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タイトル:公開特許公報(A)_睡眠作用又は鎮静作用増強剤、及び睡眠作用又は鎮静作用増強剤を含む製剤
出願番号:2012167245
年次:2014
IPC分類:A61K 31/11,A61P 25/20


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裏出 良博 黄 志力 JP 2014024800 公開特許公報(A) 20140206 2012167245 20120727 睡眠作用又は鎮静作用増強剤、及び睡眠作用又は鎮静作用増強剤を含む製剤 公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所 390000745 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 裏出 良博 黄 志力 A61K 31/11 20060101AFI20140110BHJP A61P 25/20 20060101ALI20140110BHJP JPA61K31/11A61P25/20 5 1 OL 23 特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日 平成24年5月28日 掲載アドレス: http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1755−5949.2012.00334.x/abstract 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB07 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA05 本発明は、新規な睡眠作用又は鎮静作用増強剤、当該睡眠作用又は鎮静作用増強剤を含む製剤、及び睡眠作用又は鎮静作用を増強する方法に関する。 現代社会ではストレスや24時間型の生活習慣から不眠に悩む人が増加する傾向にある。厚生労働省で2003年から始まった「健康づくりのための睡眠指針検討会」の報告では、「不眠で困っている人」の割合は21.4%にのぼり、深刻な問題となっている。従って快適な睡眠を望む人はこれまで以上に増加し、それと平行して不眠を改善する薬の需要は今後益々高まると考えられる。現在使用されている睡眠薬には、主として、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、抗ヒスタミン系、バルビツール酸塩系等の薬剤が知られている(特許文献1を参照)。特表2007−510733号公報 しかしながら、上記の睡眠薬の多くは、十分な睡眠作用を得るための投与量を投与すると、覚醒後の頭痛、不快感、身体依存等の副作用を伴うため、必ずしも自然な睡眠を得られるとはいえない。また、当該副作用を抑えるために、睡眠薬の投与量を減少させると、主効果である十分な睡眠作用が得られないという問題があった。 従って、睡眠薬による副作用を抑制しつつ、より快適な睡眠を得られる治療薬の開発は重要な事項である。 本発明は、上記課題を解決するために、新規な睡眠作用及び鎮静作用増強剤を提供することを主な目的とする。 本発明者らは、上記目的を達成するために有効成分を検討したところ、サフランに含まれる精油成分であるサフラナールに睡眠作用及び鎮静作用を増強する効果があることを見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成させたものである。 項1.一般式(I):で表される化合物を有効成分として含む睡眠作用又は鎮静作用増強剤。 項1−1.一般式(I)で表される化合物の含有割合が、0.01〜100重量%である項1に記載の睡眠作用又は鎮静作用増強剤。 項2.一般式(I):で表される化合物と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を組み合わせることを特徴とする製剤。 項2−1.睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の含有量が、一般式(I):で表される化合物100重量部に対して、1〜100重量部である項2に記載の睡眠改善剤。 項3.一般式(I):で表される化合物と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を別々に投与する形態を有する項2に記載の製剤。 項3−1.一般式(I):で表される化合物を有効成分として含む睡眠作用又は鎮静作用増強剤と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む組成物を別々に投与する形態を有する項3に記載の製剤。 項3−2.睡眠作用又は鎮静作用増強剤中の一般式(I):で表される化合物の含有割合が、0.01〜100重量%である項3−1に記載の製剤。 項3−3.睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む組成物中の有効成分の含有割合が、0.1〜100重量%である項3−1に記載の製剤。 項4.一般式(I):で表される化合物、及び睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含有する項2に記載の製剤。 項4−1.一般式(I):で表される化合物の含有割合が、製剤中、0.1〜50重量%である項4に記載の製剤。 項4−2.睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の含有割合が、製剤中、0.1〜50重量%である項4に記載の製剤。 項4−3.睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の含有量が、一般式(I)で表される化合物100重量部に対して、1〜100重量部である項4に記載の製剤。 項5.一般式(I):で表される化合物を含む組成物を投与する工程を含む、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分による睡眠作用又は鎮静作用を増強する方法(ただし、人に対する医療行為を除く)。 項5−1.組成物中の一般式(I):で表される化合物の含有割合が、0.01〜100重量%である項5に記載の方法。 項5−2.一般式(I):で表される化合物の投与量が、1〜10000mg/kg/日である項5に記載の方法。 項5−3.睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む製剤を投与されるべき対象に対して、一般式(I)で表される化合物を含む組成物を投与する項5に記載の方法。 項5−4.睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の投与量が、0.1〜100mg/kg/1日である項5に記載の方法。 本発明の睡眠作用増強剤によると、睡眠作用を有する有効成分と併用することにより、睡眠を促進し、自然で快適な睡眠を得ることができる。特に本発明の睡眠作用増強剤は、睡眠作用を有する有効成分との併用で、ノンレム睡眠を有意に延長することができる。 また、本発明の睡眠作用増強剤は、作用を有する有効成分と併用して投与することで、睡眠薬の有効成分量が少なくとも、睡眠作用を十分に増強することができる。そのため、睡眠薬の過剰量の摂取によって生じる副作用を抑制することができる。 さらに、本発明の睡眠作用増強剤に含まれる一般式(I)で示される化合物は、上記のような優れた睡眠作用の増強効果に加えて、優れた鎮静作用増強効果をも有している。そのため、鎮静作用を有する有効成分と併用することで、鎮静作用を増強させる鎮静作用増強剤としても有用である。試験例1におけるVehicle(図1A)あるいはサフラナール360mg/kg(図1B)を投与後、ペントバルビタール処理したマウス(PENTマウス)の典型的なポリグラフ記録とそれに対応するヒプノグラム(睡眠経過図)である。試験例1におけるVehicle、サフラナール90、180、及び360mg/kg、ジアゼパム3mg/kgを事前投与し、ペントバルビタール20mg/kgを投与した時のそれぞれの入眠潜時を示すグラフである。試験例1におけるVehicle、サフラナール90、180、及び360mg/kg、ジアゼパム3mg/kgを事前投与し、ペントバルビタール20mg/kgを投与した時のノンレム睡眠量(上図)の経時変化と覚醒量の経時変化(下図)を示すグラフである。試験例1におけるVehicle、サフラナール90、180、及び360mg/kg、ジアゼパム3mg/kgを事前投与し、ペントバルビタール20mg/kgを投与してから3時間の累積ノンレム睡眠量を示すグラフである。試験例1におけるVehicle、サフラナール90、180、及び360mg/kg、ジアゼパム3mg/kgを事前投与し、ペントバルビタール20mg/kgを投与してから3時間のノンレム睡眠の出現回数を示すグラフである。試験例1におけるVehicle、サフラナール90、180、及び360mg/kg、ジアゼパム3mg/kgを事前投与し、ペントバルビタール20mg/kgを投与してから3時間の平均持続時間を示すグラフである。試験例1におけるVehicle、サフラナール90、180、及び360mg/kg、ジアゼパム3mg/kgを事前投与し、ペントバルビタール20mg/kgを投与後の時間に対するノンレム睡眠エピソード数(左図)と、投与後の時間に対する覚醒エピソード数(右図)を示すグラフである。試験例1におけるVehicle、サフラナール90、180、及び360mg/kg、ジアゼパム3mg/kgを事前投与し、ペントバルビタール20mg/kgを投与後のノンレム睡眠から覚醒、及び覚醒からノンレム睡眠へのステージ移行数(左図)、並びに投与後のノンレム睡眠からレム睡眠、及びレム睡眠からノンレム睡眠へのステージ移行数(右図)を示すグラフである。試験例1におけるVehicle、サフラナール360mg/kg、ジアゼパム3mg/kgを事前投与し、ペントバルビタール20mg/kgを投与後の脳波の周波帯に対する脳波出力密度を示すグラフである。試験例2におけるVehicle、サフラナール90、180、360mg/kgを投与したPENTマウスの腹側外側視索前野(VLPO)と結節乳頭核(TMN)のc−Fos出現の顕微鏡写真である。図3Aは、Vehicle群のVLPOのc−Fos出現の顕微鏡写真であり、図3Eは、図3Aを拡大した顕微鏡写真である。図3Bは、サフラナール360mg/kgを投与した群のVLPOのc−Fos出現の顕微鏡写真であり、図3Fは、図3Bを拡大した顕微鏡写真である。図3Cは、Vehicle群のTMNのC−Fos出現の顕微鏡写真であり、図3Gは、図3Cを拡大した顕微鏡写真である。図3Dは、サフラナール360mg/kgを投与した群のTMNのc−Fos出現の顕微鏡写真であり、図3Hは、図3Dを拡大した顕微鏡写真である。また、図3の左下図は、Vehicle、サフラナール90、180、360mg/kgを投与したPENTマウスのVLPOのc−Fos出現数を示すグラフであり、図3の右下図は、Vehicle、サフラナール90、180、360mg/kgを投与したPENTマウスのTMNのc−Fos出現数を示すグラフである。 <睡眠作用又は鎮静作用増強剤> 本発明の睡眠作用又は鎮静作用増強剤は、一般式(I):で表される化合物を有効成分として含む。 前記一般式(I)で表される化合物は、サフラナールとして公知であり、下記の一般的な製造方法によって得ることができる。また、サフラナールは、市販のものを用いてもよい。 前記一般式(I)で表される化合物の製造方法としては、例えば、植物、より具体的には、サフラン又はクチナシ(山梔子)を原料として抽出し、単離することによって調製することができる。 また、サフランに含まれるピクロクロシンを加水分解することによっても得られる。 原料として用いるサフランは、例えば、大分県竹田市で栽培される薬用あるいは食用植物のサフランとして入手することができる。 サフランからサフラナールを単離調製する場合、原料として使用するサフランは、植物のサフラン(Crocus sativus L)をそのまま用いることも可能であるが、植物のサフラン(Crocus sativus L)のめしべを集めて乾燥させたものを用いることが好ましい。当該サフラナールの調製は、上記サフランのめしべを、有機溶媒を含む溶媒で抽出及び分画する工程を経て行うことができる。 より具体的には、乾燥サフラン(サフランのめしべ)を細かくし、有機溶媒で室温にて1〜5日ほど抽出し、その後、これらを濾過して濾液を濃縮し、得られた溶媒抽出物を、各種カラムクロマトグラフィーを組み合わせて分離することにより、サフラナールを得ることができる。ここで、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。好ましい有機溶媒は、メタノール、エタノール、ブタノール等である。さらに、水、及び水とこれら有機溶媒との混合液等で抽出することも可能である。 また、カラムクロマトグラフィーとしては、オープンカラムクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、分取リサイクルHPLC等が挙げられ、それらに各種カラムクロマトグラフ用の担体、即ち、相シリカゲル、逆相シリカゲル(ODS)、ゲル濾過(Sephadex)、イオン交換樹脂 (Diaion HP−20)等を組み合わせることができる。好ましいカラムクロマトグラフィーの組み合わせとしては、オープンカラムクロマトグラフにはイオン交換樹脂(Diaion HP−20)、順相シリカゲル、逆相シリカゲル(ODS)、ゲル濾過(Sephadex、GS)等であり、分取リサイクルHPLCにはゲル濾過(Sephadex、GS)、HPLCには逆相シリカゲル(ODS)等が挙げられる。 なお、睡眠作用又は鎮静作用増強剤の有効成分として用いられる前記一般式(I)で示される化合物には、上記一般式(I)に包括的に含まれる構造異性体も含まれる。 本発明の睡眠作用又は鎮静作用増強剤は、前記一般式(I)で示される化合物のみから構成されていてもよいが、使用形態に応じて、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の担体又は添加剤を用いてもよい。これらの担体又は添加剤としては、適宜選択することができる。 本発明の睡眠作用又は鎮静作用増強剤において、上記一般式(I)で表される化合物の含有割合としては、該睡眠作用又は鎮静作用増強剤の使用形態、期待される効果の程度、使用者の性別や年齢等によって異なるが、一例として、該睡眠作用又は鎮静作用増強剤の総重量に対して、一般式(I)で表される化合物が、0.01〜100重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%程度となる割合が挙げられる。 本発明の睡眠作用又は鎮静作用増強剤は、例えば、医薬の用途として用いることができる。また、当該睡眠作用又は鎮静作用増強剤の投与形態・剤型としては、経口投与、非経口投与のいずれであってもよい。経口投与剤としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤等の固形剤;溶液剤、シロップ剤等の液剤が挙げられ、また、非経口投与剤としては、注射剤、スプレー剤等が挙げられる。好ましい投与形態は、錠剤及びカプセル剤等による経口投与である。 錠剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来より知られている各種のものを広く使用することができる。その例としては、例えばラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、塩化ナトリウム、尿素、デンプン、炭酸カシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。 丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用できる。その例としては、例えばラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ソーダ、アラビアゴム末、トラガント末、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。 散剤の形態に成形するに際しては、ラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤を用いて製造できる。錠剤及びカプセルが、投与が容易であるという理由で最も有用な単位経口投与剤である。錠剤やカプセルを製造する際には、固体の担体が用いられる。 カプセル剤は常法に従い通常有効成分化合物を上記で例示した各種の担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。 シロップ剤として調製される場合、水、スクロース、ソルビトール、フルクトース等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、アルキルパラヒドロキシベンゾエート等の防腐剤、ストロベリー・フレーバー、ペパーミント等のフレーバー類を使用できる。 注射剤として調製される場合、液剤、乳剤及び懸濁剤は殺菌され、且つ血液と等張であるのが好ましく、これらの形態に成形するに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものを全て使用でき、例えば水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用できる。 睡眠作用又は鎮静作用増強剤の投与量は、用法、投与形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常有効成分である一般式(I)で示される化合物の量を1〜10000mg/kg/1日程度、好ましくは10〜1000mg/kg/1日程度、より好ましくは100〜1000mg/kg/1日程度となるように投与する。また、その投与時期は通常就寝前の直前〜6時間であり、より好ましくは直前〜5時間である。 本発明の睡眠作用又は鎮静作用増強剤は、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分による睡眠作用又は鎮静作用を増強するために投与される。 また、睡眠作用又は鎮静作用増強剤の投与は、後述する睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む製剤を投与する前、投与時、又は投与後のいずれであってもよい。 睡眠作用又は鎮静作用増強剤を先に投与する場合、睡眠作用又は鎮静作用増強剤を投与後、通常直後〜3時間程度、好ましくは、直後〜1.5時間程度の時間をおいて、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む製剤を投与することが好ましい。 また、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む製剤を先に投与する場合、当該製剤を投与後、通常直後〜3時間程度、好ましくは、直後〜1.5時間程度の時間をおいて、睡眠作用又は鎮静作用増強剤を投与することが好ましい。 <睡眠作用又は鎮静作用を増強する方法> 本発明の睡眠作用又は鎮静作用を増強する方法は、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分による睡眠作用又は鎮静作用を増強する方法に関し、一般式(I):で表される化合物を含む組成物を投与する工程を含む。 一般式(I)で表される化合物としては、前記、<睡眠作用又は鎮静作用増強剤>で挙げられたものを用いることができる。 組成物中における、一般式(I)で示される化合物の含有割合としては、その使用形態、期待される効果の程度、使用者の性別や年齢等によって異なるが、一例として、組成物の総重量に対して、一般式(I)で表される化合物が、0.01〜100重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%程度となる割合が挙げられる。 一般式(I)で示される化合物を含む組成物としては、例えば、飲食品等の形態であってもよい。 当該飲食品としては、一般式(I)で示される化合物そのもの、又は一般式(I)で示される化合物に前記の希釈剤あるいは賦形剤等を添加配合して調製される製剤(例えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、ドリンク剤等)等の、例えばサプリメントを挙げることもできるし、また一般の飲食品に上記一般式(I)で示される化合物を配合して、その飲食品に睡眠作用増強効果や、鎮静作用増強効果を付加してなる機能性食品(特定保健用食品や条件付き特定保健用食品が含まれる)を挙げることができる。なお、これらの機能性食品には、上記一般式(I)で示される化合物を含有し、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分による睡眠作用又は鎮静作用を増強することを特徴とするものであって、睡眠改善又は鎮静作用を得るために用いられる旨の表示を付してなる飲食品が含まれる。 対象とする飲食品としては、特に限定されるものではないが、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;乳飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料(果汁入りを含む)、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、スポーツ飲料、粉末飲料等の飲料類;リキュール等のアルコール飲料;コーヒー飲料、紅茶飲料等の茶飲料類;コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類;ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類;赤ワイン等の果実酒;その他、各種総菜等の種々の加工飲食品を挙げることができる。 当該組成物の有効成分となる一般式(I)で表される化合物の投与量は、前記、<睡眠作用又は鎮静作用増強剤>で挙げられた投与量と同様の量、投与される。また、その投与時期は通常就寝前の1〜6時間であり、より好ましくは2〜5時間である。 一般式(I)で表される化合物を含む組成物の投与は、後述する睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む製剤を投与する前、投与時、又は投与後のいずれであってもよく、その投与時期は、前記、<睡眠作用又は鎮静作用増強剤>で挙げられた投与時期を適用することができる。 当該睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む製剤の投与量は、用法、投与形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の量が、約0.1〜100mg/kg/1日程度、好ましくは、約0.5〜50mg/kg/1日程度とするのがよい。 一般式(I)で表される化合物を含む組成物の投与は、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分による睡眠作用又は鎮静作用を増強することができるため、不眠症、過眠症、睡眠位相後退症候群、閉経後不眠症等の睡眠障害を有する患者や、パニック障害、不安障害、ストレス障害(PTSD、急性ストレス障害)等の不安を伴う疾患を有する患者に対して有用である。 <製剤> 本発明の製剤は、前記の一般式(I)で表される化合物と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を組み合わせることを特徴とする。当該製剤の形態としては、当該一般式(I)で表される化合物と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を別々に投与する形態(以下、製剤Aともいう)であってもよく、また、一般式(I)で表される化合物、及び睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含有する形態(以下、製剤Bともいう)であってもよい。 なお、本発明の製剤は、前記一般式(I)で表される化合物と、睡眠作用を有する有効成分を組み合わせてなる場合には、睡眠改善剤として用いられ、また、前記一般式(I)で表される化合物と、鎮静作用を有する有効成分を組み合わせてなる場合には、鎮静剤として用いられる。 ここで、「睡眠改善剤」とは、起床時の眠気を改善する、入眠をスムーズにする、中途覚醒を減らす等の作用によって、安眠を誘発して良好な睡眠状態を導くために使用されるものである。 また、「鎮静剤」は、人や動物の精神を鎮静させることにより、リラックスさせ、又は睡眠を改善させるために使用されるものである。 <製剤A> 製剤Aは、当該一般式(I)で表される化合物と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を別々に投与する形態を有する。 一般式(I)で表される化合物としては、前記<睡眠作用又は鎮静作用増強剤>に含まれる一般式(I)で示される化合物と同様のものが挙げられる。 睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分としては、GABAA受容体、α−2アドレナリン受容体、メラトニン受容体、ヒスタミン受容体、アセチルコリン受容体、GABAB受容体/GHB受容体、オレキシン受容体、及びN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体等の受容体を作動する成分が挙げられる。 GABAA受容体を作動する成分としては、アモバルビタール、アプロバルビタール、アロバルビタール、エトクロルビノール、エタロバルビタール、シクロバルビタール、セクブタバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール、チオペンタール、バルビタール、ビニルビタール、ビンバルビタール、フェニルエチルマロンアミド、フェノバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、ブトバルビタール、プロキシバルビタール、プリミドン、ヘキソバルビタール、ヘプタバルビタール、ペントバルビタール、メタルビタール、メチルフェノバルビタール、メトヘキシタール、メホバルビタール、レポサール及びそれらの塩等のバルビツール酸化合物系薬及びバルビツール酸塩系薬;エスタゾラム、オキサゼパム、オキサゾラム、カマゼパム、クアゼパム、クロナゼパム、クロバザム、クロラゼプ酸、クロルジアゼポキシド、ケタゾラム、シノラゼパム、テトラゼパム、テマゼパム、デメチルジアゼパム、デロラゼパム、ドキセファゼパム、トフィソパム、トリアゾラム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、ハラゼパム、ハロキサゾラム、ピナゼパム、プラゼパム、フルジアゼパム、フルトプラゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ブロマゼパム、ブロチゾラム、ミダゾラム、メダゼパム、メチルジアゼピノン、メチルニトラゼパム、ロフラゼプ酸エチル、ロプラゾラム、ロラゼパム、及びロルメタゼパム等のベンゾジアゼピン系薬;エチゾラム、ブロチゾラム、クロチアゼパム等のチエノジアゼピン系薬;フォスプロポフォール、プロポフォール、及びチモール等のジアルキルフェノール;インディプロン、エスゾピクロン、オシナプロン、サリピデム、ザレプロン、酒石酸ゾルピデム、スプロクロン、スリクロン、ゾピクロン、ゾルピデム、ネコピデム、パゴクロン、パジナクロン、トリアゾロピラジアジン(CL−218872)、(R)−5α−[(1R)−2−(p−トリルスルホニル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−1α−イル]−4,5−ジヒドロ−2(3H)−フラノン(ROD−188)、6,7−ジメチル−2,4−ジ−1−ピロリジニル−7H−ピロロ[2,3−D]ピリジン塩酸塩(U−898,43A)、11−クロロ−5−(5−シクロプロピル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)−2,3−ジヒドロジイミダゾール[1,5−a:1’,2’−c]キナゾリン(U−90042)、6−ベンジル−3−(5−メトキシ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン(SX−3228)等の非ベンゾジアゼピン系薬;グルテチミド、メチプリロン、ピリチルジオン、ピペリジオン等のピペリジネジオン系薬;アフロクアロン、クロロクアロン、ジプロクアロン、エタクアロン、メブロカロン(mebroqualone)、メクロカロン、メタカロン、メチルメタカロン等のキナゾリノン系薬;オクスカルバゼピン、オピプラモール、カルバマゼピン、エスリカルバゼピン等のイミノスチルベン系薬;アセブロコール、アロプレグナノロン、アルファドロン、アルファキサロン、エルタノロン、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、(2β,3α,5β)−21−クロロ−3−ヒドロキシ−2−モルフォリン−4−イルプレグナン−20−オン(Org20599)、3α−ヒドロキシ−2β−(2,2−ジメチルモルフォリノ)−5α−プレグナ−11,20−ジオン(Org21465)、テトラヒドロデオキシコルチコステロン等の神経刺激薬又はステロイド系薬等が挙げられる。 α−2アドレナリン受容体を作動する成分としては、4−(1−ナフタレン−1−イルエチル)−1H−イミダゾール(4−NEMD)、クロニジン、デクスメデトミジン、ロフェキシジン、メデトミジン、ロミフィジン、キシラジン等のα−アドレナリンアゴニストが挙げられる。 ヒスタミン受容体又はアセチルコリン受容体を作動する成分としては、アミトリプチリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸プロメタジン、塩酸ブロモジフェンヒドラミンエルザソナン、エルトプラジン、オルフェナドリン、カルビノキサミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、スコポラミン、ドキシラミン、ドキセピン、トラゾドン、ニアプラジン、ネファゾドン、ヒドロキシジン、ピリラミン、フェニルトロキサミン、プロピオマジン、ペリラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、ミアンセリン、ミルタザピン等の抗ヒスタミン薬及び抗コリン薬が挙げられる。 GABAB受容体/GHB受容体を作動する成分としては、1,4−ブタンジオール、4−アセトキシブタン酸、アミノオキシ酪酸(GABOB)、γ-ヒドロキシ酪酸、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。 オレキシン受容体を作動する成分としては、アルモレキサント、スボレキサント、1−(2−メチルベンゾオキサゾール−6−イル)−3−(1,5−ナフチリジン−4−イル)尿素(SB−334,867)、N−(6,8−ジフルオロ−2−メチル−4−キノリニル)−N’−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]尿素(SB−408,124)、N−([(2S)−1−([5−(4−フルオロフェニル)−2−メチル−4−チアゾリル]カルボニル)−2−ピペリジニル]メチル)−4−ベンゾフランカルボキサミド(SB−649,868)、(2S)−1−(3,4−ジヒドロ−6,7−ジメトキシ−2(1H)−イソキノリニル)−3,3−ジメチル−2−[(4−ピリジニルメチル)アミノ]−1−ブタノン塩酸塩(TCS−OX2−29)等のオレキシン受容体拮抗剤等が挙げられる。 NMDA受容体拮抗剤の具体例としては、例えば、アカンプロサート、アマンタジン、カリソプロドール、ケタミン、ケトベミドン、ジゾシルピン、デキストラロルファン、レバロルファン、デキストロプロポキシフェン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、トラマドール、ハロペリドール、フェルバメート、ペチジンメペリジン、ミルナシプラン、メプロバメート、メタドン、メマンチン、ラコサミド、レボメトルファン、レボロルファノール等が挙げられる。 前記の成分以外に、例えば、アセチルグリシンアミド抱水クロラール、抱水クロラール、クロラロドール、ジクロラールフェナゾン、パラアルデヒド、ペトリクロラール、トリクロルエタノール、ウレタン、エトクロルビノール、エチナメート、ヘキサプロピマート、メチルペンチノール、カルバメート、メプロバメート、カリソプロドール、チバメート、メトカルバモール、プロシマート、2−メチル−2−ブタノール、アセカルブロマール、アセトフェノン、アプロナール、ブロムワレリル尿素、カルブロマール、クロラロース、クロメチアゾール、エンブトラミド、エトミデート、エボキシン、フェナジアゾール、ガボキサドール、ロレクレゾール、メフェノキサロン、スルホンメタン、トリクロロエタノール、トリクロフォス、セイヨウカノコソウ、バルノクタミド、睡眠促進作用を示す漢方薬等の有効成分が挙げられる。 これらの有効成分は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。 製剤(A)中における、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の含有割合としては、その使用形態、期待される効果の程度、使用者の性別や年齢等によって異なるが、一例として、製剤(A)の総重量に対して、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分が、0.01〜100重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%程度となる割合が挙げられる。 前記睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の配合量としては、当該有効成分の種類、使用形態によって異なるが、通常、前記一般式(I)で表される化合物100重量部に対して、好ましくは約1〜100重量部程度、より好ましくは約2〜50重量部程度となるように調製される。睡眠薬の含有量を1重量部以上に設定することで、睡眠作用又は鎮静作用増強剤による睡眠改善又は鎮静効果が十分に得られるという効果が得られる。また、睡眠薬の含有量を100重量部以下に設定することで、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分による副作用を低減することができるという効果が得られる。 一般式(I)で表される化合物を有効成分とする組成物(睡眠作用又は鎮静作用増強剤)の形態としては、前記<睡眠作用又は鎮静作用増強剤>で挙げられた形態のいずれであってもよい。また、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む形態としては、使用形態に応じて、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の担体又は添加を用いてもよい。これらの担体又は添加剤としては、適宜選択することができ、前記で挙げられたものと同様のものを用いることができる。 当該睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の投与形態・剤型としては、経口投与、非経口投与のいずれであってもよく、これらは、前記で挙げられてたいずれの形態を有していてもよい。 当該製剤における一般式(I)で表される化合物の投与量は、用法、投与形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、前記の睡眠作用増強剤における一般式(I)で表される化合物の投与量と同様の量とすることができる。また、その投与時期としては、前記<睡眠作用又は鎮静作用増強剤>の投与時間を適用することができる。 睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含む製剤の投与量としては、前記の<睡眠作用又は鎮静作用を増強する方法>で挙げられた量を適用することができる。 一般式(I)で表される化合物と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の投与の順番としては、特に限定されるものではなく、一般式(I)で表される化合物を先に投与しても、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を先に投与してもよく、また、一般式(I)で表される化合物と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を同時投与してもよい。 これらの投与時期としては、前記<睡眠作用又は鎮静作用増強剤>で挙げられた時間と同様の時間が挙げられる。 <製剤B> 製剤Bは、一般式(I)で表される化合物、及び睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含有する形態を有する。 一般式(I)で表される化合物としては、前記<睡眠作用又は鎮静作用増強剤>に含まれる一般式(I)で示される化合物と同様のものが挙げられる。 また、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の具体例としては、前記<製剤A>で挙げられたものを用いることができる。 前記睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の含有量としては、前記<製剤A>における前記睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の配合量と同様の量が挙げられる。 製剤B中における、一般式(I)で表される化合物の含有割合としては、約0.1〜50重量%程度が好ましく、約0.1〜30重量%程度がより好ましい。また、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分の含有割合としては、約0.1〜50重量%程度が好ましく、約0.1〜30重量%程度がより好ましい。 製剤Bの形態としては、使用形態に応じて、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤あるいは賦形剤を用いてもよい。これらの希釈剤又は賦形剤としては、適宜選択することができ、前記で挙げられたものと同様のものを用いることができる。また、製剤Bの投与形態・剤型としては、経口投与、非経口投与のいずれであってもよくこれらの形態は、前記で挙げられたものと同様のものを用いることができる。 製剤Bにおける一般式(I)で表される化合物、及び前記睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分のそれぞれの投与量としては、前記、<睡眠作用又は鎮静作用増強剤>、及び<睡眠作用又は鎮静作用を増強する方法>で挙げられた量を適用することができる。 以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。 1.実験動物 実験には、11〜12週齢C57BL/6Jマウスを使用した。当該マウスは温度22±0.5℃、湿度60±2%、12時間の明暗周期(明期時刻7:00〜19:00、照度100ルクス)、試料と水が自由に摂取できる環境下で飼育した。 2.試料 サフナール液はシグマアルドリッチ社製のものを用い、パラフィンオイルで希釈した。 3.脳波・筋電位測定用電極の設置手術 5%抱水クロラール(360mg/kg、i.p.)麻酔下でマウスに脳波・筋電位測定用の電極を埋め込み手術を行った。脳波(EEG)を測定するために、Franklin & Paxinos(1997)の脳地図に従い、十字縫合(Bregma)と人字縫合(Lambda)のそれぞれから、右側へ1.5mm、前方へ1mmの位置に大脳皮質まで、直径1mmのステンレスネジを埋め込んだ。筋電位(EMG)を測定するためには、テフロン(登録商標)加工で絶縁された銀線を、先端のみ露出させ、左右の僧帽筋に1本ずつ挿入した。すべての電極は、マイクロコネクターに接続し、マウスの頭骨に歯科用セメントで固定した。手術から10日間の回復期間を置いた後、マウスを個別の記録ケージへ移し、ケーブルに接続した。ケーブルに接続してから2時間後にポリグラフ記録を開始した。 試料の睡眠効果を効果的に観測するため、マウスの覚醒時間が長い暗期に試験を行った。暗期開始の時刻19:00から24時間の脳波と筋電位を記録した。脳波・筋電位は、増幅フィルター(EEG:0.5〜30Hz、EMG:20〜200Hz)処理後、128Hzのサンプリング速度でA/D変換し記録した。脳波解析はソフトウェアSleepSignを用いて4秒間のデータを1エポックとし、標準判定基準に従って各エポックを覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠のいずれかに自動判定し、その後目視で確認して必要があれば訂正した。 <試験例1> サフラナールは使用直前に調整し、時刻20:00に、90、180、360mg/kgの用量で各6匹のマウスの胃内へ経口投与した(サフラナール投与群)。ジアゼパムは生理食塩水に希釈し、3mg/kgの用量で5匹のマウスの胃内へ投与した(ジアゼパム投与群)。Vehicle群は、生理食塩水をマウスの胃内へ投与した。 ペントバルビタールは生理食塩水に溶解し、時刻21:00に睡眠に達しない20mg/kgの用量で前記各投与群のマウスの腹腔内へ投与した。 ・結果と考察 Vehicleあるいはサフラナール360mg/kgを投与後、ペントバルビタール処理したマウス(PENTマウス)の典型的なポリグラフ記録とそれに対応するヒプノグラム(睡眠経過図)を図1に示す。なお、図1Aは、Vehicleを投与後、PENTマウスの典型的なポリグラフ記録とそれに対応するヒプノグラムであり、図1Bは、サフラナール360mg/kgを投与後、PENTマウスの典型的なポリグラフ記録とそれに対応するヒプノグラムである。 Vehicle群では、時刻21:00から1:00までは、睡眠時間よりも覚醒時間が長いことが図1Aより明らかとなった。一方、サフラナール投与群では短時間で眠り始め、対象群よりも睡眠時間が長くなっていることが図1Bから明らかとなった。なお、サフラナール投与後、ペントバルビタール処理までの間は、睡眠時間よりも覚醒時間が長いことから、サフラナールとペンバルビタールとの併用によって、睡眠作用が増強されることが明らかとなった。また、サフラナール180mg/kgを投与したマウスでも同様の変化が認められた。 試験例1において、Vehicle群、サフラナール投与群、及びジアゼパム投与群の入眠潜時をそれぞれ測定した。図1CにVehicle群、サフラナール投与群、及びジアゼパム投与群それぞれの入眠潜時を示す。図1Cにおける「Veh」は、Vehicle群を示し、「Saf」は、サフラナール投与群を示し、「DZ」は、ジアゼパム投与群を示す(以下、「Veh」、「Saf」、及び、「DZ」は同様の意味である)。なお、入眠潜時は、vehicleあるいはサフラナールの投与時から20秒以上続くノンレム睡眠が最初に出現するまでの時間とした。また、*は、p<0.05vs.Vehicle群、**は、p<0.01vs.Vehicle群を表す(以下、同じである)(以下、「*」、及び「**」は同様の意味である)。 図1Cより、サフラナール投与群は、ノンレム睡眠への入眠潜時が著しく短縮した。Vehicle群の入眠潜時が3.47分に対し、サフラナール180mg/kg、360mg/kgとジアゼパム3mg/kg投与したマウスでは、それぞれ1.61、1.86、及び1.04分で、有意に減少した(F(4.28)=3.808、P<0.05)。しかしながら、PENTマウスにサフラナールあるいはジアゼパムを投与してもレム睡眠の入眠潜時に変化は見られなかった。サフラナール投与群におけるノンレム睡眠への短い入眠潜時は、サフラナールがPENTマウスのノンレム睡眠の開始を早めることを明瞭に示す。 図1Dに試験例1において、Vehicle群、サフラナール投与群、及びジアゼパム投与群のペントバルビタールを投与してから3時間のノンレム睡眠量と覚醒量の経時変化を示し、図1Eに累積ノンレム睡眠量(上図)、及び累積覚醒量(下図)、を示す。また、♯♯は、p<0.01vs.サフラナール(90mg/kg)を表す。 図1Dより、Vehicle群と比較して、サフラナール360mg/kg投与群では3時間の累積ノンレム睡眠量が著しく増加した。また、睡眠時間の増加に伴い、覚醒時間が減少した。同様の結果が低用量のサフラナール投与群でも見られたが、睡眠効果は小さく、投与から1〜2時間続いたのみであった。PENTマウスにサフラナールあるいはジアゼパムを投与後3時間のノンレム睡眠量の合計を算出したところ、vehicle群と比べて、サフラナール180mg/kg、360mg/kg、ジアゼパム3mg/kg投与群はそれぞれ62.6%、109.7%、117.5%有意に増加した。また、サフラナール投与群では、投与後のレム睡眠に有意な変化が認められなかった。ANOVA解析により、サフラナールはノンレム睡眠量を増加させ(F(4.28)=21.316、P<0.01)、サフラナール360mg/kg投与による効果はサフラナール90、180mg/kg投与よりも強いが(P<0.01、vs.サフラナール360mg/kg)、ジアゼパム3mg/kg投与による効果との有意な差は認められなかった(P>0.05)。以上の結果から、サフラナールはPENTマウスのノンレム睡眠を増加させると考えられる。 試験例1において、Vehicle群、サフラナール投与群、及びジアゼパム投与群のペントバルビタールを投与してから3時間の覚醒、レム睡眠、及びノンレム睡眠の出現回数を測定した。 図2Aに試験例1におけるノンレム睡眠の出現回数を示し、図2Bに平均持続時間を示す。図2A及び図2Bにおける「Wake」は「覚醒」、「NRem」は「ノンレム睡眠」、「Rem」は「レム睡眠」を示す。さらに、*は、p<0.05vs.Vehicle群、**は、p<0.01vs.Vehicle群を表す。 図2A及び図2Bより、サフラナールの投与により、ノンレム睡眠の出現回数と平均持続時間は変化が確認されたが、レム睡眠には変化が見られなかった。特に、サフラナール180、及び360mg/kgを投与した場合には、ノンレムエピソードを、それぞれ2.7倍、1.9倍増加させた。PENTマウスに対するサフラナール360、及び180mg/kgの投与により、投与から3時間のノンレム睡眠の平均持続時間が減少した。 図2Cに、試験例1におけるペントバルビタール投与後の時間に対するノンレム睡眠エピソード数(左図)と、投与後の時間に対する覚醒エピソード数(右図)を示す。 また、図2Dに、試験例1におけるペントバルビタール投与後のノンレム睡眠から覚醒、及び覚醒からノンレム睡眠へのステージ移行数(左図)、並びに投与後のノンレム睡眠からレム睡眠、及びレム睡眠からノンレム睡眠へのステージ移行数(右図)を示す。 図2Dより、サフラナール180、360mg/kgは、覚醒からノンレム睡眠、及びノンレム睡眠から覚醒へのステージ移行数を増加させた。一方、ノンレム睡眠からレム睡眠、レム睡眠から覚醒へのステージ移行に変化は見られなかった。 図2Cより、高用量のサフラナール(180、360mg/kg)投与群では、4〜16、16〜32、32〜64、64〜128秒のノンレム睡眠エピソード数と、4〜16、16〜32、32〜64秒の覚醒エピソード数が増加した。ジアゼパム投与群でも同様に、32〜64、64〜128、128〜256秒のノンレム睡眠エピソード数が増加し、16〜32、256〜512秒の覚醒エピソード数が減少した。 図2Eに、試験例1におけるペントバルビタール投与後の脳波の周波帯に対する脳波出力密度を示す。 サフラナール360mg/kg投与群では、ノンレム睡眠の脳波出力密度が0.5〜0.75Hz、2.0〜2.5Hzで増加したが、8.5〜23.25Hzで減少した。ジアゼパム投与群では、ノンレム睡眠の脳波出力密度が2〜3.5Hzの周波帯で減少した。サフラナール180、360mg/kg投与群では、ノンレム睡眠の平均徐派活動の割合が0.25−4Hzの周波帯で増加した。以上のことから、サフラナールはノンレム睡眠の脳波出力密度と徐派活動を増加させる可能性が示唆された。 <試験例2(c−Fos免疫組織化学)> マウスを4群用意し、時刻20:00に各群にvehicle、サフラナール90、180、360mg/kgのいずれかを胃内へ経口投与した。1時間後の時刻21:00に、すべてのマウスにペントバルビタール20mg/kgを腹腔内へ投与した。ペントバルビタールの投与から90分後、10%抱水クロラールで麻酔し、心臓を介して生理食塩水、続いて氷冷4%パラホルムアルデヒド−0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)をかん流させた。その後、脳を取り出して4%パラホルムアルデヒドで6時間再固定し、30%スクロースに一晩浸した。凍結ミクロトームを使い、凍結切片を30μmの冠状面で作製した。切片は組織学的な分析のため、−20℃の抗凍結剤溶液中で保管した。免疫組織学的検査はフリー・フロート法に従って行った。切片を4%パラホルムアルデヒドで10分間固定した後で0.3%過酸化水素で15分間インキュベートし、内因性ペルオキシダーゼ活性を抑える。次に、10%正常ウサギ血清と0.3%トリトンX−100を含む0.01Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)のブロッキング溶液37℃に30分間置き、c−Fosに対するウサギポリクロナール抗体を1%正常ウサギ血清と0.3%トリトンX−100を含むPBSで2000倍に希釈した溶液内で24時間4℃でインキュベートした。翌日、200倍に希釈したビオチン化ヤギ抗ウサギ二次抗体で1時間インキュベートし、その後、200倍に希釈したアビジン・ビオチン・ペルオキシダーゼで1時間37℃でインキュベートした。ペルオキシダーゼ反応は0.05%DABを含んだ0.1Mリン酸緩衝塩と0.01%過酸化水素で可視化した。切片はプレパラートに乗せ、乾燥させてカバーで覆った。 なお、対照群として、非特異性染色が起こらないことを確認するために、隣接切片に一次抗体処理を行わなかった。また、切片はLeica DMLB2顕微鏡を用いて明視野照明下で観察し、Cool SNAP−Proofデジタルカメラで撮影した。 <結果と考察> PENTマウスの腹側外側視索前野(VLPO)と結節乳頭核(TMN)に対するサフラナールの影響を調べるため、VLPOとTMNのc−Fos陽性神経を数えた。図3A〜図3HにVehicle、サフラナール90、180、360mg/kgを投与したPENTマウスのVLPOとTMNのc−Fos出現の顕微鏡写真を示す。 図3Aは、Vehicle群のVLPOのC−Fos出現の顕微鏡写真であり、図3Eは、図3Aを拡大した顕微鏡写真である。図3Bは、サフラナール360mg/kgを投与した群のVLPOのc−Fos出現の顕微鏡写真であり、図3Fは、図3Bを拡大した顕微鏡写真である。図3Cは、Vehicle群のTMNのC−Fos出現の顕微鏡写真であり、図3Gは、図3Cを拡大した顕微鏡写真である。図3Dは、サフラナール360mg/kgを投与した群のTMNのC−Fos出現の顕微鏡写真であり、図3Hは、図3Dを拡大した顕微鏡写真である。 図3より、c−Fos免疫反応した核数の解析から、Vehicle群と比較し、サフラナール180、360mg/kg群で、c−Fosの出現がVLPOで増加し(F(3,19)=25.753;P<0.01)、TMNで減少した(F(3,19)=4.691;P<0.05)。これらのことから、サフラナールはVLPO睡眠中枢を活性化し、TMN覚醒中枢を阻害することで、PENTマウスのノンレム睡眠を増加させたと考えられる。 製剤例1:錠剤常法によって、次の組成により錠剤を調製する。サフラナール 200mg乳糖 60mgバレイショデンプン 30mgポリビニルアルコール 2mgステアリン酸マグネシウム 1mgタール色素 微量 製剤例2:散剤常法によって、次の組成により散剤を調製する。サフラナール 200mg乳糖 275mg 本発明の一般式(I)で示される化合物は、睡眠作用増強剤、又は鎮静作用増強剤として用いることができ、睡眠薬又は鎮静薬と併用することで、睡眠改善剤、又は鎮静剤として用いることができる。一般式(I):で表される化合物を有効成分として含む睡眠作用又は鎮静作用増強剤。一般式(I):で表される化合物と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を組み合わせることを特徴とする製剤。一般式(I):で表される化合物と、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を別々に投与する形態を有する請求項2に記載の製剤。一般式(I):で表される化合物、及び睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分を含有する請求項2に記載の製剤。一般式(I):で表される化合物を含む組成物を投与する工程を含む、睡眠作用又は鎮静作用を有する有効成分による睡眠作用又は鎮静作用を増強する方法(ただし、人に対する医療行為を除く)。 【課題】新規な睡眠作用増強剤又は鎮静作用増強剤を提供する。【解決手段】一般式(I)で表される化合物を有効成分として含む睡眠作用又は鎮静作用増強剤。【選択図】図1


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