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タイトル:公開特許公報(A)_2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法
出願番号:2012174480
年次:2014
IPC分類:C07C 37/11,C07C 39/12,C07B 61/00


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森本 功治 土肥 寿文 北 泰行 JP 2014031351 公開特許公報(A) 20140220 2012174480 20120806 2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法 和光純薬工業株式会社 000252300 学校法人立命館 593006630 森本 功治 土肥 寿文 北 泰行 C07C 37/11 20060101AFI20140124BHJP C07C 39/12 20060101ALI20140124BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140124BHJP JPC07C37/11C07C39/12C07B61/00 300 8 OL 13 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC23 4H006BA60 4H006BA66 4H006BB14 4H006BC10 4H006FC54 4H006FE13 4H039CA41 4H039CL19 本発明は、例えばディスコチック液晶等の機能性材料の原料として有用なヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法に関し、さらに詳しくは、原料としてカテコール類を用いる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法に関する。 ディスコチック液晶は、一般的に円盤状の中心母核とその母核から放射状に延びる側鎖を有し、その構造ゆえに特異な液晶性を示すことから、近年液晶分野において様々な研究がなされている。ディスコチック液晶の中心母核となる化合物としては、例えばベンゼン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、トリフェニレン誘導体、シクロヘキサン誘導体、ポルフィリン誘導体等が挙げられるが、なかでもトリフェニレン誘導体は、光学的機能性素子の形成に有効なディスコチックネマチック相を形成しやすいことから、近年注目を集めている化合物である。 このトリフェニレン誘導体の中でも、特に2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(以下、HHTPと略記する場合がある。)は、6つのヒドロキシル基に適当な側鎖を容易に導入できることなどから、従来より様々な製造方法が報告されている。 具体的には、例えば原料として1,2−ジアルコキシベンゼンを用い、化学的に安定な2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレンを合成する工程と、この工程で得た2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレンを脱アルキル化工程に付す二段階の工程を経て、段階的にHHTPを製造する方法やカテコール(1,2−ジヒドロキシベンゼン)から直接HHTPを製造する方法等が知られている。 段階的にHHTPを製造する方法としては、例えば塩化第二鉄等を用い、2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレンを合成した後(例えば特許文献1、非特許文献1等)、三臭化ホウ素(例えば非特許文献2等)、臭化水素酸(例えば非特許文献3等)又はヨウ化水素酸(例えば特許文献2等)等の存在下で脱アルキル化する方法等がある。 一方で、直接HHTPを製造する方法としては、例えばカテコールと遷移金属化合物を反応させてHHTP、HHTPの遷移金属錯体及びHHTPのキノン体等の混合物を得た後、この混合物を亜鉛、マグネシウム、ハイドロサルファイトナトリウム等の還元剤を用いて還元する方法(例えば特許文献3等)、例えばカテコールをパラクロラニル等の有機酸化剤を用いて酸化させる方法(例えば特許文献4等)、例えば過硫酸アンモニウム等の過酸化物を強酸の存在下で反応させる方法(例えば特許文献5等)、例えばモリブデン触媒、タングステン触媒又はレニウム触媒の存在下でカテコールと過酸化水素を反応させる方法(例えば特許文献6等)、例えば酸化第二鉄等の金属酸化物及び不揮発性の強酸を用いて製造する方法(例えば特許文献7等)等がある。特開平7−330650号公報特開平8−119894号公報特開平9−118642号公報特開2005−225812号公報WO2005/037754号公報特開2008−115117号公報WO2009/020166号公報H. Naarmann et.al., Synthesis, 1994, 477.D. R. Beattie et al., J. Mater. Chem., 1992, 2, 1261.A. Zelcer et al., Chem Mater., 2007, 19, 1992. しかしながら、特許文献1ないし2及び非特許文献1ないし3の方法は、原料である1,2−ジアルコキシベンゼンが高価であるため、工業的製法として満足のいく方法であるとは言い難い。非特許文献2の方法で用いる三臭化ホウ素は、腐食性が高い上に、反応性が非常に高く空気中の湿気で容易に分解する等の理由から工業的規模での製造では問題がある。また、非特許文献3や特許文献2の方法では、過剰のハロゲン化水素酸を使用するため、廃酸が大量に生じることが問題視されているばかりでなく、ヨウ化水素酸を用いる脱アルキル化反応において、沸点が低く有毒なヨウ化メチルの副生を伴うといった問題がある。 特許文献3や特許文献6ないし7の方法は、鉄、モリブデン等の重金属を必要とするため、生成物のHHTP中に重金属が不純物として混入し易くなる。このような理由から、重金属の混入が不純物量でも問題となる液晶分野や半導体分野では、このような重金属を用いる方法は好まれない。特許文献5ないし7の方法は、硫酸等の鉱酸の存在下で好ましく行われるため、廃酸が大量に生じるばかりでなく、反応後の後処理の際に大がかりな固液分離装置が必要になり、分離処理に時間がかかるなど、固液分離が容易でなく工業的な利用には難点があるという問題がある。また、特許文献4の方法は、重金属を必要としない点は好ましいが、HHTPの収率が低く、工業的製法として満足のいく方法であるとは言い難い。このようなことから、今日においても、環境負荷低減を考慮しつつ不純物が混入する可能性をできるたけ排除した、工業的製法に有利なHHTPの製造方法の確立が求められている状況にある。 本発明は、上述した状況に鑑みなされたもので、重金属や硫酸等の鉱酸を使用しない等の環境負荷低減を考慮しつつHHTP類の実用的な製造方法を提供することにある。本発明者らは、このような製造方法について鋭意研究を重ねた結果、酸化剤として超原子価ヨウ素反応剤を用いてカテコール類の三量化反応を行い、次いで三量化反応後の反応液を還元反応に付すことで、上述した目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 本発明は、一般式(1)で示される2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法であって、一般式(2)で示されるカテコール類を超原子価ヨウ素反応剤の存在下で反応させる第1の工程と、前記第1の工程における反応液を還元剤で処理する第2の工程を含む、一般式(1)で示される2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法の発明である。(式中、6つのRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。)(式中、2つのRは上記に同じ。) 本発明の製造方法によれば、重金属を含有しないHHTP類を工業的規模で容易に製造できるばかりでなく、環境に有害な化合物を極力使用しない、廃酸の量を可能な限り削減できる等、環境負荷低減を考慮しつつ収率よくHHTP類を製造することができる。 また、本発明の製造方法は、硫酸等の鉱酸を使用しないため、従来法にあるような固液分離を行わなくてもHHTP類を単離することができる。すなわち、本発明の製造方法によれば、反応液をろ過し、次いでろ取した結晶について練り洗を行う等の簡便な操作でHHTP類を単離することができる。 本発明の製造方法は、原料としてカテコール類を用い、酸化剤として超原子価ヨウ素反応剤を用いて該カテコール類の三量化反応を行い(第1の工程)、次いで当該第1の工程における反応液を還元反応に付すことによって(第2の工程)、HHTP類を製造することを特徴とする。まずは、本発明の製造方法における第1の工程について詳述する。 本発明の第1の工程に係る一般式(2)で示されるカテコール類は、HHTP類を製造するための原料として用いられる。なお、これらの一般式(2)で示されるカテコール類は、市販のものを用いてもよいし、この分野で行われる一般的な方法により適宜合成したものを用いてもよい。(式中、2つのRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。) 本発明の製造方法によって得られるHHTP類は、下記一般式(1)で示されるものである。(式中、6つのRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。) 一般式(1)及び(2)におけるRで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、なかでも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、そのなかでも、塩素原子、臭素原子がより好ましい。 一般式(1)及び(2)におけるRで示される炭素数1〜3のアルキル基としては、直鎖状もしくは分枝状のいずれでもよく、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基が好ましく、そのなかでも、メチル基がより好ましい。なお、上述の具体例において、n−はnormal−体を表す。 一般式(1)及び(2)におけるRで示される炭素数1〜3のアルコキシ基としては、直鎖状もしくは分枝状のいずれでもよく、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられ、なかでも、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、そのなかでも、メトキシ基がより好ましい。なお、上述の具体例において、n−はnormal−体を表す。 一般式(1)及び(2)におけるRとしては、水素原子がより好ましい。 本発明の製造方法においては、一般式(2)で示されるカテコール類のうち、一般式(2)における2つのRがともに水素原子であるカテコールを用いることが好ましい。原料としてカテコールを用いることにより、一般式(1)における6つのRがすべて水素原子であるHHTPが得られる。 本発明の第1の工程に係る超原子価ヨウ素反応剤とは、3価又は5価の超原子価状態にあるヨウ素原子を含む反応剤のことをいう。超原子価ヨウ素反応剤は、酸化作用を有するため、重金属酸化剤と同様の反応性を示し、重金属酸化剤と比較して低毒性であり、安全性に優れるという特徴を有する。 本発明の第1の工程に係る超原子ヨウ素反応剤は、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されない。3価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えばヨードベンゼン系の超原子価ヨウ素反応剤、アダマンタン骨格を有する超原子価ヨウ素反応剤、テトラフェニルメタン骨格を有する超原子価ヨウ素反応剤等が挙げられる。ヨードベンゼン系の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えばフェニルイオジンジアセタート[ジアセトキシヨードベンゼン](以下、PIDAと略記する場合がある。)、フェニルイオジンビス(トリフルオロアセタート)[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンセン](以下、PIFAと略記する場合がある。)、ヒドロキシ(トシルオキシ)ヨードベンゼン(以下、HTIBと略記する場合がある。)、ヨードシルベンゼン等が挙げられる。以下に、これらの超原子価ヨウ素反応剤の構造式を示す。PIDA:式[A1]、PIFA:式[A2]、HTIB:式[A3]、ヨードシルベンゼン:式[A4]。 アダマンタン骨格を有する超原子価ヨウ素反応剤の具体例としては、例えば1,3,5,7−テトラキス−[4−(ジアセトキシヨード)フェニル]アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−[(4−(ヒドロキシ)トシルオキシヨード)フェニル]アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−[4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル]アダマンタン等が挙げられる。テトラフェニルメタン骨格を有する超原子価ヨウ素反応剤の具体例としては、例えばテトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタン等が挙げられる。これらの超原子価ヨウ素反応剤は、安定で取り扱い易く、高い酸化能を有する上に、脂溶性が高く、回収、再利用が可能である。 また、5価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えばデスマーチンペルヨージナン[Dess-Martin periodinane](以下、DMPと略記する場合がある。)、o−ヨードキシ安息香酸[o−iodoxybenzoic acid](以下、IBXと略記する場合がある。)等が挙げられる。以下に、これらの超原子価ヨウ素反応剤の構造式を示す。DMP:式[B1]、IBX:式[B2]。 本発明の製造方法においては、上述の超原子価ヨウ素反応剤のうち、3価の超原子価ヨウ素反応剤が好ましく、なかでも、ヨードベンゼン系の超原子価ヨウ素反応剤がより好ましく、そのなかでも、PIDAがさらに好ましい。PIDAは、安定で取り扱い易く、十分な高い酸化能を有するという特徴がある。 このように、本発明の製造方法においては、塩化鉄、酸化鉄、酸化モリブデン等の重金属酸化剤を使用しないため、重金属を全く含まないHHTP類を容易に製造することができる。なお、上述の超原子価ヨウ素反応剤は、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 上述の超原子価ヨウ素反応剤は、市販のものを用いてもよいし、この分野で行われる一般的な方法により適宜合成したものを用いてもよい。PIDAは、例えば酢酸中、ヨードベンゼンをペルオキソホウ酸ナトリウム(4水和物)(NaBO3・4H2O)を用いて酸化するか(例えばTetrahedron, 1989, 45, 3299、Chem. Rev., 1996, 96, 1123等)又はm−クロロ安息香酸(mCPBA)を用いて酸化する(例えばAngew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 3595等)ことにより合成すればよい。また、PIFAは、例えばPIDAをトリフルオロ酢酸と反応させることにより合成すればよい(例えばJ. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1985, 757等)。さらに、1,3,5,7−テトラキス−[4−(ジアセトキシヨード)フェニル]アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−[(4−(ヒドロキシ)トシルオキシヨード)フェニル]アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−[4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル]アダマンタン、テトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタンは、例えば特開2005−220122に記載の方法等で合成すればよい。 本発明の第1の工程において、上述した超原子価ヨウ素反応剤の使用量としては、実用的な量であれば特に制限されず、例えば一般式(2)で示されるカテコール類のmol数に対して、通常0.8〜10当量、好ましくは0.9〜5当量、より好ましくは1〜2当量である。超原子価ヨウ素反応剤の使用量が極めて少ない場合には、一般式(1)で示されるHHTP類の収率が低下する傾向にある。一方で、超原子価ヨウ素反応剤の使用量が非常に多い場合には、酸化反応が過剰に進行し、後述するキノン類が副生する傾向にある。 本発明の第1の工程においては、プロトン酸の存在下で反応を行うことが好ましい。プロトン酸を用いることにより、反応速度が向上する傾向にある。このようなプロトン酸としては、炭素数1〜20のスルホン酸、炭素数1〜10のカルボン酸、高分子系のプロトン酸等が挙げられる。このようなプロトン酸の具体例としては、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸等の炭素数1〜20のスルホン酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸等の炭素数1〜10のカルボン酸、例えばアンバ−ライト等の高分子系のプロトン酸等が挙げられ、なかでも、炭素数1〜20のスルホン酸が好ましく、そのなかでも、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸がより好ましい。このように、本発明の製造方法においては、硫酸のような鉱酸を使用しないため、大量の廃酸が生じることもなく、さらには、反応後の固液分離を行う必要もない。なお、これらのプロトン酸は、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 本発明の第1の工程において、上述したプロトン酸の使用量としては、実用的な量であれば特に制限されず、例えば一般式(2)で示されるカテコール類のmol数に対して、通常0.8〜10当量、好ましくは0.9〜5当量、より好ましくは1〜2当量である。プロトン酸の使用量が極めて少ない場合には、反応速度があまり向上しない傾向にある。 本発明の第1の工程は、通常、有機溶媒中で実施される。本発明の第1の工程において用いられる有機溶媒としては、原料であるカテコール類、生成物であるHHTP類、超原子価ヨウ素反応剤、並びにプロトン酸等に悪影響を及ぼさない有機溶媒であればよい。このような有機溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばクロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)等のハロゲン系溶媒、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール系溶媒、例えば2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等の含フッ素アルコール系溶媒、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール系溶媒、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、例えばエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート系溶媒、例えばアセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、例えば酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸s−ブチル、酢酸t−ブチル、酪酸エチル、酪酸イソアミル等のエステル系溶媒、例えばN−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン(N−メチルピロリドン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(ジメチルエチレン尿素)等のアミド系溶媒、例えばジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒のなかでも、例えば2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等の含フッ素アルコール系溶媒が好ましく、そのなかでも、2,2,2−トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールがより好ましい。これらの含フッ素アルコール系溶媒は、超原子価ヨウ素反応剤と併用することにより、目的物であるHHTP類の収率を向上させることができるばかりでなく、超原子価ヨウ素反応剤の使用量を減らすことができる。なお、上述の具体例において、n−はnormal−体を表し、s−はsec−体を表し、t−はtert−体を表す。 これらの有機溶媒は、上述した有機溶媒の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いる場合には、少なくとも含フッ素アルコール系溶媒を用いることが好ましい。含フッ素アルコール系溶媒と組み合わせる他の溶媒としては、上述した有機溶媒のうち、本発明の第1の工程に係るカテコール類、超原子価ヨウ素反応剤及びプロトン酸の有機溶媒に対する溶解性や分散性、さらには、当該カテコール類の反応性を考慮して適宜選択すればよい。 本発明の第1の工程において、上述の有機溶媒の使用量としては、実用的な量であれば特に制限されず、例えば一般式(2)で示されるカテコール類1mmol数に対して、通常0.1〜100mL、好ましくは0.2〜50mLである。 本発明の第1の工程において、含フッ素アルコール系溶媒を用いる場合の含フッ素アルコール系溶媒の使用量としては、有機溶媒全量を100重量部とした場合に、通常1〜100重量部、好ましくは2〜100重量部、より好ましくは5〜100重量である。 本発明の第1の工程における反応時の温度(反応温度)は、原料である一般式(2)で示されるカテコール類の三量化反応が効率よく進行し、一般式(1)で示されるHHTP類が収率よく得られる温度に設定することが望ましい。具体的な反応温度としては、通常−50〜100℃、好ましくは0〜40℃である。反応温度が−50℃未満の場合には、反応速度が極めて遅くなる傾向があり、さらには、有機溶媒の種類によっては、該有機溶媒が−50℃未満で凍結する場合があるため、一般式(1)で示されるHHTP類の収率が低下するおそれがある。一方で、反応温度が100℃を超える場合には、酸化反応が過剰に進行し、後述するキノン類が副生する傾向にある。 本発明の第1の工程における反応時の圧力は、原料である一般式(2)で示されるカテコール類の三量化反応が効率よく進行し、一般式(1)で示されるHHTP類が収率よく得られる圧力に設定することが望ましいが、三量化反応は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力でも問題なく進行する。通常は、特別な設備を必要としない常圧(0.09〜0.11MPa)条件下で反応を行う。 本発明の第1の工程における反応時間は、超原子価ヨウ素反応剤の種類、一般式(2)で示されるカテコール類に対する超原子価ヨウ素反応剤の使用量、プロトン酸の有無、種類及びその使用量、有機溶媒の種類及びその使用量、反応温度、並びに反応時の圧力等に影響を受ける場合がある。このため、望ましい反応時間は、一概に言えるものではないが、例えば通常0.1〜120時間、好ましくは1〜48時間である。 本発明の第1の工程では、目的物である一般式(1)で示されるHHTP類のほかにHHTP類の過剰酸化によって生じるキノン類が副生する。本発明の製造方法は、このようなキノン類を還元して、当該キノン類をHHTP類に変換する工程、すなわち、上述した本発明の第1の工程における反応液を還元剤で処理する第2の工程を含むことを特徴とする。次に、本発明の製造方法における第2の工程について詳述する。 本発明の第2の工程は、第1の工程における反応液を還元剤で処理する工程であるが、当該第2の工程は、反応液中に含まれるキノン類をHHTP類に還元できればよいため、該反応液には、副生成物であるキノン類のほか、第1の工程で生成するHHTP類や第1の工程に係る超原子価ヨウ素反応剤、プロトン酸、有機溶媒等の第1の工程で使用した原料や反応剤以外のものが含まれていてもよい。 本発明の第2の工程に係る還元剤の好ましい具体例としては、例えばマグネシウム、アルミニウム等の金属、水素、硫化水素、二酸化硫黄、ハイドロサルファイトナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ギ酸、アスコルビン酸等が挙げられ、なかでも、ハイドロサルファイトナトリウムが好ましい。このように、本発明の製造方法においては、亜鉛、塩化スズ等の重金属還元剤を使用しないため、重金属を全く含まないHHTP類を容易に製造することができる。なお、これらの還元剤は、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 本発明の第2の工程において、上述した還元剤の使用量としては、実用的な量であれば特に制限されず、例えば一般式(2)で示されるカテコール類100mgに対して、通常12mmol以下、好ましくは0.5〜10mmol、より好ましくは1〜5mmolである。還元剤の使用量が極めて少ない場合には、還元反応が十分に進行せず、一般式(1)で示されるHHTP類の収率が低下する傾向にある。 本発明の第2の工程においては、上述した還元剤の効果を高めるために、3級アミンを還元処理系内に共存させてもよい。このような3級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン等が挙げられる。また、これらの3級アミンの使用量としては、実用的な量であれば特に制限されず、例えば還元剤のmol数に対して、通常0.25〜5当量、好ましくは0.4〜2当量、より好ましくは0.5〜1.5当量である。 上述した還元剤や3級アミンは、反応液に直接加えてもよいし、溶媒に溶解させたものを加えてもよい。当該還元剤や3級アミンを溶媒に溶解させる場合の溶媒としては、本発明の第1の工程において用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられるほか、水を挙げることができる。 本発明の第2の工程において、上述の溶媒の使用量としては、実用的な量であれば特に制限されず、例えば上述した還元剤や3級アミンを溶媒に溶解させたもの(溶液)の濃度が0.01〜5Mとなるようにその使用量を適宜決定すればよい。 本発明の第2の工程における反応時の温度(反応温度)は、第1の工程において副生するキノン類の還元反応が効率よく進行し、一般式(1)で示されるHHTP類が収率よく得られる温度に設定することが望ましい。具体的な反応温度としては、通常0〜100℃、好ましくは0〜40℃である。反応温度が0℃未満の場合には、反応速度が極めて遅くなる傾向があり、さらには、溶媒の種類によっては、該溶媒が0℃未満で凍結する場合があるため、一般式(1)で示されるHHTP類の収率が低下するおそれがある。 本発明の第2の工程における反応時の圧力は、第1の工程において副生するキノン類の還元反応が効率よく進行し、一般式(1)で示されるHHTP類が収率よく得られる圧力に設定することが望ましいが、還元反応は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力でも問題なく進行する。通常は、特別な設備を必要としない常圧(0.09〜0.11MPa)条件下で反応を行う。 本発明の第2の工程における反応時間は、還元剤の種類、一般式(2)で示されるカテコール類に対する還元剤の使用量、溶媒の種類及びその使用量、反応温度、並びに反応時の圧力等に影響を受ける場合がある。このため、望ましい反応時間は、一概に言えるものではないが、例えば通常0.01〜72時間、好ましくは0.1〜24時間である。 本発明の第2の工程は、上述したように、還元剤の種類及びその使用量等によって反応時間を分単位とすることもできるので、当該第2の工程を、例えば第1の工程の後処理操作と一緒に行ってもよい。具体的には、例えば第1の工程の反応液を0.1Mのハイドロサルファイトナトリウム水溶液を用いて分液抽出する操作を第2の工程に代えてもよい。 本発明の製造方法によって得られたHHTP類は、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作により単離することができる。単離方法の具体例としては、例えば反応液に、メチルエチルケトン、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水等を用いて抽出操作を行い、次いで抽出液中の抽出溶媒を留去した後、得られた結晶をろ取し、この結晶を例えばヘキサン、メタノール、ジエチルエーテル、アセトン等の適当な有機溶媒で洗浄するか、あるいはヘキサン、メタノール、ジエチルエーテル、アセトン等の適当な有機溶媒と水とで練り洗等を行うことにより、HHTP類を単離することができる。また、抽出液中の抽出溶媒を留去した後、熱時ろ過を行うことにより、より高純度のHHTP類を単離することができる。なお、熱時ろ過の際には、例えば珪藻土、活性炭等のろ過助剤を併用してもよい。 以上述べてきたように、本発明者らは、カテコール類を用いて直接HHTP類を製造する方法において、酸化剤として超原子価ヨウ素反応剤を用いてカテコール類の三量化反応を行い、次いで三量化反応後の反応液を還元反応に付すことにより、HHTP類を製造できる方法を見出した。本発明の製造方法は、重金属や硫酸等の鉱酸を使用しない等の環境負荷低減を考慮しつつ収率よくHHTP類を得ることができる優れた方法である。すなわち、本発明の製造方法は、重金属フリーの方法であるため、重金属を全く含まないHHTP類を容易に製造することができる。さらには、従来法にあるような固液分離を行わなくてもHHTP類を単離できるため、工業的スケールでも、練り洗等の簡便な方法で安定してHHTP類を製造することができる。 以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。 実施例1 本発明の製造方法によるHHTPの合成 室温下、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール50mL中に、カテコール550mg(5mmol;和光純薬工業株式会社製)を加える。さらに、フェニルイオジンジアセタート(PIDA)1.61g(5mmol;東京化成工業株式会社製)とメタンスルホン酸980mg(10mmol;ナカライテスク株式会社製)の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール10mLの溶液を別途調製する。先のカテコールを溶解させた溶液中に、別途調製したPIDAとメタンスルホン酸を溶解させた溶液を加え、室温下で10時間攪拌した(第1の工程)。反応終了後、反応液にハイドロサルファイトナトリウム(5mmol)を水50mLに溶解させた溶液を加え、さらに5分間攪拌した(第2の工程)。ここで得られた溶液をメチルエチルケトン100mLを用いて抽出後、得られた有機層を重曹水(pH約9に調整したもの)200mLを用いて洗浄し、次いで水200mLで洗浄した。洗浄後の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥後の有機層を減圧留去して得られた結晶をヘキサン及びジクロロメタンで洗浄し、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン217mg(0.67mmol:収率40%)を得た。なお、第1の工程終了後の反応液から、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により反応率を求めたところ、64.5%であった。以下に1H−NMRの測定結果と高速液体クロマトグラフィー(HHTP)による測定条件を示す。1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ(ppm):7.74(s,Ar),9.30(s,OH)カラム:Wakosil-II 5C18、移動相:CH3CN/H2O/Et3N/H3PO4=190/810/1/1、保持時間:HHTP;6.3min 以上の結果から、メタンスルホン酸等の有機プロトン酸の存在下、酸化剤として超原子価ヨウ素反応剤を用いてカテコール類の三量化反応を行い、次いで三量化反応後の反応液を還元反応に付すことにより、一般式(1)で示されるHHTP類を収率よく製造できることを明らかにした。本発明の製造方法は、従来法とは異なり、重金属や硫酸等の鉱酸を使用しないため、再結晶等の通常の操作で簡便にHHTP類を単離することができる。このような本発明の製造方法は、グリーンケミストリーの観点からも有用であり、環境負荷低減を考慮した実用的な製造方法であることを明らかにした。 本発明の製造方法は、例えばディスコチック液晶等の機能性材料の原料として有用なHHTP類を、カテコール類の三量化反応によって製造するにあたり、簡便な操作で当該HHTP類を収率よく製造することを可能にするものである。さらに、本発明の製造方法は、環境負荷低減を考慮しつつHHTP類を実用的に製造することを可能にするものである。一般式(1)で示される2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法であって、一般式(2)で示されるカテコール類を超原子価ヨウ素反応剤の存在下で反応させる第1の工程と、前記第1の工程における反応液を還元剤で処理する第2の工程を含む、一般式(1)で示される2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法。(式中、6つのRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。)(式中、2つのRは前記に同じ。)前記一般式(1)で示される2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類が2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンであり、前記一般式(2)で示されるカテコール類がカテコールである、請求項1に記載の製造方法。前記超原子価ヨウ素反応剤が、フェニルイオジンジアセタートである、請求項1に記載の製造方法。前記第1の工程を、さらにプロトン酸の存在下で実施する、請求項1に記載の製造方法。前記プロトン酸が、メタンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸から選ばれるものである、請求項4に記載の製造方法。前記第1の工程を、含フッ素アルコール系溶媒を含む溶媒中で実施する、請求項1に記載の製造方法。前記第1の工程を、−50〜100℃で実施する、請求項1に記載の製造方法。前記還元剤が、ハイドロサルファイトナトリウムである、請求項1に記載の製造方法。 【課題】簡便な操作で当該ヘキサヒドロキシトリフェニレン類を収率よく製造でき、さらには、環境負荷低減を考慮しつつ実用的な製造方法を提供する。【解決手段】一般式(1)で示される2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法であって、一般式(2)で示されるカテコール類を超原子価ヨウ素反応剤の存在下で反応させる第1の工程と、前記第1の工程における反応液を還元剤で処理する第2の工程を含む、一般式(1)で示される2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類の製造方法。(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。)【選択図】なし


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