タイトル: | 公開特許公報(A)_トリオキサンを製造する方法及び装置 |
出願番号: | 2012163719 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07D 323/06,C07B 61/00 |
中尾 弘明 久保田 豊 JP 2014024754 公開特許公報(A) 20140206 2012163719 20120724 トリオキサンを製造する方法及び装置 ポリプラスチックス株式会社 390006323 正林 真之 100106002 林 一好 100120891 中尾 弘明 久保田 豊 C07D 323/06 20060101AFI20140110BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140110BHJP JPC07D323/06C07B61/00 300 12 1 OL 17 4C022 4H039 4C022PA03 4C022PA04 4C022PA06 4H039CA42 4H039CH30 本発明は、トリオキサンを製造する方法及び装置に関する。 ホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンは、ポリオキシメチレン(POM)樹脂の製造に広く使われる原料モノマーであり、その製造方法も古くから確立されている。例えば、高濃度のホルムアルデヒド水溶液に、硫酸、リン酸等に代表される不揮発性の酸を液相で作用させ、トリオキサンを生成する工程と、このトリオキサンを、ホルムアルデヒドを含む水とともに炊き上げる工程と、有機溶媒による抽出又は再結晶によって上記トリオキサンを精製する工程とを含む方法が知られている。しかしながら、液相における反応平衡濃度は極めて低い。そこで、反応系から反応生成物を気化させることでトリオキサンへの平衡濃度を高めることが行われるが、水を含む反応生成物の気化には多大なエネルギー消費を伴うのが一般的である。 そこで、ホルムアルデヒドガスから直接気相で三量化し、トリオキサンを合成する手法が古くより検討されている。しかしながら、それらの多くは、気相三量化反応と固体酸触媒に関する部分に主眼が置かれており、原料であるホルムアルデヒドからトリオキサンの気相合成、さらには反応生成物の分離回収、未反応ホルムアルデヒドガスの循環リサイクルまで含めた連続したプロセスとして検討されているものではない。 例えば、特許文献1〜3においては、ホルムアルデヒドガスを気相で反応させるにあたり、その原料であるホルムアルデヒドガスの供給源として、パラホルムアルデヒド、α−ポリオキシメチレンの熱分解、あるいはホルムアルデヒド水溶液の気化による方法が述べられている。しかしながら、原料中には水が数%〜数十%のレベルで存在するため、気相反応に対して不利であるばかりか、多量の水による触媒の失活や原料であるホルムアルデヒドガスの再重合化(パラホルム化)が起こりやすい等の問題がある。さらに、得られた反応生成物の分離に関しては、その詳細が記されておらず、従って、未反応ホルムアルデヒドガスの分配率、回収率等は全く不明であり、連続した製造プロセスとしての詳細を明らかにするものではない。 また、特許文献4では、ホルムアルデヒドからのトリオキサン気相合成について、用いる触媒の具体例とともに反応プロセスが図示されている。それによると、反応器出口における未反応のホルムアルデヒドガスを分離回収し、再び反応器へリサイクルすることが記載されている。しかしながら、ここでもホルムアルデヒドガスの供給源として、パラホルムアルデヒドやホルムアルデヒド水溶液が用いられており、反応系に水分を多く含むデメリットがある。また、反応生成ガスの分離回収方法の詳細が不明で回収率も不明である。 特許文献5では、固体リン酸触媒を用いたトリオキサンの気相合成に関する製法が記されている。ここでは、低水分含量のホルムアルデヒドガスを使用することが主眼となっているが、その方法として粗ホルムアルデヒドを精製する、又は非酸化メタノール脱水素工程によることが記載されている。しかしながら、粗ホルムアルデヒドの精製に関しては原料含めた製法が不明であり、さらにメタノール脱水素に至っては金属ナトリウム触媒を使用する旨の記載もあり、工業的見地から見ると安全性に問題ある。またメタノール脱水素法は、反応転化率や選択率の点で十分な技術確立がなされているとは言い難く、メタノール使用率の点でも問題があり、トリオキサンの気相合成を含む製造プロセスに組み込むには依然多くの困難を伴うものと考えられる。特公昭40−12898号公報特公昭40−20552号公報特公昭44−30735号公報米国特許3496192号特開2001−11069号公報特開昭50−62921号公報 ホルムアルデヒドガスから気相でトリオキサンを合成する方法はこれまで数多く開示されており、同時に気相合成に関する数多くの固体酸触媒も例示されている。また、トリオキサン気相合成後に未反応ホルムアルデヒドガスを回収し、反応器に循環リサイクルする製造プロセスも過去の特許文献に一部記載されている。しかしながら、トリオキサンから未反応ホルムアルデヒドガスをどのように分離するかについては殆ど具体的な方法をもって例示されていない。 よって、ホルムアルデヒド水溶液から効率的にホルムアルデヒドガスを調製した上でトリオキサンを気相で合成しつつ、さらに合成後の分離回収方法や未反応ホルムアルデヒドガスの循環リサイクルまで含めた総合的なトリオキサン気相合成プロセスに言及した製造方法は過去に具体例をもって示されているとは言い難い。このことを含め、従来のトリオキサン液相合成におけるデメリットを大幅に改善できるトリオキサン気相合成の総合的なプロセス体系の確立が求められていた。 本発明は、上記課題を解決することを目的になされたものであり、ホルムアルデヒド水溶液を出発原料にしたトリオキサンの気相合成において、分離回収、リサイクル工程も含めた連続的な製造プロセスについて開示するものである。さらに気相反応によるトリオキサンの高収率、高選択性、未反応ホルムアルデヒドの効率的な分離回収工程及びリサイクルにより、従来法(液相反応)よりもエネルギー使用率の削減にも貢献しうる効率的なトリオキサンの気相合成プロセスを提供するものである。 本発明者らは、ホルムアルデヒド水溶液から気相でトリオキサンを合成するにあたり、その反応工程、分離回収工程含めたプロセスについて、それら工程の最適化を図るべく鋭意研究を重ねた。その結果、トリオキサンを高収率・高選択的に得るのみならず、ホルムアルデヒド使用率が高いトリオキサン製造方法及び装置を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。 (1)本発明は、ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとからヘミホルマールを得る第一工程と、前記ヘミホルマールを熱分解することによりホルムアルデヒドガスを発生させる第二工程と、トリオキサン生成装置に前記ホルムアルデヒドガスを供給し、固体酸触媒を用い、前記ホルムアルデヒドガスからトリオキサンを含む反応生成ガスを気相合成する第三工程と、前記反応生成ガスを有機溶媒と接触させることによって前記反応生成ガスに含まれるトリオキサンを前記有機溶媒に吸収し、前記反応生成ガスに含まれる未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま外部に排出する第四工程と、前記第四工程にて分離した前記未反応ホルムアルデヒドガスを、前記第三工程における前記ホルムアルデヒドガスとして循環リサイクルする循環リサイクル工程と、を含む、トリオキサン製造方法である。 (2)また、本発明の前記アルコールは、沸点が190℃以上のモノオール、ジオール又はトリオールから選択される1種又は2種以上の組合せである、(1)に記載のトリオキサン製造方法である。 (3)また、本発明は、前記固体酸触媒がケイ酸質の無機担持体に担持されたリン酸を含有する、(1)又は(2)に記載のトリオキサン製造方法である。 (4)また、本発明は、前記第三工程における、前記トリオキサン生成装置に供給するホルムアルデヒドガスの単位時間当たりの質量と、前記トリオキサン生成装置に充填する前記固体酸触媒の質量との比を示す質量空間速度WHSVの値は1/50h−1以上1h−1以下である、(1)から(3)のいずれかに記載のトリオキサン製造方法である。 (5)また、本発明は、前記第三工程では、前記固体酸触媒を多管式の固定床反応器に充填し、前記第二工程で得られた前記ホルムアルデヒドガス及び前記循環リサイクル工程で循環リサイクルされた前記未反応ホルムアルデヒドガスと、前記固体酸触媒とを不均一系で接触させ、トリオキサンを気相状態のまま連続的に前記固定床反応器から抜き出すことによってトリオキサンを気相合成する、(1)から(4)のいずれかに記載のトリオキサン製造方法である。 (6)また、本発明は、前記有機溶媒がベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンから選択される1以上である、(1)から(5)のいずれかに記載のトリオキサン製造方法である。 (7)また、本発明は、前記第四工程では、前記第三工程で合成されたトリオキサンと前記第三工程で未反応である未反応ホルムアルデヒドガスとを含む反応生成ガスを、前記トリオキサンの沸点以下の温度に調節された分離装置に連続的に供給する、(1)から(6)のいずれかに記載のトリオキサン製造方法である。 (8)また、本発明は、前記分離装置が、液膜式、液滴式又は気泡式のいずれかによる吸収塔を備える、(7)に記載のトリオキサン製造方法である。 (9)また、本発明は、前記吸収塔は、前記液膜式による吸収塔であり、前記吸収塔は、充填材を充填する充填塔を備え、前記第四工程では、前記有機溶媒と前記反応生成ガスとを交流又は並流接触させることで、前記反応生成ガスに含まれるトリオキサンを前記有機溶媒に吸収し、前記反応生成ガスに含まれる前記未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま前記分離装置の外部に分離する、(8)に記載のトリオキサン製造方法である。 (10)また、本発明は、前記分離装置の内部の温度が60℃以下である、(7)から(9)のいずれかに記載のトリオキサン製造方法である。 (11)また、本発明は、前記分離装置の内部の圧力がゲージ圧で1kgf/cm2以下である、(7)から(10)のいずれかに記載のトリオキサン製造方法である。 (12)また、本発明は、ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとからヘミホルマールを得るヘミホルマール生成装置と、前記ヘミホルマールを熱分解し、ホルムアルデヒドガスを発生させるホルムアルデヒドガス発生装置と、固体酸触媒を用い、前記ホルムアルデヒドガスからトリオキサンを含む反応生成ガスを気相合成するトリオキサン生成装置と、前記反応生成ガスを有機溶媒と接触させることによって前記反応生成ガスに含まれるトリオキサンを前記有機溶媒に吸収し、前記反応生成ガスに含まれる未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま外部に排出する分離装置と、前記未反応ホルムアルデヒドガスを前記トリオキサン生成装置に循環する循環装置と、を備えるトリオキサン製造装置である。 本発明によると、ヘミホルマール法からホルムアルデヒドガスを調製しているため、プロセスとして事前に反応系内から水が十分に排除されており、トリオキサン気相合成においても高い収率・選択率の実現が可能である。さらに反応生成ガスの分離回収工程において、トリオキサン溶解性の高い有機溶媒等を使用することにより、未反応ホルムアルデヒドガスを効果的に分離回収することが可能となり、さらにこの未反応ホルムアルデヒドを循環リサイクルすることでホルムアルデヒド使用率が高まり、トリオキサン製造時のエネルギー面での削減にも貢献できるプロセスを実現することが可能となる。本発明に係るトリオキサン製造装置を示す概略図である。 以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。 <トリオキサン製造装置1> 図1は、本発明に係るトリオキサン製造装置1を示す概略図である。トリオキサン製造装置1は、ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)とアルコールとからヘミホルマールを生成させるヘミホルマール生成装置2と、該ヘミホルマールを熱分解し、ホルムアルデヒドガスを発生させるホルムアルデヒドガス発生装置3と、固体酸触媒を用い、上記ホルムアルデヒドガスからトリオキサンを含む反応生成ガスを生成するトリオキサン生成装置4と、この反応生成ガスからトリオキサンと未反応ホルムアルデヒドガスとを分離する分離装置5と、この未反応ホルムアルデヒドガスをトリオキサン生成装置4に循環する循環装置6とを備える。 [ヘミホルマール生成装置2] ヘミホルマール生成装置2では、ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとを反応・脱水させることにより、ヘミホルマール濃縮物を生成する第一工程が行われる。ヘミホルマール生成装置2は、ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとを混合し、ヘミホルマール水溶液を得る混合槽2Aと、このヘミホルマール水溶液を脱水により濃縮し、低水分量のヘミホルマール濃縮物を得る減圧脱水塔2Bとにより構成される。本実施形態において、ヘミホルマール濃縮物とは、ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとの反応生成物をいい、ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとを所定の比率で混合させたのち、減圧下で脱水・濃縮したものをいう。 本実施形態では、ヘミホルマール法を採用することで、予め系内からの水分を効果的に除去することが可能であるため、後工程における水分含有量の少ないホルムアルデヒドガスを調製することが可能となり、トリオキサン気相合成における反応収率や選択性、触媒寿命の点で有利である。さらにトリオキサンと未反応ホルムアルデヒドガスの分離工程においても、低水分化により吸収・分離塔内でのホルムアルデヒドの凝縮を緩和することが出来るため、ヘミホルマール法を採択することは非常に有効である。 〔混合槽2A〕 ヘミホルマール水溶液の調製にあたり、まず(A)ホルムアルデヒド水溶液と(B)アルコールとを、混合槽2Aの内部で混合し反応を行う。反応条件は特に限定はされず、従来公知のヘミホルマール化法における、ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとの反応条件と同様のものを採用することができる。例えば、反応温度は室温(約20℃)以上90℃以下であることが好ましい。また、反応時間については、反応の進み具合等に応じて適宜設定すればよい。また、両者の混合比率についても特に限定はされないが、(A)ホルムアルデヒド水溶液に対する(B)アルコール中の水酸基のモル比で、0.3以上5.0以下であることが好ましく、0.5以上2.0以下であることがより好ましい。アルコールが過少(0.3以下)であると、ヘミホルマール水溶液中で遊離のホルムアルデヒドが多くなり、減圧脱水塔2Bにおいて減圧・脱水反応を行う際にホルムアルデヒドのロスが多くなることから好ましくない。またアルコール過多(5.0以上)の場合、ホルムアルデヒドガス発生装置3においてヘミホルマールを熱分解する際に、一定量のホルムアルデヒドガス製造のために多量のヘミホルマールを供給する必要が生じ、熱分解に要するエネルギー面で不利となることから好ましくない。 ヘミホルマール水溶液の調製に用いられるアルコール種は特に限定されるものではないが、沸点が190℃以上であるモノ、ジ、トリオールから選ばれる1種又はそれらの組合せにより選択されることが望ましい。アルコールの沸点が190℃よりも低い場合、減圧脱水塔2Bにおいて、ヘミホルマール水溶液を脱水・濃縮する際に、アルコール自身の揮発によるロスが多くなり、回収操作が必要となるため、好ましくない。また、ホルムアルデヒドガス発生装置3でヘミホルマールを熱分解する際にアルコールが揮発することから、アルコールの回収を目的とした冷却器を設置する必要が生じる点でも好ましくない。 沸点が190℃以上であるアルコール種を例示すると、親水性アルコールとしてメチルペンタンジオール、ヘキサントリオール、ペンタンジオール、メチルブタンジオール等を挙げることができる。特に、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオール又は3−メチル−1,3−ブタンジオール等は好適に用いることができる。また疎水性アルコールとして、ジエチルペンタンジオール、エチルヘキサンジオール、オクタノール等を挙げることができる。特に、ジエチルペンタンジオールとして、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等を例示することができる。またエチルヘキサンジオールとして、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−エチル−1,3−ヘキサンジオール、4−エチル−1,3−ヘキサンジオール等を例示することができる。 また上記以外にも、ヘミホルマール調製に公知技術として用いられるアルキレングリコール類、ポリアルキレングリコール類等を適用することも可能である。アルキレングリコール類として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等があり、またポリアルキレングリコール類としてエチレンオキサイドユニットが5以上のポリエチレングリコール、さらにはポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等がある。またポリアルキレングリコールの誘導体等を用いることもできる。ポリアルキレングリコールの誘導体とは、オキシエチレンとオキシプロピレン、オキシテトラエチレン等からなるブロック共重合体や、多価アルコール等を連鎖移動剤として調製されたポリアルキレングリコール類等である。 このようなアルコールは、一般的な方法で製造したものを使用することができる。また市販品を購入して使用してもよい。 〔減圧脱水塔2B〕 減圧脱水塔2Bでは、混合槽2Aで得たヘミホルマール水溶液を脱水により濃縮し、低水分量のヘミホルマール濃縮物を得る。減圧脱水塔2Bの条件は特に限定されないが、温度や圧力はヘミホルマール濃縮物中に含まれる残留水分量を考慮しながら、上記脱水・濃縮時の条件を適宜調整することが好ましい。具体的には、温度は50℃以上80℃以下の範囲から選択されることが好ましく、圧力は50mmHg以下で選択されることが好ましい。 減圧脱水塔2Bによって濃縮された後のヘミホルマール濃縮物には依然微量の水が含まれるが、脱水・濃縮の操作条件により概ね1.0質量%以下になる。 ヘミホルマール濃縮物の調製に用いられるホルムアルデヒド水溶液の濃度は特に限定されないが、ホルムアルデヒドとして1質量%以上80質量%以下であることが好ましい。 [ホルムアルデヒドガス発生装置3] ホルムアルデヒドガス発生装置3では、ヘミホルマール濃縮物を熱分解することによりホルムアルデヒドガスを発生させる第二工程が行われる。この第二工程によって高純度のホルムアルデヒドガスが得られるが、その手法は特許文献6に記載されるように一般的に公知技術である。熱分解の温度条件は、ヘミホルマール結合の切断が可能であるような高温(通常は140℃以上)で行われるが、ホルムアルデヒドガス発生装置3における操作圧力と合わせて適宜調整することが可能である。一般的には140〜180℃の範囲が適当であり、温度が低すぎると分解率が上がらず、逆に温度が高すぎるとヘミホルマールを構成するアルコールの揮発・変質等の問題が発生するため、好ましくない。ホルムアルデヒドガス発生装置3は特に限定されるものでなく、回分式、半回分式、連続方式にて実施される各種槽型、管型・塔型等の各種熱分解装置、蒸発器を用いることができる。 ヘミホルマールの熱分解により発生したホルムアルデヒドガスは、そのままトリオキサンの気相合成の原料として扱うことも可能であるが、さらに残留水分や低減や、揮発したアルコールがトリオキサン生成装置4に混入することを防ぐため、ホルムアルデヒドガス発生装置3の出口側に冷却器(コンデンサー、図示せず)を取り付けて、残留水分や揮発アルコール成分を凝縮させることにより、ホルムアルデヒドガスをさらに精製することも可能である。 [トリオキサン生成装置4] トリオキサン生成装置4では、固体酸触媒を用い、ホルムアルデヒドガスからトリオキサンを含む反応生成ガスを気相合成する第三工程が行われる。 本発明では、ヘミホルマール濃縮物をホルムアルデヒドガス原料として用いており、反応系内の水分量が少ないため、固体酸触媒の種類は特に限定されないが、ケイ酸質の無機担持体に担持されたリン酸を含有する固体リン酸触媒であることが望ましい。 固体リン酸触媒の調製法は特に限定されるものではなく、一般的に知られる含浸法、ゾル−ゲル反応による調製方法等用いることができる。またリン酸の担持・固定化に用いられる担体も特に限定はされないが、多孔質シリカゲル、シリカアルミナ、珪藻土等珪酸質を主成分とする無機担持体が良く、それらから選ばれる一種もしくはこれらの混合物が好適に用いられる。 本発明に用いる固体リン酸触媒の調製方法の一例を以下に示すが、この手法・手順に限定されるものではない。まず市販のオルトリン酸(85%)を水で0.5〜50%濃度の範囲で希釈し、これを担持液とする。ここに所定量の多孔質シリカゲルの担体を加えて浸漬する。浸漬時間は、通常1時間程度又はそれ以上であれば特に問題ない。浸漬温度は特に限定されないが80℃以下、好ましくは50℃以下である。浸漬時には攪拌により担持液と担体を十分に混和させてもよい。次いで担持液を含む担体を取り出して液切りを行い、乾燥後特定の温度で焼成することによって本触媒は調製される。 なお固体酸触媒は、上記の調製方法によって得られる以外に、市販あるいは商用の固体酸触媒をそのまま用いることもできる。また固体酸触媒の形状についても、粉末状、粒子状、成形によるペレット状等特に限定されるものではないが、トリオキサン生成装置4が固定床反応器であり、この固定床反応器で気相合成を行う場合においては、成形体が好ましく用いられる。成形品の形状については特に制限はなく、例えば、押出し成形、打錠成形、スプレードライ、転動造粒、油中造粒等の方法で、ペレット状、板状、粒状等の各種成形体とすることができ、さらに成形体の粒径は0.5〜6mm程度の範囲で使用することができる。 上記の気相合成を行う際、トリオキサン生成装置4に供給するホルムアルデヒドガスの単位時間当たりの質量とトリオキサン生成装置4に充填する固体酸触媒の質量との比(これを質量空間速度WHSV[単位;h−1]と記す)は、用いる固体酸触媒の形状、酸成分の担持量及び反応条件によって異なり、トリオキサン収率に応じて適宜調整すればよい。WHSV(ホルムアルデヒドガス流量/触媒質量)の値は、1/50〜1h−1の範囲であることが好ましい。WHSVが1/50h−1未満では、供給されるホルムアルデヒドガスに対して触媒重量が多く、触媒の添加量に見合うだけのトリオキサンへの転化率を得られない可能性があるとともに、触媒のコストが多大になる可能性がある。一方、WHSVが1h−1を超えると、触媒に対して供給されるホルムアルデヒドガス量が多いため、十分な触媒との接触時間がとれずトリオキサンへの反応転化率が低下し得る。 またその他の反応条件として、温度に関しては本反応が発熱平衡反応であることを鑑みると一般に低温であることが望ましいが、ホルムアルデヒドガスがトリオキサン生成装置4の前後やトリオキサン生成装置4の内部で凝縮したり重合化(パラホルムアルデヒド生成)したりするのを避けられる温度に設定することが求められる。具体的には、トリオキサン生成装置4の内部の温度が80〜120℃であることが好ましく、90〜110℃であることがより好ましい。反応温度が低温になりすぎると十分な反応速度が得られず、またホルムアルデヒドの重合化が進行して触媒層での析出が起こるので望ましくない。逆に温度が120℃を超えると、トリオキサンの気相平衡濃度が大きく低下する上に副反応が多くなるので好ましくない。反応圧力は特に限定されないが、常圧〜5MPaの範囲で行われるのが好ましい。 トリオキサン生成装置4として用いる反応器の種類及び反応形式は制限されるものではなく、槽型反応器によるバッチ式、セミバッチ式、連続流通式や、固定床、流動床、移動床等の流通型反応器を採用することができるが、本反応は発熱平衡反応であるため、好ましくは固定床の流通型反応器を用い効率的に触媒層からの除熱を行うことが望ましい。固定床反応器は多管式のチューブリアクターであり、外側を熱媒が流通する。チューブ1本あたりの内径は熱媒による温度制御ならびに除熱の効果を高めるために大きくなりすぎないことが肝要で、好ましくは50mmφ以下である。50mmφを超える反応器では、充填した触媒の半径方向で温度勾配を生じやすく、充填内部で蓄熱しやすくなるので反応に不利となり好ましくない。また、リアクターチューブの内径が小さすぎても触媒の成形体を充填するのに不都合が生じるため、内径は、少なくとも10mmφ以上であることが好ましい。 トリオキサン生成装置4へのホルムアルデヒドガスの流通方法については、トリオキサン生成装置4が流動床型反応器である場合、上方流・下方流のどちらにしてもよいが、上方流にすると、反応生成ガスの空塔速度が増した場合に触媒を吹き上げる危険性があるので注意を要する。 また、本実施形態において、上方流又は下方流に用いるガスの種類は、特に限定されるものでなく、窒素もしくはアルゴン等の不活性ガス気流下で行うこともできる。 [分離装置5] 分離装置5では、トリオキサン生成装置4で生成された反応生成ガスからトリオキサンと未反応ホルムアルデヒドガスとを分離する第四工程が行われる。図1に示されるとおり、本実施形態では、吸収塔等を用いて反応生成ガスに含まれるトリオキサンを有機溶媒に吸収してトリオキサン溶液を得る一方、反応生成ガスに含まれる未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま分離装置5の外部に排出する。吸収塔の種類は特に限定されるものではなく、液膜式、液滴式又は気泡式のいずれであってもよい。 液膜式の一例として、充填塔、濡れ壁塔、液柱塔、連球(連珠)塔、円板塔等があり、また液滴式として、スプレー塔(噴霧式吸収装置)、各種スクラバー、遠心式吸収装置、流動層充填物吸収塔等がある。さらに気泡式としては、気泡塔、攪拌塔、棚段塔等が挙げられる。これらの中で、特に気液の接触面積を大きくとりトリオキサンの効率的な液相側への分配を実現する上で、充填塔が好んで用いられる。 また充填塔の場合、内部には通常ラシヒリングに代表される各種充填物を充填することができる。充填物の材質、形状については特に何ら限定されるものではなく、磁製、カーボン製、鋼製のいずれの材質、またリング型、サドル型、その他各種形状の充填物を用いることができる。また充填物のサイズについては、充填塔の塔径に合わせて適宜決めることが出来る。 一方、凝縮器等を用いてよりトリオキサン成分を凝縮させることでトリオキサンと未反応ホルムアルデヒドガスとを分離することも考えられるが、凝縮器内の温度が低いと、凝縮器内部でトリオキサン成分が凝縮・固化しやすく、これに伴って未反応ホルムアルデヒド成分も固化しやすくなり、ホルムアルデヒドガスの気相への分離が大きく低下するため、好ましくない。また、凝縮器内の温度を上げても、トリオキサンが気相のまま凝縮器のオーバーヘッド側へ抜けやすくなり、分離回収性が低下するため、好ましくない。また、冷却塔等を用いてトリオキサンを固化、結晶化させてトリオキサンと未反応ホルムアルデヒドガスとを分離することも考えられるが、凝縮器等を用いる場合と同様、冷却塔内の温度が低すぎるため、冷却塔内部でトリオキサン成分が固化しやすく、これに伴って未反応ホルムアルデヒド成分も固化しやすくなり、ホルムアルデヒドガスの気相への分離が大きく低下するため、好ましくない。 以下では、図1に示すように、吸収塔等を用いて反応生成ガスに含まれるトリオキサンを有機溶媒に吸収してトリオキサン溶液を得る場合について説明する。まず、トリオキサンと未反応ホルムアルデヒドガスとを含む反応生成ガスが分離装置5に連続的に供給される。 分離装置5の内部は、トリオキサンの沸点(114.5℃)以下に調整されている。トリオキサンの沸点を超えると、トリオキサンを有機溶媒に適切に吸収できないため、好ましくない。有機溶媒への吸収効率を高めるため、分離装置5の内部は60℃以下に調整されていることがより好ましい。 また、分離装置5の内部の圧力は、特に限定されるものではないが、ゲージ圧で1kgf/cm2以下であることが、未反応ホルムアルデヒドガスの気相への分離性を確保する点で好ましい。圧力が1kgf/cm2を超えると、分離装置内でのホルムアルデヒドガス同士の相互作用が高まり、重合化してパラホルムとして溶剤相に析出しやすくなる等の問題が生じるため好ましくない。 続いて、分離装置5に供給された反応生成ガスを有機溶媒と接触させることによって、反応生成ガスに含まれるトリオキサンを有機溶媒に吸収する。そして、反応生成ガスに含まれる未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま分離装置5の外部に排出する。 有機溶媒は、トリオキサンに対する溶解性が高く、ホルムアルデヒドに対する溶解性が低いものであれば、どのようなものであってもよいが、例えば、芳香族化合物の一例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、クメン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、クロロベンゼン、ナフタレン等が挙げられ、また脂環式化合物として、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、デカヒドロナルタレン等が挙げられる。このうち、トリオキサンの溶剤への分配性を考慮すると、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン等を挙げることができ、特に、最終精製工程での蒸留等による分離・精製操作を考慮するとベンゼンが好ましい。なお、無機溶媒は、トリオキサンに対する溶解性が低く、トリオキサンの溶媒への十分な分配率が得られないため、好ましくない。 そして、反応生成ガスに含まれる未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま分離装置5の外部に排出する。 分離装置5は、ラシヒリングを充填する充填塔を備え、この充填塔において、有機溶媒と反応生成ガスとを交流又は並流接触させることで、反応生成ガスに含まれるトリオキサンを有機溶媒に吸収し、反応生成ガスに含まれる未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま充填塔の外部に排出することがより好ましい。 [循環装置6] 循環装置6では、分離装置5によって分離された未反応ホルムアルデヒドガスを、トリオキサン生成装置4で用いるホルムアルデヒドガスとして循環リサイクルする循環リサイクル工程が行われる。このガス循環においては、一般的なガス循環装置(ファン、ナッシュポンプ等)を用いることができる。気相三量化の反応器へガスを循環させるには、差圧分だけガスを圧縮する必要が生じるため、その機能を備えたファン・ポンプを使用することができる。 以下、実施例及び比較例を示し具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。<ヘミホルマール濃縮物の調製>(数値は、ホルムアルデヒド1モルに対するアルコールに含まれる水酸基のモル数の割合を示したもの)〔調製例A〕 ホルムアルデヒド50質量%含むホルムアルデヒド水溶液と、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール(商品名:PD−9,協和発酵ケミカル社製)とを、ホルムアルデヒド水溶液に含まれるホルムアルデヒドに対するアルコールに含まれる水酸基のモル比(アルコールに含まれる水酸基のモル数/ホルムアルデヒド水溶液に含まれるホルムアルデヒドのモル数)が1.3になるように混合し、室温下で12時間反応させ、ヘミホルマール化を行った。この反応によって生成したヘミホルマール水溶液を、1000g/hrの速さで減圧脱水塔に連続供給し、75℃、35mmHgの条件で脱水を行い、調製例Aに係るヘミホルマール濃縮物(以下、「ヘミホルマール濃縮物A」という。)を得た。〔調製例B〕 2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールの代わりに3−メチル−1,5−ペンタンジオール(クラレ社製)を用いたこと以外は、調製例Aと同じ方法にて、調製例Bに係るヘミホルマール濃縮物(以下、「ヘミホルマール濃縮物B」という。)を得た。<固体酸触媒の調製>(その他、触媒Bとして市販品のアルミナを用いた。)〔調製例A1〕 濃度が約85%のオルトリン酸試薬(和光純薬製)に蒸留水を加え、リン酸濃度が25%になるように希釈した。そして、希釈後のリン酸水溶液100mlに対し、シリカゲル(商品名:CARiACT Q−50,富士シリシア化学社製)50gを加え1時間以上含浸操作を行った後、ろ過し、含浸されない不要な水溶液を除いた。こうして得られたリン酸担持体をオーブン内において150℃で2h焼成し、調製例A1に係る固体酸触媒(以下、「固体酸触媒A1」という。)を得た。〔調製例A2〕 上記オルトリン酸試薬に蒸留水を加え、リン酸濃度が5%になるように希釈したこと、及び焼成温度が300℃であること以外は、調製例A1と同じ方法にて、調製例A2に係る固体酸触媒(以下、「固体酸触媒A2」という。)を得た。〔その他〕 その他、アルミナSphere(α−type)「SAS−10」(商品名:BASFジャパン社より入手)をそのまま使用した。以下、このアルミナを「触媒B」という。<実施例及び比較例> 表3及び表4において、触媒A1及びA2は固体リン酸触媒、触媒Bはアルミナである。[実施例1]〔ヘミホルマール濃縮物Aの調製〕 まず、ヘミホルマール生成装置において上記ヘミホルマール濃縮物Aを得た。〔ホルムアルデヒドガスの調製〕 次いで、ヘミホルマール濃縮物Aの熱分解にあたり、まず、1L耐圧容器を備えるオートクレーブにヘミホルマール濃縮物Aを600ml仕込み、さらにフラスコ外部よりヘミホルマールを300ml/hの一定速度で連続的に供給・排出を行えるようローラーポンプを設置した。また、オートクレーブ容器内にキャリアーガスとして窒素を一定流量(50〜100ml/min)で供給した。オートクレーブの液温度として160〜170℃の間でヘミホルマールの熱分解反応を行い、ホルムアルデヒドガスと窒素との混合ガスを調製した。ここで、ホルムアルデヒドガスと窒素の混合比がモル比で70:30よりもホルムアルデヒドの組成が高くなるよう、窒素流量と分解温度を適宜調整した。〔ホルムアルデヒドガスからトリオキサンを含む反応生成ガスへの気相合成〕 トリオキサンへの気相三量化反応は、ヘミホルマール濃縮物Aの熱分解によって得たホルムアルデヒドガスを固体酸触媒A1と接触させることで行った。トリオキサン生成装置は、内径30mmφの固定床型の反応器(大倉理研製)であり、ここに予め調製した固体酸触媒A1を135g充填し、反応管の外側のジャケット流(オイル)により100℃に加温した。固体酸触媒A1が充填された固定床反応器内に、ホルムアルデヒドガスを下方流によって連続的に供給した。反応生成ガスは、約125℃に保温されたSUS316製の配管を通じてトリオキサン生成装置の外部に連続的に排出され、さらに分離装置に誘導された。〔反応生成ガスの分離〕 分離装置として、ジャケット式の二重管(約25mmφ)を有する充填塔を用いた。この充填塔の内部に、6mmφの磁製ラシヒリングを充填した。そして、二重管の下部から反応生成ガスを連続的に供給するとともに、上部からベンゼンを200ml/hの流量で供給することにより、反応生成ガスとベンゼンとを交流接触させた。ガス状のトリオキサンはベンゼンに吸収され、液相として充填塔の下部から排出した。一方、未反応のホルムアルデヒドガスは、ベンゼンに吸収されることなく、充填塔の上部からガス状のまま排出された。充填塔内の温度は、ジャケットを流れる冷却水により30℃となるよう調整された。〔未反応ホルムアルデヒドガスのリサイクル〕 続いて、充填塔の上部より排出される未反応ホルムアルデヒドガスをトリオキサン生成装置に循環リサイクル供給した。[実施例2] 分離装置が充填塔の代わりに気泡塔であり、この気泡塔に対し、反応生成ガスをベンゼン溶液中に直接吹き込む形で反応生成ガスを分離したこと以外は、実施例1と同じ方法によってトリオキサンを製造した。[実施例3] ヘミホルマール生成装置において得るヘミホルマール濃縮物が上記ヘミホルマール濃縮物Aではなく上記ヘミホルマール濃縮物Bであること以外は、実施例1と同じ方法によってトリオキサンを製造した。[実施例4] 触媒として固体酸触媒A1の代わりに固体酸触媒A2を用い、充填塔内への有機溶媒(ベンゼン)の供給量を400g/hとしたこと以外は、実施例1と同じ方法によってトリオキサンを製造した。[比較例1] ホルムアルデヒドガス発生装置に供給する原料をヘミホルマール濃縮物ではなく、50%のホルムアルデヒド水溶液をそのまま使用したこと以外は、実施例1と同じ方法によってトリオキサンを製造した。[比較例2] 触媒として固体リン酸触媒の代わりにアルミナ(触媒B1)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法によってトリオキサンを製造した。[比較例3] 固体酸触媒A1の代わりに固体酸触媒A2を用い、さらに分離装置内で使用する溶媒としてベンゼンの代わりに蒸留水を用いた以外は、実施例1と同じ方法によってトリオキサンを製造した。[比較例4〜5] 固体酸触媒A1の代わりに固体酸触媒A2を用い、分離装置として充填塔の代わりにジャケット式の凝縮器(内径約25mmφ)を用い、凝縮器内で溶媒を用いず直接反応生成ガスの気液分離を試みた。比較例4ではジャケットによる内部温度を30℃とし、また比較例5では50℃とした。<評価> 実施例及び比較例のそれぞれについて、トリオキサン製造装置の運転を6時間以上連続して行った。そして、(1)トリオキサン生成装置においては、トリオキサンの収率及び反応選択率を、(2)分離装置においては、トリオキサンの溶媒への分配率、及びホルムアルデヒドの気相への分配率を評価した。 トリオキサンの収率及び溶媒への分配率は、溶媒中のトリオキサン濃度をガスクロマトグラフィー(装置名:GC−2014,島津製作所社製、カラム:TSG−1(15%)4m長)によって算出するとともに、気相側に抜けたトリオキサン成分量を一旦水で補集し、この水溶液を別のカラムのガスクロマトグラフィー(装置名:GC−9A,島津製作所社製、カラム:Chromsorb101,5m長)で測定することによって算出した。 トリオキサンの反応選択率は、反応副生成物であるメタノール、蟻酸メチル及びメチラールの濃度をガスクロマトグラフィー(装置名:GC−9A,島津製作所社製、カラム:Chromsorb101,5m長)で測定し、また、蟻酸の濃度を滴定で算出した後、これらの結果からトリオキサン選択率を計算することによって算出した。 ホルムアルデヒドの気相への分配率は、一旦吸収塔のオーバーヘッドからガスを抜き出し、これを水で吸収した後、このホルムアルデヒド水溶液を亜硫酸ナトリウム法による滴定で濃度を算出するとともに、吸収液側に分配されたホルムアルデヒド成分を同様に滴定により算出し、両者の比を求めることにより算出した。結果を表5及び表6に示す。<結果> ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとからヘミホルマールを得る第一工程と、上記ヘミホルマールを熱分解することによりホルムアルデヒドガスを発生させる第二工程と、トリオキサン生成装置に上記ホルムアルデヒドガスを供給し、固体酸触媒を用い、上記ホルムアルデヒドガスからトリオキサンを含む反応生成ガスを気相合成する第三工程と、上記反応生成ガスを有機溶媒と接触させることによって上記反応生成ガスに含まれるトリオキサンを上記有機溶媒に吸収し、上記反応生成ガスに含まれる未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま外部に排出する第四工程と、上記第四工程にて分離した上記未反応ホルムアルデヒドガスを、上記第三工程における前記ホルムアルデヒドガスとして循環リサイクルする循環リサイクル工程とを経てトリオキサンを製造する場合、トリオキサン生成装置におけるトリオキサンの収率及び反応選択率が有意に高いとともに、分離装置における分配率も有意に良好であることが確認された(実施例1〜4)。 一方、ホルムアルデヒドガス発生装置において、ヘミホルマール濃縮物ではなく、ホルムアルデヒド水溶液を原料として供給すると、トリオキサンの収率が著しく低く、実施例ほど効率的にトリオキサンを製造できないことが確認された(比較例1)。これは、原料中には水が高濃度で存在するため、気相反応に対して不利であるばかりか、多量の水による固体酸触媒の失活や、ホルムアルデヒドガスの再重合化(パラホルム化)が起こり易いためであると考えられる。なお、トリオキサンの収率が著しく低いため、分離装置の評価は行っていない。 また、ホルムアルデヒドガスから触媒を用いてトリオキサンを得る際、触媒として固体酸触媒ではなくアルミナを用いると、トリオキサンの収率が著しく低く、実施例ほど効率的にトリオキサンを製造できないことが確認された(比較例2)。これは、アルミナが有する触媒表面上の塩基点の影響により、本来トリオキサンの生成に有効なプロトン酸としての酸触媒の作用を低下させるためと考えられる。なお、トリオキサンの収率が著しく低いため、分離装置の評価は行っていない。 また、分離装置で使用する溶媒が無機溶媒(蒸留水)であると、未反応ホルムアルデヒドガスの気相分離が困難であり、好ましくないことが確認された(比較例3)。 また、分離装置としてジャケット式の凝縮器を用い、凝縮器内で溶媒を用いず直接反応生成ガスの気液分離を試みようとすると、凝縮器内の温度が低い場合は、凝縮器内部でトリオキサン成分が凝縮・固化しやすく、これに伴って未反応ホルムアルデヒド成分も固化しやすくなり、ホルムアルデヒドガスの気相への分離が大きく低下するため、好ましくないことが確認された(比較例4)。また、凝縮器内の温度が高いと、トリオキサンが気相のまま凝縮気のオーバーヘッド側へ抜けやすくなり、分離回収性が低下するため、好ましくないことが確認された(比較例5)。 1 トリオキサン製造装置 2 ヘミホルマール生成装置 3 ホルムアルデヒドガス発生装置 4 トリオキサン生成装置 5 分離装置 6 循環装置 ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとからヘミホルマールを得る第一工程と、 前記ヘミホルマールを熱分解することによりホルムアルデヒドガスを発生させる第二工程と、 トリオキサン生成装置に前記ホルムアルデヒドガスを供給し、固体酸触媒を用い、前記ホルムアルデヒドガスからトリオキサンを含む反応生成ガスを気相合成する第三工程と、 前記反応生成ガスを有機溶媒と接触させることによって前記反応生成ガスに含まれるトリオキサンを前記有機溶媒に吸収し、前記反応生成ガスに含まれる未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま外部に排出する第四工程と、 前記第四工程にて分離した前記未反応ホルムアルデヒドガスを、前記第三工程における前記ホルムアルデヒドガスとして循環リサイクルする循環リサイクル工程と、を含む、トリオキサン製造方法。 前記アルコールは、沸点が190℃以上のモノオール、ジオール又はトリオールから選択される1種又は2種以上の組合せである、請求項1に記載のトリオキサン製造方法。 前記固体酸触媒はケイ酸質の無機担持体に担持されたリン酸を含有する、請求項1又は2に記載のトリオキサン製造方法。 前記第三工程における、前記トリオキサン生成装置に供給するホルムアルデヒドガスの単位時間当たりの質量と、前記トリオキサン生成装置に充填する前記固体酸触媒の質量との比を示す質量空間速度WHSVの値は1/50h−1以上1h−1以下である、請求項1から3のいずれかに記載のトリオキサン製造方法。 前記第三工程では、 前記固体酸触媒を多管式の固定床反応器に充填し、 前記第二工程で得られた前記ホルムアルデヒドガス及び前記循環リサイクル工程で循環リサイクルされた前記未反応ホルムアルデヒドガスと、前記固体酸触媒とを不均一系で接触させ、 トリオキサンを気相状態のまま連続的に前記固定床反応器から抜き出すことによってトリオキサンを気相合成する、 請求項1から4のいずれかに記載のトリオキサン製造方法。 前記有機溶媒はベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンから選択される1以上である、請求項1から5のいずれかに記載のトリオキサン製造方法。 前記第四工程では、前記第三工程で合成されたトリオキサンと前記第三工程で未反応である未反応ホルムアルデヒドガスとを含む反応生成ガスを、前記トリオキサンの沸点以下の温度に調節された分離装置に連続的に供給する、請求項1から6のいずれかに記載のトリオキサン製造方法。 前記分離装置は、液膜式、液滴式又は気泡式のいずれかによる吸収塔を備える、請求項7に記載のトリオキサン製造方法。 前記吸収塔は、前記液膜式による吸収塔であり、 前記吸収塔は、充填材を充填する充填塔を備え、 前記第四工程では、前記有機溶媒と前記反応生成ガスとを交流又は並流接触させることで、前記反応生成ガスに含まれるトリオキサンを前記有機溶媒に吸収し、前記反応生成ガスに含まれる前記未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま前記分離装置の外部に分離する、請求項8に記載のトリオキサン製造方法。 前記分離装置の内部の温度は60℃以下である、請求項7から9のいずれかに記載のトリオキサン製造方法。 前記分離装置の内部の圧力はゲージ圧で1kgf/cm2以下である、請求項7から10のいずれかに記載のトリオキサン製造方法。 ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとからヘミホルマールを得るヘミホルマール生成装置と、 前記ヘミホルマールを熱分解し、ホルムアルデヒドガスを発生させるホルムアルデヒドガス発生装置と、 固体酸触媒を用い、前記ホルムアルデヒドガスからトリオキサンを含む反応生成ガスを気相合成するトリオキサン生成装置と、 前記反応生成ガスを有機溶媒と接触させることによって前記反応生成ガスに含まれるトリオキサンを前記有機溶媒に吸収し、前記反応生成ガスに含まれる未反応ホルムアルデヒドガスを気相のまま外部に排出する分離装置と、 前記未反応ホルムアルデヒドガスを前記トリオキサン生成装置に循環する循環装置と、を備えるトリオキサン製造装置。 【課題】ホルムアルデヒド水溶液からトリオキサンを製造する場合において、トリオキサンの収率及び選択率を高め、かつ、未反応ホルムアルデヒドの量を最小限に抑えることを目的とする。【解決手段】本発明の製造方法は、ホルムアルデヒド水溶液とアルコールとから得たヘミホルマール濃縮物を熱分解してホルムアルデヒドガスを発生させ、固体酸触媒を用い、上記ホルムアルデヒドガスからトリオキサンを含む反応生成ガスを得る。そして、反応生成ガスを有機溶媒と接触させることで、反応生成ガスに含まれるトリオキサンと未反応ホルムアルデヒドガスとを気液分離し、分離後の未反応ホルムアルデヒドガスを、循環リサイクルし、反応生成ガスを得る系に加える。【選択図】図1