生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_白毛数抑制剤及び非治療的な美容方法
出願番号:2012276617
年次:2013
IPC分類:A61K 8/49,A61Q 5/00,A61K 8/34,A61K 8/97


特許情報キャッシュ

田口 暢彦 加藤 昌志 飯田 真智子 上村 規行 JP 2013147491 公開特許公報(A) 20130801 2012276617 20121219 白毛数抑制剤及び非治療的な美容方法 ホーユー株式会社 000113274 学校法人中部大学 500433225 北川 治 100097733 北川 英陸 100162466 田口 暢彦 加藤 昌志 飯田 真智子 上村 規行 JP 2011282201 20111222 A61K 8/49 20060101AFI20130705BHJP A61Q 5/00 20060101ALI20130705BHJP A61K 8/34 20060101ALI20130705BHJP A61K 8/97 20060101ALI20130705BHJP JPA61K8/49A61Q5/00A61K8/34A61K8/97 6 12 OL 28 4C083 4C083AA111 4C083AA112 4C083AC122 4C083AC841 4C083AC842 4C083CC37 4C083DD23 4C083EE07 4C083EE24 本発明は、白毛数抑制剤及び非治療的な美容方法に関する。 体毛の色素は毛包に存在する色素細胞によって産生されている。色素を産生する色素細胞は色素幹細胞から分化・成熟したものである。毛周期(体毛のサイクル)の休止期ではいったん色素細胞が失われ、新たな体毛の成長が開始されたときに何らかの理由で色素細胞が毛包に存在しないもしくは色素産生量が極めて少ないと、当該新たな体毛は白毛となる。 近年、高齢化の進行に伴って、体毛においては特に白毛に対する意識が高まっており、白髪を染める染毛剤や、白毛の予防剤、治療剤等が数多く提供されている。白毛の予防剤、治療剤は、染毛剤に比べて色の変化が現れるまでには時間が長くかかるものの皮膚への刺激が少なく酸化剤・アルカリ剤等による毛髪の損傷もないという長所がある。 体毛の色素であるメラニンはチロシンからつくられるので、従来においてはチロシナーゼと色素細胞の関係に着目した白毛の予防剤や治療剤などが開示されてきた。 その後更に、転写因子であるMITF−Mがチロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1の発現量を制御しており、MITF−Mの活性上昇が白毛の予防・改善に結びつくことや、メラニン産生とは別異の観点において、XVII型コラーゲンの発現により体毛の脱色素化が抑制されることが開示された。 また、植物の代謝産物であるフラボノイド類は、色素や食品添加物として広く産業に用いられており、そのうちいくつかの成分は美容効果や治療効果をもたらすことが知られている。特開2000−229889号公報 前記公報においては、サンショウ抽出物がメラノサイト遊走能力を増強すること、サンショウ抽出物はメラニン生合成系の酵素であるチロシナーゼの活性を増強せしめたこと、メラノサイトの遊走能力増強作用と抗白髪性はよく相関することが開示されている。特開2000−300298号公報 前記公報においては、チロシナーゼをコードするmRNAは一貫して、黒色毛髪の毛包では検出され、白色毛髪の毛包では検出されなかったことが開示されている。特開2003−171240号公報 前記公報においては、MITF−Mの活性低下を防ぎ、更には活性上昇させることが、白髪の予防、改善に結びつくことが開示されている。特開2009−51753号公報 前記公報においては、XVII型コラーゲンの発現により毛髪の脱色素化が抑制されることが開示されている。特開2004−2264号公報 前記特許文献5には、老化性白毛の治療剤として、特定のフラボノイド類を用いた組成物に関する発明が開示されている。 上述のように、白髪に代表される白毛発症のメカニズムには複数の要素が関わっていることが推定され、当該メカニズムは未だ明らかではない。また、特定の酵素や遺伝子に着目した種々の白毛の予防剤、治療剤が開示されてきたが、その効果は未だ満足できるものではなかった。また、白髪以外の体毛においても、加齢と共に生じる白毛を有色毛にしたいという要望がある。 そこで本願発明者は、白毛発症のメカニズムに含まれる特定の酵素や遺伝子に着目するのだけではなく、ヒトは加齢と共に自然に白毛を発症しその進行は緩やかに進む、といういわば白毛の表現型にも着目した。そして、ヒトと酷似した白毛表現型のマウスを用いて自然な白毛発症を抑制することができる成分を発見することが、白毛数抑制剤及び非治療的な美容方法の開発につながると考えた。 このような考えに基づき鋭意研究を重ねた結果、本願発明者は色素幹細胞数の維持/増加、メラニン産生の促進、エンドセリンレセプターB(以下、EDNRBとも称する。)遺伝子、MITF−M遺伝子、Bcl2遺伝子、チロシナーゼ遺伝子の各遺伝子の活性化、γH2AXの抑制、活性酸素の生成の抑制、望ましくはこれらの複数を示す成分が白毛数の抑制及び非治療的な美容方法に有用であることを見出した。 そして、本発明者らは、有用なフラボノイド類について種々検討した結果、従来化粧品及び医薬品原料としては用いられてこなかった下記化1の構造を有するフラバノン類であるステルビン(7-O-methyleriodictyol)が、白毛数の抑制及び非治療的な美容方法に有用であることを見出し、本発明を完成した。 よって、有用な白毛数抑制剤及び非治療的な美容方法を提供することを本発明が解決すべき課題とする。 (第1発明) 上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、 下記化1に示す(A)成分を含有する白毛数抑制剤である。 第1発明において示す化1がステルビン(7-O-methyleriodictyol)である。 (第2発明) 上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、 前記(A)成分を0.001質量%〜10質量%含有する第1発明に記載の白毛数抑制剤である。 (第3発明) 上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、 前記白毛数抑制剤が、更に(B)浸透促進成分として溶剤、界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有する第1発明又は第2発明に記載の白毛数抑制剤である。 (第4発明) 上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、 前記白毛数抑制剤が、更に(C)定着成分として増粘剤を含有する第1発明〜第3発明のいずれかに記載の白毛数抑制剤である。 (第5発明) 上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、 前記白毛数抑制剤が、更にヤーバサンタ抽出物及びヨモギ抽出物から選ばれる少なくとも1種を含有する第1発明〜第4発明のいずれかに記載の白毛数抑制剤である。 (第6発明) 上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、 第1発明〜第5発明のいずれかに記載の白毛数抑制剤を適用する非治療的な美容方法である。(第1発明) 体毛中に色素が存在することにより、体毛は黒色、茶色、赤色、金色等となる。体毛の色素は毛包に存在する色素細胞によって産生されている。色素を産生する色素細胞は色素幹細胞から分化・成熟したものである。 上記の第1発明により、優れた白毛数抑制剤が提供される。ステルビンは、色素幹細胞数の維持/増加、EDNRB、MITF−M、Bcl2、チロシナーゼの各遺伝子の活性化、メラニン産生の促進、γH2AXの抑制等の効果や活性酸素が原因である白毛発生の予防効果があると考えられる。これらの効果により、白毛数が抑制できると考えられる。 白毛数抑制剤の投与経路・時期・量等を、使用者の要求に合わせて適宜選択することにより、所望の白毛数抑制効果を得ることができると考えられる。(第2発明) 上記第2発明により、より好適な白毛数抑制剤が提供される。(第3発明) 上記第3発明により、より皮膚に上記(A)成分が浸透しやすい白毛数抑制剤が提供される。これにより、組成物中の(A)成分の量を節約しても本発明の効果の維持/増進が期待できる。また、本発明の効果の早期発現が期待できる。(第4発明) 上記第4発明により、より使用しやすい白毛数抑制剤が提供される。白毛数抑制剤の使用性の向上、白毛数抑制剤の定着部位への(A)成分の持続的供給、又は経時安定性の確保という効果を期待できる。好ましい投与経路である塗布によって当該剤を使用する場合、垂れ落ち等を防止して、所望の部位にのみ当該剤を塗布することができる。また、所望の部位に当該剤を留まらせることも可能であり、塗布部位への持続的な(A)成分の供給が図られる。(第5発明) 上記第5発明により、ステルビンの奏する効果と、ヤーバサンタ抽出物、ヨモギ抽出物の奏する効果の相乗効果が得られると考えられる。(第6発明) 上記第6発明により、有用な非治療的な美容方法が提供される。全体毛本数中における白毛本数の割合が増加するのは、加齢における自然な現象である。例えば、加齢にともない白髪や白ひげ等が増加する。白髪を含む白毛の状態・変化については一律の評価を得ることは難しく、むしろ現状について「白毛の増加を抑制したい、現在の白毛状態を維持したい、又は白毛から有色毛へ改善したい」など変化の度合いについての要望が多い。上記した白毛数抑制剤の適用時期・量等を、使用者の要求に合わせて適宜選択することにより、これらの要望に応えることができる非治療的な美容方法が提供される。ステルビンのEDNRB遺伝子発現量およびプロモーター活性上昇効果を示す。ステルビンのMITF−M遺伝子発現量およびプロモーター活性上昇効果を示す。ステルビンのBcl2遺伝子発現量上昇効果を示す。ステルビンのチロシナーゼ遺伝子発現量上昇効果を示す。ホソバヤーバサンタ葉抽出物、カワラヨモギ葉抽出物のEDNRB遺伝子プロモーター活性上昇効果を示す。ホソバヤーバサンタ葉抽出物、カワラヨモギ葉抽出物のMITF−M遺伝子プロモーター活性上昇効果を示す。マウス検体毛が黒毛か白毛かの判断例を示す写真である。マウスにおける、ステルビンの白毛発生の抑制効果を示す。マウスにおける、ステルビンの白毛発生率の抑制効果を示す。マウスにおける、ホソバヤーバサンタ葉抽出物、カワラヨモギ葉抽出物の白毛発生の抑制効果を示す。マウスにおける、ホソバヤーバサンタ葉抽出物、カワラヨモギ葉抽出物の白毛発生率の抑制効果を示す。マウスにおける、ステルビンの白毛発生の抑制効果を示す。γH2AX検出試験結果を示す。ステルビンによる、ヒト白毛の改善例を示す。ホソバヤーバサンタ葉抽出物による、ヒト白毛の改善例を示す。ステルビンの色素幹細胞数維持効果を示す。ホソバヤーバサンタ葉抽出物、カワラヨモギ葉抽出物の色素幹細胞数維持効果を示す。ステルビンの、濃度別の、メラニン産生促進効果を示す。ホソバヤーバサンタ葉抽出物の塗布によって、白髪が黒髪に改善された例を示す。 次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。 〔体毛〕 体毛は、ヒトを含む動物の任意の毛を意味する。体毛は頭に生える毛髪、口髭や顎鬚を含むひげ、眉毛、睫毛、鼻毛、腕・脚・胸等の胴体に生える毛を好ましく例示することができ、毛髪、ひげ、眉毛、睫毛を更に好ましく例示することができ、毛髪、ひげを特に好ましく例示することができる。 ヒトの体毛において、白毛とはメラニンを有しない、又は、メラニン量が極めて少ないために白毛様に見える体毛である。例えば、体毛1本を写真撮影し、その画像をPhoto shopにてL値の平均を測定し、それが50を越えるものを白毛と判断することも可能である。これに対し当該白毛に該当しない黒色、茶色、赤色、金色等の色を把握できる体毛を有色毛とする。例えば、毛髪においては、有色毛とは黒髪などであり、白毛とは白髪である。ひげにおいては、有色毛とは黒ひげ等であり、白毛とは、白ひげである。他の体毛においても、適宜体毛の名称が異なる。 非ヒト哺乳動物において、白毛とはメラニン・メラノソームを有しない、又は、メラニン・メラノソーム量が極めて少ないために白毛様に見える体毛である。例えば、体毛1本を写真撮影し、その画像をPhoto shopにてL値の平均を測定し、それが50を越えるものを白毛と判断することも可能である。これに対し当該白毛に該当しない色を把握できる体毛を有色毛とする。例えば図7のようにマウスの体毛であれば、ヒトの体毛より細くまた構造的にもヒト体毛より容易に顕微鏡でメラニン・メラノソームの有無を判別することができる。一方、体毛に含まれる色素の態様がヒトに準ずる場合もある。 白毛数の抑制とは、体毛の色に着目し、白毛の存在比率を抑制することである。例えば、有色毛から白毛への変化の予防、有色毛から白毛への変化の抑制、白毛から有色毛への変化等を含む概念である。 〔皮膚〕 皮膚は、ヒトを含む体毛を有する動物一般の皮膚をさす。当該皮膚としては、ヒトの皮膚、非ヒト哺乳動物の皮膚が好ましい。また、後述の剤、組成物等を塗布、適用等する場合、部位としては、頭、腕、脚などの体毛を有する部位が好ましく挙げられる。より好ましくは、頭皮、あごを含む顔、くび、手、脚等である。 <白毛数抑制剤> 白毛数抑制剤は、上記した体毛の種類によって、更に個別の体毛についての白毛数抑制剤となる。 〔(A)成分〕 本発明の白毛数抑制剤は(A)成分としてステルビンを含有する。当該(A)成分が活性成分となる。ステルビンは不斉炭素を有する化合物であるが、R体、S体のいずれの立体異性体を用いても良いし、例えばラセミ体等の各立体異性体の混合物を用いても良い。また、白毛数抑制剤に含まれる(A)成分は、ステルビンそのものであっても良いし、薬学的に許容される塩や水和物等の形態であっても良い。薬学的に許容される塩や水和物等の形態である場合、(A)成分の含有量は、上記化1に示すステルビン量に換算して表す。(A)成分は合成可能であるし、植物等から得ることができるし、適宜市販品を用いても良い。また、白毛数抑制剤の製造に(A)成分を含有する植物抽出物を利用することもできる。以上の通り、本願は白毛数抑制剤を製造するための(A)成分の使用方法をも開示する。 本発明の白毛数抑制剤中の(A)成分の含有量は特に限定されない。当該剤の使用者の所望する効果に合わせて(A)成分の含有量を適宜選択することが好ましい。(A)成分の含有量は、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.02〜2質量%が更に好ましい。 〔(B)浸透促進成分〕 浸透促進成分としては、溶剤、界面活性剤から選ばれる少なくとも1種が好ましい。(B)成分は適宜市販品等を用いることができる。 溶剤としては、水、低級アルコール、脂肪酸、高級アルコール、芳香族アルコール、グリコール類、グリセリン類が好ましい。これらのうちいくつかは、後述する抽出溶媒ともなりうる。 低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等から選ばれる1種以上が好ましい。 脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸等から選ばれる1種以上が好ましい。 高級アルコールとしては、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール等から選ばれる1種以上が好ましい。 芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール等から選ばれる1種以上が好ましい。 多価アルコールであるグリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等から選ばれる1種以上が好ましい。 多価アルコールであるグリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等から選ばれる1種以上が好ましい。 界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。 非イオン性界面活性剤としては、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤等から選ばれる1種以上が好ましい。 エーテル型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等から選ばれる1種以上が好ましい。 エステル型非イオン性界面活性剤としては、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、ホホバワックスPEG−80等から選ばれる1種以上が好ましい。 カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等から選ばれる1種以上が好ましい。 アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類等から選ばれる1種以上が好ましい。 両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等から選ばれる1種以上が好ましい。 〔(C)定着成分〕 定着成分としては、増粘剤が好ましい。(C)成分は適宜市販品等を用いることができる。 増粘剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性及び両性高分子化合物が好ましく、例えばアラビアガム、カラギーナン、ガラクタン、グアーガム、クインスシードガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、ヒドロキシアルキルキサンタンガム、デキストラン、ヒアルロン酸、カードラン、サクシノグルカン、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、可溶性デンプン等のデンプン系高分子、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等から成る半合成高分子、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体等の合成高分子、ベントナイト、ラポナイト等の無機物系高分子等から選ばれる1種以上が好ましい。 カチオン性高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等のカチオン化セルロース、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体のカチオン化物等の四級化ポリビニルピロリドン誘導体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドの単独重合体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体等のジアリル四級化アンモニウム塩重合物誘導体及びカチオン化グアーガム等から選ばれる1種以上が好ましい。両性高分子化合物としては、アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキルエステル共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸/アクリルアミド共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸共重合体等から選ばれる1種以上が好ましい。 〔ヤーバサンタ抽出物〕 ヤーバサンタは、ハゼリソウ科(Hydrophyllaceae)、エリオディクティオン属(Eriodictyon)の植物:Eriodictyon angustifolium Nutt.(ホソバヤーバサンタ)、Eriodictyon californicum(Hook.et Arn.)Torr.、Eriodictyon tomentosum Benth.、Eriodictyon altissimum P.V.Wells、Eriodictyon capitatum Eastw.、Eriodictyon crassifolium Benth.、Eriodictyon traskiae Eastw.、Eriodictyon trichocalyx A.Heller等を含む概念である。好ましくは、ホソバヤーバサンタである。 ヤーバサンタ抽出物とは、上記ヤーバサンタの花、果穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の方法により得られる抽出物をいう。当該抽出物は抽出により得られる物であれば良く、揮発性成分、不揮発性成分、乾固により構造が変化する成分を含んでよい。抽出物の調製に好ましい部位は葉である。ヤーバサンタ抽出物は適宜市販品を使用しても良い。 ヤーバサンタ抽出物は、季節変動がある場合は、フラボノイド産生が盛んな時期に採取したヤーバサンタの抽出物が好ましく、ステルビンを含むヤーバサンタの抽出物がより好ましい。 ヤーバサンタ抽出物が(A)成分であるステルビンを含有する場合、白毛数抑制剤が含有する(A)成分量にはヤーバサンタ抽出物が含有する(A)成分量が含まれる。 〔ヨモギ抽出物〕 ヨモギとは、カワラヨモギ(Artemisia capillaries Thunb. (Compositae))、オトコヨモギ、ハマヨモギ、イワヨモギ等を含む概念である。好ましくは、カワラヨモギである。 ヨモギ抽出物とは、上記ヨモギの花、果穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の方法により得られる抽出物をいう。当該抽出物は抽出により得られる物であれば良く、揮発性成分、不揮発性成分、乾固により構造が変化する成分を含んでよい。葉、花からの抽出物が特に好ましく、花からの抽出物がとりわけ好ましい。ヨモギ抽出物は適宜市販品を使用しても良い。 ヨモギ抽出物は、季節変動がある場合は、フラボノイド産生が盛んな時期に採取したヨモギの抽出物が好ましく、ステルビンを含むヨモギの抽出物がより好ましい。 ヨモギ抽出物が(A)成分であるステルビンを含有する場合、白毛数抑制剤が含有する(A)成分量にはヨモギ抽出物が含有する(A)成分量が含まれる。 〔抽出溶媒〕 溶媒等を用いて上記抽出物を得る場合、抽出に用いる溶媒の種類は限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、エーテル類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等を挙げることができ、これらの1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。上記した抽出溶媒のうち特に、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。 〔その他の成分〕 本発明の白毛数抑制剤には、上述の成分の他に、例えば、以下の成分も含有させることができる。 アミノ酸類:アミノ酸類としては、アミノ酸及びその塩が挙げられる。アミノ酸としては、グリシン、小麦アミノ酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、メチオニン等が挙げられる。 油脂:油脂としては、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。 ロウ類:ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。 高級脂肪酸:高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。 アルキルグリセリルエーテル:アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。 エステル類:エステル類としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、脂肪酸(C10−30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ラノリン誘導体等が挙げられる。 シリコーン類:シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、グリセリン変性シリコーン、脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。 炭化水素:炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。 さらにソルビトール、マルトース等の糖類、パラベン、安息香酸ナトリウム等の防腐成分、EDTA−2Na等のキレート成分、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定成分、リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸等のpH調整成分、上記したヤーバサンタ及びヨモギではない植物又は生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収成分、美白成分、皮膚用柔軟化成分、殺菌成分等を任意に選択して配合することができる。 また、常法で薬学的に許容される液体、固体等の公知の各種担体と混合し、また必要に応じて、矯味成分、賦形成分、保存成分、溶解補助成分、等張化成分、無痛化成分、結合成分、被覆成分、潤沢成分、崩壊成分、などを加えることも可能である。 更に、「医薬部外品原料規格2006」(薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。 〔剤型〕 本発明の白毛数抑制剤の剤型は限定されないが、例えば液状、乳液状、クリーム状又はゲル状が好適である。また、顆粒剤、糖衣剤、カプセル剤、吸入剤とすることも好ましい。これらの剤型は、周知の方法や常法に従って実現可能である。 〔投与経路〕 本発明の白毛数抑制剤の投与経路は特に限定されず、経口投与、吸入投与、手や塗布具等によって皮膚に塗布する等剤を目的部位に付着させる経皮吸収、血管投与、皮下注射および皮内注射などが可能であり、経皮吸収及び経口投与が好ましく、経皮吸収が特に好ましい。 投与の時期や量については、本発明が奏する効果の所望の程度と投与経路の組み合わせなどに基づき、好ましい方法が適宜決定される。必要により、医師等の処方に従うことも好ましい。 ヒトの皮膚での経皮吸収とする場合、皮膚20〜40cm2あたり、(A)成分が0.0025〜25mg/回が皮膚に適用されることが好ましく、適用間隔は少なくとも1日1〜2回塗布とすることが好ましい。 非ヒト哺乳動物の皮膚での経皮吸収とする場合、皮膚4〜5cm2あたり、(A)成分が0.002〜20mg/回が皮膚に適用されることが好ましく、適用間隔は少なくとも1日1回塗布とすることが好ましい。<非治療的な美容方法> 本発明の非治療的な美容方法は、上記白毛数抑制剤において記載した(A)成分を含有する組成物を適用する方法である。当該方法は非治療的なものであり、いわゆる医療行為を含まない。本発明の非治療的な美容方法では、化粧用品等を用いることが好ましい。 本発明の非治療的な美容方法における適用は、手や塗布具等によってする行為を始め、組成物を目的部位に付着させる行為が含まれる。本発明の非治療的な美容方法は、好ましくは塗布により組成物を適用する。適用前、適用中、適用後に剤型や使用方法にあわせて適宜な処置を施しても良い。 本発明の非治療的な美容方法における(A)成分に関しては、上記した白毛数抑制剤が含有する(A)成分と同様である。また、当該方法に使用する組成物において、(A)成分以外の成分に関しては、塗布を含む適用に適した成分であれば特に限定されず用いることができ、塗布化粧用品等として使用しうる成分を用いることが好ましい。 ヒトの皮膚に適用する場合、皮膚20〜40cm2あたり、(A)成分が0.0025〜25mg/回が皮膚に適用されることが好ましく、適用間隔は少なくとも1日1〜2回塗布とすることが好ましい。 非ヒト哺乳動物の皮膚に適用する場合、皮膚4〜5cm2あたり、(A)成分が0.002〜20mg/回が皮膚に適用されることが好ましく、適用間隔は少なくとも1日1回塗布とすることが好ましい。 本発明の非治療的な美容方法に用いる組成物の剤型は限定されないが、例えば液状、乳液状、クリーム状、ゲル状が好適である。これらの剤型は、周知の方法や常法に従って実現可能である。また、採用する剤型について周知の方法により使用可能である。 以下に本発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例(コントロールとも称する。)によって限定されない。 〔ステルビンの調製〕 関東化学株式会社に依頼し、ナリンゲニンのラセミ混合物を出発物質としてステルビンを合成した。第1ステップとしてナリンゲニンにメトキシ基の導入を行って中間産物を得て、第2ステップとして当該中間産物に水酸基の導入を行ってステルビンを得た。 〔ステルビンの構造決定〕 上記〔ステルビンの調製〕で得られた化合物の構造決定には二次元NMR(日本電子株式会社製 JNM-ECX400P)、質量分析(日本ウォーターズ株式会社製 LCT-Premier EX)、旋光度(日本分光工業株式会社製 DIP-360)の測定を用い、以下の結果を得た。 1H NMR (400MHz, DMSO): δ= 2.72 (dd, 1, J = 17.2Hz, J = 3.0Hz, H-3), 3.24 (dd, 1, J = 17.2Hz, J = 12.6Hz, H-3), 3.79 (s, 3, O-CH3), 5.43 (dd, 1, J = 12.4Hz, J = 3.0Hz, H-2), 6.08 (d, 1, J = 2.4Hz, H-8), 6.10 (d, 1, J = 2.4Hz, H-6), 6.75 (s, 2, H-5’ & H-6’), 6.89 (s, 1, H-2’) ppm, 13C NMR (400MHz, DMSO): δ= 42.11 (CH2, C-3), 55.86 (CH3, O-CH3), 78.63 (CH, C-2), 93.76 (CH, C-6), 94.56 (CH, C-8), 102.60 (C, C-4a), 114.36 (CH, C-2’), 115.31 (CH, C-5’), 117.97 (CH, C-6’), 129.26 (C, C-1’), 145.17 (C, C-3’), 145.73 (C, C-4’), 162.81 (C, C-9), 163.17 (C, C-5), 167.40 (C, C-7), 196.93 (C, C-4) ppm, m/z = 301.0730 [M―H]―, [α]20D = ±0℃(標準溶液濃度C=3.31×10-3 M、アセトニトリル)。 さらに、本合成物の1H NMR (400MHz, CD3OD) の分析結果と文献(J. Agric. Food Chem. 2005, 53, 6061-6066)の1H NMR (400MHz, CD3OD) の分析結果より、合成物がステルビンであることを確認した。別ロットとして合成したステルビンに関してもHPLC、MS、1H NMR (400MHz, CD3OD)でステルビンであることを確認して試験に用いた。以下の実施例では当該ステルビンを使用した。 〔実施例1:EDNRB、MITF−M、Bcl2、チロシナーゼ各遺伝子活性化試験〕 ヒトメラノーマ細胞であるSK−Mel28、メラニン産生細胞であるNormal human epidermal melanocyte(以下、NHEMとも称する。)を用いて、ステルビンのEDNRB、MITF−M、Bcl2、チロシナーゼ各遺伝子の活性化効果を検討した。 −プロモーター活性測定− 以下の手順のルシフェラーゼアッセイにより、EDNRB及びMITF−M各遺伝子のプロモーター活性を測定した。各試験はN=4で行い、複数回実施して、再現性を有することを確認した。(1)6cm dishを用いて、SK−Mel28ヒトメラノーマ細胞に、リポフェクトアミンLTX(Invitrogen社)を使用し、発明者らが作製したヒトEDNRB遺伝子プロモーター(上流1013bp)又はヒトMITF−M遺伝子プロモーター(上流330bp)配列が入ったプラスミドDNAをトランスフェクションした。(2)24時間後、96ウエルプレートに細胞をまきなおした。(3)24時間後、ステルビンの濃度30μM溶液(コントロールである「DMSO」はステルビンを添加しなかったことを意味する。)を100μLのNO serumのDMEM培地に対し0.1μL添加した。DMSOは濃度0.1%(v/v)で使用した。(4)24時間後、Dual Ruciferase Kit(Promega社)を使用しプロモーター活性を測定した。測定は、当該キットの説明書に記載の方法に従った。 EDNRB遺伝子の試験結果を平均値にて図1左のグラフに、MITF−M遺伝子の試験結果を平均値にて図2左のグラフに、それぞれ示す。EDNRB遺伝子のプロモーター活性はコントロールに対して3.03倍であった。MITF−M遺伝子のプロモーター活性はコントロールに対して2.69倍であった。 遺伝子の発現においては、遺伝子の転写から翻訳へという流れがある。プロモーターの活性化からは転写の活性化(転写量の増大)が合理的に推測さるので、即ちプロモーターの活性化からは遺伝子発現の促進が合理的に推定できる。 次に、上述のステルビンに換えてホソバヤーバサンタ葉抽出物及びカワラヨモギ葉抽出物を用い、EDNRB及びMITF−M各遺伝子のプロモーター活性化効果を上述と同様の手順で検討した。以下の実施例において植物抽出物を用いる試験では、入手元を記載しない場合は株式会社コネクトより購入した各植物を用いた。 ホソバヤーバサンタ葉10.0gを無水エタノールに72時間浸漬し、濾過後エバポレーターを用いてエタノールを除去し、不定形固体状物質として1.94g(うち348mgがステルビンとHPLCにて確認)のホソバヤーバサンタ葉抽出物を得た。当該得た抽出物を終濃度10μg/mlになるようにDMSOおよびDMEM培地で調整して使用した。その他は上述と同様の手順で試験した。 カワラヨモギ葉抽出物の試験では、上述(3)のステルビン溶液に換えて、一丸ファイルコス社製ファルコレックスカワラヨモギエキスBの1%(v/v)水溶液(ステルビン0.001ppm含有)を用いた。なお、当該カワラヨモギ葉抽出物水溶液には上記DMSOに換えて1,3−ブチレングリコール(BG)を使用し、その濃度は1%(v/v)とした。即ち、当該カワラヨモギ葉抽出物水溶液はカワラヨモギ抽出物、BG及び水からなる。よって、コントロールは1%(v/v)BG水溶液とした。その他は上述と同様の手順で試験した。 EDNRB遺伝子のプロモーター活性化試験の結果を図5に、MITF−M遺伝子のプロモーター活性化試験の結果を図6に、それぞれ平均値にて示す。ホソバヤーバサンタ葉抽出物試験区では、EDNRB遺伝子のプロモーター活性はコントロールに対して1.47倍であった。MITF−M遺伝子のプロモーター活性はコントロールに対して3.68倍であった。カワラヨモギ葉抽出物試験区では、EDNRB遺伝子のプロモーター活性はコントロールに対して1.67倍であった。MITF−M遺伝子のプロモーター活性はコントロールに対して2.70倍であった。ホソバヤーバサンタ葉抽出物及びカワラヨモギ葉抽出物はEDNRB及びMITF−M各遺伝子のプロモーターを活性化した。 −発現量測定− 以下の手順のリアルタイムPCRにより、チロシナーゼ、EDNRB、MITF−M、及びBcl2各遺伝子の発現量を測定した。リアルタイムPCRのインターナルコントロールにはTBP(TATA binding protein)又は18S rRNA 遺伝子を用いた。各試験はN=2で行い、複数回実施して、再現性を有することを確認した。(1) 6cm dishに3.0×105個/dish のSK−Mel28ヒトメラノーマ細胞(EDNRB遺伝子、MITF−M遺伝子、Bcl2遺伝子、TBP遺伝子試験用)もしくはNHEMヒト正常表皮メラノサイト細胞(チロシナーゼ遺伝子、18S rRNA 遺伝子試験用)を用意した。(2) 細胞を6cm dishに播種した24時間後、上記プロモーター活性試験と同様に、30μMステルビンを添加した。(3)1時間後(チロシナーゼ遺伝子試験だけは24時間後)、High Pure RNA Isolation Kit(Roche Applied Science)を用いてRNAを抽出した(試験法詳細は取扱説明書参照)。(4)当該抽出したRNAよりcDNAを合成後、EDNRB、MITF−M、及びBcl2各遺伝子についてはPower SYBER Green PCR Master Mix (Applied Biosystems)を用いてリアルタイムPCRを行った。この時使用したプライマー配列を以下に示す。配列番号1:EDNRB F : 5’-ATCTGCGAATCTGCTTGCTT-3’配列番号2:EDNRB R : 5’-TCCCGTCTCTGCTTTAGGTG-3’配列番号3:MITF-M F : 5’-CCGTCTCTCACTGGATTGGT-3’配列番号4:MITF-M R : 5’-TGGGCTTGCTGTATGTGGTA-3’配列番号5:BCL2 F : 5’-CTCGTCGCTACCGTCGTGACTTCG-3’配列番号6:BCL2 R : 5’-CAGATGCCGGTTCAGGTACTCAGTC-3’配列番号7:TBP F : 5’-CACGAACCACGGCACTGATT-3’配列番号8:TBP R : 5’-TTTTCTTGCTGCCAGTCTGGAC-3’ なお、チロシナーゼ遺伝子のみはTaqMan Gene Expression Assay(Applied Biosystems)を使用した。チロシナーゼ遺伝子の定量にはHs01099965_m1(Applied Biosystems)を購入し、実験を行った。その時の内在性コントロールには18S rRNA 遺伝子を使用し、定量には4319413E(Applied Biosystems)を購入し、実験を行った。 ステルビンにおける、EDNRB遺伝子の試験結果を図1右のグラフに、MITF−M遺伝子の試験結果を図2右のグラフに、Bcl2遺伝子の試験結果を図3に、チロシナーゼ遺伝子の試験結果を図4に、それぞれ平均値にて示す。EDNRB遺伝子の発現量はコントロールに対して1.68倍であった。MITF−M遺伝子の発現量はコントロールに対して2.21倍であった。Bcl2遺伝子の発現量はコントロールに対して1.83倍であった。チロシナーゼ遺伝子の発現量はコントロールに対して110.6倍であった。 ステルビンは、EDNRB、MITF−M、Bcl2、チロシナーゼ各遺伝子の発現量及び/又はプロモーター活性を上昇させた。即ち、各遺伝子発現を活性化した。後述する実施例の結果を考慮し、ステルビンは白毛発生の抑制・黒毛等有色毛への改善に有用であると考えられた。 〔実施例2:マウスにおける白毛の経時変化1〕 実施例2においては、白毛モデル動物として、PCT/JP2006/302783号に開示された公知の白髪モデルマウスを使用した。この白髪モデルマウスは、詳細な説明は省くが、一定の遺伝子型を持ったノックアウト・トランスジェニックマウスであって、生後はじめて生える体毛の色が黒色ないしほぼ黒色であり、加齢と共に白毛を自然発症するという表現型を持っている。 白毛モデル動物は、ヒト以外の動物であって、体毛の白毛割合が経時変化するという表現型を持つ各種のモデル動物中から任意に選択することができるが、より好ましくは体毛の白毛化現象についてヒトとの共通性が大きい哺乳動物であり、更に好ましくは、小型、ヘアサイクルの適切さ、管理の容易さ等の点からラット、マウス等の齧歯目動物であり、とりわけ好ましくはマウスである。ヒトとの共通性が大きい白毛モデル動物を用いるので、当該モデル動物で確認される効果は、ヒトにおいても確認される蓋然性が高い。即ち、当該モデル動物で確認される効果は信頼性が高い。以下、モデルマウスに生える毛は体毛と称し、メジュラにメラニンを有する体毛を「黒毛」、メラニンを有しない体毛を「白毛」と称する。 マウスが生後4ケ月齢の時点で体毛のサイクルの休止期を迎えるのに合わせ、マウスの背中部の特定部位の体毛をバリカンまたはシェーバーにより長方形の形状(サイズ:1.5cmx3cm)に毛刈りし(当該刈った体毛を検体毛と称する)、毛刈によって得た全検体毛本数を計数した。その後1日1回毎日、200μlの0.5質量%ステルビン(溶媒は70%EtOH)溶液を当該毛刈部位に塗布し、塗布は4ヶ月間行った(最初の塗布日が試験開始日である。)。コントロールは、70%EtOH溶液を用いた。試験開始日から1ヶ月ごとに投与部位の毛刈りを実施し、検体毛の白毛率を測定した。試験期間中の毛刈部位の全検体毛本数はほぼ一定の数で推移した。各試験は6匹行った。 白毛率の測定は、検体毛を、光学顕微鏡(オリンパス社製BX61、10倍〜20倍)にて1本ずつ白毛か黒毛かを分別し、白毛率=白毛本数/全検体毛本数として算出した。本試験の白毛か黒毛かの分別においては、マウス体毛である検体毛のメジュラ中にメラニンが見られるか否かを基準として判断した。この基準に基づく黒毛の例を図7の「黒毛」と表記した上側の顕微鏡写真(メジュラ中にメラニンが詰まっている)に、白毛の例を図7の「白毛」と表記した下側の顕微鏡写真(メジュラ中にメラニンが一切見られない)にそれぞれ示す。図7の例では両極端の例を示しているが、中間の場合、即ち少しでもメラニンが確認できれば、黒毛であるとして判断した。 図8に、投与1ヶ月間でのマウスの白毛発生抑制効果を示す。図8左は塗布開始前のマウスの写真である。両マウスは同腹子かつ同姓であり、白毛発生は同程度である。図8右は投与開始後1ヶ月のマウスの写真である。コントロールマウス(70%EtOH)に対し、ステルビンを塗布したマウスは有意に白毛の発生が抑制されている。 図9に白毛率の経時変化(N=6)を平均値にて示す。ステルビンを投与したマウスの白毛率は、塗布前16.7%、投与期間1ヶ月で14.2%、2ヶ月で15.5%、3ヶ月で18.0%、4ヶ月で18.8%であった。コントロールのマウス(70%EtOH)では白毛率は塗布前15.6%、投与期間1ヶ月で18.9%、2ヶ月で21.7%、3ヶ月で24.5%、4ヶ月で24.6%であった。塗布前の白毛率については、Paired t testにて有意な差はなかったが、投与期間1ヶ月から白毛率の有意な差が認められた。 次に、数十種類の植物抽出エキスの分析を行った結果、ホソバヤーバサンタ葉とカワラヨモギ花に比較的多くのステルビンを確認した。 ステルビンに換えてホソバヤーバサンタ葉抽出物、カワラヨモギ葉抽出物の溶液を用いて、上記と同様の手順で各抽出物をマウスに塗布した。 実施例1で得たホソバヤーバサンタ葉抽出物を試験に用いた。当該抽出物の1%(W/V)水溶液をホソバヤーバサンタ葉抽出物の溶液(ステルビンの濃度に換算すると0.0174%(W/V)。)として実施例2では使用した。カワラヨモギ葉抽出物は、一丸ファルコス社製「ファルコレックス カワラヨモギB」の10%(v/v)水溶液(ステルビン0.01ppm含有)を実施例2では使用した。いずれもステルビン試験と同様の方法でマウスに塗布した。 4ヶ月間塗布した結果を図10に示す。図10左の写真はホソバヤーバサンタ葉抽出物の試験結果であり、図10右の写真はカワラヨモギ葉抽出物の試験結果である。両抽出物の投与により、有意に白毛の発生が抑制されている。 図11に白毛率の経時変化を平均値にて示す。図11左はホソバヤーバサンタ抽出物の試験結果(N=6)を示し、図11右はカワラヨモギ抽出物の試験結果(N=5)を示す。ホソバヤーバサンタ葉抽出物を投与したマウスの白毛率は塗布前20.4%、投与期間1ヶ月で20.0%、2ヶ月で19.1%、3ヶ月で20.2%、4ヶ月で23.7%であった。コントロールのマウス(70%EtOH)では白毛率は塗布前21.2%、投与期間1ヶ月で23.8%、2ヶ月で23.5%、3ヶ月で25.7%、4ヶ月で29.0%であった。塗布前においてはPaired t testにて白毛率に有意な差はなかったが、塗布後1ヶ月から白毛率の有意な差が認められた。一方、カワラヨモギ葉抽出物を投与したマウスの白毛率は塗布前19.7%、投与期間1ヶ月で20.4%、2ヶ月で24.0%、3ヶ月で23.2%、4ヶ月で26.3%であった。コントロールのマウス(70%EtOH)では白毛率は塗布前17.4%、投与期間1ヶ月で22.4%、2ヶ月で26.2%、3ヶ月で28.5%、4ヶ月で32.4%であった。塗布前〜塗布3ヶ月においてはPaired t testにて白毛率に有意な差はなかったが、塗布4ヵ月後に白毛率の有意な差が認められた。 よって、ステルビン及び上記両抽出物に、白毛発生の抑制効果が確認された。 〔実施例3:マウスにおける白毛の経時変化2〕 実施例3では、C57BL/6マウスを使用した。マウスが生後3週齢の時点で体毛のサイクルの休止期を迎えるのに合わせ、毛刈を行った(サイズ:1.5cmx3cm:当該部位を毛刈部位とする。)。毛刈した翌日に300μlの1質量%ステルビン(溶媒は生理食塩水)溶液を当該毛刈部位の皮下に注射した。コントロールは生理食塩水とした。その6時間後、追って250μlの150μMt−BOOH生理食塩水溶液を当該毛刈部位の皮下に注射した。注射後1ヶ月ごとに当該毛刈部位の毛刈を実施し、注射後1ヵ月と3ヶ月の体毛が生えそろった時点で写真撮影を行った。 図12に注射後1ヶ月の写真を示す(注射後3ヶ月の写真は省略する。)。コントロール(左のマウス)では活性酸素種により白毛が発生し、その白毛率は33.6%であったが、予めステルビンを投与したマウス(右のマウス)の白毛率は1.2%であった。注射後3ヶ月でも同様の白毛率であった。活性酸素種であるt−BOOHにより引き起こされる白毛の発生がステルビンにより予防されたと考えられる。 〔実施例4:γH2AX試験〕 試験物質として、ステルビン、ルテオリン、ホソバヤーバサンタ葉抽出物、Eriodictyon californicum(Hook.et Arn.)Torr.葉抽出物を用い、γH2AXとの関係を検討した。細胞はNHEMを用いた。ホソバヤーバサンタ葉抽出物は実施例1で得た物を用いた。Eriodictyon californicum(Hook.et Arn.)Torr.葉抽出物は、ホソバヤーバサンタ葉に換えてEriodictyon californicum(Hook.et Arn.)Torr.葉を用いた点を除き、実施例1に記載のホソバヤーバサンタ葉抽出物と同様の手順で調製した。DMSOは上記試験物質を培地に溶解させるため濃度0.1%(v/v)で用いた。 NHEMを各試験物質30μM含有の10%FBS含有DMEM培地にて2時間暴露させた。その後、細胞をwashした。その後、細胞を100μMt−BOOH添加したNo SerumのDMEM培地に4時間暴露した(コントロールはDMSO+t−BOOHであり、図13では「DMSO」と表示した。)。その後、OxiSelect DNA Double Strand Break Staining Kit(CELL BIOLAB, INC.)で付属の説明書に従って試験を行い、γH2AXを検出した。各試験はN=2にて行った。 結果を図13に示す。t−BOOH暴露前にステルビン、ルテオリン、ホソバヤーバサンタ葉抽出物を暴露しておくことで、γH2AXは陰性であった。これに対し、ステルビンを含有しないEriodictyon californicum(Hook.et Arn.)Torr.葉抽出物はコントロールと同様にγH2AXは陽性であった。図13中、phaseは蛍光OFFにして写真を取ることでどの写真も細胞数が同等であることを示す。「Inomata et al., (2009) Cell 137,1088−1099 June 12, 2009」にて白髪化とγH2AXの相関が示されている。ステルビンおよびステルビン含有ヤーバサンタ葉抽出物の事前暴露でγH2AX陰性ということは、白毛発生の抑制効果があると考えられる。 文献によっては、「Eriodictyon californicum(Hook.et Arn.)Torr.がステルビンを含有する」との記載が見られる場合もあるが、本実施例においてはEriodictyon californicum(Hook.et Arn.)Torr.抽出物からステルビンは検出されなかった。 〔実施例5:ヒト白毛試験〕 ひげに白鬚が混じり始めた30代男性のあご全体(約30cm2)に、0.125質量%ステルビン(50%EtOH溶媒)溶液0.25mlを、1日2回、3ヶ月間毎日塗布した。その結果、15本あった白鬚のうち11本が黒鬚に変化した。逆に黒鬚から白鬚に変化した鬚は認められなかった。 上記白鬚から黒鬚に変化した鬚から、改善例1〜5を図14に示す。改善例1〜5は略円形にて特定してあり、他の体毛との位置関係は、菱形、三角等で特定した他の体毛を利用して判断できる。いずれの改善例においても、白鬚が黒鬚になっており、ステルビンはヒト白毛を黒毛に変化させる効果を有すると考えられる。 次に、同じ被験者の白毛が混じった側頭部を、1cm×1cmの範囲で毛刈を行い、上述の試験と同様にその範囲にのみステルビンを3ヶ月間塗布した。その結果、2本あった白毛は2本のままであったが、黒毛から白毛に変化した毛は認められなかった。ステルビンはヒト黒毛から白毛への変化を抑制する効果を有すると考えられる。後述の試験により、ステルビンの濃度により、メラニン産生が促進されることも証明されている。よって、ステルビン投与量を増やせば、白毛が黒毛に変化すると合理的に推測される。 次に、ホソバヤーバサンタ葉抽出物水溶液を用いて試験した。当該抽出物水溶液は実施例2と同様の方法で作製し、得られた約2gの抽出物中、ステルビンは348mg含有されているホソバヤーバサンタ葉抽出物を用いた。 白鬚が混じり始めた40代男性の特定のあご全体(約32cm2)に、当該ホソバヤーバサンタ葉抽出物0.25mlを、1日2回、1ヶ月間毎日塗布した。 結果を図15に示す。略円形にて特定した4本の鬚が白鬚から黒鬚に変化した。ホソバヤーバサンタ葉抽出物は、ヒト白毛を黒毛に変化させる効果を有すると考えられる。 〔実施例6:色素幹細胞維持試験〕 実施例2に記載のPCT/JP2006/302783号に開示された白髪モデルマウスを使用し、実施例2と同様の手順で1日1回毎日、200μlの0.5質量%ステルビン(溶媒は70%EtOH)溶液を毛刈部位に塗布し、塗布は2ヶ月間行った。コントロールは70%EtOHとした。塗布開始後2ヶ月の時点で毛刈りし、以下の(1)〜(9)に述べる手順により色素幹細胞数を測定した。試験はN=6にて行った。(1)検体毛を毛刈りした部分の皮膚の一部(約10mm×5mm角)を、切除後に縫合可能なように切り取る。(2)切り取った皮膚を未固定にて凍結包埋する。(3)凍結切片を12μmの厚さにて作製する。(4)スライドグラスに切片をのせ、10分間冷アセトンで固定する。(5)PBS(生理食塩水)にて洗浄し、4℃で抗dct抗体(サンタクルーズ社製を1:1000で使用)および抗c−kit抗体(サンタクルーズ社製を1:1000で使用)にて免疫染色する。(6)12時間後、PBSにて洗浄する。(7)Alexa 594 donkey αgoat IgG(サンタクルーズ社製を1:1000で使用)およびAlexa 488 donkey αRat IgG(サンタクルーズ社を1:1000で使用)にて室温で10分間二次抗体反応をさせる。(8)PBSにて洗浄し、核染色後封入する。(9)光学顕微鏡(オリンパス社製BX61 20〜40倍)にて毛包を観察し、下記(I)〜(III)の全ての条件を満たす細胞を色素幹細胞とし、各例で評価するマウス皮膚中の毛包70本中の色素幹細胞を計数した。(I)体毛バルジ領域に存在する細胞である。(II)dctが発現している。(III)c−kitの発現がない細胞、もしくは弱い細胞である。 結果を図16に示す。コントロールの平均は14.5個であるのに対し、ステルビン投与区の平均は25.3個であり、Paired t testにて有意差が認められた。 ステルビンは、バルジ領域の色素幹細胞の異常分化を抑え、色素幹細胞を質的・量的に維持すると考えられた。 次に、ステルビンに換えて、ホソバヤーバサンタ葉抽出物、カワラヨモギ葉抽出物を用いて、上述の色素幹細胞維持試験を行った。各抽出物の水溶液は実施例2と同様の手順で作製した物を用いた。 結果を図17に示す。図17左はホソバヤーバサンタ葉抽出物の試験結果である。コントロールの平均は20.4個であるのに対し、ホソバヤーバサンタ葉抽出物投与区の平均は29.0個であり、Paired t testにて有意差が認められた。図17右はカワラヨモギ葉抽出物の試験結果である。コントロールの平均は4個であるのに対し、カワラヨモギ葉抽出物投与区の平均は26個であり、Paired t testにて有意差が認められた。 ホソバヤーバサンタ葉抽出物及びカワラヨモギ葉抽出物も、色素幹細胞を質的・量的に維持する効果を有すると考えられた。 〔実施例7:メラニン産生促進試験〕 ステルビン1.0μM、5.0μM、10.0μMの各濃度でNHEMのメラニン産生促進効果を検討した。DMSOは上記試験物質を培地に溶解させるため濃度0.1%(v/v)で用いた。 ステルビン1μM、5μM、10μM含有のDMEM培地(FBS不含)を準備し、各ウェル5x104個のNHEMとし、上記各濃度のステルビンを7日間暴露した後、トリプシンにて細胞を回収した。回収した細胞を1NのNaOH及び超音波で処理してメラニンを溶出させ、破砕した細胞を除き、475nmの波長にて吸光度を測定し、NHEM1個あたりのメラニン量を測定した。各試験はN=3にて複数回行った。 結果を図18に示す。DMSOのみ(ステルビン無し)では平均186.9pg/cellであった。ステルビン1μM試験区は平均206.7pg/cellであった。ステルビン5μM試験区は平均217.5pg/cellであった。ステルビン10μM試験区は平均265.6pg/cellであった。5μM以上で有意差が認められ、また、ステルビン濃度が高くなるとメラニン産生量が増加した。ステルビンは濃度依存的なメラニン産生促進効果があると考えられた。 以上の通り、非治療的な美容方法を含め、白毛数を抑制するためには、色素幹細胞数の維持/増加、EDNRB、MITF−M、Bcl2、チロシナーゼの各遺伝子の活性化、メラニン産生の促進、γH2AXの抑制、又は活性酸素の生成を抑制することが好ましく、これらのうち複数の効果を備えることがより好ましいと考えられる。 〔実施例8:ヒト白毛試験(側頭部)〕 側頭部に白髪が混じり始めた30代男性の側頭部を、1cm×1cmの範囲で毛刈を行い観察部位とし、当該観察部位にて1年9ヶ月間、白髪本数の増減を観察した。観察部位の毛刈は週1回実施した。観察開始から1年9ヶ月後、それまで黒だった毛髪の色素が薄くなるのを観察し(当該色素が薄くなった毛髪を「特定の毛髪」とする。)、当該特定の毛髪は観察開始から1年10ヶ月後には完全な白髪となった事を確認した。前記特定の毛髪が生え変わらずに白髪となったことを確認後、ホソバヤーバサンタ葉抽出物水溶液(ホソバヤーバサンタ葉10.0gを50%(v/v)EtOH2,000ml室温で1週間抽出し、濾過後抽出溶媒をエバポレーターで除去したものをホソバヤーバサンタ葉抽出物とした。;当該ホソバヤーバサンタ葉抽出物水溶液のステルビン濃度は180ppm)0.1mlを、1日2回(朝と晩)、1週間前記観察部位に塗布した。その結果、当該1週間の塗布で白髪となった特定の毛髪の黒毛化が認められた。ただし、観察開始直後において既に白髪であった毛髪は色素幹細胞が死滅していると予想されたため、黒毛化は認められなかった。観察部位の観察結果から、上記特定の毛髪が生えている部分の毛包は、「色素幹細胞は存在しているが、メラノサイトの活性が落ちた」状態であったと考えられた。 上記白髪から黒髪に変化した特定の毛髪を、改善例として図19に示す。図19左は上記ホソバヤーバサンタ葉抽出物水溶液塗布開始前の観察部位の写真である。図19右はホソバヤーバサンタ葉抽出物水溶液1週間塗布後の観察部位の写真である。図19左の写真では、円形・点線円形・長方形にて、ホソバヤーバサンタ葉抽出物水溶液塗布開始前の白髪を特定してある。そのうち、図19右の写真で黒毛化(改善)がみとめられたのは点線円の毛髪である。ホソバヤーバサンタ葉抽出物は、ヒト頭髪の白毛だった毛髪を黒毛で新生させる効果を有すると考えられる。上記した各実施例の結果も考慮すると、ヒト頭髪において、白毛を黒毛に変化させる等の白毛数抑制効果を得るために、ステルビンは重要な成分であると合理的に推測された。 〔実施例9:ヒト白毛試験(全頭部)〕 頭髪全体に白髪が混じっている50代男性の頭部を、1cm×1cmの範囲で観察部位を特定し毛刈を行った。上記の実施例8にて使用したホソバヤーバサンタ葉抽出物水溶液を50%EtOHにて1/4に希釈したもの1.0mlを、1日2回(朝と晩)、全頭に塗布した。その結果、上記観察部位の一部の毛髪にて、1ヶ月間の塗布で黒毛化が認められた。ホソバヤーバサンタ葉抽出物は、ヒト頭髪の白毛だった毛髪を黒毛で新生させる効果を有すると考えられる。上記した各実施例の結果も考慮すると、ヒト頭髪において、白毛を黒毛に変化させる等の白毛数抑制効果を得るために、ステルビンは重要な成分であると合理的に推測された。 本発明により有用な白毛数抑制剤及び非治療的な美容方法が提供される。下記化1に示す(A)成分を含有することを特徴とする白毛数抑制剤。前記(A)成分を0.001質量%〜10質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の白毛数抑制剤。前記白毛数抑制剤が、更に(B)浸透促進成分として溶剤、界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白毛数抑制剤。前記白毛数抑制剤が、更に(C)定着成分として増粘剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の白毛数抑制剤。前記白毛数抑制剤が、ヤーバサンタ抽出物及びヨモギ抽出物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の白毛数抑制剤。請求項1〜請求項5のいずれかに記載の白毛数抑制剤を適用することを特徴とする非治療的な美容方法。 【課題】白毛数抑制剤及び非治療的な美容方法の提供。【解決手段】下記化1に示す(A)成分を含有する白毛数抑制剤。【化1】【選択図】 図12配列表


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