に供される環状オレフィン単量体1モルに対して、好ましくは0.005〜0.6モル、より好ましくは0.02〜0.5モルの範囲であるのが望ましい。 開環共重合反応を行なう際の反応時間は特に限定されないが、生産性を向上させるためには、0.1〜10時間、好ましくは0.1〜5時間、より好ましくは0.1〜3時間であるのが望ましい。また、反応温度は50〜180℃、好ましくは70〜160℃程度の範囲であることが望ましい。 <環状オレフィン開環重合水素化体> 上述のように、環状オレフィン単量体を開環重合しただけの環状オレフィン開環重合体は、そのままで用いることもできるが、分子内にオレフィン性不飽和結合を有している。このため、用途によっては耐熱性が充分でないことから、さらに水素化(水素添加反応)を行なって、環状オレフィン開環重合水素化体とすることが好ましい。 本発明における水素化の工程には、公知の方法を適用できる。例えば、特開昭63−218726号公報、特開平1−132626号公報、特開平1−240517号公報、特開平2−10221号公報、特開2005−162617公報、特開2005−162618公報、特開2005−213370公報、特開2007−1967公報、特開2007−106932公報などに記載された触媒や溶媒および温度条件などを適用することで、水素化の工程を実施できる。 環状オレフィン開環重合体のオレフィン性不飽和結合の水素添加率としては、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上であることが望ましい。なお、本発明における水素化とは、分子内のオレフィン性不飽和結合に対するものであり、環状オレフィン開環重合体が芳香族基を有する場合、係る芳香族基は屈折率など光学的な特性や耐熱性において有利に作用することもあるので、必ずしも水素化される必要はない。 上述のようにして、環状オレフィン単量体を開環重合し、必要に応じて水素化して得られた環状オレフィン開環重合体および環状オレフィン開環重合水素化体は、必要に応じて公知の方法で、精製、脱触媒、脱溶媒などの処理をして用いてもよい。 <環状オレフィン開環重合体および水素化体の物性> 本発明の環状オレフィン開環重合体および水素化体の分子量は、用途などに応じて適宜調整して製造することができ、特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、20,000〜150,000であることが好ましい。分子量が20,000より小である場合には、成形品の強度が低下することがある。一方、分子量が150,000をこえる場合には、溶液粘度や溶融粘度が高くなりすぎて、本発明の環状オレフィン共重合体および水素化体の生産性や成形性、加工性が悪化することがある。 また、本発明に係る環状オレフィン重合体および水素化体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されるものではない。好ましくは、通常10以下、好ましくは7以下、さらに好ましくは4以下である。分子量分布が広く、低分子量成分が多く混在すると成形品の強度が低下することがある。 本発明の環状オレフィン開環重合水素化体は、特定の幾何異性体(2)を55モル%、好ましくは60モル%以上含有する環状オレフィン単量体(1)を用いることにより、高い屈折率と高いabbe数を示す。すなわち本発明の環状オレフィン開環重合水素化体は、好ましくは屈折率nDが1.531以上であるのが望ましい。本発明において屈折率nDとは、プリズムカプラを用いて、408nm、633nm、および830nmのレーザー光源により、フィルムサンプルの任意の5箇所の屈折率を測定し、得られた値をコーシーの式にて回帰計算して、25℃における589nmにおける屈折率を算出して求めた。 また、本発明の環状オレフィン開環重合水素化体は、好ましくはabbe数が53以上、より好ましくは55以上の範囲であるのが望ましい。本発明においてabbe数(ν)とは、ν=(nD−1)/(nF−nC)の式により算出された値を意味する。ここで言うnD、nF、nCは、上記回帰計算により求めた589.2nm、486.1nm、656.3nmにおける屈折率である。 さらに、本発明の環状オレフィン開環重合水素化体のTgは、125℃〜200℃であることが好ましく、130〜190℃であることが、より好ましい。Tgが125℃より低い値になると、光学レンズなどの最終商品の実用に耐えられなくなってしまう。一方、Tgが200℃をこえると、射出成形温度を300℃以上の高温にしなければならず、樹脂の劣化着色が著しくなる。 このような本発明の環状オレフィン開環重合水素化体は、上述した環状オレフィン開環重合体の製造方法により好適に製造することができる。 <添加剤> 本発明の環状オレフィン開環重合体は、そのまま成形に用いてもよいが、耐熱劣化性や耐光性の改良のために公知の酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を添加して用いることができる。添加剤としては、例えば、樹脂への添加剤として公知のフェノール系化合物、チオール系化合物、スルフィド系化合物、ジスルフィド系化合物、リン系化合物などを用いることができ、使用する場合には、これらの少なくとも一種の化合物を、本発明の環状オレフィン開環重合体100質量部に対して0.01〜10質量部添加することで、耐熱劣化性や耐光性などの特性を向上させることができる。 また、本発明の環状オレフィン開環重合体には、目的とする成形体の特性等に応じて、その他の添加剤を添加して用いてもよい。たとえば、着色されたフィルムを得ることを目的として、染料、顔料等の着色剤を添加してもよく、得られるフィルムの平滑性を向上させることを特徴としてレベリング剤を添加してもよい。レベリング剤としては、たとえば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられる。 <環状オレフィン開環重合水素化体組成物> 成型体の強度や柔軟性を得る目的で、環状オレフィン開環重合水素化体に配合剤を添加してもよい。配合剤としては、ゴム質重合体が好ましい。 ゴム質重合体としては、例えば、芳香族ビニル系単量体と共役ジエン系単量体の共重合体、その水素添加物、および本発明の環状オレフィン開環重合水素化体と非相溶のノルボルネン系ゴム質重合体が挙げられる。これらのゴム質重合体は、環状オレフィン開環重合水素化体との分散性が良く、好ましい。 芳香族ビニル系単量体と共役ジエン系単量体の共重合体はブロック共重合体でもランダム共重合体でも良い。耐候性の点から芳香環以外のオレフィン性二重結合部分を水添しているものがより好ましい。具体的には、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・エチレンブチレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、およびこれらの水素添加物、スチレン・ブタジエン・ランダム共重合体などが挙げられる。 また、本発明の組成物を容器に成形した場合などには、内容物の量や状態が確認できる程度の透明性が必要である。そのためには、配合剤は、それを添加する環状オレフィン開環重合水素化体との屈折率の差が小さいことが好ましい。屈折率の差が大きいものを混合すると、多量に添加した場合に内容物の量などが見えなくなるほど不透明となりやすい。また、少なすぎるとスチーム滅菌処理での濁り防止が不十分になる。 本発明の組成物においては環状オレフィン開環重合水素化体90〜99.99質量%、好ましくは95〜99.98質量%、より好ましくは99〜99.95質量%、特に好ましくは99.5〜99.9質量%に配合剤10〜0.01質量%、好ましくは5〜0.02質量%、より好ましくは1〜0.05質量%、特に好ましくは0.5〜0.1質量%添加して、環状オレフィン開環重合水素化体中で分散させる。添加量が多すぎれば、樹脂の透明性、ガラス転移温度、耐熱性が低下する。添加量が少なすぎれば、配合剤を配合する効果が得られない。 添加する方法は配合剤が環状オレフィン開環重合水素化体中で十分にミクロドメインとなって分散する方法であれば、特に限定されない。例えば、ゴム質重合体を配合剤とする場合には、ミキサー、二軸混練機などで樹脂温を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させて凝固法、キャスト法、または直接乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。 ミクロドメインはゴム質重合体を配合剤とする場合には、ほぼ球形となり、粒子間での粒径のばらつきは小さい。通常、直径0.3μm 以下、好ましくは0.2μm以下である。この粒径であれば、ゴム質重合体を添加による環状オレフィン開環重合水素化体組成物の透明性の低下は小さく、問題とならない。他の配合剤の場合も、ミクロドメインはほぼ球形となることが好ましく、粒子間での粒径のばらつきがないことが好ましく、直径0.3μm以下、特に0.2μm以下となることが好ましい。なお、ミクロドメインが球形とならない場合でも、そのミクロドメインを閉じ込めることのできる最小の球の直径が0.3μm以下、特に0.2μm以下となることが好ましい。 <用途> 本発明に係る環状オレフィン開環重合体、特に水素化物である環状オレフィン開環重合水素化体は、たとえばレンズ状、フィルム状、シート状、などの所望の形状に公知の方法により成形して用いることができ、光学レンズなどの各種光学部品、プレフィルドシリンジなどの医療用容器等の用途に好適に用いることができる。 以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、重合反応、触媒調製、水素化反応などの各工程は、窒素雰囲気下で実施した。 また以下の実施例および比較例において、各性状の測定および評価は、以下の方法により行なった。測定結果および評価結果は表1に示す。 ガラス転移温度(Tg) 示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、商品名:DSC6200)を用いて、日本工業規格K7121に従って補外ガラス転移開始温度(以下、単にガラス転移温度(Tg)という)を求めた。 重量平均分子量および分子量分布 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製、商品名:HLC-8020)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。 1H−NMR分析 超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、Bruker社製、商品名:AVANCE500)を用い、重水素化クロロホルム中で1H−NMRを測定し、共重合組成比および水素添加率を算出した。 単量体の転化率分析 ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、商品名:GC-2014)を用いて、反応溶液中に含まれる残単量体の量を分析し、算出した。 環状オレフィン化合物(1)中の幾何異性体(2)の定量 ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、商品名:GC-2014)を用いて、環状オレフィン化合物(1)中に含まれる幾何異性体の量を分析し、全体に対する幾何異性体(2)の割合を算出した。 屈折率 メトリコン社製PC−2010型プリズムカプラを用い、フィルムサンプルの任意の5箇所の屈折率を測定し、最大値および最小値を除く3点の平均値を採用した。なお、光源には408nm、633nm、および830nmのレーザー光源を用い、得られた屈折率からコーシーの式を用いた回帰計算により589nm(25℃)における屈折率を算出した。 abbe数 下記式により、abbe数νを算出した。 ν=(nD−1)/(nF−nC)nD、nF、nCは、屈折率の測定結果から回帰計算により求めた589.2nm、486.1nm、656.3nmにおける屈折率である。 曲げ弾性率 重合体を二軸混練機(東芝機械製TEM−37BS、温度280℃、スクリュー回転数100rpm、フィーダー回転数10rpm、吐出量18Kg/時)で混練し、押出し、ペレット1とした。本ペレット1を用いて、射出成型(FANUC製S2000i100B、型締め圧100トン、樹脂温280℃、金型温度120℃)し、60mmX80mmX1.0mmの試験板を作製した。 この試験板を用いて、JIS K7203(硬質プラスチックの曲げ試験)法により曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率をn=10で測定して、その平均値が2600MPaをこえたら○と、2600MPa以下の場合×とした。 [実施例1] 環状オレフィン単量体として、式(2−1)で表される化合物(鏡像異性体も含む、以下、化合物(2−1)ともいう。)をその幾何異性体中に82%含有するTCP(71.9g、363mmol。化合物(2−1)以外の幾何異性体の含有量は、18%である。)、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(37.5g、161mmol。以下、DNMともいう。)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(22.1g、235mmol。以下、NBともいう。)、分子量調節剤として1−ブテン(1.69g、30.1mmol)をトルエン(275g)に添加し、105℃に加熱攪拌した。別途にi−Bu3Al(75μmol)とメタノール(11μmol)を室温で混合させたトルエン溶液(0.28mL)と、WCl6(38μmol)のトルエン溶液(0.75mL)を準備した。前述の単量体のトルエン溶液に対し、i−Bu3Alとメタノールの混合トルエン溶液、WCl6のトルエン溶液の順に添加し、重合反応を開始した。重合1時間の後に反応停止剤としてLiOH(228μモル)を添加し、開環共重合体[1]のトルエン溶液を得た。単量体の添加率を測定したところ、99%であった。この一部を多量のメタノール中で沈殿させ、減圧乾燥させることにより、開環共重合体[1]を得た。1H−NMRの分析により、重合体中の単量体由来組成は、トリシクロペンタジエン由来が48.1モル%、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン由来が21.4mol%、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来が30.5mol%であった。 上述のようにして得られた開環共重合体[1]のトルエン溶液(353g)を水添反応容器に移液し、トルエン(236g)を加え攪拌して均一溶液とし、水素添加反応触媒であるRu[4−CH3(CH2)4C6H4CO2]H(CO)[P(C6H5)3](49.3mg、582μmol)を添加した。90℃まで温度を上げてから、水素を7MPaまで導入した後、最終的に160〜165℃まで温度を上げ、導入水素ガス圧を9〜10MPaとし3時間反応させた。得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿、減圧乾燥させることにより、開環共重合水素化体[1]を得た。1H−NMRの分析により水素化率は、99.9%であった。DSCの測定によりTg=139℃であった。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=36,000、分子量分布(Mw/Mn)=2.8であった。また屈折率はnD=1.532、abbe数は57であった。結果を表1に示す。 [実施例2] TCPとして、化合物(2−1)(鏡像異性体も含む)をその幾何異性体中に90%含有するものを用いた他は、実施例1と同様の操作を行ない、開環共重合水素化体[2]を得た。1H−NMRの分析により水素化率は、99.9%であった。DSCの測定によりTg=139℃であった。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=36,000、分子量分布(Mw/Mn)=2.8であった。また屈折率はnD=1.533、abbe数は57であった。結果を表1に示す。 [実施例3] TCPとして、化合物(2−1)(鏡像異性体も含む)をその幾何異性体中に96%含有するものを用いた他は、実施例1と同様の操作を行ない、開環共重合水素化体[3]を得た。1H−NMRの分析により水素化率は、99.9%であった。DSCの測定によりTg=139℃であった。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=40,000、分子量分布(Mw/Mn)=2.9であった。また屈折率はnD=1.533、abbe数は56であった。結果を表1に示す。 [比較例1] TCPとして、化合物(2−1)(鏡像異性体も含む)をその幾何異性体中に50%含有するものを用いた他は、実施例1と同様の操作を行ない、開環共重合水素化体[4]を得た。1H−NMRの分析により水素化率は、99.9%であった。DSCの測定によりTg=140℃であった。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=39,000、分子量分布(Mw/Mn)=2.8であった。また屈折率はnD=1.530、abbe数は57であった。結果を表1に示す。 [実施例4] 実施例1で得た開環共重合水素化体[1]99.6質量部にゴム質重合体(JSR製ダイナロン8903P:スチレン・エチレンブチレン・スチレン・ブロック共重合体)0.4質量部、老化防止剤(BASF製イルガノックス1010)0.03質量部を添加し、二軸混練機(東芝機械製TEM−37BS、温度280℃、スクリュー回転数100rpm、フィーダー回転数10rpm、吐出量18Kg/時)で混練し、押出し、ペレット1とした。本ペレット1を用いて、射出成型(FANUC製S2000i100B、型締め圧100トン、樹脂温280℃、金型温度120℃)し、60mmX80mmX1.0mmの試験板を作製した。この板を約0.1μmの厚さにスライスし、四酸化ルテニウムでポリスチレン部分を染色し、透過型電子顕微鏡により観察したところ、ゴム質重合体は水素化体のマトリックス中で直径約0.2μmのほぼ球状のミクロドメイン構造をとっていた。 次いで、試験板を使用してオートクレーブ滅菌処理を実施した。専用の金属カゴに試験板を吊るし、オートクレーブ(平山製作所製HV−240MIV)にセットし、123℃で70分間処理した。70分経過後、60度まで冷却した後、装置開放し金属カゴを取り出し、30分間大気下でエージングした。エージング後の試験板の外観は良好であり、目視で白濁、割れ、熱による変形、マイクロスコープ観察でクラックは見られなかった。 [比較例2] 実施例1で得た開環共重合水素化体[1]100質量部に老化防止剤(BASF製イルガノックス1010)0.03質量部を添加し、二軸混練機(東芝機械製TEM−37BS、実施例4と同一条件)で混練し、押出し、ペレット2とした。本ペレット2を用いて、射出成型(FANUC製S2000i100S、実施例4と同一条件)し、60mmX80mmX1.0mmの試験板を作製した。 実施例4と同様に試験板のオートクレーブ処理し観察したところ、目視で白濁が激し不透明であり、マイクロスコープ観察でクラック発生も確認された。 [実施例5] TCPとして、化合物(2−1)(鏡像異性体も含む)をその幾何異性体中に71%含有するものを用いた他は、実施例1と同様の操作を行ない、開環共重合水素化体[5]を得た。1H−NMRの分析により水素化率は、99.9%であった。DSCの測定によりTg=141℃であった。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=37,000、分子量分布(Mw/Mn)=2.7であった。また屈折率はnD=1.532、abbe数は56であった。結果を表1に併記する。 [実施例6] TCPとして、化合物(2−1)(鏡像異性体も含む)をその幾何異性体中に57%含有するものを用いた他は、実施例1と同様の操作を行ない、開環共重合水素化体[6]を得た。1H−NMRの分析により水素化率は、99.9%であった。DSCの測定によりTg=141℃であった。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=34,000、分子量分布(Mw/Mn)=2.5であった。また屈折率はnD=1.532、abbe数は56であった。結果を表1に併記する。 [比較例3] TCPとして、化合物(2−1)(鏡像異性体も含む)をその幾何異性体中に52.5%含有するものを用いた他は、実施例1と同様の操作を行ない、開環共重合水素化体[7]を得た。1H−NMRの分析により水素化率は、99.9%であった。DSCの測定によりTg=140℃であった。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=38,000、分子量分布(Mw/Mn)=2.8であった。また屈折率はnD=1.532、abbe数は57であった。結果を表1に併記する。 以下、TCPの製造を単量体実施例として説明する。また、その単量体を用いた重合体の例を重合体実施例として説明する。なお、分子量、Tg測定は上述した方法で行ない、それ以外の評価項目である、固有粘度、ゲル評価および重合体中の構造単位の割合は、下記の方法で測定または評価した。(1)固有粘度[ηinh] ウベローデ型粘度計を用いて、クロロベンゼン中、試料濃度0.5g/dL、温度30℃とし、固有粘度を測定した。(2)ゲル評価 直径50mmの単軸押出機の先に幅600mmのTダイをとりつけ、充分に乾燥させた環状オレフィン重合水素付加体を押出、ロールおよびベルト上にて冷却することにより厚み0.8mmのシート状成形品を得た。得られた成形品から12×10cmの面積部分をサンプリングしてトルエンに溶解させ、孔径0.1μmのテフロン(登録商標)製メンブランフィルターで加圧濾過を行なった。フィルター上に認められた透明ゲル状物の個数をカウントして、ゲル発生抑制性能の判定を行なった。判定基準はゲルの個数が少ないほどゲル発生抑制性能が良好として、ゲルの個数が、0〜2個を「○」、3〜9個を「△」、10個以上を「×」とした。なお、ゲルが10個以上の場合は、製品化した時の欠陥が顕著に確認されることから許容できないレベルである。(3)TCP含有物中の各成分の組成 ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した。キャピラリーカラムはジーエルサイエンス社のTC−WAXを用いた。単量体実施例1 DCP(純度98%、endo/exo=99/1)を、窒素置換されたオートクレーブに入れて、DCPの転化率が40%の時点まで、180℃で3時間、攪拌を行ないながら反応させてTCP含有物を得た。この得られたTCP含有物(I)を単蒸留して、未反応DCP等の軽沸分とCPD4量体以上の重沸物を除去したTCP含有物(II)を得た。さらに得られたTCP含有物(II)を蒸留塔(充填物:ヘリパック)で塔頂圧力0.5kPa、還流比30で精留を行ない、留出液中の[式(5)で表される化合物/式(6)で表される化合物]の質量比が99.0/1.0になった時点で、TCP含有物(III)の回収を始めた。回収したTCP含有物(III)に酸化防止剤を200ppm添加して、TCP(A)を得た。TCP(A)の組成は、式(6)で表される6,5,6−TCPが0.3質量%、DCPが0.3質量%であり、この6,6,5−TCP中のendo/exo=84/16、および特定酸化物含有量は30ppmであった。ガスクロマトグラフィーチャートを図2に示す。単量体実施例2〜5、および単量体比較例1〜5 表1に記載の条件に変更した以外は実施例1と同様にして、TCP(B)からTCP(J)を得た。TCP(B)からTCP(J)の特性を表2に記す。重合体実施例1 単量体実施例1で得たTCP(A)100質量部、分子量調節剤として1−ヘキセン9質量部をシクロヘキサン280質量部に添加し、105℃に加熱攪拌した。別途にトリイソブチルアルミニウム0.005質量部、メタノール0.003質量部を加え、更に、WCl6を0.005質量部加え、1時間反応させることにより重合体を得た。重合体の収率は99質量%と良好であった。得られた重合体の溶液をオートクレーブに入れ、さらにシクロヘキサンを200質量部加えた。次に、水素添加触媒であるRuHCl(CO)[P(C6H5)]3を0.006質量部添加し、90℃まで加熱した後、水素ガスを反応器へ投入し、圧力を10MPaとした。その後、圧力を10MPaに保ったまま、165℃、3時間の反応を行ない、水素添加物の環状オレフィン重合水素付加体を得た。 環状オレフィン重合水素付加体は、重量平均分子量(Mw)=3.8×104、分子量分布(Mw/Mn)=2.3、固有粘度(ηinh)=0.48、ガラス転移温度(Tg)=139℃であった。なお、1H−NMR測定により環状オレフィン重合水素付加体の水素添加率を求めたところ、オレフィン性不飽和結合は99.9%以上水素添加されていた。 得られた、環状オレフィン重合水素付加体溶液を大量のメタノールを用いて、凝固させ、乾燥することで、環状オレフィン重合水素付加体を得た。このゲル評価の結果、ゲルの個数は、1個であり、「○」判定とした。 また、各実施例および各比較例の総合評価は、重合転化率が92%以上、分子量分布(Mw/Mn)が2.9以下、ゲル評価が△以上の全ての特性を満足する場合を「○」とし、満足しない場合を「×」とした。結果を表3に示す。重合体実施例2〜8、および重合体比較例1〜9 重合体実施例1で用いたTCP(A)を表3に示す単量体に変更した以外は、重合体実施例1と同様にして、環状オレフィン重合水素付加体を得た。得られた、環状オレフィン重合水素付加体の評価結果を表3に示す。 本発明に係る環状オレフィン開環重合体、特に水素化物である環状オレフィン開環重合体は、光線透過率や耐熱性に優れた熱可塑性透明樹脂として光学部品として好適に用いることができる。光学部品としては、光学レンズ、フィルム、シートを挙げることができ、これらの具体例として、撮像レンズ、導光板、位相差フィルム、保護フィルム、接着フィルム、タッチパネル、透明電極基板、TFT用基板、カラーフィルター基板、プレフィルドシリンジなどの医療用容器などが挙げられる。特に本発明に係る環状オレフィン開環重合体、特に水素化物である環状オレフィン開環共重合水素化体は、高い屈折率と、高いabbe数を有するため各種成形体製造用途に好適に使用でき、特にレンズ、フィルムなどの各種光学用途に用いる成形体の製造用途に好適に用いることができ、中でも光学レンズ用途に好適に用いることができる。 下記式(1)で表される化合物(1)を含む環状オレフィン単量体類を重合させて得られる環状オレフィン開環重合体であって、 前記式(1)において、nは1、2、または3であり、 前記化合物(1)が、幾何異性体(2)としてn=1〜3のそれぞれの下記場合における化合物をそれぞれの幾何異性体中に55モル%以上含むことを特徴とする。n=1のとき下記式(2−1)で表される化合物n=2のとき下記式(2−2)で表される化合物n=3のとき下記式(2−3)で表される化合物但し、これらの化合物において、鏡像異性体が存在する場合には、それをも含む。 請求項1記載の環状オレフィン開環重合体において、 該環状オレフィン開環重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が20,000〜150,000であることを特徴とする。 請求項1または請求項2記載の環状オレフィン開環重合体において、 前記化合物(1)は、共重合される全単量体に対して、10〜90モル%含むことを特徴とする。 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の環状オレフィン開環重合体において、 前記化合物(1)は、前記式(2−1)で表されることを特徴とする。 請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の環状オレフィン開環重合体において、 前記環状オレフィン単量体類が下記式(3)で表される化合物(3)を含むことを特徴とする。[式(3)中、mは0〜3の整数であり、A1〜A4は、それぞれ独立に下記(i)〜(iv)のいずれかを表し、このうちの少なくとも1つは、(iii)を表す。(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)アルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミノ基およびチオール基よりなる群から選ばれた極性基、(iv)ハロゲン原子または前記極性基(iii)により置換されていてもよい、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基] 請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の環状オレフィン開環重合体において、 前記環状オレフィン単量体類が下記式(4)で表わされる化合物(4)を含むことを特徴とする。[式(4)中、B1〜B4は、それぞれ独立に、下記(i)〜(iii)のいずれかを表すか、(iv)あるいは(v)を表す。(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)ハロゲン原子により置換されていてもよい、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基、(iv)B1とB2、またはB3とB4が、相互に結合してアルキリデン基を形成し、前記結合に関与しないB1〜B4は相互に独立に前記(i)〜(iii)より選ばれるものを表す、(v)B1とB3、B1とB4、B2とB3、またはB2とB4が、相互に結合して、それぞれが 結合する炭素原子とともに環状構造を形成し、前記結合に関与しないB1〜B4は相互に独立に前記(i)〜(iii)より選ばれるものを表す。] 環状オレフィン開環重合水素化体であって、 該水素化体は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の環状オレフィン開環重合体を水素化して得られることを特徴とする。 請求項7記載の環状オレフィン開環重合水素化体において、 該開環重合水素化体の589nmにおける屈折率が1.531以上、曲げ弾性率が2600MPa以上であることを特徴とする。 環状オレフィン開環重合水素化体組成物であって、 全組成物に対して、請求項8記載の前記環状オレフィン開環重合水素化体を90〜99.99質量%と、該水素化体に非相溶であるゴム質重合体を10〜0.01質量%配合してなることを特徴とする。 下記式(5)で表されるトリシクロペンタジエンであって、 該トリシクロペンタジエンは、以下の(a)、(b)および(c)で示される特性を有することを特徴とする。(a)下記式(6)で表される1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロ−1,4;5,8−ジメタノ−1H−フルオレンが、トリシクロペンタジエン全体量に対して、1質量%以下である、(b)下記式(5)で表されるトリシクロペンタジエンは、下記式(2−1)で表される3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−4,9;5,8−ジメタノ−1H−ベンゾ[f]インデンのエンド体が、該エンド体と下記式(2−1a)で表される3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−4,9;5,8−ジメタノ−1H−ベンゾ[f]インデンのエキソ体との全体量に対して、55モル%以上含まれている、(c)下記式(5)および下記式(6)全体量に含まれる酸化物の含有量が100ppm以下である。