タイトル: | 公開特許公報(A)_キノコ類分解用酵素製剤 |
出願番号: | 2012188245 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 9/42,A23L 1/212,C12P 1/00 |
門上 剛 JP 2014042512 公開特許公報(A) 20140313 2012188245 20120829 キノコ類分解用酵素製剤 ナガセケムテックス株式会社 000214250 長瀬産業株式会社 000214272 進藤 卓也 100163647 門上 剛 C12N 9/42 20060101AFI20140214BHJP A23L 1/212 20060101ALI20140214BHJP C12P 1/00 20060101ALI20140214BHJP JPC12N9/42A23L1/212 AC12P1/00 A 9 OL 11 4B016 4B050 4B064 4B016LE02 4B016LG14 4B016LK18 4B016LP01 4B050CC07 4B050CC08 4B050LL02 4B064CA21 4B064CB07 4B064CC06 4B064DA10 本発明は、キノコ類を分解するための酵素製剤、およびそれを用いたキノコ類の酵素分解物の製造方法に関する。 キノコ類を、キノコエキス、キノコパウダーなどに粉末化する方法としては、乾燥シイタケを粉砕機等の物理的手段で粉砕する方法が知られているが、この方法は、一度キノコを乾燥させるため、手間と時間がかかる。 特許文献1には、リゾプス属糸状菌由来酵素とトリコデルマ属糸状菌由来酵素とを併用してキノコ類の子実体を処理し、ほぼ完全に分解して粥状化し、分解物が27メッシュ篩(孔径ほぼ0.6mm)を通過する分解液を製造することが記載されている。特許文献2には、新規菌株トリコデルマ ビリデ TV1由来酵素液が、乾燥シイタケ子実体片を溶解することが記載されている。特許文献3には、マイタケの菌糸体をキチナーゼおよびβグルカナーゼ含有酵素溶液で処理してプロトプラスト化することが記載されている。特許文献4には、コリネバクテリウム属菌由来酵素OGR−2で糸状菌/担子菌湿菌体をプロトプラスト化することが記載されている。特許文献5には、はたけシメジの菌糸体にセルラーゼ、グルカナーゼおよびキチナーゼを作用させてプロトプラスト化することが記載されている。特許文献6には、エリンギの培養菌糸体のプロトプラスト化にグルカナーゼ、キチナーゼを併用するとプロトプラスト形成率が向上することが記載されている。特許文献7には、シイタケ子実体から抽出した酵素液でシイタケ菌糸を4時間処理し、菌糸が1.4gから0.4gに減少したことが記載されている。特開平9−275927号公報特開2005−224230号公報特公昭63−063196号公報特開平2−016969号公報特開平5−260872号公報特開2004−024198号公報特開2007−312618号公報 本発明の目的とするところは、キノコ類、特に、汎用性の高い子実体部分を効率的に分解することができる、キノコ類を分解するための酵素製剤、およびそれを用いたキノコ類の酵素分解物の製造方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決するために、キチナーゼを有効成分として含有する酵素製剤が、キノコ類を効率的に分解することができることを見出した。また、グルカナーゼをキチナーゼと併用することにより、キノコ類の分解が著しく進むことを見出し、本発明の完成に至った。 本発明のキノコ類の子実体を分解するための酵素製剤は、キチナーゼを有効成分として含有する。 一つの実施態様では、上記酵素製剤はさらにグルカナーゼを含有する。 一つの実施態様では、上記キチナーゼ1ユニット(U)に対し、上記グルカナーゼが1から500ユニット(U)である。 一つの実施態様では、上記キチナーゼおよびグルカナーゼは放線菌由来である。 一つの実施態様では、上記キノコ類は、マイタケ、シイタケ、ブナシメジ、ホンシメジ、マツタケ、エノキダケ、およびエリンギよりなる群より選択される少なくとも1種である。 本発明はまた、キノコ類の子実体の酵素分解物の製造方法を提供し、上記酵素分解物の製造方法は、(1)キノコ類の子実体を熱水処理する工程、および(2)上記工程(1)で得られたキノコ類の子実体を、キチナーゼを有効成分として含有する酵素製剤で処理する工程を含む。 一つの実施態様では、上記酵素分解物は、83メッシュの篩を通過する。 一つの実施態様では、上記酵素分解物の製造方法は、さらに、(3)上記工程(2)で得られた、酵素製剤で処理したキノコ類の子実体を粉末化処理する工程を含む。 一つの実施態様では、上記粉末化処理は、スプレードライまたは凍結乾燥により行われる。 本発明によれば、キノコ類を、特に乾燥処理を必要とすることなく、短時間で分解することができる。上記製剤によって得られる酵素分解物は、そのままでも食品等に利用できるが、スプレードライ、凍結乾燥等の粉末化処理に供することにより、嵩を減らして食品用途などの種々の分野に利用することができる。 本発明のキノコ類の子実体を分解するための酵素製剤(以下、「キノコ類分解用酵素製剤」ともいう)は、キチナーゼを有効成分として含有する。 本発明でいうキノコ類の子実体の分解とは、本発明のキノコ類分解用酵素製剤により、キノコ類の子実体を液化することである。 (キノコ類分解用酵素製剤) 本発明のキノコ類分解用酵素製剤の有効成分であるキチナーゼとは、キチン分解酵素の一種である。キチナーゼとしては、市販のキチナーゼであってもよいし、キチナーゼを産生する微生物から調製したものであってもよい。市販のキチナーゼとしては、特に限定されないが、例えば、デナチームCBB−P1(ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。 キチナーゼの産生微生物としては、特に限定されないが、例えば、放線菌、糸状菌、および細菌が挙げられる。上記放線菌としては、例えば、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)およびストレプトマイセス属(Streptomyces)が挙げられる。上記アミコラトプシス属としては、例えば、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis olientalis)が挙げられる。上記ストレプトマイセス属としては、例えば、ストレプトマイセス・バイオラセオルバー(Streptomyces violaceoruber)、ストレプトマイセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・コエリコラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・サーモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、およびストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)が挙げられる。上記糸状菌としては、例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)が挙げられる。上記トリコデルマ属としては、例えば、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)およびトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)が挙げられる。上記細菌としては、例えば、アエロモナス属(Aeromonas)が挙げられる。キチナーゼの産生微生物からキチナーゼを調製する方法としては、特に限定されないが、当業者が通常用いる方法が挙げられる。 本発明のキノコ類分解用酵素製剤は、さらにグルカナーゼを含有し得る。キチナーゼおよびグルカナーゼを含有する酵素製剤は、キチナーゼ単独の酵素製剤よりも、キノコ類の分解作用が強い。 グルカナーゼとしては、特に限定されないが、例えば、β−グルカナーゼが挙げられる。上記β−グルカナーゼとしては、好ましくはβ−1,3グルカナーゼおよび/またはβ−1,6グルカナーゼ、より好ましくはβ−1,3グルカナーゼである。グルカナーゼとしては、市販のグルカナーゼであってもよいし、グルカナーゼを産生する微生物から調製したものであってもよい。市販のグルカナーゼとしては、特に限定されないが、例えば、デナチームGEL−L1(ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。 グルカナーゼの産生微生物としては、特に限定されないが、例えば、放線菌、糸状菌、担子菌、細菌、および酵母が挙げられる。上記放線菌としては、例えば、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)およびストレプトマイセス属(Streptomyces)が挙げられる。上記アミコラトプシス属としては、例えば、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis olientalis)が挙げられる。上記ストレプトマイセス属としては、例えば、ストレプトマイセス・バイオラセオルバー(Streptomyces violaceoruber)、ストレプトマイセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・コエリコラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・サーモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、およびストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)が挙げられる。上記糸状菌としては、例えば、アスペルギルス属(Aspergillus)、ヒュミコラ属(Humicola)、リゾプス属(Rhizopus)、およびトリコデルマ属(Trichoderma)が挙げられる。上記アスペルギルス属としては、例えば、アスペルギルス・アキュレイタス(Aspergillus aculeatus)およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が挙げられる。上記ヒュミコラ属としては、例えば、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)が挙げられる。上記リゾプス属としては、例えば、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)が挙げられる。上記トリコデルマ属としては、例えば、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、およびトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)が挙げられる。上記担子菌としては、例えば、ピクノポラス属(Pycnoporus )が挙げられる。上記ピクノポラス属としては、例えば、ピクノポラス・コクシネウス(Pycnoporus coccineus)が挙げられる。上記細菌として、例えば、アスロバクター属(Arthrobacter)、バチルス属(Bacillus)、およびシュードモナス属(Pseudomonas)が挙げられる。上記バチルス属としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)が挙げられる。上記シュードモナス属としては、例えば、シュードモナス・パウシモビリス(Pseudomonas paucimobilis)が挙げられる。上記酵母としては、例えば、サッカロマイセス属(Saccharomyces)が挙げられる。グルカナーゼ産生微生物からグルカナーゼを調製する方法としては、特に限定されないが、当業者が通常用いる方法が挙げられる。 本発明の酵素製剤中のキチナーゼに対するグルカナーゼの割合としては、特に限定されないが、例えば、キチナーゼ1ユニット(U)に対し、グルカナーゼは1〜500ユニット(U)、好ましくは1〜100ユニット(U)、より好ましくは2〜10ユニット(U)である。 キチナーゼとグルカナーゼとはあらかじめ混合されていてもよいし、混合されていなくてもよい。キチナーゼとグルカナーゼとが別々にキット製剤として提供され、上記キット製剤を使用の際に、両酵素が混合されてもよい。混合方法としては、当業者が通常用いる方法が挙げられる。両酵素を別々にすることで、キノコの種類に応じて、両酵素の活性比を適切に調整することができる。 本発明の酵素製剤は、本発明の効果を阻害しない限り、キチナーゼおよびグルカナーゼ以外にも任意の活性量を有する他の酵素を含有していてもよい。このような酵素としては、特に限定されないが、例えば、キトビアーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、およびヌクレアーゼが挙げられる。 本発明の酵素製剤は、本発明の効果を阻害しない限り、賦形剤など酵素製剤が通常含有する任意の量を有する他の成分を含有していてもよい。賦形剤としては、特に限定されないが、例えば、グルコース、乳糖、トレハロースなどの糖、マルチトール、ソルビトールなどの糖アルコール、デキストリン、デンプン、ペクチンなどの多糖類、ガム類、無機塩類(食塩など)が挙げられる。このような成分の含有量は当業者によって適宜設定される。 本発明の酵素製剤の形態としては、特に限定されないが、例えば、粉末および液体が挙げられる。液体の場合、溶媒または分散媒は、酵素が機能し、衛生上問題ない限り、特に限定されないが、好ましくは水である。溶媒または分散媒が水の場合、pHは酵素の働きが維持される限り限定されないが、公知のpH調整剤を用いて、例えば、pH4〜pH8、好ましくはpH5〜pH6に調整される。本発明の酵素製剤中のキチナーゼの活性量、およびグルカナーゼの活性量は適宜調整される。 (キノコ類の酵素分解物の製造方法) キノコ類の子実体の酵素分解物の製造方法は、(1)キノコ類の子実体を熱水処理する工程、および(2)工程(1)で得られたキノコ類の子実体を、本発明の酵素製剤で処理する工程を含む。 熱水処理としては、特に限定されないが、例えば、加圧熱水処理、熱水に浸漬する処理(熱水浸漬処理)、および熱水をスプレー等によって噴霧する処理(熱水噴霧処理)が挙げられる。上記加圧熱水処理としては、特に限定されず、例えば、オートクレーブ処理が挙げられる。上記加圧熱水処理の熱水処理温度は適宜設定できるが、例えば、80℃〜140℃、好ましくは90℃〜130℃、より好ましくは100℃〜125℃である。上記加圧熱水処理の処理圧力は適宜設定できるが、例えば、0.1MPa〜0.3MPa、好ましくは0.18MPa〜0.22MPaである。上記熱水に浸漬する処理および熱水をスプレー等によって噴霧する処理の熱水処理温度は適宜変更できるが、例えば、80℃〜100℃、好ましくは90℃〜100℃、より好ましくは100℃である。熱水処理時間は適宜変更できるが、例えば、5分〜240分、好ましくは10分〜120分、より好ましくは20分〜60分である。 キノコ類の子実体の処理に使用するキチナーゼの量は、特に限定されないが、キノコ類の子実体の分解効率を高める、および/または本発明の酵素製剤のコストを下げるという点から、好ましくはキノコ類の質量1gに対し、0.02〜2ユニット(U)、より好ましくは0.04〜1ユニット(U)となる量である。 キノコ類の子実体を本発明の酵素製剤で処理する温度は、特に限定されないが、例えば、25℃〜75℃、好ましくは30℃〜70℃、より好ましくは40℃〜65℃である。 キノコ類の子実体を本発明の酵素製剤で処理する時間は、特に限定されないが、例えば、キノコ類の種類、キノコ類の形態、量、後述するような、キノコ類の前処理による熱水処理および粉砕後の状態(粉砕片の大きさ)などに応じて適宜設定される。上記酵素製剤で処理する時間としては、特に限定されないが、例えば、5時間〜120時間、好ましくは6時間〜96時間、より好ましくは10時間〜48時間である。 キチナーゼによる処理とグルカナーゼによる処理とは同時処理であってもよいし、順次処理であってもよい。順次処理の場合は、処理の順序は特に限定されない。 本発明のキノコ類の子実体の酵素分解物の製造方法は、上記酵素で処理する工程の前または直後、あるいはその両方に、当該技術分野において周知の粉砕装置(例えば、ジューサーミキサーまたはホモジナイザー)でキノコ類の子実体を粉砕する工程をさらに加えてもよい。好ましくは上記熱水処理工程の後に上記粉砕する工程を加える。 キノコ類としては、特に限定されないが、好ましくは担子菌である。上記キノコ類としては、例えば、マイタケ(Grifola frondosa)、シイタケ(Lentinus edodes)、ブナシメジ(Hypsizigus marmoreus)、ホンシメジ(Lyophyllum decastes)、マツタケ(Tricholoma matsutake)、エノキダケ(Flammulina velutipes)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)、アンズタケ(Cantharellus cibarius)、タマゴタケ(Amanita hemibapha)、コウタケ(Sarcodon aspratus)、クリタケ(Hypholoma sublateritium)、シャカシメジ(Lyophyllum fumosum)、ベニヤダケ(Hygrocybe coccinea)、チチタケ(Lactarius volemus)、ハナイグチ(Suillus grevillei)、キヌガサタケ(Dictyophora indusiata)、ムラサキシメジ(Lepista nuda)、ササクレヒトヨタケ(Coprinus comatus)、トガリアミガサタケ(Morchella conica Kromnh)、ヤグラタケ(Nyctalis lycoperdoides)、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。食用のものが好ましい。 キノコ類の子実体は、石づち部分を除去した子実体が分解効率の面から好ましい。また、キノコ類の子実体は生でも乾燥物でも熱水処理物でも良いが、熱水処理物が好ましく、生の子実体の熱水処理物がより好ましい。 本発明により製造される酵素分解物は、特に限定されないが、好ましくは83メッシュの篩を通過することができる。この場合、原料(キノコ類の子実体)の質量に対する、ろ過で83メッシュの篩を通過しない残渣の質量の割合(残渣率)は、特に限定されないが、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは4%以下である。なお、上記残渣は、再度、酵素処理に供されてもよい。 本発明のキノコ類の子実体の酵素分解物の製造方法は、さらに、酵素製剤で処理したキノコ類の子実体を、粉末化処理する工程を含んでいてもよい。 上記粉末化処理としては、特に限定されないが、例えば、噴霧乾燥(スプレードライ)、凍結乾燥、顆粒化、整粒化、またはこれらの組み合せが挙げられる。好ましくはスプレードライまたは凍結乾燥である。 このようにして、本発明の酵素分解物を得ることができる。得られた上記酵素分解物は、そのまま摂取することができ、水に希釈して摂取することもできる。上記酵素分解物を飲食品に添加して、摂取することもできる。 上記酵素分解物が添加される具体的な食品形態としては、例えば、米飯製品、野菜製品、乳飲料、清涼飲料などが挙げられるが、これらに限定されない。上記酵素分解物の飲食品への添加は、当業者が通常用いる方法によって行われ得、添加量、添加方法、添加時期は適宜選択することができる。人間以外の動物、例えば、家禽、家畜またはペット用の飼料への添加も可能である。 以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。 なお、実施例で使用した酵素は以下のとおりであり、全てナガセケムテックス株式会社製である。 キチナーゼ(製品名:デナチームCBB−P1) グルカナーゼ(製品名:デナチームGEL−L1) キトビアーゼ(製品名:デナチームCET−P1) セルラーゼ(製品名:セルラーゼSS) ペクチナーゼ(製品名:ペクチナーゼXP−534NEO) プロテアーゼ(製品名:ビオプラーゼOP) また、各酵素の活性測定方法は、「第4版 既存添加物自主規格(平成20年10月13日、日本食品添加物協会発行)に準じて以下のように行った。 (キチナーゼの活性測定方法) 0.068%p−ニトロフェニルN−アセチル−ジ−β−キトビオシド水溶液(pH5.5)に酵素液を加え、37℃、10分間反応させた時、1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを生成する活性を1Uとする。 (グルカナーゼの活性測定方法) 2%カードラン水溶液(pH5.0)に酵素液を加え、37℃にて30分間反応させた時、1分間に1μmolのD−グルコースに相当する可溶性糖を遊離する酵素量を1Uとする。 (キトビアーゼの活性測定方法) 0.017%p−ニトロフェニルN−アセチル−β−D−グルコサミニド水溶液(pH7.0)に酵素液を加え、37℃にて10分間反応させた時、1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを生成する活性を1Uとする。 (セルラーゼの活性測定方法) 0.625%カルメロースナトリウム水溶液(pH4.5)に酵素液を加え、40℃にて30分間反応させた時、1分間に1μmolのグルコースに相当する還元力を生成する酵素量を1Uとする。 (ペクチナーゼの活性測定方法) 0.2664%ポリガラクチュロン酸ナトリウム水溶液(pH7.8)に酵素液を加え、37℃にて10分間反応させた時、1分間に1μmolの不飽和ガラクチュロン酸を生成する酵素量を1Uとする。 (プロテアーゼの活性測定方法) 0.6%ミルクカゼイン水溶液(pH7.5)に酵素液を加え、30℃にて10分間反応させた時、1分間に1μgのチロジンに相当するフォリン発色をTCA可溶性成分として遊離する活性を1Uとする。 (実施例1〜3、比較例1〜6) (酵素製剤の調製) 表1に示される酵素を表1に示される活性および量で混合し酵素製剤(液状;約0.25g)を調製した。この酵素製剤に水150gを添加して撹拌し酵素溶液を調製した。 (生マイタケの予備処理)(1)石づちを取り除いた子実体部分のみで構成される生マイタケ50gを、オートクレーブ処理した(株式会社トミー精工製、(型名)LSX−500;121℃、0.20MPa、20分)。(2)このオートクレーブ処理したマイタケに、ジューサーミキサー(象印マホービン株式会社製、(品番)BM−FG08/FX08;40℃、1分)を用いて粉砕した。(3)この粉砕したマイタケを、ホモジナイザー(キネマチカ(KINEMATICA) AG社製、(型番)PT10−35(12mm規格);30℃、2分)を用いて粉砕した。 (マイタケ酵素分解物の製造)(1)予備処理されたマイタケに、上記の酵素溶液を添加し、45℃にて24時間撹拌した。なお、比較例1(ネガティブコントロール)ではマイタケを使用しなかった。(2)得られた酵素反応物を、83メッシュの篩(株式会社飯田製作所製のJIS試験用ふるい(Z8801−1、83メッシュ、目開き180μm))でろ過した。篩上に残渣が残る場合は篩の上からゴムヘラを軽く押し当て、補助的にスキージした。ろ過後の篩の重量を測定し、ろ過前後の篩の重量から篩の増加重量を算出した。その増加重量から比較例1で得られた篩の増加重量(ブランク重量;6.1g)を控除した重量を残渣量とした。残渣量を原料マイタケ重量で除し、100を乗じて得られる数を残渣率(%)とした。結果を表1に示す。 表1に示すように、キチナーゼにより、マイタケの子実体が分解され、83メッシュ篩を使用した残渣率は2.0%以下であった。また、キチナーゼにグルカナーゼを併用すると、実施例2のキチナーゼ量を低減させても優れた残渣率であった(実施例3)。 (実施例4〜7) 原料のキノコ類を生マイタケから生シイタケまたは生ブナシメジに変更した以外は、実施例1および3と同様にしてキノコ類の酵素分解を行った。結果を表2に示す。 表2に示すように、本発明の酵素製剤により、生シイタケおよび生ブナシメジも低い残渣率で分解できた。 (実施例8) 酵素反応温度を60℃に変更した以外は、実施例3(45℃)と同様にして生マイタケを処理した。篩増加量7.1g、残渣量1.0g、残渣率2.0%であり、生マイタケは十分に分解されていた。少なくとも45℃〜60℃の範囲でマイタケの分解が可能であることが示唆された。 (実施例9) 生マイタケの予備処理をジューサーミキサー処理、オートクレーブ処理、ホモジナイザー処理の順に変更した以外は、実施例1と同様にした。篩増加量10.3g、残渣量4.2g、残渣率8.4%であり、十分に分解されていた。なお、これとは別に、オートクレーブ処理を非加圧の熱水処理に代えると残渣率がやや上昇することを確認している。キノコ類のオートクレーブ処理によりキノコ類の状態が変化し、酵素が作用しやすくなると考えられる。 本発明によれば、キノコ類を効率よく分解できる酵素製剤およびそれを用いたキノコ類の酵素分解物の製造方法を提供することができる。キノコ類を本発明の酵素製剤によって処理して得られる分解物は、スプレードライ、凍結乾燥等の粉末化処理に供することができ、粉末キノコエキスの製造に利用できる。このため、余分となったキノコ類を廃棄することなく、長期保存が可能となる。また食品以外にも家畜などの飼料等にも幅広く利用できる。 キチナーゼを有効成分として含有する、キノコ類の子実体を分解するための酵素製剤。 さらにグルカナーゼを含有する、請求項1に記載の酵素製剤。 前記キチナーゼ1ユニット(U)に対し、前記グルカナーゼが1から500ユニット(U)である、請求項2に記載の酵素製剤。 前記キチナーゼおよびグルカナーゼが放線菌由来である、請求項2または3に記載の酵素製剤。 前記キノコ類が、マイタケ、シイタケ、ブナシメジ、ホンシメジ、マツタケ、エノキダケ、およびエリンギからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1から4のいずれかの項に記載の酵素製剤。 キノコ類の子実体の酵素分解物の製造方法であって、 (1)キノコ類の子実体を熱水処理する工程、および (2)該工程(1)で得られたキノコ類の子実体を、請求項1から5のいずれかの項に記載の酵素製剤で処理する工程、 を含む、方法。 前記酵素分解物が、83メッシュの篩を通過する、請求項6に記載の方法。 さらに、(3)前記工程(2)で得られた、酵素製剤で処理したキノコ類の子実体を粉末化処理する工程、を含む、請求項6または7に記載の方法。 前記粉末化処理が、スプレードライまたは凍結乾燥により行われる、請求項8に記載の方法。 【課題】キノコ類、特に汎用性の高い子実体部分を効率的に分解することができる、キノコ類を分解するための酵素製剤、およびそれを用いたキノコ類の酵素分解物の製造方法を提供すること。【解決手段】キノコ類を分解するための酵素製剤、および上記酵素製剤を用いたキノコ類の酵素分解物の製造方法を提供する。キノコ類を、本発明の酵素製剤によって処理して得られる分解物は、スプレードライ、凍結乾燥等の粉末化処理に供することができ、嵩を減らして食品用途などの種々の分野に利用することができる。また、余分となったキノコ類を廃棄することなく、長期保存が可能となる。また食品以外にも家畜などの飼料等にも幅広く利用できる。【選択図】なし