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タイトル:特許公報(B2)_メタクリル酸鉄及びヒドロキシアルキルメタクリレートの製造方法
出願番号:2012502036
年次:2015
IPC分類:C07C 51/41,C07C 57/04,C07C 69/54,C07C 67/26,C07B 61/00


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村田 直志 小倉 邦義 松尾 武士 吉岡 彰 JP 5835209 特許公報(B2) 20151113 2012502036 20111226 メタクリル酸鉄及びヒドロキシアルキルメタクリレートの製造方法 三菱レイヨン株式会社 000006035 宮崎 昭夫 100123788 緒方 雅昭 100127454 村田 直志 小倉 邦義 松尾 武士 吉岡 彰 JP 2010290879 20101227 20151224 C07C 51/41 20060101AFI20151203BHJP C07C 57/04 20060101ALI20151203BHJP C07C 69/54 20060101ALI20151203BHJP C07C 67/26 20060101ALI20151203BHJP C07B 61/00 20060101ALN20151203BHJP JPC07C51/41C07C57/04C07C69/54 ZC07C67/26C07B61/00 300 C07C 51/41 C07C 57/04 C07C 67/26 C07C 69/54 C07B 61/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開昭57−175141(JP,A) 特開平7−17896(JP,A) 特開2008−201780(JP,A) 国際公開第2010/023953(WO,A1) 5 JP2011080011 20111226 WO2012090905 20120705 14 20140925 高橋 直子 本発明は、メタクリル酸鉄及びヒドロキシアルキルメタクリレートの製造方法に関する。 メタクリル酸鉄を製造する方法としては、いくつかの方法が提案されている。 例えば、メタクリル酸、アルカリ金属と、硝酸鉄等の鉄塩とを水等の溶媒中で混合し、塩交換によりメタクリル酸鉄を製造する方法が提案されている(特許文献1)。この方法は塩交換を確実に完結させることが難しいため90%以上の高収率でメタクリル酸鉄を得ることが難しい。また、硝酸由来の不純物がメタクリル酸鉄に混入して純度が低下すること、ろ過や乾燥の工程が必要となるためコストが高くなること等の問題がある。また、調製したメタクリル酸鉄を触媒としてヒドロキシアルキルメタクリレートを製造した場合、触媒原料に含まれる硝酸に由来する不純物の副生や着色等の問題が懸念される。 また他の方法として、金属鉄をメタクリル酸に溶解する方法が挙げられる(特許文献2、3)。この方法で調製したメタクリル酸鉄はメタクリル酸鉄を含有するメタクリル酸の溶液として得られるため、メタクリル酸鉄を触媒とし、メタクリル酸を原料とするヒドロキシアルキルメタクリレートの製造にそのまま使用可能なため好適である。すなわち、ろ過や乾燥などの工程が不要なため、製造コストを低くすることができる。また、ハロゲン由来の不純物を含まず、着色の少ない、高品質なヒドロキシアルキルメタクリレートを製造することができる。特開平7−17896号公報特開昭57−175141号公報特開2008−201780号公報 金属鉄をメタクリル酸に溶解してメタクリル酸鉄を製造する後者の方法は、硝酸鉄等を原料とする前者の方法よりも硝酸由来の不純物の混入を防ぐことができ、また低コストでメタクリル酸鉄を製造することができる。しかしながら、金属鉄をメタクリル酸に溶解させるためには加熱が必要であり、加熱温度や加熱時間によっては溶解中にメタクリル酸が重合したり、触媒性能が低下したりすることが判明した。 そして、従来の方法で金属鉄をメタクリル酸に加熱溶解させて製造したメタクリル酸鉄をヒドロキシアルキルメタクリレート合成用触媒として使用した場合、金属鉄の表面における酸素原子含有量や、触媒調製時の条件が適切でないため触媒性能に大きなバラツキがあることが判明した。なお、触媒性能とは本明細書では、触媒の活性、選択性、反応液への触媒の溶解性を指す。触媒の溶解性とは、反応中から反応後まで反応液に均一に溶解する程度を指し、「溶解性が良い」とは析出物が無く均一透明な液体となっている様を示す。反応液に均一に溶解する触媒であれば、反応後の蒸留操作時に固結したり析出した触媒が蒸留装置内を閉塞したりする等のトラブルが生じない。このため良好な溶解性は工業的な蒸留精製に好適である観点から重要である。 本発明は、安価で、かつヒドロキシアルキルメタクリレートの製造において触媒として用いた際、活性及び選択性が高く、反応液への溶解性が良好なメタクリル酸鉄の製造方法を提供することを目的とする。 本発明に係るヒドロキシアルキルメタクリレート製造用メタクリル酸鉄の製造方法は、XRF分析による表面の酸素原子含有量が6質量%以下である金属鉄と、メタクリル酸との混合物を、95℃以上110℃未満で100〜600分加熱処理する。 本発明によれば、安価で、かつヒドロキシアルキルメタクリレートの製造において触媒として用いた際、活性及び選択性が高く、反応液への溶解性が良好なメタクリル酸鉄の製造方法を提供することができる。 本発明ではヒドロキシアルキルメタクリレート製造用メタクリル酸鉄(以下、単に「メタクリル酸鉄」ともいう)の製造において、金属鉄の表面における酸素原子含有量や、金属鉄とメタクリル酸との反応条件を詳細に検討した。その結果、ヒドロキシアルキルメタクリレート製造用触媒として使用した際に触媒性能が最適となる製造条件を見出した。また、触媒としてメタクリル酸鉄以外に、4級アンモニウム塩とアミン化合物とを添加して使用することができることを見出した。さらに、最適な触媒成分の比率を見出した。以下、本発明の実施形態について説明する。 [メタクリル酸鉄の製造方法] 本発明に係るメタクリル酸鉄の製造方法は、XRF分析による表面の酸素原子含有量が6質量%以下である金属鉄と、メタクリル酸との混合物を、95℃以上110℃未満で100〜600分加熱処理する。 本発明に係るメタクリル酸鉄の原料である金属鉄の形状は特に限定されないが、溶解性の観点から粉状の鉄(鉄粉)であることが好ましい。鉄粉の粒径は特に限定されないが、溶解性や安全性の観点から10〜500μmであることが好ましく、60〜300μmであることがより好ましい。鉄粉の種類は特に限定されないが、例えばアトマイズ鉄粉、還元鉄粉、電解鉄粉等が挙げられる。コスト面からアトマイズ鉄粉や還元鉄粉が好ましい。これらの金属鉄は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。 XRF分析による金属鉄の表面の酸素原子含有量は6質量%以下である。 XRF分析とは、蛍光X線分析のことであり通常の機器を使用できる。 金属鉄の表面は空気中の酸素により酸化され、酸化鉄の皮膜を形成している。この酸化皮膜が鉄の溶解性に影響を与えるため、表面の酸素原子含有量を特定の範囲とすることが必要である。XRF分析による金属鉄表面の酸素原子含有量が高すぎるとメタクリル酸への溶解性が低下するため、6質量%以下とする。良好な溶解性を確保するためには金属鉄表面の酸素原子含有量が3質量%以下であることが好ましい。金属鉄の溶解性の観点からは金属鉄表面の酸素原子含有量の下限は0質量%を超えることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましい。 金属鉄表面の酸素原子含有量としては、種々の値の金属鉄が販売されている。また、金属鉄表面の酸素原子量は、還元処理や酸化処理によって調整することもできる。 還元処理は、通常、還元剤と金属鉄とを接触処理する。還元剤としては、炭素や水素など公知のものを使用することができ、例えば木炭等の炭素と金属鉄とを、400℃以上の高温に加熱することで還元反応が進行する。 酸化処理は、通常、酸化剤と金属鉄を接触処理する。酸化剤としては、空気中の酸素が一般的である。酸性水溶液中で酸化が促進されるため、酸性水溶液中で金属鉄を分散攪拌しつつ空気を導入するなどの方法によって酸化反応が進行する。 金属鉄とメタクリル酸との混合物を加熱処理する際の加熱温度は、95℃以上110℃未満である。加熱温度が95℃未満の場合、金属鉄の溶解が始まる温度が95℃以上であるため金属鉄が十分に溶解しない。一方、加熱温度が110℃以上である場合、触媒性能(活性、選択性、溶解性)が低下し、メタクリル酸が重合する可能性が高まるため好ましくない。前記加熱温度は95℃以上105℃以下であることが好ましく、前記範囲内で金属鉄が溶解する最も低い温度領域で加熱処理することがより好ましい。 金属鉄とメタクリル酸との混合物を加熱処理する際には、95℃以上110℃未満で100〜600分加熱処理する。前記温度範囲で100分未満加熱する場合、金属鉄が十分に溶解しないため好ましくない。一方、前記温度範囲で600分を超えて加熱する場合、触媒性能が低下し、またメタクリル酸の重合が生じるため好ましくない。前記混合物を95℃以上110℃未満で150〜500分加熱処理することが好ましく、200〜400分加熱処理することがより好ましい。 本発明に係る方法では、金属鉄量が多くなると全て溶解するまでにかかる時間が長くなり触媒製造の生産性が低下するため、さらに昇温することも可能である。その場合、95℃以上110℃未満で100〜600分加熱処理した後、110℃以上125℃以下で30〜300分加熱処理し、100℃以下に降温することが好ましい。95℃以上110℃未満で100分以上保持した後に110℃以上に昇温することにより、選択性が向上する。また125℃以下に昇温することにより、選択性の低下や重合が生じない。さらに、95℃以上110℃未満で600分以下保持し、その後昇温して110℃以上125℃以下で300分以下加熱することにより、選択性低下や析出発生等の触媒性能の低下や、重合が生じない。95℃以上110℃未満で100〜600分加熱処理した後、110℃以上120℃以下で100〜150分加熱処理し、100℃以下に降温することがより好ましい。95℃以上110℃未満で200〜250分加熱処理した後、110℃以上120℃以下で100〜150分加熱処理し、100℃以下に降温することがさらに好ましい。 本発明に係る方法で用いるメタクリル酸中の水分量は300ppm以下であることが好ましい。メタクリル酸中の水分量を300ppm以下とすることにより、金属鉄とメタクリル酸との混合物を加熱処理する際に水酸化鉄の生成を抑制することができ、触媒活性の低下や触媒の析出を防止することができる。メタクリル酸中の水分量を300ppm以下とするには、蒸留や脱水剤の使用による精製、その後の密閉容器での保管など公知の方法により行うことができる。メタクリル酸中の水分量は200ppm以下であることがより好ましい。 金属鉄とメタクリル酸との混合物を加熱処理する際には、重合防止用に酸素、空気等の酸素含有ガスを吹き込むことが好ましい。また、該混合物に重合防止剤を添加して重合防止剤共存下で加熱処理を行うことが好ましい。重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール等のフェノール系化合物、N,N’−ジイソプロピルパラフェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチルパラフェニレンジアミン、N−フェニル−N−(1,3−ジメチルブチル)パラフェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系化合物、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル系化合物、下記式(1)で例示されるN−オキシル系化合物等が挙げられる。 式(1)中、n=1〜18であり、R1及びR2の両方がH、又は、R1及びR2の一方が水素原子であり、他方がメチル基である。また、R3、R4、R5及びR6は直鎖又は分岐のアルキル基である。さらに、R7はH又は(メタ)アクリロイル基である。これらの重合防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 このようにして調製されるメタクリル酸鉄は、ヒドロキシアルキルメタクリレート製造用触媒として好ましく使用することができる。 [ヒドロキシアルキルメタクリレートの製造方法] 本発明に係る方法では、ヒドロキシアルキルメタクリレートはメタクリル酸とアルキレンオキサイドとの付加反応により製造される。 アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜6のアルキレンオキサイドが挙げられる。具体的には、エチレンオキサイド(酸化エチレン)、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。本発明に係る方法で製造されるヒドロキシアルキルメタクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。 原料であるメタクリル酸の製造方法は特に限定されず、C4酸化法やACH法等、公知の製造方法で製造されたメタクリル酸を用いることができる。アルキレンオキサイドの製造方法も特に限定されず、ハロヒドリンの閉環反応やオレフィンの酸化反応等、公知の製造方法で製造されたアルキレンオキサイドを用いることができる。 本発明に係る方法では、触媒として本発明に係る方法により製造されるメタクリル酸鉄を用いる。該メタクリル酸鉄はメタクリル酸鉄を含むメタクリル酸溶液(以下、メタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液と示す)の状態で触媒として用いることができ、高活性、高選択性、高い反応液への溶解性を示す。 本発明に係る方法では、触媒として本発明に係る方法により製造されるメタクリル酸鉄以外に、さらに4級アンモニウム塩とアミン化合物とを用いることが、活性、選択性向上の観点から好ましい。 4級アンモニウム塩は特に限定されないが、蒸留時の残渣性状の良好性や留出液の着色低減の観点からテトラアルキルアンモニウム塩が好ましい。テトラアルキルアンモニウム塩のアルキル基は直鎖でも分岐していてもよく、水酸基やフェニル基等の置換基がアルキル基にさらに付いていてもよい。テトラアルキルアンモニウム塩としては、例えば下記式(2)で表される化合物を用いることができる。 N+(R8)(R9)(R10)(R11)X− (2) 式(2)中、R8〜R11は置換又は無置換の直鎖又は分岐のアルキル基或いはフェニル基を表し、Xはハロゲン又はOHを表す。 前記式(2)において、R8〜R11のアルキル基の置換基としては、水酸基、フェニル基等が挙げられる。R8〜R11のアルキル基は長いほど活性が向上するため好ましく、経済性の観点から炭素数4のブチル基が好ましい。テトラアルキルアンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、フェニルトリメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、コリン塩等が挙げられる。Xのハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 アミン化合物は特に限定されないが、製品の着色低減や経済性の観点から3級アミンが好ましい。3級アミンはトリアルキルアミンであることが好ましい。トリアルキルアミンのアルキル基は直鎖でも分岐していてもよく、水酸基やフェニル基等の置換基がアルキル基にさらに付いていてもよい。3級アミンとしては、例えば下記式(3)で表される化合物を用いることができる。 N(R12)(R13)(R14) (3) 式(3)中、R12〜R14は置換又は無置換の直鎖又は分岐のアルキル基或いはフェニル基を表す。 前記式(3)において、R12〜R14のアルキル基の置換基としては、水酸基、フェニル基等が挙げられる。3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン(TEOA)、トリブチルアミン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、アミン化合物はアルキレンジメタクリレートやジアルキレングリコールモノメタクリレートの副生を抑制できる観点からも触媒として添加することが好ましい。 4級アンモニウム塩の使用量としては、メタクリル酸鉄1モルに対し0.5〜1.5モルであることが好ましい。4級アンモニウム塩をメタクリル酸鉄1モルに対し0.5〜1.5モル用いることにより選択性が向上する。4級アンモニウム塩を、メタクリル酸鉄1モルに対し0.7〜1.3モル使用することがより好ましく、0.8〜1.2モル使用することがさらに好ましい。なお、4級アンモニウム塩の使用量がメタクリル酸鉄1モルに対し2.0モル以上である場合、選択性が低下する場合がある。 アミン化合物の使用量としては、メタクリル酸鉄1モルに対し0.5〜5.0モルであることが好ましい。アミン化合物をメタクリル酸鉄1モルに対し0.5モル以上用いることにより選択性が向上する。また、アミン化合物をメタクリル酸鉄1モルに対し5.0モル以下用いることにより、コスト高とならずに選択性を向上させることができる。アミン化合物を、メタクリル酸鉄1モルに対し0.7〜2.0モル使用することがより好ましく、0.8〜1.5モル使用することがさらに好ましい。 原料の仕込み比率は特に限定されないが、生産性の観点からメタクリル酸とアルキレンオキサイドとのモル比(メタクリル酸/アルキレンオキサイド)は0.1以上10以下が好ましく、0.5以上2以下がより好ましい。触媒であるメタクリル酸鉄の添加量は特に限定されないが、反応速度と経済性の兼ね合いから、メタクリル酸及びアルキレンオキサイドのうち仕込み量(モル)が少ない方の原料に対し、0.01モル%以上10モル%以下が好ましく、0.1モル%以上5モル%以下がより好ましい。反応温度は、反応速度と副反応抑制の観点から0℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上100℃以下がより好ましい。反応は重合防止剤の共存下で行うことが好ましく、公知の重合防止剤を用いることができる。例えば前記メタクリル酸鉄の製造方法において例示した重合防止剤を用いることができる。反応後の精製方法は特に限定されないが、例えば蒸留が挙げられる。蒸留としては、例えば薄膜蒸留が挙げられる。 以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例における生成物の分析はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った。また、蛍光X線分析(XRF分析)は(株)リガク製の蛍光X線分析装置ZSX100eを用いて、使用モードはSQX定性分析にて行った。 [実施例1−1] (メタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液の調製) 冷却管、温度計及びエア導入管を備えた1L4つ口フラスコに、XRF分析による表面の酸素原子含有量が2.1質量%である鉄粉(電解鉄粉、和光純薬工業(株)製、100mesh(150μm))1.005g(0.018mol)と、ハイドロキノン(HQ)0.03gと、水分量151ppmのメタクリル酸(MAA)450g(5.23mol)とを仕込んだ。この溶液に対し空気を10ml/minの流量でバブリングしながら、該溶液を加熱攪拌した。内温が95℃に到達してから4分後に100℃になり、100℃で300分保持したところ、鉄粉が完全に溶解し均一な赤色溶液となったため、放冷した。これによりメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液を調製した。 なお、別途、同じく調製したメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液におけるメタクリル酸鉄の収率は95.6%であった。 (ヒドロキシエチルメタクリレートの合成) 調製したメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液の全量と、塩化コリン2.512g(0.018mol)と水0.839g(0.0466mol)との混合溶液と、トリエタノールアミン(TEOA)2.6856g(0.018mol)と重合防止剤としてのHO−TEMPOのベンジルエステル体0.053gとをメタクリル酸(MAA)61g(0.71mol)に溶解させた溶液とを、1LのSUS製オートクレーブに仕込んだ。ここに、30℃で酸化エチレン(EO)29.1g(0.661mol)を7分かけて滴下した。続いて66℃で酸化エチレン(EO)280.9g(6.377mol)を120分かけて滴下した。そして、66℃で4時間熟成した。その後、反応液に残存する酸化エチレン(EO)を51℃/11.325kPaで1.5時間減圧除去した。反応液はGCで分析した。ヒドロキシエチルメタクリレートの反応収率は89.5%(メタクリル酸基準)であった。残存メタクリル酸量は1.06%、副生したエチレングリコールジメタクリレートの量は0.07%、ジエチレングリコールモノメタクリレートの量は4.10%であった。反応液中に固形物の析出は全く観察されなかった。 [実施例1−2] (メタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液の調製) 300分の保持時間を480分とした以外は実施例1−1と同様にしてメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液を調製した。なお、別途、同じく調製したメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液におけるメタクリル酸鉄の収率は95.6%であった。 (ヒドロキシエチルメタクリレートの合成) 実施例1−2のメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液を使用した以外は、実施例1−1と同様にしてヒドロキシエチルメタクリレートを合成した。ヒドロキシエチルメタクリレートの反応収率は89.3%(メタクリル酸基準)であった。残存メタクリル酸量は1.01%、副生したエチレングリコールジメタクリレートの量は0.05%、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの量は3.83%であった。反応液中に固形物の析出は全く観察されなかった。 [実施例2] (メタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液の調製) 冷却管、温度計及びエア導入管を備えた1L4つ口フラスコに、XRF分析による表面の酸素原子含有量が2.1質量%である鉄粉(電解鉄粉、和光純薬工業(株)製、100mesh(150μm))0.9549g(0.0171mol)と、ハイドロキノン(HQ)0.03gと、水分量151ppmのメタクリル酸(MAA)385g(4.48mol)とを仕込んだ。この溶液に対し空気を10ml/minの流量でバブリングしながら、該溶液を加熱攪拌した。内温が95℃に到達してから9分後に100℃になり、100℃で180分保持した。その後22分で110℃まで昇温し、110℃で30分保持した。さらにその後16分で120℃まで昇温し、120℃で60分保持した。この時点で鉄粉が完全に溶解し均一な赤色溶液となったため、10分で110℃以下まで放冷し、その後12分(合計22分)で100℃以下まで放冷した。 (ヒドロキシエチルメタクリレートの合成) 調製したメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液の全量と、塩化コリン2.6376g(0.0189mol)と水0.879g(0.0488mol)との混合溶液と、トリエタノールアミン(TEOA)2.9243g(0.0196mol)と重合防止剤としてのHO−TEMPOのベンジルエステル体0.053gとをメタクリル酸(MAA)126g(1.47mol)に溶解させた溶液とを、1LのSUS製オートクレーブに仕込んだ。ここに、30℃で酸化エチレン(EO)29.3g(0.665mol)を7分かけて滴下した。続いて66℃で酸化エチレン(EO)305.7g(6.940mol)を120分かけて滴下した。そして、66℃で4時間熟成した。その後、反応液に残存する酸化エチレン(EO)を51℃/11.325kPaで1.5時間減圧除去した。反応液はGCで分析した。ヒドロキシエチルメタクリレートの反応収率は90.0%(メタクリル酸基準)であった。残存メタクリル酸量は0.79%、副生したエチレングリコールジメタクリレートの量は0.08%、ジエチレングリコールモノメタクリレートの量は3.83%であった。反応液中に固形物の析出は全く観察されなかった。 [実施例3〜11、比較例1〜6] 表1〜4に示す鉄粉と条件を用いた以外は実施例1、2と同様に、メタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液を調製し、ヒドロキシエチルメタクリレートの合成を行った。 なお、実施例6、7では鉄粉としてXRF分析による表面の酸素原子含有量が2.1質量%であるアドマイズ鉄粉(和光純薬工業(株)製、粒径180μm)を用いた。また、全ての実施例及び比較例のメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液の調製において、最終的にメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液を100℃以下まで降温した。また、全ての実施例及び比較例において、メタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液の調製と、ヒドロキシエチルメタクリレートの合成との両者において用いたメタクリル酸の合計量が511g(5.94mol)となるようにした。また、酸化エチレンの添加方法(温度、フィード速度、フィード時間)は実施例1、2と同様に行ったが、各実施例及び比較例においてポンプのフィード速度に僅かに差があり、結果的に仕込まれた酸化エチレンの量が異なる結果となった。このため表4には実際に仕込まれた酸化エチレンの量を記載した。 [実施例12〜15、比較例7、8] 実施例2と同様にして、種々の鉄粉を用いてメタクリル酸鉄含有メタクリル酸溶液を調製し、その溶解性を評価して表5に示した。120℃までは実施例2と同様の加熱を行った後、120℃に達してからの保持時間で溶解性を確認した。 本発明の方法を用いることにより、安価かつ腐食性の無い金属鉄を原料として、活性、選択性及び溶解性に優れるヒドロキシアルキルメタクリレート製造用触媒として好適なメタクリル酸鉄を提供することができる。 XRF分析による表面の酸素原子含有量が6質量%以下である金属鉄と、メタクリル酸との混合物を、95℃以上110℃未満で100〜600分加熱処理するヒドロキシアルキルメタクリレート製造用メタクリル酸鉄の製造方法。 XRF分析による表面の酸素原子含有量が6質量%以下である金属鉄と、メタクリル酸との混合物を、95℃以上110℃未満で100〜600分加熱処理した後、110℃以上125℃以下で30〜300分加熱処理し、100℃以下に降温するヒドロキシアルキルメタクリレート製造用メタクリル酸鉄の製造方法。 アルキレンオキサイドとメタクリル酸とを反応させてヒドロキシアルキルメタクリレートを製造する方法であって、触媒として請求項1又は2に記載の方法により製造されるメタクリル酸鉄を使用するヒドロキシアルキルメタクリレートの製造方法。 触媒として、さらに4級アンモニウム塩とアミン化合物とを使用する請求項3に記載のヒドロキシアルキルメタクリレートの製造方法。 4級アンモニウム塩をメタクリル酸鉄1モルに対し0.5〜1.5モル使用する請求項4に記載のヒドロキシアルキルメタクリレートの製造方法。


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