タイトル: | 公開特許公報(A)_ケーブルの屈曲断線寿命予測方法および装置 |
出願番号: | 2012244434 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 3/34,G01N 3/32 |
三浦 剛 江島 弘高 岡 史人 JP 2014092512 公開特許公報(A) 20140519 2012244434 20121106 ケーブルの屈曲断線寿命予測方法および装置 日立金属株式会社 000005083 絹谷 信雄 100068021 三浦 剛 江島 弘高 岡 史人 G01N 3/34 20060101AFI20140422BHJP G01N 3/32 20060101ALI20140422BHJP JPG01N3/34 CG01N3/32 E 4 1 OL 11 2G061 2G061AA07 2G061AB05 2G061BA15 2G061CA14 2G061DA12 2G061EC02 本発明は、複数の導体素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命予測方法および装置に関するものである。 複数の導体素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命予測方法として、ケーブルの屈曲条件と導体構造から導体素線に作用する歪振幅(あるいは応力振幅)を求め、導体素線単線の屈曲疲労寿命データベース(所謂SN線図)を参照して、求めた歪振幅(あるいは応力振幅)に対応する導体素線が破断するサイクル数(寿命)を求めることで、当該サイクル数をケーブルの屈曲断線寿命として予測する方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特開2002−260459号公報特開2004−191361号公報 しかしながら、繰り返し屈曲を受けるケーブルでは、屈曲疲労だけでなく導体素線同士の摩耗によって早期断線に至るケースがある。上述の従来のケーブルの屈曲断線寿命予測方法では、導体素線同士の摩耗を考慮していないため、実際よりも長い危険側の屈曲断線寿命を予測してしまう場合があり、導体素線同士の摩耗を考慮したケーブル屈曲断線寿命の予測が望まれる。 本発明は上記事情に鑑み為されたものであり、複数の導体素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命を精度よく予測することが可能なケーブルの屈曲断線寿命予測方法および装置を提供することを目的とする。 本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数の導体素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命を予測する方法であって、前記ケーブルの屈曲条件と導体構造から、摩耗していない初期の前記導体素線に生じる初期の応力振幅と平均応力を求め、前記ケーブルを屈曲した際の前記導体素線同士の摩耗を考慮して屈曲回数ごとに前記導体素線の断面積を求め、当該求めた断面積と前記導体素線の初期の断面積の比、および初期の応力振幅と平均応力から、屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力を求め、当該屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力と、前記導体素線の材料特性とを基に、屈曲回数ごとの疲労損傷度を求め、当該屈曲回数ごとの疲労損傷度を累積することで、前記導体素線が破断する屈曲回数を求め、当該求めた屈曲回数を前記ケーブルの屈曲断線寿命として予測するケーブルの屈曲断線寿命予測方法である。 予め求めておいた前記ケーブルの曲げ半径に対する導体素線間の接触荷重の関係、および曲げ半径に対する導体素線間の摺動距離の関係と、前記ケーブルの屈曲条件である曲げ半径とから、前記導体素線間の接触荷重および摺動距離を求め、当該求めた導体素線間の接触荷重および摺動距離と、予め求めておいた接触荷重ごとの総摺動距離に対する摩耗痕の深さの関係とから、屈曲回数に対する摩耗痕の深さの関係を求め、当該屈曲回数に対する摩耗痕の深さの関係から、屈曲回数ごとの摩耗痕の深さを求め、当該求めた摩耗痕の深さから前記導体素線の断面積を求めることで、屈曲回数ごとに前記導体素線の断面積を求めてもよい。 前記導体素線の半径をr、屈曲回数n回目の摩耗痕の深さをhnとしたとき、屈曲回数n回目の前記導体素線の断面積Snを、下式(1) Sn=r2(π−θn)+r(r−hn)sinθn ・・・(1) 但し、θn=cos-1{(r−hn)/r}により求めてもよい。 また、本発明は、複数の導体素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命を予測する装置であって、前記ケーブルの屈曲条件と導体構造から、摩耗していない初期の前記導体素線に生じる初期の応力振幅と平均応力を求める初期応力演算部と、前記ケーブルを屈曲した際の前記導体素線同士の摩耗を考慮して屈曲回数ごとに前記導体素線の断面積を求める導体素線断面積演算部と、当該導体素線断面積演算部で求めた断面積と前記導体素線の初期の断面積の比、および前記初期応力演算部で求めた初期の応力振幅と平均応力から、屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力を求める屈曲回数毎応力演算部と、当該屈曲回数毎応力演算部で求めた屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力と、前記導体素線の材料特性とを基に、屈曲回数ごとの疲労損傷度を求める疲労損傷度演算部と、当該疲労損傷度演算部で求めた屈曲回数ごとの疲労損傷度を累積することで、前記導体素線が破断する屈曲回数を求め、当該求めた屈曲回数を前記ケーブルの屈曲断線寿命として予測する屈曲断線寿命予測部と、を備えたケーブルの屈曲断線寿命予測装置である。 本発明によれば、複数の導体素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命を精度よく予測することが可能なケーブルの屈曲断線寿命予測方法および装置を提供できる。本発明の一実施の形態に係るケーブルの屈曲断線寿命予測方法のフロー図である。図1のケーブルの屈曲断線寿命予測方法において、初期の応力振幅と平均応力を求めるステップを説明する図である。(a)は曲げ半径に対する導体素線間の接触荷重の関係、(b)は曲げ半径に対する導体素線間の摺動距離の関係の一例を示すグラフ図である。(a)は接触荷重ごとの総摺動距離に対する摩耗痕の深さの関係、(b)は屈曲回数に対する摩耗痕の深さの関係の一例を示すグラフ図である。本発明で用いる導体素線摩耗試験装置の斜視図である。図5の導体素線摩耗試験装置で試験を行った後の試験線の断面図である。(a)は屈曲回数に対する応力振幅の関係、(b)は屈曲回数に対する平均応力の関係の一例を示すグラフ図である。導体素線のSN線図の一例を示すグラフ図である。屈曲回数に対する疲労損傷度の関係の一例を示すグラフ図である。本発明の一実施の形態に係るケーブルの屈曲断線寿命予測装置の概略構成図である。 以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。 図1は、本実施の形態に係るケーブルの屈曲断線寿命予測方法のフロー図である。なお、本実施の形態で屈曲断線寿命の予測対象となるケーブルは、複数の導体素線からなる導体を有するケーブルである。導体素線は撚り合わされていてもよいし、撚り合わされていなくてもよい。 図1に示すように、本実施の形態に係るケーブルの屈曲断線寿命予測方法では、まず、ステップS1にて、ケーブルの屈曲条件と導体構造から、摩耗していない初期の導体素線に生じる初期の応力振幅σa0と平均応力σm0を求める。 ケーブルの曲げ半径をR、ケーブルの外径をa、導体全体の外径をb、導体素線の外径をcとすると、下式(2) ε=(b−c)/(2R+a) ・・・(2)により導体素線に生じる歪εを求めることができ、さらに、導体素線の材料特性である歪−応力特性を用いて歪εを応力σに換算することができる。図2に示すように、ケーブル21を曲げ半径Rmin〜Rmax間で繰り返し屈曲する場合、最大曲げ半径Rmaxに対応する歪・応力が初期の最小歪εmin・最小応力σminとなり、最小曲げ半径Rminに対応する歪・応力が初期の最大歪εmax・最大応力σmaxとなる。 初期の最小応力σminと最大応力σmaxを求めれば、下式(3),(4) σa0=(σmax−σmin)/2 ・・・(3) σm0=(σmax+σmin)/2 ・・・(4)により、初期の応力振幅σa0と平均応力σm0を求めることができる。 ステップS1にて初期の応力振幅σa0と平均応力σm0を求めた後、ステップS2〜S4にて、ケーブルを屈曲した際の導体素線同士の摩耗を考慮して屈曲回数nごとに導体素線の断面積Snを求める。 まず、ステップS2にて、ケーブルの屈曲条件と導体構造から、導体素線間の接触荷重および摺動距離を求める。 導体素線間の接触荷重および摺動距離を求める際には、予め、図3(a)に示すケーブルの曲げ半径Rに対する導体素線間の接触荷重Wの関係、および、図3(b)に示す曲げ半径Rに対する導体素線間の摺動距離の関係を予め求めておき、これらの関係を用いて、ケーブルの屈曲条件である曲げ半径R(Rmin,Rmax)から、導体素線間の接触荷重および摺動距離を求める。図3(a),(b)の関係は、事前に試験やシミュレーションを行うことにより得ることができる。 なお、図3(a)の関係を用いて曲率半径Rmin,Rmaxに対応する2つの接触荷重Wを得ることができるが、本実施の形態では、安全側の評価とするため、最小曲率半径Rminに対応する最大接触荷重Wmaxを接触荷重として用いる。 また、図3(b)の縦軸はケーブルを直線状態から曲げたときに生じる導体素線間の摺動距離を示しており、最小曲げ半径Rminに対応する最大摺動距離Lmaxから、最大曲げ半径Rmaxに対応する最小摺動距離Lminを減じた値が、ケーブルを曲げ半径Rmin〜Rmax間で屈曲した際の摺動距離Lとなる。 ステップS2にて導体素線間の接触荷重Wmaxおよび摺動距離Lを求めた後、ステップS3にて、接触荷重Wmaxおよび摺動距離Lから屈曲回数nに対する摩耗痕の深さhの関係を求める。 屈曲回数nに対する摩耗痕の深さhの関係を求める際には、予め、図4(a)に示す接触荷重Wごとの総摺動距離に対する摩耗痕の深さhの関係を求めておき、この関係を用い、ステップS2で求めた接触荷重Wmaxに対応する総摺動距離に対する摩耗痕の深さhの関係(図4(a)における実線)を求める。この関係における横軸の総摺動距離は、つまり(屈曲回数n)×(1回の屈曲での摺動距離L)と等しいので、総摺動距離をステップS2で求めた摺動距離Lで除すれば、図4(b)に示すような屈曲回数nに対する摩耗痕の深さhの関係を得ることができる。 なお、図4(a)の関係は、図5に示すような導体素線摩耗試験装置51を用いて事前に試験を行うことにより得ることができる。導体素線摩耗試験装置51は、導体素線を模した2本の試験線52が交差した状態で載置される第1試験線固定治具53と、第1試験線固定治具53との間で両試験線52を挟み込み、両試験線52に接触荷重を印可する第2試験線固定治具54と、第1試験線固定治具53を水平方向にスライドさせることで、両試験線固定治具53,54で両試験線52に接触荷重を加えた状態で両試験線52を互いに摺動させるアクチュエータ55と、を備えている。 図5の導体素線摩耗試験装置51により試験を行ったときの試験線52の断面形状は、図6に示すように、円形状の一部を切り欠いた形状となる。この切り欠きの半径方向に沿った深さが、摩耗痕の深さhである。つまり、摩耗痕の深さhとは、屈曲断線寿命の予測対象となるケーブルの導体素線に形成される実際の摩耗痕の深さではなく、屈曲断線寿命の予測対象となるケーブルの導体素線と同じ応力状態で導体素線摩耗試験装置51により試験を行ったときに、試験線52に形成される摩耗痕の深さを意味している。以下、n回屈曲後に相当する摩耗痕の深さをhnと表示する。 その後、ステップS4にて、ステップS3で求めた屈曲回数nに対する摩耗痕の深さhの関係から、屈曲回数nごとの導体素線の断面積Snを求める。 図6に示すように、導体素線の半径をr、屈曲回数n回目の摩耗痕の深さをhnとしたとき、屈曲回数n回目の導体素線の断面積Snは、下式(1) Sn=r2(π−θn)+r(r−hn)sinθn ・・・(1) 但し、θn=cos-1{(r−hn)/r}により求めることができる。屈曲回数n回目の導体素線の断面積Snは、導体素線の初期の断面積S0(=πr2)よりも減少する。 その後、ステップS5にて、ステップS4で求めた屈曲回数nごとの導体素線の断面積Snから、断面積減少により増加する屈曲回数nごとの応力振幅σanと平均応力σmnを求める。 より詳細には、ステップS4で求めた屈曲回数nごとの導体素線の断面積Snと導体素線の初期の断面積S0の比(S0/Sn)、および初期の応力振幅σa0と平均応力σm0から、下式(5),(6) σan=(S0/Sn)・σa0 ・・・(5) σmn=(S0/Sn)・σm0 ・・・(6)により屈曲回数nごとの応力振幅σanと平均応力σmnを求める。 屈曲回数nに対する応力振幅σanの関係、および、屈曲回数nに対する平均応力σmnの関係は、図7(a),(b)のようになる。図7(a),(b)に示すように、屈曲回数nが増えるほど、導体素線に生じる応力振幅σanと平均応力σmnは増加する。 その後、ステップS6にて、ステップS5で求めた屈曲回数nごとの応力振幅σanと平均応力σmnから、屈曲回数nごとの疲労損傷度(1/Nfn)を求める。 より詳細には、ステップS5で求めた屈曲回数nごとの応力振幅σanと平均応力σmnと、導体素線の材料特性であるSN線図を基に、屈曲回数nごとの疲労損傷度(1/Nfn)を求める。 図8に示すように、SN線図は、応力振幅σaに対する破断サイクル数(寿命)Nfの関係であり、この関係は平均応力σmによって変化する。上述のように、屈曲回数nごとに平均応力σmnは変化するので、屈曲回数nごとに、ステップS5で求めた平均応力σmnに対応するSN線図を用いて、応力振幅σanに対応する破断サイクル数Nfnを求め、この破断サイクル数Nfnの逆数をとることで、屈曲回数nごとの疲労損傷度(1/Nfn)を求める。なお、低サイクル数におけるSN線図は下式(7) σa=C・Nf-α ・・・(7)のCoffin−Manson則の弾性項で表すことができる。この式(7)におけるCとαは平均応力σmにより決定される係数であり、事前に平均応力σmと係数C,αの関係を求めておけば、式(7)を用いて各平均応力σmnに対応するSN線図を作成することができる。 その後、ステップS7にて、屈曲回数nごとの疲労損傷度(1/Nfn)を累積することで、導体素線が破断する屈曲回数ncableを求め、当該求めた屈曲回数ncableをケーブルの屈曲断線寿命として予測する。 屈曲回数nに対する疲労損傷度(1/Nfn)の関係は、図9のようになる。この疲労損傷度(1/Nfn)の累積値が1となる屈曲回数ncableが、導体素線が破断する屈曲回数、すなわちケーブルの屈曲断線寿命となる。つまり、[数1]に示す式(8)の関係を満たすncableがケーブルの屈曲断線寿命となる。ケーブルの屈曲断線寿命ncableを求めた後、処理を終了する。 次に、本実施の形態に係るケーブルの屈曲断線寿命予測方法を実施するケーブルの屈曲断線寿命予測装置について説明する。 図10に示すように、ケーブルの屈曲断線寿命予測装置100は、ケーブルの屈曲条件や導体構造などを入力する入力部101と、ケーブルの屈曲条件と導体構造から、摩耗していない初期の導体素線に生じる初期の応力振幅σa0と平均応力σm0を求める初期応力演算部102と、ケーブルを屈曲した際の導体素線同士の摩耗を考慮して屈曲回数nごとに導体素線の断面積Snを求める導体素線断面積演算部103と、導体素線断面積演算部103で求めた断面積Snと導体素線の初期の断面積S0の比、および初期応力演算部102で求めた初期の応力振幅σa0と平均応力σm0から、上述の式(5),(6)により屈曲回数nごとの応力振幅σanと平均応力σmnを求める屈曲回数毎応力演算部104と、屈曲回数毎応力演算部104で求めた屈曲回数nごとの応力振幅σanと平均応力σmnと、導体素線の材料特性(SN線図)とを基に、屈曲回数nごとの疲労損傷度(1/Nfn)を求める疲労損傷度演算部105と、疲労損傷度演算部105で求めた屈曲回数nごとの疲労損傷度(1/Nfn)を累積することで、導体素線が破断する屈曲回数ncableを求め、当該求めた屈曲回数ncableをケーブルの屈曲断線寿命として予測する屈曲断線寿命予測部106と、屈曲断線寿命予測部106で求めたケーブルの屈曲断線寿命をモニタ等の表示器108に出力する出力部107と、を備えている。 また、ケーブルの屈曲断線寿命予測装置100は、図3(a)の曲げ半径Rに対する導体素線間の接触荷重Wの関係,図3(b)の曲げ半径Rに対する導体素線間の摺動距離の関係、図4(a)の接触荷重Wごとの総摺動距離に対する摩耗痕の深さの関係、図8のSN線図、その他演算に必要な材料パラメータ等を記憶する材料特性等記憶部109を備えている。 導体素線断面積演算部103は、材料特性等記憶部109に記憶した図3(a),(b)および図4(a)の関係を用いて、屈曲回数nごとの導体素線の断面積Snを求めるように構成される。また、疲労損傷度演算部105は、材料特性等記憶部109に記憶したSN線図を用いて、屈曲回数nごとの疲労損傷度(1/Nfn)を求めるように構成される。 これら入力部101、初期応力演算部102、導体素線断面積演算部103、屈曲回数毎応力演算部104、疲労損傷度演算部105、屈曲断線寿命予測部106、出力部107、および材料特性等記憶部109は、パーソナルコンピュータ等の演算装置に搭載され、CPU、ソフトウェア、インターフェイス、メモリ等を適宜組み合わせて実現される。 以上説明したように、本実施の形態に係るケーブルの屈曲断線寿命予測方法では、ケーブルの屈曲条件と導体構造から、摩耗していない初期の導体素線に生じる初期の応力振幅σa0と平均応力σm0を求め、ケーブルを屈曲した際の導体素線同士の摩耗を考慮して屈曲回数nごとに導体素線の断面積Snを求め、求めた断面積Snと導体素線の初期の断面積S0の比、および初期の応力振幅σa0と平均応力σm0から、屈曲回数nごとの応力振幅σanと平均応力σmnを求め、当該屈曲回数nごとの応力振幅σanと平均応力σmnと、導体素線の材料特性とを基に、屈曲回数nごとの疲労損傷度(1/Nfn)を求め、当該屈曲回数nごとの疲労損傷度(1/Nfn)を累積することで、導体素線が破断する屈曲回数ncableを求め、当該求めた屈曲回数ncableをケーブルの屈曲断線寿命として予測している。 つまり、本実施の形態では、導体素線同士の摩耗による導体素線の応力状態の変化を考慮し、その上で累積損傷則(修正マイナー則)を適用してケーブルの屈曲断線寿命を予測している。 導体素線同士の摩耗を考慮することにより、複数の導体素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命を精度よく予測することが可能となる。その結果、顧客要求に応じた耐屈曲ケーブルを適切に、かつ、短期間で開発することが可能になる。また、開発期間の短縮により、コスト低減、サービス向上を図ることが可能になる。 本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。 複数の導体素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命を予測する方法であって、 前記ケーブルの屈曲条件と導体構造から、摩耗していない初期の前記導体素線に生じる初期の応力振幅と平均応力を求め、 前記ケーブルを屈曲した際の前記導体素線同士の摩耗を考慮して屈曲回数ごとに前記導体素線の断面積を求め、 当該求めた断面積と前記導体素線の初期の断面積の比、および初期の応力振幅と平均応力から、屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力を求め、 当該屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力と、前記導体素線の材料特性とを基に、屈曲回数ごとの疲労損傷度を求め、 当該屈曲回数ごとの疲労損傷度を累積することで、前記導体素線が破断する屈曲回数を求め、当該求めた屈曲回数を前記ケーブルの屈曲断線寿命として予測する ことを特徴とするケーブルの屈曲断線寿命予測方法。 予め求めておいた前記ケーブルの曲げ半径に対する導体素線間の接触荷重の関係、および曲げ半径に対する導体素線間の摺動距離の関係と、前記ケーブルの屈曲条件である曲げ半径とから、前記導体素線間の接触荷重および摺動距離を求め、 当該求めた導体素線間の接触荷重および摺動距離と、予め求めておいた接触荷重ごとの総摺動距離に対する摩耗痕の深さの関係とから、屈曲回数に対する摩耗痕の深さの関係を求め、 当該屈曲回数に対する摩耗痕の深さの関係から、屈曲回数ごとの摩耗痕の深さを求め、当該求めた摩耗痕の深さから前記導体素線の断面積を求めることで、屈曲回数ごとに前記導体素線の断面積を求める 請求項1記載のケーブルの屈曲断線寿命予測方法。 前記導体素線の半径をr、屈曲回数n回目の摩耗痕の深さをhnとしたとき、屈曲回数n回目の前記導体素線の断面積Snを、下式(1) Sn=r2(π−θn)+r(r−hn)sinθn ・・・(1) 但し、θn=cos-1{(r−hn)/r}により求める 請求項2記載のケーブルの屈曲断線寿命予測方法。 複数の導体素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命を予測する装置であって、 前記ケーブルの屈曲条件と導体構造から、摩耗していない初期の前記導体素線に生じる初期の応力振幅と平均応力を求める初期応力演算部と、 前記ケーブルを屈曲した際の前記導体素線同士の摩耗を考慮して屈曲回数ごとに前記導体素線の断面積を求める導体素線断面積演算部と、 当該導体素線断面積演算部で求めた断面積と前記導体素線の初期の断面積の比、および前記初期応力演算部で求めた初期の応力振幅と平均応力から、屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力を求める屈曲回数毎応力演算部と、 当該屈曲回数毎応力演算部で求めた屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力と、前記導体素線の材料特性とを基に、屈曲回数ごとの疲労損傷度を求める疲労損傷度演算部と、 当該疲労損傷度演算部で求めた屈曲回数ごとの疲労損傷度を累積することで、前記導体素線が破断する屈曲回数を求め、当該求めた屈曲回数を前記ケーブルの屈曲断線寿命として予測する屈曲断線寿命予測部と、 を備えたことを特徴とするケーブルの屈曲断線寿命予測装置。 【課題】複数の素線からなる導体を有するケーブルの屈曲断線寿命を精度よく予測することが可能なケーブルの屈曲断線寿命予測方法および装置を提供する。【解決手段】ケーブルの屈曲条件と導体構造から、摩耗していない初期の導体素線に生じる初期の応力振幅と平均応力を求め、ケーブルを屈曲した際の導体素線同士の摩耗を考慮して屈曲回数ごとに導体素線の断面積を求め、求めた断面積と導体素線の初期の断面積の比、および初期の応力振幅と平均応力から、屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力を求め、屈曲回数ごとの応力振幅と平均応力と、導体素線の材料特性とを基に、屈曲回数ごとの疲労損傷度を求め、屈曲回数ごとの疲労損傷度を累積することで、導体素線が破断する屈曲回数を求め、当該求めた屈曲回数をケーブルの屈曲断線寿命として予測する。【選択図】図1