生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アディポネクチン低下抑制組成物
出願番号:2012182125
年次:2014
IPC分類:A61K 36/48,A61P 43/00,A61P 3/10,A61P 3/04,A23L 1/30


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和根崎 智 JP 2014040378 公開特許公報(A) 20140306 2012182125 20120821 アディポネクチン低下抑制組成物 不二製油株式会社 000236768 和根崎 智 A61K 36/48 20060101AFI20140207BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140207BHJP A61P 3/10 20060101ALI20140207BHJP A61P 3/04 20060101ALI20140207BHJP A23L 1/30 20060101ALN20140207BHJP JPA61K35/78 JA61P43/00 111A61P3/10A61P3/04A23L1/30 B 2 1 OL 6 4B018 4C088 4B018MD20 4B018MD58 4B018ME01 4B018ME03 4C088AB59 4C088AC04 4C088CA22 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZA70 4C088ZC35 4C088ZC41本発明は大豆β-コングリシニン由来加水分解物を有効成分とするアディポネクチン低下抑制組成物に関する。 近年、食生活の欧米化に伴い肥満や糖尿病といった生活習慣病が社会的問題となっている。WHOの発表によると糖尿病患者数は2億2千万人(2011年)であり、今後も増加することが危惧されている。 アディポネクチンは脂肪細胞から合成、分泌されるアディポサイトカインの一種であり、244アミノ酸からなる脂肪組織特異的な分泌タンパク質である。これまでに肥満、高インスリン血症およびインスリン抵抗性とアディポネクチンが負の相関を持つことが報告されている。脂肪細胞の肥大化は脂肪組織の炎症性変化をもたらし、炎症性サイトカインであるTNF−α(Tumor Necrosis Factor)の刺激によりアディポネクチンの低下が引き起こされる。アディポネクチン低下を抑制する組成物としてはプロポリス由来のブレニル桂皮酸誘導体が報告されている(特許文献1)。 アディポネクチンの分泌促進効果を有するものとしてはBグループ大豆サポニン(特許文献2)や大豆β-コングリシニン蛋白が知られている(特許文献3)。また、大豆蛋白質加水分解物がアディポネクチン分泌を増強することが知られている(特許文献4)。特開2010−150161号公報特開2006−273786号公報WO2005/092367号公報特開2009−209080号公報 本発明は糖尿病及び/又は肥満の予防に有効なアディポネクチン低下抑制効果を有する、新規な組成物を提供することを目的とした。 本発明者は上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、大豆β-コングリシニンの加水分解物がアディポネクチン低下を抑制するという知見を得た。さらに検討を進めた結果、大豆β-コングリシニン加水分解物の疎水性画分がさらに強くアディポネクチン低下を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、(1)大豆β-コングリシニン加水分解物を有効成分とするアディポネクチン低下抑制組成物、(2)大豆β-コングリシニン加水分解物の疎水性画分を有効成分とするアディポネクチン低下抑制組成物、である。 本発明により、アディポネクチン低下を抑制する新規な組成物が提供可能になったものである。食品または医薬品として幅広く利用可能であり、これによりアディポネクチンが関与するメタボリックシンドロームに基づく種々の病態の治療・予防に役立つことが期待される。TNF−α刺激によるアディポネクチン遺伝子低下に対する試験物質の抑制作用を比較したグラフである。以下、本発明について詳細に説明する。(大豆β-コングリシニン) 大豆に含まれる蛋白質は、超遠心分析による沈降係数から、2S,7S,11S及び15Sの各グロブリン画分に分類される。このうち、7Sグロブリン画分の主要成分であるβ-コングリシニンは、11Sグロブリン画分の主要成分であるグリシニンと並んで主要な構成蛋白質であり、大豆蛋白質中に約20%含まれる。大豆β-コングリシニンの原料となる大豆は産地もしくは種類又は調製方法等によって特に限定されず、大豆蛋白質からβ-コングリシニンを分画する方法も公知の方法を用いればよいが、具体的には例えば以下の方法のようにして調製することができる。 (1)タン・シバサキの方法(Thahn,V,H,and Shibasaki,K.,J.Agric.Food Chem.,24,117,1976) (2)等電点沈殿分離法(特開昭55−124457号公報)上記に例示された方法によってグリシニンを選択的に除去した後、β-コングリシニンを通常の分離大豆蛋白質の作製方法によって調製することができる。市販の高純度大豆β-コングリシニン素材「リポフFN700」(不二製油株式会社製)を用いてもよい。(大豆β-コングリシニン加水分解物) 本発明の大豆β-コングリシニン加水分解物は、大豆β-コングリシニンを酸処理法や、プロテアーゼ処理法等、公知の技術を用いて加水分解することで得られる。ここで、大豆β-コングリシニン含有量としては蛋白質中30重量%以上、好ましくは50重量%以上の試料を加水分解に供することが望ましい。また、分解の程度は、加水分解物中の分子量10,000以上の画分の割合が約30重量%以下となるまで行うことが好ましい。(大豆β-コングリシニン加水分解物の疎水性画分) 本発明の疎水性画分とは、水系溶媒でスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤に吸着し、かつ80%(v/v)含水エタノールで溶出される物質である。具体的にはダイヤイオンHP-20(三菱化学社製)が挙げられる。この性質を有する大豆β-コングリシニン加水分解物の疎水性画分は公知の技術により得ることができ、例えば合成吸着樹脂処理や、有機溶剤等の液-液分配により調製することができる。合成吸着材に吸着させ、アルコール等の有機溶剤にて溶出する方法は簡便であるため望ましい。合成吸着樹脂としてはダイヤイオン(三菱化学社製)の他、セパビーズ(三菱化学社製)、アンバーライト(住友化学社製)の使用が例示できる。合成吸着樹脂はタンクに投入するか、またはカラムに充填して大豆β-コングリシニン加水分解物を接触させる。吸着した画分を例えば80%(v/v)含水エタノールで溶出するなどして疎水性画分を効率よく回収することができる。(組成物の用途) 本発明の大豆β-コングリシニン加水分解物を有効成分とするアディポネクチン低下抑制組成物は、一般的な食品の形態である肉加工食品、各種惣菜、菓子類、パン類、米飯や清涼飲料水、アルコール飲料、タブレットやチュアブル錠等の栄養補助食品など様々な食品に配合することができる。医薬品の形態として供する場合は、液体、散薬、錠剤、カプセル等の種々の形態で使用することができる。また、愛玩動物用の食品やサプリメントに配合することもできる。以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。なお、例中%は断りのない限り重量基準を意味する。(製造例1)大豆β-コングリシニン加水分解物の調製 高純度大豆β-コングリシニン素材粉末(不二製油社製「リポフFN700」、β-コングリシニン含有量:約80%)25gに水1000gを加え、ホモゲナイザーにて分散させた。pHを2.0に調整し、ペプシン(シグマアルドリッチ社製、SIGMA P-6887)を対基質(β-コングリシニン)1%添加し、2時間反応させた。その後pHを8.0に調整し、トリプシン(シグマアルドリッチ社製、SIGMA T-4799)を対基質1.7%、α-キモトリプシン(シグマアルドリッチ社製、SIGMA C-4129)を対基質0.03%添加し、2時間反応させた。加熱失活後、10,000G×10分間遠心分離を行い、上清を回収した。これを凍結乾燥し粉末を23g得た。別途、後述の方法で分子量分布を測定したところ、分子量10,000以下の割合が約80%であった。(製造例2)大豆β-コングリシニン加水分解物疎水性画分の調製 製造例1で得られた大豆β-コングリシニン加水分解物5gを水100gに溶解した。合成樹脂ダイヤイオンHP-20(三菱化学社製)を充填したカラムに通過し、疎水性画分を吸着させた。非吸着画分を親水性画分とした。その後、80%(v/v)エタノールにて溶出させ、減圧濃縮後に凍結乾燥し、疎水性画分3gを得た。後述の方法で分子量分布を測定したところ、分子量10,000以下の割合が約90%であった。[分子量分布の測定] 蛋白質加水分解物の分子量分布は、以下のゲルろ過カラムを用いたHPLC法により測定した。ペプチド用ゲルろ過カラムを用いたHPLCシステムを組み、分子量マーカーとなる既知のペプチドをチャージし、分子量と保持時間の関係より検量線を求めた。加水分解物(1%)を10,000G×10分間遠心分離を行い、回収した上清をゲルろ過用溶媒で2倍に希釈、その5μlをHPLCにアプライし、先の検量線に基づき分子量分布を求めた。(ゲルろ過カラム:Superdex Peptide 7.5/300GL、溶媒:1%SDS/10mMリン酸緩衝液、pH8.0、25℃、流速:0.25ml/min、検出:OD220nm)(実施例) 上記により調製した大豆β-コングリシニン加水分解物のアディポネクチン発現抑制効果に関し、以下の実験により比較を行った。 [成熟脂肪細胞の調製] マウス由来前駆脂肪細胞3T3−F442(DSファーマより購入)を24ウェルプレートに撒き、10%牛胎児血清(FBS)含有DMEM培地(ライフサイエンス社製)にて5%CO2、37℃で培養した。細胞がコンフルエントになった時点でさらに2日間培養し、10μg/mLインスリン(シグマ社製)、0.25μMデキサメタゾン(シグマ社製)、0.5mMイソブチルメチルキサンチン(シグマ社製)を含む10%FBS含有DMEM培地にて2日間培養した。その後2日間おきに10μg/mLインスリン含有10%FBS含有DMEM培地を交換し、10日間培養した。細胞はほぼ100%成熟脂肪細胞へ分化した。[腫瘍壊死因子TNF−α刺激後の培養] 製造例1,2で得た試験物質を10%牛胎児血清(FBS)含有DMEM培地に溶解し、終濃度1mg/mLとなるように添加し9時間培養した。その後マウスTNF−α(R&D Systems社製)を終濃度10ng/mLとなるように添加し、さらに15時間培養した。なお、TNF−αを添加しないもの、TNF−αのみのもの、及び試験物質のかわりにピオグリタゾン(和光純薬社製)を10μMとなるように添加したもの(陽性コントロール)を対照とした。[培養細胞のアディポネクチン発現量の比較] 培養終了後に培地を取り除き、細胞をPBSにて2回洗浄した。細胞にISOGEN II(ニッポンジーン社製)を加え、その後プロトコールに従ってRNAを回収した。得られたRNA中の遺伝子発現量をリアルタイムPCRにより定量した。TaqManRNA−to−Ct 1stepkit(ライフサイエンス社製)のプロトコールに従い、内因性遺伝子としてβアクチン遺伝子発現量を標的遺伝子としてアディポネクチン遺伝子発現量を測定し、補正後、TNF−α刺激なしのものを1とした場合の相対定量を行った。(図1) 図1に示すように、大豆β-コングリシニン加水分解物はTNF−α刺激によるアディポネクチン遺伝子低下を有意に抑制した。特に疎水性画分にその効果が強く、インスリン抵抗性改善薬である、陽性コントロールのピオグリタゾン10μMに匹敵するものであった。 本発明の組成物は一般的な食品の形態としても摂取可能であり、日々の食生活を通じて、あるいは医薬品として、アディポネクチンが関与する種々のメタボリックシンドロームに起因する疾病の治療・予防に有用である。大豆β-コングリシニン加水分解物を有効成分とする、アディポネクチン低下抑制組成物。大豆β-コングリシニン加水分解物の疎水性画分を有効成分とする、アディポネクチン低下抑制組成物。 【課題】糖尿病及び/又は肥満の予防に有効なアディポネクチン低下抑制効果を有する、新規な組成物を提供すること。 【解決手段】大豆蛋白質中に含まれるβ-コングリシニンから得られる加水分解物、その中でも特に、合成吸着剤に吸着し、80%(v/v)含水エタノールで溶出される疎水性画分が、アディポネクチン低下を効果的に抑制することを見出した。これは一般的な食品用や医薬品用の組成物として幅広く利用することが可能である。【選択図】図1


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