生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_特異的に保護された直交ランチオニン技術
出願番号:2012502233
年次:2012
IPC分類:C07K 1/06,A61K 38/00,A61P 31/04


特許情報キャッシュ

キリチェンコ,コスチャンティン ヴァクレンコ,アナトリー ヒルマン,ジェフリー,ダニエル JP 2012521999 公表特許公報(A) 20120920 2012502233 20100325 特異的に保護された直交ランチオニン技術 オラジェニックス,インコーポレイテッド 506047905 大野 聖二 230104019 森田 耕司 100106840 田中 玲子 100105991 松任谷 優子 100119183 北野 健 100114465 伊藤 奈月 100156915 キリチェンコ,コスチャンティン ヴァクレンコ,アナトリー ヒルマン,ジェフリー,ダニエル US 12/413,551 20090328 C07K 1/06 20060101AFI20120824BHJP A61K 38/00 20060101ALI20120824BHJP A61P 31/04 20060101ALI20120824BHJP JPC07K1/06A61K37/02A61P31/04 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2010028620 20100325 WO2010117652 20101014 53 20111125 4C084 4H045 4C084AA01 4C084AA06 4C084BA01 4C084BA24 4C084BA25 4C084BA31 4C084CA59 4C084DA41 4C084DA43 4C084NA05 4C084NA14 4C084ZB351 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA05 4H045BA50 4H045DA83 4H045EA29 4H045FA20 本出願は、本明細書中、その全体が参照として含まれる、2009年3月28日出願の米国特許出願第12/413,551号に基づき優先権を主張する。 抗生物質の開発は、20世紀後半の医療に革命を起こした。この間に、感染症による死亡率は大きく減少した(Armstrongら、(1999年)PAMA.281巻,61-66頁)(非特許文献1)。しかし1982年以来、感染症による死は、抗生物質耐性の病原菌の増加と同時に、絶えず増加してきた。広範な種類の医学的に重要な細菌は、臨床感染の処置において通常使用される抗生物質に対する耐性が増加してきている。この現象を立証する数千もの報告及び書籍が過去二十年の文献で示されてきた(Armstrongら、(1999年)PAMA.281巻、61-66頁(非特許文献1);Dessenら、(2001年)Curr.Drug Targets Infect Disord.1巻,11-16頁(非特許文献2);Rapp(2000年)Surg Infect(Larchmt).1巻,39-47頁(非特許文献3);Benin&Dowell(2001年)antibiotic resistance and implications for the appropriate use of antimicrobial agents,Humana Press,Totowa,NJ)(非特許文献4)。 抗生物質のより適切な使用を指導することに対する需要があるが、もっと重要なことは、新規抗生物質に対する需要があるということである。バンコマイシンは、多くの重篤な細菌感染に対する最後の砦と考えられている。病原菌のバンコマイシン耐性株の発見は危急を告げており;それは、現在利用可能な薬剤で処置できないであろう多剤耐性病原体の発生を予告している。新規抗生物質が直ちに開発されなければ、事実上前抗生物質時代まで戻る可能性がある。 ランチビオティクス(lantibiotics)(クラスIバクテリオシン)と呼ばれる、小さい、構造的に新規なクラスの抗生物質があり、これはそれらの化学及び生合成の相違に基づいて、5つのサブクラス:タイプA(I)、タイプA(II)、タイプB、二成分及び未知構造体に分類することができる。このクラスの抗生物質は数十年間知られているが、多くのランチビオティクスは、強力且つ広範囲の活性スペクトルを、特にグラム陽性菌に対して有することが知られているにもかかわらず、感染症の処置における潜在的有用性については広く試験されていなかった。その主な理由は、これらの分子の試験及び商品化を可能にするために十分に費用効率の高い量で得ることが一般に困難だったためである。 ナイシンA(図1)は、ランチビオティクス、及びランチビオティクスに関連する化学的複雑性の数及びタイプの好例を提供する。ランチビオティクスは含硫黄アミノ酸、ランチオニン(Lan、ala-S-ala)、及び頻繁には3-メチルランチオニン(MeLan、abu-S-ala)を豊富に含む。Lanは、チオエーテル橋架を介して結合して、生物活性に重要な環構造を形成するアラニン残基からなる。典型的には、ランチビオティクス上にはこのような環が3〜5個あり、環の多くは互いに重なり合うことが多い。Lan及びMeLanは、常にメソ−立体化学を有すると考えられている。Lan及びMeLan残基に加え、ランチビオティクスにおいて見られる2,3-ジデヒドロアラニン(Dha)、2,3-ジデヒドロブチリン(Dhb)、S-アミノビニル-D-システイン(AviCys)及びS-アミノ-D-メチルシステイン等の不飽和ランチオニン誘導体、並びにD-アラニン、2-オキソプロピオニル、2-オキソブチリル及びヒドロキシプロピオニル残基等の、他の翻訳後修飾アミノ酸(図2)があってもよい。ナイシンAの場合のように、Lan及びMeLanにより生成した環構造は重なりあっていてもよく(例えば、環D及びE)、さらに分子に複雑性を加えている。 グラム陽性菌は公知のランチビオティクスの生合成に関与している。それらは、リボソーム合成プレプロペプチド上で作用する連続的な一連の酵素段階を用いて分子を成熟させる。修飾酵素をコードするのに関与する遺伝子は、典型的には8〜10KbのDNA断片上にクラスター形成され、染色体、プラスミドまたはトランスポゾンの一部として存在しうる。タイプA(I)のランチビオティクスにおいては、lanA遺伝子によりコードされるリボソームで合成されるプレペプチド中の全てのセリン及びスレオニン残基が、lanB遺伝子によってコードされる酵素によって脱水され、これらの脱水されたアミノ酸は、分子のカルボキシル末端に向かってより近い位置の隣接するシステイン残基とのチオエーテル結合の形成に関与する。この反応は、lanC遺伝子によって発現されるタンパク質によって触媒される。エピデルミン及びミュータシン1140等の特定のランチビオティクスの場合には、C-末端のシステインはlanD遺伝子によって発現される酵素によってカルボキシル基が除去され、S-アミノビニル-D-システインに変換される。lanT遺伝子の産物による細胞外輸送の後、修飾プレプロペプチドのリーダー配列がlanPによってコードされる細胞外プロテアーゼによって開裂され、成熟した抗生物質が生成される(Raら、(1996年)、Microbiology-UK.142,1281-1288頁(非特許文献5);Kupke&Gotz(1996年)、Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology,69巻,139-150頁(非特許文献6);Kuipersら,(1996年))Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology,69巻,161-169頁(非特許文献7)。 十分な量または十分な純度でランチビオティクスを得るのが難しいことが、治療用途における潜在的有用性を研究する試みの妨げとなっていた。今までに特徴づけられた約40のランチビオティクス(Chatterjeeら、(2005年)Chemical Reviews.105,633 683)(非特許文献8)のうち、乳連鎖球菌(Streptococcus lactis)によって産生されるタイプA(I)のランチビオティクスであるナイシンAのみが商業量で生成され、過去50年間、食品防腐剤としての広い用途が見出されてきた。有意な耐性発現のない、ナイシンAの長期にわたる広範な使用(DelvesBroughtonら、(1996年)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology,69巻,193-202頁)(非特許文献9)は、様々な用途のためのさらなるランチビオティクスの開発に大きな弾みをつけた。 長年にわたり改良されてきた発酵工程を用いて、ナイシンAは大量生産されている。ナイシンAの精製プロトコルは、最近、米国特許(USPA2004/0072333号)(特許文献1)として出願された。このプロトコルは、高価なプロテアーゼカクテル、それに続くカラムクロマトグラフィーを用いた。しかし、ナイシンA精製のための商業的に実現可能な方法は公表されていない。これは、治療用途のための純粋なナイシンA及び他のランチビオティクスの適切な生成方法を見出すことに目下の関心が集まっていることを示している。 ランチビオティクスの大量生産には多くの潜在的選択肢が存在する。原料費の観点から、発酵工程は、議論の余地なく最良の方法であろう。多くのランチビオティクスを発酵させる最近の方法は、1リットルあたりマイクログラムの量で生産するが、これは薬剤開発のためには十分ではない。 また、ランチビオティクス修飾機構を用いたin vitro生産が、タイプA(I)のランチビオティクスにおいて探索された(Kupke&Gotz(1996年)、Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology,69巻,139-150頁(非特許文献6);Kuipersら,(1996年))Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology,69巻,161-169頁(非特許文献7)。LanDを除いて、ランチビオティクスプレプロペプチドの翻訳後修飾に関与する酵素は、無細胞溶解物において、または精製された物質としては活性がない(Kupke&Gotz(1996年)、Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology,69巻,139-150頁(非特許文献6);Kupke&Gotz(1997年)Journal of Biological Chemistry.272,4759-4762頁(非特許文献10);Kupkeら、(1992年)Journal of Bacteriology.174巻,5354-5361頁(非特許文献11);Kupkeら、(1993年)Fems Microbiology Letters.112巻,43-48頁(非特許文献12);Kupkeら(1995年)Journal of Biological Chemistry.270巻,11282-11289頁(非特許文献13);Kupkeら(1994年)Journal of Biological Chemistry.269巻,5653-5659頁(非特許文献14))。タイプA(II)のランチビオティクスの場合は、ラクチシン481のin vitro合成が可能であることが最近Scienceに報告された。このグループ及びタイプBのランチビオティクスに属する分子は、Dha、Dhb、Lan、及びMeLan残基を形成するために、1つのマルチヘッド酵素(multiheaded enzyme)、LanMのみを用いる(Xieら,(2004年)Science.303巻,679-681頁)(非特許文献15)。ラクチシン481の生合成に関する報告は、収量及び純度に関する詳細な情報を全く提供しなかったが、その仕事はナノグラムスケールで実施された。この報告に開示されている進展は小さいが有意義な前進を意味し、これが賞賛を持って広く受け入れられたことは、治療薬としてランチビオティクスを緊急に開発する必要性をさらに示している。 ランチビオティクスを商業規模で生産するための、(単数または複数種類の)適当な発現ベクターにクローニングされたlan遺伝子クラスター及び非感受性宿主を用いる第三の選択肢は、システムの複雑さによるものではなく、関与する種々の遺伝子の発現を特異的に調節する必要があると考えられる。ガリデルミン用のlan遺伝子クラスターは、この特定のランチビオティクスの生産を向上するために枯草菌(Bacillus subtilis)中へクローニングされた。しかし、遺伝子の調節部位が種によって異なることが知られていることから、この戦略によって収率が大幅に増すことはなく、全てのランチビオティクスに適してはいない。関連するアプローチでは、大腸菌(Escherichia coli)中へクローニングされたミュータシン1140についての人工遺伝子を用いた。この人工遺伝子では、チオエーテル橋架の形成に関与するセリン及びスレオニン残基のための天然のコドンをシステインコドンに置換した。この修飾遺伝子はpET32にクローニングされ、ジスルフィド結合を最大にするために、大腸菌(E.coli)のOrigami株中で発現させた。ジスルフィド基から1つの硫黄原子を押しだし、それによりチオエーテルに変換するための新規な化学的方法が開発された。一般に、この方法は実現可能ではあるが、ジスルフィド結合の置換(permutation)が多く、活性型を非活性異性体から分離することが困難であるため、得られる収率は低かった。 重なりあう環構造は、ナイシンA及び他のランチビオティクスの生物活性に重要だが、合成的に克服するのが難しい。in vitro合成法が、生物活性ペプチドを含む種々のランチオニン及びランチビオティクス合成のために広く研究されてきた。ランチビオティクス合成という挑戦は骨の折れるものであり、今までのところ、総合的な合成方法は開発されてこなかった。ランチオニン合成のいくつかの方法は文献に報告されている。これらは、塩基性または求核条件を用いて、構築済みのペプチド中のシスチン単位をin-situで脱硫することを含む(Galandeら(2003年)Biopolymers(Peptide Science)71巻,543-551頁)(非特許文献16);Galande&Spatola(2001年)Letters in Peptide Science 8巻,247-251頁)(非特許文献17)。脱硫法は、ジアステレオ選択性の欠如及び低収率のため、商業的には実現可能ではない。また、予め形成されたペプチド中にDha残基を生成し、続いてマイケル付加反応によりランチオニン環を形成する生体模倣法も用いられてきた。ペプチドの予備的構築は、おそらくジアステレオ選択的なマイケル付加をもたらす(Burageら(2000年)Chemistry A European Journal.6巻,1455-1466)(非特許文献18)。直交的に保護されたランチオニンを含む直鎖ペプチドを合成し、続いて環化し、環状ペプチド生成物を開裂する、オキシム樹脂上でのペプチド環化も用いられてきた。Melaciniら,(1997年),J.Med.Chem,2252-2258頁(非特許文献19);Osapayら,(1997年)Journal of Medicinal Chemistry.40巻,2441-2251頁(非特許文献20)。これらの方法は前途有望であるものの、重なりあうチオエーテル環を有するランチビオティクスを生成することはできない。既知のランチビオティクスの大半が重なりあう環を含むことを考慮すれば、このことは特に重要となる。 概念的に、生物学的アプローチ及び生物模倣型のアプローチに比べて、固相ペプチド合成(SPPS)法の修飾を含む、in vitro合成法を開発する明らかな利点がある。第一に、分子組成が生理学的なアミノ酸の正常なセットに限定されない。アミノ酸類似体の設計が可能であり、確立されている固相合成法を用いてそれを組み込むことができる。また平行合成を加えることができ、これにより劇的に候補基質数が増加する。この方法はもっぱらin vitroで実施され、生物活性分子のin vivo合成から生じる多くの懸念は払拭される。例えば、発酵中の産生物の分解も、生産微生物における生物活性分子の細胞毒性も問題にならない。 in vitro合成という目的を達成するため、潜在的に適切な保護基を有する直交ランチオニンが、予め形成されたDhaへのシステインのマイケル付加等の種々のアプローチを用いて、SPPSに合わせて設計された(Probertら、(1996年)Tetrahdron Letters.37巻,1101-1104頁)(非特許文献21)。この方法はジアステレオマーの1:1混合物をもたらし、それ故、商業的価値がないことがわかった。保護化システインによるセリンラクトンの開環も報告されたが、これはランチオニン及びチオエステルの混合物をもたらす。アジリジンの開環が研究されてきたが、これはα及びβ部位におけるアジリジンの開環による位置異性体混合物を生産することが判明した(Dugave&Menez(1997年)Tetrahedron-Asymmetry.8巻,1453-1465頁(非特許文献22);Swaliら,(2002年)Tetrahedron.58,9101-9109頁)(非特許文献23)。最近の報告は、保護化β-ブロモアラニンを用いて、適切に保護されたシステインをアルキル化することによりランチオニンを合成しうることを示唆するが、この方法では重なり合う環を有する分子は構築できない(Zhu(2003年)European Journal of Organic Chemistry.20,4062-4072頁(非特許文献24))。 市販のSPPSのFmoc/Boc保護類似体は、合成ランチビオティクス及び他の立体配座制限生物活性ペプチドの課題を解決するのに十分ではないため、当該技術分野には、複数の環構造及び重なり合う構造を含む内部環構造を作り出す、分子内架橋を有するペプチド合成が必要とされている。特に、ラージスケールでのランチビオティクス合成のためのin vitro法が必要である。米国特許USPA2004/0072333号Armstrongら、(1999年)PAMA.281巻、61-66頁Dessenら、(2001年)Curr.Drug Targets Infect Disord.1,11-16頁Rapp(2000年)Surg Infect(Larchmt).1巻,39-47頁Benin&Dowell(2001年)antibiotic resistance and implications for the appropriate use of antimicrobial agents,Humana Press,Totowa,NJRaら、(1996年)、Microbiology-UK.142巻,1281-1288頁Kupke&Gotz(1996年)、Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology,69巻,139-150頁Kuipersら,(1996年))Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology,69巻,161-169頁Chatterjeeら、(2005年)Chemical Reviews.105巻,633-683頁DelvesBroughtonら、(1996年)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology,69巻,193-202頁Kupke&Gotz(1997年)Journal of Biological Chemistry.272巻,4759-4762頁Kupkeら、(1992年)Journal of Bacteriology.174巻,5354-5361頁Kupkeら、(1993年)Fems Microbiology Letters.112巻,43-48頁Kupkeら(1995年)Journal of Biological Chemistry.270巻,11282-11289頁Kupkeら(1994年)Journal of Biological Chemistry.269巻,5653-5659頁Xieら,(2004年)Science.303巻,679-681頁Galandeら(2003年)Biopolymers(Peptide Science)71巻,543-551頁Galande&Spatola(2001年)Letters in Peptide Science 8巻,247-251頁Burageら(2000年)Chemistry A European Journal.6巻,1455-1466頁Melaciniら,(1997年)J.Med.Chem,2252-2258頁Osapayら,(1997年)Journal of Medicinal Chemistry.40巻,2441-2251頁Probertら、(1996年)Tetrahdron Letters.37巻,1101-1104頁Dugave&Menez(1997年)Tetrahedron-Asymmetry.8巻,1453-1465頁Swaliら,(2002年)Tetrahedron.58巻,9101-9109頁Zhu(2003年)European Journal of Organic Chemistry.20巻,4062-4072頁 従って、本発明は、少なくとも一つの分子内架橋を含む、分子内架橋ポリペプチドの合成法であって、(a)式:{式中、Lnは共有結合したアミノ酸側鎖を表し、D、E及びGは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、保護基Dを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基を除去するための反応条件とは異なる}で表される、特異的に保護された直交分子内架橋の遊離カルボキシ末端を、固相担体、または場合により固相担体に結合したアミノ酸若しくはポリペプチドの遊離アミノ末端にカップリングさせる;(b)保護基Eを除去して遊離アミノ末端を形成する;(c)前記遊離アミノ末端にアミノ保護化アミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規な遊離アミノ末端を得る;(d)場合により(c)を1回以上繰り返す;(e)保護基Gを除去して遊離カルボキシ末端を形成する;(f)(e)の前記遊離カルボキシ末端を前記遊離アミノ末端にカップリングさせる;(g)保護基Dを除去して遊離アミノ末端を形成する;及び(h)場合によりアミノ保護化アミノ酸を前記遊離アミノ末端に加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規な遊離アミノ末端を得る;及び(i)場合により(h)を1回以上繰り返す、各段階を含む方法を提供する。 本発明は、以下の段階を含む、二つの重なりあう分子内架橋を含む、分子内架橋ポリペプチドの合成法であって、 (a)式:[式中、Lnは共有結合したアミノ酸側鎖を表し、D、E及びGは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、保護基Dを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基を除去するための反応条件とは異なる]で表される、第一の特異的に保護された直交分子内架橋の遊離カルボキシ末端を、固相担体、または固相担体に場合により結合するアミノ酸若しくはポリペプチドの遊離アミノ末端に共有結合させる;(b)保護基Eを除去して遊離アミノ末端を形成する;(c)前記遊離アミノ末端にアミノ保護化アミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規な遊離アミノ末端を得る;(d)場合により(c)を1回以上繰り返す;(e)式:{式中、Lnは前記定義の通りであり、M、Q及びTは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、D及びMは異なる条件下でのみ除去され、G及びTは異なる条件下でのみ除去され、保護基Mを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基を除去するための反応条件とは異なり、E及びQは、Dを除去する条件及びMを除去する条件とは異なる条件下で除去される}で表わされる、第二の特異的に保護された直交分子内架橋の遊離カルボキシ末端を、前記遊離アミノ末端に共有結合させる;(f)保護基Qを除去して遊離アミノ末端を形成する;(g)場合により、前記遊離アミノ末端にアミノ保護化アミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規な遊離アミノ末端を得る;(h)場合により(g)を1回以上繰り返す;(i)第一の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Gを除去して遊離カルボキシ末端を形成する;(j)前記遊離カルボキシ末端を前記遊離アミノ末端にカップリングさせる;(k)第一の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Dを除去して遊離アミノ末端を形成する;(l)場合により、前記遊離アミノ末端にアミノ保護化アミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規な遊離アミノ末端を得る;(m)場合により(l)を1回以上繰り返す;(n)第二の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Tを除去して遊離カルボキシ末端を形成する;(o)前記遊離カルボキシ末端を前記遊離アミノ末端にカップリングさせる;(p)第二の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Mを除去して遊離アミノ末端を形成する;及び(q)場合により、前記遊離アミノ末端にアミノ保護化アミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規な遊離アミノ末端を得る;及び(r)場合により(q)を1回以上繰り返す、各段階を含む前記方法を提供する。 さらに、本発明は、二つの分子内架橋を含む分子内架橋ポリペプチドの合成法であって、前記二つの分子内架橋が、本明細書に定義されるように、連続して二つの環、または二つの埋め込み環を形成する方法を提供する。本発明は、さらに、ナイシンAを含むランチビオティクスの合成法を提供する。 別の態様において、本発明は、本明細書に開示された方法で合成された、分子内架橋ポリペプチドを提供する。 さらなる態様においては、本発明は、式:{式中、D及びEは異なる保護基であり、例えば、Fmoc、AllocまたはivDdeであり、Gは保護基であり、例えばプロパルギルエステルまたはベンジルエステルである}で表わされる、特異的に保護された直交分子架橋のランチオニンを提供する。図1は、環Eを形成する残基7と10との間、環Dを形成する残基9と12との間、環Cを形成する残基16と22との間、環Bを形成する残基24と27との間、環Aを形成する残基28と32との間の分子内架橋を含むナイシンA[配列番号:1]の構造を示す。環A、B及びCは連続する環構造を例示し、環D及びEは重なりあう環を例示する。また、合成したナイシンA類似体[配列番号:2]を示す。図2は、翻訳後に修飾されるアミノ酸の非限定的な例を示す。図3は、特異的に保護されたランチオニンを製造するための逆合成法を示す。図4は、Fmoc-保護化システインの合成方法を示す。図5は、N(Alloc)-D-βブロモアラニンプロパルギルエステルの合成法を含む、直交的に保護されたランチオニン1の合成法を示す。図6は、N(ivdDe)-D-βブロモアラニンベンジルエステルの合成法を含む、直交的に保護されたランチオニン2の合成法を示す。図7は、重なり合っている環C及びDを含む、ミュータシン1140(MU1140)の天然構造を示す。[配列番号:3]図8は、二つのMU1140類似体、構造A[配列番号:4]及び構造B[配列番号:5]を示す。図9は、MU1140類似体合成において使用するランチオニン1及び2の構造を示す。図10は、MU1140類似体合成のためのAlloc保護化ランチオニン1の合成を示す(環A、B及び環Dにカルボキシル基をもつMU1140類似体Aに関しては、図8、構造A)の合成法を示す。図11は、MU1140類似体合成のためのTroc保護化ランチオニン1の合成を示す。図12は、MU1140類似体合成のためのランチオニン2の合成を示す。図13は、MU1140類似体合成のためのランチオニン1及び2の別の製造法を示す。図14は、MU1140類似体合成のためのD環系の合成を示す。図15は、MU1140類似体合成のためのC環系の合成を示す。図16は、MU1140類似体合成のためのC/D環系の別の合成を示す。図17は、MU114類似体合成における環C/Dの製造のためのプロトコルを示す。図18は、MU1140類似体合成のためのBoc-Phe-Lys(Boc)-OHの製造を示す。図19は、MU1140類似体合成のためのFmoc-Trp(Boc)-Ala-Leu-OHの合成を示す。図20は、MU114類似体合成における環A系の合成を示す。図21は、MU114類似体合成における環B系の合成を示す。図22は、MU1140類似体合成におけるDhbのα-アミノ酪酸(Abu)の置換を示す。図23は、MU1140類似体合成におけるジペプチドBoc-Phe-Lys(Boc)-OHと環式ペプチド環Aのカップリングを示す。図24は、Boc-Phe-Lys(Boc)-環A-CO2HとN-脱保護化環Bとのカップリングを示す。図25は、MU1140の収束合成におけるさらなる段階を示す。図26は、MU1140の収束合成における最終段階を示す。 ペプチドの固相合成のために特異的に保護された直交ランチオニン技術(Differentially Protected Orthogonal Lanthionine Technology:DPOLT)を本明細書に開示する。この技術は、その活性カルボキシルおよびアミノ保護基が特異的に除去できる、様々な直交保護化ペプチド架橋の大量生産に依存する。直交保護化ペプチド架橋を例えば固相ペプチド合成で使用して、分子内架橋形成性環構造を含む、立体配座的に制限された生物活性ペプチドを製造することができる。特に、DPOLTを用いて、1を超える分子内架橋を有し、且つ重なり合う環構造を有するポリペプチドを合成することができる。 限定されるものではないが、DPOLTは、構造的に複雑なランチビオティクス(重なり合う環構造をもつものを含む)を商業的に実現可能な方法でin vitro製造することを可能にする。ランチビオティクスペプチドの合成は、例えば通常の固相ペプチド合成法を用いて、特異的に除去することができる保護基でその活性カルボキシル及びアミノ基が直交的に保護されているランチオニン類似体をペプチドに取り込むことにより実施される。この方法は、例えば、治療用途のための新規抗生物質を定常的に提供することを可能にする。 略語 本明細書で用いられる場合、略語は以下の意味を有する。 Alloc=アリルオキシカルボニル Boc=t-ブトキシカルボニル Bn=ベンジル Cbz=ベンゾキシカルボニル DMAP=ジメチルアミノピリジン DMF=ジメチルホルムアミド Fm=9-フルオレニルメチル Fmoc=9-フルオレニルメトキシカルボニル HMBC=異核多重結合相関 HMQC=異核多重量子相関 HPLC=高速液体クロマトグラフィー ivDde=1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソ-シクロヘキシリデン)-3-メチル-ブチル LC-MS=液体クロマトグラフィー−質量分析 MS=質量分析 NMR=核磁気共鳴分光法 NOESY=核オーバーハウザー効果分光法 Tce=2,2,2-トリクロロエチル TFA=トリフルオロ酢酸 TLC=薄層クロマトグラフィー TOCSY=全相関分光法 Troc=2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル Z=Cbz。 分子内架橋ポリペプチド 本明細書に開示される方法は、ランチビオティクスを含むがこれらに限定されない、分子内架橋ポリペプチドを合成するために用いることができる。本明細書で用いられるように、「ポリペプチド」、「タンパク質」及び「ペプチド」なる用語は、アミノ結合により結合したアミノ酸モノマーの鎖からなるポリマーを意味する。ポリペプチドは、1つのアミノ酸のα-炭素カルボキシル基と他のアミノ酸のアミノ基との縮合またはカップリング反応によって形成できる。従って、末端アミノ酸は鎖の一端(アミノ末端)に遊離アミノ基を有する一方で、末端アミノ酸は鎖のもう一方の端(カルボキシ末端)に遊離カルボキシル基を有する。本発明の分子内架橋ポリペプチドは、場合によりアミノ及び/またはカルボキシ末端上を含む様々な官能基または保護基によって、修飾または保護することができる。 本明細書で用いられる場合、「分子内架橋ペプチド(intramolecularly bridged peptide)」または「分子内架橋ポリペプチド(intramolecularly bridged poplypeptide)」なる用語は、少なくとも1つの分子内架橋を有するペプチド鎖を意味する。本明細書で用いられる場合、「分子内架橋」、「ペプチド架橋」、「分子内架橋部分」または「架橋」なる用語は、単一ペプチド鎖中に含まれるか、または単一ペプチド鎖中に取り込ませるために製造される2つのアミノ酸残基が、その側鎖を経て互いに共有結合している場合に形成される構造を意味する。このような結合は内部架橋ポリペプチドを生成する。本明細書で用いられる場合、「環」または「環構造」なる用語は、分子内架橋したポリペプチドの架橋部分、すなわち共有結合した2つのアミノ酸残基及びこれらの間のポリペプチド鎖、並びにそれらの側鎖によって形成される共有結合を含む構造を意味する。 本発明の分子内架橋ペプチドは一般式:{式中、AはHまたはアミノ末端保護基であり;ZはHまたはカルボキシ末端保護基であり;Xnは共有結合、単一アミノ酸、または少なくとも2アミノ酸長のペプチド鎖であり;Rnは、その側鎖を介して分子内架橋を形成するアミノ酸残基である}を有する。単一「X」ペプチド鎖中の側鎖、または異なる「X」ペプチド鎖中に位置するアミノ酸の間に、さらに分子内架橋があってもよい。 本明細書で用いられる場合、「アミノ末端保護基」及び「カルボキシ末端保護基」なる用語は、反応部位(それぞれ本発明においては、アミノ基及びカルボキシ基)に付加、及び場合によりそこから除去して、反応部位以外の部位で化学物質を操作することを可能とする任意の化学部分をさす。 本発明の分子内架橋ポリペプチドのアミノ酸としては、天然アミノ酸、並びに非天然アミノ酸、アミノ酸類似体及びペプチド模倣薬などの二十種類のアミノ酸を含み得る(Spatola,(1983)、Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides,and Proteins、Weinstein編、Marcel Dekker,New York,267頁)。本発明で用いられるアミノ酸はすべて、D-またはL-光学異性体のいずれであってもよい。好ましい態様では、本発明の分子内架橋ポリペプチドには、任意の組み合わせで以下の残基:2,3-ジデヒドロアラニン(Dha)、(Z)-2,3-ジデヒドロブチリン(Dhb)、ヒドロキシプロピオニル、2-オキソブチリル、及び2-オキソプロピオニルの1つ以上が含まれる(図2を参照されたい)。 本発明の分子内架橋ペプチドが、1を超える分子内架橋を有し、広範囲の可能な構造を形成しうることが当業者によって理解されるだろう。例えば、2つの分子内架橋を含む分子内架橋ポリペプチドについては、分子内架橋は、以下に示すように、連続型(in series)、埋め込み型(embedded)または重なり合い型(overlapping)であってもよい。 2つの分子内架橋が重なり合っている場合、これは第二の分子内架橋の1つのアミノ酸が、主アミノ酸配列(primary amino acid sequence)において、第一の分子内架橋の2つのアミノ酸の間にあり、第二の分子内架橋のもう1つのアミノ酸が、第一の分子内架橋の両方のアミノ酸の前か、または後ろのいずれかにあることを意味する。2つの分子内架橋が連続している場合、これは第二の分子内架橋の両方のアミノ酸が、主アミノ酸配列において、第一の分子内架橋の両方のアミノ酸の前または後ろにあることを意味する。2つの分子内架橋が埋め込まれている場合、これは第二の分子内架橋の両方のアミノ酸が、主アミノ酸配列において、第一の分子内架橋の2つのアミノ酸の間にあることを意味する。 分子内架橋ペプチドが3つ以上の分子内架橋を有する場合、より多くの可能な構造が形成され得る。例えば、複数の重なり合う環が存在し得る。非限定的な具体例において、分子内架橋ポリペプチドは5つの分子内架橋を有してもよく、ここでその5つの架橋のうち2つは重なり合う環構造を形成し、残りの3つの架橋は互いに連続し、環と重なり合っている。ランチビオティック・ナイシンAはこのような構造を表す(図1を参照されたい)。 好ましい態様においては、本発明の分子内架橋ポリペプチドはランチビオティックなペプチドである。さらに好ましい態様においては、本発明の分子内架橋ポリペプチドはナイシンA及びその類似体である。 特異的に保護される直交分子内架橋 本発明の直交的に保護される分子内架橋は以下の一般式:(式中、Lは共有結合したアミノ酸側鎖を表し、D及びEは水素またはアミノ末端保護基であり、G及びJは水素またはカルボキシ末端保護基である)を有する。 アミノ酸側鎖を含む結合は、チオエーテル、ジスルフィド、アミドまたはエーテルであってもよいが、これらに限定されない。好ましい態様においては、分子内架橋はチオエーテル結合を含む。 ポリペプチド合成における「特異的に保護された(differentially protected)」または「直交的に保護された(orthogonally protected)」分子内架橋の取り込みは、他の分子内架橋を含むペプチド鎖の他の部分の保護基の除去とは別に、その保護基の選択的な除去をもたらす。言い換えれば、特定の分子内架橋の保護基は、その開裂条件がポリペプチドの他の保護基または官能基の安定性を妨害することがないように選択される。これらの基の脱保護中の交差反応性は最小であり、標準的な質量分析技術によってモニターできる。所望の生成物は、これらの不純物から、標準的なHPLCまたは他の技術によって精製することができる。開裂は、任意の選択された優先順位で行うことができる。 保護基、及び保護基を導入及び除去する方法は、例えば、"Protective Groups in Ogranic Chemistry,"Plenum Press,London,N.Y.1973年及び"Methoden der organischen Chemie,"Houben-Weyl,第四版,15/1巻,Georg-Thieme-Verlag-,Stuttgart、1974年及びTheodora W.Greene,"Protective Groups in Organic Synthesis,"John Wiley&Sons,New York、1981年に開示されている。多くの保護基の特徴は、容易に除去できること、すなわち、望ましくない二次反応の発生なく、例えば加溶媒分解、還元、光分解により、有機パラジウム及び有機コバルト触媒等の有機金属触媒の使用により、または生理的条件下で実施できることである。 当該技術分野において多数の保護基が知られている。実例となる、非限定的な保護基のリストとしては、メチル、ホルミル、エチル、アセチル、t-ブチル、アニシル、ベンジル、トリフルオロアセチル、N-ヒドロキシスクシンイミド、t-ブトキシカルボニル、ベンゾイル、4-メチルベンジル、チオアニジル、チオクレジル、ベンジルオキシメチル、4-ニトロフェニル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、2-ニトロフェニルスルフェニル、4-トルエンスルホニル、ペンタフルオロフェニル、ジフェニルメチル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、トリフェニルメチル、及び2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニルが挙げられる。種々の異なるタイプのアミノ保護基及びカルボキシ保護基については、例えば、米国特許第5,221,736号(1993年6月22日発行)、米国特許第5,256,549号(1993年10月26日発行)、米国特許第5,049,656号(1991年9月17日発行)、及び米国特許第5,521,184号(1996年5月28日発行)を参照されたい。 標的の分子内架橋ポリペプチドの合成中に選択的に除去できる保護基であれば、保護基のどのような組み合わせをも用いることができる。好ましい態様においては、アミノ末端保護基は、Fmoc、Alloc及びivDdeからなる群から選択される。他の好ましい態様においては、カルボキシ末端保護基は、プロパルギルエステル及びベンジルエステルからなる群から選択される。 特定の態様においては、アミノ末端保護基は、Boc、Troc、Alloc及びivDde、Cbz及びFmocからなる群から選択され、カルボキシ末端保護基は、フルオレニルメチル(Fm)エステル、メチルエステル、ベンジルエステル、アリルエステル及びTceエステルからなる群から選択される。 好ましい態様においては、直交的に保護される分子内架橋は、直交的に保護されるランチオニンまたはランチオニン誘導体である。さらに好ましい態様においては、直交的に保護される分子内架橋は、アミノ末端及び/またはカルボキシ末端保護化ランチオニン(Lan)、β-メチルランチオニン(MeLan)、S-[(Z)-2-アミノビニル]-D-システイン(AviCys)、またはS-[(Z)-2-アミノビニル]-2-メチル-D-システインである(図2を参照されたい)。このような直交的に保護される分子内架橋は、当該技術分野における既知の方法で合成できる。 さらに好ましい態様においては、分子内架橋はランチオニンである。保護化ランチオニンは、通常の方法を用いて、図3に示すように逆合成的に合成できる。ランチオニン生成物の立体化学は、この段階で、適切なアミノ酸、例えばシステイン及びセリンの正確な立体異性体から開始することにより確実にできる。 さらに好ましい態様においては、分子内架橋は、ランチオニン1またはランチオニン2:であり、これらは例えば、それぞれ図5及び図6に概説するように合成できる。簡単には、図5を参照すると、ランチオニン1については、D-セリンをそのアミノ末端保護化Alloc誘導体に変換し、続いてカルボキシ末端保護化プロパルギルエステルに変換する。N(Alloc)-D-セリンプロパルギルエステルをその対応するβ-ブロモアラニン誘導体に変換する。この変換は、例えば、N(Alloc)-D-セリンプロパルギルエステルをジクロロメタンに溶解し、この溶液を1当量の四臭化炭素及びトリフェニルホスフィンで処理することにより実施できる。これらの反応は非常に穏やかであり、ヒドロキシルを臭化物に変換するために通常用いられている(Zhu(2003年)European Journal of Organic Chemistry.20巻,4062-4072頁)。あるいは、合成はトルエンまたはジクロロメタン等の溶媒中で三臭化リンを用い、その後弱塩基性の後処理を行って、所望のD-β-ブロモアラニンを得る(Olahら(1980年)Journal of Organic Chemistry.45巻,1638-1639頁)。他の方法も用いることができる。最終的に、β-ブロモアラニン誘導体は、適切なアルキル化条件下でFmoc-L-Cysと反応させ、ランチオニン1を形成する。ランチオニン2は、図6に概説するように、同様に合成できる。 分子内架橋ポリペプチドの合成 本発明の分子内架橋ポリペプチドは、固相ペプチド合成(SPPS)、溶液相ペプチド合成、天然の化学的連結、インテイン媒介タンパク質連結(intein-mediated protein ligation)、及び化学的連結またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない、直交的に保護される分子内架橋の使用及び取り込みを与える任意の手段により合成できる。好ましい態様においては、本発明の分子内架橋ポリペプチドは、標準SPPSの改良版により合成する。本発明の分子内架橋ポリペプチドは、手動SPPSによっても、市販の自動化SPPSシンセサイザーを用いることによっても合成できる。 SPPSは、1960年代前半より当該技術分野において知られており(Merrifield,R.B.,J.Am.Chem.Soc.,85巻:2149-2154頁,1963年)、広く用いられている。一般的アプローチにおいていくつか既知の変形がある(例えば、"Peptide Synthesis,Structures,and Applications“(著作権)1995年、Academic Press,第3章及びWhite(2003年) Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,A practical Approach,Oxford University Press,Oxfordを参照)。非常に簡単には、固相ペプチド合成において、所望のC-末端アミノ酸残基を固相に結合させる。ペプチド鎖に加えるべき次のアミノ酸を、そのアミノ末端においてBoc、Fmocまたは別の適切な保護基で保護し、そのカルボキシ末端を標準的なカップリング試薬で活性化する。担体に結合したアミノ酸の遊離アミノ末端を、次のアミノ酸と反応させ、2つのアミノ酸をカップリングさせる。伸長しつつあるペプチド鎖のアミノ末端を脱保護し、所望のポリペプチドが完成するまでこの工程を繰り返す。 本発明の方法によれば、特異的に保護される直交分子内架橋を標準SPPSに組み込むことにより、分子内架橋ペプチドを合成できる。分子内架橋の一部ではないポリペプチド鎖の部分は、当該技術分野で既知の標準SPPS技術により合成できる。好ましい態様においては、アミノ末端をFmoc-またはBoc-保護したアミノ酸が用いられる。さらに好適な実施形態においては、FmocベースのSPPSが用いられる。特異的に保護される直交分子内架橋は、その活性アミノ及びカルボキシ基の選択的脱保護により、ポリペプチド鎖中に取り込まれる。 本発明の方法は、一般式III:(式中、A、Xn、及びRnは式Iについて上で定義した通りである)で表わされるような単一分子内架橋を有する、分子内架橋ポリペプチドを合成するために用いることができる。このようなポリペプチドは、一般式IV:(式中、Lは共有結合アミノ酸側鎖を表し、D及びEはアミノ末端保護基であり、Gはカルボキシ末端保護基である)で表わされる単一分子内架橋を用いて製造される。 簡単には、分子内架橋は、固相担体に結合したペプチド鎖に、その遊離カルボキシ末端を介して、または固相担体に直接結合される。分子内架橋の遊離アミノ末端に追加のアミノ酸をカップリングさせ、次いでこれを脱保護する(Eの除去)。分子内架橋の残りのカルボキシ基上の保護基(G)を除去し、このように形成されたポリペプチド鎖の遊離アミノ末端にこのカルボキシ基を結合させる。場合により、追加のアミノ酸を順番に残りのアミノ基に加えることができる。 本発明のポリペプチドの合成の間、どの時点においても、伸長しつつあるペプチド鎖上に、唯一の「遊離アミノ末端」、及びこの前記遊離アミノ末端に結合させるべき単一の「遊離カルボキシ末端」が存在するだろう。アミノ酸が追加され、脱保護されるたびに、遊離アミノ末端は、追加されたアミノ酸によってブロックされ、次に新しく追加されたアミノ酸が脱保護されると、新しい遊離アミノ末端が形成される。当業者は、こうした状況では、単一のアミノ末端のみが存在することを理解するだろう。 より具体的には、単一の分子内架橋をもつ分子内架橋ポリペプチドの合成において、Dは、保護基Dの除去のための反応条件がEまたはGの除去、及び/またはポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基の除去とならないように、選択される。また、逆も適用される。言い換えると、非限定的な具体例として、Fmoc−ベースのSPPS(Fmoc-based SPPS)を用いてポリペプチドを合成する場合、Dは、E、G及び/またはFmocを除去しない条件下で選択的に開裂することができるように、選択される。同様に、D及びGは、Fmoc除去のための条件がDの開裂もGの開裂ももたらさないように選択される。好ましい態様において、アミノ保護基Eは、ポリペプチド鎖の、分子内架橋の一部ではないアミノ酸のアミノ保護基と同等である。従って、例えば、Fmoc-ベースのSPPSを使用する場合、Eは好ましくはFmocである。 分子内架橋ポリペプチドの合成は、C-末端アミノ酸の固相担体へのカップリングによって開始する。「固相担体」なる用語は、その上でポリペプチドが合成される任意の固相材料を意味する。固相担体は、「樹脂」、「固相」及び「担体」等の用語を包含する。固相担体は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、及びポリアクリルアミド、並びにそれらのコポリマー及びグラフト等の有機ポリマーから構成することができる。固相担体は、また、ガラス、シリカ、多孔性ガラス(controlled-pore-glass:CPG)、または容易な方法でアミノ酸が結合及び開裂できる、好適な基をもつ逆相シリカ等の無機物であってもよい。固相担体の形状は、ビーズ、球、粒子、顆粒、または表面であってもよい。表面は、平面、ほぼ平面、または非平面であってもよい。固相担体は多孔性または非多孔性であってもよく、膨潤性または非膨潤性の特徴を有していてもよい。固相担体は、ウェル、くぼみまたは他の容器の形態で構成されていてもよい。複数の固相担体を列状に構成してもよく、これは、ロボットによる試薬の送達のために、またはレーザー照射、及び共焦点若しくは偏向光収集(deflective light gathering)による走査などの検出手段によりアドレス可能であってもよい。多数の固相担体が市販されている。第一のアミノ酸の固相担体へのカップリングは、当該技術分野で既知のアッセイにより、その完了を監視することができる。 好ましい態様においては、ポリペプチド鎖合成でFmocアミノ酸を用いる。Fmocアミノ酸は市販されているか、当該技術分野において既知の方法により合成できる。標準SPPS法を用いて、追加のアミノ酸をポリペプチド鎖に追加できる。例えば、Fmocアミノ酸を使用する場合、C-末端アミノ酸のFmocアミノ保護基は、樹脂に一度カップリングした後、例えばDMF中の20%ピペリジンに曝露することによって除去できる。次のFmocアミノ酸は、標準カップリング化学を用いてポリペプチド鎖にカップリングできる。反応性側鎖をもつアミノ酸は、目的とする分子内架橋ポリペプチドの合成の間中、その側鎖が保護されたままであるように、適切な保護基を用いて保護することができる。カップリング及び脱保護の段階は、適切なアミノ酸を用いて所望により繰り返してもよい。このことにより、一般式IIIのX3の合成が完了する。 分子内架橋は、標準カップリング化学により、伸長しつつあるポリペプチド鎖にカップリングさせる。あるいは、分子内架橋が分子内架橋ポリペプチドのC-末端に位置する場合、分子内架橋は、その遊離カルボキシ基を介して樹脂に直接カップリングできる。次いで、保護基Eを適切な条件下、例えばEがFmocである場合にはDMF中の20%ピペリジンを用いて、選択的に除去する。一般式IIIを参照すると、まずR2をポリペプチド鎖にカップリングさせる。逐次的なカップリング及び脱保護により、1以上のアミノ酸が続いてポリペプチド鎖に追加され得る(一般式IIIのX2)。 次に、適切な条件下で保護基Gを選択的に除去する。好ましい態様において、Gは、ジクロロメタン中のジコバルト-オクタカルボニルを用いて開裂できるプロパルギル基、またはジクロロメタン中のパラジウム炭素及びシクロヘキサジエンを用いる水素化プロトコルを用いて開裂できるベンジルエステルのいずれかである。このことにより、一般式IIIのR1の付加は完了し、それにより、分子内架橋がポリペプチド中に完全に組み込まれ、環構造が形成される。 次いで、適切な条件下で保護基Dを選択的に脱保護する。好ましい態様において、Dは、ジクロロメタン中の20mol%のPd(PPh3)4及び20〜25当量のPhSiH3を用いて開裂できるAllocか、またはDMF中の2〜10%ヒドラジンにより開裂できるivDdeである。続いて、分子内架橋ポリペプチドは逐次カップリング及び追加のアミノ酸(一般式III中のX1)の脱保護により、伸長することができる。 連続して複数の環をもつ、すなわち1を超える分子内架橋をもつ分子内架橋ポリペプチドは、単一の特異的に保護された分子内架橋を用いて同様に合成できる。場合により、その保護基のみが相互に異なる、特異的に保護された1を超える分子内架橋を用いて、複数の環をもつポリペプチドを合成することができる。その側鎖構造(例えば、Lan及びMeLan)において異なる複数の特異的に保護された分子内架橋を用いて、種々の分子内架橋部分を取り込むこともできる。このような、次の架橋における保護基は、ポリペプチド鎖に組み込まれた第一の分子内架橋における保護基と同一であっても異なってもよい。複数の環を連続してもつ分子内架橋ポリペプチドは、第一の分子内架橋をポリペプチド鎖中に完全に組み込んで第一の環構造を形成し、末端アミノ保護基を除去し、場合により追加のアミノ酸の逐次カップリング及び脱保護によってポリペプチド鎖を伸長し、そのカルボキシ末端を介して第二の分子内架橋(第一の分子内架橋と同一または異なる)を完全に組み込み、場合によりポリペプチドを伸長し、そして、所望によりこれらの段階を繰り返して標的の分子内架橋ポリペプチドを合成することにより、合成することができる。 重なり合っているか、または埋め込まれている複数の環をもつ分子内架橋ポリペプチドについては、1を超える直交的に保護された分子内架橋を用いる必要がある。複数の、直交的に保護される分子内架橋の側鎖構造は同一であっても異なってもよいが、保護基は、それぞれのアミノ及びカルボキシ基の選択的脱保護を可能にするために特異的に直交的に保護されなければならない。そのような架橋の数は、重なり合うかまたは埋め込まれた環の数により異なる。例えば、分子内架橋されたポリペプチドの2つの環が互いに重なり合う場合、または1つが他方に埋め込まれている場合には、2つの異なる選択的に保護された直交分子内架橋が用いられる。例えば、3つの環が互いに重なり合う場合、または互いに埋め込まれている場合、3つの異なる特異的に保護された直交分子内架橋が用いられる。 非限定的な例においては、目的とする分子内架橋ポリペプチドが2つの重なり合う環を有する場合、一般式V及びVI:の二つの特異的に保護された直交分子内架橋が用いられる{式中、L1及びL2は共有結合したアミノ酸側鎖(L1はL2と同一であっても異なっていてもよい)を表し、D、M、E及びQはアミノ末端保護基であり、G及びTはカルボキシ末端保護基であり、D及びMは異なる条件下でのみ開裂し、E及びQは同じ条件下で開裂してもよく、ここでE及びQは、Dを開裂する条件及びMを開裂する条件とは異なる条件下で開裂し、G及びTは異なる条件下でのみ開裂する}。好ましい態様においては、アミノ保護基E及びQは、分子内架橋の一部ではないポリペプチド鎖のアミノ酸のアミノ保護基と同等である。従って、例えばFmoc-ベースのSPPSを用いる場合、E及びQは好ましくはFmocであるが、これに限定されない。このような状況では、E及びQは、例えばBocであってもよい。 本発明の方法によれば、2つの重なり合う環を含む分子内架橋ポリペプチドは、まず、C-末端アミノ酸を固相担体にカップリングさせることにより合成できる。追加のアミノ酸を、場合により標準SPPS法を用いてポリペプチド鎖に加えることができる。好ましい態様においては、Fmocアミノ酸はポリペプチド鎖の合成で用いられる。反応性側鎖をもつアミノ酸は、目的とする分子内架橋ポリペプチドの合成の間中、その側鎖が保護されたままであるように適切な保護基で保護することができる。所望により、適切なアミノ酸を用いて、カップリング及び脱保護の段階を繰り返してもよい。次いで、一般式Vで表わされる分子内架橋を、その遊離カルボキシ基を介して伸長しつつあるペプチド鎖にカップリングし、続いてEを開裂する。D及びGは影響を受けないままである。好ましい態様において、EはFmocである。次いで、場合により標準SPPSに従って、カップリング及び脱保護段階を繰り返すことにより、1つ以上のアミノ酸を順番にポリペプチドの遊離アミノ末端にカップリングさせることができる。次いで、一般式VIで表わされる分子内架橋を、その遊離カルボキシ基を介して伸長しつつあるペプチド鎖にカップリングし、次いでQを開裂する。D、G、M及びTは影響を受けないままである。好ましい態様において、QはFmocである。再び、場合により1つ以上のアミノ酸をポリペプチドの遊離アミノ末端に順番にカップリングさせてもよい。次いで、第一の環を形成するために、適切な脱保護化学を用いてGを開裂し、得られた遊離カルボキシ基を、ポリペプチド鎖の遊離アミノ末端にカップリングさせる。保護基D、M及びTは影響を受けないままである。次いで、保護基Dを適切な条件下で除去し、遊離アミノ基を露出させる。Dの開裂中、保護基M及びTは影響を受けないままである。次いで、場合により追加のアミノ酸をポリペプチドのN-末端の遊離アミノ基にカップリングしてもよい。第二の環を形成し、それによって重なり合う環を形成するためには、適切な条件下でTを開裂し、得られた遊離カルボキシ基をポリペプチド鎖の遊離アミノ末端にカップリングさせる。次いで、適切な条件下で保護基Mを開裂し、追加のアミノ酸を順番にカップリングさせることにより、ポリペプチド鎖をさらに伸長させることができる。 本発明の方法によれば、2つの埋め込まれた環を含む分子内架橋ポリペプチドは、一般式V及びVIで表わされる2つの特異的に保護された直交分子内架橋を用いて同様に合成できる。2つの埋め込まれた環を含む分子内架橋ポリペプチドの合成は、2つの重なり合う環を含む分子内架橋ポリペプチドの合成と同様であるが、式V及びVIで表わされる分子内架橋の脱保護及びカップリングの順番においてのみ異なる。具体的には、式Vで表わされる分子内架橋は、そのカルボキシ末端を介して固相担体に結合したペプチド鎖の遊離アミノ末端にカップリングさせるか、または、式Vで表わされる分子内架橋を直接固相担体にカップリングさせる。次いでEを開裂し、次いで標準SPPSに従って、カップリング及び脱保護段階を繰り返すことにより、1つ以上のアミノ酸を順番にポリペプチドの遊離アミノ末端にカップリングさせることができる。次に、一般式VIで表わされる分子内架橋を、その遊離カルボキシ基を介して伸長しつつあるペプチド鎖にカップリングし、次いでQを開裂する。再び、場合により1つ以上のアミノ酸をポリペプチドの遊離アミノ末端に順番にカップリングしてもよい。第一の環を形成するためには、適切な脱保護化学を用いてTを開裂し、得られた遊離カルボキシ基をポリペプチド鎖の遊離アミノ末端にカップリングする。続いて、適切な条件下で保護基Mを除去し、遊離アミノ基を露出させる。次いで、場合により追加のアミノ酸をポリペプチドのN-末端の遊離アミノ基にカップリングさせることができる。第二の環を形成し、それによって埋め込まれた環を形成するためには、適切な条件下でGを開裂し、得られた遊離カルボキシ基をポリペプチド鎖の遊離アミノ末端にカップリングさせる。次いで、適切な条件下で保護基Dを開裂し、追加のアミノ酸を順番にカップリングさせることにより、ポリペプチド鎖をさらに伸長させることができる。 当業者は、もっと複雑な分子を前述の方法の変形によって同様に製造できることを認識するだろう。例えば2つの重なり合う環及び3つの追加の環を順番にもつポリペプチドは、重なり合う環を含む分子内架橋ポリペプチドの合成のために開示された方法と、連続した環をもつ分子内架橋ポリペプチドの合成のために開示された方法とを組み合わせることによって合成できる。 さらに、当業者には、本明細書で開示されたDPOLT方法は、液相ペプチド合成若しくは収束合成、若しくはその任意の組み合わせ、または固相ペプチド合成と合わせて使用することができることが理解されるだろう。たとえば、最終の所望の配列の架橋化ポリペプチドセグメントを連結しているペプチドは、液相または固相ペプチド合成によって合成することができる。架橋化ポリペプチドセグメントは、通常、本明細書中で列挙するように、SPPSまたは溶液化学を使用して製造することができる。 より具体的には、分子内架橋の一部または分子内架橋の間にあるペプチドセグメントは、SPPSまたは液相ペプチド合成により合成、単離、場合により精製することができる。分子内架橋の一部であるペプチドセグメントの場合には、これらを製造し、続いてランチオニンに結合させ、その後本明細書に記載したように、分子内架橋を形成することができる。 非限定的な例において、重なりあう分子内架橋は、一般式VII及びVIII:{式中、L1及びL2は共有結合したアミノ酸側鎖(L1はL2と同一であっても異なってよい)を表し、D、M、E及びQはアミノ末端保護基であり、G、T、J及びVは、カルボキシ末端保護基であり、ここでD、M、E及びQは、異なる条件下で開裂し、G、J、T及びVは、D、M、E及びQを開裂する条件とは異なる条件を含む、異なる条件下で開裂する}の二つの特異的に保護された直交分子内架橋を使用して合成することができる。特定の場合には、D及び/またはEの開裂条件は、特に例えばEの開裂がQの存在下で実施されない場合には、M及び/またはQの開裂条件と同一であってもよい。同様に、特定の場合には、G及び/またはJの開裂条件は、特に例えばGの開裂がTの存在下で実施されない場合には、T及び/またはVの開裂条件と同一であってもよい。 特定の場合には、分子内架橋ポリペプチドのC-末端で別の化学的性質(chemistry)、即ちカルボキシ部分以外の部分をもつのが望ましいかもしれない。従って特定の態様では、重なりあう分子内架橋は、一般式IXおよびX:{式中、Rは、以下の基に限定されないが、-C(O)-O-J、-H、または-C(O)-NRaRbなどの任意の基であり得、ここでRa及びRbは-Hであるか、任意の置換基であり得、ここでL1及びL2は共有結合したアミノ酸側鎖(L1はL2と同一であっても異なってよい)を表し、D、M、E及びQはアミノ末端保護基であり、G、T、J及びVは、カルボキシ末端保護基であり、ここでD、M、E及びQは、異なる条件下で開裂し、G、J、T及びVは、D、M、E及びQを開裂する条件とは異なる条件を含む、異なる条件下で開裂する}の二つの特異的に保護した直交分子内架橋を使用して合成することができる。特定の態様では、Rは-C(O)-OHではない。特定の場合には、D及び/またはEの開裂条件は、特に例えばEの開裂がQの存在下で実施されない場合には、M及び/またはQの開裂条件と同一であってもよい。同様に、特定の場合には、G及び/またはJの開裂条件は、特に例えばGの開裂がTの存在下で実施されない場合には、T及び/またはVの開裂条件と同一であってもよい。 さらに、当業者は、本発明の分子内架橋ペプチドは、ペプチドの種々の要素の収束合成によって製造し得ることを理解するだろう。即ち、二つの重なりあう分子内架橋を含む分子内架橋ポリペプチドは、本明細書中に記載の重なりあう分子内架橋を含むセグメントを合成し、このセグメントを追加のポリペプチドセグメントにカップリングさせることにより合成することができる。追加のポリペプチドセグメントは、一つ以上のアミノ酸、分子内架橋を含むポリペプチドを含む線状ペプチド鎖、または二つの重なりあう分子内架橋を含む線状ペプチド鎖であってもよい。収束合成に必要な方法は、当業者には公知である。 分子内架橋ポリペプチドの合成の間、合成の進行及び精度は場合により、Maldi及びLC-MSを含むがこれらに限定されない、当該技術分野において既知の種々の技術によって監視してもよい。合成完了後、分子内架橋ポリペプチドを、適切な条件下で固相担体から開裂する。合成したペプチドがかなりの量の硫黄を含む場合(例えば、ランチオニンを含むポリペプチド)、TFA/チオアニソール/水/フェノール/エタンジチオール(82.5/5/5/5/2.5)混合物(cocktail)を用いてもよい。開裂反応の進行は、LC-MSまたは他の適切な方法によって定期的に監視してもよい。選択された側鎖保護基に依存して、その開裂は樹脂からのポリペプチドの開裂の間に行ってもよく、または分離段階で行ってもよい。最終生成物は、例えば冷エーテルからの沈殿によって分離し、逆相HPLCを含むがこれに限定されない既知の方法により精製できる。 本発明の分子内架橋ポリペプチドは、既知の技術によって、構造的に及び生化学的機能について解析することができる。構造解析は、2次元NMR及びX線結晶学を含むが、これらに限定されない技術によって実施できる。分子内架橋ポリペプチドは、60msの混合時間にて獲得される2次元NMR TOCSY(Braunschweiler&Ernst(1983年),Journal of Magnetic Resonance 53巻,521-528頁)、及び200ms、400ms、450msにて獲得されるNOESY(Kumarら(1980年),Biochem.Biophys.Res.Commun.95巻,1-6頁.Smith,J.L.(2002年)Dissertation,University of Florida,Gainesville.Smithら.(2000年),European Joural of Biochemistry 267頁,6810-6816頁)を用いて構造的にうまく解析された。 好ましい態様において、本発明の方法は、1つ以上の(単数または複数種類の)ランチオニンまたはランチオニン誘導体を含む分子内架橋ポリペプチドの合成に用いられる。さらに好ましい態様において、本発明の方法はランチビオティクスの合成に用いられる。さらに好ましい態様において、本発明の方法はナイシンA及びその類似体の合成に用いられる。 ナイシンA及びその類似体は、既知の方法(Hillmanら.(1984年),Infection and Immunity 44巻,141-144頁;Hillmanら(1998年),Infection and Immunity 66巻,2743-2749頁)を用いて生物学的活性を測定できる。本発明の方法によって合成されたナイシンA及びその類似体の構造解析は、先にVan De Yenら(1991年,European Journal of Biochemistry 202巻,1181-1188頁)によりNMRによって決定された、生物学的に生成されたナイシンAの三次元構造との比較により補助することができる。この初期の共有結合の構造決定作業から得られたアミノ酸配置から、本発明の方法によって合成されたナイシンA及びその類似体の構造決定のために共有結合を迅速に特徴付け、且つ全ての関連する長距離NOE(long range NOE)を同定することが可能である。 DPOLT技術の応用 DPOLTは、多くの専門分野にわたるアプローチから発生するプラットフォーム技術である。この技術を魅力のあるものにするいくつかの利点がある。何よりもまず、その解析のための発酵及び精製方法を工夫するために多くの時間及び費用を費やすことなく、治療薬の領域における潜在的な用途についての相当数の候補ランチビオティクス及び他の生物活性ペプチドの迅速合成及びスクリーニングを可能にする。重なり合うチオエーテル架橋を含む約50種のランチビオティクスがあり、毎年さらに発見されており、これらは本明細書に開示される方法によって合成できる。これらのランチビオティクスには、A型(I)ランチビオティック・ナイシンA、ナイシンZ、サブチリン、エリシンS、エリシンA、ストレプチン、エピデルミン、[Val1-Leu6]-エピデルミン、ガリデルミン、ミュータシン1140、ミュータシンB-Ny266、ミュータシンIII、ミュータシンI、Pep5、エピランシンK7、及びエピシジン280;A型(II)ランチビオティック・ラクチシン481、バリアシン、ミュータシンII、ストレプトコッキンA-FF22、サリバリシンA、[Lys2-Phe7]-サリバリシンA、プランタリシンC、サブランシン168、及びブチリビブリオシンOR79A;B型ランチビオティック・シンナマイシン、デュラマイシン、デュラマイシンB、デュラマイシンC、クラマイシンC、アンコベニン、メリサシジン、アクタガルジン、Ala(0)-アクタガルジン、及びサブチロシンA;二成分ランチビオティック・ラクチシン3147A1、ラクチシン3147A2、スタフィロコッキンC55α、スタフィロコッキンC55β、プランタリシンWα、プランタリシンWβ、サイトリシンLL、サイトリシンLS;及びルミノコッキンA、カルノシンUI49、マセドシン、ボビシンHJ50、ヌカシンISK-1、及びSapBモルフォゲン等の他のランチビオティクスが含まれる(例えば、Chatterjeeら,2005年.Chem.Rev.105巻,633-83頁参照)。 過去の経験から、多くのランチビオティクスを発酵及び精製する多くの方法はすぐに完成しないと思われる。50年以上前に発見されたナイシンAは、治療薬としての開発のための迅速且つ適切な精製方法を発見するため、精力的に研究され続けている。近年の米国特許出願(米国特許出願第2004/0072333号)はこの目的を達成することを試みているが、種々の高価なプロテアーゼ及び複数の精製工程を用いている。DPOLTによって用いられるSPPS法は、もっと費用効率の高い方法で所望の目的を達成するようである。現在、オキシトシン、サンドスタチン及びフューゼオン等のSPPS法を用いて合成される35種類を超える生物活性分子が市販されており、長期にわたる需要は確実に増えるだろう。DPOLTの使用は、意図された目的のための新規かつ改良された治療薬を発見するための最適な方法を提供するコンビナトリアルライブラリ・アプローチであっても、アミノ酸及びそれらの類似体の部位特異的置換を可能にする。この点について、DPOLTは、重なり合う環をもつ分子を合成する唯一存在する技術であり、種々の用途における使用のために、ランチビオティクスに加え、様々な生物活性分子を生成する可能性を有する。DPOLTはin-vitro生成、例えば、通常の固相ペプチド合成法を用いて、商業的に実現可能な様式で生成される複雑な構造のランチビオティクス(重なり合う環構造を有するものを含む)の生成を可能にする。 DPOLTは、市販用途の新規ランチビオティクスのスクリーニング及び開発において2つの重要な利点をもたらす。発酵アプローチは、生成のための原料費の観点から明らかに好ましいが、このような方法を最適化するのに必要な時間及び労力は、薬剤の発見の初期段階においてひどく高い。さらに、ナイシンAの場合のように、高収率発酵物の精製は容易に達成できない。最終生成物の精製は、通常、SPPSにおいて重要な問題ではない。DPOLTは、臨床試験のために迅速な方法で、多くの潜在的に有用な化合物のスクリーニングができるという利点を有する。有望と思われる化合物に関して、DPOLTは市場投入を早め、また発酵法の開発のために必要な時間及び労力を提供することによりこれらの分子を示すことができるかもしれない。活性スペクトルがあまり広くない、薬物動態に欠点がある、毒性問題がある等の、さらなる開発のために必要な特徴を欠く化合物に関しては、DPOLTは、これらの化合物を迅速且つ効率的に検討対象から除外できる。最終的に、DPOLTは固相ペプチド合成に依存するため、菌耐性を克服する等の改良特性を有する類似体のスクリーニング及び開発は簡単であろう。従って、この方法は、目的とする他のランチビオティクス及びペプチドに応用し、機能的に好ましく且つ経済的に有利な特性を有するものを特定することができる。 DPOLT及び本発明の方法によって合成されるランチビオティクスについての最も明白な用途は、細菌感染の医学及び獣医学的治療である。他にいくつか潜在用途もある。ランチビオティクスは、食品保存及び化粧品において用いるのに他の殺菌剤より十分に確立した魅力的な代替手段である(DelvesBroughtonら,(1996年)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal Of General and Molecular Microbiology.69巻,193-202頁;Rollemaら,(1995年)Applied and Environmental Microbiology.61巻,2873-2878頁;Lie&Hansen,(1990年)Applied and Environmental Microbiology.56巻,2551-2558頁;Houtら,(1996年)Letters in Applied Microbiology.22巻,76-79頁;Delvesbroughton,(1990年)Food Technology.44巻,100頁;Delvesbroughton(1990年)Journal of the Society of Diary Technology.43巻,73-76頁;Delvesbroughtonら,(1992年)Letters in Applied Microbiology.15巻,133-136頁;Thomas&Wimpenny(1996年)Applied and Environmental Microbiology.62巻,2006-2012頁;Sahl&Bierbaum(1998年)Annual Review of Microbiology.52巻,41-79頁)。さらに、ランチビオティクスは、局所的な殺菌剤、特に口腔衛生を促進するためのマウスリンスとして研究され、ある程度成功している(Howellら,(1993年)Journal of Clinical Periodontology.20巻,335-339頁)。 ランチビオティクス薬剤は大きな可能性を有しており、医学界でおそらく非常に好評であろう。抗生物質使用のための市場は依然として大きく、感染症が存在する限り存続し続けるが、変異及び菌耐性のために、ほとんどの抗生物質の全体的なライフサイクルは短い。ランチビオティクスタイプの抗生物質の利点は、それらが細菌の適応に比較的耐性であるというしっかりした業績をもち、他の抗生物質に耐性の多くの病原菌に対して強力な殺菌作用をもつことがわかっていることである。 本明細書の随所で参照された全ての特許、特許出願、及び他の科学的または技術的文章は、その全体が参照として含まれる。好ましい態様の、現在代表的であるとして本明細書に開示された方法及び組成物は例示的であり、本発明の範囲を限定するものではない。変形及び他の用途は当業者に明らかであり、本発明の趣旨に含まれる。本明細書に適切に例示的に記載された本発明は、本明細書で特に開示されていない単数または複数種類の要素、限定のいずれかの非存在下で実施できる。従って、例えば、本明細書の各例においては、「〜を含む」、「〜を本質的に含む」及び「〜からなる」なる用語は、慣習的な意味を変更せずに、他の2つの用語と置換できる。使用された用語及び表現は、限定としてではなく説明の用語として用いられ、提示及び開示され、またはその一部である特徴の等価物を除外するような用語及び表現の使用を意図しないが、種々の修飾が請求の範囲に記載されている本発明の範囲内で可能であると認識される。従って、本発明は実施形態及び最適な特徴によって具体的に開示されているが、本明細書で開示された概念の修飾及び変更は、明細書及び添付した請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると考えられることを理解すべきである。 さらに、本発明の特徴または側面が、マーカッシュグループまたは代替手段の他の分類の点から記載される場合、当業者は、本発明はまた、マーカッシュグループまたは他のグループの個々のメンバーまたはサブグループのすべてについて記載されることを認識するだろう。 以下の実施例に照らして本発明をよりよく理解できるが、これは説明のみを目的とし、多少なりとも本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。 実施例1:特異的に保護された直交ランチオニンの合成 A.Fmoc-Cysの合成 図4に概説したように、Fmoc保護化システイン(図3、構造B)を、連続した2段階でL-シスチンから合成した。炭酸ナトリウム(4.6g,43.6mmol)及びL-シスチン(5.0g,20.8mmol)を水(200mL)に溶解した。得られた溶液を10℃に冷却した。FmocCl(11.85g,15.8mmol)をジオキサン(80mL)に溶解し、得られた溶液を、L-シスチン溶液に滴下して加えた。溶液を10℃で2時間撹拌し、放置して徐々に室温まで温めた。どろっとした白色沈殿物を得、焼結ガラス漏斗で濾過した。生成物をジエチルエーテル(50mL)ですりつぶし、真空下で2日間乾燥させた。N,N'-ビス(Fmoc)-L-シスチンが白色粉末状(14.0g、収率98%)で得られた。 N,N'-ビス(Fmoc)-L-シスチン(12.0g,17.5mmol)をメタノール(300mL)に溶解した。粒状亜鉛(12.0g)をこの溶液に加え、得られた混合物をマグネティックスターラーで激しく撹拌した。反応混合物に、トリフルオロ酢酸(75mL、1mol)を2時間かけて滴下して加え、室温で12時間撹拌した。反応をC-18逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)及び薄層クロマトグラフィー(TLC、クロロホルム/メタノール/酢酸=30:1:0.1v/v)により監視した。N,N'-ビス(Fmoc)-L-シスチンが消失したら、反応混合物を濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮し、体積を約100mLまで減少させた。ジクロロメタン(400mL)を加え、混合物を2N塩酸水溶液で洗浄した。水層をジクロロメタンで抽出し、あわせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液の濃縮により、白色粉末、N-(Fmoc)-L-システインを得た(8.8g、73%)(図3及び4、構造B)。 B.N-(Alloc)-D-セリンプロパルギルエステルの合成 N-(Alloc)-D-セリンプロパルギルエステル(図3、構造A)の合成は以下のように実施した(図5参照)。D-セリン(10.5g、100mmol)及び炭酸ナトリウム(11.1g、105mmol)を水(100mL)に溶解した。アセトニトリル(50mL)をこの溶液に加え、混合物を氷浴中で5℃まで冷却した。クロロ蟻酸アリル(11.7mL、13.3g、110mmol)を30分かけて滴下添加した。反応混合物を徐々に室温まで加温し12時間撹拌した。混合物を真空で約100mLまで濃縮してアセトニトリルを除去し、残留物を0〜5℃に冷却した。濃HCl水溶液(約10mL)を加えて溶液のpHを2.0に調整した。酢酸エチル(5×40mL)で生成物を抽出し、抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去し、淡黄色の油状物質、N-(Alloc)-D-セリン(16.9g、89%)を得た。 N-(Alloc)-D-セリン(16g、85mmol)をDMF(70mL)に溶解した。得られた溶液に重炭酸ナトリウム(7.9g、94mmol)を加えた。臭化プロパルギル(トルエン中80%、10.5mL、94mmol)を室温で20分かけて滴下添加した。反応混合物を室温で2日間撹拌した。反応混合物を、ロータリーエバポレータで真空濃縮し、残存物を酢酸エチル(100mL)に溶解した。溶液を重炭酸ナトリウム水溶液(2×50mL)及び水(2×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去し、N-(Alloc)-D-セリンプロパルギルエステルを得た(18g、収率93%)。 C.N-(ivDde)-D-セリン(ベンジル)エステルの合成 N-(ivDde)-D-セリン(図3、構造C)は、D-セリン、及び以前に報告された方法(Akhrem,A.Aら.Synthesis 1978年、925頁)を用いて、ピリジン存在下でのジメドンと塩化イソバレリルとのO-アシル化、次いで形成された5,5-ジメチル-3-オキソシクロヘキサ-1-エニル3-メチルブタノエートの塩化アルミニウムでの転位によって合成されたivDde-OHから製造した。特に、ジクロロメタン(50mL)中の塩化イソバレリル(13.5mL、13.3g、110mmol)溶液を、ジクロロメタン(150mL)中のジメドン(14g、100mmol)及びピリジン(9.7mL、9.5g、120mmol)の撹拌溶液に、15分かけて滴下して加えた。反応混合物を1.5時間撹拌し、2N塩酸水溶液(2×50mL)、水及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去し、淡黄色の油状物質、5,5-ジメチル-3-オキソシクロヘキサ-1-エニル3-メチルブタノエートを得た(22.4g、収率100%)。氷浴中で冷却した、ジクロロメタン(100mL)中の塩化アルミニウム(16.0g、120mmol)の撹拌懸濁液に、5,5-ジメチル-3-オキソシクロヘキサ-1-エニル3-メチルブタノエート(11.2g、50mmol)の溶液を30分かけて滴下添加した。反応混合物を放置して室温まで温め、1時間撹拌した。次いで、反応混合物を、氷上で冷却しながら、37%塩酸水溶液(50mL)及び氷(150g)の混合物に、温度が5℃を超えないようにゆっくりと注いだ。ブライン(200mL)を混合物に加え、生成物をジクロロメタン(6×50mL、抽出の完全性はTLCで確認した)を用いて抽出した。抽出物をブライン(2×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレータで真空下で濃縮した。粗生成物をヘキサン〜酢酸エチル:ヘキサン(1:10)の勾配液を用いたシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色の油状物質、ivDde-OHを得た(10.5g,94%)。 次いで、N-(ivDde)-D-セリンは以下のように合成した。メタノール(50mL)中のivDde-OH(1.1g,5mmol)及びD-セリン(0.6g,5.75mmol)の混合物に、N-エチルジイソプロピルアミン(3.4mL,2.6g,20mmol)を加えた。還流しながら、反応混合物を一晩撹拌した。TLC試験(酢酸エチル/ヘキサン=1:4)は、遊離ivDde-OHがないことを示した。反応混合物を室温まで冷却し、ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去した。残存物を水(40mL)に溶解し、5〜10℃に冷却し、2N塩酸水溶液を滴下して加えてpH2まで酸性化した。混合物を30分撹拌し、沈殿を濾過し、水洗し、真空下で乾燥すると、白色微結晶、N-(ivDde)-D-セリンを得た(1.5g、96%)。 N-(ivDde)-D-セリンベンジルエステルは以下のように製造した。DMF(20mL)中のN-(ivDde)-D-セリン(0.93g,3mmol)及び重炭酸ナトリウム(0.34g、4mmol)の混合物に、臭化ベンジル(0.43mL,0.62g,3.6mmol)を加え、混合物を室温で24時間撹拌した。混合物をロータリーエバポレータで真空下濃縮し、残存物を酢酸エチル(40mL)に溶解した。溶液を水洗し、水層を酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×40mL)、及び水(40mL)で洗浄した。有機層を炭酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去すると、白色針状物質、N-(ivDde)-D-セリンベンジルエステルを得た(1.03g、86%)。 D.N-(Alloc)-D-β-ブロモアラニンプロパルギルエステル及びN-(ivDde)-D-β-ブロモアラニンベンジルエステルの合成 N(Alloc)-D-セリン(プロパルギル)エステル及びN(ivDde)-D-セリン(ベンジル)エステルの対応するβ-ブロモアラニン誘導体は、ジクロロメタン(または同様の非プロトン性溶媒)中に1当量の適切なエステルを溶解し、この溶液を1当量の四臭化炭素及びトリフェニルホスフィンで処理して合成する。TLCによって観察されるように反応が完了するまで反応物を室温で撹拌し、所望のβ-ブロモアラニン誘導体をフラッシュクロマトグラフィーで精製する。あるいは、トルエンまたはジクロロメタン等の溶媒中の三臭化リンを用い、次いで温和な簡単な処理(mild basic workup)を施すことで合成を行い、所望のD-β-ブロモアラニンを得る。臭素化に加え、トシル化または他の脱離基を、最終的に保護されたランチオニン生成のための以下に記載したアルキル化工程に用いてもよい。 E.ランチオニン1及び2の合成 ランチオニン1は、N(Alloc)-D-β-ブロモアラニンプロパルギルエステルを(Fmoc)-L-システインでアルキル化することにより合成する(図5)。ランチオニン2は、N(ivDde)-D-β-ブロモアラニンベンジルエステルを(Fmoc)-L-システインでアルキル化することにより合成する(図6)。 それぞれのβ-ブロモアラニンは、(Fmoc)-L-システインを用いて以下のようにアルキル化する。1当量のβ-ブロモアラニンをジクロロメタン(または同様の非プロトン性溶媒)に溶解し、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、またはAliquat336等の相間移動触媒の存在下、(Fmoc)システインで処理する。必要な触媒の量は5〜50mol%であり、良好な反応速度及び生成物の清浄な形成を得るために最適化できる。反応温度は、また10〜50℃の範囲に最適化できる。 このようにして得られた生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、生成物の純度及び同一性を、NMR、HPLC、質量分析及び/またはTLCにより測定する。ランチオニン1及び2の合成経路は比較的容易であり、生成物は、スケールアップ及び大量合成(>10g)が容易に達成できるように、安定していると予想される。 実施例2:ランチオニン1及び2を用いた、ランチビオティック・ナイシンA類似体の合成 A.ナイシンA類似体の固相ペプチド合成 ナイシンA類似体(配列番号:2)は、以下に概説するように本発明に従って合成する。類似体は、位置33にデヒドロブタリン用のアラニン置換、位置30及び2にデヒドロアラニンを含む。天然のナイシンAと比べ、生成物の抗菌スペクトル及び効能に有意な影響のないことを示す証拠が相当数ある(Kuipersら,(1996年);Devosら.(1995年),Molecular Microbiology 17巻,427-437頁;Sahlら.(1995年),European Journal of Biochemistry 230,827-853頁;Bierbaumら.(1996年),Applied and Environmental Microbiology 62巻,385-392頁)。 特に示さない限り、全てのプロトコルは文献(White(2003年)Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,A Practical Approach,Oxford University Press,Oxford)に報告された標準的なFmoc・SPPS法である。ナイシンAは、段階的な方法でそのカルボキシ末端から合成される(図1参照)。 1.Nα-Fmoc-Lys-Nε-t-ブチルオキシカルボニル-L-リジンのカルボキシル(残基1)をCLEAR-Acid Resin(登録商標)(Peptide International)に結合する。反応完了を証明するため樹脂をニンヒドリンで確認する。 2.DMF中の20%ピペリジンを用いて、室温でリジンのアミドに位置するFmoc基の脱保護を実施する。 3.それぞれの(市販)Fmoc L-アミノ酸を用いて、アラニン、バリン、ヒスチジン、イソロイシン及びセリン(残基2〜6)の順に結合させるため、カップリング及び脱保護の工程(1〜2)を繰り返す。ヒスチジン、リジン及びセリン等のアミノ酸は、その置換基を保護するために、それぞれの反応性側鎖に結合したt-ブチル基を有する。 4.次のカップリングは直交ランチオニン1を用いて実施し、その後、直交ランチオニン1のFmoc基を、DMF中の20%ピペリジンを用いて除去する。 5.Fmocヒスチジン(残基8)をカップリングする。 6.DMF中の20%ピペリジンを用いてFmocヒスチジンを脱保護し、ヒスチジンを直交ランチオニン2にカップリングする。 7.ジクロロメタン中のジコバルトオクタカルボニルで直交ランチオニン1のプロパルギル基を開裂する。DMF中の20%ピペリジンを用いて、直交ランチオニン2のFmocアミノ末端を脱マスキングする。直交ランチオニン1の脱マスキング化C-末端と直交ランチオニン2の脱マスキング化N-末端をカップリングさせる。環Eの合成はこの工程で完了する。 8.ジクロロメタン中の20mol%のPd(PPh3)4及び20〜25当量のPhSiH3でペプチジル樹脂を15〜20分間2度処理することにより、ランチオニン1のN(Alloc)基を除去する。 9.脱マスキング化N-末端をFmocアラニン(残基11)と結合する。アラニンのFmoc基を、DMF中の20%ピペリジンを用いて脱保護する。 10.ジクロロメタン中のパラジウム炭素及びシクロヘキサジエンを用いる移動水素化プロトコルを用いてランチオニン2の残りのC-末端を脱保護する。 11.ランチオニン2の脱マスキング化C-末端とアラニンのN-末端(残基11)をカップリングする。重なり合う環E及びDの合成はこの工程で完了する。正しい生成物が合成されたことを確認するため、少量の樹脂を取り、開裂カクテル(後述)を用いてペプチドを開裂する。得られたペプチドを、Maldi及びLC-MSにより解析する。 12.DMF中の2〜10%ヒドラジンを用いてランチオニン2のivDdeを除去し、得られた遊離アミノ末端をFmoc保護化リジン、メチオニン及びアスパラギン(残基13、14及び15)で順番に伸長する。 13.ランチオニン1を、アスパラギンの脱保護化N-末端に結合する(ランチオニン1またはランチオニン2のいずれかを、環C、B及びAの合成を完了するために用いることができる)。 14.ランチオニン1のFmoc基を脱保護し、Fmocグリシン、メチオニン、アラニン、ロイシン及びグリシン(残基17〜21)と順番にカップリングさせ、環Cを形成する。 15.1当量の二コバルトオクタカルボニルを用いて、ランチオニン1のC-末端のプロパルギル基を除去し、グリシン(残基21)のN-末端とカップリングさせ、環Cを完成する。 16.ランチオニン1のN末端のAlloc基を、工程8に記載の方法で除去し、Fmocリジン(残基23)とカップリングする。 17.リジンのN-末端を脱保護し、ランチオニン1をリジンのN-末端にカップリングする。 18.ランチオニン1のFmoc基を脱保護し、Fmocグリシン及びFmocプロリン(残基25及び26)と順番にカップリングさせる。 19.1当量のジコバルトオクタカルボニルを用いてランチオニン1のC-末端のプロパルギル基を除去し、プロリンの脱保護化N-末端とカップリングし、環Bを形成する。 20.前述の方法に従ってランチオニン1のN末端のAlloc基を除去し、ランチオニン1とカップリングする。 21.ランチオニン1のFmoc基を脱保護し、Fmocロイシン、アラニン及びイソロイシン(残基29〜31)と順番にカップリングする。 22.1当量の二コバルトオクタカルボニルを用いてランチオニン1のC-末端のプロパルギル基を除去し、イソロイシンの脱保護化N-末端とカップリングし、環Aを形成する。 23.前述の方法に従って、ランチオニン1のN末端のAlloc基を除去し、Fmocアラニン及びイソロイシン(残基33及び34)と順番にカップリングする。これにより、ナイシンA類似体の合成が完了する。 B.合成ペプチドの樹脂からの開裂 合成ペプチドは相当量の硫黄を含むため、TFA/チオアニソール/水/フェノール/エタンジチオール(82.5/5/5/5/2.5)を含むカクテルを、樹脂(White 2003)からのペプチドの開裂に用いた。樹脂をジクロロメタンで完全に洗浄し、痕跡量のDMF及び他の残りの有機物を除去し、前述のカクテルで処理した。開裂のための時点の最適化は、樹脂15〜20mgでの反応を実施し、それに続く最高18時間までの1時間おきのLC-MSによって達成する。最適化条件は、開裂のスケールアップに用いられる。開裂ペプチドを、冷エーテルに徐々に注ぎ、ペプチドを沈殿させる。沈殿したペプチドを冷エーテルで洗浄し、乾燥させる。 C.開裂ペプチドの精製 1%TFAを含む水中で再構築することにより、ペプチドを精製する。溶液を、アセトニトリル:水の勾配液、及びクォードテック検出器(quardtech detector)を有するBiorad HPLCを用いるC-18逆相カラムにかける。ピークを収集し、Maldi tofにより解析し、生成物の同一性を確認する。所望のペプチドを含む画分を収集し、凍結乾燥して精製物を得る。純度は、HPLC、MS及びNMRで測定する。 実施例3:精製ナイシンA類似体の構造的及び生物学的解析 A.ナイシンA類似体のバイオアッセイ 実施例1及び3に示すように、このように合成され精製されたランチビオティクスの一定量を取り、凍結乾燥する。得られた生成物を秤量し最終収率を計算する。ナイシンA類似体の生物活性を、当該技術分野で既知の、ナイシンA類似体の最小抑制濃度及び最小殺菌濃度の測定を可能にする繰延アンタゴニズムアッセイ(deferred antagonism assay)によって測定する(Hillmanら、(1984年),Infection and Immunity 44巻,141-144頁;Hillmanら.(1998年),Infection and Immunity 66巻,2743-2749頁)。天然のナイシンAと比較すると、それぞれに具体的な活性を決定できる。バイオアッセイは以下のように実施する。 ナイシンA活性について試験される画分サンプル(20μL)を、96ウエルマイクロタイタープレート中でアセトニトリル:水(80:20)を用いて連続2倍希釈する。濃度範囲は20〜0.08μg/mLである。Micrococcus Luteus株ATCC272LS(ストレプトマイシン100μg/mLに対して自然に耐性である)の一晩培養物を、トリプチケース・ソイブロス(Difco)に1:1000(約106cfu/mL)に希釈し、37℃で、OD600=0.2になるまで培養した。細胞600μLを、45℃まで冷却しておいた15mLのトリプチケース・ソイブロストップアガー(0.75%寒天)に加え、ストレプトマイシン100μg/mL(ストレプトマイシンは、存在するナイシンAの量を測定する能力に影響を及ぼさずに存在する可能性のある汚染物の増殖を防止する)を含むトリプチケース・ソイアガーを含む大きなシャーレの表面に注いだ。トップアガーをセットした後、試験される画分の連続2倍希釈の試料5μLをプレートの表面にスポットし、風乾する。 プレートを37℃で24時間インキュベートし、指示菌株の増殖阻害領域を調べた。サンプルの力価を、指示菌株M.lutuesの明らかな増殖阻害をもたらす最高希釈の逆数として取る。対照として標準ナイシンAを希釈し、前述のようにスポットする。濃度範囲は20〜0.08μg/mLである。これにより以前の段階で確立したようにこれらの化合物の純度レベルをベースにした割合として、天然のナイシンAに対する合成類似体の生物活性の測定ができる。 合成及び天然のナイシンAを用いたバイオアッセイは、多剤耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococus faecalis)、及びリステリア菌(Listeria monocytogenes)を含む、少なくとも12種類のグラム陽性菌について実施する。試験を行う標的種に適している1以上の他の抗生物質も、比較のために並行して実施する。 B.ナイシンA類似体の構造解析 ナイシンA類似体の三次元構造を、TOSCY及びNOESY NMRを用いて、天然のナイシンAとの比較により決定する。合成及び天然のナイシンA試料(3〜5mM)をH2O/D2O/3-(トリメチルシリル)-プロピオン酸-D4ナトリウム塩(TSP)(90.0:9.9:0.1%)中、全量700μLで、調製する。NMRデータは、25℃で、クライオプローブBruker Avanceスペクトロメーターを用いて600MHzで収集し、キャリア周波数を、リラグゼーションディレイ1.5秒中の予備飽和によって抑制される水の共鳴に集中する。TOCSY実験は、MLEV-17シーケンスを用いた60msの混合時間で取得する(Bax&Davis(1985年),Journal of Magnetic Resonance 65巻,355-360)。NOESY実験は、200ms、400ms及び450msの混合時間で獲得する。HMQC及びHMBC実験において逆位相コヒーレンスを生成または再び焦点を合わせるためのディレイ時間は、それぞれ3.5ms(140Hzカップリング)及び60ms(8.5Hzカップリング)に調整する。 全ての2Dデータは、獲得次元(acquisition dimension)において2048の複合ポイントで、間接次元(indirect dimension)については256〜512の複合ポイントで収集する。全ての実験について位相敏感間接検波は、States-TPPI法(Marionら(1989年),Journal of Magnetic Resonance 85巻,393-399頁)を用いて実施する。1H化学シフトはTSPを基準とする。二乗余弦関数、または60°シフトを有する二乗余弦関数(HMBCの1H次元について)による両方の次元における、逆重畳積分、データ乗算、一度ゼロフィリングし、フーリエ変換、ベースライン補正により、残留する水のシグナルを最初に除去することにより、データはNMRpipe(Delaglioら(1995年),Journal of Biomolecular NMR 6巻,277-293頁)で処理する。データを、対話型コンピュータプログラムNMRVView(Jorhnson&Blevins(1994年),Journal of Biomolecular Nmr 4巻,603-614頁)を用いて解析する。1H共鳴は、TOCSY(Braunshweiler&Ernst(1983年),Journal of Magnetic Resonance 53巻,521-528頁)及びNOESY(Kumarら.(1980年),Bioehcm.Biophys.Res.Commun.95巻,1-6頁)実験を用いる標準的方法(Wuthrich,K.(1986年)NMR of Proteins and Nucleic Acids.,Wiley,New York)に従って割り当てられる。HMQC(Baxら.(1983年),Journal of Magnetic Resonance 55巻,301-315頁;Muller(1979年),Journal of the American Chemical Society 101巻,4481-4484頁)及びHMBC(Bax&Summers(1986年),Journal of the American Chemical Society 108巻,2093-2094頁)実験は、TOCSY及びNOESYスペクトルにおいて、曖昧な幾つかの領域を明らかにするために用いる。 リジン、イソロイシン、ロイシン、グリシン及びアスパラギン残基は、明らかで容易に特徴づけられる1Hスピン共鳴パターンを有し、2DのTOCSY及びNOESY実験における帰属が容易である。これらの残基は最初に同定される。チオエーテル結合パターンは、長距離のβプロトンのNOE結合パターンによって証明される。長距離NOEは、おそらく位置3及び7、8及び11、13及び19、23及び26、並びに25及び28における残基間に確認できる。長距離NOE(>i+2)は、Smithら、2002年(Structural and Functional Characterization of the Lantiobiotic Mutacin 1140,University of Florida,Gainesville)に開示されるように、3次元モデルのために用いられる。 NOE交差ピーク強度はNMRViewで測定する。距離は、関係式rab6=rcal6(Vcal/Vab)を用いて計算する。式中、rabは原子ab間の距離であり、VabはNOESY aからbの交差ピーク体積であり、rcalは既知の距離であり、VcalはNOESY校正交差ピークの対応する体積である。校正のために用いられる距離は、イソロイシンのβプロトンである。残基間NOE交差ピークは、計算において距離制限として用いられる。エネルギーウエル(energy well)は、1kcal/mol/Å2の上下力定数を用いて定義する。 全ての立体配座モデリングは、InsightIIソフトウェア(Accerlys,San Diego,CA)を用いて実施する。分子力学シミュレーションは、交差項(cross-terms)を有するcvff力場、モースポテンシャル、及び40Åのカットオフ距離を用い、誘電率4.0、500Kで真空にて実施する。ペプチドは、InsightIIにビルダ機能を用いて構成する。最初に直鎖ペプチドが最小化され、次いで制限されない分子力学を10ps実施する。この後、i+2またはそれ以上の距離制限のみが加えられる。i+2以上の距離制限が各チオエーテル環を生成する残基を充足する場合、分子力学シミュレーションは一定期間ごとに停止する。環Aが最初に形成し、次いで環B及び環C、次いで絡み合った環(interwined ring)D及びEが形成する。チオエーテル環がいったん形成すると、i+1の距離制限がi+2以上の距離制限に加えられ、分子力学シミュレーションは、交差項を有するcvff力場、モースポテンシャルを用いて誘電率4.0、500Kで5ns実施する。次いで分子力学シミュレーションを、全ての制限とともにさらに20ns実施する。 力学由来の履歴ファイルは、10ps毎に記述する。1ns秒から開始し100ps毎に間隔があく履歴ファイルからの200の構造は、2000ステップを用いた全てのNMR制限で、次いで、共役勾配及びニュートン−ラフソンにより、0.01kcal/モル/Åのエネルギーの二乗平均平方根(RMS)勾配が到達するまで最小化されたエネルギーである。200のエネルギー最小化構造を、PROCHECK-NMRソフトウエアを用いてNMR制限妨害について確認する(Laslowski,R.A.,Rullmann,J.A.C.,MacArthur,M.W.,Kaptein,R.&Thornton,J.M.(1996年)AQUA and PROCHECK-NMR:Programs for checking the quality of protein structure solved by NMR,Journal of Biomolecular NMR.8巻,477-486頁)。エネルギー最小化構造は、Xクラスタープログラムを用いてファミリーにグループ分けする(Shenkin,P.S.&McDonald,D.Q.(1994年)Cluster-Analysis of Molecular-Conformations,Journal of Computational Chemistry.15巻,899-916頁)。コンフォメーションは、VanDeVenら、1991年(European Journal of Biochemisty 202巻,1181-1188頁)により決定されたナイシンの天然構造と比較する。 実施例4.ミュータシン1140類似体の合成 A.ミュータシン類似体 ランチビオティックミュータシン1140(MU1140)の二つの類似体をDPOLT法を使用して合成した。天然MU1140を図7に示す。合成した二つの類似体は図8に示す。 B.特異的に保護されたランチオニンの合成 MU1140類似体の合成で使用される特異的に保護された直交ランチオニンは、ランチオニン1(Lan1)及びランチオニン2(Lan2)として参照され、図9に示される。保護基は、Lan1及び2に関しては、その直交性に関して選択した:Lan1におけるBoc基は(Lan2とのカップリング後に再び)、アシドリシス(酸分解)(TFA、HClを用いる処理など)を使用して開裂するが、他の基は酸性条件下で安定である;フルオレニルメチル(Fm)エステル及びFmoc基は、ピペリジンを用いた標準的な処理を使用して開裂するが、ivDde、Troc、Alloc及びメチル、アリル、ベンジルエステルは影響を受けない。Trocは酢酸または緩衝液中の亜鉛で開裂できるが、ivDde、Alloc及びメチル、アリル、ベンジルエステルは影響を受けない;Alloc及びアリルエステルは、スカベンジャーの存在下、触媒的Pd(PPh3)4を使用して開裂(場合により同時に)することができるが、ivDde及びメチル、ベンジルエステルは影響を受けない。Fmoc、ivDde、Alloc、Troc及びメチル、Fm、アリル及びベンジルエステルは、他のペプチドアミノ末端及びBocなどの側鎖保護基の存在下で開裂することができる。Boc、Fmoc、Alloc、ivDdeアミノ保護基及びメチル、Fm、アリルエステルは、液相及びSPPSの両方に適している。Troc及びベンジルエステルは、不均一系触媒の存在下で開裂し、液相ペプチド合成のみに適している。 ランチオニン1(図10及び11における7及び13a、b)は、好適に保護したD-セリンエステル(D-セリンから利用可能な1及び9)から出発して、図10〜11に示されたプロトコルに従って合成した。合成法としては、低温におけるセリンエステルのトリフェニルホスフィン及び四臭化炭素による臭化が含まれる。通常、0℃における臭化反応とは異なり、臭化物2及びアクリレート3との混合物を製造し、−25℃における反応により、殆ど例外なく臭化物2が形成された。Alloc-D-Ser-OBut1の場合には、標的のβ-ブロモアラニン2は、クロマトグラフィーにより対応するアクリレート3から精製することができる。Alloc-Ser-Ot-Buと異なり、−25℃(−5℃)におけるTroc-Ser-Ot-But9の臭化では、アクリレート副生成物は全くできず、臭化物10は貯蔵時に安定なようである。 適切に保護されたシステイン4a及びN-Boc-システアミン4bによるβ-ブロモアニリン2及び10中の臭素の求核置換により、それぞれ保護化ランチオンニン5及び11a、bが得られた。追加のラセミ化にいたる温和な反応条件にもかかわらず、システインとの置換の間のβ-ブロモアニリンの部分的な脱臭化水素が起きるかもしれない。 Boc及びtert-BuエステルのTFAによる開裂、続くBoc基及びフルオレニルメチル(Fm)エステルによる再保護(reprotection)により、好適に保護されたランチオニン1(7及び13a,b)が得られた。 ランチオニン2(図12の19a、b)は、好適に保護されたD-セリンエステル(14a、b、D-セリンから利用可能)から出発して、図12に示されたプロトコルに従って合成した。製造には、低温におけるセリンエステルのトリフェニルホスフィン及び四臭化炭素を用いた臭化が含まれる。0℃におけるエステル14a、bの臭化により、脱臭化水素または脱水により生じた主な副生成物アクリレート16a、bが形成された。0℃とは異なり、−25℃における臭化、続いて−5℃まで徐々に温めることにより、ごく少量のアクリレート16でのみ汚染された所望の臭化物15a、bが殆ど独占的に形成された。 続くシステインとの反応において粗な臭化生成物15a、bの利用により、低収率の17a、bとなった。残念なことに、両方の臭化物(15a及びb)のクロマトグラフィー精製により、対応するアクリレート16a、bによりまだ汚染された生成物が得られた。 好適に保護されたシステインによる15a、bにおける臭素の求核置換により、それぞれ保護化ランチオニン17a、bが得られた。追加のラセミ化にいたる温和な反応条件にもかかわらず、システインとの置換の間のβ-ブロモアニリンの部分的脱臭化水素があるかもしれない。 Boc及びtert-BuエステルのTFAによる開裂、続くBoc基での再保護により、好適に保護されたランチオニン2(19a、b)が得られた。構造1から19は、1H及び13C NMRスペクトルにより確認した。 N-Cbz-セリンβ-ラクトンを介するランチオニンの別の製造法を図13に示す。このアプローチは、N-Cbz-セリンβ-ラクトンの好適に保護されたシステイン若しくはシステアミン、または塩基の存在下での他の任意の官能基の位置特異的または立体特異的求核開環を含む。メタノール中20%酢酸における活性炭に担持させたPdを使用する水素化分解によるCbz保護基の開裂から、Pd触媒の活性低下(catalyst poisoning)がかなりの速度で起き、大過剰での触媒(1.5当量以下)を使用する必要性と、ランチオニンの遊離カルボキシ基の副反応であるエステル化がおきた。THF中で活性炭上に担持させたPdを使用する水素化分解は、Cbz-開裂生成物の収率が低かった。他方で、酢酸中、活性炭上に担持させたPd(0.3〜0.5当量)の存在下での4〜5時間の水素化分解により、Cbz-開裂生成物は90%の収率であった。 好適な基、ivDde、Alloc、Trocなどを使用する再保護により、所望のランチオニンが得られる。 C.MU1140類似体の環Dの合成 ランチオニン1(7)のDCM中の50%TFAによる処理、続いてDEPBT及びDIPEAの存在下でのランチオニン2(19a)のカップリングによりジペプチド(20)が82%収率で得られた(図14)。続くDCM中の50%TFAによるジペプチド(20)のBoc基の開裂及び、DEPBT及びDIPEAの存在下でのFmoc-(But)-OHとのカップリングにより、90%収率でトリペプチド(21)が得られた。DCM中、20%ピペリジンとの0℃、8〜10分の処理によるトリペプチド(21)中のFmoc及びFmエステルの同時開裂により、前駆体(22)が65%で得られた。中間体(22)の環化は、HATU及びDIPEAの存在下、DCM中の希薄溶液中で達成され、70%収率であった。しかし、スカベンジャーPhSiH3(20〜40当量)の存在下、ポリマー担体上の触媒量の(10〜20%mol)Ph(PPH3)4との処理により環式ペプチド(23)中のAlloc基の開裂から、総収率75%で生成物(24)に関して予想されたのと同一質量m/z910の二種類の物質が得られた(HPLCクロマトグラムで2つのピーク)。この結果は、立体異性体の形成に基づいて説明できるか、精製法(逆相C18クロマトグラフィー)における凝集または他の幾つかの原因不明の理由により、この分子の挙動を単に反映しているのかもしれない。 D.MU1140類似体の環Cの合成 HATU及びコリジンの存在下、環式ペプチド(24)とジペプチドZ-Phe-Asn-OH(図15)とのカップリングから、中間体(25)が46%収率で得られた。Z-保護基の使用は、次段階での水素化分解によりZ-及びBnエステル基の両方を同時に開裂するのに好都合と考えられた。しかしながら、メタノール中10%酢酸(H2、5psi)における(25)の水素化分解は難しいようで、おそらくPd触媒の活性低下及び/または立体障害により、26の収率は25〜30%になった。完全に開裂させるためには、3mol当量まで過剰量の触媒を使用することが必要であった。続く希DCM中のHATU及びコリジンの存在下におけるペプチド(26)の環化により、C-D環系(27)が55〜60%収率で得られた。 またC/D環系は、続くTFA媒介Boc開裂、カップリング剤の存在下におけるランチオニン2(19b)とのカップリング、再びジペプチド中間体のBoc基のTFA開裂及び、カップリング剤の存在下におけるFmoc-Tyr(OBut)OHとのカップリングによりランチオニン1(13a、図16)から合成することができ、トリペプチド28が73%収率で得られた。トリペプチド28のピペリジンとの処理により、Fmoc及びFm基の両方が同時に開裂して65%収率であった。環D30を与える環化は、HATU及びコリジンの存在下、希薄溶液中、69%収率であった。酢酸中、亜鉛の存在下におけるTroc基の開裂(68〜70%収率)、続いてHATU、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及びコリジンの存在下、Alloc-Phe-Asn(Trt)OHジペプチドとのカップリング(70%収率)により、中間体32が得られた。 あるいは、酢酸中、亜鉛を使用してトリペプチド28中のTroc基の開裂、続いてAlloc-Phe-Asn(Trt)OHジペプチドとのカップリングにより前駆体31が得られた。31のピペリジンとの処理により、Fmoc及びFm基の同時開裂ができる。続いて環化することにより、環D32が得られるだろう。 パラジウム触媒及びスカベンジャーの存在下における32のAlloc及びアリル基の同時開裂、続いてカップリング剤の存在下における33の環化により、環C/D系34が得られる。 E.環Dにカルボキシル基を持たないC/D環系の調製 環Dにカルボキシ基を持たないMU1140類似体の環C/D調製に関するプロトコル(図8、構造B)を図17に示す。TFAとの処理でランチオニン類似体13bにおけるBoc基の開裂、カップリング剤の存在下におけるランチオニン2(19b)とのカップリング、再びジペプチド中間体のBoc基のTFA開裂と、カップリング剤の存在下における、Fmoc-Tyr(OBut)OHとのカップリングにより、トリペプチド35が72%収率で得られた。トリペプチドのピペリジンとの処理により、Fmoc及びFm基の両方の同時開裂が62%収率であった。 環D36を与える環化は、HATU及びコリジンの存在下、希薄溶液中、75%収率であった。酢酸中、亜鉛の存在下におけるTroc基の開裂により、ペプチド37は70%収率であった。HATU、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及びコリジンの存在下における、37の遊離アミノ末端とAlloc-Phe-Asn-OHジペプチドのカップリングにより、中間体38が得られた。パラジウム触媒及びスカベンジャーの存在下における38のAlloc及びアリル基の同時開裂、続くカップリング剤の存在下における環化により、C/D環系39を与えるはずである。 F.Boc-Phe-Lys(Boc)-OHの調製 ジペプチドBoc-Phe-Lys(Boc)-OH(40、環Aとのカップリング用)は、図18に示されているように、Fmoc-Lys(Boc)-OHから出発して調製した。 G.MU1140類似体の環Aの合成 環A合成に必要なトリペプチドFmoc-Trp(Boc)-Ala-Leu-OH(41)の製造プロトコルを図19に示す。トリクロロエチルエステル(Tce)を使用して、トリペプチド41の合成の間、ロイシンのカルボキシ末端を保護した。 環Aの調製は、C-D環に関するものと同様のアプローチを使用して、ランチオニン1(17)から出発して行った(図20)。DCM中の50%TFAを使用するランチオニン1のBoc基の開裂、続くHCTU及びDIPEAの存在下におけるトリペプチドFmoc-Trp(Boc)-Ala-Leu-OH(41)のカップリングにより、66%収率でペプチド(42)が得られた。DCM中、0℃、10分間の20%ピペリジンとのFmoc及びFm基の同時開裂により、前駆体(43)が85%収率で得られた。希DCM中、HATU及びコリジンの存在下における環化により、環式ペプチド(44)が収率75%で得られた。 触媒量のPd(PPh3)4(0.1当量、ポリマー担体上)及びPhSiH3スカベンジャー(20当量)の存在下においてAlloc開裂すると、環A系(45)が45%収率で得られた。生成物42〜45は、逆相HPLCにより精製し、ESI MSを使用して同定した。 H.MU1140類似体の環Bの合成 環Bの調製は、環Aの調製と同様に、ランチオニン1(図21)から出発して製造した。DCM中50%TFAを使用してランチオニン1(7)のBoc基の開裂、続いてHCTU及びDIPEAの存在下におけるFmoc-Pro-Gly-OHとのカップリングにより、ペプチド(46)が91%収率で得られた。DCM中、20%ピペリジンを用いた0℃での(46)でのFmoc及びFm基の同時開裂により、59%収率でペプチド(47)が得られた。 希DCM中、HATU及びコリジンの存在下における(47)の環化により、環式ペプチド(48)が79%収率で得られた。DCM中、触媒量のPd(PPh3)4(0.1当量、ポリマー担体上)及びPhSiH3スカベンジャー(40当量)の存在下において環式ペプチド(48)を室温で処理すると、環A系メチルエステル(49)が69%収率で得られた。生成物46〜49は、逆相HPLCにより精製し、ESI MSを使用して同定した。 I.MU1140類似体のテトラペプチド結合環B及びCの合成 テトラペプチド(53)のDhbアミノ酸は、α-アミノ酪酸(Abu)で置換した(図22)。HATU及びDIPEAの存在下においてBoc-Abu-OHとH-GLy-OTceとのカップリングにより、ジペプチド(50)が69%収率で得られた。DCM中50%TFAとの処理による(50)のBoc基の開裂、続くFmoc-Arg(Boc2)-OHとのカップリングにより、トリペプチド(51)が88%収率で得られた。DCM中、20%ピペリジン中でのFmoc保護基の開裂及び、HATU及びコリジンの存在下におけるFmoc-Ala-OHとのカップリングにより、Fmoc-テトラペプチドTceエステル(52)が45%収率で得られた。酢酸の存在下におけるTceエステルの開裂により、標的Fmoc-テトラペプチド(53)が70%収率で得られた。 J.MU1140の収束合成 MU1140類似体の収束ストラテジー調製で上記成分を使用し(図8、構造A)、HATU及びコリジンの存在下、ジペプチドBoc-Phe-Lys(Boc)-OH(40)の環式ペプチド環A(45)とのカップリングすると、中間体(54)が40%収率で得られた。水性メタノール中、メチルエステルの水酸化ナトリウム(3当量)による加水分解的開裂により、酸Boc-Phe-Lys(Boc)-環A-CO2H(55)が99%収率で得られた。 HATU及びコリジンの存在下におけるBoc-Phe-Lys(Boc)-環A-CO2H(55)のN-脱保護化環B(49)とのカップリング(図24)により、中間体ペプチドBoc-Phe-Lys(Boc)-環A-環B-CO2Me(56)が77%収率で得られた。水性メタノール中における、環Bのメチルエステルの水酸化ナトリウム(3当量)による開裂により、対応する酸(57)が80%収率で得られた。 DMF中、0℃で10〜15分のペプチド(27)の2%ヒドラジンとの処理により、ivDDE-開裂生成物(58)が90%収率で得られた(図25)。ヒドラジンとの処理により、全く同一の質量(エステルに関しては856.32、ヒドラジンに関しては856.34)をもつ副生成物ヒドラジン(R=NHNH2)が形成する可能性がある。続いてHATU及びコリジンの存在下、テトラペプチドFmoc-Ala-Arg(Boc2)-Abu-Gly-OH(53)と(58)とのカップリングにより、Fmoc-Ala-Arg(Boc2)-Abu-Gly-環CD-CO2Me(59)が70〜78%収率で得られた。DMF中、Fmoc基の20%ピペリジンによる開裂により、H-Ala-Arg(Boc2)-Abu-Gly-環CD-COR(60)が73〜80%収率で得られた。 HATU及びコリジンの存在下における(57)の(60)とのカップリング(図26)により、MU1140(61)の保護化類似体が90%収率で得られた。DCM中90%TFAとの処理でBoc保護基を最終的に開裂させると、MU1140の類似体(62)が90%収率で得られた。 長い反応時間(70時間後でも5%未満の転換率)後にもかかわらず、水性メタノール中、水酸化ナトリウム(6当量)との処理による完全保護化ペプチド(61、R=OMe)のメチルエステルの開裂を試みると、酸(61、R=OH)が非常にゆっくりと形成された。これは、予想したメチルエステルの代わりに、ヒドラジン基(61、R=NHNH2)が存在していることを示唆している。二つの重なりあう分子内架橋を含む、分子内架橋ポリペプチドの合成法であって、(a)式:{式中、Lは共有結合したアミノ酸側鎖を表し、D、E及びGは、そのそれぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、Rは任意の基である}の第一の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Eを除去して、遊離アミノ末端を形成する;(b)場合により、一つ以上のアミノ酸を含むアミノ-保護化ペプチド鎖を前記遊離アミノ末端に加え、次いでペプチド鎖を脱保護して、新しい遊離アミノ末端を生成する;(c)式:{式中、Lは上記定義の通りであり、M、Q及びTは保護基であり、ここで前記保護基は異なる条件下で脱保護される}の第二の特異的に保護された直交分子内架橋の遊離カルボキシ末端を前記遊離アミノ末端と共有結合させる;(d)保護基Qを除去して、遊離アミノ末端を形成する;(e)場合により一つ以上のアミノ酸を含むアミノ-保護化ペプチド鎖を前記遊離アミノ末端に加え、次いで前記ペプチド鎖を脱保護して新しい遊離アミノ末端を形成する;(f)前記第一の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Gを除去して遊離カルボキシ末端を形成し、前記遊離カルボキシ末端を前記遊離アミノ末端にカップリングさせる;(g)前記第一の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Dを除去して、遊離アミノ末端を形成する;(h)場合により一つ以上のアミノ酸を含むアミノ保護化ペプチド鎖を前記遊離アミノ末端に加え、次いで前記ペプチド鎖を脱保護して、新しい遊離アミノ末端を生成する;(i)前記第二の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Tを除去して遊離カルボキシ末端を形成し、前記遊離カルボキシ末端を前記遊離アミノ末端とカップリングさせる、各段階を含む、前記方法。前記Rが-C(O)-O-Jであり、ここでJは保護基であり、D、E及びGとは異なる反応条件下で選択的に除去される、請求項1に記載の方法。Rは-Hである、請求項1に記載の方法。前記アミノ末端保護基が、Boc、Troc、Alloc、ivDde、Cbz及びFmocからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。前記カルボキシ末端保護基が、フルオレニルメチルエステル、メチルエステル、ベンジルエステル、アリルエステル及びTceエステルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。以下の段階:(a)前記分子内架橋ポリペプチドのカルボキシ末端を、一つ以上のアミノ酸を含むペプチド鎖にカップリングさせる;(b)前記分子内架橋ポリペプチドのカルボキシ末端を、分子内架橋を含むペプチド鎖にカップリングさせる;(c)前記分子内架橋ポリペプチドのアミノ末端を、一つ以上のアミノ酸を含むペプチド鎖にカップリングさせる;及び(d)前記分子内架橋ポリペプチドのアミノ末端を、分子内架橋を含むペプチド鎖にカップリングさせるの一つ以上を、任意の順及び任意の繰り返し回数で含む、請求項1に記載の方法。二つの重なりあう分子内架橋を含む前記分子内架橋ポリペプチドがランチビオティクスまたはその類似体である、請求項1に記載の方法。二つの重なりあう分子内架橋を含む前記分子内架橋ポリペプチドがMU1140またはその類似体である、請求項7に記載の方法。 本発明は、少なくとも一つの分子内架橋を含む分子内架橋ポリペプチドの合成法を提供する。本発明はさらに、二つの分子内架橋を含む分子内架橋ポリペプチドの合成法であって、前記二つの分子内架橋は二つの重なりあう環、連続した二つの環、または二つの埋め込まれた環(embedded ring)を形成する、前記方法を提供する。また本発明は、ナイシンAなどのランチビオティクスの合成法を提供する。さらに本発明は、本明細書中で開示された方法により合成される分子内架橋ポリペプチド及び、特異的に保護された直交ランチオニンを提供する。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る