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タイトル:公開特許公報(A)_合成石英ガラス成形体の検査方法、合成石英ガラス部材の検査方法及び合成石英ガラス部材の製造方法
出願番号:2012103842
年次:2012
IPC分類:C03B 20/00,G01N 21/64


特許情報キャッシュ

水口 雅史 阿邊 哲也 JP 2012197220 公開特許公報(A) 20121018 2012103842 20120427 合成石英ガラス成形体の検査方法、合成石英ガラス部材の検査方法及び合成石英ガラス部材の製造方法 株式会社ニコン 000004112 長濱 範明 100107191 水口 雅史 阿邊 哲也 JP 2005056108 20050301 C03B 20/00 20060101AFI20120921BHJP G01N 21/64 20060101ALI20120921BHJP JPC03B20/00 KG01N21/64 Z 8 2007505829 20060208 OL 28 2G043 4G014 2G043AA03 2G043BA07 2G043CA05 2G043EA01 2G043FA06 2G043JA03 2G043KA03 2G043KA08 2G043KA09 4G014AH00 4G014AH11 本発明は、合成石英ガラス成形体の検査方法、合成石英ガラス部材の検査方法及び合成石英ガラス部材の製造方法に関し、エキシマレーザー等の紫外線レーザーやHgランプなどを光源とした露光装置において用いられるレンズ、プリズム、ウィンドウ等の光学部品、フォトマスク等を製造する素材として用いられる合成石英ガラス成形体の検査方法、合成石英ガラス部材の検査方法及び合成石英ガラス部材の製造方法に関するものである。 IC、LSI等の集積回路パターン転写には、主に縮小投影露光装置(又は光リソグラフィ装置)が用いられている。このような縮小投影露光装置に用いられる投影光学系においては、集積回路の高集積化に伴って、広い露光領域と、その露光領域全体に亘ってのより高い解像力とが要求されてきている。そして、このような投影光学系の解像力の向上については、露光波長をより短くするか或いは投影光学系の開口数(NA)を大きくするという方策がとられている。 また、露光光源としては、現在主に、液晶用露光装置においてはHgランプのi線(365nm)が用いられ、半導体露光装置においてはKrF(248nm)エキシマレーザーや深紫外光源であるArF(193nm)エキシマレーザーが用いられている。 こうした短波長で且つ高照度の露光光源に対して使用できる光学部材は限られており、前述のような露光光源を備える液晶用露光装置においては、光学部材として一部に合成石英ガラス部材が用いられており、前述のような露光光源を備える半導体露光装置においては、光学部材として主に合成石英ガラス部材が用いられている。このような合成石英ガラス部材は、紫外光域で高い透過率を有し、且つ長期間の紫外光の暴露に対し高い耐性を有しているため、縮小投影露光装置の結像光学系で不可欠な材料である。 また、縮小投影露光装置でウェハー上に回路を焼き付けるためのもう一つの重要な要素としては、レチクル(フォトマスク)が挙げられる。このようなフォトマスクにおいては、紫外透過率、耐久性の他に基板の発熱による熱膨張が大きな問題になるので、熱膨張係数の小さな材料が必要とされる。そのため、フォトマスクにおいても合成石英ガラス部材が最も重要な材料として用いられている。 このような合成石英ガラスの製造方法としては、例えば、化学気相堆積(CVD)法の一つである直接法が用いられている。ここで、前記直接法とは、石英ガラス製バーナにて支燃性ガス(酸素含有ガス、例えば酸素ガス)及び可燃性ガス(水素含有ガス、例えば水素ガスあるいは天然ガス)を混合、燃焼させ、他方、高純度のケイ素化合物(例えば四塩化ケイ素ガス)を原料ガスとし、前記バーナの中心部からキャリアガス(通常酸素ガス)で希釈した前記原料ガスを噴出させ、周囲の前記酸素ガス及び前記水素ガスの燃焼により前記原料ガスを反応(加水分解反応)させて石英ガラス微粒子を発生させ、前記石英ガラス微粒子を前記バーナ下方に配置され回転および揺動および引き下げ運動を行う不透明石英ガラス板からなるターゲット上に堆積させると同時に、前記酸素ガス及び水素ガスの燃焼熱により、前記石英ガラス微粒子を溶融、ガラス化して合成石英ガラスを得るといった方法である。このような直接法を用いた合成石英ガラスの製造方法においては、気体原料から直接固体が合成されるため、非常に高純度の合成石英ガラスを得ることができる。すなわち、CVD法で合成された石英ガラス塊は極めて高純度で、高い透過率、高い紫外光照射耐性を有している。しかしながら、このような直接法による合成石英ガラスの製造方法は、所望の形状、とくに大口径の合成石英ガラスを作製することが比較的難しい製造方法であった。 他方、近年においては、大型のレンズ、フォトマスク、大型のフラットパネルディスプレイ等に広い面を有する合成石英ガラス部材が必要とされている。そして、このような広い面を有する合成石英ガラス部材を製造するために、前述のような製造方法によって得られた合成石英ガラス塊に加熱加圧成形が行われている。このような加熱加圧成形による合成石英ガラスの製造方法においては、合成石英ガラス塊をモールド内に収容し、合成石英ガラス塊を加熱した状態で加圧板により加圧することで成形を行い、モールド内で徐冷し、更にアニール処理を行うなどして1対向面の面積が拡大された所定形状の合成石英ガラス成形体が成形されている。しかしながら、このような加熱加圧成形による成形方法においては、加熱加圧成形の際に生じる合成石英ガラス塊とモールドとの接触等に起因して合成石英ガラス中に不純物汚染が発生することから、得られる合成石英ガラス成形体の透過率や照射耐性が低下してしまうという問題があった。そして、このような不純物汚染が発生した合成石英ガラス成形体を露光装置用の光学部材の素材として用いることは望ましいものではない。更に、前記不純物汚染は高温に加熱して長時間保持した時に発生するものであるため、合成石英ガラス成形体の非常に広い領域に前記不純物汚染が及んでしまうという問題もあった。従って、このような不純物汚染は、合成石英ガラス成形体を素材として製造される光学部材の歩留まりを大きく下げる深刻な問題となっていた。 ここで、特開2003−81654号公報(特許文献1)においては、直接法またはスート法によって製造された合成石英ガラスの母材またはその成形体を熱処理する工程において、Cuの含有濃度が0.1ppm以下であるカーボン材によって構成され且つ予め減圧下または不活性ガス雰囲気下にて1200℃以上での熱処理が施された容器に前記合成石英ガラスの母材またはその成形体を収容し、熱処理することを特徴とする合成石英ガラスの製造方法が開示されている。しかしながら、このような合成石英ガラスの製造方法においても前述のような不純物汚染を防止することに関しては十分なものではなかった。 他方、このような不純物汚染は、透過率や照射耐性などの品質低下を引き起こす他に、露光時において合成石英ガラス部材に付加的な蛍光を発生させる場合がある。このような蛍光の発生は、透過率変化やレーザーダメージの様に露光光の照度を直接変動させるわけではないので、透過率変化やレーザーダメージ程には厳格に抑制されなければならないものではない。実際、50mJ/(cm2・パルス)以上程度の高エネルギー密度のKrFエキシマレーザー光やArFエキシマレーザー光を合成石英ガラス部材に照射したときに蛍光が一切観察されないということは現実的には起こらない。それは、ガラス中に含まれる非架橋酸素等の構造欠陥も蛍光の原因になるばかりでなく、蛍光の感度が他の物性(例えば透過率)に比べ桁違いに高いからである。しかしながら、蛍光はラインパターンの鋭さを低下させるフレアの原因になりうるので、実用上その強度はできるだけ弱い方が好ましい。 また、特開2001−114530号公報(特許文献2)においては、このような合成石英ガラス部材の紫外光域の透過率や照射耐性を低下させる不純物等に関して、Fe、Ni、Cr、Mn等の遷移金属元素が代表的であるが、ArFエキシマレーザーなどの深紫外域においてはNa等のアルカリ金属元素やCl等のハロゲンも合成石英ガラス部材の紫外光域の透過率に影響する旨が記載されている。また、前記不純物汚染により発生する蛍光としては、代表的なものにNaによる380nmを中心とする蛍光帯や、Cuによる500nmを中心とする緑色蛍光帯が公知である(M.Shimbo et.al., Japanese Journal of Applied Physics,1993年,vol.32,p.L671−L673(非特許文献1)及びR.Debnath and S.Kumar,J.Non−Crystal.Sol.,1990年,vol.123,p.271−p.274(非特許文献2)参照)。 そして、特開2001−72428号公報(特許文献3)においては、合成石英ガラスに150〜400nmの波長域にある紫外線を照射し、紫外線照射により合成石英ガラスから生じる散乱光強度に対する蛍光発光強度の比を求め、その比が0.01以下である合成石英ガラスが開示されている。また、特開昭60−39535号公報(特許文献4)においては、石英ガラス中の銅の含有を蛍光によって判別することを特徴とする石英ガラスの選別方法が記載されている。 さらに、合成石英ガラス成形体の発する蛍光としては、KrFエキシマレーザーを照射してしばらく後に、550nmを中心とした広い帯域を有する黄色(黄緑色)の蛍光が観察されている。しかしながら、このような黄色(黄緑色)の蛍光の原因は、本発明者の調査した限り、明確にはなっていない。特開2003−81654号公報特開2001−114530号公報特開2001−72428号公報特開昭60−39535号公報M.Shimbo et.al., Japanese Journal of Applied Physics,1993年,vol.32,p.L671−L673R.Debnath and S.Kumar,J.Non−Crystal.Sol.,1990年,vol.123,p.271−p.274 本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、合成石英ガラス成形体に存在する不純物汚染による不良部位を確実に選別することが可能な合成石英ガラス成形体の検査方法、合成石英ガラス部材の検査方法及びそれを利用した合成石英ガラス部材の製造方法を提供することを目的とする。 本発明者は、加圧部を備えるモールド内に合成石英ガラス塊を収容して加熱加圧成形することにより成形される合成石英ガラス成形体の成形方法において、予め合成石英ガラス塊を洗浄して、前記合成石英ガラス塊の表面に存在する銅の濃度及びアルミニウムの濃度を所定値以下にしておくこと、予め高純度カーボン粉を前記モールド内に供給し前記モールド内を加熱しておくこと、及び所定の温度条件下において加熱加圧成型することによって、不純物汚染による不良部位の発生が十分に防止された合成石英ガラス成形体を効率よく且つ確実に得ることが可能となることを見出した。 また、本発明者は、合成石英ガラス成形体に紫外光を照射した際に合成石英ガラス成形体が発する黄色蛍光の原因を追究するため、合成石英ガラス成形体中の不純物量と紫外線照射時の合成石英ガラス部材から発せられる蛍光の強度の相関について元素ごとに詳細に調査した。 このような調査としては、先ず、従来の加熱加圧成形によって成形された合成石英ガラス成形体に、10mW/cm2の照度でHgランプの254nmスペクトル線を照射して、合成石英ガラス成形体から発せられる蛍光を測定した。このような測定の結果、合成石英ガラス成形体の表面から20〜30mm程度の深さまで波長500nmを中心とした緑色の蛍光が観察された。このような緑色の蛍光が観察された領域を仮に汚染領域と呼ぶ。次に、このような汚染領域に波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を繰り返し周波数が100Hzで且つエネルギー密度が100mJ/(cm2・パルス)という条件で照射して、合成石英ガラス成形体から発せられる蛍光を測定した。このような蛍光の測定は、目視と併せて市販の光ファイバー式の蛍光分光光度計を用いて行い、蛍光の発光をスペクトルとして記録した。このような測定において、前記KrFエキシマレーザー光を照射開始直後は、Hgランプの254nmスペクトル線を照射したときと同様に波長500nmを中心とした強い緑色蛍光が観測された。また、前記KrFエキシマレーザー光を約3×104パルス程度以上照射し続けると、その蛍光の色は緑色から黄色(黄緑色)へと変化した。このような蛍光の色の変化は、波長500nmを中心とした強い緑色蛍光が減少し、反対に波長550nmを中心としたブロードな黄色蛍光の強度が成長したために起こったものである。このような蛍光スペクトルの蛍光強度と波長の関係のグラフを図1に示す。このようにして観測される緑色蛍光は前記KrFエキシマレーザー光を照射後すぐに半減してしまうことから、実用上注意しなければならない蛍光は、むしろ、このような黄色蛍光である。また、前記黄色蛍光の励起スペクトルを蛍光分光光度計により測定したところ、波長270nmを中心に320nm程度まで裾をひいた励起帯を得た。この励起帯は緑色蛍光の励起帯とほぼ一致した。 また、前述の黄色蛍光の強度と合成石英ガラス成形体に含有される不純物の濃度との関係を調査した。そして、このような調査結果として黄色蛍光の強度と不純物濃度との関係をグラフにまとめ、黄色蛍光の強度と銅(Cu)の濃度との関係を示すグラフを図2に示し、黄色蛍光の強度とナトリウム(Na)の濃度との関係を示すグラフを図3に示し、黄色蛍光の強度と鉄(Fe)の濃度との関係を示すグラフを図4に示した。なお、前記不純物(Cu、Na及びFe)のそれぞれの濃度はICP−MSにより分析した。このような図4に示すグラフからも明らかなように、代表的な遷移金属元素である鉄の濃度と黄色蛍光の強度は相関が全く無かった。また、図3に示すグラフからも明らかなように、合成石英ガラス成形体に最も混入しやすい不純物の一つであるナトリウムと、黄色蛍光の強度も相関が認められなかった。一方、図2に示すグラフから明らかなように、銅の濃度と黄色蛍光とは相関が認められた。しかしながら、その相関には、ややバラツキが見られ、銅のみが蛍光の原因でないことが推測された。 そこで、このような黄色蛍光と不純物の濃度の相関関係について更に考察を行った。前述の文献(R.Debnath and S.Kumar,J.Non−Crystal.Sol.,1990年,vol.123,p.271−p.274)によれば、前記汚染領域がレーザー照射直後に緑色蛍光を発することから、初期状態ではCuが1価の状態で混入していると推測される。また、1価のイオン、例えばナトリウムイオン(Na+)は、アルミニウムイオン(Al3+)と共に混入しやすいことが石英ガラスの他に水晶でもよく知られている。これは、Al3+はSiO2の構成イオンであるSi4+よりもプラスの電価が1価足りないと見なせるので、その足りないプラスの電荷を補償するために1価の陽イオンとの相性が非常によいことに起因する。このような理論を元に、銅の濃度([Cu])とアルミニウムの濃度([Al])の関係と、黄色蛍光の強度との相関を求めたところ、[Cu]+0.03×[Al]で計算される値と黄色蛍光の強度に非常によい相関があることを見出した。このような[Cu]+0.03×[Al]で計算される値と黄色蛍光の強度との関係を示すグラフを図5に示す。ただし、アルミニウムが実質的に検出されない石英ガラスでも、銅が0.2wt.ppb以上検出される場合には、石英ガラスからはHgランプ光の照射で緑色蛍光が観察される。従って、Al自身が蛍光を発しているのではなく、あくまでもAlは蛍光の増加剤(発光の量子効率を増加させるもの)又は安定剤(発光中心を化学的に安定にさせるもの)の役割を果たしていると推測される。例えば、Cuが単体の場合に発光中心であるCuが室温又は太陽光への暴露等によって発光中心でない状態に変化してしまい易いのに対し、Alが入るとAlは蛍光の安定剤としての役割を果たし、発光中心であるCuを発光中心のまま安定に存在させると推測される。 次に、緑色蛍光と黄色蛍光の関係を調査した。緑色蛍光の強度が減少すると黄色蛍光の強度が増加することは先に述べた。ここで、測定された緑色蛍光強度の減少量ΔIgを下記式(2):ΔIg=Ig0−Igi (2)(式(2)中、Ig0は照射開始直後の緑色蛍光強度を示し、Igiは所定のパルスを照射後の緑色蛍光強度を示す)と定義し、他方、測定された黄色蛍光強度の増加量ΔIyを下記式(3):ΔIy=Iyi−Iy0 (3)(式(3)中、Iy0は照射開始直後の黄色蛍光強度を示し、Iyiは所定のパルスを照射後の黄色蛍光強度を示す。)と定義する。そして、このようにして算出されるΔIgの関数としてΔIyをプロットした。このようなΔIgとΔIyとの関係を表すグラフを図6に示す。このような図6に示すグラフからも明らかなように、ΔIgとΔIyの両者に非常によい相関が認められる。このようなΔIgとΔIyの相関関係から、KrFエキシマレーザー光の照射によって光化学反応が起こり、緑色蛍光の起源が黄色蛍光の起源に変化したと推測される。また、還元雰囲気(減圧下、窒素フロー)から、やや酸化(減圧下、窒素と酸素フロー)雰囲気で合成石英ガラス成形体を成形したときに、黄色蛍光の強度が緑色蛍光に対し相対的に増加することを本発明者は見出している。そのため、黄色蛍光の起源は2価のCuであると結論される。すなわち、緑色蛍光の原因はアルミニウムイオン(Al3+)で安定化された1価の銅イオン(Cu+)であり、黄色蛍光の原因は1価の銅イオン(Cu+)の酸化により生じた2価の銅イオン(Cu2+)であるという結論を、本発明者は導いた。 更に、本発明者は、汚染領域をより詳細に調査した。すなわち、汚染領域の不純物分布を合成石英ガラス成形体の深さとの関係で精密に測定した。なお、ここでいう深さとは、合成石英ガラス成形体の成形時に使用したモールドとの接触面の表面を深さ位置0とした場合の前記表面に垂直な方向の長さを言う。このような測定においては、成形された合成石英ガラス成形体の所望の面から直径30mmの円柱をくりぬき、3mmの厚さにスライスすることで前記合成石英ガラス成形体における深さが3mm間隔で異なる試料を得た。その後、各試料をICP−MSで化学分析(検出下限0.1wt.ppb)することで不純物の濃度分布を測定した。このような測定から得られる不純物の濃度と、前記合成石英ガラス成形体の深さとの関係を表すグラフを図7に示す。図7に示した各不純物の分布から、黄色蛍光の起源であるCuが、合成石英ガラス成形体中で最も拡散しやすい元素の一つであるNaと同程度の深さまで拡散していることが分かった。また、Cuが約0.2wt.ppb検出された約18mmの深さまでの試料はHgランプ光を照射すると緑色の蛍光が明瞭に観察された。一方、緑色蛍光がごく薄く観察される深さが20mm前後の領域の試料においては、Cuの濃度はICPの感度を下回ってしまい検出できなかった。このような結果から蛍光観察による合成石英ガラス成形体の不純物の検出方法は、ICP−MS以上の検出感度を持っていることが示された。そして、このようなCuの非常に大きな拡散係数と超高感度の蛍光観察とに起因して、合成石英ガラス成形体中の蛍光が観察される領域が非常に広くなってしまい、合成石英ガラス成形体を素材として得られる合成石英ガラス部材(例えばフォトマスク等)の歩留まりを極端に低下させていた。 このような事実を積極的に利用すべく鋭意研究を重ねた結果、蛍光を観察して不純物による汚染領域を検査することによって、高均質な合成石英ガラス部材を選別することが可能となること、すなわち、Cuの様に合成石英ガラス成形体中に深く侵入できる不純物カチオンはせいぜいNaかLiしか存在しないうえ、合成石英ガラス成形体の蛍光観察が透過率測定、レーザー耐性測定よりもはるかに高い感度で不純物による汚染領域を検出できることから、Cuが侵入していない深い領域、すなわち緑色(黄色)蛍光が観察されない領域を良品として選別することによって、部材の純度がある程度保証されることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法は、合成石英ガラス成形体に対して、可視光を遮蔽又は減光するフィルターを通したHgランプの波長254nmのスペクトル線を照度10mW/cm2以上という条件で照射する工程と、 前記合成石英ガラス成形体が発する波長254nmの輝線強度と、前記合成石英ガラス成形体が発する波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度とを測定する工程と、 前記輝線強度と前記蛍光強度との比(蛍光強度/輝線の強度)に基いて合成石英ガラス成形体の良部位を選別する工程と、を含む方法である。 このような本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法においては、前記良部位の前記輝線強度と前記蛍光強度との比(蛍光強度/輝線の強度)が0.005以下であってもよい。また、上記本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法においては、前記輝線強度と前記蛍光強度とを測定する工程において、前記スペクトル線の照射方向に対して垂直な方向から前記輝線強度と前記蛍光強度とを測定することができる。 上記本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法として好適な方法は、合成石英ガラス成形体に対して、可視光を遮蔽又は減光するフィルターを通したHgランプの波長254nmのスペクトル線を照度10mW/cm2以上という条件で照射する工程と、 前記スペクトル線の照射方向に対して垂直な方向から、前記合成石英ガラス成形体が発する波長254nmの輝線強度と、前記合成石英ガラス成形体が発する波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度とを測定する工程と、 前記輝線強度と前記蛍光強度との比(蛍光強度/輝線の強度)が、0.005以下であるという条件を満たす部位を良部位として選別する工程と、を含む方法である。 また、本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法においては、前記合成石英ガラス成形体の測定面を予め研磨することが好ましい。 また、本発明の合成石英ガラス部材の検査方法は、合成石英ガラス部材に対して、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で3×104パルス照射する工程と、 前記合成石英ガラス部材が発する波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光の蛍光強度を測定する工程と、 前記黄緑色の蛍光強度の分布の最小値と最大値の比(最小値/最大値)に基いて合成石英ガラス部材の良部位を選別する工程と、を含む方法である。 このような本発明の合成石英ガラス部材の検査方法においては、前記黄緑色の蛍光の蛍光強度を測定する工程を、前記蛍光強度を前記合成石英ガラス部材の前記KrFエキシマレーザー光の照射方向に対して垂直な面の全面に亘って測定する工程とすることができる。また、上記本発明の合成石英ガラス部材の検査方法においては、前記黄緑色の蛍光強度の分布の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0である良部位を選別することができる。 また、本発明の合成石英ガラス部材の製造方法は、上記本発明の検査方法により選別された良部位を利用して合成石英ガラス部材を製造する方法である。 更に、本発明の合成石英ガラス部材の検査方法は、合成石英ガラス部材に対して、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で3×104パルス照射する工程と、 前記合成石英ガラス部材が発する波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光の蛍光強度を前記合成石英ガラス部材の前記KrFエキシマレーザー光の照射方向に対して垂直な面の全面に亘って測定する工程と、 前記黄緑色の蛍光強度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0であるという条件を満たすか否かを判別して良品を選別する工程と、を含む方法である。 また、本発明の合成石英ガラス部材の検査方法においては、前記KrFエキシマレーザー光を照射する工程を、窒素ガスでパージされたアルミニウム製チャンバーの中で行うことが好ましい。 本発明によれば、合成石英ガラス成形体に存在する不純物汚染による不良部位を確実に選別することが可能な合成石英ガラス成形体の検査方法、合成石英ガラス部材の検査方法及びそれを利用した合成石英ガラス部材の製造方法を提供することが可能となる。波長550nmを中心としたブロードな黄色蛍光スペクトルの蛍光強度と波長の関係を示すグラフである。黄色蛍光の強度と銅(Cu)の濃度との関係を示すグラフである。黄色蛍光の強度とナトリウム(Na)の濃度との関係を示すグラフである。黄色蛍光の強度と鉄(Fe)の濃度との関係を示すグラフである。式:[Cu]+0.03×[Al]に基いて計算される値と黄色蛍光の強度との関係を示すグラフである。ΔIgとΔIyとの関係を示すグラフである。不純物の濃度と、合成石英ガラス成形体の深さとの関係を示すグラフである。合成石英ガラス成形体の成形方法に用いるのに好適な成形装置の一実施形態を示す概略縦断面図である。合成石英ガラス成形体に検査用のランプがセットされた状態の一例を示す概略図である。合成石英ガラス成形体に検査用のランプがセットされた状態の一例を示す概略図である。蛍光が観測される部位と、蛍光が観察されなかった部位の状態を示す概略図である。合成石英ガラス部材から円柱状ブロックを切り出す際のブロックの切り出す位置を示す概略図である。試料から円柱状ブロックを切り出す際の切り出し位置を示す概略図である。 以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。 先ず、合成石英ガラス成形体を成形する方法として好適に利用可能な、合成石英ガラス成形体の成形方法について説明する。すなわち、このような合成石英ガラス成形体の成形方法は、加圧部を備えるモールド内に合成石英ガラス塊を収容して加熱加圧成形することにより成形される合成石英ガラス成形体の成形方法であって、 前記モールド内に合成石英ガラス塊を収容する前に、前記合成石英ガラス塊の表面に存在する銅の濃度が2ng/cm2以下で且つアルミニウムの濃度が10ng/cm2以下となるように、前記合成石英ガラス塊を洗浄する工程(i)と、 銅の含有量が40wt.ppb以下で且つアルミニウムの含有量が100wt.ppb以下の高純度カーボン粉を温度1200℃〜1900℃の条件で加熱する工程(ii)と、 前記モールドを温度1700℃〜1900℃の条件で加熱する工程(iii)と、 前記モールド内に合成石英ガラス塊を収容する前に、前記加熱工程後のモールド内表面に前記加熱工程後の高純度カーボン粉を塗布する工程(iv)と、 前記モールド内に、前記洗浄後の合成石英ガラス塊を収容した後に、前記合成石英ガラス塊を1500℃〜1700℃の範囲内の保持温度となるように加熱した状態で、前記加圧部により加圧して所定形状に成形する工程(v)と、を含む方法である。 ここで、先ず、このような方法に用いられる合成石英ガラス塊について説明する。このような方法に用いられる合成石英ガラス塊は、化学気相堆積(CVD)法等によって製造される高純度の合成石英ガラス塊であることが好ましい。また、このような合成石英ガラス塊の中でも、OH基濃度が質量基準で900ppm〜1300ppmである合成石英ガラス塊であることが好ましい。OH基濃度が前記下限未満では、合成石英ガラス塊の全体の温度が比較的高温の温度範囲にある状態においても合成石英ガラス塊の粘性が高いため合成石英ガラス成形体を成形することが困難な傾向にあり、他方、前記上限を超えると合成石英ガラス塊の粘性が低くなるため、成形時にガラス表面が内部に折れ込んで巻き込まれ、不良部分が多くなり易い傾向にある。 次に、工程(i)を説明する。工程(i)は、前記モールド内に合成石英ガラス塊を収容する前に、前記合成石英ガラス塊の表面に存在する銅の濃度が2ng/cm2以下で且つアルミニウムの濃度が10ng/cm2以下となるように、前記合成石英ガラス塊を洗浄する工程である。 このような表面の洗浄を行わない合成石英ガラス塊を用いて合成石英ガラス成形体の成形を行った場合には、上述のような表面の洗浄を行った合成石英ガラス塊を用いて合成石英ガラス成形体の成形を行った場合に比べ、得られる合成石英ガラス成形体中の汚染領域が約4〜5倍にも広がり、汚染のない部位の収率が著しく低下する。また、表面の洗浄を行わない合成石英ガラス塊を用いて合成石英ガラス成形体の成形を行った場合には、その後2〜3回の合成石英ガラス成形体の成形にわたり、表面の洗浄を行った合成石英ガラス塊を用いて合成石英ガラス成形体の成形を行った場合においても、得られる合成石英ガラス成形体中の汚染領域を広げてしまう。これは、表面が汚染された合成石英ブロック塊を炉内に入れて加熱成形することで、モールドや成形炉内が著しく汚染されるためである。 また、このような洗浄の好適な方法としては、重量比で10%のフッ化水素酸水溶液に24時間以上浸漬させた後に純水で十分にすすぐ方法や、市販の漂白剤(例えばNaClOを4%程度及びNaOHを1%程度含むもの等)を合成石英ガラス塊に塗布して3時間以上放置した後、純水で十分すすぐ方法等を挙げることができる。このような洗浄を行うことによって、蛍光が明瞭に観察されるような合成石英ガラス成形体中の不純物汚染領域を縮小させることが可能となる。 このようなフッ化水素酸等を洗剤として用いることで、より確実に前記合成石英ガラス塊の表面に存在する銅の濃度が2ng/cm2以下で且つアルミニウムの濃度が10ng/cm2以下となるように洗浄することが可能となる。なお、塩酸を主成分とする市販の洗剤では十分な効果は得られない。その原因はブロック表面の有機汚染を、塩酸では十分除去できないためである。 また、このような洗浄後の合成石英ガラス塊の表面に存在する銅及びアルミニウムの濃度は、銅の濃度が2ng/cm2以下で且つアルミニウムの濃度が10ng/cm2以下である。このような銅の濃度とアルミニウムの濃度とが前記上限を超えると、得られる合成石英ガラス成形体の汚染領域が広がってしまう。なお、前記濃度は、試料の一定面積をフッ酸で深さ1μm程度溶解して得られる溶液中の各イオン濃度をICP等の分析手段により定量することで求めることができる。 次に、工程(ii)を説明する。工程(ii)は、銅の含有量が40wt.ppb以下で且つアルミニウムの含有量が100wt.ppb以下の高純度カーボン粉を温度1200℃〜1900℃の条件で加熱する工程である。 工程(ii)において用いられる高純度カーボン粉は、銅の含有量が40wt.ppb以下で且つアルミニウムの含有量が100wt.ppb以下のものである。銅の含有量とアルミニウムの含有量が前記上限を超えると、得られる合成石英ガラス成形体において、不純物による汚染領域が広範囲に広がってしまう。 また、工程(ii)においては、前記高純度カーボン粉を温度1200℃〜1900℃の条件で加熱(空焼き)する。このような加熱を行うことで高純度カーボン粉がより純化される。このような高純度カーボン粉はモールドに比べ質量に対する表面積がはるかに広いので、この空焼き作業で得られる効果が極めて大きく、得られる合成石英ガラス成形体の銅による汚染を効果的に抑制することができる。 このような加熱を行なう際の前記温度条件が前記下限未満では、高純度カーボン粉を十分に純化できなくなり、他方、前記上限を超えると高純度カーボン粉が互いに焼結してしまい、離型剤としての機能が減少する。なお、このような加熱を行う時間としては、1〜12時間程度であることが好ましく、このような加熱を行なう際の圧力としては、10Pa程度以下であることが好ましい。また、前述のように高純度カーボン粉はモールドに比べ質量に対する表面積がはるかに広いので、後述するモールドの加熱温度と比べてより低い温度条件での加熱によっても純化されることから、このような加熱の温度条件としては1200℃〜1600℃であることが好ましい。 次に、工程(iii)を説明する。工程(iii)は、前記モールドを温度1700℃〜1900℃の条件で加熱する工程である。 加熱加圧成形による合成石英ガラス成形体の成形方法においては、成形に用いられるカーボン(グラファイト)製のモールドからも高温で加熱している間に銅等の不純物が染み出てくる。そのため、このようなモールドから染み出てくる銅等の不純物による汚染を極力抑制するために、前記モールドを温度1700℃〜1900℃の条件で加熱(いわゆる空焼き)する。このような加熱を行うことで前記モールドが純化される。 このような加熱を行なう際の前記温度条件が前記下限未満では、モールドを十分に純化できなくなり、他方、前記上限を超えるとモールドの機械的強度が低下する傾向にある。なお、このような加熱を行う時間としては、1〜24時間程度であることが好ましく、このような加熱を行なう際の圧力としては、10Pa程度以下であることが好ましい。 なお、工程(ii)及び(iii)においては、前記高純度カーボン粉と、前記モールドとを同一の炉に入れて、同時に加熱することも可能である。 次に、工程(iv)を説明する。工程(iv)は、前記モールド内に合成石英ガラス塊を収容する前に、前記加熱工程後のモールド内表面に前記加熱工程後の高純度カーボン粉を塗布する工程である。 前述のように、加熱加圧成形による合成石英ガラス成形体の成形方法においては、成形に用いられるモールドからも高温で加熱している間に銅等の不純物が染み出てくる。このようなモールドから染み出てくる銅等の不純物による汚染を極力抑制するには、モールドに含有されている銅やアルミニウム等の不純物量を小さくすることが容易に考えられる。しかしながら、一般にモールドは、バインダーでつないだカーボン粉を高温で焼き固めて作成するものであることから、不純物量の少ない超高純度のモールドを得ることは難しい。一方で、カーボン粉にはモールドに比べはるかに高純度のものが市販されている。そこで、前記工程(i)〜工程(v)を含む方法においては、前記加熱工程後のモールド内表面に前記加熱工程後の高純度カーボン粉を塗布することで、モールドから滲み出る不純物による汚染と合成石英ガラス塊とモールドとの焼きつきを防止している。 前記加熱工程後のモールド内表面に前記加熱工程後の高純度カーボン粉を塗布する方法としては特に制限されず、例えば、刷毛を用いて薄く均一に塗布する方法等が挙げられる。また、このような工程においてモールド内表面に塗布する高純度カーボン粉の量は特に制限されないが、7〜200mg/cm2程度であることが好ましい。 前述の工程(i)に記載したような表面の洗浄を行った合成石英ガラス塊、及び前述の工程(ii)〜(iv)に記載したようにモールド及び高純度カーボン粉をそれぞれ加熱(空焼き)し、前記加熱工程後のモールド内表面に前記加熱工程後の高純度カーボン粉を塗布することにより、得られる合成石英ガラス成形体の銅による汚染を著しく抑制することができる。なお、工程(i)に記載したような表面の洗浄工程と、工程(ii)〜(iv)に記載したような加熱工程及び高純度カーボン粉を塗布する工程の一部のみを行っても十分な効果は得られない。そのため、加熱加圧成形による合成石英ガラス成形体の成形においては、工程(i)及び(ii)〜(iv)の全ての工程を行うことが重要である。 次に、工程(v)を説明する。工程(v)は、前記モールド内に、前記洗浄後の合成石英ガラス塊を収容した後に、前記合成石英ガラス塊を1500℃〜1700℃の範囲内の保持温度となるように加熱した状態で、前記加圧部により加圧して所定形状に成形する工程である。 以下、図面を参照しながら前記工程(v)を実施するための好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。 図8は、このような工程を実施するために好適な成形装置の一実施形態を示す概略縦断面図である。 このような図8に示された成形装置10においては、金属製の真空チャンバー11の内壁に、全面にわたって設けられた断熱材12と、断熱材12の縦壁内に設けられた加熱手段としてのカーボンヒータ13とが設けられ、更に、真空チャンバー11内部の略中央部にモールド15が収容されている。 また、モールド15は、底板16及び受板17を備えた底部18と、底部18の上部に筒状に形成された側壁部20とを備え、この筒状の側壁部20と底部18とにより中空部21が形成されている。 この中空部21には、中空部21の形状に対応する形状の加圧部としての天板23が配置され、天板23の押圧面23b(上面)を、真空チャンバー11の外部に配設されたプレス装置としての油圧シリンダ(図示せず)のシリンダロッド26で押圧することにより、モールド15の底部18側に移動可能となっている。 なお、このシリンダロッド26を備えた油圧シリンダは、外部から供給する油圧を調整することにより加圧されて移動するように構成されているものであるが、詳細な図示は省略する。 これらのモールド15及び天板23は、合成石英ガラス塊25の成形時の温度及び圧力に対する耐熱性及び強度を有し、且つ、成形時に合成石英ガラス塊25と接触しても不純物を混入し難い材料から形成されたものであり、このような材料としてはグラファイトを用いることが好ましい。また、モールド15の銅の含有量としては、80wt.ppb以下であることが好ましい。 また、モールド15内は前述の工程(ii)〜(iv)が既に行われており、前述のように加熱されたモールド15内に加熱後の高純度カーボン粉が塗布されている。 また、モールド中空部21内に収容される合成石英ガラス塊25は、予め各種の製造方法により合成された塊状の合成石英ガラスであって、前述のようなOH基濃度が質量で900ppm〜1300ppm溶存している合成石英ガラス塊を用いることが好ましい。なお、本実施形態においては、予め前述の工程(i)が既に行われた洗浄後の合成石英ガラス塊を用いている。 以下において、このような成形装置10を用いた合成石英ガラス成形体を成形する好適な方法について具体的に説明する。 先ず、真空チャンバー11内に底板16、受板17、側壁部20を組合わせてモールド15を形成し、そして、モールド15の中空部21内に合成石英ガラス塊25を配置する。ここで言う合成石英ガラス塊25は前記したものである。 また、モールド15内に収容する合成石英ガラス塊25は、予め図示しない加熱手段により加熱して内部まで略均一に200℃〜300℃の温度範囲まで予備加熱しておくことが好ましい。このような予備加熱に際しては、例えば合成石英ガラス塊25が10kg〜300kg程度の大きさである場合には、10℃/min〜20℃/minの昇温速度で昇温し、200℃〜300℃の温度範囲内の所定温度で合成石英ガラス塊25の内部まで十分に加熱される時間、例えば10〜20分間保持する。また、このような加温手段としては、具体的には、密閉可能で内部を不活性ガス置換可能な容器と温度調節計付きヒーターとを備えたイナートオーブンが挙げられる。このように予め合成石英ガラス塊を加温することでモールド15内において加熱する時間をより短縮することが可能となり、しかも、温度が200℃〜300℃であれば、加温時に合成石英ガラス塊25中の水素分子が低減し難い傾向にあるためである。 そして、モールド中空部21内に合成石英ガラス塊25を収容した後、合成石英ガラス塊25の上部に天板23を配置し、更に、天板23の押圧面23bに油圧シリンダのシリンダロッド26の押圧部位26aを当接させてセットする。その後に、真空ポンプを用いて真空チャンバー11内の圧力を1Pa〜10Pa(好ましくは1Pa)まで減圧し、真空チャンバー11内に不活性ガス(例えば、純粋な窒素ガス等)を充填することが好ましい。 次に、カーボンヒータ13により、モールド15及びその中空部21に収容された合成石英ガラス塊25を1500℃〜1700℃の範囲内の保持温度となるように加熱する。また、このような保持温度の範囲としては、1530℃〜1630℃の範囲内であることが好ましい。合成石英ガラス塊の保持温度が前記下限未満では、石英ガラスの粘性が高く成形が困難となり、所望の形状の合成石英ガラス成形体を得ることが難しくなり、他方、前記上限を超えると、合成石英ガラス塊が高温に曝される時間が長くなり、不純物の熱拡散量が大きくなって合成石英ガラス成形体中にモールドとの接触面から広く不純物が拡散してしまう。 このような加熱に際しては、カーボンヒータ13を発熱させて前記加温温度から、500℃/hr〜800℃/hrの昇温速度で前記保持温度内の所定温度になるまで昇温した後、塊状の合成石英ガラス塊25の内部まで十分に加熱される時間、前記保持温度内の所定温度に保持して塊状の合成石英ガラス塊25の内部まで略均一に1500℃〜1700℃(好ましくは1530℃〜1630℃)の保持温度に昇温する。 次に、合成石英ガラス塊25を加熱して保持温度とした状態で、油圧シリンダへの油圧を制御調整することにより、シリンダロッド26を下方へ移動させて、シリンダロッド26の押圧部位26aで天板23の押圧面23bを押圧する。これにより、天板23がモールド15の底部18側の加圧方向へ移動し、天板23の加圧面23aと底部18との間で塊状の合成石英ガラス塊25が加圧成形される。 このようにして合成石英ガラス塊25を加圧する際の最大圧力は0.2kg/cm2〜1.0kg/cm2であることが好ましく、0.2kg/cm2〜0.8kg/cm2とすることがより好ましい。最大圧力が前記下限未満ではガラスを変形させるための圧力が低すぎるため成形型の形状どおりに合成石英ガラス成形体を成形することが困難で、特に角部の曲率半径が大きくなってしまう傾向にあり、他方、最大圧力が前記上限を超えると変質層の厚みが厚くなる傾向にある。また、このような前記最大圧力を負荷することで、合成石英ガラス塊25を確実に所望の形状に成形することができ、更に、合成石英ガラス塊25の成形時間の短縮化を図ることができる。 また、このような加圧過程においては、天板23から加える圧力を成形初期の段階で小さくし、その後、好ましくは最終段階で最大加圧力となるように加圧力を増加させて加圧を行うことが好ましい。ここでは、例えば、天板23の下降に伴って徐々に加圧を増加したり、所定量の成形が進行するまで初期段階の小さい加圧力で加圧し、その後、所定の加圧力に増加するようにしてもよく、更に、多段階に加圧力を増加することも可能である。その場合、成形前の合成石英ガラス塊25の頂部25aの高さ方向位置(即ち、天板23の加圧面23aが成形前の合成石英ガラス塊25の頂部25aに接触した位置)を変位(変形率)0%、合成石英ガラス塊25が成形後に余すところなく正常に成形された場合の頂部の高さ方向位置を変位(変形率)100%とすると、例えば、合成石英ガラス塊25の高さの変位が0〜80%、好ましくは0〜50%の高さまでは成形初期の加圧力と同等の小さい加圧力で加圧することができる。このように段階的に加圧力を増加させて合成石英ガラス塊25を加圧することで、合成石英ガラス成形体をより均一に成形することが可能となる。 成形初期の段階、即ち、合成石英ガラス塊25の高さ変位が0〜50%となる段階においては、天板23に接触する面積が小さく、更に、加圧により変形させる体積が小さいため、小さい加圧力で加圧することができる。この加圧時の圧力の好ましい範囲は、合成石英ガラス塊25の状態によって変動するものであるため成形時に適宜選択することが好ましいが、前記最大加圧力の7〜25%となるようにして加圧することが好ましく、例えば、天板23の下降速度を0.1〜8mm/minとなるように加圧力を調整することにより加圧することも可能である。 このように成形初期の段階において小さい加圧力で加圧するのは、成形初期の段階では、合成石英ガラス塊25が変形し易く、且つ、頂部25a側の合成石英ガラス塊25の変位量が多いことから、大きな加圧力を負荷すると合成石英ガラス塊25を無理に変形させることとなって合成石英ガラス塊25が不均一に成形されてしまう傾向にあるためである。 また、成形中期の段階、即ち、合成石英ガラス塊25の高さの変位が50〜80%となる段階においては、合成石英ガラス塊25がモールド15の中空部21内に広がるため、天板23の加圧面23aの広い部分で合成石英ガラス塊25を加圧することになる。このような成形中期の段階においては、合成石英ガラス塊25の変形は小さくなるものの加圧面23aに接触する石英ガラスの面積が大きくなるため、合成石英ガラス塊25を変形させるのに大きな力が必要となる。そのため、成形中期の段階においては、天板23の加圧面23aから合成石英ガラス塊25へ負荷する加圧力を大きくし、下記最大加圧力の25〜60%となるようにして加圧することが好ましい。このような加圧力を負荷することにより、合成石英ガラス塊25を均一に成形することを可能としつつ、合成石英ガラス塊25をより短時間で変形させることが可能となり、成形時間の短縮化を図れる傾向にある。 また、成形の最終段階、即ち、前記高さ方向位置の変位が80〜100%となる段階においては、合成石英ガラス塊25がモールド15の中空部21内の断面方向略全体に広がり、天板23の加圧面23aの略全体で加圧することになる。このような成形の最終段階では、天板23の加圧面23aから負荷する加圧力を、合成石英ガラス塊25やモールド15の破損を防止できる範囲内で、できるだけ大きな加圧力を加えるという観点から、前記最大圧力の60〜100%となるように制御して加圧することが好ましく、より成形時間を短縮するという観点からは、最大加圧力が0.3〜1.0kg/cm2となるように制御して加圧することが更に好ましく、0.5〜1.0kg/cm2となるように制御して加圧することが特に好ましい。 なお、得られる合成石英ガラス成形体においては、不純物による汚染領域の表面からの拡散の深さは、不純物の拡散時間(前記昇温を行う際の加熱時間、保持温度における保持時間及び成形時間を総合した時間)に比例する。そのため、前記昇温を行う際の加熱時間としては1〜7時間であることが好ましく、前記保持温度における保持時間としては0〜2時間であることが好ましい。更に、前記成形時間としては0.5〜3時間であることが好ましい。このような加熱時間、保持時間及び成形時間が前記下限未満では、成形を十分に行うことが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、不純物による汚染領域の表面からの厚さがより拡散してしまう傾向にある。 そして、合成石英ガラス塊25が所定の形状の合成石英ガラス成形体に成形された段階で、天板23による加圧を終了する。その後、成形された合成石英ガラス成形体を、モールド15の中空部21内に配置した状態のままで冷却する。 冷却過程においては、モールド15内でカーボンヒータ13による加熱を停止して自然放冷する際の冷却速度より速い冷却速度で強制的に冷却することが好ましい。このような冷却を行う方法としては常法を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば、真空チャンバー11内に冷却媒体用の通路を設けて冷却媒体を通液することにより行う方法を挙げることができる。このような冷却を行うことで、成形された合成石英ガラス成形体が高温に曝される時間をより短縮することが可能となる。 このような冷却過程において、成形された合成石英ガラス成形体の温度が前記保持温度〜1200℃の温度範囲にある状態では、2℃/min〜3.5℃/minの冷却速度で冷却することが好ましい。このような冷却速度が前記下限未満では、高温に曝される時間が長くなり変質層が厚くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、成形ガラスが割れる確率が高くなる傾向にある。また、このような冷却をすることで、合成石英ガラス成形体が高温に曝される時間をより短縮することが可能となり、更にはリードタイムもより短縮することが可能となる。 また、冷却過程において、成形された合成石英ガラス成形体の温度が1200℃〜800℃の温度範囲にある状態では、合成石英ガラス成形体の歪みを低減させるという観点から、合成石英ガラス成形体の全体の温度が800℃になるまで、1℃〜8℃/minの冷却速度で徐冷することが好ましい。このような冷却速度が前記下限未満では、合成石英ガラス成形体の歪みを低減させることはより容易となるが、冷却期間が長くなるため高温に曝される時間が過度に長くなってしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると歪が大きくなるとともにガラスが割れる確率が高くなる傾向にある。なお、前記冷却速度は各種成形条件に応じて温度範囲を調整することが好ましい。 また、冷却過程において、成形された合成石英ガラス成形体の全体の温度が800℃〜100℃になるまで冷却していく過程においては、4℃/min〜15℃/minの冷却速度で冷却することが好ましい。このような冷却速度が前記下限未満では、高温に曝される時間が長くなり変質層が厚くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、成形ガラスが割れる確率が高くなる傾向にある。また、このような冷却をすることで、石英ガラスが高温に曝される時間を短縮することが可能となり、更にはリードタイムもより短縮することが可能となる。なお、冷却を行う方法としては、前記と同様な方法をとることができる。 そして、このような冷却をすることにより合成石英ガラス成形体の温度が十分に低下した段階で、真空チャンバー11から合成石英ガラス成形体を取り出す。 以上のような合成石英ガラス成形体の成形方法を用いて合成石英ガラス成形体を成形することで、1500℃〜1700℃という比較的低い温度範囲内で合成石英ガラス成形体を成形し、昇温及び降温時間が短縮できることから、合成石英ガラス塊25が高温に曝される時間を短縮することが可能となり、効率的に不純物の合成石英ガラス成形体への拡散を防止することができると共に、水素分子の低減を防止することをも可能としてレーザー耐久性を向上させることができる。 また、このように合成石英ガラス塊25が高温に曝される時間を低減することを可能とすることで、合成石英ガラス塊25とモールド15のグラファイトとの反応を防止でき、更に、合成石英ガラス塊25とモールド15との線膨張係数の相違に基づいて生じる冷却時の熱収縮の差が成形温度の低い分だけ少なくなり、冷却時にモールド15が合成石英ガラス塊25を圧縮する応力を少なくできる。そのため、変質層の厚みが薄く、且つ複屈折の小さい合成石英ガラス成形体を効率よく確実に得ることも可能となる。 なお、このような成形方法により成形される合成石英ガラス成形体は、各種の光学部材の素材として用いられるものであり、好ましくは、250nm以下の波長のレーザーが照射されるレンズ、ミラー、レチクル用基板などを製造するために用いられる素材として用いられものであり、特に好ましくは、大型の液晶用マスク、半導体用マスク等のレチクル(フォトマスク)用基板、結像光学系の大型のレンズ材料などに用いられる広い面を有する板状体やその他の大型ガラスブロックとして用いられるものである。 このような合成石英ガラス成形体の成形方法によれば、加熱加圧成形による合成石英ガラス成形体の成形方法であるにも拘らず、不純物汚染による不良部位の発生が十分に防止された合成石英ガラス成形体を効率よく且つ確実に得ることが可能な合成石英ガラス成形体の成形方法を提供することが可能となる。 このような合成石英ガラス成形体の成形方法は、不純物汚染による不良部位の発生の防止に優れるため、波長400nm以下の短波長を有する光を露光光とする露光装置に用いられる高品質な合成石英ガラス部材を製造する素材として用いられる合成石英ガラス成形体の工業的な製造方法として特に有用である。 以上において、合成石英ガラス成形体の成形方法に好適な方法を説明したが、以下に、前述の合成石英ガラス成形体の成形方法を用いることで製造することができる、合成石英ガラス成形体について説明する。 このような合成石英ガラス成形体は、加圧部を備えるモールド内に合成石英ガラス塊を収容して加熱加圧成形することにより成形される合成石英ガラス成形体であって、前記合成石英ガラス成形体の少なくとも60体積%以上の領域において、 銅の濃度が0.2wt.ppb以下で且つアルミニウムの濃度が10wt.ppb以下であるという条件、及び 銅の濃度とアルミニウムの濃度とが下式(1):[Cu]+0.03×[Al] < 0.4wt.ppb (1)(式(1)中、[Cu]は銅の濃度(wt.ppb)を示し、[Al]はアルミニウムの濃度(wt.ppb)を示す。)という条件、を満たすものである。 銅の濃度が0.2wt.ppb以下で且つアルミニウムの濃度が10wt.ppb以下であるという条件を満たすことという条件は、前述のように合成石英ガラス成形体に紫外光を照射した際に観測される黄色蛍光と、銅とアルミニウムの濃度について考察を行った結果得られたものである。このような銅の濃度が0.2wt.ppbを超えるか、又はアルミニウムの濃度が10wt.ppbを超えた部位を素材として光学部材を製造した場合には、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を前記光学部材に照射した際に強い黄色蛍光が観測され、透過率、レーザー耐久性の低い光学部材となる。なお、このような銅及びアルミニウムの濃度の測定する方法は特に制限されず、例えば、ICP−MSにて分析する方法を挙げることができる。 また、銅の濃度とアルミニウムの濃度とが下式(1):[Cu]+0.03×[Al] < 0.4wt.ppb (1)(式(1)中、[Cu]は銅の濃度(wt.ppb)を示し、[Al]はアルミニウムの濃度(wt.ppb)を示す。)という条件を満たすことという条件は、前述のように合成石英ガラス成形体に紫外光を照射した際に観測される黄色蛍光と、銅とアルミニウムの濃度との相関関係について考察を行った結果得られたものである。このような式(1)で表される[Cu]+0.03×[Al]の値が0.4wt.ppb以上となる部位を素材として光学部材を製造とした場合には、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を前記光学部材に照射した際に強い黄色蛍光が観測され、透過率、レーザー耐久性の低い光学部材となる。従って、上記式(1)の条件を満たさない部位は、波長400nm以下の短波長を有する光を露光光とする露光装置に用いられる合成石英ガラス部材を製造するための素材としては用いることは望ましくない。 前記合成石英ガラス成形体は、合成石英ガラス成形体の少なくとも60体積%以上の領域において、上記の条件を満たすものである。このような合成石英ガラス成形体は、このように広い領域において前記条件を満たすことから、波長400nm以下の短波長を有する光を露光光とする露光装置に用いられるような合成石英ガラス部材(例えばフォトマスク)を歩留りよく製造することができる。 前記合成石英ガラス成形体としては、前記領域が、可視光を遮蔽又は減光するフィルターを通したHgランプの波長254nmのスペクトル線を照度10mW/cm2以上という条件で照射したときに、前記スペクトル線の照射方向に対して垂直な方向から測定して得られる可視−紫外スペクトルにおいて、波長254nmのスペクトル線の輝線強度と、波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度との比(蛍光強度/輝線強度)が0.005以下であるという条件を満たすことが好ましい。 前記波長254nmのスペクトル線の輝線強度と、前記波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度との比(蛍光強度/輝線強度)が0.005を超えた合成石英ガラス成形体の部位は、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を照射した場合に強い黄色蛍光が観測され、波長400nm以下の短波長を有する光を露光光とする露光装置に用いられる合成石英ガラス部材を製造するための素材としては好ましくない部位である。また、仮に、このような部位を用いて光学部材を製造した場合には、透過率、レーザー耐久性の低い光学部材となる。なお、このような合成石英ガラス成形体は、前述の合成石英ガラス成形体の成形方法を用いることで製造することができる。 また、前記合成石英ガラス成形体としては、前記領域が、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で3×104パルス照射した後に、前記KrFエキシマレーザー光の照射によって生じる波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光の蛍光強度を前記領域の前記KrFエキシマレーザー光の照射方向に対して垂直な面の全面に亘って測定したときに、前記蛍光強度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0であるという条件を満たすことが好ましい。 前記波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光の蛍光強度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0である条件を満たさない合成石英ガラス成形体の部位を用いて露光装置に用いられる光学部材を製造した場合には、露光光を照射すると透過した露光光の照度にむらが生じ露光性能を著しく低下させてしまう。従って、このような合成石英ガラス成形体の部位は、波長400nm以下の短波長を有する光を露光光とする露光装置に用いられる合成石英ガラス部材を製造するための素材としては好ましくない部位である。なお、このような合成石英ガラス成形体は、前述の合成石英ガラス成形体の成形方法を用いることで製造することができる。 このような合成石英ガラス成形体によれば、波長400nm以下の短波長を有する光を露光光とする露光装置に用いられる高品質な合成石英ガラス部材の歩留りを向上させることが可能な合成石英ガラス成形体を提供することが可能となる。このように、前記合成石英ガラス成形体及びその成型方法は、エキシマレーザー等の紫外線レーザーやHgランプなどを光源とした露光装置において用いられるレンズ、プリズム、ウィンドウ等の光学部品、フォトマスク等を製造する素材として用いられる合成石英ガラス成形体及びその成型方法に関するものである。 次に、本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法について説明する。本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法は、合成石英ガラス成形体に対して、可視光を遮蔽又は減光するフィルターを通したHgランプの波長254nmのスペクトル線を照度10mW/cm2以上という条件で照射する工程と、 前記合成石英ガラス成形体が発する波長254nmの輝線強度と、前記合成石英ガラス成形体が発する波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度とを測定する工程と、 前記輝線強度と前記蛍光強度との比(蛍光強度/輝線の強度)に基いて合成石英ガラス成形体の良部位を選別する工程と、を含む方法である。 このような本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法においては、前記良部位の前記輝線強度と前記蛍光強度との比(蛍光強度/輝線の強度)が0.005以下であってもよい。また、上記本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法においては、前記輝線強度と前記蛍光強度とを測定する工程において、前記スペクトル線の照射方向に対して垂直な方向から前記輝線強度と前記蛍光強度とを測定することができる。このような本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法として好適な方法は、合成石英ガラス成形体に対して、可視光を遮蔽又は減光するフィルターを通したHgランプの波長254nmのスペクトル線を照度10mW/cm2以上という条件で照射する工程と、 前記スペクトル線の照射方向に対して垂直な方向から、前記合成石英ガラス成形体が発する波長254nmの輝線強度と、前記合成石英ガラス成形体が発する波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度とを測定する工程と、 前記輝線強度と前記蛍光強度との比(蛍光強度/輝線の強度)が、0.005以下であるという条件を満たす部位を良部位として選別する工程と、を含む方法である。 以下において、このような検査方法の各工程を実施するのに好適な一実施形態を図面に基づいて説明する。 図9は、合成石英ガラス成形体の横に検査用のランプがセットされた状態の一例を示す概略図である。 図9は、被検物として用いられる合成石英ガラス成形体30の側面に、可視光を遮蔽するフィルターを備える水銀(Hg)ランプ31を2台セットしている状態を示す。また、可視光を遮蔽するフィルターを備える水銀(Hg)ランプ31によりHgランプの254nmのスペクトル線を照射される面と垂直な面上には、ファイバープローブ32が配置されており、このようなファイバープローブ32は、図示されていない分光光度計に接続されている。なお、実際に検査を行う際においては、このようなファイバープローブ32は、可視光を遮蔽するフィルターを備える水銀(Hg)ランプ31から発せられる254nmのスペクトル線を照射される面と垂直な面上を、前記スペクトル線の照射方向に対して平行な方向に30mm程度の間隔でずらした測定点33の位置において、順次動かしながら測定がなされる。 図10は、このような図9に示された合成石英ガラス成形体30を可視光を遮蔽するフィルターを備える水銀(Hg)ランプ31の配置されている方向から見た状態を示す概略図である。 本実施形態においては図9及び図10に示すようなセットアップを行う。また、前記合成石英ガラス成形体30としては、縦200mmで横200mmの正方形面を有する厚さ150mmの合成石英ガラス成形体を用いる。なお、測定面を研磨することでより高感度に蛍光強度等を測定できることから、前記正方形面と垂直な縦200mmで横150mmの面を予め研磨する。 また、このような測定に際しては、前記合成石英ガラス成形体30の正方形面に対向させてセットされた可視光を遮蔽するフィルターを備える水銀(Hg)ランプ31を2台用いて、波長254nmのスペクトル線を、最大照度が合わせて約10mW/cm2となるように照射する。そして、このようなスペクトル線の照射方向に対して垂直方向から、暗室内においてファイバー式の分光光度計で蛍光スペクトルを測定する。 このような測定に際しては、ファイバープローブ32をスペクトル線の照射方向に対して平行な方向に概ね30mmの間隔、必要に応じて数mm以下の間隔で直線的にずらしていき、各測定点33において波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度(スペクトル)を測定し、記録する。また、同時に波長254nmの輝線強度を測定して記録する。 次に、このようにして測定して得られた波長254nmの輝線強度と、波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度との比(蛍光強度/輝線強度)を求めて、前記比の値が0.005以下であるという条件を満たす部位を良部位として選別することができる。このような検査方法は、所定波長範囲のスペクトルからベース(ダーク)を差し引き、測定蛍光と共に観察される254nmのスペクトル線の輝線強度で所定波長範囲のスペクトル強度を規格化(輝線強度が1になるように)した値を用い、前記値が0.005以下であるときにその部位を蛍光良部位として選別する検査方法である。このような合成石英ガラス成形体の検査方法によって、波長400nm以下の短波長を有する光を露光光とする露光装置に用いられる合成石英ガラス部材を製造するための素材として好ましく部位を簡便に選別することが可能となる。 次に、本発明の合成石英ガラス部材の検査方法について説明する。 本発明の合成石英ガラス部材の検査方法は、合成石英ガラス部材に対して、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で3×104パルス照射する工程と、 前記合成石英ガラス部材が発する波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光の蛍光強度を測定する工程と、 前記黄緑色の蛍光強度の分布の最小値と最大値の比(最小値/最大値)に基いて合成石英ガラス部材の良部位を選別する工程と、を含む方法である。 このような本発明の合成石英ガラス部材の検査方法においては、前記黄緑色の蛍光の蛍光強度を測定する工程を、前記蛍光強度を前記合成石英ガラス部材の前記KrFエキシマレーザー光の照射方向に対して垂直な面の全面に亘って測定する工程とすることができる。更に、このような本発明の合成石英ガラス部材の検査方法においては、前記黄緑色の蛍光強度の分布の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0である良部位を選別することができる。 また、本発明の合成石英ガラス部材の検査方法は、合成石英ガラス部材に対して、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で3×104パルス照射する工程(a)と、 前記合成石英ガラス部材が発する波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光の蛍光強度を前記合成石英ガラス部材の前記KrFエキシマレーザー光の照射方向に対して垂直な面の全面に亘って測定する工程(b)と、 前記黄緑色の蛍光強度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0であるという条件を満たすか否かを判別して良品を選別する工程(c)と、を含む方法である。 先ず、工程(a)について説明する。工程(a)は、合成石英ガラス部材に対して、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で3×104パルス照射する工程である。 工程(a)を含む本発明の検査方法においては、光源として波長248nmを有するKrFエキシマレーザーを用いる。このようなKrFエキシマレーザーを光源として用いると、超微量のCuを感度よく検出することができるため、KrFエキシマレーザー光を照射後に測定される波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光で合成石英ガラス部材中に存在するCuの濃度分布を見積もることが可能となる。また、合成石英ガラス部材へのKrFエキシマレーザー光の照射は窒素ガスでパージされたアルミニウム製チャンバーの中で行うことが好ましい。 工程(a)においては、合成石英ガラス部材に対して、前記KrFエキシマレーザーを繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で3×104パルス照射する。これにより、前記合成石英ガラスのCuが侵入している領域が、波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光を発する。なお、このようなKrFエキシマレーザーの照射は、下記の測定点に併せて縦横それぞれに概ね30mmの間隔、必要に応じて数mm以下の間隔でずらした位置において行うことが好ましい。 次に、工程(b)を説明する。工程(b)は、前記合成石英ガラス部材の前記KrFエキシマレーザー光の照射方向に対して垂直な面の全面に亘って測定する工程である。 このような測定においては、波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光のスペクトルを蛍光分光光度計で測定する。また、このような測定は、前記KrFエキシマレーザー光が照射された面の全面に亘って、縦横それぞれに概ね30mmの間隔、必要に応じて数mm以下の間隔でずらした各測定点において行うことが好ましい。 更に、工程(c)を説明する。工程(c)は、前記黄緑色の蛍光強度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0であるという条件を満たすか否かを判別して良品を選別する工程である。 工程(c)においては、前述のようにして測定された波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光の蛍光強度の値を用いて、その最大値と最小値との比を計算する。そして、このような計算により得られた値を用いて、前記波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光強度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0であるという条件を満たすか否かを判別する。 このようにしてKrFエキシマレーザー光を照射して波長550nmの蛍光強度の分布を測定し、前記条件を満たすような合成石英ガラス部材を選別することで、合成石英ガラス部材を透過した露光光の照度むらが実質的に無い合成石英ガラス部材を得ることができる。すなわち、このような検査方法によって、照度むらのない均質な合成石英ガラス部材を選別することができる。 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 実施例1 合成石英ガラス成形体を成形するために、前述の図8に示す成形装置を用いた。 先ず、予め合成石英ガラス塊を洗浄するために、直径500mmで高さが700mmの円柱状の合成石英ガラス塊を用い、前記合成石英ガラス塊を重量比で10%のフッ化水素酸水溶液に24時間以上浸漬させた後に純水で十分にすすいだ。 また、Cuの含有量が40wt.ppbで且つAlの濃度が100wt.ppbである高純度カーボン粉を前処理用の炉に入れ、3Pa、1800℃の条件で3時間予め加熱しておいた。更に、モールドを前処理用の炉に入れ、3Pa、1800℃の条件で3時間予め加熱しておいた。そして、前記加熱後のモールド内表面に前記加熱後の高純度カーボン粉を塗布量が10mg/cm2となるようにして塗布した。 次に、前記加熱後の高純度カーボン粉が塗布された前記モールド内に、前述の洗浄が行われた円柱状合成石英ガラス塊を静置した。このとき用いられたモールドの銅の含有量は140wt.ppbであった。その後、真空ポンプを用いて炉内の圧力を10Paまで減圧した後、純粋な窒素ガスを圧力1×104Paまで充填し、400℃/hrの昇温速度で3時間かけて昇温して1600℃の温度条件で30分間保持した。次に、シリンダロッドによりモールドの垂直上方から、最大0.4kg/cm2の加圧力で、合成石英ガラス成形体を成形した。なお、このような成形に要した時間は1時間であった。成形後ヒータの発熱を停止し、20時間放置して自然放冷を行い、一辺が1000mmの正方形形状で厚さが137mmの板状の合成石英ガラス成形体を得た。 このような合成石英ガラス成形体の製造方法で製造した一辺が1000mmの正方形形状で厚さが137mmの合成石英ガラス成形体を切断し、一辺が200mmの正方形状で、厚さが137mmの直方体状の試料を25個得た。このような試料の一辺が200mmの正方形面が、前記成形が行われた際に加圧力の加えられた方向に対して垂直な面である。このような試料に対して一辺が200mmの正方形面に垂直な方向から、可視光を遮蔽するフィルターを通した2台の水銀(Hg)ランプの波長254nmのスペクトル線を、合わせて10mW/cm2の照度で照射した。そして、暗室内において前記スペクトル線の照射方向に対して垂直な方向から波長254nmのスペクトル線の輝線強度と波長500〜600nm中心とした蛍光の蛍光強度とを測定した。 このような測定の結果、一辺が200mmの正方形面の表面から3mmの深さまで緑色の蛍光が観察され、前記輝線強度と前記蛍光強度との比は0.005以上であった。このような試料においては、前述のような蛍光が観察される上下の正方形面からの深さは全て同じであった。図11は、前述のような蛍光が観測される部位と、蛍光が観察されなかった部位の状態を示す概略図である。 次に、このような試料から、蛍光が観察された領域40、すなわち上下の正方形面を厚さ3mm研削除去して、合成石英ガラス部材を製造した。 このような合成石英ガラス部材の1辺が200mmの正方形面に垂直な方向に直径が30mmで厚みが131mmの円柱状ブロックを等間隔で16個(横4個×縦4個)切り出した。図12は、前記合成石英ガラス部材から前記円柱状ブロックを切り出す際のブロックの切り出す位置を示す概略図である。 このようにして切り出された各円柱状ブロックを更に13.1mm厚間隔でスライスして10等分し、直径が30mmで厚みが13.1mmの円柱状の試験片を製造した。このようにして得られた試験片の両面を等しく研削、研磨し、直径が30mmで厚みが10mmの形状の評価試料を作成した。 先ず、評価試料の透過率測定を行った。透過率を求めるために、市販のダブルビーム方式の分光光度計を用いた近赤外−紫外域の光学透過測定を行った。このような測定においては、近赤外域ではハロゲンランプを光源とし、紫外域では重水素ランプを光源として回折格子で分光される光を参照光と測定光の2つの光線に分離し、分離された光線を共に窒素ガスでパージされた試料室に導入した。このとき、参照光側の試料台には何も置かず、測定光側の試料台には前記評価試料を静置した。そして、前記試料室を通過した参照光と測定光とを積分球で集光してフォトマルチプライアーを用いて参照光強度Aと測定光強度Aとを検出した。また、参照光側の試料台及び測定光側の試料台の双方に前記評価試料を置かない以外は上記と同様にして、参照光強度Bと測定光強度Bを検出した。そして、このようにして測定された前記参照光強度A及びBと前記測定光強度A及びBの値をそれぞれ下記式:(透過率)=(測定光強度A/参照光強度A)÷(測定光強度B/参照光強度B)に導入して透過率を算出した。 このようにして得られた前記評価試料の透過率は、波長193nmで90.6%(試料間のばらつきは±0.1%)、波長248nmで92.1%(試料間のばらつきは±0.05%)であり、絶対値が高く分布も小さく良好な合成石英ガラスであることが確認された。 次に、前記評価試料のレーザー耐性を評価した。このようなレーザー耐性の試験においては、レーザーとして波長248nmを有するKrFエキシマレーザーを用いた。前記評価試料へのKrFエキシマレーザー光の照射は窒素ガスでパージされたアルミニウム製チャンバーの中で行われた。この時、直径30mmの円形の面を垂直に立てて、30mmの円形の面に垂直な方向から、KrFエキシマレーザーをエネルギー密度50mJ/(cm2・パルス)、パルス数3×104の条件で照射した後、KrFエキシマレーザーを照射中の蛍光を暗室において目視で観察した。このような観察の結果、前記試料のうち、評価試料を切り出す前の円柱状ブロックの最上段と最下段では弱い黄色の蛍光が観察された。その後、さらにパルス数1×106まで照射を続け、チャンバーから取り出した後、上記方法で248nmの透過率を測定した。このような測定の結果、実質的な透過率の低下は、黄色蛍光の観察されなかった評価試料ばかりか、黄色蛍光の観察された評価試料にも認められなかった。 次いで、前記評価試料の不純物濃度を測定した。このような評価試料の不純物濃度は、ICP−MSにて分析することで測定した。測定の結果、全ての試料で銅の濃度は検出下限である0.1wt.ppb未満であり、且つ、Al濃度は6ppb未満であった。従って、全ての評価試料が、下式(1):[Cu]+0.03×[Al] < 0.4wt.ppb (1)の条件を満足していた。 比較例1 比較として、合成石英ガラス成形体の成形の際に予め合成石英ガラス塊の洗浄を行わなかった以外は実施例1と同様にして合成石英ガラス成形体を成形し、実施例1と同様にして、一辺が200mmの正方形状で厚さが137mmの直方体状の試料を25個得た。 このような試料に対して、実施例1と同様にして波長254nmのスペクトル線の輝線強度と波長500〜600nm中心とした蛍光の蛍光強度とを測定した。このような測定の結果、一辺が200mmの正方形状面の表面から35mmの深さ(上下で70mm)まで緑色の蛍光が観察され、前記輝線強度と前記蛍光強度との比は0.005以上であった。 ここで、あえて前記輝線強度と前記蛍光強度との比が0.005以上の部位(200×200mm面の表面近く)の諸物性を測定した。 このような測定に際しては、実施例1と同様にして直径が30mmで厚みが10mmの形状の評価試料を作成した。そして、前記評価試料の透過率、レーザー耐性及び不純物分析を実施例1と同様にして測定した。 このような測定の結果、透過率は波長248nmで91.0%と低く、レーザー照射中非常に強い黄色の蛍光が観察された。また、KrFエキシマレーザーを実施例1と同様の条件で照射した後の前記評価試料の透過率は88.9%となり、透過率が初期透過率から1%も減少していた。更に、不純物濃度は、銅の濃度が1wt.ppbで、アルミニウムの濃度が15wt.ppbであった。また、前記式(1)の値、すなわち、[Cu]+0.03×[Al]を算出して得られた値は3.3であり、0.4を大きく上回っていた。 このような結果からも明らかなように、実施例1に記載のような合成石英ガラス成形体の成形方法を用いて得られた合成石英ガラス成形体は、95.6体積%以上という非常に広い領域において、レーザー照射中に露光性能に影響を及ぼすような強い黄色蛍光を発せず、露光性能に直接影響するような透過率やレーザー耐性といった品質も非常に優れたものとなることが確認された。 これに対して、比較例1のような従来の合成石英ガラス成形体の成形方法で得られた合成石英ガラス成形体は、合成石英ガラス成形体中の前記輝線強度と前記蛍光強度との比が0.005以上である部位(以下、不良部位という。)が5割以上を占めていた。また、このような不良部位は透過率及びレーザー耐久性共に低いことから、従来の合成石英ガラス成形体の成形方法においては、波長400nm以下の短波長を有する光を露光光とする露光装置に用いられる合成石英ガラス部材をコストに見合うように製造することが実質的に困難であることが確認された。 実施例2 合成石英ガラス成形体の成形の際に予め合成石英ガラス塊の洗浄を行わなかった以外は実施例1と同様にして合成石英ガラス成形体を成形し、実施例1と同様にして、一辺が200mmの正方形状で厚さが137mmの直方体状の試料を25個得た。 このような試料に対して、実施例1と同様にして波長254nmのスペクトル線の輝線強度と波長500〜600nm中心とした蛍光の蛍光強度とを測定した。そして、このような測定により得られた前記輝線強度と前記蛍光強度との比が0.005以下という条件を満たす部位(以下、「良部位」という)と満たさない部位(以下、「不良部位」)とを検査した。このような検査の結果、不良部位は一辺が200mmの正方形面から深さ30mmずつ試料の上下に存在した。 このような試料から、実施例1と同様にして直径が30mmで厚みが10mmの形状の評価試料を作成した。不良部位で製造されている前記試料において一辺が200mmの正方形面に相当する面から数えて上下3個目の評価試料と、良部位で製造されている前記試料において一辺が200mmの正方形面に相当する面から数えて4個目の評価試料について、透過率と不純物濃度とをそれぞれ実施例1と同様の方法で測定した。 良部位で製造された評価試料の透過率は、波長193nmの光に対して90.6%であり、波長248nmの光に対して92.1%であった。一方、不良部位で製造された評価試料の透過率は、波長193nmの光の透過率が良部位で製造された評価試料と比較して0.3%ほど低く、波長248nmの光に対する透過率は92.1%であった。 また、良部位で製造された評価試料の不純物濃度は、銅の濃度が0.1wt.ppbで、アルミニウムの濃度が6wt.ppbであり、更に前記式(1)の値は0.3であった。一方、不良部位で製造された評価試料の不純物濃度は、銅の濃度が0.2wt.ppbで、アルミニウムの濃度が7wt.ppbであり、更に前記式(1)の値が0.4であった。 このように波長254nmのスペクトル線を照度10mW/cm2以上という条件で照射したときの蛍光を測定して選別した良部位は透過率においても良部位であるであることが確認された。また、このような結果から、前記蛍光検査によって選別される部位においては、銅の濃度が0.2wt.ppb以下で且つアルミニウムの濃度が10wt.ppb以下であるという条件と、銅の濃度とアルミニウムの濃度とが下式(1):[Cu]+0.03×[Al] < 0.4wt.ppb (1)(式(1)中、[Cu]は銅の濃度を示し、[Al]はアルミニウムの濃度を示す。)という条件とを満たすことが確認された。 他方、同様にして選別された不良部位は、深紫外域の透過率が良部位に比べ有意に減少していた。これは、Cuの侵入長とNaの侵入長がほぼ同じであることに起因する。このような結果から、波長254nmのスペクトル線を照度10mW/cm2以上という条件で照射したときの蛍光を測定して良部位と不良部位を選別することで、非常に高感度に検出できるCuをプローブとして、透過率等に影響を及ぼすが、検出しにくいNaによる汚染域をも除外することができるという効果があることが分かった。すなわち、本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法において測定される蛍光強度は、単にCuの汚染による蛍光強度を示しているだけではなく、露光性能に直接影響する透過率、レーザー耐性等の品質も反映しているといえる。従って、このような本発明の合成石英ガラス成形体の検査方法で選別される良部位を用いて合成石英ガラス部材を製造すると、レーザー照射中に露光性能に影響を及ぼすような強い黄色蛍光を発しないということばかりでなく、露光性能に直接影響する透過率が非常に優れたものとなる。他方、本発明の検査方法で選別される不良部位を用いて合成石英ガラス部材を製造すると、レーザー照射中に露光性能に影響を及ぼすような強い蛍光を発するのはもちろん、露光性能に直接影響する透過率も有意に減少する。 実施例3 合成石英ガラス成形体の成形の際に予め合成石英ガラス塊の洗浄を行わなかった以外は実施例1と同様にして合成石英ガラス成形体を成形し、実施例1と同様にして、一辺が200mmの正方形状で厚さが137mmの直方体状の試料を25個得た。 その後、前記試料から、200mmの辺と137mmの辺を持つ面と垂直な方向に、直径30mmで厚さが200mmの円柱状ブロック(4(200mm方向)×3(137mm方向)=12個)を切り出した。図13は、前記試料から円柱状ブロックを切り出す際の切り出し位置を示す概略図である。 このようにして切り出された円柱状ブロックを更に13.3mm厚でスライスして15等分し、両面を等しく研削・研磨することで直径が30mmで厚みが10mmの円柱状の評価試料を得た。このようにして得られる評価試料の前記円柱状ブロックの端から同じ枚数の評価試料同士(12個)を1セットとして、その物性を比較した。このような評価試料の物性の比較は、すなわち、200mmの辺と137mmの辺を持つ面に対して平行に試料をスライスして200mmの辺と137mmの辺の面を持った合成石英ガラス部材を得る場合、その部材における品質の面内分布を測定することと等しい。 先ず、上記各セットの評価試料の透過率を実施例1と同様にして測定した。このような測定の結果から、200mmの辺と137mmの辺の面を持った合成石英ガラス部材を得る場合には、200mmの辺と137mmの辺の面の中心から上下方向に対して(200mmの辺方向に向かって)透過率が減少する透過率分布があることが分かった。透過率が有意に減少した部位(200mmの辺と接した評価試料(4個+4個))での透過率減少量は、真ん中の4個の試料に比べ、波長193nmで約1.0%低く、更に波長248nmでも約1.0%低かった。一方、137mmの辺と垂直な方向には透過率の分布が無かった。このようなパターンは、どのセットの評価試料群においても見られた。 次に、KrFエキシマレーザー光を前記評価試料に照射し蛍光を観察した。すなわち、前記評価試料へのKrFエキシマレーザー光の照射を、窒素ガスでパージされたアルミニウム製チャンバーの中で行い、前記試料の直径30mmの円形の面を垂直に立てて、30mmの円形の面に垂直な方向から、KrFエキシマレーザーを繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で照射した。そして、このようなKrFエキシマレーザー光をパルス数3×104照射した後、評価試料の発する波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光のスペクトルを蛍光分光光度計で測定した。そして、前記のようにして測定した波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光のスペクトルのピークの高さを1セット分の試料同士で比較した。200mmの辺と接した評価試料(4個+4個)においては、測定された黄色蛍光強度は非常に強く、他方、200mmの辺と接していない真ん中の評価試料(4個)においては、黄色蛍光強度は非常に弱く、その端の部位に対する蛍光強度の比(真ん中の部位の蛍光強度(最小値)/端の部位の蛍光強度(最大値))は約0.1であった。このようなパターンは、どのセットの試料群においても見られた。一方、200mmの辺と接していない真ん中の評価試料で観察される黄色蛍光の強度を、円柱状ブロックを切り出した方向の評価試料を用いて比べた。この場合には蛍光強度の差は小さく、蛍光強度の比(最小の蛍光強度/最大の蛍光強度)は0.8であった。このような結果から、200mmの辺と接していない真ん中の試料は蛍光良部位であり、蛍光強度のむらが小さいということが分かった。 このような結果から、上記のようにしてKrFエキシマレーザー光を照射して波長550nmの蛍光強度の分布を測定し、良部位を選別すると、透過率分布の小さい、すなわち、合成石英ガラス部材を透過した露光光の照度むらが実質的に無い合成石英ガラス部材を得ることができる。一方、このような方法で蛍光強度の分布を測定し、不良部位と判定された合成石英ガラス部材においては、その部材を透過した露光光の照度にむらが生じ、露光性能を著しく低下させることが分かった。 以上説明したように、本発明によれば、合成石英ガラス成形体に存在する不純物汚染による不良部位を確実に選別することが可能な合成石英ガラス成形体の検査方法、合成石英ガラス部材の検査方法及びそれらの検査方法を利用した合成石英ガラス部材の製造方法を提供することが可能となる。 10…成形装置、11…真空チャンバー、12…断熱材、13…カーボンヒータ、15…モールド、16…底板、17…受板、18…底部、20…側壁部、21…中空部、23…天板、23b…押圧面、26…シリンダロッド、30…合成石英ガラス成形体、31…水銀(Hg)ランプ、32…ファイバープローブ、33…測定点、40…試料中の蛍光が観察された領域。 合成石英ガラス成形体に対して、可視光を遮蔽又は減光するフィルターを通したHgランプの波長254nmのスペクトル線を照度10mW/cm2以上という条件で照射する工程と、 前記合成石英ガラス成形体が発する波長254nmの輝線強度と、前記合成石英ガラス成形体が発する波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度とを測定する工程と、 前記輝線強度と前記蛍光強度との比(蛍光強度/輝線の強度)に基いて合成石英ガラス成形体の良部位を選別する工程と、を含む、合成石英ガラス成形体の検査方法。 前記良部位の前記輝線強度と前記蛍光強度との比(蛍光強度/輝線の強度)が0.005以下である、請求項1に記載の合成石英ガラス成形体の検査方法。 前記輝線強度と前記蛍光強度とを測定する工程において、前記スペクトル線の照射方向に対して垂直な方向から前記輝線強度と前記蛍光強度とを測定する、請求項1及び2に記載の合成石英ガラス成形体の検査方法。 合成石英ガラス部材に対して、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で3×104パルス照射する工程と、 前記合成石英ガラス部材が発する波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光の蛍光強度を測定する工程と、 前記黄緑色の蛍光強度の分布の最小値と最大値の比(最小値/最大値)に基いて合成石英ガラス部材の良部位を選別する工程と、を含む、合成石英ガラス部材の検査方法。 前記黄緑色の蛍光の蛍光強度を測定する工程が、前記蛍光強度を前記合成石英ガラス部材の前記KrFエキシマレーザー光の照射方向に対して垂直な面の全面に亘って測定する工程である、請求項4に記載の合成石英ガラス部材の検査方法。 前記黄緑色の蛍光強度の分布の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0である良部位を選別する、請求項4又は5に記載の合成石英ガラス部材の検査方法。 請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の検査方法により選別された良部位を利用して合成石英ガラス部材を製造する、合成石英ガラス部材の製造方法。 合成石英ガラス部材に対して、波長248nmを有するKrFエキシマレーザー光を繰り返し周波数100Hz、エネルギー密度100mJ/(cm2・パルス)という条件で3×104パルス照射する工程と、 前記合成石英ガラス部材が発する波長550nmを中心とした黄緑色の蛍光の蛍光強度を前記合成石英ガラス部材の前記KrFエキシマレーザー光の照射方向に対して垂直な面の全面に亘って測定する工程と、 前記黄緑色の蛍光強度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が0.2〜1.0であるという条件を満たすか否かを判別して良品を選別する工程と、を含む合成石英ガラス部材の検査方法。 【課題】合成石英ガラス成形体に存在する不純物汚染による不良部位を確実に選別することが可能な合成石英ガラス成形体の検査方法を提供する。【解決手段】合成石英ガラス成形体に対して、可視光を遮蔽又は減光するフィルターを通したHgランプの波長254nmのスペクトル線を照度10mW/cm2以上という条件で照射する工程と、前記合成石英ガラス成形体が発する波長254nmの輝線強度と、前記合成石英ガラス成形体が発する波長500nm〜600nmを中心とした緑色から黄色の蛍光の蛍光強度とを測定する工程と、前記輝線強度と前記蛍光強度との比(蛍光強度/輝線の強度)に基いて合成石英ガラス成形体の良部位を選別する工程と、を含む、合成石英ガラス成形体の検査方法。【選択図】なし


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