タイトル: | 公開特許公報(A)_新規な複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体およびそれを用いた電子注入材料、電子輸送材料および有機エレクトロルミネッセンス素子 |
出願番号: | 2012161566 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07D 213/22,C07D 213/30,C09K 11/06,H01L 51/50 |
城戸 淳二 宮元 雅吏 早津 匡人 大前 吉則 JP 2013028600 公開特許公報(A) 20130207 2012161566 20120720 新規な複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体およびそれを用いた電子注入材料、電子輸送材料および有機エレクトロルミネッセンス素子 ケミプロ化成株式会社 394013644 岡本 利郎 100116481 城戸 淳二 宮元 雅吏 早津 匡人 大前 吉則 C07D 213/22 20060101AFI20130111BHJP C07D 213/30 20060101ALI20130111BHJP C09K 11/06 20060101ALI20130111BHJP H01L 51/50 20060101ALI20130111BHJP JPC07D213/22C07D213/30C09K11/06 690H05B33/14 AH05B33/22 B 4 2007029695 20070208 OL 75 3K107 4C055 3K107AA01 3K107BB01 3K107CC03 3K107CC12 3K107DD74 3K107DD80 4C055AA01 4C055BA02 4C055BA03 4C055BA16 4C055BA25 4C055BB15 4C055CA01 4C055DA01 4C055EA01 本発明は、新規な複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体およびそれを用いた電子注入材料、電子輸送材料および有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。 有機エレクトロルミネッセンス(OEL)ディスプレイは、電荷注入型の発光素子であり高輝度、高コントラスト、高速応答などの特徴を有しており、軽くて薄いと言う長所を生かして液晶やプラズマと言ったディスプレイに代わる次世代ディスプレイとして注目されている。ここ10年あたりの技術進歩は目を見張るものがあり、すでに実用化レベルに達していると言っても過言ではない。 実用化レベルに達した要因としては、材料の進歩、周辺技術の進歩、そして光取りだし技術の進歩が挙げられる。 材料の進歩として特筆すべき内容は、下記式に示されるトリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)Ir(ppy)3に代表されるリン光材料の使用である(非特許文献1)。また金属(無機材料)−有機材料界面、有機材料−有機材料界面の改良もデバイスの高効率化につながっている。 有機材料−有機材料の界面改良については、界面混合層を設けることにより有機層間の障壁を少なくすることで励起子同士の再結合がスムーズに行く様な工夫がなされている(非特許文献2)。 一方金属(無機材料)−有機材料界面の改良は、陽極界面はスズ−酸化インジウム電極(ITO)の上に下記式で示されるポリアニリン(PAn)(非特許文献3)や下記式で示されるポリエチレンジオキサチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)(非特許文献4)と言った導電性高分子材料の層をスピンコート法などで作成しホール輸送層に対してホールの注入障壁を下げている。真空蒸着法では下記式で示される銅フタロシアニン(CuPc)なども用いられている(特許文献1)。また陰極界面では、アルミ電極と電子輸送層の間に薄い電子注入層を設けることで陰極からの電子の注入障壁を下げている。 陰極界面の制御に関しては、素子の劣化にも十分関係しておりその問題点としては、有機薄膜が電気的にオーミックコンタクトしにくい点と物理的に付着力が弱いという点を含んでいる(非特許文献5)。 陰極の電子注入障壁を下げる目的で現在フッ化リチウム(LiF)が用いられている(非特許文献6)。これはLiFを用いることで陰極界面の障壁が−1.0eV〜−0.8eV低くなり、この結果陰極から電子輸送層に対する電子の注入がより容易になっている。また同様の効果が期待できるものとして下記式で示される8−キノリノラトリチウム(Liq)なども用いられている(非特許文献7)。さらに効果が期待できるものとして下記式で示されるような有機化合物とアルカリ金属をドープしたバソクプロイン−金属セシウムドープ(Bphen:Cs)などが用いられる様になった(非特許文献)。 しかしこれらの材料も課題が残されており、例えばLiFでは均一な製膜が難しく縞状の薄膜が作成されること、無機化合物のため蒸着温度が一般に高く(800℃以上)場合によっては輻射熱で既に蒸着している有機層がダメージを受けること、またLiqの場合、Liqの電子移動度が低いため注入された電荷が十分に電子輸送材料に供給されないこと、さらにアルカリ金属ドープについてはセシウムのドープ量によって電子注入層の特性が大きく変化するなどの難点があった。米国特許第5061569号明細書M.A.Baldo,S.Lamansky,P.E.Burrows, M.E.Thompson,S.R.Forrest,Appl.Phys.Lett.75 4(1999)H.Ishii,K.Sugiyama, D.Yoshimura,E.Ito,Y.Ouchi,K.Seki,IEEE J.Sel.Top.Quant.Electron.,4 24(1998)Y.Yang,E.Westerweele,C.Zhang,P.Smith,A.J.Heeger,J.Appl.Phys.77 694(1995)J.M.Bharathan,Y.Yang,Appl.Phys.Lett.72 2660(1998)有機EL材料技術(2004)株式会社シーエムシー出版L.S.Hung,C.W.Tang,M.G.Mason,Appl.Phys.Lett.,70 152(1997)J.Endo,T.Matsumoto.J.Kido,Ext.Abstr.(9th Int.Workshop on Inorg.and Org.Electroliminescence),57(1998)Y.Kishigami,Y.Kondo,K.Tsubaki.J.Kido,Polym.Preprints,Japan 49 3385(2000) 本発明の目的は、素子の低電圧駆動を可能にし、高効率な素子を提供するために必要な新規な複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体およびそれを用いた電子注入材料、電子輸送材料および有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する点にある。 本発明の第1は、下記一般式(1)で示される複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体に関する。(式中、Mはアルカリ金属であり、Aは下記式で示されるピリジル基である。また、R1〜R4は水素、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキルアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。)(式中、R5〜R8は水素、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキルアミノ基、ピリジル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。) 本発明の第2は、請求項1記載の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体よりなる電子注入材料に関する。 本発明の第3は、請求項1記載の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体よりなる電子輸送材料に関する。 本発明の第4は、請求項1記載の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。 本発明の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体は、Liq等の従来の電子注入材料に比べ電子注入能が非常に大きい。後述するように、本発明の化合物は、3.0nm〜5.0nmと薄い膜状で積層してもLiFと同程度の注入特性を示した。また本発明の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体を、金属−有機界面にてAlq3とドープしたところ本発明の化合物と1:1の比率のものが最も効果が高く、初期特性100cd/m2で5.1V低電圧化した。 よって本発明の化合物は、素子にかかる電圧を低電圧化させ高効率化させるために必要なものであり工業的に極めて重要なものである。実施例1の2−ピリジルフェノール(略称PP)の1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)(全領域)を示す。実施例1の2−ピリジルフェノール(略称PP)のMassスペクトルを示す。実施例1の2−ピリジルフェノール(略称PP)のIRスペクトルを示す。実施例1の2−ピリジルフェノール(略称PP)の真空TGAの結果を示す。実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(略称LiPP)の1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を示す。実施例3の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトナトリウム(略称NaPP)の1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を示す。実施例4の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトカリウム(略称KPP)の1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を示す。実施例5の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトセシウム(略称CsPP)(実施例5)の1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を示す。実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(略称LiPP)真空TGAの結果を示す。実施例3の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトナトリウム(略称NaPP)の真空TGAの結果を示す。実施例4の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトカリウム(略称KPP)の真空TGAの結果を示す。実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(略称LiPP)の薄膜(50nm)における紫外−可視吸収曲線を示す。実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(略称LiPP)の薄膜(50nm)におけるフォトルミネッセンス曲線を示す。実施例9の2−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノール(略称Bpp)の1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を示す。実施例9の2−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノール(略称Bpp)の1H−NMRスペクトル(重ジメチルスルホン溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を示す。実施例9の2−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノール(略称Bpp)のMassスペクトルを示す。実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(略称Libpp)のIRスペクトルを示す。実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(略称Libpp)の1H−NMRスペクトル(重ジメチルスルホン溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を示す。実施例11の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトナトリウム(略称Nabpp)の1H−NMRスペクトル(重ジメチルスルホン溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を示す。実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム((略称Libpp)の薄膜(50nm)における紫外−可視吸収曲線を示す。実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム((略称Libpp)の薄膜(50nm)におけるフォトルミネッセンス曲線を示す。実施例22〜26及び比較例1、2の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。実施例22〜26及び比較例1、2の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流密度−電圧特性を示す。実施例22〜26及び比較例1、2の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の輝度−電圧特性を示す。実施例27〜31及び比較例3、4の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。実施例27〜31及び比較例3、4の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流密度−電圧特性を示す。実施例27〜31及び比較例3、4の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の輝度−電圧特性を示す。実施例36〜37及び比較例7、8の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。実施例36〜37及び比較例7、8の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流密度−電圧特性を示す。実施例36〜37及び比較例7、8の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の輝度−電圧特性を示す。実施例39〜41及び比較例9の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。実施例39〜41及び比較例9の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流密度−電圧特性を示す。実施例39〜41及び比較例9の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の輝度−電圧特性を示す。実施例42〜44及び比較例10の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。実施例42〜44及び比較例10の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流密度−電圧特性を示す。実施例42〜44及び比較例10の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の輝度−電圧特性を示す。実施例48の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。実施例48の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流密度−電圧特性を示す。実施例48の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の輝度−電圧特性を示す。実施例48の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電力効率−電圧特性を示す。実施例48の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流効率−電圧特性を示す。実施例49の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。実施例49の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流密度−電圧特性を示す。実施例49の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の輝度−電圧特性を示す。実施例49の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電力効率−電圧特性を示す。実施例49の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流効率−電圧特性を示す。実施例51〜52および比較例12〜14の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流密度−電圧特性を示す。実施例54〜56、および比較例15の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。実施例54〜56、および比較例15の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流密度−電圧を示す。実施例54〜56、および比較例15の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の輝度−電圧を示す。実施例54〜56、および比較例15の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の視感効率−電圧を示す。実施例54〜56、および比較例15の有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)の電流効率−電圧特性を示す。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図。 本発明におけるR1〜R8における炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチルなどを挙げることができる。 本発明におけるR1〜R8における炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルコキシ基は、−OHの水素を前記アルキル基で置換されたタイプのもの、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を持つアルキルアミノ基は、−NH2の水素の1部または全部が前記アルキル基で置換されたタイプのものである。 本発明の化合物は、下記の反応により製造することができる。 なお、式中、R1〜R8、Mはすべて前記のとおりである。 本発明化合物の具体例を以下に例示する。下記化合物では、Liの場合については多数の例示化合物を挙げ、その他の金属の例示化合物は少ないが、Liの代わりにNa、K、Csを入れ替えて考えれば、多数の例示をしているに等しいと考えている。 ただし、本発明化合物を、電子注入材料や電子輸送材料として用いる場合には、Liが他の金属に較べてはるかに有効性が高い。 本発明の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体は高い電子注入性能を有する。従って電子注入材料として使用することができる。また電子輸送性能もあわせて持つため電子輸送材料として使用することも可能である。 本発明の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体を有機エレクトロルミネッセンスに使用する場合、適当な発光材料と組み合わせて使用することができる。 本発明の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体を電子注入層に用いる場合、本発明の化合物は電子注入材料として使用できる。また他の電子注入材料と組み合わせて使用することができる。 本発明の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体を電子輸送層に用いる場合、本発明の化合物は電子輸送材料として使用できる。また他の電子輸送材料と組み合わせて使用することができる。 次に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)について説明する。本発明の有機EL素子は、陽極と陰極間に一層もしくは多層の有機化合物を積層した素子であり、該有機化合物層の少なくとも一層が本発明の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体を含有する。有機EL素子が一層の場合、陽極と陰極間に発光層を設けている。発光層は、発光材料を含有しそれに加えて陽極から注入した正孔もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送するのが目的で、本発明の化合物もしくは既存の正孔輸送材料もしくは電子輸送材料を含有していても良い。多層型の有機EL素子の構成例としては、例えば陽極(ITO)/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、ITO/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、ITO/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/陰極、ITO/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、ITO/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極等の多層構成で積層したものが挙げられる。また、必要に応じて陰極上に封止層を有していても良い。 正孔輸送層、電子輸送層、および発光層のそれぞれの層は、一層構造であっても、多層構造であっても良い。また正孔輸送層、電子輸送層はそれぞれの層で注入機能を受け持つ層(正孔注入層および電子注入層)と輸送機能を受け持つ層(正孔輸送層および電子輸送層)を別々に設けることもできる。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記構成例に限らず、種々の構成とすることができる。必要に応じて、正孔輸送成分と発光層成分、あるいは電子輸送層成分と発光層成分を混合した層を設けても良い。 以下本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の構成要素に関して、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極からなる素子構成を例として取り上げて説明する。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。 基板の素材については特に制限はなく、従来の有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであれば良く、例えば、ガラス、石英ガラス、透明プラスチックなどからなるものを用いることができる。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極としては、仕事関数の大きな金属単体(4eV以上)、仕事関数の大きな金属同士の合金(4eV以上)または導電性物質およびこれらの混合物を電極材料とすることが好ましい。このような電極材料の具体例としては、金、銀、銅等の金属、ITO(インジウム−スズオキサイド)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性透明材料、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子材料が挙げられる。陽極はこれらの電極材料を、例えば蒸着、スパッタリング、塗布などの方法により形成することができる。陽極のシート電気抵抗は数百Ω/cm2以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、一般に5〜1,000nm程度、好ましくは10〜500nmである。 陰極としては、仕事関数の小さな金属単体(4eV以下)、仕事関数の小さい同士の合金(4eV以下)または導電性物質およびこれらの混合物を電極材料とすることが好ましい。このような電極材料の具体例としては、リチウム、リチウム−インジウム合金、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−マグネシウム合金などが挙げられる。陰極はこれらの電極材料を、例えば蒸着、スパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより作成することができる。陰極のシート電気抵抗は数百Ω/cm2以下が好ましい。陰極の膜厚は材料にもよるが、一般に5〜1,000nm程度、好ましくは10〜500nmである。本発明の有機EL素子の発光を効率よく取り出すために、陽極または陰極の少なくとも一方の電極は透明もしくは半透明であることが好ましい。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層は、正孔伝達化合物からなるもので、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有している。電界が与えた2つの電極の間に正孔伝達化合物が配置されて陽極から正孔が注入された場合、少なくとも10−6cm2/V・秒以上の正孔移動度を有する正孔伝達物質が好ましい。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層に使用する正孔伝達物質は、前記の好ましい性能を有するものであれば特に制限はない。従来から光導電材料において正孔の電荷注入材料として慣用されているものや有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層に使用されている公知の材料の中から任意のものを選択して用いることができる。 前記の正孔伝達物質としては、たとえば銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体、N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N,N′−ジ(m−トリル)−N,N′−ジフェニル−4,4−ジアミノフェニル(TPD)、N,N′−ジ(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニル−4,4−ジアミノフェニル(α−NPD)等のトリアリールアミン誘導体、ポリフェニレンジアミン誘導体、ポリチオフェン誘導体、および水溶性のPEDOT−PSS(ポリエチレンジオキサチオフェン−ポリスチレンスルホン酸)などが挙げられる。正孔輸送層は、これらの他の正孔伝達化合物一種または二種以上からなる一層で構成されたものでよく、前記の正孔伝達物質とは別の化合物からなる正孔輸送層を積層したものでも良い。 正孔注入材料としては、下記化学式に示されるPEDOT−PSS(ポリマー混合物)やDNTPDを挙げることができる。 正孔輸送材料としては、下記化学式に示すTPD、DTASi、α−NPDなどを挙げることができる。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層については、本発明の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体を用いることができる。また従来の公知の材料についても特に制限はなく任意のものを選択して用いることができる。 発光材料としては、ペリレン誘導体、ナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体(例えばクマリン1、クマリン540、クマリン545など)、ピラン誘導体(例えばDCM−1、DCM−2、DCJTBなど)、有機金属錯体、例えばトリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Almq3)等の蛍光材料や[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2′]イリジウム(III)ピコリレート(FIrpic)、トリス{1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1H−ピラゾラート−N,C2′}イリジウム(III)(Irtfmppz3)、ビス[2−(4′,6′−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2′]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート(FIr6)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(Irppy3)などのリン光材料などを挙げることができる。 発光層は、ホスト材料とゲスト材料(ドーパント)から形成することもできる[Appl.Phys.Lett.,65 3610(1989)]。特にリン光材料を発光層に使用する場合、ホスト材料の使用が必要であり、この時使用されるホスト材料としては4,4′−ジ(N−カルバゾリル)−1,1′−ビフェニル(CBP)、1,4−ジ(N−カルバゾリル)ベンゼン−2,2′−ジ[4″−(N−カルバゾリル)フェニル]−1,1′−ビフェニル(4CzPBP)等が挙げられる。 ゲスト材料は、ホスト材料に対して好ましくは0.01〜40重量%であり、より好ましくは0.1〜20重量%である。ゲスト材料としては、下記に示す従来公知のFIrpic、Irppy3、FIr6等を挙げることができる。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の電子輸送層の材料としては、本発明の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体が好ましい。このものは単独で使用できるが他の電子輸送材料と併用しても構わない。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、電子注入性をさらに向上させる目的で陰極と有機層の間に導電体から構成される電子注入層をさらに設けても良い。ここで使用される導電体としては、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属有機錯体から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用することが好ましい。アルカリ金属ハロゲン化物としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、塩化リチウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウムなどが挙げられる。アルカリ金属有機錯体としては、8−ヒドロキシキノリノラトリチウム、8−ヒドロキシキノリノラトセシウムなどが挙げられる。 また本発明化合物を電子注入層として使用する場合は、上記の電子注入材料と併用することもできる。電子注入層の膜厚は0.1〜100nm、好ましくは0.1〜50nm、とくに好ましくは0.5〜10nmである。 正孔輸送層、発光層の形成方法については特に限定されるものではない。例えば乾式製膜法(例えば真空蒸着法、イオン化蒸着法など)、湿式製膜法〔溶媒塗布法(例えばスピンコート法、キャスト法、インクジェット法など)〕を使用することができる。本発明の新規な複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体は、乾式製膜法(例えば真空蒸着法、イオン化蒸着法など)が好ましい。電子輸送層の製膜については、湿式製膜法で行うと下層が溶出する恐れがあるため乾式製膜法(例えば真空蒸着法、イオン化蒸着法など)に限定される。素子の作成については上記の製膜法を併用しても構わない。 真空蒸着法により正孔輸送層、発光層、電子輸送層などの各層を形成する場合、真空蒸着条件は特に限定されるものではない。通常10−5Torr程度以下の真空下で50〜500℃程度のボート温度(蒸着原温度)、−50〜300℃程度の基板温度で、0.01〜50nm/sec.程度蒸着することが好ましい。正孔輸送層、発光層、電子輸送層の各層を複数の化合物を使用して形成する場合、化合物を入れたボートをそれぞれ温度制御しながら共蒸着することが好ましい。 正孔輸送層、発光層を溶媒塗布法で形成する場合、各層を構成する成分を溶媒に溶解または分散させて塗布液とする。溶媒としては、炭化水素系溶媒(例えばヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、ハロゲン系溶媒(例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、エーテル系溶媒(例えばジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等)、非プロトン性溶媒(例えばN,N′−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等)、水等が挙げられる。溶媒は単独で使用しても良く、複数の溶媒を併用しても良い。 正孔輸送層、発光層、電子輸送層等の各層の膜厚は、特に限定されるものではないが、通常5〜5,000nm、好ましくは5〜1000nm、とくに好ましくは10〜100nmになるようにする。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、酸素や水分等の接触を遮断する目的で保護層(封止層)を設けたり、不活性物質中に素子を封入して保護することができる。不活性物質としては、パラフィン、シリコンオイル、フルオロカーボン等が挙げられる。保護層に使用する材料としては、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、光硬化性樹脂等がある。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常直流駆動の素子として使用できる。直流電圧を印加する場合、陽極をプラス、陰極をマイナスの極性として通常1.5〜20V程度印加すると発光が観察される。また本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は交流駆動の素子としても使用できる。交流電圧を印加する場合には、陽極がプラス、陰極がマイナスの状態になった時に発光する。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば電子写真感光体、フラットパネルディスプレイなどの平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト、計器等の光源、各種発光素子、各種表示装置、各種標識、各種センサー、各種アクセサリーなどに使用することができる。 図53〜図66に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好ましい例を示す。 図53は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図であり、基板1上に陽極2、発光層3および陰極4を順次設けた構成のものである。ここで使用する発光材料は、それ自体が正孔輸送性、電子輸送性および発光性の機能を単一で有している場合や、それぞれの機能を有する化合物を混合して使用する場合に有用である。 図54は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図であり、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、発光層3および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、発光層は電子輸送性の機能を有している場合に有用である。 図55は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図であり、基板1上に陽極2、発光層3、電子輸送層6および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、発光層は正孔輸送性の機能を有している場合に有用である。 図56は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図であり、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、発光層3、電子輸送層6および陰極4を順次設けた構成のものである。これはキャリア輸送と発光の機能を分離したものであり、材料選択の自由度が増すために、発光の高効率化や発光色の自由度が増すことになる。 図57は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図であり、基板1上に陽極2、正孔注入層7、正孔輸送層5、発光層3、電子輸送層6および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、正孔注入層7を設けることにより、陽極2と正孔輸送層5の密着性を高めたり、陽極からの正孔の注入を良くし、発光素子の低電圧化に効果がある。 図58は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図であり、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、発光層3、電子輸送層6、電子注入層8および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、陰極4から電子の注入を良くし、発光素子の低電圧化に効果がある。 図59は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図であり、基板1上に陽極2、正孔注入層7、正孔輸送層5、発光層3、電子輸送層6、電子注入層8および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、陽極2から正孔の注入を良くし、陰極4から電子注入を良くし、最も低電圧駆動に効果がある構成である。 図60〜図66は素子の中に正孔ブロック層を挿入したものの断面図である。正孔ブロック層は、陽極から注入された正孔、あるいは発光層3で再結合により生成した励起子が、陰極4に抜けることを防止する効果があり、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率の向上に効果がある。正孔ブロック層9については、発光層3と陰極4の間もしくは発光層3と電子輸送層6の間あるいは発光層3と電子注入層8の間に挿入することができる。より好ましいものは発光層3と電子輸送層6の間である。 図60〜図66で、正孔輸送層5、正孔注入層7、電子輸送層6、電子注入層8、発光層3、正孔ブロック層9のそれぞれの層は、一層構造であっても多層構造であっても良い。 図60〜図66は、あくまでも基本的な素子構成であり、本発明の化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の構成はこれに限定されるものではない。 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。実施例1 2−ピリジルフェノール(略称PP)〔中間体〕の合成 4つ口フラスコに2−ブロモピリジンとo−ヒドロキシフェニルホウ酸をトルエン/エタノール=2:1の混合溶媒に溶解させ、2M(mol/l)の炭酸カリウム水溶液を加え、窒素バブリングを1時間行なった。その後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム〔Pd(PPh3)4〕を加え、窒素気流下還流温度で8時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出した後、イオン交換水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターにより溶媒を除去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム:ヘキサン=1:1)により精製を行ない、黄色の粘体を得た。粘体の状態で減圧乾燥を行ない、冷却して、黄色の固体を得た。同定は1H−NMRスペクトル、MassスペクトルとIRスペクトルにて行なった。実施例1の反応条件、収量および収率を表1に示す。 このものの1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)(全領域)を図1に、Massスペクトルを図2に、IRスペクトルを図3に示す。また真空TGA(Thermogravimetric Analyzer=熱量測定装置)の結果を図4に示す。 真空TGAは、ロータリーポンプ(R.P)で所定の真空度まで排圧し真空条件下で熱量を測定する装置であり、化合物の純度や分解温度を調べる装置である。実施例2、3、4および5 2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(LiPP)(実施例2)、2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトナトリウム(NaPP)(実施例3)、2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトカリウム(KPP)(実施例4)及び2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトセシウム(CsPP)(実施例5)の合成 水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、乳鉢ですりつぶした水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)と水酸化セシウム(CsOH)をそれぞれメタノール(MeOH)に溶解させ、そこに2−ピリジルフェノール(2−pyridylphenol)をメタノールに溶解させたものをゆっくり滴下し、0.5時間室温で撹拌し、反応終了後、いずれも沈殿物は生成していなかったので、エバポレーターで溶媒を除去した後、減圧乾燥することにより、LiPP、NaPP、KPP、CsPPのそれぞれ黄色の固体を得た。 表2に実施例2(LiPP)、実施例3(NaPP)、実施例4(KPP)、実施例5(CsPP)の反応条件、収量および収率を示す。 LiPP、NaPP、KPP、CsPPの1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)をそれぞれ図5、6、7、8に示す。またLiPP、NaPP、KPPの真空TGAの結果を図9,10、11に示す。またLiPPの薄膜(50nm)における紫外−可視吸収曲線とフォトルミネッセンス曲線を図12と図13に示す。実施例9 2−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノール(略称Bpp)〔中間体〕の合成(1)2−(2′−ピリジル)−6−ブロモピリジン(略称Bbp)の合成 4つ口フラスコに2−ブロモピリジン(2−bromopyridine)を、脱水したジエチルエーテル(Diethylether)に溶解させ、窒素雰囲気下で−78℃以下に冷却した後、n−BuLi(1.58M)を加えて40分反応させ、乾燥したZnCl2のN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン液を加え、室温に戻しながら2時間反応させた。その後、100mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた2,6−ジブロモピリジン(2,6−dibromopyridine)溶液とPdCl2(PPh3)2を加えて48℃で16時間反応させた。反応終了後、沈殿物を吸引ろ過で取り除き、ろ過物をトルエン100mlで洗い、ろ液中のジエチルエーテルとテトラヒドロフランをエバポレーターにより除去した。その後、残ったトルエン溶液をHClaq(1.5M)で抽出し、HCl溶液をNa2HCO3で中和した。その後、トルエンで抽出し、イオン交換水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターにより溶媒を除去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:ヘキサン:酢エチ=3:1)により精製を行ない、白色の固体を得た。同定は1H−NMRスペクトルにて行なった。 Bbpの反応条件、収量および収率を表3に示す。 Bbpの1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を図14に示す。(2)2−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノール(略称Bpp)の合成 4つ口フラスコに2−(2′−ピリジル)−6−ブロモピリジン(Bbp)とo−ヒドロキシフェニルホウ酸をトルエン/エタノール=2:1の混合溶媒に溶解させ、2M(mol/l)の炭酸カリウム水溶液を加え、窒素バブリングを1時間行なった。その後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを加え、窒素気流下還流温度で8時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出した後、イオン交換水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターにより溶媒を除去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム:酢酸エチル=9:1)により精製を行ない、黄色の固体を得た。同定は1H−NMRスペクトル、MassスペクトルとIRスペクトルにて行なった。 Bppの反応条件、収量および収率を表4に示す。 Bppの1H−NMRスペクトル(重ジメチルスルホン溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を図15に、Massスペクトルを図16にそれぞれ示す。実施例10および11 2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(略称Libpp)(実施例10)および2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトナトリウム(略称Nabpp)(実施例11)の合成 水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)、水酸化ナトリウム(NaOH)を各々、MeOHに溶解させ、そこに2−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノール(Bpp)〔2−(2,2′−bipyridyl)phenol〕のメタノール溶液をゆっくり滴下し、室温で0.5時間撹拌した。各々、沈殿物は生成していなかったので、エバポレーターで溶媒を除去した後、減圧乾燥することでそれぞれの黄色の固体(リチウム、ナトリウム)を得た。 LibppおよびNabppの反応条件、収量および収率を表5に示す。 LibppのIRスペクトルを図17に示し、LibppおよびNabppの1H−NMRスペクトル(重ジメチルスルホン溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MHz)を図18および図19に示す。またLibppの薄膜(50nm)における紫外−可視吸収曲線とフォトルミネッセンス曲線を図20と図21に示す。実施例21 実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(LiPP)、および、実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(Libpp)の電気化学特性と熱特性を求めた。電気化学特性の結果を表6、熱特性の結果を表7にそれぞれ示す。 Ip:イオン化ポテンシャル Eg:エネルギーギャップ Ea:エネルギーアフィニティ(電子親和力) エネルギーギャップ(Eg)については、蒸着機で作成した薄膜を紫外−可視吸光度計で薄膜の吸収曲線を測定する。その薄膜の短波長側の立ち上がりのところに接線を引き、求まった交点の波長W(nm)を次の式に代入し目的の値を求める。それによって得た値がEgになる。 Eg=1240÷W 例えば接線を引いて求めた値W(nm)が470nmだったとしたらこの時のEgの値は Eg=1240÷470=2.63(eV)と言うことになる。 IP(イオン化ポテンシャル)はイオン化ポテンシャル測定装置(例えば理研計器AC−3)を使用して測定し、測定するサンプルがイオン化を開始したところの電圧(eV)の値を読む。 Ea(電子親和力)は、IpからEgを引いた値である。 TGAの分解開始温度と融点と思われる温度が近いため、DSCによる融点測定で、300℃までしか温度をかけられないため、融点、ガラス転移点ともに観測されなかった。また、ここでの融点はTGAのDTAの変化より求めた。実施例22、23、24、25、26及び比較例1、2 実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(LiPP)を電子注入材料として電子注入層に用いた素子を作成し、膜厚を0.5nm、1.0nm、2.0nm、3.0nmと5.0nmと変化させ素子特性の変化を調べた。比較のため電子注入層にフッ化リチウム(LiF)および8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)をそれぞれ電子注入材料として電子注入層にもちいた素子も比較例1および2として作成した。なお8−ヒドロキシキノリノラトリチウムの構造を以下に示す。 作成した素子構成は以下の通りである。比較例1Ref 1(○):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiF(1.0nm)/Al(100nm)]比較例2Ref 2(□):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/Liq(0.5nm)/Al(100nm)]実施例22Device 7(◇):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiPP(0.5nm)/Al(100nm)]実施例23Device 8(×):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiPP(1.0nm)/Al(100nm)]実施例24Device 9(+):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiPP(2.0nm)/Al(100nm)]実施例25Device 10(△):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiPP(3.0nm)/Al(100nm)]実施例26Device 11(●):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiPP(5.0nm)/Al(100nm)] これらの素子の エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図22に、 電流密度−電圧特性は図23に、 輝度−電圧特性は図24に、それぞれ示す。 LiPPの最適膜厚は1.0nmであり、リファレンスとしたLiqと同程度の特性を示し、またLiFよりも良い特性を示した。実施例27、28、29、30、31及び比較例3、4 実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(Libpp)を電子注入材料として電子注入層に用いた素子を作成し、膜厚を0.5nm、2.0nm、3.0nm、5.0nmと7.0nmと変化させ素子特性の変化を調べた。比較のため電子注入材料としてフッ化リチウム(LiF)および8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)をそれぞれ電子注入層にもちいた素子も比較例3および4として作成した。作成した素子構成は以下の通りである。比較例3Ref 1(○):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiF(1.0nm)/Al(100nm)]比較例4Ref 2(□):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/Liq(0.5nm)/Al(100nm)]実施例27Device 12(◇):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/Libpp(0.5nm)/Al(100nm)]実施例28Device 13(×):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/Libpp(2.0nm)/Al(100nm)]実施例29Device 14(+):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/Libpp(3.0nm)/Al(100nm)]実施例30Device 15(△):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/Libpp(5.0nm)/Al(100nm)]実施例31Device 16(●):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/Libpp(7.0nm)/Al(100nm)] これらの素子の エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図25に、 電流密度−電圧特性は図26に、 輝度−電圧特性は図27に、それぞれ示す。 Libppの最適膜厚は3.0nmであり、リファレンスとしたLiqと同程度の特性を示し、またLiFよりも良い特性を示した。実施例36、37及び比較例7、8 実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(LiPP)、および、実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(Libpp)のそれぞれを電子注入材料として電子注入層に使用するに当り、その最適な膜厚における素子を作成し、電子の注入効率を測定した。比較のため電子注入層にフッ化リチウム(LiF)および8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)をそれぞれ電子注入材料として電子注入層にもちいた素子も比較例7および8として作成した。 作成した素子構成は以下の通りである。比較例7Ref1(○):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiF(1.0nm)/Al(100nm)]比較例8Ref2(□):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/Liq(0.5nm)/Al(100nm)]実施例36Device 8(◇):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiPP(1.0nm)/Al(100nm)]実施例37Device 14(×):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/Libpp(3.0nm)/Al(100nm)] これらの素子の エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図28に、 電流密度−電圧特性は図29に、 輝度−電圧特性は図30に、それぞれ示す。 どの錯体においても、LiFよりも特性が向上している。また、LiF、Liq、LiPPにおいて、0.5nm、1.0nmの極薄膜において最大値をとり、Libppにおいては3.0nmの薄膜で最大値をとった。これは、各々の分子の大きさが異なることから、同じ膜厚でも、膜中に存在するLiの量が変化するため、特性に影響を与えたのではないかと考えられる。実施例39、40、41及び比較例9 実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(LiPP)とAlq3でAlq3:LiPP=1:3、1:1、3:1の比率でそれぞれ共蒸着した素子を作成し電子注入材料としての電子の注入特性の比較を行った。比較のためLiFを電子注入材料として電子注入層に用いた素子を作成した。 作成した素子構成は以下の通りである。比較例9Ref(○):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiF(1.0nm)/Al(100nm)]実施例39Device 27(□):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(65nm)/Alq3:LiPP(1:3)(5.0nm)/Al(100nm)]実施例40Device 28(◇):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(65nm)/Alq3:LiPP(1:1)(5.0nm)/Al(100nm)]実施例41Device 29(×):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(65nm)/Alq3:LiPP(3:1)(5.0nm)/Al(100nm)] これらの素子の エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図31に、 電流密度−電圧特性は図32に、 輝度−電圧特性は図33に、それぞれ示す。 最適ドープ比はAlq3:LiPP=1:1の時であった。Refよりも若干低電圧駆動している。しかし、Alq3:LiPP=1:3では高電圧駆動した。Alq3:LiPP=1:3の素子においては、LiPPの割合が多いため、還元された過剰のLiがAlq3の分解を引き起こすために、高電圧駆動したのではないかと考えられる。実施例42、43、44及び比較例10 実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(Libpp)とAlq3でAlq3:Libpp=1:3、1:1、3:1の比率でそれぞれ共蒸着した素子を作成し電子の注入特性の比較を行った。比較のためLiFを電子注入層に用いた素子を作成した。 作成した素子構成は以下の通りである。比較例10Ref (○):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(70nm)/LiF(1.0nm)/Al(100nm)]実施例42Device 30(□):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(65nm)/Alq3:Libpp(1:3)(5.0nm)/Al(100nm)]実施例43Device 31(◇):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(65nm)/Alq3:Libpp(1:1)(5.0nm)/Al(100nm)]実施例44Device 32(×):[ITO/NPD(50nm)/Alq3(65nm)/Alq3:Libpp(3:1)(5.0nm)/Al(100nm)] これらの素子の エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図34に、 電流密度−電圧特性は図35に、 輝度−電圧特性は図36に、それぞれ示す。 最適ドープ比はAlq3:Libpp=1:1の時でありRefよりも若干低電圧駆動している。しかし、Alq3:Libpp=3:1、Alq3:Libpp=1:3では高電圧駆動した。これは、Alq3:Libpp=3:1においては還元されるLiの濃度が少ないため、未反応のAlq3が電流の注入を阻害し、またAlq3:Libpp=1:3では還元された過剰のLiがAlq3の分解を引き起こすために、高電圧駆動したのではないかと考えられる。実施例48 実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(LiPP)を電子輸送材料兼発光材料として電子輸送発光層に用いた素子を作成し素子特性を調べた。 作成した素子構成は以下の通りである。実施例48Device 36:[ITO/NPD(50nm)/LiPP(70nm)/LiF(1.0nm)/Al(100nm)] この素子の エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図37に、 電流密度−電圧特性は図38に、 輝度−電圧特性は図39に、 電力効率−電圧特性は図40に、 電流効率−電圧特性は図41にそれぞれ示す。 またこの素子のEL特性を表8に示す。実施例49 実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(Libpp)を電子輸送材料兼発光材料として電子輸送発光層に用いた素子を作成し素子特性を調べた。 作成した素子構成は以下の通りである。Device 37:[ITO/NPD(50nm)/Libpp(70nm)/LiF(1.0nm)/Al(100nm)] この素子の エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図42に、 電流密度−電圧特性は図43に、 輝度−電圧特性は図44に、 電力効率−電圧特性は図45に、 電流効率−電圧特性は図46にそれぞれ示す。 またこの素子のEL特性を表9に示す。実施例51、52および比較例12、13、14 実施例2の2−(2−ピリジル)ヒドロキシフェノラトリチウム(LiPP)、および、実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(Libpp)を用い、電子オンリーデバイス(Electron only device)を作製し、電子の入りやすさを測定した。電子オンリーデバイスとは、有機エレクトロルミネッセンス素子から正孔輸送(ホール輸送)層を除去した素子である。ITOからの正孔(ホール)の出入りを完全に止めるために、ITOの上に正孔(ホール)ブロック層を1層設けているのが特徴である。比較のため電子注入層を設けない素子、LiFを電子注入層に用いた素子、Liqを電子注入層に用いた素子を作成した。作成した素子構成は以下の通りである。比較例12Ref 1(●):[ITO/BCP(10nm)(ホールブロック層)/Alq3(100nm)(電子輸送層)/Al(30nm)]比較例13Ref 2(■):[ITO/BCP(10nm)/ Alq3 (100nm)/LiF(0.5nm)/Al(30nm)]比較例14Ref3(○):[ITO/BCP(10nm)/Liq(100nm)/Al(30nm)]実施例51Device 39 (□):[ITO/BCP(10nm)/Lipp(100nm)/Al(30nm)]実施例52Device 40 (△):[ITO/BCP(10nm)/Libpp(100nm)/Al(30nm)] これらの素子の 電流密度−電圧特性は図47に示す。実施例54、55、56、および比較例15 実施例10の2−ヒドロキシ−(2,2′)−ビピリジニル−6−イル−フェノラトリチウム(Libpp)をエトキシエタノールに溶かし溶液とし、Libppを電子注入材料として用いた電子注入層を、スピンコートにより発光層上に成膜した。 素子の作成は、UVオゾン洗浄したITOガラス基板上にPEDOT:PSSをスピンコートで成膜し、真空オーブンで120℃15分乾燥させた後常温まで戻した。次にMEH−PPV(7g/L:ジクロロエタン)をスピンコートで成膜し、真空オーブンで80℃30分乾燥させた後常温まで戻した。なお用いたMEH−PPVの構造を以下に示す。 MEH−PPV{ポリ〔2−メトキシ−5−(2′−エチルヘキシロキシ)〕フェニレンビニレン} MEH−PPVを成膜−乾燥後、その上に本発明のLibpp溶液のスピンコートを行った。用いたLibpp溶液は、Libpp(Mw254.21)を21.4mgを10gのエトキシエタノールに溶解させたものを使用した。そしてLibpp層の膜厚を変化させるために、スピンコーターの回転数を変えたものを3枚作成した。すなわち溶液を塗布後、 スピンコーター2000rpmで10秒間処理したもの スピンコーター1500rpmで10秒間処理したもの スピンコーター1000rpmで10秒間処理したものを作成した。スピンコート直後にガラスチャンバーに作成した基板を仕込み、Alを8.0×10−4Pa下で5.0Å/sの速度で100nm蒸着した。比較のためLibpp層を設けない素子も作成した(比較例15)。 作成した素子構成は詳細は以下の通りである。比較例15Device 42(○):ITO/PEDOT:PSS(60nm)/MEH−PPV(60nm)/Al(100nm)実施例54Device 43(●):ITO/PEDOT:PSS(60nm)/MEH−PPV(60nm)/Libpp(2000rpm)/Al(100nm)実施例55Device 44(黒三角):ITO/PEDOT:PSS(60nm)/MEH−PPV(60nm)/Libpp(1500rpm)/Al(100nm)実施例56Device 45(■):ITO/PEDOT:PSS(60nm)/MEH−PPV(60nm)/Libpp(1000rpm)/Al(100nm)この素子のEL特性を表10に示す。 これらの素子の エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図48に、 電流密度−電圧は図49に、 輝度−電圧は図50に、 視感効率−電圧は図51に、 電流効率−電圧特性は図52にそれぞれ示す。 図48から、Libppを発光層上にスピンコートした素子においてELスペクトルの変化が無いことからLibppが化学的に影響を及ぼしていない事がわかる。 素子特性においては、Device43(実施例54)(2000rpmで処理したもの)が、電流注入や輝度、効率において最も特性が良好で、Libppの回転数を下げていくほど特性が低下し、Device45(実施例56)(1000rpmで処理したもの)においてはDevice42(比較例15)を下回る結果となり、膜厚が薄すぎることがわかった。 Device42(比較例15)はホール過剰の素子であるため、Libppのスピンコート処理によって電流注入が大きく改善され、輝度、効率も上昇していることからLibppによって電子の注入が促されたと考えられる。 1 基板 2 陽極(ITO) 3 発光層 4 陰極 5 正孔輸送層(ホール輸送層) 6 電子輸送層 7 正孔注入層(ホール注入層) 8 電子注入層 9 正孔ブロック層(ホールブロック層) 下記一般式(1)で示される複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体。(式中、Mはアルカリ金属であり、Aは下記式で示されるピリジル基である。また、R1〜R4は水素、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキルアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。)(式中、R5〜R8は水素、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキルアミノ基、ピリジル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。) 請求項1記載の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体よりなる電子注入材料。 請求項1記載の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体よりなる電子輸送材料。 請求項1記載の複素環含有ヒドロキシフェニル金属誘導体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。 【課題】低電圧駆動可能で高効率な電子注入、電子輸送材料、有機エレクトロルミネッセンス素子の提供。【解決手段】式(1)で示される複素環金属(M)誘導体。(Aは下記式のピリジル基、R1〜R4は水素、アルキル基などである。)【選択図】なし