| タイトル: | 公開特許公報(A)_導電性ポリマー組成物 |
| 出願番号: | 2012247188 |
| 年次: | 2014 |
| IPC分類: | C08L 65/00,C08G 61/12,C08L 1/16,C07D 519/00,C08B 5/14,C08B 31/06 |
堀川 真希 永岡 昭二 城崎 智洋 伊原 博隆 高藤 誠 櫻井 英夫 山本 勝政 明見 秀彦 JP 2014095032 公開特許公報(A) 20140522 2012247188 20121109 導電性ポリマー組成物 熊本県 591202155 国立大学法人 熊本大学 504159235 住友精化株式会社 000195661 山田 威一郎 100156845 田中 順也 100124431 立花 顕治 100124039 松井 宏記 100112896 堀川 真希 永岡 昭二 城崎 智洋 伊原 博隆 高藤 誠 櫻井 英夫 山本 勝政 明見 秀彦 C08L 65/00 20060101AFI20140425BHJP C08G 61/12 20060101ALI20140425BHJP C08L 1/16 20060101ALI20140425BHJP C07D 519/00 20060101ALI20140425BHJP C08B 5/14 20060101ALI20140425BHJP C08B 31/06 20060101ALI20140425BHJP JPC08L65/00C08G61/12C08L1/16C07D519/00C08B5/14C08B31/06 7 OL 15 特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼刊行物名 「第49回化学関連支部合同九州大会 外国人研究者交流国際シンポジウム 講演予稿集」:発行者名 第49回化学関連支部合同九州大会実行委員会:発行年月日 2012年6月23日 ▲2▼集会名 第49回化学関連支部合同九州大会外国人研究者交流国際シンポジウム:主催者 化学工学会九州支部、日本化学会九州支部、有機合成化学協会九州山口支部、電気化学会九州支部、日本分析化学会九州支部、高分子学会九州支部、繊維学会西部支部、日本農芸化学会西日本支部:開催日 平成24年6月30日 4C072 4C090 4J002 4J032 4C072MM08 4C072UU03 4C090BA15 4C090BA27 4C090BB95 4C090BD36 4C090CA38 4C090DA32 4J002AB02X 4J002AB04X 4J002AB05X 4J002CE00W 4J002GQ00 4J002GQ02 4J032BA03 4J032BA04 4J032BB01 4J032BC03 4J032BC13 4J032CG01 本発明は、簡易な手法で製膜可能で、しかも優れた導電性を有する導電性材料、及びその製造方法に関する。 近年、太陽電池や有機EL等の「光電変換デバイス」の発展とともに、導電性と透明性を併せ持つ透明電極のニーズが高まっている。現在、一般的には酸化インジウムスズ(ITO)の電極が多く使用されているが、ITO電極は、真空スパッタリングによってつくられるため、コストが高く、大面積には不適であり、さらに柔軟性も欠けており、フレキシブルな電極をつくることが難しかった。 また、主原料のインジウムは資源枯渇や価格高騰等の問題をもつレアメタルであるため、代替材料として、導電性高分子の開発が精力的に行われている。持続可能な社会の実現のためには、環境負荷の低減も考慮しなければならず、高機能化特性とともに、環境親和性等の機能を有する導電材料が望まれている。導電性高分子は、常圧塗布法が可能であり、コストを抑えて、大面積でフレキシブルな電極をつくることができる。 従来、導電性高分子の中でも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)に、電気を流すためのドーパントとしてポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えたPEDOT/PSSが注目されている。3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)は、水への溶解度が20℃で2.1 g/Lと低いため、ポリスチレンスルホン酸を溶解させた水溶媒中で、酸化剤を用いて重合することにより、水分散性のPEDOT/PSS錯体の状態で得られる。PEDOT/PSSは、比較的安定で耐久性が良好である反面、既存のITO電極と比較して導電性が低いため、簡単な操作で、より高い導電性をもつ導電性材料の開発が望まれていた。 これまでに、PEDOT/PSSの導電性を向上させる改良技術についても幾つか報告されている。例えば、特許文献1では、PEDOT/PSSの水分散溶液にスルホキシド溶剤あるいは多価アルコール、ポリオール等を添加することによって、膜を作成した場合に導電性が向上することが開示されている。しかしながら、特許文献1の技術でも、PEDOT/PSSに十分な導電性を付与できていない。 また、特許文献2では、PEDOT/PSSに糖アルコールを添加して、導電性能を向上させている例が開示されている。しかしなから、特許文献2の技術では、PSS存在下、酸化剤を用いてEDOTを重合させることによってPEDOT/PSS複合体を調製して、更にPEDOT/PSSの固形分に対して糖アルコール(アラビトール)を60%も添加して乾燥後に加熱する工程が必要であり、製膜する工程が煩雑で工業的製造には不適であった。 このように従来の導電性材料では、導電性が低い、バインダー等の成分を多量に混合する必要がある等の欠点があり、商業的に実用化する上で障壁があった。特表2006−520994号公報特開2012−46605号公報 本発明の目的は、簡易な手法で製膜可能で、しかも優れた導電性を有する導電性材料を提供するものである。 本発明者らは、かかる事情を鑑み鋭意研究を重ねた結果、式(1)で表される繰り返し単位を有するポリチオフェン(以下、単に「ポリチオフェン」と表記することもある)とアニオン性多糖類を複合化することにより得られた複合体は、製膜性及び導電性に優れており、導電性材料として好適に使用できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。 即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。項1. 式(1)で表される繰り返し単位を有するポリチオフェンと、[式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表すか、R1とR2は連結して、炭素数1〜8のジオキシアルキレン基、芳香環又は3〜7員環の脂環式環を表す。]アニオン性多糖類との複合体からなる導電性材料。項2. 前記アニオン性多糖類が、硫酸化多糖である、項1に記載の導電性材料。項3. 前記アニオン性多糖類が、式(2)で表される繰り返し単位を有する硫酸化セルロース、[式(2)中、R3〜R8は、それぞれ独立に水素原子、スルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表し、且つ少なくとも1つはスルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表す。]式(3)で表される繰り返し単位を有する硫酸化デンプン、[式(3)中、R9〜R14は、それぞれ独立に水素原子、スルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表し、且つ少なくとも1つはスルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表す。]及び式(4)で表される繰り返し単位を有する硫酸化デンプン[式(4)中、R15〜R22は、それぞれ独立に水素原子、スルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表し、且つ少なくとも1つはスルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表す。]からなる群より選ばれた少なくとも1種の硫酸化多糖である、項1又は2に記載の導電性材料。項4. 前記アニオン性多糖類におけるアニオン性基の導入数が、構成単糖1残基当たり0.3〜3である、項1〜3のいずれかに記載の導電性材料。項5. アニオン性多糖類、溶媒及び酸化剤の存在下、式(5)で表されるチオフェン[式(5)中、R1及びR2は、前記と同じ。]を酸化重合することを特徴とする、ポリチオフェンと硫酸化多糖との複合体の製造方法。項6. 項1〜4のいずれかに記載の導電性材料を含む導電膜。項7. 項1〜4のいずれかに記載の導電性材料を基板上に製膜してなる、導電性部材。 本発明の導電性材料は、優れた導電性を備えており、太陽電池や有機EL等の光電変換デバイスにおける電極材料や配線材料として有用である。また、本発明の導電性材料は、優れた製膜性を備えており、バインダー等の成分を多量に混合せずとも簡易な手法で製膜できるので、電極や配線等に使用される導電性部材を容易な方法で作製することが可能になる。 また、本発明の製造方法によれば、ポリチオフェンとアニオン性多糖類の複合体が分散体の状態で得られるので、当該分散体を塗膜して製膜するという簡単な方法で、高導電性の導電性部材を作製することが可能になる。実施例1〜2で使用した硫酸化セルロースI及びIIをFT−IR測定した結果を示す図である。実施例3で使用した硫酸化デンプンをFT−IR測定した結果を示す図である。 本発明の導電性材料は、式(1)で表される繰り返し単位を有するポリチオフェンとアニオン性多糖類との複合体(以下、「ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体」と表記することもある)からなることを特徴とする。以下、本発明の導電性材料について詳述する。ポリチオフェン 本発明で用いられるポリチオフェンは、下式(1)で表される繰り返し単位を有している。 式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基を表すか、R1とR2は連結して、炭素数1〜8のジオキシアルキレン基、芳香環又は3〜7員環の脂環式環を表す。 前記炭素数1〜8のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。前記炭素数1〜8のアルキル基として、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。 また、前記炭素数1〜8のアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。前記炭素数1〜8のアルコキシ基として、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。 また、R1とR2が連結して炭素数1〜8のジオキシアルキレン基を形成している場合、当該ジオキシアルキレン基の炭素数として、好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは2〜4が挙げられる。 また、R1とR2が連結して3〜7員環の脂環式環を形成している場合、当該脂環式環として、好ましくは4〜7員環、更に好ましくは5〜6員環が挙げられる。 ポリチオフェンを形成する式(1)で表される繰り返し単位の数については、特に制限されないが、例えば、2〜50程度が挙げられる。 式(1)で表される繰り返し単位を構成する単量体化合物としては、好ましくは、チオフェン骨格の3位及び4位に、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基及び/又は炭素数1〜8のアルコキシ基が置換した化合物;チオフェン骨格の3位と4位に炭素数1〜8のジオキシアルキレン基が形成された3,4−ジ置換チオフェンが挙げられる。より具体的には、3,4−ジアルキルチオフェン、3,4−ジアルコキシチオフェン、3,4−アルキレンジオキシチオフェン等が挙げられる。これらの中でも、3,4−アルキレンジオキシチオフェンが好ましい。 式(1)で表される繰り返し単位を構成する単量体化合物の好適な具体例としては、例えば、3,4−ジヘキシルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェン、3,4−ジプロピルチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−メチレンジオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン等が挙げられる。これらの中でも、3,4−エチレンジオキシチオフェンが好ましい。アニオン性多糖類 本発明で用いられるアニオン性多糖類とは、アニオン性基が導入された多糖類である。当該アニオン性基としては、例えば、スルホン酸基、炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基等が挙げられる。これらのアニオン性基の中でも、好ましくはスルホン酸基、炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基が挙げられる。 アニオン性多糖類において、前記アニオン性基が導入される多糖類としては、例えば、デンプン類、アルギン酸類、セルロース類、ガム類等が挙げられる。 本発明で用いられるアニオン性多糖類は、天然において既にアニオン性基を有している多糖類であってもよく、また人為的にアニオン性基を付加させた多糖類であってもよい。 アニオン性多糖類における構成単糖の数については、特に制限されないが、前記ポリチオフェンとの複合体を安定に形成させて、より一層導電性及び製膜性を高めるという観点から、例えば、10〜15000、好ましくは20〜2000が挙げられる。 アニオン性多糖類におけるアニオン性基の数としては、特に制限されないが、より一層優れた導電性を備えさせるという観点から、構成単糖1残基当たり0.3〜3、好ましくは0.4〜2.8、更に好ましくは1〜2.5が挙げられる。 アニオン性多糖類として、導電性及び製膜性をより一層向上させるという観点から、好ましくは硫酸化多糖類(即ち、スルホン酸基及び/又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を有する多糖類)が挙げられる。硫酸化多糖類としては、具体的には、キチン、キトサン、デンプン、セルロース、グアガム、アラビアガム、グルコマンナン、寒天アガロース、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸等の硫酸化物;フコイダン、コンドロイチン硫酸、ポルフィラン等の天然硫酸化多糖類等が挙げられる。これらの硫酸化多糖類の中でも、好ましくは、硫酸化セルロース、硫酸化デンプンが挙げられ、より具体的には、下式(2)で表される繰り返し単位を有する硫酸化セルロース、下式(3)又は(4)で表される繰り返し単位を有する硫酸化デンプンが例示される。なお、デンプンは、アミロースとアミロペクチンの混合物であるため、デンプンを硫酸化したものは、下式(3)で表される繰り返し単位を有する硫酸化アミロースと下式(4)で表される繰り返し単位を有する硫酸化アミロペクチンの混合物となる。 式(2)中、R3〜R8は、それぞれ独立に水素原子、スルホン酸基、又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表し、且つ少なくとも1つはスルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表す。当該アルキルスルホン酸基の炭素数としては、好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3が挙げられる。 式(3)中、R9〜R14は、それぞれ独立に水素原子、スルホン酸基、又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表し、且つ少なくとも1つはスルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表す。当該アルキルスルホン酸基の炭素数としては、好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3が挙げられる。 式(4)中、R15〜R22は、それぞれ独立に水素原子、スルホン酸基、又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表し、且つ少なくとも1つはスルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表す。当該アルキルスルホン酸基の炭素数としては、好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3が挙げられる。 なお、式(4)で表される繰り返し単位を有する硫酸化デンプンでは、式(4)で表される繰り返し単位は分岐構造部分を形成し、式(4)で表される繰り返し単位の間には、式(3)で表される繰り返し単位が1個以上挿入されている構造を採り得る。 これらのアニオン性多糖類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 アニオン性多糖類は、市販品を使用してもよく、また公知の製造方法に従って得ることもできる。例えば、多糖類にスルホン酸基を導入するには、例えばスルファミン酸、ハロゲノスルホン酸等を多糖類と反応させればよく、また多糖類に炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を導入するには、例えば炭素数1〜6のハロゲン化アルキルスルホン酸等を多糖類と反応させればよい。ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体は、アニオン性多糖類、溶媒及び酸化剤の存在下で、下式(5)で表されるチオフェンを酸化重合することにより製造される。 式(5)中、R1及びR2は、前記と同じである。 具体的には、予めアニオン性多糖類を溶媒に溶解させた溶液に、式(5)で表されるチオフェンと酸化剤を加えてチオフェンを重合させることにより、ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体が分散溶液の状態で取得される。斯して得られるポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体において、ポリチオフェンとアニオン性多糖類複合体の結合様式については、限定的な解釈を望むものではないが、重合反応により生成したポリチオフェンとアニオン性多糖類のアニオンがドープした状態で複合化されていると考えられる。 式(5)で表されるチオフェンとしては、好ましくは、チオフェン骨格の3位及び4位に、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基及び/又は炭素数1〜8のアルコキシ基が置換したチオフェン;チオフェン骨格の3位と4位に炭素数1〜8のジオキシアルキレン基が形成された3,4−ジ置換チオフェンが挙げられる。より具体的には、3,4−ジアルキルチオフェン、3,4−ジアルコキシチオフェン、3,4−アルキレンジオキシチオフェン等が挙げられる。これらの中でも、3,4−アルキレンジオキシチオフェンが好ましい。 式(5)で表されるチオフェンの好適な具体例としては、例えば、3,4−ジヘキシルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェン、3,4−ジプロピルチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−メチレンジオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン等が挙げられる。これらの中でも、3,4−エチレンジオキシチオフェンが好ましい。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体において、ポリチオフェンとアニオン性多糖類の比率は、特に制限されないが、ポリチオフェンの比率が高い程、導電性は高くなるが、分散性が低下する傾向を示すため、これらを勘案した上でポリチオフェンやアニオン性多糖類の種類等に応じて適宜設定される。具体的には、ポリチオフェンとアニオン性多糖類の質量比として、1:0.5〜1:8、好ましくは1:1〜1:4が挙げられる。このような質量比を充足することにより、より優れた導電性を備えさせつつ、溶媒中での分散性を良好にできる。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体の製造において、原料化合物として使用される式(5)で表されるチオフェンとアニオン性多糖類の使用量については、前述するポリチオフェンとアニオン性多糖類の比率を充足できる範囲に適宜設定すればよい。具体的には、アニオン性多糖類100質量部当たり、式(5)で表されるチオフェンが12.5〜400質量部、好ましくは25〜200質量部が挙げられる。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体の製造に使用される酸化剤としては、式(5)で表されるチオフェンを酸化重合可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、無機酸化第二鉄塩、有機酸化第二鉄塩、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、過ホウ酸アルカリ塩、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)が挙げられる。これらの酸化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体の製造において、酸化剤の使用量については、特に制限されないが、例えば、式(5)で表されるチオフェン1モル当たり、0.1〜5当量、好ましくは0.3〜2当量が挙げられる。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体の製造に使用される溶媒については、アニオン性多糖類複合体を溶解でき、チオフェンの重合反応を行い得るものであればよく、具体的には、水系溶媒が挙げられ、好ましくは水が挙げられる。また、当該溶媒には、メタノール、エタノール等の低級アルコールや、アセトン、アセトニトリル等の極性有機溶媒を水と混合した水系溶媒を用いてもよい。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体の製造において、前記溶媒の使用量については、特に制限されないが、例えば、式(5)で表されるチオフェン1モル当たり、1000〜50000ml、好ましくは3000〜30000mlが挙げられる。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体の製造における反応時間及び反応温度については、原料化合物として使用するチオフェンやアニオン性多糖類の種類、酸化剤の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、10〜90℃、好ましくは20〜80℃で、1〜96時間、好ましくは5〜48時間が挙げられる。 上記のようにしてアニオン性多糖類の存在下で式(5)で表されるチオフェンを重合させることにより、ポリチオフェン/硫酸化多糖複合体の分散溶液が得られる。斯して得られる、ポリチオフェン/硫酸化多糖複合体は、反応後に得られる分散液の状態で、又は必要に応じてポリチオフェン/硫酸化多糖複合体を分離、精製した後に、導電膜の製造に供することができる。ポリチオフェン/硫酸化多糖複合体を用いた導電膜 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体は、優れた導電性及び製膜性を備えているので、基板上に製膜することにより、導電膜として使用することができる。 具体的には、ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体を用いた導電膜は、ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体を含む分散液を基板上の全面に又は所定形状になるように塗布した後に、乾燥して溶媒を除去することによって製造される。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体を含む分散液を基板に塗布する方法については、特に制限されないが、例えば、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法;印刷やインクジェット等のパターニングによる方法等のウェットプロセスが挙げられる。これらの中でも、好ましくはスピンコート法及びキャスト法が挙げられる。 乾燥方法については、特に制限されないが、例えば、加熱乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、熱風乾燥、超臨界乾燥等が挙げられる。乾燥温度は、乾燥方法に応じて適宜設定されるが、例えば、?50℃〜250℃、好ましくは60℃〜150℃が挙げられる。乾燥温度を250℃以下に設定することにより、乾燥時にポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体の導電性が低下するのを効果的に抑制することができる。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体の製膜に使用される基板としては、例えば、ガラス板、プラスチックシート、プラスチックフィルム等が挙げられる。プラスチックとしては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エポキシ樹脂、塩素系樹脂、シリコン系樹脂、及びこれらをブレンドしたもの等が挙げられる。 ポリチオフェン/アニオン性多糖類複合体を製膜させて得られる導電膜、及び当該導電膜を設けた基材は、帯電防止フィルム、有機ELや太陽電池に代表される電子デバイスの配線や電極材料等の導電性部材として使用される。 以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に よって何ら限定されるものではない。1.ポリチオフェン/硫酸化多糖類複合体の製造(実施例1) セルロース(商品名「Cellulose, fibers」、シグマ社製)2.00gをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlに加え、14時間以上かき混ぜた。次いで、クロロスルホン酸1.85mlをDMF30mlに溶解した溶液を30分かけゆっくりと加えた。50℃で5時間かき混ぜた。反応液を飽和酢酸ナトリウムエタノール溶液に加え、沈殿物を回収し、エタノールで洗浄した。沈殿物を水に溶解し透析を行った後、凍結乾燥し、硫酸化セルロース1.4g(硫酸化セルロースI)を得た。FT−IR測定の結果を図1に示す。元素分析の結果、グルコース単位当たりのスルホン基導入率(DS値)は1.28であった。 硫酸化セルロースI0.20gを水20mlに溶解し、EDOT0.10g、ペルオキソ二硫酸カリウム0.13g、硫酸鉄(III)0.50mgを加え、室温で24時間かき混ぜて反応を行った。次いで、透析及び濃縮を順次行い、固形分が1.30質量%のPEDOT/硫酸化セルロースI複合体の分散液を得た。(実施例2) ACROS製の硫酸セルロース(硫酸化セルロースII)の元素分析を行ったところ、DS値は2.75であった。FT−IR測定の結果を図1に示す。 硫酸化セルロースII0.20gを水20mlに溶解し、EDOT0.10g、ペルオキソ二硫酸カリウム0.13g、硫酸鉄(III)0.50mgを加え、室温で24時間かき混ぜて反応を行った。次いで透析及び濃縮を順次行い、固形分が1.30質量%のPEDOT/硫酸化セルロースII複合体の分散液を得た。(実施例3) デンプン(商品名「でんぷん(溶性)」、和光純薬社製)2.00gをDMF100mlに加え、14時間以上かき混ぜた。クロロスルホン酸3.70mlをDMF30mlに溶解した溶液を30分かけゆっくりと加えた。その後、50℃で5時間かき混ぜて反応を行った。反応液を飽和酢酸ナトリウムエタノール溶液に加え、沈殿物を回収し、エタノールで洗浄した。沈殿物を水に溶解し透析を行った後、凍結乾燥し、硫酸化デンプン1.6gを得た。元素分析の結果、DS値は1.89であった。FT−IR測定の結果を図2に示す。 硫酸化デンプン 0.20gを水20mlに溶解し、EDOT0.10g、ペルオキソ二硫酸カリウム0.13g、硫酸鉄(III)0.50mgを加え、室温で24時間かき混ぜて反応を行った。次いで、透析及び濃縮を順次行い、固形分が1.30重量%のPEDOT/硫酸化デンプン複合体の分散液を得た。2.ポリチオフェン/硫酸化多糖類複合体を用いた導電膜の作成 実施例1〜3で得られたPEDOT/硫酸化多糖類の分散液300μlをガラス上にキャストし、80℃で1時間加熱して乾燥させることによりPEDOT/硫酸化多糖複合体の導電膜を作製した。また、比較のため、市販のPEDOT/PSS複合体の水分散液(Aldrich製)(比較例1)を用いて、同様の方法で導電膜の作製を行った。3.導電膜の性能評価 作製した導電膜についてシート抵抗を測定した。具体的には、シート抵抗は、抵抗率計(ロレスタGP、三菱化学製)に4探針プローブ(PSP、三菱化学製)を接続して、膜を4探針プローブに押し当てることによって測定した。シート抵抗の測定結果を表1に示す。 以上の結果から、実施例1〜3のPEDOT/硫酸化多糖複合体を用いた導電膜では、従来のPEDOT/PSS複合体を使用した導電膜に比して、格段に高い導電性を有することが明らかとなった。また、実施例1〜3のPEDOT/硫酸化多糖複合体は、容易に導電膜に成形でき、製膜性も非常に良好であった。 式(1)で表される繰り返し単位を有するポリチオフェンと、[式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表すか、R1とR2は連結して、炭素数1〜8のジオキシアルキレン基、芳香環又は3〜7員環の脂環式環を表す。]アニオン性多糖類との複合体からなる導電性材料。 前記アニオン性多糖類が、硫酸化多糖である、請求項1に記載の導電性材料。 前記アニオン性多糖類が、式(2)で表される繰り返し単位を有する硫酸化セルロース、[式(2)中、R3〜R8は、それぞれ独立に水素原子、スルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表し、且つ少なくとも1つはスルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表す。]式(3)で表される繰り返し単位を有する硫酸化デンプン、[式(3)中、R9〜R14は、それぞれ独立に水素原子、スルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表し、且つ少なくとも1つはスルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表す。]及び式(4)で表される繰り返し単位を有する硫酸化デンプン[式(4)中、R15〜R22は、それぞれ独立に水素原子、スルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表し、且つ少なくとも1つはスルホン酸基又は炭素数1〜6のアルキルスルホン酸基を表す。]からなる群より選ばれた少なくとも1種の硫酸化多糖である、請求項1又は2に記載の導電性材料。 前記アニオン性多糖類におけるアニオン性基の導入数が、構成単糖1残基当たり0.3〜3である、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性材料。 アニオン性多糖類、溶媒及び酸化剤の存在下、式(5)で表されるチオフェン[式(5)中、R1及びR2は、前記と同じ。]を酸化重合することを特徴とする、ポリチオフェンと硫酸化多糖との複合体の製造方法。 請求項1〜4のいずれかに記載の導電性材料を含む導電膜。 請求項1〜4のいずれかに記載の導電性材料を基板上に製膜してなる、導電性部材。 【課題】本発明は、簡易な手法で製膜可能で、しかも優れた導電性を有する導電性材料を提供することを主な課題とする。【解決手段】式(1)で表される繰り返し単位を有するポリチオフェンとアニオン性多糖類を複合化することにより得られた複合体は、製膜性及び導電性に優れており、導電性材料として好適に使用できる。【選択図】なし