生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_神経損傷および神経変性疾患後の神経学的転帰を改善する方法
出願番号:2012502285
年次:2012
IPC分類:A61K 38/22,A61P 9/00,A61P 25/00,A61P 25/14,A61P 25/28


特許情報キャッシュ

チョップ,マイケル チャン,チェンガン モリス,ダニエル・シィ JP 2012522005 公表特許公報(A) 20120920 2012502285 20100326 神経損傷および神経変性疾患後の神経学的転帰を改善する方法 ヘンリー フォード ヘルス システム 508227189 HENRY FORD HEALTH SYSTEM 特許業務法人深見特許事務所 110001195 チョップ,マイケル チャン,チェンガン モリス,ダニエル・シィ US 61/163,556 20090326 A61K 38/22 20060101AFI20120824BHJP A61P 9/00 20060101ALI20120824BHJP A61P 25/00 20060101ALI20120824BHJP A61P 25/14 20060101ALI20120824BHJP A61P 25/28 20060101ALI20120824BHJP JPA61K37/24A61P9/00A61P25/00A61P25/14A61P25/28 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2010028839 20100326 WO2010111598 20100930 14 20111117 4C084 4C084AA02 4C084BA44 4C084CA18 4C084DA07 4C084NA14 4C084ZA022 4C084ZA162 4C084ZA222 4C084ZA362 本願は、2009年3月26日に出願された米国仮特許出願第61/163,556号の利益を主張し、この明細書中に引用によりその内容全体が援用される。 この発明は、オリゴデンドロサイト新生に関する。特に、この発明は、チモシンβ4を用いた治療方法に関する。 脳卒中は、罹患および能力障害の主な原因である。脳卒中からの機能神経学的回復は一般的に起こるが、不完全であることが多い。脳卒中後の機能回復は、損傷した脳のリモデリングに関連することがあり、これには脳血管新生および神経新生が含まれる。神経学的障害は、さまざまな他の疾患においても起こる。大脳動脈の突然の閉塞は、重度の神経学的障害を誘起し、多発性硬化症による軸索の脱髄は、神経学的機能の潜行性で苦痛を与える障害を引起す。よって、神経損傷後、如何にして軸索の可塑性およびオリゴデンドロサイト新生を誘起し、機能回復を促進するかは、強い関心が向けられている分野である。 チモシンβ4は、虚血性心筋梗塞マウスにおいて心筋細胞の移動および生存を促進することが示されているペプチドである。加えて、チモシンβ4は、出生後および成体マウス心筋において脈管新生、血管新生および動脈新生を調節することが示されている。 チモシンβ4は、創傷治癒および心筋細胞の生存において有効であることが示されているものの、脳卒中または多発性硬化症に効果があるという証拠または示唆はない。したがって、脳卒中および多発性硬化症の治療ならびに神経損傷および神経変性疾患の治療が依然として必要とされている。 この発明の実施形態は、チモシンβ4を投与するステップと、機能神経学的転帰を改善するステップと、脳卒中を治療するステップとを含む、脳卒中の治療方法を提供する。 この発明のさらなる実施形態は、チモシンβ4を投与し、オリゴデンドロサイト前駆細胞の移動および分化ならびにオリゴデンドロサイト前駆細胞の成熟オリゴデンドロサイトへの分化を促進し、オリゴデンドロサイトがダメージを受けた軸索を有髄化するようにすることによって、ダメージを受けた神経細胞を有髄化する方法も提供する。 この発明の付加的な実施形態は、チモシンβ4を投与することによって神経前駆細胞を増殖させる方法を提供する。 この発明の付加的な実施形態は、チモシンβ4を投与するステップを含む、神経損傷の治療方法を提供する。 この発明の付加的な実施形態は、チモシンβ4を投与するステップと、機能神経学的転帰を改善するステップと、多発性硬化症を治療するステップとを含む、多発性硬化症の治療方法も提供する。 この発明の付加的な実施形態は、チモシンβ4を投与するステップと、神経変性疾患を治療するステップとを含む、神経変性疾患の治療方法を提供する。 以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することによって、この発明がより理解され、この発明の他の利点が容易に理解されるであろう。塞栓性右中大脳動脈閉塞(MCAo:middle cerebral artery occlusion)後の接着剤除去試験(行動試験)結果のグラフである。全体治療効果(p<0.01、n=18)。個別時点効果(*p<0.05)。MCAo後の神経学的重症度スコア(NSS:neurological severity score)のデータを示すグラフである。全体治療効果(p<0.01、n=18)。個別時点効果(*p<0.05)。塞栓性脳卒中モデルにおける対照群と試験群との病変体積を示す棒グラフである。n=18、p<0.05。塞栓性脳卒中モデルにおける対照群と試験群とのビールショースキー(Bielschowsky)およびルクソール・ファスト・ブルー(Luxol Fast Blue)染色による有髄化された軸索の数を示す棒グラフである(n=18、*p<0.05)。塞栓性脳卒中モデルにおける対照群と試験群とのCNPase(成熟オリゴデンドロサイトのマーカ)のデータを提供する棒グラフである(n=18、*p<0.05)。塞栓性脳卒中モデルにおける対照群と試験群とのNF‐H(軸索のマーカ)の量のデータを提供する棒グラフである(n=18、*p<0.05)。塞栓性脳卒中モデルにおける対照群と試験群とのNG‐2+細胞(オリゴデンドロサイト前駆細胞のマーカ)の量のデータを提供する棒グラフである(n=18、*p<0.05)。塞栓性脳卒中モデルにおける対照群と試験群とのBrdU+細胞(分裂細胞のマーカ)の量のデータを提供する棒グラフである。EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎:experimental autoimmune encephalomyelitis)後の対照マウス群と試験マウス群との機能神経学的スコアのグラフである(n=21)。相対神経学スコア回復、p<0.01。 この発明の実施形態は、脳卒中および多発性硬化症などの神経学的疾患の発症後の機能神経学的転帰をチモシンβ4の投与によって改善する方法を含む。 チモシンはアクチン結合タンパク質である。β‐チモシンは、非重合アクチンの主調節因子であるチモシンのサブグループである。β‐チモシンは、速やかなフィラメント伸長に必要とされる自由G‐アクチン単量体の小さな細胞質プールを維持し、チモシン結合プールとF‐アクチンとの間の流動を可能にする。チモシンβ4は、β‐チモシンの最も一般的な形態であり、G‐アクチンを隔離して、重合を防止する。 より具体的には、チモシンβ4は、脳卒中が発生した後に脳卒中を治療するために脳卒中患者に投与する。チモシンβ4は、脳卒中が発生した直後に投与できる。これに代えて、投与は、脳卒中が発生してから24時間後以降に行なわうことができる。チモシンβ4は、脳へのダメージが起こった後に回復効果をよく与える。チモシンβ4は、オリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖および分化を増加させ、これによりその後、損傷した軸索が有髄化される。これにより脳卒中後の神経学的機能が改善される。 より具体的には、チモシンβ4は、オリゴデンドロサイト前駆細胞をより成熟した表現型に変化させる。換言すると、チモシンβ4は、オリゴデンドロサイト前駆細胞の移動を促進し、続いて神経損傷部位での成熟オリゴデンドロサイトへの分化を促進する。これらの成熟オリゴデンドロサイトは、ミエリンを生成し、このミエリンは、軸索を絶縁し、神経インパルス伝達を改善する。よって、この成熟オリゴデンドロサイトは、神経へのダメージが起こった脳および他の場所における神経再生および/またはリモデリングの促進因子として機能する。加えて、オリゴデンドロサイト前駆細胞は、それらの成熟オリゴデンドロサイトへの分化およびその後の軸索の有髄化とは無関係に、回復促進における別個の役割をも有してもよい。 したがって、この発明の実施形態は、チモシンβ4を投与し、オリゴデンドロサイト前駆細胞の移動および増殖ならびにオリゴデンドロサイト前駆細胞の成熟オリゴデンドロサイトへの分化を促進し、オリゴデンドロサイトがダメージを受けた軸索を有髄化するようにすることによって、ダメージを受けた軸索を有髄化する方法も含む。 この発明の実施形態は、チモシンβ4を投与することによって神経前駆細胞を増殖させる方法も含む。神経前駆細胞は、これに限定されないが神経細胞およびグリアなどのさまざまな種類の神経系細胞を生成する。実施例1および図8には、チモシンβ4投与後にBrdU染色で新しい神経前駆細胞が検出されたことが示されている。チモシンβ4を用いた塞栓性脳卒中ラットの治療によって、ラットの脳の線状体または有髄化された領域においてBrdU発現が相対的に42%増加したことが実証された。このBrdU発現の増加は、DNA合成および細胞増殖を反映している。脳内の細胞増殖の増加は、正常な成体の脳における特徴的な発見ではない。この発見は、成熟オリゴデンドロサイトのマーカであるCNPにおける著しい増加(11%)および未成熟オリゴデンドロサイトのマーカであるNG‐2(47%)における著しい増加とともに、神経前駆細胞からのオリゴ前駆細胞および成熟オリゴデンドロサイトへの変化があると思われる点において特異的である。チモシンベータ‐4治療ラットにおいて観察された著しい神経学的機能的回復に寄与するのは、この再有髄化プロセスである。換言すると、神経前駆細胞をチモシンβ4で刺激することにより、ダメージを受けた神経系細胞と置き換わることが可能なより成熟した種類の神経系細胞が生成され、それによって、ダメージを受けた神経系細胞が存在する病的状態を効果的に治療することができる。 この発明の実施形態は、チモシンβ4を神経損傷患者に投与することによって神経損傷を治療する方法も含む。外傷性脳損傷(TBI:traumatic brain injury)などの任意の神経損傷を治療することができる。チモシンβ4は、上述のように機能して、損傷したまたはダメージを受けた神経細胞を修復する。 チモシンβ4は、多発性硬化症患者にも投与できる。患者への投与は、疾患のいずれの段階で行なってもよい。多発性硬化症においては、免疫系が中枢神経系を攻撃し、神経細胞を脱髄する。オリゴデンドロサイトの増殖および分化ならびに損傷した軸索の有髄化を通じて、チモシンβ4は、多発性硬化症の影響を本質的に取り消し、患者が神経伝達を取戻すことを可能にする。したがって、この発明の実施形態は、多発性硬化症の治療方法を提供する。 チモシンβ4は、この発明の実施形態において多発性硬化症に限定されず神経変性疾患全般を治療するためにも投与される。神経変性疾患は、神経細胞全体の変性または髄鞘の変性によって引起される。例として、アルコール依存症、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、ウシ海綿状脳症、カナバン病、コケーン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、前頭側頭葉変性症、ハンチントン舞踏病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、神経ボレリア症、マシャド・ジョセフ病、ナルコレプシー、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッヘル病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性核上麻痺、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、脊髄の亜急性連合変性症、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、および脊髄癆が含まれるが、これに限定されない。 この発明にはいくつかの利点がある。本明細書中の方法は、脳卒中および多発性硬化症を含めて多くの異なる形態の神経損傷および神経変性疾患の治療に有用である。チモシンβ4の作用機序は、成体神経前駆細胞の増殖およびオリゴデンドロサイトへの分化ならびにその後の損傷した軸索の有髄化に関連付けられる。さらに、チモシンβ4は、脳卒中を治療するために発症から24時間後以降に使用することができ、先行技術における方法と比較して治療対象となる見込みのある患者の数を著しく増加させる。 チモシンβ4が、脳卒中、神経損傷および神経変性疾患をその発生後に治療することができることは予期せぬことでもある。チモシンβ4は、脳卒中の発症から24時間後以内に投与されると軸索のリモデリング機序により神経回復剤として作用する。本明細書中において、機能およびオリゴデンドロサイト新生の改善は、オリゴデンドロサイトの移動および分化の特異的な機序によって起こることが実証される。 以下の実施例において用いられた動物モデルは、脳卒中および多発性硬化症のための標準モデルである。動物実験から得られたデータは、ヒトに直接適用可能である。したがって、チモシンβ4の投与は、ヒトの神経学的転帰を改善する。 この発明の化合物は、製造品質管理基準(good medical practice)に従って、個々の患者の臨床状態、投与の部位および方法、投与のスケジューリング、患者の年齢、性別、体重ならびに医療従事者に既知である他の要素を考慮して投与および投薬される。したがって本明細書中における目的のための薬学的「有効量」は、当該技術において既知であるようなそのような考慮事項によって決定される。この量は、生存率の改善もしくはより速やかな回復を含むがこれに限定されない改善、または症状および当業者によって適切な基準として選択されるような他の指標の改善もしくは除去を達成するのに有効でなくてはならない。 この発明に従った方法の実施形態において、この発明の化合物は、さまざまなやり方で投与できる。なお、この発明の化合物は化合物として投与することができ、単独でまたは薬学上許容される担体、希釈剤、アジュバント、および媒体と組合せて有効成分として投与することができることに留意すべきである。この化合物は、経口で、皮下で、または静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、扁桃内、および鼻腔内投与ならびに髄腔内技術および点滴技術を含めて非経口で投与することができる。この化合物のインプラントも有用である。治療される患者は、温血動物であり、特に、ヒトを含めた哺乳類である。薬学上許容される担体、希釈剤、アジュバント、および媒体ならびにインプラント担体は、この発明の有効成分と反応しない不活性で無毒の固体または液体充填剤、希釈剤、またはカプセル化材料を一般に指す。 用量は、単回投与または数日間にわたる複数回投与であり得る。治療の長さは、一般に、疾患の経過の長さおよび薬剤の効力ならびに治療される患者の種に相応する。 この発明の化合物を非経口で投与するとき、一般にこの発明の化合物は、単位容量の注射可能形態(溶液、懸濁液、乳液)に処方される。注射に適した医薬製剤には、滅菌した水溶液または分散液と、滅菌した注射可能な溶液または分散液中に再調製される滅菌した粉末とが含まれる。担体は、水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油をたとえば含有する溶媒または分散媒質であり得る。 適正な流動性は、たとえば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、および表面活性剤の使用によって維持することができる。綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、またはピーナツ油およびミリスチン酸イソプロピルなどのエステルなどの非水性媒体も化合物組成の溶媒系として用いてもよい。加えて、抗菌性防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含めて、組成物の安定性、滅菌性および等張性を強化するさまざまな添加剤を加えることができる。さまざまな抗バクテリア剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などにより、微生物の作用を確実に防止することができる。多くの場合、等張剤、たとえば糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましいであろう。注射可能な医薬形態の長期吸収は、吸収を遅らせる作用物質、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によりもたらすことができる。しかしながら、この発明に従って、使用される媒体、希釈剤または添加剤は、化合物と適合しなくてはならないであろう。 滅菌した注射可能な溶液は、この発明を実施する際に利用する化合物を所望によりさまざまな他の成分とともに必要量の適切な溶媒に組み入れることにより調製できる。 この発明の医薬製剤は、さまざまな媒体、アジュバント、添加剤および希釈剤などの任意の適合性のある担体を含有する注射可能な剤形で患者に投与でき、またはこの発明において利用される化合物は、徐放性皮下インプラントまたはモノクローナル抗体、誘導送達、イオン泳動、ポリマーマトリクス、リポソームおよびマイクロスフェアなどの標的送達システムの形態で患者に非経口で投与され得る。この発明において有用な送達システムの例には、米国特許第5,225,182号、第5,169,383号、第5,167,616号、第4,959,217号、第4,925,678号、第4,487,603号、第4,486,194号、第4,447,233号、第4,447,224号、第4,439,196号、および第4,475,196号などに記載されたものが含まれ、これらの開示は、この明細書中に引用により援用される。多くの他のそのようなインプラント、送達システム、およびモジュールが当業者に周知である。 この発明を、以下の実験実施例を参照して詳細にさらに説明する。これらの実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、特に記載がある場合を除き限定することを意図するものではない。したがって、この発明は、以下の実施例に限定されるとは決して解釈されるべきではなく、本明細書中に提供される教示の結果明白となるいずれのかつすべての変形例を包含すると解釈されるべきである。 方法 チモシンβ4を用いた治療の有効性を、脳卒中(中大脳動脈閉塞(MCAo))ラットおよび実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウス(十分に確立された多発性硬化症の生体内モデル)において試験した。脳卒中ラットとEAEマウスとの両方に対して体積0.3mLの6mg/kgチモシンβ4を腹腔内(IP)に脳卒中からまたはEAEモデルにおいては免疫付与日から24時間後に、またその後3日に一度(6mg/kg IP)さらに4容量投与して治療を行った。対照群として等体積の生理食塩水を脳卒中ラットとEAEマウスとの両方の群に投与(IP)した。ブロモデオキシウリジン(BrdU、100mg/kg)をMCAoの24時間後から開始して7日間毎日投与(IP)して、増殖細胞を標識した。行動試験(接着剤除去試験およびNSS(神経学的重症度スコア))を治療の直前ならびにMCAoから1、7、14、21、28、35、42、49、および56日後およびEAEマウスモデルにおいては30日目まで行なった。すべてのラットをMCAoから56日後に犠牲にした。EAEマウスを30日目に犠牲にした。 結果 脳卒中発症から21日後に始まる数々の行動試験によって測定したところ、著しい機能改善が観察された(図1〜2、p<0.05)。塞栓性脳卒中モデルの梗塞病変体積は、対照群と治療群との両方において類似していた(図3、p<0.05)。有髄化された軸索の数(図4、p<0.05)ならびにオリゴデンドロサイト前駆体および成熟オリゴデンドロサイトの数(図5〜7、p<0.05)は、MCAo後チモシンβ4で治療された群において増加した。その上、BrdU発現の増加およびBrdU免疫反応細胞の数の増加から明らかなように、細胞増殖もチモシンβ4治療後このモデルにおいて増加した(図8、p<0.05)。 EAEマウスモデルによる結果は、対照群と比較すると、チモシンβ4で治療されたマウスの機能神経学的スコアにおいて、しっかりとした改善を実証した。図9参照(p<0.01)。 結論 チモシンβ4を用いた治療は、塞栓性脳卒中ラットモデルと、マウス多発性硬化症モデルとの両方において機能神経学的転帰を改善した。改善の機序は、オリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖および分化の増加と、その後の損傷した軸索の有髄化とによるものである。これらの結果から、チモシンβ4を用いて他の神経学的疾患の中で脳卒中および多発性硬化症を治療することができるとの、ヒトで予期される結果が予測される。 この発明は、例示的に説明されており、使用された用語は、限定的ではなく説明的言葉の性質を有することが意図されることが理解されるべきである。 明らかに、この発明の多くの改変例および変更例が上記の教示に鑑みて可能である。したがって、この発明は、具体的に説明されたものとは別のやり方で実施されてもよいことが理解されるべきである。 神経学的組織回復有効量のチモシンβ4をそれを必要とする対象に投与することを含む、神経学的ダメージを特徴とする神経学的疾患の治療方法。 前記神経学的疾患は、脳卒中、脱髄疾患、神経損傷、多発性硬化症、および神経変性疾患からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 前記神経学的疾患は、脳卒中および多発性硬化症からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。 前記神経学的疾患は、脳卒中である、請求項3に記載の方法。 前記神経学的疾患は、多発性硬化症である、請求項3に記載の方法。 前記神経損傷は、外傷性脳損傷である、請求項2に記載の方法。 前記神経変性疾患は、アルコール依存症、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、ウシ海綿状脳症、カナバン病、コケーン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、前頭側頭葉変性症、ハンチントン舞踏病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、神経ボレリア症、マシャド・ジョセフ病、ナルコレプシー、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッヘル病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性核上麻痺、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、脊髄の亜急性連合変性症、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、および脊髄癆からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。 前記神経学的組織回復有効量のチモシンβ4は、軸索の有髄化、神経前駆細胞の移動、神経前駆細胞の増殖、神経前駆細胞の成熟神経細胞への分化、神経前駆細胞の成熟グリアへの分化、神経再生、および脳損傷の部位での脳リモデリング、からなる群より選択される神経学的パラメータを改善する、請求項1に記載の方法。 前記対象の神経学的転帰が改善される、請求項1に記載の方法。 チモシンβ4を投与することは、脳卒中が発生した直後に行なわれる、請求項4に記載の方法。 チモシンβ4を投与することは、脳卒中が発生してから約24時間以内に行なわれる、請求項4に記載の方法。 チモシンβ4を投与することは、脳卒中が発生してから24時間後以降に行なわれる、請求項4に記載の方法。 チモシンβ4を投与することは、外傷性脳損傷が発生した直後に行なわれる、請求項6に記載の方法 チモシンβ4を投与することは、外傷性脳損傷が発生してから約24時間以内に行なわれる、請求項6に記載の方法。 チモシンβ4を投与することは、外傷性脳損傷が発生してから24時間後以降に行なわれる、請求項6に記載の方法。 チモシンβ4を用いて、脳卒中または外傷によって引起された損傷ならびに神経学的疾患および神経変性疾患によって引起された損傷を含めて、神経細胞死または損傷を伴う神経損傷および脳損傷を治療することができる。具体的には、脳卒中および多発性硬化症は、チモシンβ4を用いた治療によって寛解させることができる症状の例である。チモシンβ4は、神経学的組織回復を必要とする対象へのチモシンβ4の投与によって改善されるいくつかの神経学的パラメータへのいくつかの効果を通じて神経学的組織を回復させることが発見された。たとえば、チモシンβ4は、軸索有髄化、神経前駆細胞の移動、神経前駆細胞の増殖、神経前駆細胞の成熟神経細胞への分化、神経前駆細胞の成熟グリアへの分化、神経再生、および脳損傷の部位での脳リモデリングを改善する。


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