タイトル: | 公開特許公報(A)_コアシェル粒子の製造方法 |
出願番号: | 2012187167 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 30/88 |
上田 卓也 大槻 秀幸 福澤 興祐 JP 2015212620 公開特許公報(A) 20151126 2012187167 20120828 コアシェル粒子の製造方法 信和化工株式会社 591159251 西村 竜平 100121441 佐藤 明子 100113468 齊藤 真大 100154704 上田 卓也 大槻 秀幸 福澤 興祐 G01N 30/88 20060101AFI20151030BHJP JPG01N30/88 201XG01N30/88 201GG01N30/88 101KG01N30/88 101CG01N30/88 101J 10 1 OL 24 この発明は、分離剤として使用可能なコアシェル粒子の製造方法に関するものである。 従来、液体クロマトグラフィーに用いられる高分子分離剤のうちイオン交換樹脂としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート等の架橋高分子物質にイオン交換基を付与したものが用いられており、種々のイオン性の化合物の分離に利用されている。 近年、液体クロマトグラフィーにおいては、高性能分離や高速分離が求められているが、高速分離を実現するためには、溶離液を高速で流す必要があり、それに耐えうる機械的強度を有する分離剤が必要となる。しかし、従来の高分子分離剤は機械的強度が低いため、溶離液を高速で流すと分離剤の細孔構造が圧縮され不可逆的に変形してしまい、分離剤の寿命に悪影響を与えてしまう恐れがある。 高分子分離剤の機械的強度を上げるために、ノンポーラス型の高分子分離剤も開発されているが、ポーラス型の高分子分離剤と比較するとイオン交換容量が小さくなるという問題がある。 また、高分子分離剤を製造するにあたっては、目的粒子径の粒子を得るための分級操作に多大な時間を費やしてしまうという問題もある。 ところで、コアシェル構造を有するコアシェル粒子は、コア部とシェル部の2つの異なる組成よりなる部分から構成されている。このため、コアシェル粒子は、コア部とシェル部のそれぞれの特性に応じて、単一粒子では得られない種々の機能を発現することができる。 このようなコアシェル粒子としては多数のものが報告されており、トナー、塗料用艶消し剤、光拡散用の添加剤、フィルター、分離膜、分散剤、粉体塗装、樹脂改質剤、コーティング剤、絶縁フィラー、結晶核剤、クロマトグラフィー用充填剤、免疫診断試薬用担体等の多岐にわたる用途に広く利用されている。当該コアシェル粒子の多くでは、シェル部が懸濁重合や乳化重合等のラジカル重合により製造されている(特許文献1)。特開2002−148247号公報 ところが、本発明者らが検討したところ、コア部となる基材粒子とシェル部の構成成分となる単量体(以下、モノマーともいう。)とを混合してからシェル部を構成する重合体(以下、ポリマーともいう。)の重合反応を開始すると、シェル部を多層にするほど分離能が悪化することが分かった。 そこで本発明は、優れた分離能を有する分離剤として使用可能なコアシェル粒子の製造方法を提供すべく図ったものである。 すなわち本発明に係るコアシェル粒子の製造方法は、多孔質の無機化合物を主成分とする無機粒子の表面がカップリング剤により処理されてなる基材コア粒子と、前記基材コア粒子表面に形成された高分子層と、前記高分子層に導入されたイオン交換基とを有するコアシェル粒子の製造方法であって、前記高分子層が、疎水性架橋性単量体(A)及び/又は疎水性非架橋性単量体(B)を単量体成分に含む重合体を主成分とするものであり、前記重合体の重合反応が継続している反応溶液中に前記基材コア粒子を加えることにより前記基材コア粒子表面に前記高分子層を形成することを特徴とする。 上述のように、コア部となる基材粒子とシェル部の構成成分となるモノマーとを混合してからシェル部を構成する重合体の重合反応を開始すると、シェル部を多層にするほど分離能が悪化するのは、基材コア粒子の細孔がモノマーにより埋まってしまい、サイズ排除モードが機能しなくなるためであると考えられる。 これに対して、本発明によれば、高分子層を構成する重合体の重合反応が継続している反応溶液中に基材コア粒子を加えるので、当該基材コア粒子を加える時点で既に前記重合体はある程度の分子量を有するプレポリマーとなっている。そして、当該プレポリマーが基材コア粒子の表面に導入されたカップリング剤に結合して高分子層を構成していくので、基材コア粒子の細孔がモノマーにより埋まりにくい。また、高分子層を構成する重合体の重合反応が継続している反応溶液中に基材コア粒子を加えると、コア基材粒子が前記重合体の重合反応の停止剤として働く。このため、重合体の分子量が上がりすぎて、重合体がゲル化するのを防ぐことができる。 本発明は、特に、前記高分子層が多層構造を有する場合に有効である。 前記無機粒子としては、シリカゲル、ガラス、カーボン、及び、セラミックからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが挙げられる。これらの無機粒子のなかでも、シリカゲルを主成分とし、粒子径が1.0〜50μmであるものが好適に用いられる。 前記無機粒子がシリカゲルを主成分とするものである場合、前記カップリング剤としては、シラノール基との反応性を有する官能基と、ビニル基とを有するものが好適に用いられる。 前記イオン交換基としては、対イオンとして水素イオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、鉛イオン、銀イオン等を有するカチオン交換基が挙げられる。 本発明に係る製造方法により得られるコアシェル粒子もまた、本発明の一つである。当該コアシェル粒子としては、前記重合体が、酸性単量体及び/又は塩基性単量体を単量体成分に含むものも好適に用いることができる。このような本発明に係るコアシェル粒子の用途としては特に限定されないが、例えば、液体クロマトグラフィー用分離剤や、前処理用分離剤等の分離剤が挙げられる。 本発明に係る製造方法によれば、優れた分離能を有する分離剤として好適に用いることができるコアシェル粒子を得ることができる。また、本発明に係る製造方法によれば、コアシェル粒子の粒子径の調整が容易であるととともに、粒度分布が狭く、機械的強度が強いコアシェル粒子を、短時間・高収率・低コストで製造することが可能となる。実施例1で得られたシェル形成粒子のSEM画像。実施例1で得られたコアシェル粒子を用いて行った高速液体クロマトグラフィーのクロマトデータ。実施例2で得られたシェル形成粒子のSEM画像。実施例2で得られたコアシェル粒子を用いて行った高速液体クロマトグラフィーのクロマトデータ。実施例3で得られたシェル形成粒子のSEM画像。実施例3で得られたコアシェル粒子を用いて行った高速液体クロマトグラフィーのクロマトデータ。実施例4で得られたシェル形成粒子のSEM画像。実施例4で得られたコアシェル粒子を用いて行った高速液体クロマトグラフィーのクロマトデータ。実施例5で得られたシェル形成粒子のSEM画像。実施例5で得られたコアシェル粒子を用いて行った高速液体クロマトグラフィーのクロマトデータ。比較例1で得られたシェル形成粒子のSEM画像。比較例1で得られたコアシェル粒子を用いて行った高速液体クロマトグラフィーのクロマトデータ。比較例2で得られたシェル形成粒子のSEM画像。比較例2で得られたコアシェル粒子を用いて行った高速液体クロマトグラフィーのクロマトデータ。比較例3で得られたシェル形成粒子のSEM画像。比較例3で得られたコアシェル粒子を用いて行った高速液体クロマトグラフィーのクロマトデータ。ノンポーラスシリカゲルを用いて行った高速液体クロマトグラフィーのクロマトデータ。 以下に本発明を詳述する。 本発明は、多孔質の無機化合物を主成分とする無機粒子の表面がカップリング剤により処理されてなる基材コア粒子と、前記基材コア粒子表面に形成された高分子層と、前記高分子層に導入されたイオン交換基とを有するコアシェル粒子の製造方法である。 本発明でコア部として用いられる基材コア粒子は、多孔質の無機化合物を主成分とする無機粒子の表面がカップリング剤により処理されてなるものである。 前記無機粒子としては、多孔質の無機化合物を主成分とするものであれば特に限定されず、例えば、シリカゲル、ガラス、カーボンや、アルミナ、ジルコニア、チタニア等のセラミック等を主成分とするものが挙げられる。これらの無機粒子のなかでも、細孔容積が大きく、細孔径が小さいので比表面積が大きく、この結果、充分なイオン交換容量を確保できるとともに、入手が容易であることから、シリカゲルを主成分とするものが好ましい。 前記無機粒子の平均粒子径や平均細孔径は、分離対象に応じて適宜選択すればよいが、例えば、平均粒子径が1.0〜50μm、好ましくは1.0〜10μmであり、平均細孔径が5〜30nm、好ましくは8〜12nmであるものが用いられる。なお、前記平均粒子径は、コールターカウンター法により得られた値であり、前記平均細孔径は、BET法により得られた値である。 前記カップリング剤としては特に限定されず、前記無機粒子と高分子の組み合わせに従い適宜好適なものを選択すればよいが、前記無機粒子がシリカゲルを主成分とするものであり、かつ、前記高分子層がその構成成分としてビニル系単量体を含有するものである場合、例えば、アルコキシシラン基、ハロゲノシラン基、アセトキシシラン基等のシラノール基との反応性を有する官能基と、ビニル基とを有するシランカップリング剤が好適に用いられる。なお、ここで、ビニル基は最も広義に解釈され、ビニル基それ自体に加えて、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等を含むものである。 このようなシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。 前記シランカップリング剤の使用量は、シリカゲル1.00質量部に対する仕込み比で、好ましくは0.70〜1.20質量部であり、より好ましくは0.90〜1.10質量部である。前記シランカップリング剤の使用量が、0.70質量部未満であると、次工程のポリマー被覆が適切に行われず、1.20質量部を超えると、分離に悪影響が及ぶ傾向がある。 本発明において、前記無機粒子の表面をカップリング剤により処理するには、窒素雰囲気下で、前記無機粒子とカップリング剤とを、トルエン溶媒中にて液温105〜115℃、撹拌回転数200rpmで撹拌し、6時間以上反応させればよい。 シリカゲルを主成分とする無機粒子の表面をシランカップリング剤で処理する際には、触媒を添加してもよい。触媒を加えると反応が促進されより多くのシランカップリング剤がシリカゲルと反応する。当該触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸一水和物、イミダゾール等が挙げられる。 前記触媒の使用量は、シランカップリング剤1.00質量部に対する仕込み比で、好ましくは0.005〜0.015質量部であり、より好ましくは0.0075〜0.0125質量部である。前記触媒の使用量が、0.005質量部未満であると、触媒効果が充分に発揮されず、0.015質量部を超えると、反応が過剰に進みシランカップリング剤が必要以上に導入されてしまう。 本発明では、前記基材コア粒子の表面に更にシェル部として高分子層を形成する。前記基材コア粒子の表面に高分子層を形成することにより、得られるコアシェル粒子に耐膨潤性が付与されて、その機械的強度が増し、溶離液を高速で流しても、前記無機粒子の細孔の形状・構造が維持される。 前記高分子層は、疎水性架橋性単量体(A)及び/又は疎水性非架橋性単量体(B)を単量体成分に含む重合体を主成分とするものである。すなわち、前記高分子としては、疎水性架橋性単量体(A)の重合体、疎水性架橋性単量体(A)と疎水性非架橋性単量体(B)の共重合体、疎水性非架橋性単量体(B)の重合体が挙げられる。 前記疎水性架橋性単量体(A)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリル酸エステル;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン等の二個以上のビニル基を有する芳香族系化合物等が挙げられる。これらの疎水性架橋性単量体(A)のなかでも、架橋剤として働いたとき、剛直性を有し網目構造を保持しやすく、また、入手が容易であることから、ジビニルベンゼンが好ましい。 前記疎水性架橋性単量体(A)の使用量は、前記基材コア粒子1.00質量部に対する仕込み比で、好ましくは0.080〜0.180質量部であり、より好ましくは0.110〜0.150質量部である。前記疎水性架橋性単量体(A)の使用量が、0.080質量部未満であると、ポリマー被膜が適切に形成されず、0.180質量部を超えると、ゲル化する恐れがある。 前記疎水性非架橋性単量体(B)としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ブトキシスチレン、2−ビニルナフタレン、2−ビニルアントラセン、t−ブチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、アリルベンゼン等のスチレン系単量体等が挙げられる。これらの疎水性非架橋性単量体(B)のなかでも、スルホン化が容易であり、また、入手も容易であることから、例えばスチレンが好適に用いられる。 前記疎水性非架橋性単量体(B)の使用量は、前記基材コア粒子1.00質量部に対する仕込み比で、好ましくは0.40〜0.80質量部であり、より好ましくは0.50〜0.60質量部である。前記疎水性非架橋性単量体(B)の使用量が、0.40質量部未満であると、ポリマー被膜が充分に形成されず、0.80質量部を超えると、ゲル化する恐れがある。 前記高分子の架橋度は一定の範囲で変更することが可能である。架橋度を変更することにより、コアシェル粒子の膨潤性や強直性を変化させることができる。前記高分子の架橋度は、好ましくは0〜80%、より好ましくは5〜50%、更に好ましくは15〜25%である。前記高分子の架橋度が80%を超えると、ゲル化する恐れがある。なお、高分子の架橋度は下記式に従って求められる。 前記疎水性架橋性単量体(A)及び前記疎水性非架橋性単量体(B)としては、1種類の単量体が用いられてもよく、2種以上の単量体が併用されてもよい。また、前記高分子を構成する単量体成分として、更に、メタクリル酸、ウンデセン酸等の不飽和脂肪酸をはじめとする酸性単量体や、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の塩基性単量体を用い、これらをブロック共重合させてもよい。酸性単量体や塩基性単量体を加えることにより、コアシェル粒子を糖分析や有機酸分析に適した分離挙動をとるように設計することができる。 前記高分子層は複数層からなる多層構造を有するものであってもよい。前記高分子層が多層構造であると、高分子層の膜厚やコアシェル粒子の粒子径の調整が容易になり、その結果、本発明で得られるコアシェル粒子に耐アルカリ性を付与したり、イオン交換容量を調整したりすることが可能となる。なお、コアシェル粒子のイオン交換容量が増えると、配位子交換モードがより強く働くので、分離能が向上する。 本発明において、前記基材コア粒子の表面に高分子層を形成するには、まず、前記高分子の重合を行う。前記高分子の重合は、例えば、窒素雰囲気下で、前記高分子を構成する単量体を、トルエン溶媒中にて液温50〜90℃、撹拌回転数250rpmで1時間以上撹拌し、その後、重合開始剤を加え重合を開始する。 前記重合開始剤としては、ラジカルを発生する公知のラジカル重合剤であれば特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−第3ブチル、過安息香酸第3ブチル、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド等の有機過酸化物系開始剤;2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。 前記重合開始剤の使用量は、前記単量体の合計1.00質量部に対する仕込み比で、好ましくは0.01〜0.04質量部であり、より好ましくは0.01〜0.03質量部である。前記重合開始剤の使用量が、0.01質量部未満であると、重合が適切に行われず、0.04質量部を超えると、被覆するポリマーの分子量が小さくなり、分離に悪影響がでる。 次いで、重合反応が継続している反応溶液中に基材コア粒子を加える。この時点で既に前記重合体はある程度の分子量を有するプレポリマーとなっており、当該プレポリマーが基材コア粒子の表面に導入されたカップリング剤に結合して高分子層が形成されていくので、前記基材コア粒子の細孔がモノマーにより埋まりにくい。また、重合反応が継続している反応溶液中に基材コア粒子を加えると、前記基材コア粒子表面のカップリング剤が反応溶液中のプレポリマーの末端と反応し、前記基材コア粒子が重合反応の停止剤として働く。このため、前記重合体の分子量が上がりすぎて、当該重合体がゲル化するのを防ぐことができる。 前記高分子層を多層構造にする場合は、上記の重合工程を複数回繰り返して行えばよい。 なお、予め重合した重合体を、別途基材コア粒子表面に結合させても本発明におけると同様なコアシェル粒子が得られる可能性があるが、予め重合体を合成してから、別途当該重合体を基材コア粒子表面に結合させて当該基材コア粒子表面をポリマー被覆すると、重合停止反応を含む重合工程と、基材コア粒子表面への高分子層の形成工程(被覆工程)とを別個に行う必要が生じるので、本発明に比べてコアシェル粒子の製造工程が複雑になる。 本発明で得られるコアシェル粒子は、前記高分子層に更にイオン交換基が導入されている。当該イオン交換基としては、例えば、スルホ基等のカチオン交換基が挙げられる。前記高分子層にスルホ基を導入するには、例えば、表面に高分子層が形成された基材コア粒子にスルホン化剤を添加して反応させればよい。当該スルホン化剤としては、例えば、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸等が挙げられる。 前記高分子層に導入されたイオン交換基は、水素イオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、鉛イオン、銀イオン等を対イオンとして有していることが好ましい。 本発明で得られたコアシェル粒子は高分子分離剤のような分級の必要がなく、低コスト・短時間で製造することが可能である。このようなコアシェル粒子の用途としては特に限定されないが、例えば、液体クロマトグラフィー用分離剤や、前処理用分離剤等の分離剤として好適に用いられる。更に、本発明で得られたコアシェル粒子は、分離剤以外にも、様々な分野において有用な機能性材料として用いることができ、このような機能性材料としては、例えば、水の濾過剤・浄化剤や、各種物質の精製剤等が挙げられる。 以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。<実施例1>(1)基材コア粒子の調製 200mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、平均粒子径5μm・平均細孔径12nmのシリカゲル(AGCエスアイテック社製)10g、トルエン60mL、及び、γ−メタクリロキシプルピルトリメトキシシラン(信越化学社製)10gを加え、6時間以上反応を行った。反応終了後、クロロホルム200mL、メタノール300mL、及び、アセトン100mLで順次洗浄し、その後乾燥を行い、シランカップリング剤により被覆されたシリカゲル(以下、基材コア粒子という。)を得た。(2)シェル形成粒子の調製 200mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、トルエン60mL、スチレン(和光純薬社製)5.3g、純度80%ジビニルベンゼン(シグマアルドリッチ社製)1.6g、及び、過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)0.08gを加え、80℃以上にて数時間撹拌した。その後、基材コア粒子10.0g、及び、過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)0.08gを加え、約80℃で撹拌し20時間以上反応を行った。反応終了後、クロロホルム200mL、メタノール200mL、脱イオン水200mL、メタノール100mL、及び、アセトン100mLで順次洗浄し、その後乾燥を行い、疎水性高分子層により被覆された基材コア粒子(以下、シェル形成粒子という。)を得た。 得られたシェル形成粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、均一な粒子が形成されていた。得られたシェル形成粒子のSEM画像を図1に示す。(3)スルホン化 得られたシェル形成粒子10gとクロロホルム20mLとをアイボトルに加え、均一に分散させた。その後、スルホン化剤として硫酸(和光純薬社製)20mLと五酸化二リン(和光純薬社製)15gとを加え、冷却しながら48時間以上反応させた。反応終了後、脱イオン水1000mLで洗浄し、疎水性高分子層にスルホ基を導入したコアシェル粒子を得た。(4)対イオン処理 300mLビーカーに、スルホ基が導入されたコアシェル粒子10gと飽和食塩水200mLとを加え、3時間以上撹拌した。撹拌後、脱イオン水200mLで洗浄し、イオン交換基がNa型のコアシェル粒子(以下、分離剤という。)を得た。(5)評価 得られた分離剤をカラム(カラムサイズ:4.6mmφ×250mm)に充填し、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、Prominence)により分析を行い、評価を行った。評価結果を図2に示す。なお、分析条件は下記表1に示すとおりである。<実施例2>(1)基材コア粒子の調製 実施例1と同様にして基材コア粒子を得た。(2)シェル形成粒子の調製 実施例1と同様にしてシェル形成粒子(以下、二次粒子という。)を形成し、洗浄後、そのまま次工程に移った。(3)多層被覆工程 200mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、トルエン60mL、スチレン(和光純薬社製)5.3g、純度80%ジビニルベンゼン(シグマアルドリッチ社製)1.6g、及び、過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)0.08gを加え、80℃以上にて数時間撹拌した。その後、二次粒子10.0g、及び、過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)0.08gを加え、約80℃で撹拌し20時間以上反応を行った。反応終了後、クロロホルム200mL、及び、トルエン300mLで順次洗浄し、その後乾燥を行い、2層の疎水性高分子層により被覆された2層被覆シェル形成粒子を得た。 得られた2層被覆シェル形成粒子をSEMを用いて観察したところ、均一な粒子が形成されていた。得られた2層被覆シェル形成粒子のSEM画像を図3に示す。(4)スルホン化 実施例1と同様に行った。(5)対イオン処理 実施例1と同様に行い、分離剤を得た。(6)評価 得られた分離剤に対し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を図4に示す。<実施例3> 実施例2と同様にして、2層被覆シェル形成粒子を得た後、多層被覆工程を繰り返し行うことにより、4層被覆シェル形成粒子を得た。 得られた4層被覆シェル形成粒子をSEMを用いて観察したところ、均一な粒子が形成されていた。得られた4層被覆シェル形成粒子のSEM画像を図5に示す。(4)スルホン化 実施例1と同様に行った。(5)対イオン処理 実施例1と同様に行い、分離剤を得た。(6)評価 得られた分離剤に対し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を図6に示す。<実施例4>(1)基材コア粒子の調製 実施例1と同様にして基材コア粒子を得た。(2)シェル形成粒子の調製 200mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、トルエン60mL、スチレン(和光純薬社製)2.6g、1−ビニル−2−ピロリドン(東京化成社製)2.7g、純度80%ジビニルベンゼン(シグマアルドリッチ社製)1.6g、及び、過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)0.08gを加え、80℃以上にて数時間撹拌した。その後、基材コア粒子10.0g、及び、過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)0.08gを加え、約80℃で撹拌し20時間以上反応を行った。反応終了後、クロロホルム200mL、メタノール200mL、脱イオン水200mL、メタノール100mL、及び、アセトン100mLで順次洗浄し、その後乾燥を行い、高分子層により被覆された基材コア粒子(以下、シェル形成粒子という。)を得た。 得られたシェル形成粒子をSEMを用いて観察したところ、均一な粒子が形成されていた。得られたシェル形成粒子のSEM画像を図7に示す。(4)スルホン化 実施例1と同様に行った。(5)対イオン処理 実施例1と同様に行い、分離剤を得た。(6)評価 得られた分離剤に対し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を図8に示す。<実施例5>(1)基材コア粒子の調製 実施例1と同様にして基材コア粒子を得た。(2)シェル形成粒子の調製 実施例4と同様にしてシェル形成粒子を得た。(3)多層被覆工程 実施例2と同様に多層被覆工程を行い、異なる2層の高分子層により被覆された2層被覆シェル形成粒子を得た。 得られた2層被覆シェル形成粒子をSEMを用いて観察したところ、均一な粒子が形成されていた。得られた2層被覆シェル形成粒子のSEM画像を図9に示す。(4)スルホン化 実施例1と同様に行った。(5)対イオン処理 実施例1と同様に行い、分離剤を得た。(6)評価 得られた分離剤に対し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を図10に示す。<比較例1>(1)基材コア粒子の調製 500mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、平均粒子径10μm・平均細孔径12nmのシリカゲル(AGCエスアイテック社製)25g、トルエン150mL、及び、γ−メタクリロキシプルピルトリメトキシシラン(信越化学社製)25gを加え、6時間以上反応を行った。反応終了後、クロロホルム500mL、メタノール750mL、アセトン250mLで順次洗浄し、その後乾燥を行い、シランカップリング剤により被覆されたシリカゲル(以下、基材コア粒子という。)を得た。(2)シェル形成粒子の調製 500mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、基材コア粒子25g、トルエン150mL、スチレン(和光純薬社製)14.8g、及び、純度80%ジビニルベンゼン(シグマアルドリッチ社製)2.2gを加え、50℃以上にて数時間撹拌した。その後、過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)0.41gをトルエン5mLに溶解させたものを加え、約80℃で撹拌し20時間以上反応を行った。反応終了後、クロロホルム500mL、メタノール500mL、脱イオン水500mL、メタノール250mL、及び、アセトン250mLで順次洗浄し、その後乾燥を行い、疎水性高分子層により被覆された基材コア粒子(以下、シェル形成粒子という。)を得た。 得られたシェル形成粒子をSEMを用いて観察したところ、均一な粒子が形成されていた。得られたシェル形成粒子のSEM画像を図11に示す。(3)スルホン化 得られたシェル形成粒子25gとクロロホルム50mとをアイボトルに加え、均一に分散させた。その後、スルホン化剤として硫酸(和光純薬社製)50mLと五酸化二リン(和光純薬社製)40gとを加え、冷却しながら48時間以上反応させた。反応終了後、脱イオン水1000mLで洗浄し、疎水性高分子層にスルホ基を導入したコアシェル粒子を得た。(4)対イオン処理 500mLビーカーに、スルホ基が導入されたコアシェル粒子50gと飽和食塩水300mLとを加え、3時間以上撹拌した。撹拌後、脱イオン水1000mLで洗浄し、イオン交換基がNa型のコアシェル粒子(以下、分離剤という。)を得た。(5)評価 得られた分離剤に対し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を図12に示す。<比較例2>(1)基材コア粒子の調製 500mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、平均粒子径10μm・平均細孔径12nmのシリカゲル(AGCエスアイテック社製)25g、トルエン150mL、γ−メタクリロキシプルピルトリメトキシシラン(信越化学社製)25g、p−トルエンスルホン酸一水和物(和光純薬社製)0.29g、及び、水0.9gを加え6時間以上反応を行った。反応終了後、クロロホルム500mL、メタノール750mL、及び、アセトン250mLで順次洗浄し、その後乾燥を行い、シランカップリング剤により被覆されたシリカゲル(以下、基材コア粒子という。)を得た。(2)シェル形成粒子の調製 500mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、基材コア粒子25g、トルエン150mL、スチレン(和光純薬社製)14.8g、及び、純度80%ジビニルベンゼン(シグマアルドリッチ社製)2.2gを加え、50℃以上にて数時間撹拌した。その後、過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)0.41gをトルエン5mLに溶解させたものを加え、約80℃で撹拌し20時間以上反応を行った。反応終了後、クロロホルム500mL、メタノール500mL、脱イオン水500mL、メタノール250mL、及び、アセトン250mLで順次洗浄し、そのまま次工程に移った。以下、得られた粒子を二次粒子という。(3)多層被覆工程 500mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、二次粒子25g、トルエン150mL、スチレン(和光純薬社製)14.8g、及び、純度80%ジビニルベンゼン(シグマアルドリッチ社製)2.2gを加え、50℃以上にて数時間撹拌した。その後、過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)0.41gをトルエン5mLに溶解させたものを加え、約80℃で撹拌し20時間以上反応を行った。反応終了後、クロロホルム300mL、及び、トルエン500mLで順次洗浄し、その後乾燥を行い、2層の疎水性高分子層により被覆された2層被覆シェル形成粒子を得た。 得られた2層被覆シェル形成粒子をSEMを用いて観察したところ、均一な粒子が形成されていた。得られた2層被覆シェル形成粒子のSEM画像を図13に示す。(4)スルホン化 比較例1と同様に行った。(5)対イオン処理 比較例1と同様に行い、分離剤を得た。(5)評価 得られた分離剤に対し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を図14に示す。<比較例3> 比較例2と同様にして、2層被覆シェル形成粒子を得た後、多層被覆工程を繰り返し行うことにより、4層被覆シェル形成粒子を得た。 得られた4層被覆シェル形成粒子をSEMを用いて観察したところ、均一な粒子が形成されていた。得られた4層被覆シェル形成粒子のSEM画像を図15に示す。(4)スルホン化 比較例1と同様に行った。(5)対イオン処理 比較例1と同様に行い、分離剤を得た。(6)評価 得られた分離剤に対し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を図16に示す。<結果> 実施例1〜5及び比較例1〜3のSEM画像より、いずれにおいても微粒子の少ない均一な粒子が得られていることが分かり、また、実施例1〜5及び比較例1〜3のクロマトグラフィーによる評価結果からは、いずれにおいても各種糖成分が分離されていることから、シリカゲル表面に高分子層が被覆され、更にイオン交換基が導入されたことが分かる。なお、データは省略するが平均粒子径が異なるシリカゲルを用いてコアシェル粒子を製造しても、同様な結果が得られた。 しかしながら、モノマーと基材コア粒子とを混ぜてそのまま重合して得られた比較例1〜3のコアシェル粒子では、図12→図14→図16を並べてみると、高分子層の被覆を重ねるごとにピークが左に寄っていったことが確認される。一方、ノンポーラスシリカゲル(細孔がないシリカゲル)のクロマトデータを図17に示すが、図17と、図12、図14及び図16とを比較すると、高分子層の被覆回数を重ねるごとにノンポーラスシリカゲルのピーク形状に近づいていることが分かる。従って、高分子層の被覆を重ねるごとに細孔が詰まっていくことが推測される。 一方、重合反応が進行している重合体の反応溶液に基材コア粒子を添加することにより高分子層を形成した実施例1〜3のコアシェル粒子では、図2→図4→図6を並べてみると、比較例1〜3とは異なり、高分子層の被覆を重ねてもピーク形状が維持されていることが分かる。従って、実施例1〜3では、高分子層の被覆を複数回行っても細孔が詰まっていないことが推測される。従って、実施例1〜3では、分離能を損なうことなく高分子層の多層被覆を行うことができたことが分かる。 また、一層目の高分子として、スチレン+ビニルピロリドン+80%ジビニルベンゼンからなる親水性の三元共重合体を用いた実施例4及び5では、図8→図10を並べてみると、二層目の高分子としてスチレン+80%ジビニルベンゼンからなる疎水性の共重合体を用いて多層被覆を行うことにより分離結果が顕著に改善されたことが分かる。この結果より、様々な異なる種類の重合体を組み合わせて多層に被覆することにより、多様な性能を持ったコアシェル粒子が製造できる可能性が示唆される。 多孔質の無機化合物を主成分とする無機粒子の表面がカップリング剤により処理されてなる基材コア粒子と、前記基材コア粒子表面に形成された高分子層と、前記高分子層に導入されたイオン交換基とを有するコアシェル粒子の製造方法であって、 前記高分子層が、疎水性架橋性単量体(A)及び/又は疎水性非架橋性単量体(B)を単量体成分に含む重合体を主成分とするものであり、 前記重合体の重合反応が継続している反応溶液中に前記基材コア粒子を加えることにより前記基材コア粒子表面に前記高分子層を形成することを特徴とするコアシェル粒子の製造方法。 前記高分子層が、多層構造を有する請求項1記載のコアシェル粒子の製造方法。 前記無機粒子が、シリカゲル、ガラス、カーボン、及び、セラミックからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものである請求項1又は2記載のコアシェル粒子の製造方法。 前記無機粒子が、シリカゲルを主成分とし、粒子径が1.0〜50μmであるものである請求項1、2又は3記載のコアシェル粒子の製造方法。 前記カップリング剤が、シラノール基との反応性を有する官能基と、ビニル基とを有するものである請求項4記載のコアシェル粒子の製造方法。 前記イオン交換基が、対イオンとして水素イオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、鉛イオン、又は、銀イオンを有するカチオン交換基である請求項1、2、3、4又は5記載のコアシェル粒子の製造方法。 請求項1、2、3、4、5又は6記載の製造方法により得られることを特徴とするコアシェル粒子。 前記重合体が、酸性単量体及び/又は塩基性単量体を単量体成分に含むものである請求項7記載のコアシェル粒子。 請求項7又は8記載のコアシェル粒子を用いてなる液体クロマトグラフィー用分離剤。 請求項7又は8記載のコアシェル粒子を用いてなる前処理用分離剤。 【課題】優れた分離能を有する分離剤として使用可能なコアシェル粒子の製造方法を提供する。【解決手段】多孔質の無機化合物を主成分とする無機粒子の表面がカップリング剤により処理されてなる基材コア粒子と、基材コア粒子表面に形成された高分子層と、高分子層に導入されたイオン交換基とを有するコアシェル粒子の製造方法であって、高分子層が、疎水性架橋性単量体(A)及び/又は疎水性非架橋性単量体(B)を単量体成分に含む重合体を主成分とするものであり、重合体の重合反応が継続している反応溶液中に基材コア粒子を加えることにより基材コア粒子表面に高分子層を形成する。【選択図】図1