生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_1,4−ブタンジオールの製造方法
出願番号:2012239670
年次:2014
IPC分類:C07C 27/02,C07C 31/20,C07C 69/14,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

増田 隆志 国岡 正雄 船橋 正弘 大石 晃広 JP 2014088349 公開特許公報(A) 20140515 2012239670 20121030 1,4−ブタンジオールの製造方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 江幡 敏夫 100100734 増田 隆志 国岡 正雄 船橋 正弘 大石 晃広 C07C 27/02 20060101AFI20140418BHJP C07C 31/20 20060101ALI20140418BHJP C07C 69/14 20060101ALI20140418BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140418BHJP JPC07C27/02C07C31/20 BC07C69/14C07B61/00 300 12 OL 16 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AA03 4H006AB80 4H006AB84 4H006AC41 4H006BA02 4H006BA28 4H006BA32 4H006BA34 4H006BA36 4H006BA37 4H006BA52 4H006BC10 4H006BC11 4H006BE01 4H039CA60 4H039CD40 4H039CD90 4H039CE10 本発明は、1,4-ブタンジオールの製造方法に関するものである。詳しくは、1,4-アセトキシブタンを加アルコール分解して植物由来又は石油由来1,4-ブタンジオールを収率よく製造する方法に関するものである。より詳しくは、1,4-アセトキシブタンを加アルコール分解して植物由来又は石油由来1,4-ブタンジオールを低圧下で収率よく製造する方法に関するものである。また、本発明は、上記1,4-ブタンジオールを収率よく製造する際に副生するカルボン酸アルキルエステルを環境対応型溶剤として利用する方法に関するものでもある。 1,4-ブタンジオールはポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、アルキッド樹脂、生分解性プラスチック(ポリブチレンサクシネート系ポリエステル)、塗料・印刷インキ等の原料のほか工業薬品(γ-ブチロラクトン、ピロリドンなど)の原料として利用されている有用な化成品である。これまで、アセチレン、ブタン、ブタジエン等の化石資源を原料として用いる化石由来1,4-ブタンジオールの製造方法が知られている(例えば、非特許文献1、特許文献2)。また化石資源由来のマレイン酸を高圧下に水素化することにより1,4-ブタンジオールを製造する方法が知られている(特許文献3)。 さらに近年、石油等の化石資源に代替する資源として、CO2削減効果を有し且つ再生可能な原料である植物資源を利用する化成品製造の技術開発が注目されており、エタノール、乳酸、コハク酸、1,4-ブタンジオール等の植物由来化成品の開発が進められている。植物由来1,4-ブタンジオールについては、糖類を原料として発酵合成により1,4-ブタンジオールを製造する方法が提案(特許文献4)されているが、反応工程が複雑で、単位体積当たりの収率が低い難点があった。また、植物由来のフマール酸を水素化により1,4-ブタンジオールを製造する方法(特許文献5)が提案されているが、この方法でも、高圧下(約16MPa)の水素化反応を必要とする。特許文献3と特許文献5では、水素化反応の低圧化が課題であった。前記のブタジエンから1,4-ブタンジオールを製造する方法(特許文献1、特許文献2)は、ブタジエンと酢酸及び水素との反応により1,4-ジアセトキシブタンを製造し、次いで得られた1,4-ジアセトキシブタンを加水分解し、1,4-ブタンジオールを製造する方法であるが、該製造法では、1,4-ジアセトキシブタンの加水分解工程における1,4-ブタンジオールの収率が低いという難点があった。 また、近年いわゆるVOC規制やPRTR法により有機溶剤の使用が抑制される方向にあり、衛生性や臭気性等に問題が少なく環境に優しい溶剤が求められている。特開平10-204011特開2003-48854特開平11-12207US7,858,350 B2WO2011/059013岩坂洋司、PETROTECH,29(2),92(2006).Kunioka、RADIOISOTOPES, 58(11), 767-779(2009).米国試験材料規格(ASTM) D6866Y. Tanoue, K. Sakata, M. Hamada, N. Kai and T. Nagai J. Heterocyclic Chem., 37,1351 (2000).OrganicSyntheses,Coll.Voll.2. P.566 (1943) 本発明は、上記背景技術に鑑み、1,4-ブタンジオールを低圧下に収率よく製造する技術を提供することを課題とする。また、衛生性や臭気性等に問題が少なく環境に優しい溶剤であって、環境対応型溶剤として利用できる溶剤を効率的に製造する技術を提供することも本発明の課題である。 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意努力を重ねた結果、本発明を完成するに到った。即ち、本発明者らは、既知の方法(例えば特許文献1、非特許文献4等)から得られる1,4-ジアセトキシブタン(CH3CO0CH2CH2CH2CH2OCOCH3)を原料とし、当該1,4-ジアセトキシブタンを特定の触媒の存在下、加アルコール分解すると、ブタジエン、ベンゼン、フマール酸等を原料とする従来法に比べ、低圧下で収率よく1,4-ブタンジオールを製造できるとの知見を得、当該知見に基づきさらに検討を加え、本発明を完成した。より具体的には、再生可能で安価な植物資源(例えば、農業廃棄物、廃棄木材、製紙工場廃棄物等)を原料として誘導されるフルフラールの脱カルボニル化反応により製造されるフランの水素化により得られるテトラヒドロフランと無水酢酸(CH3CO)2Oとの反応または、特許文献1など既知の方法から得られる1,4-ジアセトキシブタンを特定の触媒の存在下、加アルコール分解することにより、ブタジエンやフルフラールなど原料とする従来法に比べ低圧下に、又は触媒を再利用することにより収率良く1,4-ブタンジオールを製造する方法を見出し、本発明に到達した。 その結果、特許文献5と比べ、植物由来フルフラールから1,4-ブタンジオール製造までの全工程の低圧力化が可能となり、収率良く100%植物由来の1,4-ブタンジオールを製造できる技術が提供される。また本発明により、石油由来の技術で得られるジアセトキシブタンからも同様に収率良く1,4-ブタンジオールを得ることができる。なお、本発明で得られる植物由来の尺度が100%であるバイオマス炭素含有率(Biobased carbon content)100%(非特許文献2、非特許文献3)の1,4-ブタンジオールは、炭酸ガス削減効果を有する化成品として有用である。 即ち、本発明は以下の発明からなる。(1)1,4-ジアセトキシブタンをアルコール及び加アルコール分解触媒の存在下に、加熱して加アルコール分解を行うことを特徴とする1,4-ブタンジオールの製造方法。ここで、前記1,4-ジアセトキシブタンはCH3CO0CH2CH2CH2CH2OCOCH3と表され、アルコールはROHと表される(前記Rは炭素数が1〜8のアルキル基である)。(2)1,4-ジアセトキシブタンの炭素が植物由来及び/又は化石資源由来であることを特徴とする(1)記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。(3)1,4-ジアセトキシブタンのブタン骨格が植物由来炭素骨格及び/または化石資源由来の炭素骨格であることを特徴とする(1)又は(2)記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。ここで、1,4-ジアセトキシブタンのブタン骨格は、1,4-ジアセトキシブタンの炭素骨格を意味し、-CH2CH2CH2CH2-と表される(以下、同様)。(4)1,4-ジアセトキシブタンのブタン骨格がフルフラール、フラン、テトラヒドロフラン、ブタジエンの中から選ばれた少なくとも一種から得られる炭素骨格であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。(5)アルコールROHがメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコールの中から選ばれた少なくとも一種である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。 (6)加アルコール分解触媒が硫酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、スルファミン酸、硫酸水素アンモニウム、カーボン担持硫酸触媒、塩化水素、金属アルコキシドの中から選ばれた少なくとも一種である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。(7)硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、スルファミン酸、硫酸水素アンモニウム、カーボン担持硫酸触媒、金属アルコキシドの中から選ばれた少なくとも一種を用いて触媒のリサイクル使用を行うことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の1,4−ブタンジオールの製造方法。また、反応使用後の硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、スルファミン酸、硫酸水素アンモニウム、カーボン担持硫酸触媒、金属アルコキシドの中から選ばれた少なくとも一種を精製処理して得たリサイクル触媒を加アルコール分解酵素とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の1,4−ブタンジオールの製造方法でもある。(8)反応温度が50℃から180℃以下であり、反応圧力が1MPa以下である上記(1)〜(6)いずれかに記載の植物由来1,4-ブタンジオールの製造方法。(9)加アルコール分解反応途中で当該反応を一時的に中止し、前記反応液中に存在する副生物及び/又はアルコールを除去した後、アルコールを前記反応液に加えて前記加アルコール分解反応を続けることを特徴とする上記(1)〜(6)いずれかに記載の植物由来1,4-ブタンジオールの製造方法。ここで、前記反応液中に存在する副生物及び/又はアルコールを除去する方法として前記反応液を蒸留処理することが好ましい。(10)1,4-ジアセトキシブタンをアルコール及び加アルコール分解触媒の存在下に、加熱して加アルコール分解を行い1,4-ブタンジオールを製造する際に副生する酢酸アルキルエステルを、無水酢酸の原料として再利用することを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の1,4-ブタンタンジオールの製造に際して副生するカルボン酸アルキルエステルの利用法。また、無水酢酸が、1,4-ブタンジオールを製造する際に副生する酢酸アルキルエステルを原料として製造された無水酢酸である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の1,4−ブタンジオールの製造方法でもある。(11)1,4-ジアセトキシブタンをアルコール及び加アルコール分解触媒の存在下に、加熱して加アルコール分解を行い1,4-ブタンジオールを製造する際に副生する酢酸アルキルエステルを、環境対応型溶剤として利用することを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の1,4-ブタンタンジオールの製造に際して副生するカルボン酸アルキルエステルの利用法。前記環境対応型溶剤は芳香族系溶剤、とくにTBX系芳香族系溶剤あるいはハロゲン系溶剤等の代替品として環境に優しい溶剤、洗浄剤等を意味する。(12)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の植物由来1,4-ブタンジオールを、炭酸ガス削減に資する化成品の製造原料として利用することを特徴とする植物由来1,4-ブタンジオールの利用法。 以下、本発明を詳細に説明する。 バイオマス炭素含有率(Biobased content)が100%(以下、100%植物由来という)の本発明の1,4-ブタンジオールは、非可食性植物資源である、もみ殻、わら、トウモロコシ穂軸・芯、綿実殻、竹、廃木材等の安価な農林業廃棄物から誘導されるフルフラールを出発原料としており、可食性植物資源を原料とする発酵合成法に比べ有利に化学合成により製造することができる。 本発明で得られた、100%植物由来の1,4-ブタンジオール又は当該1,4-ブタンジオールから製造される化成品(以下、植物由来化成品ということがある)は、現代大気に由来する放射性炭素14を含んでいるため、米国試験材料規格ASTM D6866(非特許文献3)等の方法等により、加速器質量分析を用いれば、従前の石油由来化成品と明確に判別することができる。以下に植物由来炭素含有率の尺度であるバイオマス炭素含有率の測定法とバイオマス炭素含有率計算方法を記載する。(バイオマス炭素含有率測定法) バイオマス由来化成品は、分子式が同じであれば、原料がバイオマスという以外に物理化学的性質は、石油由来の化成品と全く差がない。また、消費者にとっては、化成品を見たり、さわっただけでは、当該化成品がバイオマス由来化成品であるのか、あるいは石油由来の化成品であるのか全く区別が出来ない。前述したように、バイオマス由来の化成品だけが排出二酸化炭素量の削減に貢献する。そのため、日本有機資源協会は“バイオマス”マーク認証制度を運営している。これは、化成品にバイオマスが含まれていれば、“バイオマス”マークを表示することが許諾されるシステムである。また、日本バイオプラスチック協会は、バイオマスプラスチックに対して、"バイオマスプラ”マーク認証制度を実施している。これらのシステムの信頼性の確保、証拠のためにバイオマス炭素含有率の測定法の規格化が一部行われている。バイオマス由来の炭素と石油由来の炭素は、極微量の放射性炭素14が含まれているか、含まれていないかの違いがある。炭素年代測定に用いられる方法を応用したもので、バイオマス由来炭素は現代炭素であり、大気圏の窒素が宇宙線の照射により放射化したごく微量の放射性炭素14を含んでいる。一方、石油由来炭素は非常に昔に作られた炭素化合物であるために、半減期が5730年の放射性炭素14は全て放射性崩壊してしまい、全く含まれていない。バイオマス炭素に含まれている放射性炭素の割合は、一般的な炭素12の1×10−12である。このため、この極微量の放射性炭素14を測定するためには、サンプルの炭素濃度を化学反応等により濃縮したサンプルを液体シンチレーションカウンターで計る方法や、サンプルから転換したグラファイトを加速器質量分析により、測定する方法などがある。これらの方法は、化成品に最適化はされていないが、米国試験材料規格(ASTM) D6866に測定法が規格化されている(非特許文献2、3)。(バイオマス炭素含有率計算方法) ASTMでは、バイオマス炭素含有率を、サンプルの炭素の同位体率をシンチレーションカウンターや加速器質量分析で求めた年代測定で常用されている「現代炭素率」に0.93を乗じることにより、バイオベースコンテント(Biobased content)と定義している。この値は、化成品に含まれる全部の炭素のモル数あたりのバイオマス由来の炭素のモル数の割合となる。本特許ではバイオベースコンテントという単語はわかりにくい単語であるので、ASTM D6866に基づいて求めたバイオベースコンテントを「バイオマス炭素含有率」と呼ぶ。化学産業界は、化成品の組成を表すとき、慣例的にその割合を“重量%”や“部”で表すことが多いが、本特許では、主にバイオマス炭素含有率(炭素モル%)をもちいて、合成した化成品のバイオマスの含有率を記述する。 本発明が規定する1,4-ジアセトキシブタンの炭素は、植物資源から製造されたものでも、また化石資源から製造されたものでもよい。1,4-ジアセトキシブタンのブタン骨格は化石資源由来のものでも使用できるが、炭酸ガスの削減効果を期待する用途の場合は植物由来ブタン骨格を選択することが好ましい。植物由来のブタン骨格は、例えば、植物由来フルフラールの脱カルボニル反応により得られるフランのニ重結合を水素化することにより製造されたテトラヒドロフランと無水酢酸との反応により製造できる(例えば、非特許文献4)。テトラヒドロフランと無水酢酸との反応により1,4-ジアセトキシブタンを製造する方法は公知の方法を利用すればよい。また、フルフラールの脱カルボニル反応によりフランを製造する方法、および前記フランのニ重結合を水素化することによりテトラヒドロフランを製造する方法は公知の方法を利用することにより製造できる。前記テトラヒドロフランを植物由来テトラヒドロフランとしてもよく、そのときには植物由来1,4-ジアセトキシブタンを製造できる。前記フルフラールも同様であって、植物由来フルフラールは、もみ殻、わら、トウモロコシ穂軸、サトウキビの絞りかす、綿実殻、竹、廃木材等の農林業廃棄物から得ることができる。トウモロコシの穂軸(芯)から、約20%の収率でフルフラールが得られることが知られている。 無水酢酸は市販品でも公知の方法で製造したものでも使用できる。無水酢酸は石油由来のもの、植物由来のもののいずれを使用してもよい。 より具体的には、テトラヒドロフランと過剰の無水酢酸(例えば、テトラヒドロフラン1モルに無水酢酸2−4モル程度以上の割合)とを、酸触媒の共存下に10−50℃、12−24時間、撹拌混合し、1,4-ジアセトキシブタンを得ることができるが、ここで例示された条件に限定されない。 本発明の1,4-ブタンジオールを製造する方法を具体的に説明するが、本発明はこれら具体的な方法に限定されない。 本発明の植物由来1,4-ブタンジオールは、植物由来及び/又は化石資源由来の炭素を有する1,4-ジセトキシブタンの加アルコール分解反応により製造される。 本発明の1,4-ブタンジオール製造の原料となる1,4-ジアセトキシブタンは、市販品又は公知の方法(例えば、非特許文献4)により製造されたものを使用できる。1,4-ジアセトキシブタンを製造する1つの方法においては、原料のテトラヒドロフランとしては、市販のテトラヒドロフラン又は植物由来テトラヒドロフランを使用する。また他の原料である無水酢酸としては、市販の植物由来又は化石資源由来のものを使用して、非特許文献4の方法に準じて製造することができる(参考例3参照)。例えば、無水酢酸は、酢酸アルキルエステルを加水分解した後、得られた酢酸の脱水により製造される。無水酢酸は酢酸の共存下でも使用可能である。また、1,4-ブタンジオールを製造する反応等の各種化学反応に際に副生する酢酸アルキルエステルを原料として得た無水酢酸を使用することもできる。 1,4-ジアセトキシブタンの加アルコール分解反応は、加アルコール分解触媒の存在下にかき混ぜながら、反応温度50℃〜220℃、好ましくは56℃〜211℃で実施できる。前記反応は低圧で行うことができるので有利である。すなわち、反応圧力を5MPa程度以下、より好ましくは 1MPa以下とすることができる。さらに、1MPa未満とすることができ、この場合には高圧ガス取締法規制外となるので、その点でも有利である。前記反応は回分式または連続式で行ってよい。反応時間は数時間〜20時間程度行われる。 本発明で使用するアルコールは特に制限されないが、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコールの中から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。ブチルアルコールとオクチルアルコールは分岐構造を有する異性体を含んでも良い。これらのアルコールの使用量は加アルコール分解が円滑に進行できる範囲であれば特に制限されないが、あえて記載すれば、1,4-ジアセトキシブタン1モルに対して前記アルコールを3〜30モル程度とすることが好ましい。 本発明では、加アルコール分解は加アルコール分解触媒の存在下、アルコールの還流温度下にバッチ式反応系で行うことが好ましいが、前記アルコール等の出発原料を気体として、あらかじめ触媒等を配してある流通式反応系に導入して行うこともできる。加アルコール分解触媒としては、液体酸触媒が使用できるし、固体酸触媒を使用することもできる。とくに固体酸触媒を使用すると触媒を再使用することができるので有利である。本発明の加アルコール分解触媒としては、硫酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、スルファミン酸、硫酸水素アンモニウム、カーボン担持硫酸触媒、塩化水素、ナトリウムやカリウムのアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド等の金属アルコキシドの中から選ばれた少なくとも一種を用いることが好ましい。 本発明においては、加アルコール分解反応を休みなく進行させてもよいが、一度あるいは数回反応の進行を中止させてもよい。たとえば、加アルコール分解反応を進行させる間に、当該反応を途中で一時的に中止し、反応液中に存在する副生物及び/又はアルコールを蒸留等により除去させた後に、必要に応じてアルコールを前記反応液に加え、さらに前記加アルコール分解反応を続けることが好ましい。この方法は、加アルコール分解反応を容易に中止できるし、容易に再開でき、しかも、この方法を採用すると、1,4-ブタンジオールの収率は例えば90%を超える等著しく向上し、極めて有利である。 本発明が規定する生成物や反応液中に存在する物質の回収工程についてより詳しく説明する。 本発明が規定する1,4-ジアセトトキシブタンの加アルコール分解反応が終了した後に、反応液から生成物や未反応物等を単離することが求められる。ここで用いる単離法は、単離しようとする物質やその量等による異なるのであって、最適な方法を適宜採用すればよい。例えば、固体触媒を使用した場合は、前記反応生成物から固体触媒をろ過分離した後、ろ液中の1,4-ジアセトキシブタンと無水酢酸を常圧蒸留及び又は減圧蒸留により分離することにより実施される。硫酸触媒を使用した場合は、触媒を中和、分離した後、1,4-ジアセトキシブタンと無水酢酸と酢酸を常圧蒸留及び又は減圧蒸留により分離することにより実施される。1,4-ブタンジオールの単離は、前記反応生成物から触媒をろ過分離した後、ろ液中の反応生成物の蒸留等の分離操作により実施される。なお、加アルコール分解の反応率を高め、未反応物をできるだけ少なくするようにすれば、純度良い1,4-ブタンジオールを容易に得ることができるので有利である。上記1,4-ジアセトキシブタンの加アルコール分解において、副生した酢酸エステルは、反応液から常法により単離でき、例えば、水や各種有機溶媒への溶解度の違い(差)を利用する方法、反応液を常圧蒸留及び/又は減圧蒸留する方法等により単離できる。当該酢酸エステルは無水酢酸の原料として再利用される。また、前記酢酸エステルは環境対応型溶剤として利用できる。ここで環境対応型溶剤とは、いわゆるVOC規制やPRTR法により有機溶剤の使用が抑制される方向に対応する溶剤であって、衛生性や臭気性等に問題が少なく環境に優しい溶剤であって、従来から使用されているトルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族系溶剤、ハロゲン系溶剤等の代替品として機能する溶剤、洗浄剤等を意味する。前記環境対応型溶剤は塗料、インキ、接着剤等で用いられる溶剤、医薬品、農薬等の機能性化学品の反応溶媒、各種樹脂の製造に用いられる溶媒、各種化成品の製造原料等に使用できる。なお、植物由来の無水酢酸を原料として得た1,4-ジアセトキシブタンから1,4-ブタンジオールを製造する際に副生する酢酸エステルは炭酸ガス削減効果を有するので有利である。さらに、1,4-ブタンジオールを製造する際に共存させるアルコールも植物由来のものを使用すると前記副生する酢酸エステルはさらに炭酸ガス削減効果を有するので有利である。ここで、酢酸エステルの副生される量は生成した1,4-ブタンジオールの量及び中間体としての1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタンの量から算出することができる。すなわち、1モルの1,4-ジアセトキシブタンから1モルの1,4-ブタンジオールが生成されるときに2モルの酢酸アルキルが副生されるので、生成された1,4-ブタンジオールのモル数が分かれば、当該モル数の2倍のモルの酢酸エステルが生成したことになる。また、1モルの1,4-ジアセトキシブタンから1モルの1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタンが生成されるときに1モルの酢酸アルキルが副生されるといえるので、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタンのモル数が分かれば、当該モルの酢酸エステルが生成したことになる。 回収された固体触媒は常法を使用して、新たな固体触媒として再利用することが可能である。硫酸触媒の場合は、反応後、生成物を及びアルコールを除去した後、中和し廃棄してもよいし、回収された硫酸を硫酸水素アンモニウム、硫酸水素カリウム、硫酸アンモニウム等の原料として利用することもできる。加アルコール分解はバッチ式や流通法により行うことができる。 本発明で得られる1,4-ブタンジオールは、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、アルキッド樹脂、生分解性プラスチック(ポリブチレンサクシネート系ポリエステル)、塗料・印刷インキ等の原料、溶剤のほか、γ-ブチロラクトン、ピロリドン等の各種工業薬品の原料として利用されている有用な化成品である。これら化成品は大気中の炭酸ガスを取り込み成長した植物を原料として製造されることから、炭酸ガス削減効果を有する。 石油由来一価アルコールを利用して、1,4-ジアセトキシブタンから加アルコール分解により1,4-ブタンジオールを製造しても、1,4-ブタンジオールのバイオマス炭素含有量を低下させることはない。1)本発明により、1,4-ブタンジオールを低圧下に収率よく製造することができた。すなわち、実施例1では、1,4-ブタンジオールの収率は69.7%であるが、比較例1では1,4-ブタンジオールの収率は34.1%でしかないことからも、本発明は優れた効果をもたらすといえる。2)本発明の出発原料であるフルフラールは、もみ殻、わら、トウモロコシ穂軸、サトウキビの絞りかす、綿実殻、廃木材等の非可食性農林業廃棄物や建築廃棄木材等の非可食性植物廃棄物から化学合成法により製造できる。このため植物廃棄物の有効利用が可能となり、循環型社会構築にも資する。また前記の再生可能な植物廃棄物の有効利用・化学原料化は、石油資源の枯渇抑制にも役立つ。3)本発明に包合さる100%植物由来であることを特徴とする1,4-ブタンジオール、および当該1,4-ブタンジオールから製造される化成品は、大気中の炭酸ガスを取り込み成長した植物を原料として製造されることから、炭酸ガス削減効果を有する。4)本発明に包合され、100%植物由来であることを特徴とする1,4-ブタンジオールは放射性炭素14を含む。従来、放射性炭素14を含む14CO2を用いたトレーサー実験によるウッド-ウエルクマン反応(ピルビン酸と二酸化炭素からオキサル酢酸が生成する反応)の反応機構解明に利用されている例もあり、放射性炭素14を含む本発明の化成品は、放射性炭素14を含まない石油由来の化成品とは異なり、反応経路解明等の標識化合物としての利用が期待される。5)デンプンを原料として発酵合成によりコハク酸を製造する技術開発が進められている。しかしながら発酵合成は、一般に化学合成法と比較して反応容器単位容積当たりの収率(STY)が低い傾向があるほか、デンプン等可食性原料の使用、植物由来のCO2を工業規模での確保などの難点がある。廃棄植物から得られるフルフラールを原料とし化学合成により100%植物由来のコハク酸等の化成品製造する本発明はこれらの難点の改善に有用である。6)1,4-ブタンジオールの製造方法で副生する酢酸アルキルエステルは臭気性に問題がなく、衛生性等において問題が少なく、環境対応型溶剤として利用することができる。前記副生する酢酸アルキルエステルとして、植物由来の酢酸アルキルエステルを用いると炭酸ガス削減効果を有するので、とくに有利である。 次に本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等の記載に限定されない。 化合物の分析は下記の方法によった。(バイオマス炭素含有率も測定) 生成化成品のバイオマス炭素含有率(%)(Biobased content)は、加速器質量分析による放射性炭素14濃度の測定(非特許文献1)により求めた。(構造解析) プロトンNMR(日本分光製JNM-ECX400)により化合物の合成の確認を行った。(生成物の定量) 1,4-ブタンジオール、1,4-ジアセトキシブタン等の定量は、試料をクロホルム、アセトン等の溶媒に溶解させて、ガスクロマトグラフ法(装置:島津GC17A、カラム:J&WSCIENTIFIC社キャピラリーカラムDB-1(初期温度:100℃、昇温速度:5℃/分、最終温度:270℃、内部標準物質(ジエチレングリコールジブチルエーテル)により行った。また、生成物を蒸留し、蒸留生成物の重量を測定する方法により行った。(参考例1) 合成原料であるフルフラール(和光純薬社製の一級品を蒸留したもの)について、加速器質量分析による炭素14濃度を測定したところ、バイオマス炭素含有率(%)(Biobased carbon content)は、101.42%の値が得られ、合成出発原料フルフラールの炭素は、100%植物由来であることが確認された。(参考例2) 合成原料であるフラン(和光純薬社製の一級品)について、加速器質量分析による炭素14濃度を測定したところ、バイオマス炭素含有率(%)(Biobased content)は、99.24%の値が得られ、合成出発原料フランの炭素は、100%植物由来であることが確認された。(参考例3)植物由来テトラヒドロフランの合成200mlオートクレーブ用いて、前記市販のフランを酸化パラジウム触媒の存在下に、25−45℃、0.69MPaの圧力下に、非特許文献5の方法に準じて行った。収率は93%であった。(参考例4)植物由来1,4-ジアセトキシブタンの合成 テフロン(登録商標)撹拌子、適下ロート、温度計及びコンデンサーを有する内容積200mlのガラス製四つ口フラスコに、無水酢酸108g(1、058モル)を加え、8℃〜22℃で硫酸34.12g(0.348モル)を加えた。次いで、該混合物に20〜22℃で植物由来テトラヒドロフラン25.1g(0.348モル)を滴下し(滴下時間:約20分)、得られた混合物を21〜23℃で20時間反応を行わせた。得られた反応液を水500mlに適下し、次いでその混合物をクロロホルム500mlで3回抽出を行い、有機物をクロロホルム層に抽出した。抽出クロロホルム抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、減圧蒸留により植物由来1,4-ジアセトキシシブタンを51.34g(収率84.7%)得た。合成物のガスクロリテンションタイムは市販の1,4-ジアセトキシシブタンのそれと一致した。 (比較例1) テフロン(登録商標)撹拌子とコンデンサーを有する内容積50mlの2口フラスコに、市販の1,4-ジアセトキシブタン10ミリモル(1.742g)と水200ミリモル(3.604g)と、触媒として硫酸水素カリウム10ミリモル(1.369g)を加え、大気圧、水の還流下に7時間反応を行わせた。反応後、反応液に内部標準物質(ジエチレングリコールジブチルエーテル)0.5gとアセトン10mlを加えて触媒と反応生成物を分離し、反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン、未反応の1,4-ジアセトキシブタンが検出され、収率はそれぞれ44.8%、47.8%、で、未反応の1,4-ジアセトキシブタンは7.4%であった。(実施例1) テフロン(登録商標)撹拌子とコンデンサーを有する内容積20mlの2口フラスコに、市販の1,4-ジアセトキシブタン10ミリモル(1.742g)とメタノール250ミリモル(8.01g)と、触媒として硫酸水素カリウム10ミリモル(1.362g)を加え、大気圧、メタノール還流下に6時間40分反応を行わせた。反応後、触媒が分離した無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン、未反応の1,4-ジアセトキシブタンが検出され、収率はそれぞれ77.8%、20.0%で、未反応の1,4-ジアセトキシブタンは2.2%であった。 比較例1と比べ、1,4-ブタンジオールの収率は著しく向上した。また触媒と生成物の分離が容易であることが判った。(実施例2) テフロン(登録商標)撹拌子とコンデンサーを有する内容積20mlの2口フラスコに、市販の1,4-ジアセトキシブタン10ミリモル(1.742g)とメタノール250ミリモル(8.01g)と、触媒として硫酸2ミリモル(0.1962g)を加え、大気圧、メタノール還流下に8時間反応を行わせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン、未反応の1,4-ジアセトキシブタンが検出され、収率は、それぞれ84.5%、14.2%で、未反応の1,4-ジアセトキシブタンは1.3%であった。(実施例3(1)) マグネチック撹拌子とコンデンサーを有する内容積100mlの4口フラスコに市販の1,4-ジアセトキシブタン50ミリモル(8.71g)とエタノール300ミリモル(13.82g)と、触媒として硫酸水素カリウム49ミリモル(6.81g)を加え、大気圧、エタノール還流下に2時間反応を行わせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン、未反応の1,4-ジアセトキシブタンが検出され、収率はそれぞれ51.4%、38.6%で、未反応の1,4-ジアセトキシブタンは10.0%であった。(実施例3(2)) 実施例3(1)で得られた反応液を含む4口フラスコからコンデンサーを除去した後、同フラスコを加熱攪拌し、酢酸エチルとエタノールを常圧下に蒸留した。エタノールの流出が止まった後、触媒を含む反応系にエタノール50ミリモル加え、大気圧、エタノールの環流下に2時間反応を行わせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタンが検出され、収率はそれぞれ84.0%、16.0%であった。未反応の1,4-ジアセトキシブタンは検出されなかった。 この実験結果から、反応系から酢酸エチルを除去し、反応をさらに2時関行うことにより、1,4-ブタンジオールの収率が実施例3(1)に比べ著しく向上したことが分かった。(実施例3(3)) 実施例3(2)で得られた反応液をそのまま、大気圧、加熱還流下に2時間反応を継続した。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタンが検出され、収率はそれぞれ95.6%、4.4%であった。未反応の1,4-ジアセトキシブタンは検出されなかった。 反応時間を延長することにより、1,4-ブタンジオールの収率が90%を超えた。 (実施例4) マグネチック撹拌子とコンデンサーを有する内容積100mlの2口フラスコに市販の1,4-ジアセトキシブタン50ミリモル(8.71g)とメタノール300ミリモル(9.61g)と、触媒として硫酸水素カリウム61ミリモル(8.31g)を加え、大気圧、メタノール還流下に6時間反応を行わせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン、未反応の1,4-ジアセトキシブタンが検出され、収率はそれぞれ64.8%、31.1%で、未反応の1,4-ジアセトキシブタンは4.1%であった。 (実施例5) 実施例4で得られた反応液を含む2口フラスコからコンデンサーを除去した後、同フラスコを加熱攪拌し、酢酸メチルとメタノールを常圧下に蒸留した。メタノールの流出が止まった後、触媒を含む反応系にメタノール50ミリモル加え、大気圧、メタノールの環流下に3時間反応を行わせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオールが検出され、その収率は100%であった。1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタンと未反応の1,4-ジアセトキシブタンは検出されなかった。(実施例6)触媒のリサイクル使用 実施例5の反応で使用した硫酸水素カリウム触媒を反応液から分離し、メタノール洗浄後、真空乾燥機で、室温、一夜乾燥した。得られた回収触媒を用いて、触媒のリサイクル使用を検討した。 マグネチック撹拌子とコンデンサーを有する内容積100mlの2口フラスコに市販の1,4-ジアセトキシブタン50ミリモル(8.71g)とメタノール300ミリモル(9.62g)と、触媒として前記の回収硫酸水素カリウム6.60g(48.4ミリモル)を加え、大気圧、メタノール還流下に3時間反応をさせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。該反応液を含む2口フラスコからコンデンサーを除去した後、同フラスコを加熱攪拌し、酢酸メチルとメタノールを常圧下に蒸留した。メタノールの流出が止まった後、触媒を含む反応系にメタノール10.4g(287ミリモル)を加え、大気圧、メタノールの環流下に3時間反応を行わせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオールが検出され、その収率は100%であった。1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタンと未反応の1,4-ジアセトキシブタンは検出されなかった。(実施例7(1)) マグネチック撹拌子とコンデンサーを有する内容積100mlの2口フラスコに市販の1,4-ジアセトキシブタン50ミリモル(8.71g)とメタノール300ミリモル(9.61g)と、触媒として硫酸水素アンモニウム50ミリモル(5.76g)を加え、大気圧、メタノール還流下に2時間反応を行わせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン、未反応の1,4-ジアセトキシブタンが検出され、収率はそれぞれ34.6%、51.1%で、未反応の1,4-ジアセトキシブタンは14.3%であった。 (実施例7(2)) 前記実施例7(1)で得られた反応液を含む2口フラスコからコンデンサーを除去した後、同フラスコを加熱攪拌し、酢酸メチルとメタノールを常圧下に蒸留した。メタノールの流出が止まった後、触媒を含む反応系にメタノール300ミリモル(9.62g)加え、大気圧、メタノールの環流下に2時間反応を行わせた。反応後、反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオールと1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタンが検出され、収率はそれぞれ95.8%、4.2%であった。1,4-ジアセトキシブタンは検出されなかった。(実施例8) マグネチック撹拌子とコンデンサーを有する内容積200mlのフラスコに市販の1,4-ジアセトキシブタン40ミリモル(6.97g)とn-プロピルアルコール1モル(60.16g)と、触媒として硫酸水素カリウム40ミリモル(5.45g)を加え、大気圧、n-プロピルアルコールの還流下に9時間反応を行わせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のカスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン検出され、収率はそれぞれ91.2%と8.8%であった。1,4-ジアセトキシブタンは検出されなかった。 (実施例9) マグネチック撹拌子とコンデンサーを有する内容積100mlの2口フラスコに市販の1,4-ジアセトキシブタン20ミリモル(8.49g)とn-ブチルアルコール500ミリモル(37.1g)と、触媒として硫酸水素カリウム20ミリモル(2.74g)を加え、大気圧、n-ブチルアルコールの還流下に11時間反応を行わせた。反応後、無色透明な反応液が得られた。反応生成物のカスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオールが検出され、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン、1,4-ジアセトキシブタンは検出されなかった。1,4-ブタンジオールの収率は100%であった。またガスクロ分析により、酢酸ブチルが生成していることが確認された。(実施例10)植物由来1,4-ジアセトキシブタンを用いる1,4-ブタンジオールの製造 テフロン(登録商標)撹拌子とコンデンサーを有する内容積50mlの2口フラスコに、参考例4で合成した植物由来1,4-ジアセトキシブタン20ミリモル(3.48g)とメタノール500ミリモル(16.02g)と、触媒として硫酸水素カリウム20ミリモル(2.73g)を加え、大気圧、メタノールの還流下に6時間分反応を行わせた。反応後、触媒が分離した無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン検出され、収率はそれぞれ98.2%、1.8%であった。1,4-ジアセトキシブタンは検出されなかった。(実施例11) テフロン(登録商標)撹拌子を有する内容積50mlのステンレス製オートクレーブに、市販の1,4-ジアセトキシブタン50ミリモル(8.71g)、エタノール300ミリモル(13.82g)、触媒として硫酸水素カリウム50ミリモル(8.81g)を加え、オイルバス中、150℃、0.5MPaの圧力下で2時間分反応を行わせた。反応後、触媒が分離した無色透明な反応液が得られた。反応生成物のガスクロ分析を行ったところ、1,4-ブタンジオール、1-ヒドロキシ-4-アセトキシブタン、未反応の1,4-ジアセトキシブタンが検出され、収率はそれぞれ54.6%、40.2%で、未反応の1,4-ジアセトキシブタンは5.2%であった。(参考例5)合成1,4-ブタンジオール及びその原料、中間体、関連化合物等のバイオマス炭素含有率の測定 加速器質量分析による炭素14濃度を測定し、バイオマス炭素含有率(%)(Biobased content)を測定した結果を表1に示す。表1 合成1,4−ブタンジオール及びその原料、中間体、関連化合物のバイオマス炭素含有率の測定No. 1,4-ブタンジオール バイオマス炭素含有率 バイオマス炭素含有率 及び関連化合物 (理論値)% (測定値)% 1 市販フルフラール 100 101.42 2 市販フラン 100 99.24 3 市販フランを原料とする 合成テトラヒドロフラン(参考例3) 100 99.55 4 市販テトラヒドロフラン 0 0 5 No.3の合成テトラヒドロフランを原料とす る合成1,4-ジアセトキシブタン(参考例4) 50 51.82 6 市販1,4-ジアセトキシブタン 0 0 7 No.5の合成1,4-ジアセトキシブタンを 原料とする合成1,4-ブタンジオール (実施例10) 100 99.63 8 市販1,4-ジアセトキシブタンを原料 とする合成1,4-ブタンジオール(実施例5) 0 0 9 市販1,4-ブタンジオール 0 0 表1に示すように、植物由来のフラン(フルフラールから脱カルボニル反応により収率良く得られる)から得られた合成1,4-ジアセトキシブタンを原料とする合成1,4-ブタンジオールは植物由来であることが確認された。 以上の結果から、本発明を次のように記載できる。(1)1,4-ジアセトキシブタンをアルコール及び加アルコール分解触媒の存在下にて加アルコール分解を行うことを特徴とする1,4-ブタンジオールの製造方法。(2)1,4-ジセトキシブタンをアルコール及び加アルコール分解触媒の存在下にて加アルコール分解を行い、1,4-ブタンジオールと酢酸アルキルエステルを併産することを特徴とする1,4-ブタンタンジオール及び酢酸アルキルエステルの製造方法。(3)酢酸アルキルエステルが、植物由来の酢酸アルキルエステルである上記(2)記載の1,4-ブタンタンジオール及び酢酸アルキルエステルの製造方法。(4)酢酸アルキルエステルが、100%植物由来の酢酸アルキルエステルである上記(3)記載の1,4-ブタンタンジオール及び酢酸アルキルエステルの製造方法。(5)酢酸アルキルエステルを、環境対応型溶剤として利用する上記(2)記載の1,4-ブタンタンジオール及び酢酸アルキルエステルの製造方法。(6)上記(2)記載の1,4-ブタンタンジオール及び酢酸アルキルエステルの製造方法で製造された酢酸アルキルエステルを、環境対応型溶剤として利用する酢酸アルキルエステルの利用方法。1,4-ジアセトキシブタンをアルコール及び加アルコール分解触媒の存在下に、加熱して加アルコール分解を行うことを特徴とする1,4-ブタンジオールの製造方法。1,4-ジアセトキシブタンの炭素が植物由来及び/又は化石資源由来であることを特徴とする請求項1記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。1,4-ジアセトキシブタンのブタン骨格が植物由来炭素骨格及び/または化石資源由来の炭素骨格であることを特徴とする請求項1又は2記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。1,4-ジアセトキシブタンのブタン骨格がフルフラール、フラン、テトラヒドロフラン、ブタジエンの中から選ばれた少なくとも一種から得られる炭素骨格であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。アルコールがメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコールの中から選ばれた少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。加アルコール分解触媒が硫酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、スルファミン酸、硫酸水素アンモニウム、カーボン担持硫酸触媒、塩化水素、金属アルコキシドの中から選ばれた少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。加アルコール分解触媒が、反応使用後の硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、スルファミン酸、硫酸水素アンモニウム、カーボン担持硫酸、金属アルコキシド触媒の中から選ばれた少なくとも一種を用いて得たリサイクル触媒である請求項1〜6のいずれかに記載の1,4-ブタンジオールの製造方法。反応温度が50℃以上、220℃以下であり、反応圧力が1MPa以下である請求項1〜6いずれかに記載の植物由来1,4-ブタンジオールの製造方法。加アルコール分解反応途中で当該反応を一時的に中止し、前記反応液中に存在する副生物及び/又はアルコールを除去した後、アルコールを前記反応液に加えて前記加アルコール分解反応を続けることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の植物由来1,4-ブタンジオールの製造方法。1,4-ジアセトキシブタンをアルコール及び加アルコール分解触媒の存在下に、加熱して加アルコール分解を行い1,4-ブタンジオールを製造する際に副生する酢酸アルキルエステルを、無水酢酸の原料として再利用することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の1,4-ブタンタンジオールの製造に際して副生するカルボン酸アルキルエステルの利用法。1,4-ジアセトキシブタンをアルコール及び加アルコール分解触媒の存在下に、加熱して加アルコール分解を行い1,4-ブタンジオールを製造する際に副生する酢酸アルキルエステルを、環境対応型溶剤として利用することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の1,4-ブタンタンジオールの製造に際して副生するカルボン酸アルキルエステルの利用法。請求項1〜8のいずれかに記載の植物由来1,4-ブタンジオールを、炭酸ガス削減に資する化成品の製造原料として利用することを特徴とする植物由来1,4-ブタンジオールの利用法。 【課題】植物由来1,4-ブタンジオールを低圧力下に効率よく製造する技術の提供。【解決手段】再生可能で安価な植物資源(例えば、農業廃棄物、廃棄木材、製紙工場廃棄物等)を原料として誘導されるフルフラールの脱カルボニル化反応により製造されるフランの水素化により得られるテトラヒドロフランと無水酢酸との反応から得られる1,4-ジアセトキシブタンを加アルコール分解触媒の存在下、加アルコール分解することにより、フルフラールから1,4-ブタンジオール製造までの工程で、低圧力化(1MPa未満(高圧ガス取締法規制外))、収率よく100%植物由来の1,4-ブタンジオールを製造する方法。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る