生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_末梢神経毒性の判定方法
出願番号:2012185168
年次:2014
IPC分類:C12Q 1/02,A61K 45/00,A61P 35/00


特許情報キャッシュ

澤口 諭一 上野 哲 山崎 竜太 ▲高▼木 陽光 松崎 健 JP 2014042461 公開特許公報(A) 20140313 2012185168 20120824 末梢神経毒性の判定方法 株式会社ヤクルト本社 000006884 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 澤口 諭一 上野 哲 山崎 竜太 ▲高▼木 陽光 松崎 健 C12Q 1/02 20060101AFI20140214BHJP A61K 45/00 20060101ALI20140214BHJP A61P 35/00 20060101ALI20140214BHJP JPC12Q1/02A61K45/00A61P35/00 11 OL 13 4B063 4C084 4B063QA05 4B063QA18 4B063QQ91 4B063QR77 4B063QX01 4C084AA17 4C084NA07 4C084NA20 4C084ZB26 本発明は、化合物によって引き起こされる末梢神経毒性の発現頻度をin vitroで判定する方法に関する。また、該方法により、末梢神経毒性の発現頻度が低い化合物をスクリーニングする方法に関する。 微小管は、チューブリン分子が管状に重合することにより形成された細胞骨格の一種であり、有糸分裂や神経機能の発現に重要な役割を果たす。微小管作用薬は、有糸分裂紡錘体における微小管に作用することにより細胞周期をG2/M期に停止させ、抗腫瘍効果を発揮する。その一方で、微小管作用薬は神経細胞の神経突起を構成する微小管に作用することで神経突起を破壊し、副作用として末梢神経毒性(Peripheral Neuropathy;PN)を発現する。 PNは、Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0(CTCAE)による分類では、表1のようになっている。 微小管作用薬の中でも、パクリタキセルおよびビンクリスチンは、臨床現場において表1のGrade3、4に該当する重篤なPNの発現頻度(Frequency of Peripheral Neuropathy;FPN)が特に高い(表2)。一方、他の微小管作用薬のFPNについては、コルヒチンはパクリタキセルやビンクリスチンより低く、ドセタキセル、ビンデシンおよびビノレルビンはコルヒチンよりさらに低い(非特許文献1−10および表2)。このように微小管作用薬ごとにFPNは異なっている。 こうしたPNはしばしば微小管作用系抗がん剤の用量規制因子になるため、非臨床試験で予めPNを評価することは重要である。かかる観点から、現在、非臨床段階におけるFPNは主にin vivoモデルで評価されている(非特許文献11)。また、PNの有無は、in vitroで測定することにより評価する方法が提案されている(非特許文献12、13)。このin vitroにおける評価方法は、神経細胞に被験成分を接触させて数日培養後の神経突起を有する細胞数を測定することにより行なわれている。Seidman AD et al.J Clin Oncol.1995;13:2575-2581Smith RE et al.J Clin Oncol.1999;17:3403-3411Winer EP et al.J Clin Oncol.2004;22:2061-2068Sarris AH et al.Ann Oncol.2000;11:69-72Kyle RA et al.N Engl J Med.1997;336:1202-1207Okada S et al.Br J Cancer.1999;80:438-443Eigentler TK et al.Melanoma Res.2008;18:353-358Fumoleau P et al.J Clin Oncol.1993;7:1245-1252Vogel C et al.Ann Oncol.1999;10:397-402Zelek L et al.Cancer.2001;92:2267-2272Bacher G.et al.Cancer Res.2001;61:392-399河野 通明ほか,癌と化学療法 2004;31(4):501-506Geldof A.A.et al.J Neurooncol.1998;37:109-113 しかしながら、従来のin vitroの評価系モデルでは、前記表2で示されている臨床試験のFPNとの相関性が低いという問題がある。 従って、臨床におけるFPNと相関性の高いin vitroでのPNの評価系の確立が望まれている。 本発明は、被験成分によって引き起こされるFPNをin vitroで評価する方法に関する。また、該方法により、FPNが低い成分をスクリーニングする方法を提供することに関する。 上記課題に鑑み、種々検討した結果、本発明者は、微小管作用薬により引き起こされるFPNが、従来法のように被験成分の接触による神経突起消失ではなく、その後に、該成分を除去して神経突起の再伸長レベルを測定することによって得られる結果と高い相関を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔9〕を提供するものである。〔1〕(a)神経突起を伸長し得る細胞に被験成分を接触させるステップと、 (b)ステップ(a)で接触させた被験成分を除去するステップと、 (c)被験成分除去後に神経突起の再伸長レベルを測定するステップを含む、被験成分の末梢神経毒性評価方法。〔2〕神経突起を伸長し得る細胞が、ラット副腎由来褐色細胞腫のPC−12細胞またはヒト神経芽細胞腫のSH−SY5Y細胞である〔1〕に記載の方法。〔3〕被験成分が、微小管に作用する成分である〔1〕又は〔2〕に記載の方法。〔4〕ステップ(a)で接触させる被験成分の濃度が、被験成分接触後実質的にすべての細胞の神経突起が消失する濃度である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。〔5〕被験成分接触後実質的にすべての細胞の神経突起を消失する濃度が、95%以上の細胞の神経突起が消失する濃度である〔4〕に記載の方法。〔6〕ステップ(b)の除去が、被験成分接触後24時間以内に行われる〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。〔7〕ステップ(c)の測定が、被験成分除去後0−72時間に行われる〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。〔8〕ステップ(c)の測定が、再伸長した細胞数の割合を測定するものである〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。〔9〕ステップ(c)において、被験成分除去後24−48時間後の、一定細胞数当たりの神経突起が再伸長した細胞数の割合を、他の被験成分の再伸長した細胞数の割合と比較することで、当該被験成分と当該他の被験成分との末梢神経毒性の発現頻度の相対的な高低を判定する、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法。〔10〕〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法により、末梢神経毒性の発現頻度が低い成分をスクリーニングする方法。〔11〕〔10〕に記載のスクリーニング方法により得られた末梢神経毒性の発現頻度が低い成分。 本発明のPNの評価方法によれば、in vitroで、簡便に被験成分のPNの有無を調べることができ、かつ、該成分の臨床でのFPNを予測することができる。また、FPNが低い成分、FPNが低い微小管作用薬のスクリーニングが可能になる。各種被験成分接触後に神経突起を再伸長したPC−12細胞の割合を示す((a)は被験成分除去後24時間後、(b)は被験成分除去後48時間後。**:p<0.01、***:p<0.001対パクリタキセル)各種被験成分接触後に神経突起を再伸長したSH−SY5Y細胞の割合を示す((a)は被験成分除去後24時間後、(b)は被験成分除去後48時間後。*:p<0.05、**:p<0.01対パクリタキセル) 本発明のPN評価方法は、(a)神経突起を伸長し得る細胞に被験成分を接触させるステップと、(b)ステップ(a)で接触させた被験成分を除去するステップと、(c)被験成分除去後に神経突起の再伸長レベルを測定するステップとを含む。 本発明に用いられる神経突起を伸長し得る細胞としては、培養可能で培養により神経突起を伸長する細胞であれば良く、特に限定されないが、株化された細胞が入手容易性の点で好ましく、例えばラット副腎由来褐色細胞腫PC−12細胞、ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞が挙げられる。 被験成分としては、微小管に作用する化合物、それらの混合物、及び動物抽出物、植物抽出物等が挙げられる。 ステップ(a)における、神経突起を伸長し得る細胞に被験成分を接触させる操作は、具体的には、被験成分を接触させた培地中で神経突起を伸長し得る細胞を培養することにより行うのが好ましい。用いられる培地としては、神経突起を伸長し得る細胞が生育できる培地であればよく、例えばRPMI1640、Dulbecco’s modified eagle’s medium等が用いられる。また、培地には、ウシ血清、ブタ血清等の血清の他、神経突起伸長誘導因子である神経成長因子(Nerve Growth Factor)、トランス−レチノイン酸(All-Trans Retinoic Acid)等を添加することができる。神経突起を伸長し得る細胞は、培地中に10〜200 cells/μL、さらに40〜100 cells/μL添加するのが好ましい。 神経突起を伸長し得る細胞のステップ(a)における被験成分接触前の培養は、用いる細胞により相違するが、例えば、30〜40℃で48〜96時間行うのが好ましい。 ステップ(a)において、被験成分を接触させれば、被験成分にPNがなければ細胞から伸長した神経突起は消失しないが、被験成分がPNを有する場合には伸長した神経突起が消失する。神経突起の有無は、顕微鏡観察で行うことができる。 PNを有する被験成分の場合、ステップ(a)で接触させる被験成分の濃度は、アポトーシス誘導による非特異的な神経突起消失の影響を避けるために、被験成分接触後実質的にすべての細胞の神経突起が消失する濃度を事前に測定し、当該濃度で被験成分を接触させることが好ましく、被験成分接触後95%以上の細胞の神経突起が消失する濃度で接触させることがさらに好ましい。また、当該濃度は、被験成分接触後実質的にすべての細胞が神経突起を消失する最低濃度であることが好ましく、被験成分接触後95%以上の細胞の神経突起が消失する最低濃度であることがさらに好ましい。 ステップ(b)においては、ステップ(a)で用いた被験成分を除去する。被験成分の除去は、通常、被験成分を含有しない培地に交換することにより行うことができる。新たな培地は、前記細胞が生育できる培地であればよいが、前記ステップ(a)で用いた培地と同様の培地が好ましい。ステップ(b)の被験成分の除去は神経突起消失作用、及びステップ(c)の再伸長の点から、ステップ(a)における被験成分と細胞の接触、例えば被験成分接触後24時間以内、好ましくは1〜24時間、より好ましくは12〜24時間、さらに18〜24時間に行うのが好ましい。 ステップ(c)では、被験成分除去後に神経突起の再伸長レベルを測定する。 被験成分を除去すれば、被験成分による神経突起消失作用が解除されるので、細胞から神経突起の再伸長が生じる。当該神経突起の再伸長レベルを測定する。 再伸長レベルの測定は、被験成分除去後0〜72時間に、さらに0時間(除去直後)と24〜72時間に、特に0時間(除去直後)と24〜48時間に行うのが好ましい。再伸長レベルは、再伸長した細胞数の割合を測定すること、又は被験成分除去後の重合チューブリン量を測定することによって行うことができる。ここで、再伸長した細胞数の割合の測定は、被験成分除去後一定時間経過後に、顕微鏡観察により一定細胞数当たりの神経突起が再伸長した細胞数の割合を測定することにより行われる。顕微鏡観察時の一定細胞数は、300個程度が好ましい。一方、重合チューブリン量の測定は、被験成分除去後0〜24時間に、細胞内総タンパク質に含まれる重合チューブリンを遠心操作により沈殿させ、沈殿画分の重合チューブリン量をウェスタンブロット法等を用いて検出し、被験成分除去直後の重合チューブリン量と対比することにより行われる。 被験成分除去後24〜72時間、好ましくは24〜48時間に、顕微鏡観察により一定細胞数当たりの神経突起が再伸長した細胞数の割合を、他の被験成分の再伸長した細胞数の割合と比較することで、当該被験成分と当該他の被験成分とのFPNの相対的な高低を判定することができる。即ち、一定細胞数当たりの神経突起が再伸長した細胞数の割合が、他の被験成分の再伸長した細胞数の割合と比較して高い場合には、当該被験成分のFPNが、当該他の被験成分より低いと判定することができ、一定細胞数当たりの神経突起が再伸長した細胞数の割合が、他の被験成分の再伸長した細胞数の割合と比較して低い場合には、当該被験成分のFPNが、当該他の被験成分より高いと判定することができる。ここで、他の被験成分としては、FPNが不明な被験成分の他に、FPNが既知の成分を用いることもできる。当該FPNが既知の成分としては、微小管に作用する既知成分等を用いることができ、具体的には、パクリタキセル、ビンクリスチン、コルヒチン、ドセタキセル、ビンデシン、ビノレルビン等が挙げられる。 本発明の評価方法によるFPNの評価結果は、前記(表2)の臨床におけるFPNと高い相関性を有する。従って、本発明の評価方法によれば、FPNが低い化合物をスクリーニングすることができる。 次に比較例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。<比較例1:PC−12細胞およびSH−SY5Y細胞を用いた評価系での検討>[1]材料および方法(a)細胞 ラット副腎由来褐色細胞腫PC−12細胞:理研セルバンクより購入 ヒト大腸癌由来HCT116細胞:American Type Culture Collection(ATCC)より購入 ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞:ATCCより購入(b)試薬 Dulbecco's modified eagle's medium (DMEM)(Sigma Aldrich) RPMI1640(Sigma Aldrich) Fetal Bovine Serum (FBS)(Biofill) Horse Serum(HS)(DSP) ペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco BRL) 2.5S Nerve Growth Factor (NGF), Mouse(Millipore) Cell Titer 96 aqueous one solution(Promega) Dimethylsulfoxide (DMSO)(和光純薬工業) All-Trans Retinoic Acid (ATRA)(和光純薬工業) WST-8 (KISHIDA)(c)被験薬 Vincristine(Sigma Aldrich) Paclitaxel(Sigma Aldrich) Docetaxel(Fluka) BI2536(ヤクルト本社にて合成) Colchicine(東京化成工業株式会社) Doxorubicin(和光純薬工業) Vindesine(Sigma Aldrich) Vinorelbine(Sigma Aldrich) *すべての被験薬はDMSOにより10 mMに調製して使用(d)PC−12細胞に対する神経突起伸長の誘導および被験薬の接触 10%FBS,5%HS,DMEMに懸濁した対数増殖期のPC−12細胞を用意し、2000 cells/well/50 μLでコラーゲンコート96well plateに播種した。翌日、50 ng/mL NGFを含むDMEMに交換して72時間インキュベートした。72時間後に50 ng/mL NGFを含むDMEMで適当濃度に希釈した被験薬を50 μL/wellずつ添加した。(e)PC−12細胞の細胞生存率測定 被験薬添加24時間後にCell Titer 96 aqueous one solutionを10 μL/wellずつ添加し、2時間インキュベート後にSpectra Max Plus 384(Molecular Device)を用いて波長490 nmの吸光度を測定した。各被験薬濃度における生存細胞数から、細胞生存率を算出した。(f)SH−SY5Y細胞に対する神経突起伸長の誘導および被験薬の接触 10%FBSを含むRPMI1640に懸濁した対数増殖期のSH−SY5Y細胞を用意し、5000 cells/well/50 μLで96well plateに播種した。翌日、1 μL ATRAを含むRPMI1640に交換して72時間インキュベートした。72時間後に1 μL ATRAを含むRPMI1640で適当濃度に希釈した被験薬を50 μL/wellずつ添加した。(g)SH−SY5Y細胞の細胞生存率測定 被験薬添加24時間後にWST−8を10 μL/wellずつ添加し、2時間インキュベート後にSpectra Max Plus 384を用いて波長450nmの吸光度を測定した。各被験薬濃度における生存細胞数から、細胞生存率を算出した。(h)PC−12およびSH−SY5Y細胞の神経突起評価 被験薬添加24時間後に各well中の細胞の顕微鏡像(接眼x10、対物x20)をデジタルカメラで撮影し、細胞300個当たりの神経突起を有する細胞の割合を求めた。なお、細胞体の大きさの2倍より長い突起を神経突起と判断した。神経突起を有する細胞の割合は、下式により細胞毒性による神経突起破綻の影響を補正した。その補正値から、各被験薬の神経突起に対する50%阻害濃度(IC50値)を算出した。 A = B/C A:神経突起を有する細胞の割合(補正値) B:神経突起評価により求めた神経突起を有する細胞の割合 C:細胞生存率(i)HCT116細胞に対する細胞増殖阻害活性測定 RPMI1640に懸濁した対数増殖期のHCT116細胞を、1000 cells/well/50 μLで96 well plateに播種した。翌日、適当濃度に希釈した被験薬を各wellに50 μLずつ添加した。96時間インキュベート後にWST−8を10 μL/wellずつ添加して2時間インキュベート後、Spectra Max Plus 384を用いて波長450 nmの吸光度を測定した。各被験薬濃度における生存細胞数から、細胞増殖に対するIC50値を算出した。[2]PC−12細胞使用時の結果 ラット副腎由来褐色細胞腫であるPC−12細胞を用いて各種被験薬の神経突起消失作用を確認した。今回、PNを発現する被験薬としてPaclitaxel,Vincristine,Colchicine,Docetaxel,VindesineおよびVinorelbineの6種を、発現しない被験薬としてDoxorubicin(S期停止作用を有するDNAおよびRNAポリメラーゼ阻害剤)およびBI2536(G2/M期停止作用を有するPLK1阻害剤)を用いた。 NGFにより神経細胞様に分化させたPC−12細胞に各被験薬を接触させ、神経突起評価および細胞生存率測定を行った。一般的に、抗がん剤の安全域を求めるためには、毒性を示す濃度域と抗腫瘍活性を示す濃度域とを比較する必要がある。そこで各抗がん剤が有する抗腫瘍活性の指標としてHCT116細胞の細胞増殖阻害活性を測定し、IC50値を算出した。さらに、各抗がん剤の(1)神経突起に対するIC50値および(2)HCT116細胞の細胞増殖に対するIC50値より、PNの指標として(1)/(2)の値(以下、index of neurotoxicity;IN値と記述)を算出した(表3)。 その結果、PNを発現しない被験薬に比べてPNを発現する被験薬はいずれも低いIN値を示した。さらに、PNを発現する被験薬について、臨床におけるFPNは被験薬ごとに異なっている(表3)が、いずれも同等のIN値を示した。よって、本結果からはPNの有無は判断できるがFPNを予測することは難しいと考えられた。[3]SH−SY5Y細胞使用時の結果 ヒト神経芽細胞腫であるSH−SY5Y細胞を用いて各種被験薬の神経突起消失作用を確認した。なお、PNを発現する被験薬としてPaclitaxel,Vincristine,Colchicine,Docetaxel,VindesineおよびVinorelbineの6種を、発現しない被験薬としてDoxorubicinおよびBI2536を用いた。 ATRA処置によりSH−SY5Y細胞に神経突起の伸長を誘導した。神経突起伸長を誘導したSH−SY5Y細胞に各被験薬を接触させ、神経突起評価および細胞生存率測定を行った。PNの指標としては、PC−12細胞使用時と同様に、IN値を使用した(表4)。 PNを発現する被験薬はいずれも、PNを発現しないDoxorubicinおよびBI2536に比べて低いIN値を示す傾向が認められた。しかし、PNを発現し、かつ臨床において高いFPNを示すPaclitaxelおよびVincristineのIN値が大きいこと(表4)から、本結果からはPNの有無は判断できるがFPNを予測することは困難と考えられた。<実施例1:FPNと高い相関を示す評価系の確立:PC−12細胞およびSH−SY5Y細胞を用いた神経突起の再伸長レベルの評価>[1]材料および方法(a)細胞 ラット副腎由来褐色細胞腫PC−12細胞:理研セルバンクより購入 ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞、ATCCより購入(b)試薬 Dulbecco's modified eagle's medium(DMEM)(Sigma Aldrich) RPMI1640(Sigma Aldrich) Fetal Bovine Serum(FBS)(Biofill) Horse Serum(HS)(DSP) ペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco BRL) 2.5S Nerve Growth Factor(NGF),Mouse(Millipore) Dimethylsulfoxide(DMSO)(和光純薬工業) All-Trans Retinoic Acid(ATRA)(和光純薬工業)(c)被験薬 Vincristine(Sigma Aldrich) Paclitaxel(Sigma Aldrich) Docetaxel(Fluka) Colchicine(東京化成工業株式会社) Vindesine(Sigma Aldrich) Vinorelbine(Sigma Aldrich) *すべての被験薬はDMSOにより10 mMに調製して使用(d)PC−12細胞に対する神経突起伸長の誘導および被験薬の接触 10%FBS、5%HS、DMEMに懸濁した対数増殖期のPC−12細胞を用意し、2000 cells/well/50 μLでコラーゲンコート96well plateに播種した。翌日、50 ng/mL NGFを含むDMEMに交換して72時間インキュベートした。72時間後に50 ng/mL NGFを含むDMEMで適当濃度に希釈した被験薬を50 μL/wellずつ添加した。なお、アポトーシス誘導による非特異的な神経突起消失の影響を無視するため、被験薬接触後95%以上の細胞が神経突起を消失する最低濃度を事前に求め、その濃度で評価を行った。(e)SH−SY5Y細胞に対する神経突起伸長の誘導および被験薬の接触 10%FBSを含むRPMI1640に懸濁した対数増殖期のSH−SY5Y細胞を用意し、5000 cells/well/50 μLで96 well plateに播種した。翌日、1 μL ATRAを含むRPMI1640に交換して72時間インキュベートした。72時間後に1 μL ATRAを含むRPMI1640で適当濃度に希釈した被験薬を50 μL/wellずつ添加した。なお、アポトーシス誘導による非特異的な神経突起消失の影響を無視するため、被験薬接触後95%以上の細胞が神経突起を消失する最低濃度を事前に求め、その濃度で評価を行った。(f)神経突起の再伸長レベルの評価 PC−12もしくはSH−SY5Y細胞に被験薬を接触させ24時間後、PC−12細胞については50 ng/mL NGFを含むDMEM、SH−SY5Y細胞については1 μL ATRAを含むRPMI1640に培地を交換した。培地交換24および48時間後に各well中の細胞の顕微鏡像(接眼x10、対物x20)をデジタルカメラで撮影し、細胞300個当たりの神経突起を再伸長した細胞の割合を求めた。なお、細胞体の大きさの2倍より長い突起を神経突起と判断した。[2]PC−12細胞使用時の結果 被験薬除去後24および48時間において神経突起を再伸長した細胞の割合を図1に示す。評価の結果、Vincristine接触後に神経突起を再伸長した細胞の割合はPaclitaxel接触後の細胞と同程度であった。また、Paclitaxelに比べて、Colchicine接触後に神経突起を再伸長した細胞の割合は有意に高かった。さらに、Colchicineに比べて、Docetaxel,VindesineおよびVinorelbine接触後に神経突起を再伸長した細胞の割合はさらに高かった。[3]SH−SY5Y細胞使用時の結果 PaclitaxelとVincristineは同程度の再伸長レベルを示した。一方、Paclitaxelに比べて、Docetaxelは有意ではないが高い再伸長レベルを、VindesineおよびVinorelbineは有意に高い再伸長レベルを示した。[4]臨床でのFPNとの相関 各被験薬のFPN、および今回の評価結果より得たPC−12細胞の神経突起の再伸長レベルを表5に示した。なお、神経突起の再伸長レベルは、被験薬除去後48時間においてPaclitaxelに比べて有意に再伸長レベルが高かった順に+++(P<0.001)、++(P<0.01)、+(P<0.05)もしくは−(not significant)で示した。PC−12細胞を用いた評価結果より、評価した全ての被験薬について、FPNと神経突起の再伸長レベルは逆相関していた。なお、SH−SY5Y細胞を用いた評価結果においても、FPNと神経突起の再伸長レベルは逆相関している傾向が認められ、本結果と臨床におけるFPN値に高い相関があることが確認された。このことから、本試験方法を用いることで、PNの有無のみならず、FPNも予測することが可能である。 (a)神経突起を伸長し得る細胞に被験成分を接触させるステップと、 (b)ステップ(a)で接触させた被験成分を除去するステップと、 (c)被験成分除去後に神経突起の再伸長レベルを測定するステップを含む、被験成分の末梢神経毒性評価方法。 神経突起を伸長し得る細胞が、ラット副腎由来褐色細胞腫のPC−12細胞またはヒト神経芽細胞腫のSH−SY5Y細胞である請求項1に記載の方法。 被験成分が、微小管に作用する成分である請求項1又は2に記載の方法。 ステップ(a)で接触させる被験成分の濃度が、被験成分接触後実質的にすべての細胞の神経突起が消失する濃度である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 被験成分接触後実質的にすべての細胞の神経突起を消失する濃度が、95%以上の細胞の神経突起が消失する濃度である請求項4に記載の方法。 ステップ(b)の除去が、被験成分接触後24時間以内に行われる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 ステップ(c)の測定が、被験成分除去後0−72時間に行われる請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。 ステップ(c)の測定が、再伸長した細胞数の割合を測定するものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。 ステップ(c)において、被験成分除去後24−48時間後の、一定細胞数当たりの神経突起を再伸長した細胞数の割合を、他の被験成分の再伸長した細胞数の割合と比較することで、当該被験成分と当該他の被験成分との末梢神経毒性の発現頻度の相対的な高低を判定する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法により、末梢神経毒性の発現頻度が低い成分をスクリーニングする方法。 請求項10に記載のスクリーニング方法により得られた末梢神経毒性の発現頻度が低い成分。 【課題】被験成分によって引き起こされる末梢神経毒性の発現頻度をin vitroで評価する方法に関する。また、該方法により、末梢神経毒性の発現頻度が低い成分をスクリーニングする方法の提供。【解決手段】 (a)神経突起を伸長し得る細胞に被験成分を接触させるステップと、 (b)ステップ(a)で接触させた被験成分を除去するステップと、 (c)被験成分除去後に神経突起の再伸長レベルを測定するステップを含む、被験成分の末梢神経毒性評価方法。【選択図】なし


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