タイトル: | 公開特許公報(A)_医薬品組成物 |
出願番号: | 2012206178 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 31/192,A61K 47/32,A61K 47/44,A61K 9/48,A61P 29/00 |
加藤 健治 日吉 正己 清水 絵美 JP 2014058491 公開特許公報(A) 20140403 2012206178 20120919 医薬品組成物 富士カプセル株式会社 391010976 塩川 修治 100081385 加藤 健治 日吉 正己 清水 絵美 A61K 31/192 20060101AFI20140307BHJP A61K 47/32 20060101ALI20140307BHJP A61K 47/44 20060101ALI20140307BHJP A61K 9/48 20060101ALI20140307BHJP A61P 29/00 20060101ALI20140307BHJP JPA61K31/192A61K47/32A61K47/44A61K9/48A61P29/00 5 OL 8 4C076 4C206 4C076AA56 4C076BB01 4C076CC05 4C076DD46 4C076EE16 4C076EE51 4C076EE54 4C076FF36 4C206AA01 4C206DA23 4C206MA02 4C206MA05 4C206MA57 4C206MA72 4C206NA03 4C206ZB11 本発明は、医薬品組成物に関する。より詳細には、医薬品有効成分として、ロキソプロフェン又はその塩もしくは誘導体を含有する医薬品組成物に関する。 ロキソプロフェンは、最も一般的にはロキソプロフェンナトリウム2水和物(構造式:化1)の形で存在し、経口・経皮の消炎・鎮痛作用を有する医薬品として、市販されている医薬品であり、最近では一般用医薬品としても販売されるようになっている。 しかし、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物は、吸湿性が高く、安定して製剤化すること、及び、製剤化後の保存安定性に優れた製剤とするのが困難であった。 そこで、種々の添加剤を配合した製剤技術が提案されてきた。例えば、添加物の総吸水能を算出し、その数値を一定以上とすることにより、製剤化に適した組成物とする例(特許文献1)や、軟カプセル製剤とする例(特許文献2)、溶液状としてカプセル剤中に充填する例(特許文献3)、カフェインなどと共に製剤化する例(特許文献4)などが提案されてきた。 また、従来から添加物の一種として後述のクロスポビドンが利用されてきているが、主に錠剤や顆粒剤、もしくは粉末を充填した硬カプセル剤に、他の粉体とともに混合・充填して、崩壊助剤として利用されている技術が汎用されていた。 尚、クロスポビドンは、非特許文献1,2によれば、白色〜微黄色の粉末で、1−ビニルー2−ピロリドンの架橋重合物である。化学式は(C6H9NO)nで、構造式は[化2]で表され、一般的な分子量は100万以上であると言われているが、この物質の不溶解性のために正確な分子量測定は未だ確立されていない(非特許文献3)。また、クロスポビドンは、別名ポリビニルポリピロリドンとも呼ばれることがある(CAS登録番号:25249-54-1)。 尚、クロスポビドンと同じ化学式であらわされる物質のひとつに「ポリビニルピロリドン」(別名「ポビドン」)がある(CAS登録番号:9003-39-8)が、これは1−ビニルー2−ピロリドンの直鎖重合物である(非特許文献4)。重合のしかたが直鎖と架橋の差異があり、これらは明確に区別されるべきである。特開平9−100229特開2001−31565特開2011−68636特開2011−140486医薬品添加物規格、261頁、薬事日報社(2003)改訂 医薬品添加物ハンドブック、280頁、薬事日報社(2007)医薬品添加物事典、93頁、薬事日報社(2007)第16改正日本薬局方解説書、C−4618頁、廣川書店(2011) しかしながら、従来の技術のみでは、ロキソプロフェン類を製剤性と保存安定性を兼ね備えて製剤することに困難があった。特に、他の配合成分などに水分を含んでいる場合に、ロキソプロフェンがその水分によって吸湿してしまい、安定した製剤化、製剤後の保存安定性を確保する点で好ましくなかった。 また、従来、ロキソプロフェン類を軟カプセル剤化しようとした場合には、製剤性の面で好ましくないものや、保存時の安定性において問題が発生することが多かった。その原因は必ずしも明確に究明されているものではないが、皮膜中に含まれている水分が、ロキソプロフェンに移行して吸湿され易く、カプセル製造時の不具合や、保存中の著しい変形などに繋がり易かったものと推測される。こうした問題点は、前述の各特許文献に記載の発明を適用しても、その改善には至っていない。 本発明の課題は、ロキソプロフェン類を有効成分とする医薬品組成物の製剤性及び保存安定性を改善することにある。 そこで、発明者らが鋭意検討を行ったところ、ロキソプロフェン類を有効成分とする医薬品組成物に、クロスポビドンを併用することで、安定した製剤化と、製剤化後の保存安定性の両方について、改善が認められた。 更に、本発明では、クロスポビドンを併用した医薬品組成物に、油脂類を含むことによって、更なる製剤性向上が見込める。 本発明の油脂類としては、20℃(常温)、1気圧の条件下で液状であることが好ましく、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、小麦胚芽油、ひまわり油、オリブ油、ゴマ油、トウモロコシ油、コメ油、シソ油、ナタネ油、大豆油、綿実油、落花生油、亜麻仁油、ヒマシ油、ホホバ油等の植物油脂が当然に含まれ、DHA含有油、EPA含有油、DPA含有油、スクワレン、魚類肝油、サメ肝油などの魚油や、蛇油などの動物由来油脂、ならびに脂肪酸が含まれる。 本発明の脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、ガドレイン酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、イコサペント酸などが掲げられる。 本発明の油脂類としては、前記脂肪酸の他にこれらのグリセリドを掲げることができ、特にモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびこれらの混合物を掲げることができる。ここでいうジグリセリド/トリグリセリドという語は、グリセリン分子の末端の3つのOH基のうち、2つ/3つのOH基が脂肪酸に入れ替わった物を指し、入れ替わった脂肪酸は必ずしも同じものではない。 本発明の油脂類として使用可能な他の物質の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン類及びトコフェロール類が挙げられる。これらの物質は、常温で液体のものが好ましく利用できる。 レシチン類としては、大豆レシチン、卵黄レシチンを掲げることができる。トコフェロール類としては、d体、dl体、αートコフェロール、βートコフェロール、γ―トコフェロール、δートコフェロール、又は酢酸トコフェロール等の誘導体も掲げることができる。これらレシチン類及びビタミンE類は、性状を常温液状とするものが多く、油脂の代替物としての利用可能性がある。 本発明の医薬品組成物には、融点20℃以上の疎水性物質も含有できる。融点20℃以上の疎水性物質としては、カカオ脂や、ビースワックス(ミツロウ)、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モクロウ、鯨ロウ、等の動植物由来のワックス類、ならびに各種油脂を水素添加処理した硬化油も含有できる。 クロスポビドンは、製剤中の余分な水分を抱き込んでくれるので、製剤性および保存安定性について改善されることが推測される。 即ち、ロキソプロフェン類を含有する製剤中の他の配合成分に水分を含んでいる場合にも、クロスポビドンがその余分な水分を抱き込み、製剤性及び保存安定性を改善する。 また、ロキソプロフェン類を軟カプセル剤化しようとする場合にも、クロスポビドンが皮膜中に含まれている水分を抱き込み、製剤性及び保存安定性を改善する。 本発明に係る処方例を表1に示す。 表1において各処方の組成物は、その後の利用がし易い粘度や流動性を与えた。今回の実施例1〜5の各処方においては、MCT、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステルの液状混合物に、粉状のロキソプロフェンナトリウム2水和物、クロスポビドンを含有し、粘度10,000〜30,000mPa・s(トキメック社製BM型粘度計;No.4ローター6rpm@25℃)で、かつ、流動性があるようにした。 比較例1、4の処方においても、MCT、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステルの液状混合物、又はMCT、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステルの液状混合物に、粉状のロキソプロフェンナトリウム2水和物を含有し、粘度10,000〜30,000mPa・s(トキメック社製BM型粘度計;No.4ローター6rpm@25℃)で、かつ、流動性がある粘稠な液状懸濁液とした。 比較例2、3の処方においては、液状のグリセリン又はポリエチレングリコール400に粉状のロキソプロフェンナトリウム2水和物を含有し、透明な溶液とした。 (製造例1) 表1および表2で示した各処方で、調製された組成物を、軟カプセル剤充填用組成物として用い、これを軟カプセル剤に充填した。 ここで、比較例1は特許文献2を参考に、比較例2、3は特許文献3を参考にした例である。 軟カプセル剤の皮膜組成は、コハク化ゼラチン100質量部、濃グリセリン35質量部として、富士カプセル(株)製の、ロータリー式軟カプセル充填装置を用い、常法に従ってロータリー式軟カプセル剤を得た。 (軟カプセル剤の製剤性) 実施例1〜5および比較例1、2は、常法による軟カプセル剤製造工程により、正常かつ問題なくカプセル化可能であった。比較例3に関しては、軟カプセル剤成形は可能であったものの、乾燥工程において、カプセル自体の著しい変形が発生し、個体によっては液漏れを生ずるものがあり、最終的な製剤化が不可となる場合があった。比較例4に関しては、40℃1週間保存で、カプセル自体の変形が発生し、保存安定性に劣り、その後の液漏れが予想された。 (試験例) 製造例1で得られた軟カプセル剤につき、崩壊試験(第16改正日本薬局方準拠)を行った。さらに、保存安定性の検討をするために、40℃で3か月間保管し、1,2,3か月の各時点で、外観と定量(ロキソプロフェン)につき確認した。それらの結果を表3に示す。なお、定量方法はHPLC法を採用し、定量値は、設定値を100%としたときの割合を示す数値を記載している。 以上によれば、ロキソプロフェンナトリウム2水和物の質量100%に対するクロスポビドンの含有比率は、10%以上が好ましい。クロスポビドンの含有比率が10%未満ではクロスポビドン配合の効果(製剤性・保存安定性の改善)が少なくなることが推測される。クロスポビドンの含有比率が実施例3の114%超の効果は未確認だが、クロスポビドンが多すぎることのみが不都合になることは考えにくい。 また、医薬品組成物の組成物総質量100%に対する、ロキソプロフェンナトリウム2水和物の質量とクロスポビドンの質量の合計がなす固形分比率は、46%未満(実施例1〜5)であることが好適である。固形分比率が大きいと、流動性が欠如して製剤性に悪影響を及ぼす。但し、固形分比率の許容最大値は60%程度までと推測される。 本発明のロキソプロフェン類を有効成分とする医薬品組成物は、クロスポビドンの含有により製剤性及び保存安定性を改善できる。 尚、本発明の医薬品組成物は、広く一般の医薬品組成物として有用であるが、カプセル剤充填用組成物、特に軟カプセル剤充填用組成物として有用であり、硬カプセル剤充填用組成物へも適用できる。 ロキソプロフェン又はその塩と、クロスポビドンとを少なくとも含有する医薬品組成物。 更に、油脂を含む請求項1に記載の医薬品組成物。 油脂が、20℃の条件下で液体である請求項2に記載の医薬品組成物。 剤型がカプセル剤である請求項1〜3のいずれかに記載の医薬品組成物。 剤型が軟カプセル剤である請求項4に記載の医薬品組成物。 【課題】 ロキソプロフェン又はその塩を含む医薬組成物において、優れた製剤性と安定性を備えた医薬品組成物を得る。【解決手段】 ロキソプロフェン又はその塩とともに、クロスポビドンを含有する医薬品組成物とする。更に、この医薬品組成物を、カプセル剤、特に軟カプセル剤に充填する。【選択図】 なし