タイトル: | 公開特許公報(A)_ガスセンサおよびガスセンシング方法 |
出願番号: | 2012141418 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 27/02,G01N 27/416,G01N 27/404 |
本多 祐仁 下山 勲 松本 潔 竹井 裕介 JP 2014006128 公開特許公報(A) 20140116 2012141418 20120622 ガスセンサおよびガスセンシング方法 オムロン株式会社 000002945 国立大学法人 東京大学 504137912 増井 義久 100127030 比村 潤相 100125944 本多 祐仁 下山 勲 松本 潔 竹井 裕介 G01N 27/02 20060101AFI20131213BHJP G01N 27/416 20060101ALI20131213BHJP G01N 27/404 20060101ALI20131213BHJP JPG01N27/02 ZG01N27/46 331G01N27/46 311GG01N27/30 341B 16 1 OL 23 (出願人による申告)平成24年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託事業「グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト」「グリーンMEMSセンサの開発」、委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 2G060 2G060AA02 2G060AB07 2G060AB09 2G060AE19 2G060AF06 2G060AG06 2G060AG08 2G060AG10 2G060AG11 2G060BB10 本発明は、例えば二酸化炭素(CO2)やアンモニア(NH3)等のガスを検出するガスセンサおよびガスセンシング方法に関するものである。 近年、環境モニタリングの要請から例えば二酸化炭素を検出するガスセンサの研究が行われている。この種のガスセンサとしては赤外光吸収型のガスセンサ(NDIR:Non dispersive infrared detector(非分散型赤外検出装置))が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、その他のガスセンサとしては、表面プラズモン共鳴(SPR:surface plasmon resonance)を利用したガスセンサも知られている(例えば、非特許文献2参照)。S.Neethirajan, D.S.Jayas, and S.Sadistap, “Carbon dioxide (CO2) sensors for the agri-food industry-areview, ”Food Bioprocess Technol., vol.2,pp.115-121,2009.Shozo Miwa, and Tsuyoshi Arakawa, “Selective gas detection by means of surface plasmon resonancesensors, ”Thin Solid Films,vol.281,pp.466-468,1996. しかしながら、前者に示した赤外光吸収型のガスセンサでは、光吸収経路を設ける必要があることから、光学的システムが大型化してしまうという問題がある。 また、後者の表面プラズモン共鳴を利用したガスセンサでは、光吸収経路を必要とせず、その分、小型化を図ることができるが、測定する屈折率が概ね分子量に比例することから、例えば二酸化炭素のような分子量の小さいガスを測定することは実用上困難である。 そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、小型化が実現可能であるとともに、分子量の小さいガスであっても検出可能で、且つ消費電力が少ない、汎用性の高いガスセンサおよびガスセンシング方法を提供することにある。 本願発明者らは、検出対象のガスを吸収することによって特性が変化するガス吸収体に着目して本願発明を完成するに至った。 すなわち、上記目的を達成するために、本発明に係るガスセンサは、 陽極および陰極と、 上記陽極の少なくとも一部分および上記陰極の少なくとも一部分を被覆しており、且つ、検出対象であるガスと接触することができるように配設された、当該ガスを吸収することによって伝導率が変化するガス吸収体と、 上記ガス吸収体を介した上記陽極と上記陰極との間のインピーダンスの値に基づいて上記ガスを検出する検出部と、を備えていることを特徴としている。 上記構成によれば、ガス吸収体を例えば大気と接触させることによって大気中に含まれる検出対象のガスが、ガス吸収体に吸収される。ガス吸収体の伝導率は、検出対象のガスを吸収することによって変化する。そのため、ガス吸収体を陽極と陰極との間に介在させて、陽極と陰極との間のインピーダンスの値に基づいて検出対象のガスを検出することができる。 この構成によれば、従来の赤外光吸収型のガスセンサのように光路長を長く確保する必要がないため、装置(ガスセンサ)を小型化することができる。 また、上記構成によれば、検出対象のガスを吸収することによって伝導率が変化するガス吸収体を用いたガス検出であるため、二酸化炭素のような分子量の小さいガスであっても測定対象とすることが可能である。 また赤外光吸収型のガスセンサに比べて、光源を必要としないことから、消費電力の低減を実現することができる。また従来の赤外光吸収型のガスセンサは光源を使用するため、光源が計測可能な状態となるまで時間を要する。これに対して、本実施形態のガスセンサは光源が必要ないため、従来の赤外光吸収型のガスセンサよりも計測時間を短縮することができる。 また、上記の構成によれば、構造的には電極対とガス吸収体とを具備することによってガスを検出することができるので、比較的安価なガスセンサを提供することができる。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 凹部が設けられた基部を更に備えており、 上記ガス吸収体は、上記凹部に充填されており、 上記陽極の少なくとも一部分および上記陰極の少なくとも一部分とは、上記凹部において離間した位置に配されていることが好ましい。 上記構成によれば、仮に平坦な基部の表面にガス吸収体をその表面張力を利用して液滴の状態で存在させた状態でその液滴内に陽極の少なくとも一部分と陰極の少なくとも一部分とを配するように構成した場合であっても、本発明に係るガスセンサとしての機能を実現することは可能である。しかしながら、液滴のままでは外部衝撃などを受けるなどしてセンサ機能を正常に維持することができない虞がある。これに対して、上記の構成のように、基部に設けた凹部にガス吸収体を充填することにより、ガス吸収体が基部の表面から突出することを防ぐことができ、耐衝撃性を比較的高めることができ、信頼性があるガスセンサを提供することができる。また、基部の表面から液滴が突出せずに、ガスセンサのガスと接触する側の表面の平坦性を維持することができる。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 或る周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力する入力部を更に備えており、 上記検出部は、上記或る周波数の信号に基づく上記インピーダンスの値に基づいてガスを検出する構成とすることができる。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に代えて、 少なくとも2種類の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力する入力部を更に備えており、 上記検出部は、各周波数の信号に基づく上記インピーダンスの値に基づいてガスを検出する構成となっていることが好ましい。 上記構成によれば、例えば2種類の周波数の信号を入力して各周波数の信号に基づく上記インピーダンスの値に基づいてガスを検出することにより、1種類の周波数のみを用いる場合と比較して検出精度の向上を実現することができる。具体的には、例えば後述するように各周波数の信号に基づくインピーダンス値の差分をとって、差分からガスの有無および濃度を検出する方法と、インピーダンスの増減割合からガスの有無および濃度を検出する方法と、2つの周波数からそれぞれインピーダンスを求め、ガスの有無および濃度を検出方法がある。ことができる。1種類の周波数を用いた場合であっても、インピーダンス値と、ガスの有無および/またはガスの濃度とを対応付けたデータを利用することによって検出可能であるが、複数のインピーダンス値を求めてこれらに基づいて結果を導き出すほうが、より正確な検出をおこなうことができる。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 上記検出部は、或る周波数である第一の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの第一の上記インピーダンスの値と、当該第一の周波数とは異なる第二の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの第二の上記インピーダンスの値との差分あるいは増減率に基づいて上記ガスを検出する構成となっていることが好ましい。 上記構成によれば、1種類の周波数を用いてインピーダンスを計測する場合と比較して検出精度の向上を実現することができる。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 上記陽極および上記陰極からなる対が複数あり、 上記入力部は、上記複数の対に、上記対同士で互いに異なる周波数をもつ信号を入力する構成となっていることが好ましい。 上記構成によれば、例えば2種類の周波数のような複数の周波数の信号を入力して各周波数の信号に基づくガス検出を実現することができる。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 上記ガス吸収体における上記ガスと接触する側を覆って当該ガス吸収体を上記基部に保持させる保持手段を更に備えていることが好ましい。 上記構成によれば、保持手段によってガス吸収体における上記ガスと接触する側を覆うことによって、ガス吸収体を基部に安定して保持させることができ、例えば、保持手段を下方に向けて、本発明に係るガスセンサを室内の天井部分に取り付けることができるなど、ガス吸収体を保持した状態でガスセンサを所望の方向に向けて設置することを可能にする。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 上記ガス吸収体は、液体またはゲルであり、 上記凹部には、地面側に向いて開口した開口部分と、天側に配設された天井面とが設けられており、 上記開口部分を覆って上記ガス吸収体を当該凹部に保持させる保持手段を更に備えており、 上記天井面は、一部分が上記開口部分に向けて隆起した隆起部を有しており、 上記隆起部に、上記陽極および上記陰極が配設されていることが好ましい。 上記構成によれば、凹部に充填されているガス吸収体(液体)の液量が何らかの理由で減少して、液面が凹部の配設された天井面よりも下がった場合であっても、陽極および陰極は凹部の天井面よりも開口部分側に下がった位置に配設されているため、凹部の内部においてガス吸収体から陽極および陰極が直ぐに露出することはない。 また、上記構成によれば、陽極および陰極は凹部の天井面よりも開口部分側に近い位置にある。これにより、陽極および陰極が凹部の天井面と同じ位置(同じ高さ)に配設されている場合に比べて、ガス吸収体のガス接触面と、陽極および陰極との間の距離を短く構成することができる。そのため、比較的多量のガス吸収体が凹部に充填・保持された状態でありながら、反応速度(つまり、検出速度)を高めることができる。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 上記陽極および上記陰極は、当該陽極の端部と当該陰極の端部が対向して配設されていてもよい。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 上記陽極および上記陰極はそれぞれ、複数の櫛歯部を有する櫛型電極であり、 上記陽極と上記陰極とのそれぞれの上記複数の櫛歯部が互いに噛み合う、あるいは、入れ子になるように配置されており、 上記ガス吸収体は、上記複数の櫛歯部が互いに噛み合う、あるいは、入れ子になった領域を覆っていることが好ましい。 上記の発明によれば、ガス吸収体が、陽極および陰極の複数の櫛歯部が互いに噛み合う、あるいは、入れ子になった領域を覆っていることから、ガス吸収によるインピーダンス変化量を大きくすることができ、分解能を向上させることができる。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 上記凹部は、当該凹部の開口部分から当該開口部分とは反対側に規定される当該凹部の底部に向けて、径が段階的に小さくなっている形状を有していることが好ましい。 上記の発明によれば、凹部の開口部分が凹部のなかで最も広く構成されていることから、比較的少量のガス吸収体充填量であってもガス接触面を広く確保することができることから、ガスを効果的に吸収し、反応速度を向上させることができる。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、具体的には、上記ガス吸収体としてイオン液体を用いることができる。 また、本発明に係るガスセンシング方法は、上記目的を達成するために、 陽極の少なくとも一部分および陰極の少なくとも一部分を、検出対象であるガスを吸収することによって伝導率が変化するガス吸収体によって被覆したガスセンサを用いて、上記ガス吸収体を介した上記陽極と上記陰極との間のインピーダンスの値に基づいて上記ガスを検出する検出工程を含むことを特徴としている。 上記構成によれば、ガス吸収体を例えば大気と接触させることによって大気中に含まれる検出対象のガスが、ガス吸収体に吸収される。ガス吸収体は、検出対象のガスを吸収することによって伝導率が変化する。そのため、ガス吸収体を陽極と陰極との間に介在させて、陽極と陰極との間のインピーダンスを計測することにより、インピーダンスの変化を捉えて検出対象のガスを検出することができる。 この構成によれば、従来の赤外光吸収型のガスセンサのように光路長を長く確保する必要がないため、装置(ガスセンサ)を小型化することができる。 また、上記構成によれば、検出対象のガスを吸収することによって伝導率が変化するガス吸収体を用いたガス検出であるため、二酸化炭素のような分子量の小さいガスであっても測定対象とすることが可能である。 また赤外光吸収型のガスセンサに比べて、光源を必要としないセンシング方法であることから、消費電力の低減を実現することができる。また従来の赤外光吸収型のガスセンサは光源を使用するため、光源が計測可能な状態となるまで時間を要する。これに対して、本実施形態のガスセンサは光源が必要ないため、従来の赤外光吸収型のガスセンサよりも計測時間を短縮することができる。 また、本発明に係るガスセンシング方法は、上記の構成に加えて、 上記検出工程では、或る周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの上記インピーダンスの値に基づいて上記ガスを検出することができる。 また、本発明に係るガスセンシング方法は、上記の構成に代えて、 上記検出工程では、少なくとも2種類の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの当該周波数ごとの上記インピーダンスの値に基づいて上記ガスを検出することが好ましい。 上記構成によれば、例えば2種類の周波数の信号を入力して各周波数の信号に基づく上記インピーダンスを計測することにより、1種類の周波数を用いてインピーダンスを計測する場合と比較して検出精度の向上を実現することができる。 具体的には、例えば後述するように各周波数の信号に基づくインピーダンス値の差分をとって、差分からガスの有無および濃度を検出することができる。1種類の周波数を用いた場合であっても、インピーダンス値と、ガスの有無および/またはガスの濃度とを対応付けたデータを利用することによって検出可能であるが、複数のインピーダンス値を求めてこれらに基づいて結果を導き出すほうが、より正確である。 また、本発明に係るガスセンサの一形態は、上記の構成に加えて、 上記検出工程では、或る周波数である第一の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの第一の上記インピーダンスの値と、当該第一の周波数とは異なる第二の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの第二の上記インピーダンスの値とに基づいて上記ガスを検出することが好ましい。 上記構成によれば、例えば周波数ごとの信号に基づくインピーダンス値の差分をとって、差分からガスの有無および濃度を検出することができる。これにより、1種類の周波数のみを用いる場合と比較して検出精度の向上を実現することができる。 本発明によれば、小型化を実現するとともに、分子量の小さいガスであっても検出可能で、消費電極が少ない、汎用性の高いガスセンサおよびガスセンサシング方法を提供することができる。本発明に係るガスセンサの一実施形態である第1の実施形態のガスセンサの構成を示す図である。図1に示す切断線A−A´によって図1のガスセンサのセンサ部を切断した状態を示した矢視断面図である。本発明に係るガスセンサのガスセンシング原理を説明する図である。図1のガスセンサのセンサ部の斜視図と、当該センサ部の検証試験を行なうための試験装置の構成を示す図である。図1のガスセンサの検証試験結果を示すグラフの図である。図1のガスセンサの検証試験結果を示すグラフの図である。図1のガスセンサの検証試験結果を示すグラフの図である。図1のガスセンサの検証試験結果を示すグラフの図である。図1のガスセンサの検証試験結果を示すグラフの図である。図1のガスセンサを用いたガスセンシング方法のフローチャートの図である。図1のガスセンサの変形例を示す図である。図1のガスセンサの変形例を示す図である。図1のガスセンサの変形例を示す図である。図1のガスセンサの変形例を示す図である。図1のガスセンサの変形例を示す図である。本発明に係るガスセンサの他の実施形態である第2の実施形態のガスセンサの構成を示す図である。図16のガスセンサを用いたガスセンシング方法のフローチャートの図である。図16のガスセンサの変形例を示す図である。 本願発明者らは、従来のガスセンサが抱える種々の問題を解決するべく鋭意検討の結果、ガス吸収体によるガスセンシングを見出して、本発明に至るまでに、ガス吸収体の誘電率がガス吸収による変化することを利用して、金属層の表面に配設したガス吸収体の誘電率の変化を当該金属層で生じる表面プラズモン共鳴現象を利用したガス検出をおこなうガスセンサを開発している。また、電極間に配したカーボンナノチューブと、ゲート絶縁層になるガス吸収体とを備えてガス吸収により当該ゲート絶縁層の状態が変化することを利用して、ソースドレイン電流の変化に基づいてガスを検出するガスセンサも開発している。開発したこれらのガスセンサは、小型で、且つ、二酸化炭素のような分子量の小さいガスを測定することができる点で、従来のガスセンサよりも優位であるものの、前者の表面プラズモン共鳴現象を利用したガスセンサは光源を使用するため消費電力が大きく、後者の電極間にカーボンナノチューブを配したガスセンサは、検出電流がnAオーダーと小さく、且つ、光源は使用しないものの、カーボンナノチューブのコストを考慮すると実用上での課題がある。そこで、本願発明者らは、ガス吸収体を備えたガスセンサについて更に鋭意検討し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明に係るガスセンサは、陽極および陰極を有した基部と、上記陽極の少なくとも一部分および上記陰極の少なくとも一部分を被覆しており、且つ、検出対象であるガスと接触することができるように配設された、当該ガスを吸収することによって伝導率が変化するガス吸収体と、上記ガス吸収体を介した上記陽極と上記陰極との間のインピーダンスの値に基づいてガスを検出する検出部とを備えている。 以下に、いくつかの実施形態および変形例を挙げて本発明に係るガスセンサを説明するが、これらの実施形態に示すガスセンサの構成はあくまで例示に過ぎず、これらの構成に本発明が限定されるものではない。 〔第1の実施形態〕 (1)第1の実施形態のガスセンサの構成 本発明に係るガスセンサの一実施形態(第1の実施形態)について、図1〜図15を用いて説明する。 図1は、図中の(a)が本発明の第1の実施形態に係るガスセンサの斜視図であり、図中の(b)がその分解図である。また、図2は、図1のガスセンサのA−A´矢視断面図である。 第1の実施形態のガスセンサ100は、図1の(a)に示すように、センサ部10と、検出部7とを備えている。 センサ部10は、図1の(b)に示すように、陽極2と陰極3とが形成された基部1と、イオン液体4(ガス吸収体)と、液体封止用有機高分子膜5(保持手段)と、保護メッシュ部材6(保持手段)とを備えている。 基部1は、図1および図2に示すように、片面に凹部1aが設けられている。凹部1aは側面と底面によって構成されており、側面は、基部1の片面に対して垂直であってもよいが、図2に示すように、基部1の片面に対して傾斜していてもよい。図1の(b)に示す凹部1aは円形であるが、本発明は凹部1aの形状は問わない。 図2では、凹部1aの径は、開口部分(つまり凹部1aの側面と、凹部1aの周囲を構成する縁面との境界部分)の径が最も大きく、当該開口部分から凹部1aの底面に向かって、開口径が連続的に小さくなっている。基部1は、例えばシリコン、ガラスから構成することが可能である。 基部1における凹部1aが設けられた側の面の、凹部1aの開口部分に隣接した縁面から、凹部1aを構成する側面および底面に沿って、後述するインピーダンス計測をおこなうための陽極2および陰極3としての金属層が形成されている。 陽極2および陰極3はそれぞれ、凹部1aの開口部分に隣接した縁面側にある第1の端部2a,3aと、凹部1aの底面側にある第2の端部2b,3bとを有している。第1の端部2a,3aには、配線が接続されており、当該配線は検出部7に接続されている。陽極2および陰極3の第2の端部2b,3b同士は、凹部1aの底面において所定の距離を隔てて対向している。第1の実施形態では、図1の(b)に示すように、陽極2と陰極3とは、凹部1aの開口部分の中心点を挟んで正対する位置に配設されている。しかしながら、本発明はこの配置に限定されるものではない。配線を介して検出部7に接続されている第1の端部2a,3aには、後述するように、検出部から所定の周波数の信号が入力する構成となっている。つまり、検出部7は当該信号の入力部も兼ねている。 陽極2および陰極3の形成方法としては、マスクを用いたパターン形成が挙げられるがこれに限定されるものではない。陽極2および陰極3は、例えばチタン−アルミニウム合金(Ti-Al合金)から構成することができる。 このように陽極2および陰極3が形成された基部1の凹部1aに、イオン液体4が充填されており、陽極2の少なくとも一部および陰極3の少なくとも一部、つまり凹部1aの側面と底面とに沿って配された部分が、イオン液体4によって覆われた状態を実現している。 イオン液体4は、凹部1aを完全に満たす液量、つまり凹部1aの開口部分に達する液量が用いられている。ただ、第1の実施形態のガスセンサ100のセンサ部10が図2の紙面下側が地面側で、紙面上側が天側になるように配設された状態でガスセンシングする態様である場合には、イオン液体4が凹部1aを完全に満たしている必要はない。しかしながら、ガスセンサ100のセンサ部10を設置する箇所が傾斜面であったり、設置した後で傾斜するような被設置面である場合は、陽極2および陰極3のいずれかがイオン液体4から露出してインピーダンス計測が困難になる虞があるため、これを回避するべく、第1の実施形態のようにイオン液体4は凹部1aを完全に満たしていることが好ましい。 ここで、ガス吸収体としてのイオン液体4は、例えば[EMIM][BF4](1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート)や、[BMIM][BF4](1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート)、[BMIM][PF6](1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート)、[OMIM][Br](1-n-オクチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド)の他、[Hmpy][Tf2N]、[Hmim][Tf2N]、[Bmim][Tf2N]、[C6H4F9mim][Tf2N]、[Amim][BF4]、[Pabim][BF4]、[Am-im][DCA]、[Am-im][BF4]、[BMIM][BF4]+PVDF、[C3NH2mim][CF6SO3]+PTFE、[C3NH2mim][Tf2N]+PTFE、[H2NC3H6mim][Tf2N]+cross-linked Nylon66、P[VBBI][BF4]、P[MABI][BF4]、P[VBBI][Tf2N]、P[VBTMA][BF4]、P[MATMA][BF4]等からなり、検出対象となるガスの種類に応じて当該ガスを吸収可能なイオン液体が適宜選定され得る。 特に、例えば、二酸化炭素を検出可能なガスセンサ100とする場合には、二酸化炭素を吸収可能な[EMIM][BF4]、[EMIM][BF4]、[BMIM][BF4]、[BMIM][PF6]、[Hmpy][Tf2N]、[Hmim][Tf2N]、[Bmim][Tf2N]、[C6H4F9mim][Tf2N]、[Amim][BF4]、[Pabim][BF4]、[Am-im][DCA]、[Am-im][BF4]、[BMIM][BF4]+PVDF、[C3NH2mim][CF6SO3]+PTFE、[C3NH2mim][Tf2N]+PTFE、[H2NC3H6mim][Tf2N]+cross-linkedNylon66、P[VBBI][BF4]、P[MABI][BF4]、P[VBBI][Tf2N]、P[VBTMA][BF4]、P[MATMA][BF4]等をイオン液体4として用いる。 また、アンモニアを検出可能なガスセンサ100とする場合には、アンモニアが吸収可能な[EMIM][BF4]など、水を吸収するイオン液体全般をイオン液体4として用いる。 なお、イオン液体4には、PEI(ポリエチレンイミン)を添加してもよい。 なお、第1の実施形態では、ガス吸収体としてイオン液体4を適用した場合について述べているが、本発明はこれに限らず、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物水溶液等その他種々のガス吸収体を適用してもよい。なお、ガス吸収体としてアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物水溶液を用いた場合には、二酸化炭素を吸収することができるので、検出対象を二酸化炭素とするガスセンサを実現することができる。 更に本発明に係るガスセンサは、水分を検出することも可能である。すなわち、湿度計としての用いることも可能である。 液体封止用有機高分子膜5は、図2に示すように、凹部1aがイオン液体4によって充填された状態の基部1の片面側に配設されている。液体封止用有機高分子膜5は、イオン液体4は透過しないがガスを透過する膜であり、具体的にはパリレン膜から構成することができる。液体封止用有機高分子膜5により覆うことによって、基部1(ガスセンサ100のセンサ部10)が振動したり傾斜したりした場合であっても、イオン液体4を安定して基部1の凹部1aに保持させ続けることができる。液体封止用有機高分子膜5は、イオン液体4を凹部1aに充填した後に形成してもよく、あるいは、イオン液体4の充填前に液体封止用有機高分子膜5によって凹部1aを被覆して、被覆後にイオン液体4を凹部1aに注入してもよい。イオン液体4の充填後に液体封止用有機高分子膜5を形成する場合には、液体封止用有機高分子膜5となる材料を例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成することが可能である。 保護メッシュ部材6は、陽極2および陰極3が形成された基部1、イオン液体4、および、液体封止用有機高分子膜5を覆う蓋部材であり、保護メッシュ部材6は、外力が加わった場合に基部1、イオン液体4、液体封止用有機高分子膜5を保護する機能を有する。保護メッシュ部材6は、凹部1aに対向する領域がメッシュ構造を有しており、メッシュ構造が設けられている領域はイオン液体4配設側と外気側との間でガスが透過できる領域である。保護メッシュ部材6は、例えば基部1よりも径が僅かに大きく、且つ、基部1、金属層(陽極2および陰極3)、イオン液体4、液体封止用有機高分子膜5の堆積方向に沿った側面を有していてもよい。陽極2および陰極3が形成されイオン液体4を保持する基部1と、液体封止用有機高分子膜5と、保護メッシュ部材6とは、別部材の固定部品を用いて図1の(a)に示す状態としても良いし、あるいは、ネジ留めしてもよい。 なお、液体封止用有機高分子膜5および保護メッシュ部材6は、本発明に係るガスセンサのガスセンシング機能を実現する上での必須構成ではない。つまり、液体封止用有機高分子膜5および保護メッシュ部材6が配設されていなくても、ガスセンシング機能を実現することができる。ただし、イオン液体4を基部1に確実に保持する目的、イオン液体4に外部から異物が混入することを回避する目的、ガスセンサの外部衝撃を強化する目的で設けることが好ましい。また、液体封止用有機高分子膜5および保護メッシュ部材6は少なくとも一方だけであってもよい。保護メッシュ部材6のメッシュ穴の形状または開口径を調整することにより、液体封止用有機高分子膜5が無くとも、保護メッシュ部材6のみでイオン液体4を基部1に確実に保持することができる場合がある。具体的には、保護メッシュ部材6のメッシュ穴の開口径が100μm以下であれば、メッシュ穴とイオン液体4の表面張力との相互作用によりイオン液体4はメッシュ穴から流出せずに基部1に確実に保持される。 検出部7は、配線を介して陽極2および陰極3の第1の端部2a,3aと接続しており、センシング時に、陽極2と陰極3とに信号を入力して、イオン液体4を介した陽極2と陰極3との間のインピーダンスを計測し、検出対象ガスの有無、および、検出対象ガスの濃度を検出する。以下に、本発明に係るガスセンサの原理について説明する。 (2)本発明に係るガスセンサの原理 図3は、本発明に係るガスセンサの原理を説明する図である。図3に示すガスセンサ100のセンサ部10は、原理を説明するために簡素化された構成を有しているが、本発明に係るガスセンサは、図3に示す構成であってもガスセンサとしての機能を果す。図3には、陽極2と陰極3とが形成された平板の基部1の表面に、イオン液体4の液滴が形成されている。図3に示す構成では図1および図2に示す液体封止用有機高分子膜5は配設されていない。 イオン液体4は所定の伝導率を有している。そして、この伝導率はイオン液体に吸収されるガス(例えば二酸化炭素)が吸収されることによって変化する。本発明は、この伝導率の変化を、インピーダンスを計測することによって、インピーダンス値からイオン液体に吸収されたガス量、すなわち、計測対象の空間内のガス濃度値を求める。図3は二酸化炭素検出用のガスセンサを示しており、図3の左側は二酸化炭素濃度が低い空間内に設置されたガスセンサのイオン液体の状態を示し、図3の右側は左側よりも二酸化炭素濃度が高い空間内に設置されたガスセンサのイオン液体の状態を示している。右側のガスセンサのイオン液体には、二酸化炭素が多く吸収されている。イオン液体は、二酸化炭素の吸収量に応じて粘度が下がり、粘度が下がることによってイオンの移動度が高まって伝導率が上昇する。故に、検出部7が陽極と陰極との間に電圧をかけて電流(交流)を流してインピーダンス値を計測することによって、イオン液体の伝導率の変化を捉える。検出部には、インピーダンス値とガス濃度値とが予め対応付けられたデータが格納されている。そのため、インピーダンス値を求めればガス濃度値を算出することができる。 (3)検証試験 本発明に係るガスセンサの一実施例を用いて上述した原理に基づいたガス検出(ガスの有無およびガスの濃度特定)が可能であるか検証した。 検証試験に使用したガスセンサについて、図4を用いて説明するが、基本的には図1〜3に示した構成に基づいている。図4の(a)は、検証試験に使用したガスセンサ100の斜視図であり、図4の(b)は、検証試験に用いた試験装置全体の構成を示す図である。なお、説明の便宜上、図4の(b)では、ガスセンサ100は図4の(a)のガスセンサ100のA−A´矢視断面図を示している。図4に示すガスセンサ100はCO2(二酸化炭素)センサとする。 図4の(b)に示す試験装置50は、内部にガスセンサ100を配置することができるチャンバ30と、チャンバ30内部の二酸化炭素濃度を変化させるためのCO2(二酸化炭素)ガス貯留部20とバルブ21、検出対象であるガスを積極的に含ませていない空気(外気)の吸排気バルブ40とを有する。ガスセンサ100は、先に説明した、液体セル電極からなる基部1、[EMIM][BF4]からなるイオン液体4、パリレン膜からなる液体封止用有機高分子膜5、および、保護メッシュ部材6に加え、Ti-Al合金から構成された陽極2と、Ti-Al合金から構成された陰極3とのそれぞれから延びる配線が接続されている検出部7を備えている。 用いた基部1は、開口部分から底面までが深さ約11mmで、開口部分の径が約25mm、底面の径が約15mmの凹部1aであって、凹部1aの深さの中間位置までは開口部分から径が連続的に狭くなり、中間位置から底面までは径が等しい形状を有しており、凹部1aの容量は1943mm3で、約2ccのイオン液体4が凹部1aを完全に満たしたガスセンサ100を使用した。 図4の(b)に示す試験装置50を用いて、二酸化炭素濃度を変えて、陽極2と陰極3とに配線を介して接続した検出部7によって、イオン液体4を介した陽極2と陰極3との間のインピーダンスを計測した。 計測は、検出部7から陽極2と陰極3とに周波数0.01Hzの信号を入力することにより行なった。計測は、ガスセンサ100をチャンバ30内に静置したままで、チャンバ30内の二酸化炭素濃度を0ppmから凡そ500ppm刻みで4000ppmまで、二酸化炭素濃度が低濃度から高濃度になるように変化させて行なった。また、チャンバ30内の濃度が所定の濃度になってから1分経過した時点での検出部7によってインピーダンスを計測した。 計測結果を、図5に示す。図5に示すように、陽極2と陰極3とに周波数0.01Hzの信号を入力するとチャンバ30内の二酸化炭素濃度を高濃度になるにつれて、イオン液体4のインピーダンス値が低下することが示された。すなわち、チャンバ30内の二酸化炭素濃度を高濃度になるにつれて、イオン液体4の伝導率が上がった、つまりイオン液体4の粘度が下がったといえる。これは、チャンバ30内の二酸化炭素濃度が高くなるのに応じて、イオン液体4が多くの二酸化炭素を吸着したからであるといえる。 以上の方法と同様にして、陽極2と陰極3とに周波数0.1Hzの信号を入力した場合と、陽極2と陰極3とに周波数1Hzの信号を入力した場合についても、二酸化炭素濃度別のインピーダンス特性を試験した。周波数0.1Hzの信号を入力した場合の結果を図6に、周波数1Hzの信号を入力した場合の結果を図7に示す。図5〜図7から、二酸化炭素濃度が高くなるにつれて、イオン液体4のインピーダンス値が低下することが示された。また、周波数0.01Hz、0.1Hz、1Hzのそれぞれの結果を1つに纏めた図8からわかるように、各結果は線形のインピーダンス特性を示しており、低周波のほうがZ値の変化の差異が明確であることが示された。 次に、図4の(b)に示した試験装置を用いて、二酸化炭素濃度(二酸化炭素濃度:0ppm、400ppm、1000ppm、1500ppm、2000ppm、2500ppm、3000ppm、3500ppm、4000ppm)を固定して、周波数を変えて、各二酸化炭素濃度におけるインピーダンス特性の変化を測定した。測定は、陽極2および陰極3に直流(DC)バイアス(1.8ボルト)をかけて行なった。その結果を図9に示す。図9から、二酸化炭素濃度によって或る周波数におけるインピーダンス値が互いに異なること、および、二酸化炭素濃度によってZ値に違いがあることが示された。 以上の検証試験から、本実施形態のガスセンサを用いれば、検出対象のガスを吸収することによって伝導率が変化するガス吸収体を利用して、インピーダンスを計測することによって、検出対象のガスの有無および濃度を検出することができることがわかる。 なお、インピーダンスを計測する方法以外にも、例えば検出作業の前後でのインピーダンスの変化量を求めることによりガス検知をおこなうことも可能である。すなわち、本発明は、インピーダンスを計測するかどうかには関わらず、(ガス吸収体を用いて)インピーダンス値に基づいたガス検出をおこなう点にある。 なお、ガス吸収体は、液体に限らず、ゲル状のものや固体であっても可能である。例えば、イオン液体[BMIM][BF4](67%wt)にポリマーPVdF(HFP)(33%wt)を混ぜたものをガス吸収体として用いることができる。 (4)ガスセンシング方法 図10は、第1の実施形態のガスセンサ100を用いたガスセンシング方法のフローチャートである。 第1の実施形態のガスセンサ100を所定の箇所に設置した状態で、センサ部10の陽極2と陰極3とに配線を介して接続した検出部7から、所定の周波数をもつ信号を陽極2および陰極3に入力する(ステップS1)。 続いて、イオン液体4を介した陽極2と陰極3との間のインピーダンスを計測する(ステップS2:検出工程)。 続いて、ステップS2において計測されたインピーダンス値を、検出対象ガスの濃度とインピーダンス値とが予め対応付けられた対応データと照合して、ガス濃度を検出する(ステップS3:検出工程)。ここで、上記対応データは、例えば検出部7に配設したメモリに予め格納されたものを使用することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、対応データを、センサ部10を用いてインピーダンス値を取得して作成してもよい。 (5)第1の実施形態の作用効果 以上から、本実施形態のガスセンサを用いれば、検出対象のガスを吸収することによって伝導率が変化するガス吸収体を利用して、インピーダンスを計測するという比較的簡易な方法によって、検出対象のガスの有無および濃度を検出することができる。 第1の実施形態の構成によれば、従来の赤外光吸収型のガスセンサのように光路長を長く確保する必要がないため、装置(ガスセンサ)を小型化することができ、且つ、二酸化炭素のような分子量の小さいガスを測定することが可能である。 また赤外光吸収型のガスセンサに比べて、光源を必要としないことから、消費電力の低減を実現することができる。従来の赤外光吸収型のガスセンサは光源を使用するため、光源が計測可能な状態となるまで時間を要する。これに対して、第1の実施形態のガスセンサは光源が必要ないため、従来の赤外光吸収型のガスセンサよりも計測時間を短縮することができる。 また、第1の実施形態のガスセンサは、ガス吸収体であるイオン液体が、基部に設けられた凹部に充填されている。ここで、仮に基部が、陽極と陰極が設けられた平坦な部材であって、且つ、その平坦な面にイオン液体をその表面張力を利用して液滴の状態で陽極と陰極とを覆うように形成した場合であっても、本発明に係るガスセンサとしての機能を実現することは可能である(図3参照)。しかしながら、液滴のままでは外部衝撃などを受けるなどしてセンサ機能を正常に維持することができない虞がある。これに対して、第1の実施形態のようにイオン液体が凹部に充填されていれば、イオン液体が基部の表面から突出することを防ぐことができ、耐衝撃性を比較的高めることができ、信頼性があるガスセンサを提供することができる。また、基部の表面からイオン液体の液滴が突出せずに、ガスセンサのガスと接触する側の表面の平坦性を維持することができる。 (6)変形例 ・変形例1(電極パターン) 上述した第1の実施形態では、図1の(b)に示すように陽極2および陰極3が第1の端部2a,3aから第2の端部2b,3bまでの間でほぼ等しい幅を有した帯状の形を有している。つまり、第2の端部2b,3bが、帯状の陽極2および陰極3の他の部分と同じ幅で構成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば第2の端部2b,3bが図11に示すような形状を有していても良い。 図11は、本変形例1の陽極2および陰極3の第2の端部2b,3b、および、イオン液体4の形成位置を示した部分上面図である。図11に示す第2の端部2b,3bは、陽極2および陰極3における第2の端部2b,3b以外の部分よりも幅が広く構成されており、T字の頭部のような形状をしている。第2の端部2bと第2の端部3bとはT字の頭部同士を対向させて形成されており、このT字の第2の端部2bと第2の端部3bをイオン液体4が覆う構成となっている。これにより、図1の(b)に示す第2の端部2b,3bの形状の場合に比べて、電極自体の面積が大きくなることにより、インピーダンスが低下し、これに伴い、計測系のノイズの少ない低インピーダンス領域での計測が可能となる。 ・変形例2(電極パターン) 上述した第1の実施形態では、図1の(b)に示すように陽極2および陰極3が第1の端部2a,3aから第2の端部2b,3bまでの間でほぼ等しい幅を有した一本の帯状の形を有している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば第2の端部2b,3bが図12に示す形状を有していても良い。 図12は、本変形例2の陽極2および陰極3の第2の端部2b,3b、および、イオン液体4の形成位置を示した部分上面図である。図12に示す第2の端部2b,3bはそれぞれ、複数の櫛歯部2bb,3bbを有しており、陽極2の第2の端部2bの複数の櫛歯部2bbと、陰極3の第2の端部3bの複数の櫛歯部3bbとは互いに噛み合う、あるいは、入れ子になっている。そして、複数の櫛歯部同士が互いに噛み合う、あるいは、入れ子になっている領域をイオン液体4が覆う構成となっている。これにより、図1の(b)に示した第2の端部2bと第2の端部3bの形状の場合に比べて、電極自体の面積が大きくなることにより、インピーダンスが低下し、これに伴い、計測系のノイズの少ない低インピーダンス領域での計測が可能となる。 ・変形例3(電極パターン) 上述した第1の実施形態では、図1の(b)に示すように一本の帯状の陽極2および陰極3を用いてインピーダンスを計測している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばインピーダンス計測用の電極が図13に示す構成であっても良い。 図13は、本変形例3のインピーダンス計測用の電極、および、イオン液体4の形成位置を示した部分上面図である。本変形例3のインピーダンス計測用の電極は、並列している複数の導電線9からなり、そのうちの一方の端の導電線が陽極2であり、他方の端の導電線が陰極3である。そして、図13のように、これら複数の導電線9がイオン液体によって直列に接続された状態となっている。複数の導電線は、Ti-Al合金から構成することができる。 これにより、インピーダンス変化量を大きくすることができ、検出(分解)能を向上させることができる。 ・変形例4(凹部の形状) 上述した第1の実施形態では、図2に示すように基部1に設けた凹部1aの形状は開口部分の径が底面の径よりもわずかに大きく構成され、且つ、陽極2および陰極3の第2の端部2b,3bが凹部1aの底面に沿って配された構成である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図14に示す構成としても良い。 図14は、本変形例4のガスセンサ100の断面図である。本変形例4では、基部1凹部1aの底面を更に深く掘り込んだ溝1bを設けており、溝1bの側面に陽極2および陰極3が配設されている。凹部1aの開口部分から底面までの深さは浅いが開口部分の径が広くガス検出時に空気と接触する面積が十分にある。一方、深さが浅く、且つ、その底面に設けられた溝1bは、凹部1aとは反対で開口部分から底面までの深さは深いものの開口部分の径が小さい。すなわち、溝部1bの幅と深さの比(アスペクト比)は、凹部1aの幅と深さの比(アスペクト比)よりも大きい。 図14の構成とすることにより、陽極2および陰極3が凹部1aの開口部分から比較的浅い位置にあって、陽極2と陰極3との対向面積を広く確保でき、且つ、陽極2と陰極3との離間距離が短いことから、イオン液体4の液量を多くすることができつつ、反応速度を上げることができる。その他のメリットとして、複数の溝部を掘ることにより集積化が容易である。 ・変形例5(凹部の形状と電極の位置) 上述した第1の実施形態では、図2に示すように基部1に設けた凹部1aの形状は開口部分の径が底面の径よりもわずかに大きく構成され、且つ、当該底面は平坦である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図15に示す構成としても良い。 図15は、本変形例5のガスセンサ100の断面図である。本変形例5のガスセンサ100は、基部1に設けた凹部1aが、開口部分が地面側に向けて開口し、底面が天側になるように設置する態様を想定した構成である。本変形例5では、凹部1aの底面を凹部1aの天井面と記載する。 本変形例5の特徴は、凹部1aの天井面の一部が開口部分に向かって隆起した隆起部を有しており、その隆起部の隆起端領域に陽極2および陰極3が配設されている点にある。凹部1aの開口部分には凹部1aに満たされたイオン液体4が流出しないように液体封止用有機高分子膜5が設けられている。 本変形例5の構成において、図15に示すように凹部1aの開口部分が地面側になって、凹部1aの天井面が天側になるようにガスセンサ100が設置され、何らかの理由で凹部1aを満たしたイオン液体4の液量が減ると、液位が下がって凹部1aの天井面がイオン液体4の液面(例えば図15の矢印で示す位置に液面がある)から露出した状態となる。しかしながら、本変形例5の構成によれば、陽極2および陰極3は凹部1aの天井面よりも下がった位置に配設されているため、陽極2および陰極3はイオン液体4の液面から露出することはない。このような構成とすることで、イオン液体4の液量が多少減ってもセンシング機能を維持することができるため、ガスセンサの長寿命化を図ることができる。 〔第2の実施形態〕 本発明に係るガスセンサの他の実施形態(第2の実施形態)について、図16〜図18を用いて説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態との相違点について説明するため、説明の便宜上、第1の実施形態で説明した部材と同一の機能を有する部材には同一の部材番号を付し、その説明を省略する。 (1)第2の実施形態のガスセンサの構成 図16は、本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ100のセンサ部10´の構成の分解図である。 上述の第1の実施形態では、センサ部10(図1の(b)参照)に一対の電極(陽極2、陰極3)が設けられている。これに対して、第2の実施形態では、図16に示すように、センサ部10´には、陽極2および陰極3に加えて、もう一対の電極(陽極22、陰極33)が設けられている。 また、第1の実施形態では、陽極2および陰極3に或る周波数の信号を入力して、インピーダンスを計測する。これに対して、第2の実施形態では、各電極対に、異なる周波数の信号を入力し、各周波数の信号に基づくインピーダンス計測をおこなってその差分を求めることによってガス濃度を検出するように検出部7´が構成されている。 (2)ガスセンシング方法 図17は、第2の実施形態に係るガスセンサ100を用いたガスセンシング方法のフローチャートである。ガスセンシングの原理は、第1の実施形態において既に説明した内容と同一である。 第2の実施形態のガスセンサ100を所定の箇所に設置した状態で、検出部7´から配線を介して陽極2と陰極3とに、或る周波数である第一の周波数(例えば0.01Hz)をもつ信号を入力し、検出部7´から配線を介して陽極22と陰極33とに、第一の周波数とは異なる第二の周波数(例えば1Hz)をもつ信号を入力する(ステップS1´)。 続いて、イオン液体4を介した陽極2と陰極3との間のインピーダンスを計測するとともに、イオン液体4を介した陽極22と陰極33との間のインピーダンスを計測する(ステップS2:検出工程)。 続いて、ステップS2において計測された第一の周波数に基づく第一のインピーダンス値と、第二の周波数に基づく第二のインピーダンス値との差分を求める(ステップS3´:検出工程)。 続いて、ステップS3´において算出された差分値を、検出対象ガスの濃度と差分値とが予め対応付けられた対応データと照合して、ガス濃度を検出する(ステップ4:検出工程)。 (3)第2の実施形態の作用効果 上記構成によれば、2種類の周波数の信号を入力して各周波数の信号に基づく上記インピーダンスを計測し、各周波数の信号に基づくインピーダンス値の差分をとって、差分からガスの有無および濃度を検出する。これにより、1種類の周波数を用いてガス検出を行なう場合(第1の実施形態の構成)と比較して、検出精度を向上させることができる。 なお、第2の実施形態では、各周波数の信号に基づくインピーダンス値の差分をとっているが、本発明は差分に限定されるものではなく、割合、%、増減率など、複数のインピーダンス値を比較するあらゆる方法を用いてガス検出をおこなうことができる。 (4)変形例 ・変形例1(電極パターン) 本発明は、上述した第2の実施形態の陽極2、22と陰極3、33の形成位置に限定されるものではなく、例えば図18に示すような形状を有していても良い。 図18は、本変形例1における、一対の電極、およびもう一対の電極の配設位置と、イオン液体4の形成位置とを示した部分上面図である。図18に示すように、イオン液体4の被覆領域において、陽極2と陰極3と陽極22と陰極33とが並列に形成されている。このような電極構造において4端子法により計測することができる。この方法を用いることでイオン液体と金属電極間の接触抵抗を除去することが可能である。 ・変形例2(インピーダンス計測方法) 上述した第2の実施形態では、一つの電極対に第一の周波数をもつ信号を入力し、別の一つの電極対に第二の周波数をもつ信号を入力している。つまり、周波数ごとに異なる電極に入力する構成である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。 例えば、第一の周波数と第二の周波数とを合わせた信号を一つの電極対に入力し、当該一つの電極対から出力される信号を、フーリエ解析して片方の周波数の信号のみを取り出し、その周波数のインピーダンス値を求めることによって、上述の第1の実施形態と同じ手法でガス検出を行なうことが可能である。また、それぞれの周波数の信号を分けて取り出すことにより上述の第2の実施形態と同じ手法でガス検出を行なうことが可能である。 なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。 本発明により、小型化を実現するとともに、分子量の小さいガスであっても検出可能で汎用性の高いガスセンサを提供することができるので、ガスセンサを搭載した環境モニタリング装置などに適用することが可能である。1 基部1a 凹部1b 溝部2、22 陽極2a 第1の端部2b 第2の端部2bb 櫛歯部3、33 陰極3a 第1の端部3b 第2の端部3bb 櫛歯部4 イオン液体(ガス吸収体)5 液体封止用有機高分子膜(保持手段)6 保護メッシュ部材(保持手段)7、7´ 検出部9 導電線10、10´ センサ部20 ガス貯留部21 バルブ30 チャンバ40 吸排気バルブ50 試験装置100 ガスセンサ 陽極および陰極と、 上記陽極の少なくとも一部分および上記陰極の少なくとも一部分を被覆しており、且つ、検出対象であるガスと接触することができるように配設された、当該ガスを吸収することによって伝導率が変化するガス吸収体と、 上記ガス吸収体を介した上記陽極と上記陰極との間のインピーダンスの値に基づいて上記ガスを検出する検出部と、を備えていることを特徴とするガスセンサ。 凹部が設けられた基部を更に備えており、 上記ガス吸収体は、上記凹部に充填されており、 上記陽極の少なくとも一部分および上記陰極の少なくとも一部分とは、上記凹部において離間した位置に配されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。 或る周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力する入力部を更に備えており、 上記検出部は、上記或る周波数の信号に基づく上記インピーダンスの値に基づいてガスを検出する構成となっていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサ。 少なくとも2種類の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力する入力部を更に備えており、 上記検出部は、各周波数の信号に基づく上記インピーダンスの値に基づいてガスを検出する構成となっていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサ。 上記検出部は、或る周波数である第一の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの第一の上記インピーダンスの値と、当該第一の周波数とは異なる第二の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの第二の上記インピーダンスの値との差分あるいは増減率に基づいて上記ガスを検出する構成となっていることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。 上記陽極および上記陰極からなる対が複数あり、 上記入力部は、上記複数の対に、上記対同士で互いに異なる周波数をもつ信号を入力する構成となっていることを特徴とする請求項4または5に記載のガスセンサ。 上記ガス吸収体における上記ガスと接触する側を覆って当該ガス吸収体を上記基部に保持させる保持手段を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ。 上記凹部には、地面側に向いて開口した開口部分と、天側に配設された天井面とが設けられており、 上記開口部分を覆って上記ガス吸収体を当該凹部に保持させる保持手段を更に備えており、 上記天井面は、一部分が上記開口部分に向けて隆起した隆起部を有しており、 上記隆起部に、上記陽極および上記陰極が配設されていることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ。 上記陽極および上記陰極は、当該陽極の端部と当該陰極の端部が対向して配設されていることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサ。 上記陽極および上記陰極はそれぞれ、複数の櫛歯部を有する櫛型電極であり、 上記陽極と上記陰極とのそれぞれの上記複数の櫛歯部が互いに噛み合う、あるいは、入れ子になるように配置されており、 上記ガス吸収体は、上記複数の櫛歯部が互いに噛み合う、あるいは、入れ子になった領域を覆っていることを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載のガスセンサ。 上記凹部は、当該凹部の開口部分から当該開口部分とは反対側に規定される当該凹部の底部に向けて、径が段階的に小さくなっている形状を有していることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ。 上記ガス吸収体は、イオン液体であることを特徴とする請求項1から11までの何れか1項に記載のガスセンサ。 陽極の少なくとも一部分および陰極の少なくとも一部分を、検出対象であるガスを吸収することによって伝導率が変化するガス吸収体によって被覆したガスセンサを用いて、上記ガス吸収体を介した上記陽極と上記陰極との間のインピーダンスの値に基づいて上記ガスを検出する検出工程を含むことを特徴とするガスセンシング方法。 上記検出工程では、或る周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの上記インピーダンスの値に基づいて上記ガスを検出することを特徴とする請求項13に記載のガスセンシング方法。 上記検出工程では、少なくとも2種類の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの当該周波数ごとの上記インピーダンスの値に基づいて上記ガスを検出することを特徴とする請求項13に記載のガスセンシング方法。 上記検出工程では、或る周波数である第一の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの第一の上記インピーダンスの値と、当該第一の周波数とは異なる第二の周波数をもつ信号を上記陽極および上記陰極に入力したときの第二の上記インピーダンスの値とに基づいて上記ガスを検出することを特徴とする請求項14に記載のガスセンシング方法。 【課題】小型化を実現するとともに、分子量の小さいガスであっても検出可能で汎用性の高いガスセンサおよびガスセンサシング方法を提供する。【解決手段】本発明の一形態のガスセンサ100は、ガス吸収体の一例であるイオン液体4が陽極2と陰極3とを覆っており、検出部7は、陽極2と陰極3との間のインピーダンスの値から、検出対象であるガスの検出を行なう。【選択図】図1