生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_潤滑剤の分子量分析方法
出願番号:2012119594
年次:2013
IPC分類:G01N 27/62


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黒田 昌美 JP 2013246029 公開特許公報(A) 20131209 2012119594 20120525 潤滑剤の分子量分析方法 富士電機株式会社 000005234 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 110001243 黒田 昌美 G01N 27/62 20060101AFI20131112BHJP JPG01N27/62 VG01N27/62 K 4 OL 9 2G041 2G041CA01 2G041DA05 2G041EA03 2G041FA09 2G041GA06 本発明は、潤滑剤の分子量分析方法に関する。より詳細には、本発明は、コンピューターの外部記憶装置などにおいて用いられる磁気記録媒体の潤滑層を形成するためのパーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤の分子量分析方法に関する。 一般的な磁気記録媒体において、磁気記録層の上に形成される保護層と書込み/読み出し用磁気ヘッドとの間に生じる摩擦力を減少させること、ならびに磁気記録媒体の耐久性および信頼性を向上させることを目的として、潤滑剤からなる潤滑層が保護層上に形成される。 磁気記録媒体の保護層は、一般的に、ダイヤモンド状カーボン(DLC)等の炭素質材料を用いて形成される。また、炭素質材料の表面に対して潤滑剤を吸着あるいは結合させることによって、保護層の表面を均一に覆う潤滑層を形成する必要がある。この目的のために、種々の潤滑剤が開発されてきている(特許文献1、2など参照)。一般的には、分子の末端にヒドロキシル基などの極性基を有するパーフルオロポリエーテル系の化合物が、潤滑剤として用いられている。 潤滑層は、一般的に数nm以下の膜厚を有する。潤滑層は、たとえば、浸漬塗布法、スプレー法、蒸着法などの方法を用いて形成することができる。一般的には、浸漬塗布法が用いられている。浸漬塗布法に用いるための塗布液は、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤をフッ素系溶剤中に溶解させることによって作成される。均一な潤滑層を形成するためには、塗布液の潤滑剤濃度、温度、粘度などを制御し、かつ、塗布液から被成膜基板を引き上げる速度などを制御する必要がある。 潤滑剤の分子構造だけでなく、潤滑剤の分子量および分子量分布も、磁気記録媒体の耐久性・信頼性に大きな影響を有することが知られている。潤滑剤の分子量が小さすぎる場合、磁気記録媒体の耐久性・信頼性が低下する。なぜなら、磁気記録媒体からの揮発、磁気ヘッドへの移動などにより、潤滑剤がより短期間で飛散または消失してしまうからである。逆に、潤滑剤の分子量が大きすぎる場合、塗布液の粘性が大きくなるため、均一な潤滑層の形成が困難になる。また、均一な潤滑層が形成できたとしても、磁気ヘッドの浮上安定性が低下するなどの問題点がある。このように、磁気記録媒体の耐久性・信頼性を向上させるためには、潤滑層を形成する潤滑剤の分子量および分子量分布を、より正確に分析および把握することが重要である。 飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて、潤滑層を形成する潤滑剤の状態を解析するいくつかの方法が提案されている。たとえば、飛行時間型二次イオン質量分析法によって、潤滑層表面に存在する官能基の比率を解析する方法が提案されている(特許文献3参照)。また、飛行時間型二次イオン質量分析法によって、潤滑層を形成する潤滑剤中のカルボキシ基(−COOH)の存在を解析する方法が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、質量分析法を用いた潤滑剤の分子量および分子量分布の解析については、何らの提案もされていない。特開平5−247200号公報特開2004−253110号公報特開2006−92679号公報特開2004−319058号公報 高分子材料の分子量を測定するための慣用的な方法として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)が知られている。潤滑剤の分子量測定についても、GPCを適用することができ、一般的に用いられている。GPCによる分子量測定は検量線法による分析であるため、分子量既知の複数の標準試料が必要である。しかしながら、現状では、測定対象の潤滑剤の分子量を含む広い範囲の標準試料は存在しない。このため、潤滑剤とは分子構造の異なる分子量既知の材料(ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなど)を標準試料として用いた解析を行うなどの工夫が必要である。この場合には、当然のことながら、正確な分子量を分析することは不可能である。また、GPCでは、分子サイズによる篩い分けに基づいて試料の分離および測定を行うため、試料中に異なる分子構造を有するが同じサイズを有する夾雑分子が混入している場合、夾雑分子の存在を検知することができず、分析精度が低下する。さらに、GPCによる分析には一般的に多量の溶離液が必要である。一方、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤はある種の高価なフッ素系溶剤にしか溶解しない。そのため、高価な溶離液が必要となり、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤のGPC分析は高額な費用を要する。 また、ある種の潤滑剤の分析には、核磁気共鳴(NMR)分光法を適用することが可能である。NMR法では、潤滑剤中の繰り返しユニットに起因するピークと、末端構造に起因するピークとを分離し、それぞれの積分値から潤滑剤の分子量を計算する。NMR法では異なる分子構造を有する夾雑成分を弁別して解析できるため、夾雑成分の影響は小さい。しかしながら、測定には数十mg程度の試料が必要であり、NMR法による分析では高価な潤滑剤を比較的多量に用いる必要がある。また、各ピークの積分値は、潤滑剤中に含まれる多数の化合物の平均的な値となるため、潤滑剤の平均的な分子量を求めることは可能であるが、潤滑剤の分子量分布を求めることは不可能である。さらに、通常の場合、末端構造に起因するピークの積分値は、繰り返しユニットに起因するピークの積分値に比較して非常に小さいため、それら積分値から計算された平均的な分子量の精度は低い。 本発明者は、高分解能で質量を測定することができる飛行時間型質量分析計(TOF−MS)を用いて検出される特定のイオン種を解析することにより、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤の分子量および分子量分布を解析できることを見出した。ある条件下で飛行時間型質量分析を行うと、潤滑剤から生成する特定のイオン種が高感度に検出される。このイオン種の分子量を解析することにより、分子内の繰り返しユニットの構造とユニット数に由来する分子量成分を検知することができる。そして、これを元に分子量を解析することおよびそれぞれの繰り返しユニットの数を導き出すことが可能となる。その結果として、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤の正確な分子量および分子量分布を分析することが可能となる。 上記の構成を採用するにより、飛行時間型質量分析計を用いた簡便かつ簡単な測定により得られた高分解能マススペクトルから、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤の分子構造および分子量分布を短時間で分析することができる。従来のGPCまたはNMRによる分析では得られなかったパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の正確な分子量および分子量範囲を、不純物などの影響を受けることなく、微量の試料で分析することが可能となる。 さらに、磁気記録媒体表面に塗布した後のパーフルオロポリエーテル系潤滑剤についても、溶媒を用いてパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を溶出させ、溶出液のマススペクトルを測定することによって、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤の分子構造および分子量分布を測定することができる。このため、磁気記録媒体表面に化学結合により固定していないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の解析なども可能となる。実施例1の測定結果のマススペクトルを示す図である。実施例1のマススペクトルの解析結果を示す図である。実施例2の測定結果のマススペクトルを示す図である。実施例2のマススペクトルの解析結果を示す図である。 本発明は、パーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤(以下、「パーフルオロポリエーテル系潤滑剤」とも称する)の分子量を分析する方法であって、質量分析法を用いて、パーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤のマススペクトルを測定する工程と、得られたマススペクトル中のパーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤に由来する特定のイオン種を解析する工程とを含むことを特徴とする。 本発明の対象となるパーフルオロポリエーテル系潤滑剤は、1種または複数種の繰り返しユニットと、繰り返しユニット以外の両分子末端に位置する基(以下、「末端基」と称する)を含む一群の化合物の混合物である。本発明の対象となるパーフルオロポリエーテル系潤滑剤は、好ましくは複数種の繰り返しユニットを含み、より好ましくは2種の繰り返しユニットを含む。また、本発明において、1種または複数種の繰り返しユニットのそれぞれが異なる分子式を有することが必要である。異性体の関係にある2つ以上の繰り返しユニット(たとえば、分子式C3F6Oを有する繰り返しユニット−OCF2CF2CF2−および−OCF(CF3)CF2−)は、質量分析法では区別できないためである。本発明の対象となるパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の一例は、下記の式(I)の構造を有する化合物の混合物である。 式(I)において、mおよびnは正の整数である。 本発明の方法において解析されるパーフルオロポリエーテル系潤滑剤に由来する特定のイオン種は、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤そのものの1価イオン(いわゆる「分子イオン」)(M+/-)、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤に1つの水素原子が付加したイオン((M+H)+/-)、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤から1つの水素原子が脱離したイオン((M−H)+/-)などを含む。なお、各イオンの電荷は、マススペクトル測定を正イオン化モードまたは負イオン化モードのいずれで行うかによって決定される。末端の極性基としてヒドロキシル基などの負に帯電しやすい基を含むパーフルオロポリエーテル系潤滑剤は、負イオン化モードのマススペクトル測定を行い、M-、(M−H)-、(M+H)-などのイオン種を解析することが望ましい。あるいはまた、末端の極性基としてアミノ基(−NH2)などの正に帯電しやすい基を含むパーフルオロポリエーテル系潤滑剤は、正イオン化モードのマススペクトル測定を行行い、M+、(M+H)+、(M−H)+などのイオン種を解析することが望ましい。 たとえば、前述の式(I)の構造を有する化合物の混合物であるパーフルオロポリエーテル系潤滑剤に関して、特定のイオン種として、たとえば、下記の式(II)の構造を有する(M−H)-イオンを用いることができる。 式(II)において、mおよびnは正の整数である。 繰り返しユニット−OCF2−の式量は65.9917であり、繰り返しユニット−OCF2CF2−の式量は115.9886であり、末端基(−CF2CH2OHおよび−CF2CH2O-)の式量は177.0175である。よって、式(II)の構造を有する負イオンの分子量W(n,m)は、式(III)で表される。 W(n,m)=65.9917×m+115.9886×n+177.0175 (III) 本発明の方法の第1の工程のマススペクトル測定において、上記の特定のイオン種を主として発生させるように、できるだけマイルドなイオン化法を用いることが望ましい。本発明が分子量の分析を目的としているため、化合物主鎖のフラグメンテーション(開裂)が望ましくないためである。本発明において用いることができる望ましいイオン化法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法を含む。 また、本発明の方法の第1の工程のマススペクトル測定において、分子式の差異を判別するために高解像度のマススペクトルを測定することが望ましい。感度の低下を伴うことなしに、広範囲の分子量にわたって高解像度のマススペクトルを測定するために、本発明においては、飛行時間型の質量分析部を有する質量分析計(飛行時間型質量分析計)を用いることが好ましい。 続いて、得られたマススペクトルを解析して、特定のイオン種に起因するピークを抽出する。たとえば、式(I)を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の分析を行う場合、式(III)に適合する分子量を有するピークを抽出する。この操作によって、式(II)の構造の負イオンにおける変数nおよびm(ひいては、式(I)を有する化合物の変数nおよびm)を特定することができる。これによって、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤に含まれる化合物の正確な分子量、およびその分子量の範囲を特定することができる。 また、マススペクトル中のピークの強度(イオン強度)は、当該ピークに相当するイオン種の量に比例すると考えられる。よって、イオン強度の分布によって、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤の化合物の分子量分布を解析することができる。本発明における分子量分布の解析は、たとえば、特定のイオン種に基づくものとして抽出されたピークの中で最大のイオン強度を有するピークを選定し、当該イオン強度を基準として1つまたは複数の範囲を設定し、各ピークがどの範囲のイオン強度を有するかによってイオン種を分類し、そのイオン種に該当する化合物の含有量を把握することによって実施することができる。より具体的には、抽出されたピークの中の最大のイオン強度を100%とし、67%以上100%以下のイオン強度を有するピークに該当する化合物を「高含有量成分」とし、33%以上67%未満のイオン強度を有するピークに該当する化合物を「中含有量成分」とし、0%超33%未満のイオン強度を有するピークに該当する化合物を「低含有量成分」として分類することができる。 (実施例1) 5mLのヘキサフルオロベンゼンおよび45mLのメタノールの混合溶媒中に、32.6mgの式(I)の構造を有する潤滑剤を溶解させ、サンプル溶液を調製した。このサンプル溶液をESIイオン源を取り付けたMariner飛行時間型質量分析装置(アプライドバイオ社製)に導入し、マススペクトルを測定した。ESIイオン源は、負イオン測定モードで動作させ、サンプル導入用のポンプ流量を5μL/minとした。得られたマススペクトルを図1に示した。なお、本実施例においてマススペクトル測定に要したサンプル溶液の体積は1mL以下であり、実際には1mg以下の潤滑剤による分析が可能であることが分かった。 次に、得られたマススペクトルから、式(III)により計算される分子量W(n,m)を有するピーク(すなわち、式(II)の構造を有する(M−H)-イオンに相当するピーク)を抽出した。さらに、抽出されたピークの中で最大のイオン強度を100%とした。続いて、図1に示すように、抽出されたピークのそれぞれを、67%以上100%以下のイオン強度の範囲(領域H、高含有量成分)、33%以上67%未満のイオン強度の範囲(領域M、中含有量成分)、0%超33%未満のイオン強度の範囲(領域L、低含有量成分)に分類して、マススペクトルの解析を行った。解析の結果を図2および第1表に示した。なお、図2においては、領域H、領域M、および領域Lを、それぞれ、参照符号10H、10M、および10Lで示した。 磁気記録媒体に潤滑層を形成するための塗布液をサンプル溶液として用いる場合にも、本実施例の手順が適用可能であることは明らかである。 (実施例2) 実施例1で用いたものと同一ロットの分子構造(I)の潤滑剤を塗布した100枚の磁気記録媒体を準備した。2Lのフッ素系溶剤フロリナート(商標)FC−77を用いて、100枚の磁気記録媒体から潤滑剤を溶出させた。得られた溶出液からロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られた固形物に対して、250μLのヘキサフルオロベンゼンおよび2.25mLのメタノールの混合溶媒を加えて、サンプル溶液を調製した。このサンプル溶液を用いて、実施例1と同様の手順により、マススペクトルの測定および解析を行った。得られたマススペクトルを図3に示した。また、解析結果を図4および第2表に示した。なお、図4においては、領域H、領域M、および領域Lを、それぞれ、参照符号20H、20M、および20Lで示した。 本実施例の結果から、磁気記録媒体表面に化学結合により固定していないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の解析に対して本発明の方法を適用可能であることが明らかとなった。加えて、本実施例による潤滑剤の分子量分布の解析結果(図4および第2表)は、実施例1の解析結果(図2および第1表)と相違する。この相違は、磁気記録媒体表面に化学的に結合した潤滑剤が溶出されなかったことによると考えられる。 10H、20H 領域H 10M、20M 領域M 10L、20L 領域L パーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤の分子量を分析する方法であって、 質量分析法を用いて、パーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤のマススペクトルを測定する工程と、 得られたマススペクトル中のパーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤に由来する特定のイオン種を解析する工程とを含み、前記パーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤は、異なる分子式を有する1種または複数種の繰り返しユニットと、末端基とで構成されていることを特徴とする方法。 前記マススペクトルを測定する工程を、飛行時間型質量分析計を用いて実施することを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記パーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤が、式(I)の構造:(式中、mおよびnは正の整数である)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。 前記特定のイオン種が式(II)の構造:(式中、mおよびnは正の整数である)を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。 【課題】パーフルオロポリエーテル系潤滑剤の分子構造および分子量分布を短時間で分析することができる方法の提供。【解決手段】パーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤の分子量を分析する方法であって、質量分析法を用いて、パーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤のマススペクトルを測定する工程と、得られたマススペクトル中のパーフルオロポリエーテル主鎖骨格を有する潤滑剤に由来する特定のイオン種を解析する工程とを含むことを特徴とする方法。【選択図】なし


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