タイトル: | 公開特許公報(A)_認知症及び行動心理学的症候の治療又は予防剤 |
出願番号: | 2012109985 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/15,A61P 25/28,A61K 45/00 |
栗田 征武 西野 敏 JP 2013237619 公開特許公報(A) 20131128 2012109985 20120511 認知症及び行動心理学的症候の治療又は予防剤 栗田 征武 512124337 西野 敏 512124348 福森 久夫 100088096 栗田 征武 西野 敏 A61K 31/15 20060101AFI20131101BHJP A61P 25/28 20060101ALI20131101BHJP A61K 45/00 20060101ALI20131101BHJP JPA61K31/15A61P25/28A61K45/00 6 OL 10 4C084 4C206 4C084AA19 4C084MA02 4C084NA14 4C084ZA151 4C084ZA161 4C084ZC751 4C206AA01 4C206AA02 4C206HA08 4C206KA15 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA15 4C206ZA16 4C206ZC75 本発明は、認知症及び行動心理学的症候の治療又は予防剤に係る。 認知症とは、いわゆる痴呆症であり、認知障害により、社会生活や職業上の機能に支障をきたす状態・症状である。ここで、「認知」とは、覚える、見る、聞く、話す、考えるなどの知的機能を総称する概念である。 認知症の症状は、一般的には、認知症の人に共通してみられる中核症状と、さまざまな要因によって現れると考えられている周辺症状の2種類に分類される。 中核症状としては、見当識障害や記銘力障害、理解判断力の低下、記憶機能の低下のほか、失語(言語障害)、失行(運動機能が正常にもかかわらず、運動活動を遂行することができない)、失認(感覚機能が正常にもかかわらず、物体を認知同定することができない)、実行機能障害(計画を立てて、それを実行することができない)などの症状である。 周辺症状としては、幻覚、妄想、興奮、脱抑制、不潔行為、徘徊、介護への抵抗などのような行動障害、睡眠障害などの症状である。これらの症状は、行動心理学的症候(BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia))といわれる。 中核症状は、認知症における重要な症状であるが、介護する家族や施設職員が対応に難渋し、苦労するのは中核症状よりもむしろ深夜徘徊などのような周辺症状である。 周辺症状の憎悪により家族や施設職員の対応が困難となることが入院の主因でもある。介護者の負担感やバーンアウトスケールに関する検討で、介護負担が重いことが分かっている。 従来、認知症の行動心理学的症候に対する治療として、抗精神病薬(リスペドリン:Risperidone)の投与(非特許文献1、2)、抑肝散の投与(非特許文献3)が報告されている。 また、周辺症状のうち、夜間の行動障害についてはその原因ががメラトニンの減少にあると考え、メラトニンアゴニストである(S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロー2H−インデノ[5、4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドを用いて夜間の行動障害を抑制する技術が提供されている(特許文献1)。 一方、フルボキサミン(Fluvoxamine)は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)として知られ、抗うつ治療剤として広く知られている。フルボキサミンは、うつ病の治療薬としての他に、不安障害、強迫性障害、摂食障害、注意欠陥・多動性障害、月経前症候群等の治療薬としても用いられている。WO2006/107027公報IntJ Geriatr Psychiatry. 2007 May;22(5):475-84. The efficacy and safety ofrisperidone in the treatment of psychosis of Alzheimer's disease and mixeddementia: a meta-analysis of 4 placebo-controlled clinical trials. Katz I, deDeyn PP, Mintzer J, Greenspan A, Zhu Y, BrodaNZ Med J. 2011 Jun 10;124(1336):39-50. Quetiapine for the treatment ofbehavioural and psychological symptoms of dementia (BPSD): a meta-analysis ofrandomised placebo-controlled trials. Cheung G, Stapelberg J.ProgNeuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2010 Apr 16;34(3):541-5. Treatmentof behavioral and psychological symptoms of Alzheimer-type dementia withYokukansan in clinical practice. Hayashi Y, Ishida Y, Inoue T, Udagawa M,Takeuchi K, Yoshimuta H, Kiue K, Ninomiya Y, Kawano J, Sameshima T, Kawahara T,Goto I, Shudo K, Kurayama S,Nakamura J, Okahara K, Mitsuyama Y.ArchGerontol Geriatr. 2007;44 Suppl 1:35-43. Behavioral and psychological symptomsof dementia (BPSD) in elderly demented subjects: is the long lasting use ofatypical antipsychotic drugs useful and safe? Angelini A, Bendini C, Neviani F,Neri M. MostAmJ Alzheimers Dis Other Demen. 2011 Feb;26(1):10-28. Risk of cerebrovascularadverse events and death in elderly patients with dementia when treated withantipsychotic medications: a literature review of evidence. Mittal V, Kurup L,Williamson D, Muralee S, Tampi RR.甘草製剤による偽アルドステロン症のわが国における現 Pseudoaldosteronism induced by licorice derivatives in Japan. 森本靖彦、中島智子 和漢医薬学会誌 199108 巻:8 号:1 頁:1-22 しかし、非特許文献1,2に記載されている抗精神病薬の場合、非特許文献4,5において指摘されているように、誤嚥、転倒、過鎮静、認知力低下、心筋梗塞などの随伴症状(副作用)を起こすことが少なくなく、その安全性が問題となっている。 また、非特許文献3に記載されている抑肝散の投与の場合は、長期投与によって偽アルドステロン症が出現することがあることが非特許文献6において指摘されている。 特許文献3に記載されている技術は、周辺症状の中の夜間の行動障害についての適用であり、他の周辺症状についても有効な薬剤が望まれている。 本発明は、誤嚥、転倒、過鎮静、認知力低下、心筋梗塞などの随伴症状(副作用)を起こすことが無く、長期投与によっても偽アルドステロン症が出現することの無い行動心理学的症候ないしそれを伴う認知症の治療又は予防剤を提供することを目的とする。 請求項1に係る発明は、フルボキサミン又は製薬上許されるフルボキサミン塩を有効成分とする認知症の治療又は予防剤である。 請求項2に係る発明は、フルボキサミン又は製薬上許されるフルボキサミン塩を有効成分と行動心理学的症候を伴う認知症の治療又は予防剤である。 請求項3に係る発明は、前記塩は、マレイン酸フルボキサミンである請求項1又は2記載の治療又は予防剤である。 請求項4に係る発明は、投与量は、マレイン酸フルボキサミン換算で25−200mg/日である請求項1ないし3のいずれか1項記載の治療又は予防剤である。 請求項5に係る発明は、1−4回/日に分けて投与する請求項4記載の治療又は予防剤である。 請求項6に係る発明は、他の治療剤と組合せて投与する請求項1ないし5のいずれか1項記載の治療又は予防剤である。 本発明者は、認知症、特にその周辺症状に有効な薬剤を鋭意探求し、各種の組成物を調査したところ、従来からうつ病の治療剤として用いられているフルボキサミンが認知症に有効ではないかとの知見を得た。 そこで、多数の臨床試験を重ねた結果。フルボキサミンは認知症の治療・予防に有効であるとの効果が確認し、本発明を完成させた。 本発明によれば以下の効果が達成される。 誤嚥、転倒、過鎮静、認知力低下、心筋梗塞などの随伴症状(副作用)を起こすことが無く、また、長期投与によっても偽アルドステロン症が出現することが無く、認知症の治療・予防に有効である。 以下に本発明を実施するための形態を説明する。(適用対象) 本発明は、認知症、行動心理学的症候(BSPD)の治療又は予防剤である。その適用対象は、認知症の患者である。特に、認知症の周辺症状としてBSPDを伴う患者に効果的である。まあ、認知症にかかわらず、BSPDを有する患者に対しても適用される。 BPSDの主な症状は、次の症状が例示される。 粗暴な行為(暴言や暴力)・介護拒否 被害妄想・物盗られ妄想 昼夜逆転・夜間せん妄 徘徊・帰宅願望 失禁・おもらし 異食・物集め(蒐集癖)・人集め 不潔行為・弄便 性的な言動 抑うつ状態 なお、患者としては、主にヒトが対象であるが、ヒト以外の哺乳動物にも適用することができる。(製薬上許されるフルボキサミン塩) 本出願において、「製薬上許されるフルボキサミン塩」とは、フルボキサミンの塩である。好ましい塩として、例えば、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカル酸塩(glucaronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩があげられるが、これらに限定されない。マレイン酸塩が特に好ましい。(製剤化) 好ましい実施形態において、フルボキサミン又は製薬上許されるフルボキサミン塩は、投与対象への投与に適合した医薬組成物として、通常の手順に従って製剤化される。 なお、フルボキサミンを有効成分とする薬剤は、すでにおう欝剤として製品化され、販売、使用されている。従って、市販品をそのまま本発明の治療、予防剤として使用することも可能である。(剤形) 本発明剤は、例えば、以下の剤形で用いることができる。また、使用に適した他の剤形であってよい。エアゾール剤液剤エリキシル剤カプセル剤軟カプセル剤顆粒剤眼軟膏剤経皮吸収型製剤懸濁剤乳剤坐剤散剤酒精剤錠剤シロップ剤注射剤貼付剤トローチ剤軟膏剤パップ剤芳香水剤リニメント剤リモナーデ剤ローション剤 使用する賦形剤は、例えば、(a)マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、アルファー化デンプン、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤、(b)ポビドン、コポリビドン(copovidone)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コーンスターチ、アルギン酸、クロスポビドン(crospovidone)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース又はポラクリリンカリウム等の造粒剤及び崩壊剤、(c)微結晶性セルロース又はアラビアゴム等の結合剤、ならびに(d)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸又はタルク等の滑剤が挙げられる。(投与方法) 投与方法としては、例えば、」以下の方法があげられるがこれらに限定されない。投与の方式は、臨床医の裁量に任される。経腸投与 経口投与 経管栄養 注腸投与非経口投与 経静脈投与 経動脈投与 筋肉内投与 皮下投与 骨内投与 皮内投与 くも膜下(腔)投与 腹腔内投与 膀胱内投与 経皮投与 経粘膜投与 口腔投与 膣坐剤(用量) 採用される正確な用量はまた、投与経路および疾病または障害の重篤さに依存し、臨床医の判断とそれぞれの患者の環境に応じて決定される。 こう欝剤としては、通常、成人にはフルボキサミンマレイン酸塩として1日50mgを初期用量として、最大1日150mg程度まで漸増し、1日2回に分割して経口投与するのが一般的であるが、認知症、BSPDの治療剤としては、フルボキサミンマレイン酸塩換算で、25−200mg/日が好ましい。25mg/日未満に比べこの範囲では、より大きな効果が期待でき、200mg/日を超える範囲に比べ副作用の出現する可能性が著しく敵かする。 なお、体重を考慮した場合、1-25 mg/kgが好ましい。(併用療法) 投与期間は、たとえば、1か月、3か月、6か月、1年、または患者の生涯のようなより長い期間であってよい。ある実施形態において、本発明の組成物を別の治療薬と同時に投与した場合に有害な副作用、たとえば、これに限定されないが、毒性を生じる可能性がある場合、他の治療薬を有害な副作用が引き出される閾値より少ない用量で投与すると有利である。(実施例1) 行動心理学的症候により入院が必要となった認知症患者76名に無作為かつ二重盲験法により、リスペリドン(Risperidone)、抑肝散(Yokukansan)、フルボキサミン(Fluvoxamine)を投与した。 リスペリドン投与群 25名 抑肝散投与群 26名 フルボキサミン投与群 25名・投与剤:デプロメール(Meiji Seika ファルマ株式会社)デプロメール25mg、MS-25、DEPROMEL25mg剤形は錠剤を投与した。・投与量:投与した量は一日量で25-200 mgであり、これを一日1-4回に分けて毎日経口より投与した。終了時の一日あたりのフルボキサミン平均投与量は83.02±55.30mgであった。 行動心理学的症候の評価尺度NPIでは3群とも開始時は有意差がなく、薬物投与により低下し、効果に群間差はなかった。 副作用の一つである錐体外路症状の評価尺度のDIEPSSはベースラインでは有意差がなかったが、エンドポイントではリスペリドンで有意に高くなった。 他の副作用ではリスペリドンで便秘、筋強直が有意に多く、突然死が一例あった。 本発明によれば、副作用を伴うことなくBSPDを治療、防止することができ、家族や施設職員の介護負担を軽減することが可能となり、介護産業の一助となる。フルボキサミン又は製薬上許されるフルボキサミン塩を有効成分とする認知症の治療又は予防剤。フルボキサミン又は製薬上許されるフルボキサミン塩を有効成分と行動心理学的症候を伴う認知症の治療又は予防剤。前記塩は、フルボキサミンマレイン酸である請求項1ないし2のいずれか1項記載の治療又は予防剤。投与量は、フルボキサミンマレイン酸換算で25−200mg/日である請求項1ないし3のいずれか1項記載の治療又は予防剤。1−4回/日に分けて投与する請求項4記載の治療又は予防剤。他の治療剤と組合せて投与する請求項1ないし5のいずれか1項記載の治療又は予防剤。 【課題】本発明は、誤嚥、転倒、過鎮静、認知力低下、心筋梗塞などの随伴症状(副作用)を起こすことが無く、長期投与によっても偽アルドステロン症が出現することの無い行動心理学的症候ないしそれを伴う認知症の治療又は予防剤を提供することを目的とする。【解決手段】フルボキサミン又は製薬上許されるフルボキサミン塩を有効成分とする認知症の治療又は予防剤。フルボキサミン又は製薬上許されるフルボキサミン塩を有効成分と行動心理学的症候を伴う認知症の治療又は予防剤。【選択図】なし