タイトル: | 公開特許公報(A)_インドシアニングリーン含有粒子、前記インドシアニングリーン含有粒子を有する光音響イメージング用造影剤、および前記インドシアニングリーン含有粒子の製造方法 |
出願番号: | 2012138393 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 49/00,C01G 49/06 |
井上 幸子 山内 文生 岸 麻裕子 富田 佳紀 JP 2014001175 公開特許公報(A) 20140109 2012138393 20120620 インドシアニングリーン含有粒子、前記インドシアニングリーン含有粒子を有する光音響イメージング用造影剤、および前記インドシアニングリーン含有粒子の製造方法 キヤノン株式会社 000001007 阿部 琢磨 100126240 黒岩 創吾 100124442 井上 幸子 山内 文生 岸 麻裕子 富田 佳紀 A61K 49/00 20060101AFI20131206BHJP C01G 49/06 20060101ALI20131206BHJP JPA61K49/00 AC01G49/06 BA61K49/00 C 8 1 OL 16 4C085 4G002 4C085HH01 4C085HH07 4C085JJ03 4C085KA40 4C085KB08 4C085KB56 4C085LL18 4G002AA12 4G002AB02 4G002AD04 4G002AE05 本発明はインドシアニングリーン含有粒子、前記インドシアニングリーン含有粒子を有する光音響イメージング用造影剤、および前記インドシアニングリーン含有粒子の製造方法に関する。 生体内部の情報を可視化する手法として、光音響イメージング法が知られている。光音響イメージング法は、検体に光を照射することで検体から発せられる音響波の強度(光音響信号強度)と発生位置を測定することにより、検体内部の物質分布の画像を得る方法である。 酸化鉄粒子をデキストランで被覆した粒子(リゾビスト(登録商標))は、光を吸収して音響波を発生することが知られている(非特許文献1)。したがって、リゾビスト(登録商標)は光音響イメージング用造影剤として用いることができる。また、インドシアニングリーン(Indocyanine Green、以下ICGと略すことがある)も光を吸収し、音響波を発生することが知られている。ICGは会合体を形成していない場合、780nm付近の波長帯域に吸光度の極大を有する。なお、本明細書において、ICGとは下記の構造で示される化合物を指す。ただし、対イオンはNa+でなくてもよく、H+あるいはK+など任意の対イオンをもちいることができる。 ここで、酸化鉄粒子のように光を吸収して音響波を発生する粒子と、ICGのように光を吸収して音響波を発生するものを組み合わせた粒子を調製すれば、強い音響波を発生すると期待できる。非特許文献1では、金粒子にICGを吸着させた粒子(以下、ICG−金プローブと呼ぶ)が開示されている。非特許文献1でICG−金プローブは、表面増強ラマン散乱用とあるが、金粒子とICGはともに光を吸収して音響波を発生するため、強い音響波を発生する可能性がある。Analytical Chemistry 2005;77:pp2381−2385 本発明者らは鋭意検討した結果、非特許文献1に開示のICG−金プローブには課題があることを見出した。すなわち、ICGと、金粒子とは弱い相互作用で吸着していると考えられるため、ICG−金プローブが水中に置かれた場合、親水性の高いICGのスルホン酸基が水分子と引きあって、ICG−金プローブからICGが離脱してしまうと考えられる。さらに、ICG−金プローブが血清中に置かれた場合、血清中のアルブミンなどのタンパク質とICGとが引きあって、ICG−金プローブからICGが離脱してしまうと考えられる。 そこで本発明は、金属酸化物粒子または金属粒子からICGが離脱しにくい粒子を提供することを目的とする。 本発明に係るインドシアニングリーン含有粒子は、金属酸化物粒子または金属粒子と、インドシアニングリーンの会合体と、を有するインドシアニングリーン含有粒子であって、前記インドシアニングリーンの会合体の吸光度の極大値が880nm以上910nm以下の範囲内にあることを特徴とする。 また、本発明に係るインドシアニングリーン含有粒子の製造方法は、インドシアニングリーンの水溶液を加熱する工程、 加熱した前記インドシアニングリーンの水溶液と金属酸化物粒子または金属粒子とを混合して混合液を得る工程、前記混合液を加熱することを特徴とする。 本発明に係るインドシアニングリーン含有粒子によると、金属酸化物粒子または金属粒子と、ICGの会合体とを組み合わせた粒子は、その粒子が水中や、血清中におかれた場合であっても、金属酸化物粒子または金属粒子からICGが離脱しにくい。本発明の実施形態に係るインドシアニングリーン含有粒子の断面を模式的に示した図である。ICGの構造を示した図である。本発明の実施形態に係るインドシアニングリーン含有粒子からICGが離脱しにくい理由を示すための図である。本発明の実施例で調製したインドシアニングリーン含有粒子の吸光度の測定結果を示した図である。本発明の実施例で調製した別のインドシアニングリーン含有粒子の吸光度の測定結果を示した図である。本発明の実施例および比較例で調製したインドシアニングリーン含有粒子の水中での安定性の評価結果を示した図である。本発明の実施例で調製したインドシアニングリーン含有粒子の血清中での保存安定性の評価結果を示した図である。本発明の比較例で調製したインドシアニングリーン含有粒子の吸光度の測定結果を示した図である。 以下、本発明の実施形態について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るインドシアニングリーン含有粒子の断面を模式的に示した図である。なお以下では「インドシアニングリーン含有粒子」を、単に「粒子」と略す。 (粒子) 本実施形態に係る粒子101は、金属酸化物粒子または金属粒子102と、ICGの会合体103と、を少なくとも有する。そして、ICGの会合体103の吸光度の極大値が880nm以上910nm以下の範囲内にあることを特徴とする。 本実施形態に係る粒子101が、水中や、血清中におかれた場合であっても、金属酸化物粒子または金属粒子からICGが離脱しにくい理由について図2および図3を用いて説明する。 図2(a)はICGの構造を示している。ICGを、疎水性の部位(芳香族環とメチン鎖を有する部位)201と、スルホン酸基を有する部位(親水性の部位)203と、201と203との間の部位とに分けて示すことができる。図2(a)を模式的に示した図が図2(b)である。 ここで、ICGのスルホン酸基203のマイナス電荷と、金属酸化物粒子または金属粒子のプラス電荷とが引きあうことで、ICGは金属酸化物粒子または金属粒子に吸着する。しかし、ICGは金属酸化物粒子または金属粒子に弱い相互作用で吸着しているため、水中や血清中におかれたときに、ICGは金属粒子や金属酸化物粒子から離脱してしまう。 これは、親水性のスルホン酸基203が水分子と親和性が高いため、金属酸化物粒子または金属粒子に吸着しているスルホン酸基と引きあって、ICGを金属酸化物粒子または金属粒子から離脱させてしまうからだと考えられる。また、血清中のアルブミンなどのタンパク質はICGと引きあって、ICGが金属酸化物粒子または金属粒子から離脱してしまうことも考えられる。 一方、ICGは疎水性の高い部位201がスタッキングして複数のICGからなる会合体を形成しうる(図3(a))。図3(a)では図2(b)で示したICGが会合体を形成したときの状態を模式的に示している。ICGの会合体の吸光度の極大値は会合体を形成していない場合に比べて変わる。本実施形態におけるICGの会合体の吸光度の極大値は880nm以上910nm以下の範囲内にあり、ICGのJ会合体と呼ぶことがある。図3(b)で、210は金属酸化物粒子または金属粒子の表面を模式的に示したものであり、その表面にICGの会合体が吸着している図を示している。ICGの会合体は図3(a)のように複数のICGからなるので、ICG単独に比べてスルホン酸基を多く有する。したがって、図3(b)のように、ICGの会合体と、金属酸化物粒子または金属粒子(210)とは多数の点で相互作用して吸着することができる。すなわち、ICG単独では最多でもスルホン酸基の数である2点でしか金属酸化物粒子または金属粒子と吸着できないが、ICGの会合体はICG同士のつながりを維持したまま多点で金属酸化物粒子または金属粒子と吸着できる。よって、ICGの会合体は金属酸化物粒子または金属粒子から離脱しにくい(図3(b))。 図3(a)のようにICGの会合体は親水性のスルホン酸基203が互いに180度異なる方向に向いた状態でスタッキングしている場合もある。図3(b)のように、一方を向いたスルホン酸基203は金属酸化物粒子または金属粒子に吸着し、180度異なる方向を向いたスルホン酸基は粒子の外側を向いた状態となる。このように、親水性のスルホン酸基が外側を向いた状態では、水分子は粒子の外側に向いたスルホン酸基と引き合い、金属酸化物粒子または金属粒子に吸着したICGの会合体からICGが引き抜かれやすくなると思われる。しかし、ICG同士はスタッキングしており、隣のICGと接しているため、ICGが水分子と接触する確率は、ICG単独のときに比べて低い。水分子はICGに接近しにくく、水分子はICGを引き抜きにくい。その結果、ICGは金属酸化物粒子または金属粒子から脱離しにくい。以上述べたように、ICGの会合体を金属酸化物粒子あるいは金属粒子に吸着させた場合、ICGと金属酸化物粒子あるいは金属粒子が多数の点で吸着していること、及びICG同士がスタッキングしているため水分子が接近しにくいことから、水中でもICGは金属酸化物粒子あるいは金属粒子から脱離しにくい。本実施形態に係る粒子は血清中におかれた場合も同様で、ICG同士はスタッキングしているため、親和性の高い血清中のアルブミンなどのタンパク質はICGに接近しにくく、たとえ接近できたとしても多数点で金属酸化物粒子あるいは金属粒子と吸着しているため、アルブミンなどのタンパク質はICGを引き抜きにくい。このような理由で、本実施形態に係る粒子は、水中や、血清中におかれた場合であっても、金属酸化物粒子または金属粒子からICGが離脱しにくい。ここで、吸着とは、ICGの会合体と、金属酸化物粒子または金属粒子とがクーロン相互作用によって結合していることを意味する。具体的には、ICGの会合体の有するスルホン酸基のマイナス電荷と、金属酸化物粒子または金属粒子の金属原子のプラス電荷とのクーロン相互作用と考えられる。 また、本実施形態における粒子は、780nmにおける吸光度に対して895nmの吸光度は2.0倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることがさらに好ましい。780nmにおける吸光度に対して粒子の895nmの吸光度が大きいということは、粒子におけるICGの会合体の割合が多いと考えられるからである。 本実施形態に係る粒子は、ICGの会合体が粒子の内部に存在していてもよい。 また、本実施形態に係る粒子は、粒子の表面に分散剤を有していてもよい。 (金属酸化物粒子または金属粒子) 本実施形態における金属酸化物粒子または金属粒子は、ICGの会合体が吸着するものであれば特に限定されない。金属酸化物粒子の例としては酸化鉄粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化チタン粒子、酸化銅粒子、酸化亜鉛粒子、酸化マンガン粒子、酸化コバルト粒子、酸化ニッケル粒子、酸化すず粒子、酸化セリウム粒子、酸化カルシウム粒子が挙げられる。金属粒子の例としては金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子が挙げられる。 (酸化鉄粒子) 本実施形態における金属酸化物粒子として酸化鉄粒子が好ましい。酸化鉄粒子は、近赤外波長領域の光を吸収し、また、生体での安全性が高いことが確認されているからである。 本実施形態における酸化鉄粒子は、Fe3O4(マグネタイト)、γ−Fe2O3(マグヘマイト)、またはこれらの混合物などが挙げられる。特に好ましくは、マグネタイトである。マグネタイトは、マグヘマイトより近赤外波長領域におけるモル吸光係数が高いことが知られており、したがって光を照射したときに発生する音響波も大きくなると考えられる。また、本実施形態における酸化鉄粒子は、単結晶、多結晶、非晶質(アモルファス)のいずれの結晶状態でもよい。本実施形態に係る粒子をMRIイメージング用造影剤として用いる場合は、単結晶であることが好ましい。 また、本実施形態における酸化鉄粒子は磁性が有していてもよいし、有していなくてもよい。酸化鉄粒子が磁性を有している場合、磁石を用いて精製することができる。 (ICGの会合体) 本実施形態においてICGの会合体は、吸光度の極大値が880以上910nm以下の範囲内にある。本実施形態におけるICGの会合体の吸光度の極大値は890以上900nm以下の範囲内にあることが好ましく、895nmであることがさらに好ましい。ICGの会合体は、ICGの水溶液を加熱することで得られる。 (分散剤) 本実施形態における分散剤は本実施形態に係る粒子の水や血清などの水溶液中での分散性を上げるためのものである。特に酸化鉄粒子を用いる場合、凝集しやすいため、分散剤を用いることが好ましい。 本実施形態に係る分散剤として、多糖類、四糖類、三糖類、二糖類、単糖類、糖アルコール、ポリエチレングリコール(PEG)等を挙げることができる。 多糖類として例えば、デキストラン、カルボキシデキストラン、アミノ化デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、プルラン、アルギン酸、ペクチン、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、アガロース、カラギーナン、へパリンナトリウム、キシログルカン、キサンタンガムを挙げることができる。 四糖類として例えば、アカルボース、スタキオースを挙げることができる。 三糖類として例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオースを挙げることができる。 二糖類として例えば、トレハロース、スクロース、ラクトース、マルトース、ツラノース、セロビオースを挙げることができる。 単糖類として例えば、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、エリトロース、エリトルロース、トレオース、リブロース、キシルロース、キシロース、リキロース、デオキシリボース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、アミロース、グルコース、マンノース、グロース、ガラクトース、タロース、フコース、ラムノース、セドヘプツロースを挙げることができる。 糖アルコールとして例えば、キシリトール、イノシトール、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、ソルビトール、糖酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、マンニトール、メグルミンを挙げることができる。 PEGはPEGそのものでもよいし、上記の糖類に化学的に結合されていてもよい。 また、PEGは直鎖状であってもよいし、分岐していてもよい。 (粒径) 本実施形態における粒子の粒径は、動的光散乱解析装置を用いて、動的光散乱法によって測定される流体力学的直径を意味する。本実施形態に係る粒子の粒径は、1nm以上5000nm以下であることが好ましい。また、腎臓で排泄されにくい8nm以上、EPR(Enhanced Permeability and Retention)効果が期待できる1000nm以下であることがさらに好ましい。 (用途) 本実施形態に係る粒子は、ICGが離脱しにくいため大きな音響波を発生するので、光音響イメージング用造影剤として好適である。 また、MRI用造影剤として用いることもできる。 (光音響イメージング用造影剤) 本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤は、上記本実施形態に係る粒子と分散媒とを有する。なお、光音響イメージングは、光音響トモグラフィー(断層撮影法)を含む概念である。分散媒として例えば、生理食塩水、注射用蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖水溶液が挙げられる。また本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤は、必要に応じて薬理上許容できる添加物、例えば血管拡張剤などを有していても良い。 本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤は、上記の分散媒に予め分散させておいてもよいし、キットにしておき、生体内に投与する前に分散媒に分散させて使用してもよい。 本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤は、EPR効果を利用することで、生体内に投与したときに、生体内の正常部位に比べて腫瘍部位により多く集積させることができる。その結果、粒子を生体内に投与した後、生体に光を照射して、生体からの音響波を検出するときに、腫瘍部位から発せられる音響波を正常部位から発せられる音響波よりも大きくすることができる。従って、本実施形態に係る粒子は腫瘍部位を特異的に検出する光音響イメージング用造影剤として用いることができる。 (光音響イメージング方法) 本実施形態に係る光音響イメージング方法は、上記のインドシアニングリーン含有粒子または光音響イメージング用造影剤が投与された検体に600nm乃至1300nmの波長領域の光を照射する工程と、前記検体内に存在する前記造影剤から発生する音響波を検出する工程と、を有する。 本実施形態に係る光音響イメージング方法の一例は以下の通りである。すなわち、本実施形態に係るインドシアニングリーン含有粒子または造影剤を検体に投与し、あるいは前記検体より得られた臓器等の試料に添加する。なお、前記検体とは、ヒト以外の、実験動物やペット等の哺乳類、その他、特に限定されない。前記検体中もしくは検体より得られた試料として例えば、臓器、組織、組織切片、細胞、細胞溶解物などを挙げることができる。本実施形態に係る造影剤の投与あるいは添加後、前記検体等に対し近赤外波長領域のレーザーパルス光を照射する。 次に、本実施形態に係るインドシアニングリーン含有粒子または造影剤からの光音響信号(音響波)を音響波検出器、例えば圧電トランスデューサで検出し、電気信号に変換する。この音響波検出器より得られた電気信号に基づき、前記検体等の中の吸収体の位置や大きさ、あるいは光吸光係数などの光学特性値分布を計算することができる。例えば、前記光音響信号が基準とする閾値以上で検出されれば、その検体に標的分子、あるいは、標的分子を産生する部位が存在すると推定され、または、試料に標的分子が存在する、あるいは、試料の由来となる検体に標的分子を産生する部位が存在すると推定することができる。 (粒子の製造方法) 本実施形態に係る粒子の製造方法は特に限定されず、ICGの会合体を調製し、調整したICGの会合体を金属酸化物粒子または金属粒子に吸着される方法や、金属酸化物粒子または金属粒子に吸着したICGを会合体にする方法などが挙げられる。 本実施形態に係る粒子の製造方法として例えば下記の工程(1)乃至工程(3)の各工程をこの順に有する方法が挙げられる。工程(1)ICGの水溶液を加熱する工程工程(2)加熱したICGの水溶液と金属酸化物粒子または金属粒子とを混合する工程工程(3)(2)で得られた混合液を加熱する工程 本発明者らの検討によると、ICGの濃度が3.0×10−7mol/mlの条件で上記工程(1)乃至(3)を経て粒子を調製したところ、会合体の形成を示唆する吸光度の極大値の変化は見られなかった。一方、Chemical Physics 1997;220:pp385−392では濃度が10−6mol/ml以上のICG水溶液を加熱すると、吸光度の極大の波長が700−800nmから890nmへシフトするとあり、1.5×10−6mol/mlの条件のときに実証されている。したがって、工程(1)におけるICGの濃度は10−6mol/ml以上3.0×10−7mol/ml未満であることが好ましく、1.5×10−6mol/ml以上であることが好ましい。例えば、工程(2)において、加熱したICG水溶液と酸化鉄粒子の水分分散液を体積比9:1で混合するならば、工程(1)のICG水溶液濃度として1.7×10−6mol/ml程度に調整することが好ましい。 工程(1)及び(3)で加熱する温度は40℃以上が好ましい。40℃以上の温度にする場合、ICGの会合体が形成されるまでの時間が短いからである。工程(1)でICG水溶液を加熱する時間は1時間以上24時間以下であることが好ましい。 また、本発明者らの検討によると、ICG水溶液に酸化鉄粒子の水分散液を混合し加熱しても、生体内に投与するモデルとして得られた粒子と血清を混合すると、酸化鉄粒子からICGが脱落してしまった。よって、ICG水溶液に酸化鉄粒子の水分散液を加える前に、ICG水溶液を加熱する工程(1)が必要であると考えられる。 以下、実施例を用いて更に詳細に本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、材料、組成条件、反応条件等、同様な機能、効果を有する粒子が得られる範囲で自由に変えることができる。 (実施例) (酸化鉄粒子とICGの会合体を有する粒子(粒子A−1、A−2、A−3)の調製) 下記の手順で酸化鉄粒子とICGの会合体を有する粒子(粒子A−1、A−2、A−3)を調製した。 まず、1.29mg/mlの濃度となるように、ICG(インドシアニングリーン標準品、医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団製)に水を加えた。超音波を10分間照射し、ICGを水に溶解させた。得られたICG水溶液を3つに分け、それぞれ65℃で1、3、6時間加熱した。加熱して得られたICG水溶液と、酸化鉄粒子(ナノマグ45−00−202、γ−Fe2O3、コアフロント株式会社製)が分散した水溶液とを9:1の体積比で混合した。用いた酸化鉄粒子の粒径を測定したところ1338nmであった。 次に、ICG水溶液と、酸化鉄粒子が分散した水溶液との混合液を、65℃で24時間加熱した。磁石を用いて、酸化鉄粒子を回収し、酸化鉄粒子に吸着していないICGを除去した。ICG水溶液を1時間加熱して得られた粒子をA−1、3時間加熱して得られた粒子をA−2、6時間加熱して得られた粒子をA−3と呼ぶ。 また、動的光散乱解析装置(ELS−Z、大塚電子社製)を用いて、粒子A−1、A−2、及びA−3の粒径を測定した。100回の積算を5回行い、算出された5つのデータの平均の粒径を求めた。粒子A−1、A−2、及びA−3の散乱平均の値はそれぞれ482nm、432nm、419nmであった。 得られた粒子A−1、A−2、及びA−3について、分光光度計(Perkin Elmer Lambda Bio40)を用いて、吸光度を測定した。測定結果を図4に示す。いずれの粒子も吸光度の極大値が895nmであった。なお、酸化鉄粒子は895nmの波長の光をほとんど吸収しないことが知られているため、ここで測定した吸光度はICG由来の値だと考えられる。したがって、本実施例ではICGのJ会合体が形成されていることがわかった。 なお粒子A−1、A−2、及びA−3の780nmの吸光度に対する895nmの吸光度比はそれぞれ895nmの吸光度/780nmの吸光度=3.2、3.1、及び2.6であった。 (分散剤を表面に有する酸化鉄粒子とICGの会合体を有する粒子(A−4)の調製) 下記の手順で、分散剤としてデキストランを表面に有する酸化鉄粒子と、ICGの会合体とを有する粒子(A−4)を調製した。 酸化鉄粒子(ナノマグ45−00−202、γ−Fe2O3、コアフロント株式会社製)の代わりにデキストランを表面に有する酸化鉄粒子(ナノマグ79−00−501、粒径50nm、γ−Fe2O3、コアフロント株式会社製)を用いること以外は、実施例1と同様にして粒子を調製した。ただし、最初にICG水溶液を加熱する時間は6時間とした。磁性カラム(MACS、ミルテニーバイオテク株式会社製)を用いて、酸化鉄粒子を回収し、酸化鉄粒子に吸着していないICGを除去した。このようにして得られた粒子をA−4と呼ぶ。 粒子A−1、A−2、およびA−3と同様に、動的光散乱解析装置を用いて粒径と吸光度を測定した。散乱平均の値は96nmであった。図5に粒子A−4の吸光度を測定した結果を示す。吸光度の極大値は895nmであった。なお、酸化鉄粒子およびデキストランは895nmの波長の光をほとんど吸収しないことが知られているため、ここで測定した吸光度はICG由来の値だと考えられる。したがって、本実施例ではICGのJ会合体が形成されていることがわかった。また、895nmの吸光度/780nmの吸光度=2.7であった。 (粒子A−3の水中での安定性の評価) 下記の手順で粒子A−3の水中での安定性を評価した。 磁石を用いて、粒子A−3の分散水溶液の吸光度が約200相当になるように濃縮した。濃縮した分散水溶液の一部を200倍に希釈し、吸光度を測定した。残りの濃縮した分散水溶液を室温で1日おいた後、200倍に希釈し、吸光度を測定した。 図6(a)は粒子A−3の吸光度を測定した結果である。波長600nm付近と、波長950nm付近にはICGの吸光度のピークはないので、図6(a)に示すように、600nmと950nmに接する接線を引いた。その接線と粒子A−3の吸収との差をICG会合体由来の吸収とした。粒子を1日置く前のICG会合体由来の吸光度を1としたときの、粒子を1日置いた後のICG会合体由来の吸光度(吸光度変化率)を求めた。ただし、粒子A−3のICG会合体由来の吸光度は波長895nmを選択して求めた。 図6(b)に粒子A−3の吸光度変化率を示す。粒子A−3は吸光度変化率は少なかったため、水中において、酸化鉄粒子からICGが離脱しにくいことがわかった。 (粒子A−1乃至A−4の血清中での安定性の評価) 粒子A−1乃至A−4を体内に投与したときのモデル実験として、粒子A−1乃至A−4を血清と混合し、粒子の安定性を調べた。手順は下記の通りである。 粒子A−1乃至A−4の分散水溶液と血清を1:9の体積比で混合した。混合直後の吸光度を測定した。 吸光度を測定した後、37℃で24時間インキュベーションして、再度吸光度を測定した。 再度吸光度を測定した後、粒子A−1乃至A−3に関しては磁石を用いて、粒子A−4に関しては磁気カラムを用いて、粒子と上澄みに分離した。酸化鉄粒子に吸着しているICGの有無と、酸化鉄粒子から離脱して上澄みに漏れ出たICGの有無を確認するために、粒子の分散水溶液と上澄みの吸光度をそれぞれ算出した。粒子A−3の吸光度の測定結果を図7に示した。図7において、粒子と血清とを混合した直後の吸光度を「0h」、血清中で粒子を24時間インキュベーションした後の粒子の分散液の吸光度を「24h」、血清中で粒子を24時間インキュベーションした後の粒子の吸光度を「24h粒子」、血清中で粒子を24時間インキュベーションした後の上澄みの吸光度を「24h上澄」と、それぞれ記載した。 図7の結果から、粒子A−3を血清と混合して24時間インキュベーションした後でも895nmでの光吸収の極大は維持されていることがわかった。 血清中に粒子を24時間インキュベーションしたときに、粒子にどれだけの割合のICGが離脱せずに、吸着して残っていたかを、(血清中でのICGの残存率)=(24時間インキュベーションした後の粒子の吸光度)/(血清と混合直後の粒子の吸光度)×100(%)で表される指標を用いて示す。数値が高いほど、ICGは離脱しておらず、酸化鉄粒子に吸着していることを示す。 粒子A−3については、ICGの内75%が酸化鉄粒子に吸着していたと考えられる。 粒子A−1、A−2、A−4についても粒子A−3と同様に(血清中でのICGの残存率)を算出した。以上、実施例に係る粒子についての各種データをまとめて表1に示した。 表1から、実施例に係る粒子の血清中でのICGの残存率は高いため、酸化鉄粒子から離脱しにくいことがわかった。 (粒子A−3の光音響信号強度の測定) 粒子A−3の光音響信号強度の測定を以下の通り行った。 まず、光音響信号の計測は、パルスレーザー光を水に分散した粒子に照射し、圧電素子を用いて粒子からの光音響信号を検出し、高速プリアンプで増幅後、デジタルオシロスコープで波形を取得して行った。具体的な条件は以下の通りである。パルスレーザー光源として、チタンサファイアレーザ(Lotis、LT−2211−PC)を用いた。波長900nm、エネルギー密度は20乃至50mJ/cm2(選択した波長に依存する)、パルス幅は約20ナノ秒、パルス繰返周波数は10Hzとした。水に分散した粒子をおさめる測定容器には、幅1cm、光路長0.1cmのポリスチレン製キュベットを用いた。光音響信号を検出する圧電素子には、エレメント径1.27cm、中心帯域1MHzの非収束型超音波トランスデューサ(Panametrics−NDT、V303)を用いた。水を満たしたガラス容器に前記の測定容器と圧電素子とを浸け、その間隔を2.5cmとした。光音響信号を増幅する高速プリアンプは増幅度+30dBの超音波プリアンプ(オリンパス、Model 5682)を用いた。増幅された信号をデジタルオシロスコープ(テクトロニクス、DPO4104)に入力した。前記ガラス容器の外からパルスレーザー光を前記ポリスチレン製キュベットに照射した。この際に生じる散乱光の一部をフォトダイオードで検出し、デジタルオシロスコープにトリガー信号として入力した。デジタルオシロスコープを32回平均表示モードとし、レーザーパルス照射32回平均の光音響信号取得を行った。光音響信号の波形から光音響信号強度(V)を求めた。得られた光音響信号強度を照射パルスレーザーのエネルギー(J)で割った値を規格化光音響信号(VJ−1)と定義した。 さらに、粒子A−3を塩酸で溶解した後、Bathophenanthroline−disulfonic acidを用いて、Feの濃度を比色定量した。 規格化光音響信号をFe濃度で割り、鉄量あたりの規格化光音響信号PA(Fe) (VJ−1M−1)を求めた。その結果、粒子A−3の規格化光音響信号PA(Fe)=2.8×107 (VJ−1M−1)であった。 (比較例1) (酸化鉄粒子とICGを有する粒子(粒子B−1、粒子B−2)の調製) 比較例として、下記の手順で酸化鉄粒子とICGを有する粒子(粒子B−1、B−2)を調製した。原料として用いた酸化鉄粒子、ICGは、粒子A−1,A−2、A−3を調製したときに用いたものと同じである。 まず、1.29mg/mlの濃度となるように、ICGに水を加えた。超音波を10分間照射し、ICGを水に溶解させた。得られたICG水溶液と、酸化鉄粒子が分散した水溶液とを9:1の体積比で混合して混合物を得た。得られた混合物を2つに分け、それぞれ65℃、37℃で24時間加熱した。磁石を用いて酸化鉄粒子を回収し、酸化鉄粒子に吸着していないICGを除去した。65℃で加熱して得られた粒子をB−1、37℃で加熱し得られた粒子をB−2と呼ぶ。 実施例と同様にして、粒子B−1、B−2の吸光度を測定した(図8)。粒子B−1、B−2の吸光度の極大値はそれぞれ873nm、852nmであった。また、粒子B−1、B−2の895nmの吸光度/780nmの吸光度はそれぞれ1.1、0.8であった。 この結果から、酸化鉄粒子とICGの水溶液とを混合する前にあらかじめICG水溶液を加熱しなければ、酸化鉄粒子に880nm以上910nm以下の範囲内に吸光度の極大をもつ粒子はできないことがわかった。 (分散剤を表面に有する酸化鉄粒子とICGを有する粒子(粒子B−3)の調製) 分散剤としてデキストランを表面に有する酸化鉄粒子とICGを有する粒子(粒子B−3)を調製した。酸化鉄粒子(ナノマグ45−00−202、γ−Fe2O3、コアフロント株式会社製)の代わりにデキストランを表面に有する酸化鉄粒子(ナノマグ79−00−501、粒径50nm、γ−Fe2O3、コアフロント株式会社製)を用いること以外は、粒子B−1を調製したときと同様の手順で調製を行った。得られた粒子をB−3と呼ぶ。 実施例と同様にして、粒子B−3の吸光度を測定した(図8)。粒子B−3の吸光度の極大は873nmであった。粒子B−3の895nmの吸光度/780nmの吸光度は0.3であった。 この結果から、酸化鉄粒子とICGの水溶液とを混合する前にあらかじめICG水溶液を加熱しなければ、酸化鉄粒子に880nm以上910nm以下の範囲内に吸光度の極大をもつ粒子はできないことがわかった。 (粒子B−2の水中での安定性の評価) 粒子B−2の水中での安定性を、上記(粒子A−3の水中での安定性の評価)と同様にして算出粒子からICGが離脱しにくいことがわかった。粒子B−2のICG由来の吸収として波長852nmを選択した。 図4(b)に粒子B−2の吸光度変化率を示す。粒子B−2では吸光度変化率が大きかったため、水中において酸化鉄粒子からICGが離脱しやすいことがわかった。 (粒子B−1乃至B−3の血清中での安定性の評価) 粒子B−1乃至B−3を体内に投与したときのモデル実験として、粒子B−1乃至B−3を血清と混合し、血清中でのICGの残存率を算出した。手順は(粒子A−1乃至A−4の血清中での安定性の評価)と同様にして行った。なお、粒子B−1、B−2は磁石を用いて、粒子B−3は磁気カラムを用いて酸化鉄粒子を粒子と上澄みに分離した。結果を表1に示した。この結果から、880nm以上910nm以下の範囲内に吸光度の極大値をもたない粒子は血清中で酸化鉄粒子からICGが脱離してしまうことがわかった。 101 粒子 102 金属酸化物粒子または金属粒子 103 ICGの会合体 金属酸化物粒子または金属粒子と、インドシアニングリーンの会合体と、を有するインドシアニングリーン含有粒子であって、前記インドシアニングリーンの会合体の吸光度の極大値が880nm以上910nm以下の範囲内にあることを特徴とするインドシアニングリーン含有粒子。 前記インドシアニングリーンの会合体が、前記金属粒子または前記金属酸化物粒子に吸着していることを特徴とする請求項1に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 前記金属酸化物粒子が酸化鉄粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 前記インドシアニングリーン含有粒子の780nmにおける吸光度に対して、前記インドシアニングリーン含有粒子の895nmの吸光度は2.0倍以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 前記インドシアニングリーン含有粒子の表面に分散剤を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 前記分散剤がデキストランであることを特徴とする請求項5に記載のインドシアニングリーン含有粒子。 請求項1及至6のいずれか一項に記載のインドシアニングリーン含有粒子と、分散媒とを有することを特徴とする光音響イメージング用造影剤。 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインドシアニングリーン含有粒子の製造方法であって、インドシアニングリーンの水溶液を加熱する工程、 加熱した前記インドシアニングリーンの水溶液と金属酸化物粒子または金属粒子とを混合して混合液を得る工程、 前記混合液を加熱することを特徴とするインドシアニングリーン含有粒子の製造方法。 【課題】 金属酸化物粒子または金属粒子からICGが離脱しにくいICG含有粒子を提供することを目的とする。【解決手段】 金属酸化物粒子または金属粒子と、インドシアニングリーンの会合体と、を有するインドシアニングリーン含有粒子であって、前記インドシアニングリーンの会合体の吸光度の極大値が880nm以上910nm以下の範囲内にあることを特徴とする。【選択図】 図1