タイトル: | 公開特許公報(A)_微細藻類の培養方法、該培養方法により液面上に形成されたバイオフィルム、該バイオフィルムから得られるバイオマス及びオイル、該バイオフィルムの回収方法、並びにバイオマス燃料の製造方法 |
出願番号: | 2012099189 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12N 1/12,C07G 99/00,C11B 1/00,C10L 5/44,C12N 15/09,C12R 1/89 |
金原 秀行 松永 是 田中 剛 田中 祐圭 JP 2013226063 公開特許公報(A) 20131107 2012099189 20120424 微細藻類の培養方法、該培養方法により液面上に形成されたバイオフィルム、該バイオフィルムから得られるバイオマス及びオイル、該バイオフィルムの回収方法、並びにバイオマス燃料の製造方法 富士フイルム株式会社 306037311 国立大学法人東京農工大学 504132881 高松 猛 100115107 尾澤 俊之 100151194 金原 秀行 松永 是 田中 剛 田中 祐圭 C12N 1/12 20060101AFI20131011BHJP C07G 99/00 20090101ALI20131011BHJP C11B 1/00 20060101ALI20131011BHJP C10L 5/44 20060101ALI20131011BHJP C12N 15/09 20060101ALN20131011BHJP C12R 1/89 20060101ALN20131011BHJP JPC12N1/12 AC12N1/12 AC07G99/00 CC12N1/12 CC12N1/12 ZC11B1/00C10L5/44C12N15/00 AC12N1/12 AC12R1:89 21 OL 55 4B024 4B065 4H015 4H055 4H059 4B024AA17 4B024CA11 4B024GA27 4B065AA83X 4B065AC09 4B065AC14 4B065BA22 4B065BB02 4B065BC02 4B065BC03 4B065BC07 4B065BC12 4B065BC48 4B065BC50 4B065BD10 4B065BD15 4B065BD16 4B065CA02 4B065CA54 4B065CA60 4H015AA12 4H015AB01 4H015BA09 4H015BB02 4H015CB01 4H055AA02 4H055AB44 4H055AC61 4H055AD22 4H055CA61 4H059BC48 本発明は、微細藻類の培養方法、該培養方法により液面上に形成されたバイオフィルム、該バイオフィルムから得られるバイオマス及びオイル、該バイオフィルムの回収方法、並びにバイオマス燃料の製造方法に関する。本発明に係る微細藻類の培養方法によれば、液面上にバイオフィルムを形成することができ、該培養方法はエネルギー分野において有用である。 近年、産業活動の発達などに伴って、大量の化石燃料を使用することによる燃料価格の高騰や、化石燃料を使用することによって大気中に放出された二酸化炭素による温室効果で地球温暖化が進展することが問題となっている。このような問題を解決するための手段として、光エネルギーにより二酸化炭素を固定化し、炭化水素化合物やバイオディーゼル(トリグリセリド)等に変換する能力を有する微細藻類の利用に対する期待が高まっている。例えば、微細藻類を培養することで、光エネルギーを用いて二酸化炭素を固定化し、バイオディーゼルや炭化水素化合物などのバイオマスを産生させる様々な研究が既に行われている。 ところで、微細藻類などの微生物の存在形態には、例えば、主として、外的攻撃から身を守るために、粘性のある分泌物を生産して、高次構造体、いわゆるバイオフィルム(biofilm)(微生物集合体若しくは微生物膜)を形成する存在形態があり、昨今、医療、環境などの分野において大きな注目を集めている。バイオフィルムを形成すると、微生物は個々の性質とは異なる挙動を示し、集合体としての性質を示すようになることが知られている。バイオフィルムは通常、石や植物の表面などの固体基質の表面に形成されるものであり、微細藻類が液面上にバイオフィルムを形成することについての具体的な報告は確認されていない。 微細藻類を用いてのバイオマスの生産には、種々の問題点があり、効率的な微細藻類の培養方法、微細藻類の回収方法、更にはオイル等のバイオマスの抽出方法が開発されておらず、コストが高いため、商業規模での生産は行われていない。その最大の原因の一つが、微細藻類の効率的な回収方法がないことである。具体的には、微細藻類は通常、液中に浮遊しながら生育させるため、微細藻類をバイオマスとして利用するためには、非常に希薄な濃度の微細藻類を大量の液中から回収しなければならない。加えて、微細藻類の生育のためには光エネルギーが必要であるため、十分な光の照射を確保するためには液中に存在する微細藻類の濃度を過度に高くすることが出来ない。結果として、液中に浮遊する微細藻類を回収するには、多量の水をろ過する必要があった。また、微細藻類のサイズは一般的に小さく、ろ過も容易ではなかった。このような問題を解決するための回収方法の検討として、沈殿剤を用いる方法、遠心分離機を用いる方法、微細藻類をより大型の生物の餌とした後に、該大型の生物を回収する方法などが試みられたものの、いずれの方法も根本的な解決には至らなかった。 上記のような理由から、微細藻類を効率的、簡便かつ低コストで回収するために、微細藻類を液面上に生育させることが望まれている。 微細藻類の液面上への浮遊については、自然に発生するアオコ、ボツリオコッカス(botryococcus)のブルーミング(大量繁殖)や、海洋で発生する赤潮などがある。しかし、これらはいずれも自然界で発生する現象であるので、液面上に発生する微細藻類は多種、多量の不純物と共に入り混じっており、微細藻類が純粋に液面上で生育しているかについては定かではない。なおアオコとは、純菌化を行っていない微細藻類、すなわち、多種の微細藻類から構成され、液面上に浮き、青粉の表記のごとく、粉状になった微細藻類を主とする凝集物のことを言い、本発明に係るバイオフィルムとは異なるものである。 ボツリオコッカスの培養に関しては、非特許文献1及び2に、ボツリオコッカスがオイルを蓄積した時に、液面上への浮遊性があることが示されている。また、特許文献1には、ボツリオコッカスが液面上に浮くことが要約書に記述されている。しかし、特許文献1では、二酸化炭素と藻とが直接接触することによって、炭化水素化合物の蓄積速度が向上するという現象に基づいて、吸湿性の布の表面上にボツリオコッカスを培養するものであり、液面上に直接ボツリオコッカスが浮いている実施例の記載はない。 非特許文献3は、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)として、Botryococcus sp. UTEX−2629株を開示しているが、これはボツリオコッカス ブラウニー(Botryococcus Braunii)よりも比重が重く、また、液面上に浮くことに関する記述もない。 以上のように、従来の技術にはボツリオコッカスが液面上に浮くことについて示唆はあるものの、実際にボツリオコッカスを液面上に浮かせた具体的な態様についての記載はなく、ましてや液面上にバイオフィルムを形成することについての記載はない。 また非特許文献4には、渦鞭毛藻(C.cohnii)を培養することで液面上に浮遊することが記載されているが、液面上にバイオフィルムを形成することについての記載はない。米国特許出願公開第2009/0087889号明細書The Ecology of Cyanobacteria. Their Diversity in Time and Space, B.A. Whitton & M. Potts, Eds, Kluwer Academic (1999), pp. 160Oceanological Studies, 1998, 第 27 巻、第 1 号, 出版社: Index Copernicus p17Melis et al., J apply Phycol (2010)“Growth Inhibition of Dinoflagellate Algae in Shake Flasks: Not Due to Shear This Time”, Biotechnol. Prog., 2010, Vol. 26, No. 1, pages 79−87農業土木学会誌 pp971〜975, Vol. 56(10), 1988 微細藻類などの微生物を培養し、培養した微生物からバイオディーゼルや炭化水素化合物などのバイオマスを取り出すことは非常に注目されているが、未だ商業規模での生産は行われてはいない。その理由の一つが、油田などから得られた化石由来エネルギー資源と比較して、まだ製造コストが高すぎることである。この製造コスト高の主要な原因は、液中に分散したサイズの小さな微細藻類を液中から回収する回収コストが高いこと、一般的にバイオマスを生産するためには広大な面積が必要であり、この広大な面積に対して、二酸化炭素を均一かつ低コストで導入する方法がないこと、配管が非常に長距離になりその設置コストが高いこと、受光面あたりの藻類バイオマスの生産量が低いこと、並びに藻類が分散した液体培地を攪拌するための装置及び作動コストが高いことなどである。 また、従来の微細藻類の培養では、大量の液体培地をハンドリングする必要があり、そのために大量のエネルギーが必要であった。更に、大量の液体培地を供給するためには、大量の水が必要であった。 更に、非特許文献5によれば、水中から水面において繁殖したアオコの回収率は約80%であり、分離された濃縮アオコの含水率は平均97%と報告されている。製造コストを低くするためには、より高い回収率と、回収物のより低い含水率が必要であった。 微細藻類などの微生物を商業規模で培養を行い、低コストでバイオマス産物を製造するためには、前記した種々の問題点がある。上記の中でも、本発明では、小さな微細藻類の回収を容易にし、回収コストを低減させること、二酸化炭素の供給コストを低減させること(すなわち、二酸化炭素配管設置コストを削減すること)、液面面積に対して大量の水を使用する必要を無くし、大量の液体培地をハンドリングする必要を無くすこと、微細藻類の回収率を高めること、回収した微細藻類の含水率を低くすること、を解決すべき課題とする。 すなわち、本発明の目的は、液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、液体培地の液面上でバイオフィルムを形成させるように培養する微細藻類の培養方法を提供することである。 また本発明の別の目的は、本発明に係る培養方法により液面上に形成されたバイオフィルム、該バイオフィルムから得られるバイオマス及びオイル、該バイオフィルムの回収方法、並びにバイオマス燃料の製造方法を提供することである。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ある種の微細藻類を特定の条件下で培養することによって液面上にバイオフィルムを形成しながら増殖することを見出した。また、このようにして形成されたバイオフィルムは、スライドガラスやプラスチックフィルムなどの基板を用いて容易に回収できることを見出した。また液面上に形成されたバイオフィルムは高い回収率で回収することができ、かつ、その含水率が低いことを見出した。更に、このようにして回収されたバイオフィルムからオイルを得ることができることを見出し、本発明に係るバイオフィルムがバイオマスとして有用であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものであり、以下の構成を有する。 〔1〕 液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、液体培地の液面上でバイオフィルムを形成させるように培養する、微細藻類の培養方法。 〔2〕 液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、静置培養することを含む、上記〔1〕に記載の微細藻類の培養方法。 〔3〕 前記液体培地が、カルシウムを含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の微細藻類の培養方法。 〔4〕 前記液体培地中のカルシウム濃度が、0.3mM以上である、上記〔3〕に記載の微細藻類の培養方法。 〔5〕 気相中の二酸化炭素濃度が、大気中の二酸化炭素濃度以上、20体積%未満である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 〔6〕 培養開始直後の前記液体培地のpHが、2以上11以下の範囲内である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 〔7〕 培養温度が、20℃以上、40℃未満である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 〔8〕 前記液体培地の水深が、0.4cm以上である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 〔9〕 前記液体培地の水深が、2.0cm〜1mである、上記〔8〕に記載の微細藻類の培養方法。 〔10〕 前記微細藻類が、18S rRNAの遺伝子領域をコードする塩基配列のうち、一部の領域の、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)に相当する塩基配列との相同性が95.0%以上99.9%以下である、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 〔11〕 前記微細藻類が、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus) AVFF007株(受託番号FERM BP−11420)である、上記〔10〕に記載の微細藻類の培養方法。 〔12〕 前記バイオフィルムの含水率が95質量%以下である、上記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 〔13〕 上記〔1〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法により、液面上に形成されたバイオフィルム。 〔14〕 上記〔13〕に記載のバイオフィルムから得られるバイオマス。 〔15〕 上記〔13〕に記載のバイオフィルムから得られるオイル。 〔16〕 上記〔13〕に記載の液面上に形成されたバイオフィルムを、基板に堆積させて回収する、バイオフィルムの回収方法。 〔17〕 上記〔13〕に記載の液面上に形成されたバイオフィルムを、基板に転写させて回収する、バイオフィルムの回収方法。 〔18〕 前記液面上に形成されたバイオフィルムの70%以上を回収する、上記〔16〕又は〔17〕に記載のバイオフィルムの回収方法。 〔19〕 前記液面上に形成されたバイオフィルムの80%以上を回収する、上記〔18〕に記載のバイオフィルムの回収方法。 〔20〕 前記液面上に形成されたバイオフィルムの90%以上を回収する、上記〔18〕又は〔19〕に記載のバイオフィルムの回収方法。 〔21〕 上記〔16〕〜〔20〕のいずれか一項に記載のバイオフィルムの回収方法により回収されたバイオフィルムを燃料として使用する、バイオマス燃料の製造方法。 本発明に係る微細藻類の培養方法によれば、液面上でのバイオフィルムの形成が可能となり、従来の浮遊培養と比較して、微細藻類の回収が極めて容易になり、高い回収率で微細藻類の回収ができる。即ち、本発明では、微細藻類を回収する段階では、微細藻類の集合体から構成されたバイオフィルムが液面上に浮かんでおり、そのバイオフィルムを回収対象としているため、従来のように大量の培地から微細藻類を回収する必要がなく、液面上のバイオフィルム及びバイオフィルムに含まれている水分のみを回収対象としているため、その回収コストを大幅に低下できる。また回収したバイオフィルムの含水率を低くすることができる。更に、大量の液体培地をハンドリングする必要が無く、大量の水を使用する必要が無い。C培地の組成である。CSi培地の組成である。AVFF007株の顕微鏡写真(倍率40倍)を示す図である。BLAST解析に使用したAVFF007株の塩基配列(配列番号1)である。微細藻類ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus) AVFF007株の系統図である。IMK培地の組成である。ASFF001株の顕微鏡写真(倍率40倍)を示す図である。BLAST解析に使用したASFF001株の塩基配列(配列番号2)である。AVFF004株の顕微鏡写真(倍率40倍)を示す図である。BLAST解析に使用したAVFF004株の塩基配列(配列番号3)である。本発明の微細藻類の培養方法の一例を示す模式図である。液面上に形成した、微細藻類から構成されたバイオフィルム(図12においてはフィルム状の構造物)を、第二の基板(ガラス基板)を用いて回収している様子である。図12の液面上に形成したバイオフィルムを回収した後に、第二の基板(ガラス基板)上に堆積したバイオフィルムの様子である。AVFF007株が液面上にフィルム状の構造物を形成する過程の顕微鏡写真を示す図である(左側:倍率4倍、右側:倍率40倍)。なお右側に記載の数値は、培養日数を示す。CSiFF04培地の組成である。実施例2で液面上に形成されたバイオフィルム(三次元状の構造物)の写真を示す図である。実施例2における液面浮遊培養日数と、各液面浮遊培養日数におけるバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。実施例2における液面浮遊培養日数と、各液面浮遊培養日数におけるバイオフィルムの最大高さ(cm)との関係を示す図である。実施例2における液面浮遊培養日数と、各液面浮遊培養日数におけるバイオフィルムの含水率との関係を示す図である。実施例4で形成したバイオフィルムから得られたオイル成分の分析結果である。実施例5において、液面上に形成されたバイオフィルムの様子(図21の(a))、及び、バイオフィルムの回収後の液面の様子(図21の(b))を示す図である。CSiFF01培地の組成である。実施例6における液面浮遊培養温度と、各液面浮遊培養温度におけるバイオフィルムの乾燥藻体量比(温度23℃の温調培養によるバイオフィルムの乾燥藻体量が基準)との関係を示す図である。培地の水深と、各水深の培地におけるバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。各培地濃度及び光量における培養日数と、バイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。各培地濃度における光量と、バイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。7日間及び14日間の培養日数における、各種硝酸源と、バイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。7日間及び14日間の培養日数における、カルシウム濃度と、液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。CSiFF03培地の組成である。pHと、液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。気相中のCO2濃度と、液面上に形成されたバイオフィルムの藻体数との関係を示す図である。種々の微細藻類種を用いた場合の液面上での微細藻類の培養を観察した結果である。AVFF004株の場合の液面上での培養を顕微鏡観察(倍率4倍)した結果である。液面浮遊培養++の例。NIES−2249株の場合の液面上での培養を顕微鏡観察(倍率4倍)した結果である。液面浮遊培養+++の例。AVFF007株の場合の液面上での培養を顕微鏡観察(倍率4倍)した結果である。液面浮遊培養++++の例。光量と、液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を示す図である。振盪が液面浮遊培養に与える影響を示す図である。 以下、本発明の微細藻類の培養方法について詳細に説明する。 本発明の微細藻類の培養方法は、液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、液体培地の液面上でバイオフィルムを形成させるように培養するものである。 本発明によれば、従来の様に液体培地中に分散しているサイズの非常に小さな微細藻類を回収することとは異なり、液面上に形成されたバイオフィルムを回収対象にしていることからそのサイズは前者と比較して非常に大きく、回収が容易になる。更に、従来の液体培地中での浮遊培養の場合には、微細藻類を回収した後にも大量の水分が残存しており、それらの水分を除去するために遠心操作や蒸発操作などのコストの高い操作を行う必要があるが、本発明の方法では、前記の方法と比較して、液面上に形成されるが故に含水率の低いバイオフィルムを回収対象としていることから、それらの操作は前記の方法と比較して不要若しくは非常に簡便にすることができる。 また、本発明の方法では、気液表面上での培養であることから、藻体の乾燥による死滅が少ない。[液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類] 本発明における液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類は、液面上においてバイオフィルム形成能を有するものである。 本発明で言う微細藻類とは、人の肉眼では、その個々の存在が識別できないような微小な藻類を指す。微細藻類の分類としては、液面上においてバイオフィルム形成能を有するものであれば特に制限はなく、原核生物及び真核生物のいずれであってもよい。 前記微細藻類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、藍色植物門、灰色植物門、紅色植物門、緑色植物門、クリプト植物門、ハプト植物門、不等毛植物門、渦鞭毛植物門、ユーグレナ植物門、クロララクニオン植物門などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記微細藻類としては、不等藻植物門の珪藻、緑色植物門が好ましく、バイオマスを産生する点で、ボトリオコッカス(Botryococcus)属がより好ましい。 前記微細藻類を入手する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自然界より採取する方法、市販品を用いる方法、保存機関や寄託機関から入手する方法などが挙げられる。 本発明で言うバイオフィルムとは、微生物から構成されているフィルム状の構造物又は後述する立体的な三次元状の構造物のことを言い、通常、岩やプラスチック表面に付着している微生物構造体(微生物集合体若しくは微生物膜)のことを言うが、本発明では、これらに加えて、液面のような流動性のある表面に対して、存在している微生物から構成されたフィルム状の構造物又は後述する立体的な三次元状の構造物のこともバイオフィルムというものとする。なお、一般的には、特に、自然界でのバイオフィルムには、微生物以外に、ゴミや植物の破片などを含んでいるが、本発明でもこれらを含んでいてもよいものとする。ただし、例えば、屋外の様なオープンな環境では、前記の目的微生物以外の混入の回避は不可能であるために、本発明では意図的にこれらを含ませた試料を対象としていない。しかし、微細藻類の回収の効率の観点から、バイオフィルムはゴミや植物の破片などの不純物を含まないことが好ましく、理想的には、本発明に係る微細藻類と該微細藻類の増殖時に分泌される細胞間マトリックスなどのような物質のみから構成されていることがより好ましい。また、本発明では、バイオフィルムは、個々の微細藻類同士が直接もしくは細胞間マトリックスのような物質を介して付着しあっている構造であることが好ましい。 本発明における液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類は、微細藻類ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)が好ましい。本発明に係る微細藻類の18S rRNAの遺伝子領域をコードする塩基配列のうち、一部の領域の、ボツリオコッカス スデティクスに相当する塩基配列との相同性が95.0%以上99.9%以下であることがより好ましい。なお、ここで言う「一部の領域」とは、1000塩基配列以上の領域を意味する。相同性を試験するにあたっては、全塩基配列を用いての相同性の試験が最も信頼性が高いが、全塩基配列を決定することは極少数の生物種を除いて技術的にもコスト的にも困難であり、またボツリオコッカス スデティクスの塩基配列も特定の一部(具体的には、後述する比較対象としたAVFF007株の塩基配列に対応する塩基配列の近傍)しか公開されていない。更に、一般的には1000塩基配列程度読めば帰属は可能といわれている。以上のことから、本発明では「一部の領域」の塩基配列の比較により相同性を試験したが、その信頼性は十分に高いものと考えられる。 また本発明にかかる微細藻類は、液面上における増殖速度が大きいことが好ましく、具体的には、液面上の微細藻類の対数増殖期における増殖速度(すなわち、対数増殖期の期間における一日あたりの平均増殖速度)が、乾燥重量で0.1g/m2/day以上であることが好ましく、1g/m2/day以上であることがより好ましく、5g/m2/day以上であることが更に好ましく、10g/m2/day以上であることが最も好ましい。液面上の微細藻類の対数増殖期における増殖速度は、乾燥重量で一般的に1000g/m2/day以下である。 特に、液面上での培養及び液面からの回収性が良好であること、高い増殖速度を持つこと、オイルを高い含有率で含有していること、少なくとも培養中は臭いが殆どなく、有毒物質の発生も確認されていないことなどの観点から、本発明にかかる微細藻類は、微細藻類ボツリオコッカス スデティクス AVFF007株(以下、AVFF007株と略称する。)であることがより好ましい。 本明細書の実施例で使用した微細藻類、AVFF007株は、受託番号FERM BP−11420として、2011年(平成23年)9月28日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1 中央第6)にブタベスト条約の下で国際寄託されている。 AVFF007株は、本発明者らが京都府の池から単離したボツリオコッカス属スデティクス種に属する淡水微細藻類の新規株である。 以下に、該微細藻類の単離方法(以下、純菌化ともいう)及び該微細藻類のAVFF007株を新規株と判定するに至った経緯を説明する。(微細藻類AVFF007株の純菌化) 京都府の池から自然淡水を5mLのホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM−655S)に入れることで採取した。図1に示すC培地と、図2に示すCSi培地との1:1混合(体積比)培地を1.9mL入れた24穴プレート(アズワン株式会社、微生物培養プレート1−8355−02)に、採取してきた自然淡水を100μL加え、プラントバイオシェルフ組織培養用(株式会社池田理化、AV152261−12−2)に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約1ヵ月後、24穴プレートのウェル内に黄色い凝集物が生じたので、光学顕微鏡で観察したところ、多数の微生物の存在を確認した。 アガロース(inviterogen, UltraPureTM Agarose)を1g秤量し、200mLのC培地とCSi培地との1:1混合(体積比)培地を500mL三角フラスコに入れた。これを121℃で10分間オートクレーブ処理し、クリーンベンチ内でアズノールシャーレ(アズワン株式会社、1−8549−04)の中に、冷えて固まる前に約20mLずつ入れることで、アガロースゲルを作製した。 24穴プレート内の微細藻類を含む溶液を希釈し、ディスポスティック(アズワン株式会社、1−4633−12)のループ部分に溶液を付着させ、前記にて準備したアガロースゲル上に塗ることで、アガロースゲル上に微細藻類を塗布したシャーレを調製した。 このシャーレを、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約2週間後、緑色のコロニーが、アガロースゲル上に現れたので、滅菌竹串(アズワン株式会社、1−5980−01)を用いて、コロニーをその先端に付着させ、C培地とCSi培地との1:1混合(体積比)培地を2mL入れた24穴プレートのウェル内に懸濁させた。この様にして調製した微細藻類を含む24穴プレートをプラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約2週間後、ウェル内の水溶液が緑色を呈してくるので、すべてのウェルから少量の溶液を採取し、光学顕微鏡を用いて微細藻類を観察し、単一の微細藻類しか存在していないと考えられるウェルを見つけ出すことで、純菌化を行った。 なお、C培地及びCSi培地の組成は、図1及び図2に示す通りで、いずれも、900mLの蒸留水を121℃、10分間のオートクレーブ処理をし、10倍濃度のC培地又はCSi培地を100mL調製後、ポアサイズ0.45μmのフィルターで滅菌を行った溶液と混合することで調製した。 また、AVFF007株の40倍での顕微鏡写真を示す図を、図3に示した。(形態的性質)・分散処理を行った後にしばらく時間を置くと、底面にすべて沈む。・しばらく培養を行うと、液面上に浮くものが現れる。従って、底面に沈んでいるものと液面に浮いているものとに分かれる。さらに培養を継続すると、液面上にフィルム状の構造物が現れる。さらに培養を行うと、三次元状の構造物が現れる。・液面上に浮いているものの方が個々の微細藻類の直径は大きく、平均粒径は22.1μmであり、底面に沈んでいるものは、液面に浮いているものよりも小さく、平均粒径は7.8μmである。・液面のもの、及び、底面のもの、いずれも形態は球状であり、それぞれサイズは一定ではなく分布を持つ。・凝集性があり、巨大なコロニーを形成する。・色は緑色であり、培養の進行に伴って、黄色く変色する。・培養中及び回収物の臭いはほとんどないが、生野菜のような臭いを感じることがある。回収物中から溶媒を除去したものは、硫黄のような臭いがする。(培養的性質)・淡水中で成育し、海水中での増殖は極端に遅くなる。海水が数%混入するだけでも増殖速度に影響を及ぼす。・細胞増殖時には、遊走子によって増殖する。1個の細胞から、遊走子は数個から十数個発生する。・光合成による光独立栄養培養が可能である。・増殖には、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、マンガン、鉄が必須である。他に、亜鉛、コバルト、モリブデン、ホウ素が入っていると好適に増殖する。ビタミン類の添加も増殖を促す。(生理学的性質)・生育温度は、37℃以下である。温度が高いほど増殖性は良い。・40℃ではほとんど増殖しないが、40℃環境下でも少なくとも数時間は耐える。・生育pHは、5以上9以下である。培地の種類に依存して、生育後のpHは8以上、例えばpHが10.5になる場合がある。・光や熱を与えると、カロテノイドを生成しやすくなる。・菌体内にオイルを蓄積し、乾燥重量比で15wt%から30wt%蓄積する。・液面に浮いている藻体は、底面に沈んでいる藻体よりもオイル含有量が高い。・オイルは、炭化水素化合物と脂肪酸が主成分。脂肪酸は、C16:0, C16:1, C18:1, C18:2が主である。炭化水素化合物は、C17, C21が主である。・Nile red染色したAVFF007株を蛍光顕微鏡で観察すると、蛍光視野中の藻体において、明るい蛍光発色の領域としてNile redで発色したオイルの存在が確認される。該オイルは藻体細胞内の広い領域に蓄積されうる。・スライドガラス上にAVFF007株を含む培養液を滴下し、カバーガラスをかけて顕微鏡下観察すると、AVFF007株からオイル状の油滴が放出される。・液面に浮いている藻体は、底面に沈んでいる藻体よりも比重が軽いが、水よりも重い。・光量は、200〜800μmol/m2/sが好適に増殖できる光量であるが、40μmol/m2/s程度でも、1500μmol/m2/s程度でも好適光量の半分程度の増殖速度で増殖は可能である。 更に以下の方法に従って、AVFF007株の同定を行った。(微細藻類AVFF007株の同定) AVFF007株の培養法は、100mL容量の三角フラスコに50mLのCSi培地を導入し、1000×104個/mLのAVFF007株溶液を0.5mL添加し、25℃、光照射下で振盪培養を14日間行った。 AVFF007株の乾燥粉末を得るために、前記によって得られたAVFF007株を含む培地40mLを遠心機(MX−300(トミー精工製)を用いて、6000×g、4℃下、10分間遠心操作を行った。上清を除去した後、固形物を容器ごと液体窒素を使用して凍結し、これを予め液体窒素によって冷やしておいた乳鉢に全量移し、予め液体窒素にて冷やしておいた乳棒を用いて粉砕した。 微細藻類からのDNAの抽出は、DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen製) を用いて、記載されているマニュアルに従って抽出を行った。抽出後のDNAは、e−spect (malcom製)を用いて、純度、量を測定した。抽出後のDNAは、精製度の指標であるA260nm/A280nm=1.8以上を達成しており、約5ng/μLのDNAが取得されたことを確認した。 抽出後のDNAの純度は問題なかったことから、超純水を用いて104倍に希釈することで、PCR用の試料を準備した。PCR用の試料としては、18S rRNAの遺伝子領域(rDNA領域)を使用した。PCRは、GeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems製)を用いて、98℃10秒間、60℃50秒間、72℃10秒間のサイクルを30回行った。なお、使用した酵素は、Prime Star Max (タカラバイオ製)である。得られたPCR産物は1 %アガロース電気泳動により、単一バンドであることを確認した。 PCR生成物の精製は、PCR purification kit (Qiagen製)を用いて行った。方法は、マニュアルに記載の方法に従って行った。PCR反応が十分にできたかどうか、また、精製度を確認するために、e−spectを用いて、純度、量を測定し、A260nm/A280nm=1.8以上であったことから、問題ないと判断した。 次に、精製物を鋳型とし、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kit (Applied Biosystems製)を用いて、サイクルシークエンスを行った。条件は、マニュアルに従った。得られた反応物をABI PRISM 3100−Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystems製)を用いて、塩基配列の解読を行った。 これをBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)による相同解析を行った。方法は、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のデータ上の全塩基配列情報に対し、上記配列をBLAST検索し、最も相同性の高い生物種をAVFF007株の近縁種とした。比較対象とした塩基配列(1111塩基、配列番号1)についてのみ、図4に示した。具体的には、解読した塩基配列の両端の数塩基は、BLAST解析によって比較対象とされなかったので、図4には示さなかった。なお、図4に示した塩基配列の左上が5’末端であり、右下が3’末端である。 相同解析の結果、Botryococcus sp. UTEX2629株と、Botryococcus sp. UTEX2629株側の1118塩基中、AVFF007株側の1109塩基に相同性(すなわち、99%の相同性)があった。従って、AVFF007株は、Botryococcus sp. UTEX2629株に近縁の微細藻類であると分類した。 以上の解析の結果得られた系統図を図5に示す。AVFF007株は、Characiopodium sp. Mary 9/21 T−3wとも近縁の微生物であり、AVFF007株は、今後、Characiopodium 属に名称が変更される可能性もあり、本発明では、ボツリオコッカス スデティクスの名称が変更された場合には、AVFF007株も同様に名称が変更されるものとする。また、Characiopodium属以外の名称に変更された場合にも同様の処置が行えるものとする。(微細藻類AVFF007株の密度測定) 10mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA, Ethylenediamine−N,N,N',N'−tetraacetic acid)、5mM HEPES(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid) KOH (pH 7.5)の溶液に塩化セシウムを溶解させることで、塩化セシウム濃度10%ごとに塩化セシウム濃度が35〜105% (w/v)の溶液を調製し、Polyallomer tube (日立工機製)内にtube先端部から液面部に向かって濃度が薄くなるように濃度勾配を作成した。 このチューブの上面に5×106個/mLのAVFF007株をアプライし、遠心機を用いて、20000×g、4℃、30分間の遠心処理を行った。 液面上に浮遊している藻体の細胞密度は1.26 g/mLであり、非特許化文献3に記載のBotryococcus sp. UTEX−2629株の細胞密度、1.34 g/mLよりも軽かった。 以上から、密度の観点からもBotryococcus sp. UTEX−2629株と完全に同一のものではなく、Botryococcus sp. UTEX−2629株に近い微細藻類であると判断した。 更に、Botryococcus sp. UTEX−2629株と近縁の微細藻類であることは、非特許化文献3の図3と、図3に示したAVFF007株の顕微鏡写真を示す図とを見比べると、それらがほぼ同一の形態であることからもわかる。 なお本発明の培養方法によれば、上記AVFF007株以外の微細藻類でも、培養条件を好適な条件とすることにより、液面上でのバイオフィルムの形成が可能になると考えられる。 そのような微細藻類としては、以下に記載するASFF001株、AVFF004株、NIES−2249株等が挙げられ、バイオフィルム形成能の観点から、ASFF001株、NIES−2249株が好ましい。(微細藻類ASFF001株の純菌化) 静岡県の足湯温泉の岩上に付着していたバイオフィルムを剥ぎ取り、5mLのホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM−655S)に入れることで採取した。純菌化は、AVFF007株と同様の方法で行った。なお、培地としては、図6に示すIMK培地と図2に示すCSi培地との1:1混合物(体積比)を使用した。なお、IMK培地は、人工海水との混合物であり、人工海水としては、マリンアートSF−1(富田製薬株式会社)を使用した。また、一般的なIMK培地と異なり、本発明では、セレンを含まないIMK培地である。 また、ASFF001株の40倍での顕微鏡写真を示す図を、図7に示した。ASFF001株の性質を以下に記載する。・クロレラ サッカロフィリア(Chlorella saccharophila)と1730塩基中1725塩基の相同性あり(BLAST解析において比較対象とした塩基配列(1727塩基、配列番号2)についてのみ、図8に示した。具体的には、解読した塩基配列の両端の数塩基は、BLAST解析によって比較対象とされなかったので、図8には示さなかった。なお、図8に示した塩基配列の左上が5’末端であり、右下が3’末端である。)・光合成による光独立栄養培養が可能である。形態は、楕円形。・緑藻・サイズは5μmから20μm。大小の混合物として存在する。・液面に浮く性質を示す。(微細藻類AVFF004株の純菌化) 京都府の池から自然淡水を5mLのホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM−655S)に入れることで採取した。純菌化は、AVFF007株と同様の方法で行った。なお、培地としては、C培地とCSi培地との1:1混合物(体積比)を使用した。 また、AVFF004株の40倍での顕微鏡写真を示す図を、図9に示した。AVFF004株の性質を以下に記載する。・マキノエラ トサエンシス(Makinoella tosaensis)と1215塩基中1144塩基の相同性あり(BLAST解析において比較対象とした塩基配列(1201塩基、配列番号3)についてのみ、図10に示した。具体的には、解読した塩基配列の両端の数塩基は、BLAST解析によって比較対象とされなかったので、図10には示さなかった。なお、図10に示した塩基配列の左上が5’末端であり、右下が3’末端である。)・光合成による光独立栄養培養が可能である。形態は、楕円形若しくは水滴状。・緑藻・サイズは1μmから5μm。・液面に浮く性質を示す。 本明細書の実施例で使用した微細藻類、AVFF004株は、受託番号FERM BP−11444として、2011年(平成23年)12月21日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1 中央第6)にブタベスト条約の下で国際寄託されている。 なお、NIES−2249株は、独立行政法人国立環境研究所で購入したクロロコッカム エキノチゴツム(Chlorococcum echinozygotum Starr)である。 [本発明の方法] 本発明の培養方法の基本的な構成を図11に示した。なお、本模式図は、本発明を説明するためのものであることから、簡略化して表記されている部分がある。 図11の(a)に示した様に、まず初めに、微細藻類の懸濁溶液又は分散溶液を調製する。次に、培養容器を静置状態にしておくと、通常は、図11の(b)に示したように、微細藻類の種類に応じて、数秒から数十分で微細藻類は底面に沈む。この状態で、微細藻類をしばらく培養すると、図11の(c)に示した様に、液面上に微細藻類から構成されたバイオフィルムが形成される。なお、通常は図11の(c)に示した様に、培養容器底面にも微細藻類は存在し、図には記載していないが、培養容器側面にも存在している。 本発明では、培養の際に培養容器を静置状態にしておくことが好ましいが、激しく攪拌しない限り、振盪培養を行っても本発明と同様の培養を行うことは可能である。しかし、液面上に形成されるバイオフィルム中の藻体数が多くなることから、静置状態での培養が好ましい。また、微細藻類が培養容器の底面に沈むとは、微細藻類の大部分が底面に沈むことをいい、液面上や液中から完全に微細藻類が存在しなくなる状態を言うものではない。例えば、振盪培養を行うと、静置培養を行った場合と比べて、液面浮遊藻体は静置培養の1/6、培地中の藻体は静置培養の3.5倍、底面上の藻体は静置培養の1.4倍となり、振盪培養することにより、液面上に存在する藻体の割合が減り、培地中及び底面上に存在する藻体の割合が増える。 この液面上に形成されたバイオフィルムに対して、図11の(d)の様に、第一の基板を接触させると、第一の基板の表面にバイオフィルムが付着する(図11の(e))。この付着したバイオフィルムを第一の基板から剥離させることで、バイオフィルム(主には藻体)を回収することができる(以下、“転写による回収”ともいう)。図では、培養容器の液面全面に対して基板を接触させているが、部分的に接触させても良いし、全面若しくは部分的な接触を複数回繰り返しても良い。この様に、複数回接触させることで、液面上の微細藻類の回収効率が向上する。上記において、第一の基板の表面に、フィルム状の構造物又は三次元状の構造物を重ねるようにして転写することもできる。この中で、1m2未満の培養面積の場合には、一回の転写で、1m2以上の培養面積の場合には複数回の転写で行うことが好ましい。なお、フィルム状の構造物及び三次元状の構造物の詳細は後述する通りである。 以下に、転写による回収について、より詳細に説明する。[液面上のバイオフィルムの転写による回収] まず、第一の基板として、液面上のバイオフィルムを付着させる転写材料を準備する。ここで第一の基板とは、図11の(d)で使用する液面上の微細藻類から構成されたフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を転写し、回収するために使用する基板のことである。第一の基板は、図では培養容器の表面全体を覆う基板が使用されているが、この様に培養容器の全体を覆う基板を使用しても良いし、培養容器の一部のみを覆うことのできる第一の基板を使用しても良い。 転写材料としては、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリエステル等が使用可能であるがこれらに限定されるものではない。転写材料は、培養容器の面積よりも小さくなるように、必要によりはさみ等で切断できることが望ましい。例えば、培養容器が6穴プレートの場合には、直径約3.5cmの円形状に転写材料を切断することが好ましい。切断した転写材料は、表面のゴミを除去するために洗浄することが好ましい。なお、採取したバイオフィルムを次の培養に使用する場合には、更に消毒用エタノールに浸漬し、転写材料の表面を乾燥させた後に使用することが好ましい。 次に、切断した転写材料を培養容器が形成する液面に対して、平行、もしくは、それに近い角度になるように静かに挿入し、液面上の微細藻類を切断した転写材料に付着させる。なお、挿入を行う際、切断した転写材料を液面に対して若干斜めに挿入し、最終的に液面に対して平行にするようにすると、多くの液面のバイオフィルムを少ない転写回数で回収できることから好ましい。液面上のバイオフィルムが付着した切断した転写材料を静かに引き上げることで、培養容器の液面上からバイオフィルムを切断した転写材料に転写することができる。第一の基板による液面上のバイオフィルムの転写は、複数回行っても良い。複数回行うことによって、より転写率が向上するからである。 なお、第一の基板(例えば、切断した転写材料)からバイオフィルムを回収する方法としては、基板上から微細藻類を剥がすことのできる方法であればいかなる方法を用いても良いが、水流を加えたり、切断した転写材料を入れた容器を超音波処理したり、切断した転写材料を入れた容器の蓋を閉めた後、激しく振ったり、高速振盪処理を行ったり、セルスクレーパーのようなものを用いたりすることでバイオフィルムを転写材料から剥ぎ取ることができる。このうち、第一の基板を傷つけない素材が使用されている治具、例えば、セルスクレーパーのようなものを用いて基板からバイオフィルムを剥ぎ取る方法が好ましい。また、第一の基板は、何度でも再利用してもかまわない。 培養の状態によっては、培養容器内の液面上で増殖している微細藻類のバイオフィルムは、フィルム状から、ひだ状に培養培地内で成長することがある。この場合には、ピペットを用いてひだ状になったバイオフィルムを採取することもできる。 次に、転写による回収とは別の回収方法について説明する。 図11の(f)に示したように、液面上のバイオフィルムを第二の基板を用いてかき集めるように回収することも可能である。ここで第二の基板とは、図11の(f)で使用する液面上の微細藻類から構成されたフィルム状の構造物若しくは三次元状の構造物を回収するために使用する基板のことである。 図では、図の右側から左側に基板を移動させている。第二の基板の移動方向は、逆(すなわち、図の左側から右側への基板の移動)でも良いし、複数回回収しても良い。複数回回収を行うことによって、回収率が向上するからである。複数回回収する場合には、バイオフィルムを付着させたままの第二の基板を用いても良いし、前述の第一の基板の表面からバイオフィルムを全部もしくは部分的に除去した後の基板を第二の基板として用いても良いし、新しい基板を用いても良い。また、図11では1枚の第二の基板しか記していないが、複数枚の第二の基板を同時に用いても良い。これにより、回収率が向上する。なお、この中で第二の基板の強度が許す限り、一枚の第二の基板を用い、回収したバイオフィルムを除去した後、同一の第二の基板を用いて回収を再開することが、回収装置の設置コストの面などから好ましい。また、第二の基板の大きさ、液面に対する第二の基板の角度や移動速度などは目的に応じて自由に設定することができる。なお、図11の(g)は、第二の基板上にバイオフィルムが回収された状態である。 以下に、第二の基板による回収について、より詳細に説明する。[液面上のバイオフィルムの第二の基板による回収] 図12は、液面上にバイオフィルム(図の例においてはフィルム状の構造物)を形成させた後に、液面上に浮いている微細藻類から構成されたフィルム状の構造物を、第二の基板(スライドガラス(76×26mm))を用いて回収している様子である。 図12では、液面上のバイオフィルムに対して、スライドガラスの長辺を斜めに挿入し、そのまま左方向へと進めると共に、スライドガラス上に液面上のバイオフィルムを堆積させることによって、バイオフィルムを回収した。図の左側が、回収前のバイオフィルムが形成した液面、図の右側が、バイオフィルムを回収した後の液面を表している。 図13は、スライドガラス上にバイオフィルムが折り重なったように堆積している様子を示している。なお、第二の基板による回収は、図11の(f)から(g)への工程に相当する。また、スライドガラスの他に、ナイロンフィルム等の他の基板も第二の基板として用いることができる。また、第二の基板のサイズは、培養容器のサイズに応じて適宜変更できるが、第二の基板は、培養容器の表面積よりも小さな基板を用いる方が好ましい。 液面上のバイオフィルムを回収するタイミングであるが、培養容器内の液面がバイオフィルムで部分的に覆われている状態で回収することも可能であるが、微細藻類の藻体量が多いことから、培養容器内の液面が全てバイオフィルムで覆われてから回収することが好ましい。また、バイオフィルムが液面を全て覆いつくした後に、しばらく培養を継続してから回収を行っても良い。 特に、液面上に後述する三次元の構造物が形成された後に回収することが好ましい。三次元状の構造物は、一般的にはフィルム状の構造物における微細藻類の増殖が更に進行したときに見られる構造であり、二次元的なフィルム状の構造物と比較して、回収可能な微細藻類の量が多いこと、及び含水率がより低いことからである。 液面上のバイオフィルムを回収した後の状態が、図11の(h)である。培養容器の底面には、微細藻類が付着又は沈積している。なお、本発明の模式図では液面上への微細藻類の供給が底面から行われるように記されているが、実際には、液面および底面以外の培地中にも微細藻類が低濃度ながら存在している。また、液面及び底面から微細藻類が液中へと供給されている状態でも、本発明では、培養容器底面から液面上へと微細藻類が供給されていると記すものとする。また、培養容器底面から液面上への微細藻類の供給とは、実際に底面における微細藻類の増殖を伴わずに液面上に移動する場合と、微細藻類が底面から液面上に移動しながら増殖する場合との両方がある。 なお、培養容器は、開放系でも閉鎖系でも良いが、外部からの目的外の微生物やゴミの混入防止、風による液面藻の破壊防止、液面藻の乾燥防止、水の蒸発防止などの観点から、閉鎖系での培養の方がより好ましい。 また、液面上のバイオフィルムのみ回収しても良いし、液面上のバイオフィルム、及び底面上の微細藻類の両方を回収しても良い。これは、液面及び底面の両方の微細藻類ともバイオマスとして利用が可能だからである。 また、培養の状態によっては、培養容器内の液面上で増殖している微細藻類のバイオフィルムは、フィルム状から、ひだ状に培養培地内で成長することがある。この場合には、第二の基板の液中への挿入深度を深くすることによって、ひだ状になったバイオフィルムを採取することもできる。 なお、本発明では図11の(c)の状態のように、液面上で微細藻類を培養する培養方法を液面浮遊培養と呼ぶものとする。すなわち、微細藻類を液中及び液の底面のいずれか一方のみ、又は、両方のみで培養する培養方法は液面浮遊培養には含まれない。 なお本発明における液面とは、典型的には後述する液体培地の液面であり、通常、液体培地と空気との界面である。 更に、図11の(c)の状態のような液面浮遊培養を、静置状態にして行うことを、本発明では静置培養による液面浮遊培養と呼ぶものとする。 第二の基板からのバイオフィルムの回収は、基板上からバイオフィルムを剥がすことのできる方法であればいかなる方法を用いても良いが、第二の基板を傷つけない素材が使用されている治具、例えば、セルスクレーパーのようなものを用いることが好ましい。また、第二の基板は、何度でも再利用してもかまわない。 本発明の実施態様の一例によれば、純菌化工程を経て得られた微細藻類を、人工培地を含む液体培地中に分散させることにより、微細藻類を含む懸濁溶液又は分散溶液を調製し、培養装置中で培養を行うことにより、微細藻類のフィルム状の構造物又は三次元状の構造物を液体培地の液面上で形成させ、培養槽全体又は液面上から増殖した微細藻類を回収することができる。 上述の回収方法は、液面上に形成されたバイオフィルムの70%以上を回収することが好ましく、より好ましくは80%以上を回収することであり、更に好ましくは90%以上を回収することであり、最も好ましくは100%回収することである。液面上に形成されたバイオフィルムの回収率は例えば、目視で確認することができる。[純菌化工程] 本発明で言う純菌化工程とは、自然状態にある微細藻類の場合には、微細藻類と共に、様々な種類の生物やゴミなどが共存した状態で生育している状態を、目的の微細藻類のみに単離する工程を言う。なお、現実的には、このような完全な単離は困難であり、目的の微細藻類を主として得られれば純菌化できたと本発明では定義している。なお、本発明において主として得られるとは、顕微鏡下の観察において、数ヶ所の視野で目的以外の微細藻類が確認できなかった場合を意味する。 純菌化の方法としては、寒天培地上で微細藻類を含む希釈懸濁溶液を展開後、培養し、コロニーを形成させた後で、コロニーを採取する方法や、顕微鏡下で一匹ずつ採取する方法などが挙げられる。[前培養工程] 本発明で言う前培養工程とは、一般的には、純菌化工程を終了した後に得られた微細藻類を保存しておくが、前記保存微細藻類を増殖させ、本培養を行えるまで微細藻類の数を増やす工程のことである。前培養工程の培養法は、公知のいかなる培養方法も可能である。また、本発明の液面浮遊培養を行うことも可能である。また、前培養工程は、本培養が行える規模まで微細藻類を増殖させるために、数回の前培養工程を行っても良い。 また、一般的には、1cm2〜1m2以下の表面積を持つ培養槽を使用し、屋内外いずれでも培養可能であるが、屋内での方が好ましい。[本培養工程] 本発明で言う本培養工程とは、前培養工程を行った後の培養工程のことであり、最終回収工程を行う直前までの培養工程のことを言う。本培養工程は、複数回行っても良いものとする。 また、一般的には、100cm2以上の表面積を持つ培養槽を使用し、屋内外いずれでも培養可能であるが、屋外での培養の方が好ましい。[微細藻類の使用] 前培養、本培養を行うにあたって使用する微細藻類は、浮遊培養、液面浮遊培養、付着培養など、公知のいかなる培養法によって得られたものを使用しても良い。ただし、液面浮遊培養においては、懸濁処理を行った方が好ましい。[懸濁処理] 本発明において、懸濁処理とは、微細藻類の集合体をより小さな集合体もしくは単一の微細藻類にするためのいかなる処理方法も含むことができるものとする。例えば、ピペッティングや容器内で微細藻類の溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い処理、超音波処理や高速振盪処理などの強い処理、細胞間マトリックスのような接着物質を分解する酵素などの物質を用いる方法などを含むものとする。 懸濁処理により、微細藻類をより小さな集合体もしくは単一の微細藻類にすることによって、微細藻類凝集体のサイズが大きいものと比較して微細藻類凝集体のサイズが小さければ小さいほど、培地との接触面積が増え、その結果、微細藻類の増殖速度を向上させることができる場合があることから、好ましい。 超音波処理とは、人の耳には聞こえない高い振動数を持った振動波を、微細藻類の溶液もしくは微細藻類の溶液を保持している容器に対して直接加えることを特徴とする方法で、必ずしも密閉容器である必要はなく、また、微細藻類を含む溶液が容器の底面から離れることがない方法である。 高速振盪処理とは、振盪用密閉容器の中に微細藻類の凝集物を含む溶液を、空気層が形成できるように入れ、振盪用密閉容器全体を高速で振盪させるとともに、懸濁溶液層が振盪用密閉容器の内壁から離れたり、接触したりするような処理方法を言う。[懸濁溶液] 本発明で言う懸濁溶液とは、懸濁処理を行った溶液のことを言うものとする。[微細藻類の懸濁溶液] 微細藻類の懸濁溶液とは、微細藻類を懸濁処理することによって得られた溶液のことを言う。具体的には、図11の(a)で使用する溶液のことであり、この微細藻類は、液体中で浮遊培養したものを使用してもかまわないし、基板上に微細藻類を付着培養したものを、基板表面から微細藻類を剥がしてから使用しても良い。また、液面浮遊培養によって得られた微細藻類を使用しても良い。また、これらの少なくとも2つ以上の培養形態由来の微細藻類の混合物を使用しても良い。例えば、液面浮遊培養由来の微細藻類と液面培養時の培養容器底面上の微細藻類との混合物などが挙げられる。 懸濁処理を行うことによって、より小さな微細藻類集合体もしくは単独の微細藻類にすることができ、より均一に培養容器の底面に対して微細藻類を沈積させることができ、これら表面を有効に活用することができると共に、微細藻類が増殖に必要な光や栄養素を得やすくなることから、微細藻類の増殖速度が向上し、その結果、液面浮遊培養の増殖速度も向上すると考えられる。更に、懸濁処理を行うと、液面上の微細藻類から構成されたフィルム状の構造物の膜構造が均一となり、表面の凹凸が少なくなることから、第一の基板への転写が容易となり、その効率も良くなる。 また、前培養、本培養とも、微細藻類の増殖状態を確認するために、懸濁処理を行っても良い。この処理によって、微細藻類の数を数えることが容易になるからである。[分散処理] 本発明において、分散処理とは、微細藻類の集合体をより小さな集合体もしくは単一の微細藻類にするための処理方法であり、例えば、ピペッティングや容器内で微細藻類の溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い処理を除いた懸濁処理のことを言う。すなわち、分散処理とは、超音波処理や高速振盪処理などの強い処理、細胞間マトリックスのような接着物質を分解する酵素などの物質を用いる方法などを含むものとする。[分散溶液] 本発明で言う分散溶液とは、超音波処理や高速振盪処理などの分散処理を行った溶液のことを言うものとし、ピペッティングや容器内で微細藻類の溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い懸濁処理を行った溶液のことは言わないものとする。[微細藻類の分散溶液] 微細藻類の分散溶液とは、微細藻類を分散処理することによって得られた溶液のことを言う。具体的には、図11の(a)で使用する溶液のことであり、この微細藻類は、液体中で浮遊培養したものを使用してもかまわないし、基板上に微細藻類を付着培養したものを、基板表面から微細藻類を剥がしてから使用しても良いし、又は懸濁処理と同時に基板表面から剥がした微細藻類を使用しても良い。また、液面浮遊培養によって得られた微細藻類を使用しても良い。また、これらの少なくとも2つ以上の培養形態由来の微細藻類の混合物を使用してもかまわない。例えば、液面浮遊培養由来の微細藻類と液面培養時の培養容器底面上の微細藻類との混合物などが挙げられる。 分散処理を行うことによって、より小さな微細藻類集合体もしくは単独の微細藻類にすることができ、より均一に培養容器の底面に対して微細藻類を沈積させることができ、これら表面を有効に活用することができると共に、微細藻類が増殖に必要な光や栄養素を得やすくなることから、微細藻類の増殖速度が向上し、その結果、液面浮遊培養の増殖速度も向上すると考えられる。更に、分散処理を行うと、液面上の微細藻類から構成されたフィルム状構造物の膜構造が均一となり、表面の凹凸が少なくなることから、第一の基板への転写が容易となり、その効率も上がる。 また、前培養、本培養とも、微細藻類の増殖状態を確認するために、分散処理を行っても良い。この処理によって、微細藻類の数を数えることが容易になるからである。[沈積] 本発明で言う沈積とは、培養容器底面に対して微細藻類が近傍に存在している状態もしくは付着、もしくはその両方の状態が混在している状態を言う。微細藻類が近傍に存在している状態とは、僅かな液体培地の動きで、基板もしくは培養容器底面から微細藻類が容易に移動する状態を言う。また、沈積には、付着も含まれているものとする。本発明では、図11に示したように、微細藻類を一旦沈積することが望ましい。沈積を行うことで、液面上に増殖したことで形成される微細藻類から構成されたフィルム状の構造物が均一となり、第一の基板への転写の効率が高まるからである。[付着] 本発明で言う付着とは、基板もしくは培養容器底面に対して微細藻類が直接付着している状態を言い、僅かな液体培地の動き程度では基板もしくは培養容器底面から微細藻類がはがれない程度に付着していることを言う。また、本発明では、液体培地の液面上に形成させた微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物)が液面に浮いている状態を液面に付着しているとも表記することがある。[沈積工程] 図11の(a)から(b)の微細藻類の沈積工程は、微細藻類の懸濁溶液もしくは分散溶液を静置することで、培養容器の底面に微細藻類を沈積させる工程である。なお、図11の(c)の様に、液面上に微細藻類からなるバイオフィルム(フィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物)が部分的に形成された後に、このバイオフィルムから培養容器の底面の表面に微細藻類が沈降する可能性もあるが、本発明では、これらは沈積工程には含めないものとする。また、沈積後に、微細藻類から構成されたバイオフィルムが少なくとも液面上に目視にて確認できるまでには、微細藻類の種類にもよるが、一般的には、数日から2週間程度かかるが、この工程は、沈積工程とは言わずに、培養工程に含めるものとする。なお、この工程では、振盪状態でも進行するが、静置状態の方が沈積する微細藻類の数が多くなるため、静置状態に置くことの方が好ましい。また、本発明では、目視で見る限りはほぼすべての微細藻類が沈積するが、顕微鏡などの機器を使用しての観察を行うと、極めて少数ではあるが、液面上や液中に微細藻類が含んでいることがあるが、本発明ではその様な場合でも、微細藻類のほとんどが底面上に沈んでいることから、沈積していると記すものとする。 沈積工程において、微細藻類は、その種類に応じて1秒から1日の間で培養容器底面の表面に沈降する。沈積工程が付着を伴う場合には、より長時間を要し、培養工程と重なる場合もある。[培養工程] 微細藻類を沈積した後の工程から、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状構造物もしくは三次元状構造物)を回収する直前までの工程のことを言う。すなわち、図11の(b)から(c)までの工程もしくは図11の(h)から(c)への工程を言う。 培養工程は、沈積した微細藻類の少なくとも一部が液面上に向かって浮かび上がり、液面上に微細藻類から構成されたバイオフィルムを形成する工程である。微細藻類から構成されたバイオフィルムを形成するためには、微細藻類の増殖が必要であるが、これは、沈積した微細藻類が増殖してから液面上に供給される場合、液面上に浮いた微細藻類が液面上で増殖する場合のいずれかもしくはその両方があると考えている。 培養工程は、液面上にバイオフィルムを形成した後に、これらの構造物がさらに増殖する工程も含むものとする。また、一般的には、フィルム状の構造物を形成した後に、三次元状の構造物を形成するが、これらの過程も培養工程に含むものとする。 なお本発明における培養工程では、培養に伴う臭いが殆ど感じられない。 培養工程では、振盪培養を行ってもかまわない。これは、静置培養よりは微細藻類の数が少ないものの、液面上に微細藻類から構成されたフィルム状構造物もしくは三次元状構造物の形成が振盪培養を行っても可能だからである。しかし、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルムの増殖数を向上させる目的から、静置培養を行うことが好ましい。また、静置培養は、従来のような浮遊培養と異なって、振盪や攪拌などの動力が不要であり、動力エネルギー及び動力発生装置が不要であるため、コストを大幅に低減できることからも好ましい。 すなわち、本発明の微細藻類の培養方法は、液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、静置培養することを含むことが上記の理由から好ましい。[微細藻類の分布状態] 本発明の培養方法を用いた微細藻類の培養では、第一の基板を用いた転写又は第二の基板を用いたバイオフィルムの回収を行う直前の微細藻類の分布状態は、液中における微細藻類の個数が、液面上の微細藻類の個数もしくは培養容器底面に沈積している微細藻類の個数と比較して少ないことが特徴である。また、この時の分布状態では、液面上の微細藻類の個数の方が培養容器底面に沈積している微細藻類と比較して多い方が好ましいが、必ずしもこの限りではない。なおここでいう微細藻類の個数には、顕微鏡を用いての観察が困難な、微細藻類の細胞から発生する遊走子は含まれないものとする。 なお、液中における個数とは、液面と、培養容器の底面との中間点近傍で数えられた微細藻類の個数のことをいい、一立方センチメートルあたりの微細藻類の個数を言う。また、液面上、もしくは培養容器の底面近傍の微細藻類の個数とは、一平方センチメートルあたりの微細藻類の個数のことを言うものとする。なお、微細藻類の個数は、微細藻類の重量、乾燥重量や濁度など、微細藻類を定量可能な方法で置き換えることができるものとする。[静置培養] 本発明で言う静置培養とは、微細藻類を意識的に移動させない状態で培養する培養法のことをいう。すなわち、例えば、局所的な培地温度の変化に伴って、培地が対流し、その流れによって、微細藻類が移動することがあるが、意識的に微細藻類を移動させていないことから、この様な場合も含めて、本発明では静置培養というものとする。 本発明では、全工程において静置状態で培養すること(すなわち、静置培養すること)が好ましい。これは、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状の構造物又は三次元状の構造物)が破壊されるのを防ぐためである。微細藻類から構成されたバイオフィルムが破壊されると、第二の基板を用いた回収の効率が低下すると共に、液中もくしは培養容器底面に微細藻類が移動してしまう可能性があるからである。但し、静置状態でなくても、液面上に微細藻類から構成されたバイオフィルムを形成することは、微細藻類の数が少なくなるものの可能であるため、本発明では、静置状態での培養が好ましいが、この限りではないものとする。 本発明では、静置状態ではない状態を作り出す方法として、培養容器全体を振盪させる方法、培養容器にスターラーチップなどの攪拌子や攪拌棒で攪拌する方法、空気や高濃度二酸化炭素を含む気体をバブリングさせる方法、微細藻類の懸濁液を流動させる方法などをあげることができる。[付着培養] 本発明で言う付着培養とは、基板表面又は培養容器の壁面(例えば、培養容器の底面若しくは側面)に微細藻類が付着した状態で培養することを言うものとする。 なお、微細藻類の付着を促進させるために、異なる培地組成からなる培地を用いて、一旦基板上に付着させても良いものとする。例えば、微細藻類の付着を促進させることがあるカルシウムを添加した培地を使用することができる。カルシウムが微細藻類、特に、珪藻の付着に関与することは、例えば、Plant. Physiol. (1980) 65, 129−131.に記載されている。[浮遊培養] 本発明では、微細藻類を液中(具体的には後述の液体培地中)で培養することを浮遊培養と呼んでいる。本発明では、液面、培養容器側面や底面以外の液中に微細藻類を浮遊させながら培養している状態を浮遊培養と呼んでいる。[液面浮遊培養] 本発明では、液面上で微細藻類を培養する培養方法のことを液面浮遊培養と言う。なお、培養容器底面や培地中に微細藻類が同時に存在していても、液面浮遊培養という。また、液面浮遊培養は、液面に付着して培養していると考えることもできるため、本発明では、付着培養の一種であると扱うこともある。 また、本発明での液面浮遊培養を行っていると、液面上のバイオフィルム(フィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物)から液中へと微細藻類の集合体が浸出する現象が見られることがある。本発明では、この様な状況での培養も液面浮遊培養に含むものとしている。 本発明において、液面浮遊培養を行うと共に、上述の浮遊培養及び付着培養のいずれか一方又は両方を同時に行うことができる。 以上のように、本発明では微細藻類を培養する液体培地中の場所に従って、上述のように培養方法の名称を区別したが、上述のようにこれらは同時に行うことが可能である。すなわち、例えば、微細藻類を液面上で培養すると同時に液中に分散させた状態でも培養している場合には、液面浮遊培養と浮遊培養とを同時に行っていると言う。 液面浮遊培養、浮遊培養及び付着培養により本発明の微細藻類を培養する工程としては、例えば、ボツリオコッカス属に属する微細藻類を培養できる公知の方法が適用できる。例えば、液体培地を入れた三角フラスコ等の培養容器に微細藻類を接種して、静置しながら光照射下で通気培養すればよい。 次に、液面浮遊培養、浮遊培養及び付着培養で使用できる液体培地について説明する。[培地(液体培地)] 本発明では、微細藻類を培養できる限り、公知のいかなる培地(液体培地)も使用することが可能である。なお、培地は、培養する微細藻類の種類に応じて選択することが望ましい。例えば、前述のAVFF007株は淡水で生育するため、培地は淡水性であることが好ましい。公知の培地として、AF−6培地、Allen培地、BBM培地、C培地、CA培地、CAM培地、CB培地、CC培地、CHU培地、CSi培地、CT培地、CYT培地、D培地、ESM培地、f/2培地、HUT培地、M−11培地、MA培地、MAF−6培地、MF培地、MDM培地、MG培地、MGM培地、MKM培地、MNK培地、MW培地、P35培地、URO培地、VT培地、VTAC培地、VTYT培地、W培地、WESM培地、SW培地、SOT培地などを挙げることができる。このうち淡水性のものはAF−6培地、Allen培地、BBM培地、C培地、CA培地、CAM培地、CB培地、CC培地、CHU培地、CSi培地、CT培地、CYT培地、D培地、HUT培地、M−11培地、MA培地、MAF−6培地、MDM培地、MG培地、MGM培地、MW培地、P35培地、URO培地、VT培地、VTAC培地、VTYT培地、W培地、SW培地、SOT培地である。前述のAVFF007株を培養する培地としては、C培地、CSi培地、CHU培地、及びこれら培地の混合物が好ましく、C培地、CSi培地及びこれら培地の混合物がより好ましい。 培地は、紫外線滅菌、オートクレーブ滅菌、フィルター滅菌しても良く、しなくても良い。 なお、本発明では、液体培地がカルシウムを含むことが好ましい。すなわち、培地にカルシウムを添加することが望ましい。カルシウムが培地に入っていると、微細藻類の増殖速度が向上し、液面上のバイオフィルム(フィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物)の形成が容易となるからである。液体培地中のカルシウム濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.3mM以上であり、より好ましくは0.5mM以上である。液体培地中のカルシウム濃度の上限値は、特に限定されないが、通常100mM以下であり、好ましくは50mM以下であり、より好ましくは5mM以下である。[水深] 本発明で使用する液体培地の水深は、特に限定されないが、水深が浅い方が好ましい。これは、水深が浅いほど水の使用量が少なくなるからである。また、水を移動したりするハンドリングのための煩雑さやエネルギー使用量も小さくなるからである。さらに、培養容器の製造コストも低下するからである。水深は0.4cm以上が好ましく、1.0cm〜10mがより好ましく、2.0cm〜1mが更に好ましく、5.0cm〜30cmが最も好ましい。水深が0.4cm以上であるとバイオフィルムの形成が可能となり、水深が1.0cm以上であると、液面上にバイオフィルムが形成させるまでの間に水分が蒸発することで微細藻類の培養に好ましくない状態となることが充分に避けられ、水深が10m以下であると培地や微細藻類を含む懸濁液のハンドリングが困難になり過ぎることを避けるとともに、液中への光の吸収のため光の利用効率が低下することを抑制することができるからである。水深が、5.0cm〜30cmであると、バイオフィルムが形成されるまでの間の培地の水分の蒸発が少なく、また、培地や微細藻類を含む懸濁液のハンドリングが容易となり、水や培地中の極微量存在する微細藻類による光の吸収が最小限となることから光の利用効率が良くなる。また、水深が浅いほど二酸化炭素の供給が容易となり、光合成によって生成した酸素の大気中への放出が容易となる。 本発明によれば、基本的には液中は培養のための栄養素を供給する役割を主として担っており、微細藻類が育成、増殖するために使用される空間としての役割は小さい。そのため、液体培地の深さを浅くすることができ、これにより培地液量の大幅な削減が可能である。これにより、水や培地コストが大幅に低下するだけでなく、液体を移動させたりするためのハンドリングも容易になる。また、使用済み培地の処理コストも液体培地量が少ないことから容易となる。更に、水深の浅さは、気相中の二酸化炭素(CO2)の液体培地槽全体への拡散にも有利である。また、培養池の水深が深くなればなるほど、光量が培地によって吸収されてしまうが、深さが浅いため、吸収による光量の低下は最小限である。[二酸化炭素] 本発明では、培地中に意図的に二酸化炭素を供給する手段を用いずに培養する方が好ましい。すなわち、培地中への二酸化炭素を含む気体をバブリングによって供給する方法は用いない方が好ましい。これは、液面上の微細藻類からなるバイオフィルム(フィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物)が、バブリングにより破壊されるのを防ぐためである。ただし、破壊が部分的である場合には、バブリングによって二酸化炭素を供給しても良いものとする。また、バブリングによって、液面上に微細藻類を浮かせる方法が、特開2001−340847、特開2007−160178、特開昭62−213892、特開平1−131711などで公開されているが、この方法によって液面上に微細藻類を強制的に浮かせると共に、二酸化炭素を供給する手段を採用しても良いものとする。バブリングを用いない方法は、二酸化炭素を供給するガスの配管を設置する必要がないこと、二酸化炭素供給源、例えば、火力発電所や製鉄所などの周辺の土地の確保が一般的には困難であること、広大な面積に対して均一に二酸化炭素を供給するための制御が非常に困難であることなどから、気相中の二酸化炭素を直接使用できることは、大幅なコストダウンにつながることから非常に有利である。 本発明では、意図的に二酸化炭素を培地内へと供給する手段を用いない方が好ましいとしているが、気相中の二酸化炭素が液面上の微細藻類もしくは微細藻類の存在していない領域を経由して、培地内へと二酸化炭素が供給される場合は、前記の手段に相当しないものと定義している。なお、液面上に微細藻類から構成されたフィルム状の構造物が形成される前は、培地の液面と二酸化炭素を含む気体とが直接接触している部分が多く存在しているが、この場合には、液面を介して二酸化炭素が培地中へと溶解するが、これは意図的に二酸化炭素を供給していると言わないものとする。また、液面上にフィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物が形成された後でも、フィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物を経由して、二酸化炭素が培地中に溶解するが、この場合も意図的に二酸化炭素を培地中へと供給していないものとする。 本発明では、大気中の二酸化炭素を使用することが、コスト面で有利であることから望ましいが、大気中濃度よりも高い濃度の二酸化炭素の利用も可能である。この場合には、拡散による二酸化炭素の損失を防ぐために、閉鎖型の培養容器で培養することが望ましい。この場合における気相中の二酸化炭素の濃度は本発明の効果が達成できる限り特に限定されないが、好ましくは大気中の二酸化炭素濃度以上、20体積%未満であり、好ましくは0.1〜15体積%であり、より好ましくは0.1〜10体積%である。 なお、大気中の二酸化炭素濃度は、一般に0.04体積%程度と言われている。 すなわち本発明によれば、大気中の二酸化炭素を利用できる利点もある。これは、大きく成長して欲しい微細藻類が液面上にあることから、気相中の二酸化炭素を取り込みやすいためである。その場合には、二酸化炭素の配管やバブリングが不要であり、藻体生産のコストを低減することができる。 また、本発明の方法では、気液表面上での培養であることから、藻体の乾燥による死滅が少ない。[その他培養条件] 培養開始直後の液体培地(以下、液体培地のことを培養溶液とも言う)のpHは2以上11以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくはpHが5以上9以下の範囲内であり、pHが5以上7以下の範囲が最も好ましい。これは、微細藻類の増殖速度を好適に増加させることができるとともに、CSiFF03培地のような高pHで沈殿物を発生し易い培地は、pHが弱アルカリ側では沈殿物が若干発生してしまうが、弱酸性にすると沈殿物がほとんど発生しなくなるからである。また、底面上の藻と比較して、液面上の藻の数が多くなることからも、弱酸性条件下で培養を行うことが望ましい。また、微細藻類の種類に依存して、好適なpHは変化することから、微細藻類の種類に応じたpHを選択するのが好ましい。なお、液体培地のpHとは、培養開始時のpHのことである。また、培養開始直後と培養開始後のpHは、微細藻類の増殖に伴って変化する場合があることから、培養開始直後の液体培地のpHは、微細藻類の回収時のpHと異なっていても良いものと本発明ではしている。 培養温度は、微細藻類の種類に応じて選択することができるが、0℃以上90℃以下であることが好ましい。より好ましくは、15℃以上50℃以下であり、特に好ましくは、20℃以上40℃未満である。培養温度が20℃以上40℃未満であると、微細藻類の増殖速度が十分速く、特に、37℃での培養が最も増殖速度が速い。 微細藻類の下限初期藻体濃度は、培養溶液中に藻体が1個あれば、時間をかけさえすれば増殖は可能であるため、その制限は特に設けないが、好ましくは1個/mL以上であり、より好ましくは1000個/mL以上であり、更に好ましくは1×104個/mL以上である。微細藻類の上限初期藻体濃度は、どの様な高濃度でも増殖が可能であるため、その制限は特に設けないが、ある濃度以上であると藻体濃度が高ければ高いほど、投入藻体数と増殖後の藻体数の比が低下することから、10000×104個/mL以下が好ましく、1000×104個/mL以下がより好ましく、500×104個/mL以下が更に好ましい。 本発明では、一度培養に使用した培地を、新しく調製した培地に混合して使用することができる。この様にすることで、微細藻類の育成量が減少する場合があるが、水の使用量を削減することができる。また、前記の微細藻類の育成量の低下を抑制するための方法として、高濃度培地を添加する方法が考えられ、本発明ではこれらの方法を用いることができる。 本発明では、液面浮遊培養する場合の前培養期間は、1日以上300日以下が好ましく、3日以上100日以下がより好ましく、7日以上50日以下が更に好ましい。 液面浮遊培養の期間としては、当該微細藻類が生育する限り培養を継続することができ、通常、1〜100日間で行うことが好ましく、7〜50日間で行うことがより好ましく、10〜30日間で行うことが更に好ましい。 本発明では、培地中のpHを一定に保つ緩衝作用を持った物質を培地中に添加することも可能である。一般的に、微細藻類は生存や増殖に伴って菌体外に様々な物質を放出することが知られているが、放出する物質によっては、培地中のpHを変化させ、微細藻類の培養が好適に行われないような環境へと変化してしまうことも考えられる。この様な現象を回避するために、緩衝作用を持った物質を添加することが好ましい。更に、微細藻類は二酸化炭素を炭素源として利用し、増殖するが、二酸化炭素の培地中への溶解に伴って、培地のpHが低下し、微細藻類の培養が好適に行われないような環境へと変化してしまうことも考えられる。この様な現象を回避するためにも、緩衝作用を持った物質を添加することが好ましい。緩衝作用を持った物質としては、公知の物質を使用することができ、その使用には制限がないが、4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid(HEPES)や、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液などを好適に用いることができる。これら、緩衝物質の濃度や種類は、微細藻類の培養環境に応じて決めることができる。[培養容器] 本発明に用いることのできる培養容器(培養池)の形状は、微細藻類の懸濁溶液を保持できる限りにおいて、公知のいかなる形態の培養容器でも用いることができる。例えば、円柱状、方形状、球状、板状、チューブ状、プラスチックバッグなどの不定形状のものを使用することができる。また、本発明で使用可能な培養容器は、オープンポンド(開放池)型、レースウェイ型、チューブ型(J. Biotechnol., 92, 113, 2001)など様々な公知の方式を用いることができる。培養容器として使用することの可能な形態は、例えば、Journal of Biotechnology 70 (1999) 313−321, Eng. Life Sci. 9, 165−177 (2009). に記載の培養容器をあげることができる。これらの中で、オープンポンド型もしくはレースウェイ型を用いることが、コスト面からは好ましい。 本発明で使用可能な培養容器は、開放型、閉鎖型のいずれも使用することができるが、培養目的以外の微生物やゴミの混入防止、培地の蒸発抑制、風による液面上のバイオフィルムの破壊や移動の防止、大気中の二酸化炭素濃度以上の二酸化炭素を使用した際の、培養容器外への二酸化炭素の拡散を防ぐために、閉鎖型の培養容器の方が好適に用いることができる。[光源及び光量] 前記光照射において用いることのできる光源は、いかなる光源も用いることができるが、太陽光、LED光、蛍光燈、白熱球、キセノンランプ光、ハロゲンランプなどを用いることができ、この中でも、自然エネルギーである太陽光、発光効率の良いLED、簡便に使用することのできる蛍光燈を用いることが好ましい。 光量は、100ルクス以上100万ルクス以下であることが好ましく、300ルクス以上50万ルクス以下が更に好ましい。最も好ましい光量は、1000ルクス以上20万ルクス以下である。光量は、多ければ多いほど微細藻類の増殖速度が向上するため好ましいが、1000ルクス以上であると、微細藻類の成長速度が充分に速く、20万ルクス以下であると、光障害の発生が抑えられ、微細藻類の増殖速度が減少したり、死滅する割合の増加を充分に抑えることができる。 光は、連続照射、及び、ある一定の時間間隔で照射、非照射を繰り返す方法のいずれでもかまわないが、自然の状態に近いことから、12時間間隔で光をON、OFFすることが好ましい。なお、実験の結果から、液面浮遊培養は、培養開始直後は、連続照射が、培養中期から培養後期には、12時間間隔で光をON、OFF照射することが好ましい。 光の波長は、特に制限を設けないが、光合成が行える波長であれば、どの様な波長でも用いることができる。好ましい波長は、太陽光もしくは太陽光に類似の波長であるが、単一の波長を照射することで光合成生物の育成速度が向上する例も報告されており、本発明でもこの様な照射方法を用いることが好ましい。一方でコストの観点では、単一の波長の光を用いた照射よりも、波長を制御しない光を用いた照射がコスト的に有利であり、太陽光を用いるのがコストの観点では最も有利である。[液面上に形成されたバイオフィルム] 本発明は、本発明の微細藻類の培養方法により、液面上に形成されたバイオフィルムにも関する。 バイオフィルムとは、通常、フィルム状の構造物であり、微細藻類がお互いにつながりあうことで、フィルム状の構造を形成している状態のことを言う。微細藻類がお互いにつながりあうためには、例えば、微細藻類から細胞間マトリックスなどのような物質(例えば、多糖等)を放出し、それらの化学的な作用によって、微細藻類同士を結び付けている。すなわち、弱い水流の動き程度ではお互いが離れない程度に結合している状態のことを言う。一般的には、この様なフィルム状の構造物のことを生物膜などと表記される場合も多い。 本発明に係るバイオフィルムは、微細藻類AVFF007株により形成された、フィルム状の構造物又は後述する立体的な三次元状の構造物であることが好ましい。 本発明に係るバイオフィルムは、培養容器全面に渡って、微細藻類凝集物の切れ目がない均一なフィルム状の構造物であっても良いが、そのようなフィルム状の構造物の一部が気泡状に盛り上がり形成された立体的な三次元状の構造物であっても良い。また、このような立体的な三次元状の構造物の一部が、更に気泡状に盛り上がり形成された複雑な構造物であっても良い。フィルム状構造物の一部が気泡状に盛り上がる現象は、微細藻類の増殖の進行に伴って観察される。なお気泡状に盛り上がる現象は、微細藻類の増殖の際にCO2を固定することによって排出された酸素によるものと推定される。また、三次元状の構造物を形成した場合、光源に近い部位に微細藻類が多く存在している構造であっても良い。 気泡状に盛り上がり形成された立体的な三次元状の構造物は、培養容器内に多数あっても良く、それぞれのサイズは異なっていても良い。 三次元状の構造物が発達するほど、微細藻類の存在箇所が液面から離れるようになり、かつ、光源に近くなる。このことは、液面からの水分の供給が減少し、かつ、光照射による熱の拡散がしにくくなり、その結果、液面から離れた箇所に存在する微細藻類ほど含水率が低下する。含水率の低下は、回収工程後のオイル抽出工程を行う際の脱水工程の簡略化を可能とし、微細藻類を用いたバイオマス生産のコスト削減に対して有利である。また、一般的には、回収工程の際に、遠心分離機を用いて、微細藻類の含水率を下げる処理を行うが、本発明の培養方法による回収法では、遠心分離機により得られた微細藻類の含水率よりも低い含水率にすることも可能である。 また、微細藻類の増殖の進行に伴って、フィルム状の構造物には、しわ状の構造が現れることがあるが、フィルム状の構造物はこの様な構造を伴っていても良い。 更に、微細藻類の増殖の進行に伴って、フィルム状の構造物又は立体的な三次元状の構造物には、ひだ状又はカーテン状の構造を培地中に形成することがあるが、フィルム状の構造物又は立体的な三次元状の構造物はこの様な構造を伴っていても良い。 以上のように、フィルム状の構造物又は立体的な三次元状の構造物は、しわ状、ひだ状、カーテン状の構造を伴っても良く、或いは、フィルム状の構造物は気泡状の構造を伴って形成される立体的な三次元状の構造物となっても良く、その様な構造を伴うことによって、単位面積あたりの藻体量が増加する点から好ましい。 フィルム状の構造物の面積は、液面上に存在しているフィルム状の構造物の断片が、基板を用いて回収を行う際に、基板から液面を介して逃げない程度の面積であることが好ましく、培養容器全面に渡って、フィルム状の構造物の切れ目がないことがより好ましい。例えば、この様な面積として、1cm2以上をあげることができ、好ましくは10cm2以上である。最も好ましくは、100cm2以上である。この様な面積の上限は培養容器の液面の面積以下であれば特に限定されない。 フィルム状の構造物の厚さは、通常、1μm〜10000μmの範囲であり、1μm〜1000μmの範囲であることが好ましく、10μm〜1000μmの範囲であることがより好ましい。 本発明に係るバイオフィルムが、フィルム状の構造物の一部又は複数の部分において気泡状に盛り上がり形成された立体的な三次元状の構造物である場合、培地の液面を基準とした該三次元状の構造物の高さは通常、0.01mm〜100mmの範囲であり、0.1mm〜20mmの範囲であることが好ましく、5mm〜20mmの範囲であることがより好ましい。 本発明に係るバイオフィルムの単位面積あたりの乾燥藻体重量は、0.001mg/cm2以上であることが好ましく、0.1mg/cm2以上であることがより好ましく、1mg/cm2以上であることが特に好ましい。最も好ましくは、5mg/cm2以上である。単位面積あたりの乾燥藻体重量が大きい方が、採取されるオイルなどのバイオマスの量が大きくなることが見込まれるからである。バイオフィルムの単位面積あたりの乾燥藻体重量は通常100mg/cm2以下である。 また本発明に係るバイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度は、10万個/cm2以上であることが好ましく、100万個/cm2以上であることがより好ましく、1000万個/cm2以上であることが特に好ましい。バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度が10万個/cm2未満では、液面上にバイオフィルムの形成が確認できず、微細藻類の回収性が悪くなる。一方、バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度が1000万個/cm2以上であれば、膜密度が高く、強固なバイオフィルムが液面上に形成され、回収性が向上する。バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度の上限値は、多ければ多いほど好ましいため特に限定されないが、通常、100億個/cm2以下である。 本発明に係るバイオフィルムは、水分を除去する工程の省力化とコストダウンの観点から、含水率が低いことが好ましい。具体的には、バイオフィルムの含水率は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが特に好ましく、70質量%以下が最も好ましい。バイオフィルムの含水率は通常50質量%以上である。なお、含水率は、乾燥前の藻体の重量から乾燥後の藻体の重量を差し引いた値に対して、乾燥前の藻体の重量で割って、100を掛けたものである。 また本発明に係るバイオフィルムは、バイオマスとしての有用性の観点から、オイル含有量が高いことが好ましい。具体的には、バイオフィルムの乾燥藻体あたりのオイル含有量が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。バイオフィルムの乾燥藻体あたりのオイル含有量は通常80質量%以下である。 また本発明の微細藻類としては、上記の構造や、上記範囲の面積、厚さ、単位面積あたりの乾燥藻体重量、含水率、オイル含有量を有するバイオフィルムを液面上に形成可能な微細藻類であることが、上記と同様の理由で好ましい。[回収工程] 回収工程とは、図11の(d)から(e)に示されるように、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物)を第一の基板に転写した後、第一の基板からバイオフィルムを剥ぎ取る工程、又は、図11の(f)から(g)に示されるように、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物)を第二の基板を用いて回収する工程のことである。 本発明は、液面上に形成されたバイオフィルムを、基板(第一の基板)に転写させて回収する、バイオフィルムの回収方法にも関する。 また本発明は、液面上に形成されたバイオフィルムを、基板(第二の基板)に堆積させて回収する、バイオフィルムの回収方法にも関する。 第一の基板からのバイオフィルムの回収は、バイオフィルムを第一の基板から剥離させることが可能な方法であればいかなる公知の方法を使用することもできる。例えば、セルスクレーパーのようなものを用いて基板からバイオフィルムを剥ぎ取る方法、水流を用いる方法、超音波を用いる方法などをあげることができるが、セルスクレーパーのようなものを用いる方法が好ましい。これは、他の方法では、バイオフィルムが培地などで薄められることになり、再度濃縮が必要な場合があり、非効率であるからである。 第二の基板からのバイオフィルムの回収は、バイオフィルムを第二の基板から剥離させることが可能な方法であればいかなる公知の方法を使用することもできる。例えば、重力による方法、セルスクレーパーのようなものを用いて基板からバイオフィルムを剥ぎ取る方法、水流を用いる方法、超音波を用いる方法などをあげることができるが、重力による自然落下を利用した方法、もしくは、セルスクレーパーのようなものを用いる方法が好ましい。これは、他の方法では、バイオフィルムが培地などで薄められることになり、再度濃縮が必要な場合があり、非効率であるからである。また、重力による自然落下を用いてバイオフィルムを回収した後に、セルスクレーパーのようなものを用いて、第二の基板上に残存している藻を回収することもできる。[全量回収] 全量回収とは、培養容器中のすべての微細藻類を回収することである。すなわち、沈積した微細藻類、液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルム(フィルム状の構造物もしくは三次元状の構造物)の全てを回収することである。この様な回収法は、培養を終了する場合、別の微細藻類を培養する場合、培養容器中の培地を入れ替える場合などでも行うことができる。液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルムを、第一の基板を用いた転写、もしくは第二の基板による回収を行った後、培地を除去し、残った培養容器底面上の微細藻類を回収しても良い。さらに、培養容器中の全微細藻類を公知の方法によって回収しても良い。前記の公知の方法としては、フィルターによる回収、凝集剤による回収などが挙げられる。 例えば、液面上の微細藻類のバイオフィルムを回収した後に、培養容器底面上の微細藻類を回収することができる。 また、液面上の微細藻類からなるバイオフィルムを回収した後に、培養容器中の培養溶液を除去し、培養容器底面もしくは第一の基板の表面上の微細藻類を回収してもよい。[バイオフィルムの転写] 本発明で言う転写とは、付着の一種で、実質的に増殖を伴わない付着である。本発明では、第一の基板を用いて、液面上に形成されたバイオフィルムを、実質的にそのままの形で第一の基板の表面に移し採る操作を言う。 バイオフィルムの転写は、図11の(d)に示したように、第一の基板を用い、液面上に形成させたバイオフィルムを基板の表面へと転写させる工程である。図では、培養容器内の全面にバイオフィルムが形成されており、この様な状態で回収工程を行っているが、この様な状態での回収を行っても良いし、微細藻類からなるバイオフィルムが部分的に存在していない状態がある場合でも本発明では回収工程を行うことができる。また、本発明のような方法で培養を行っていると、液面上に形成されたバイオフィルムがしわ状になったり、折り重なる様になったりすること、ひだ状の微細藻類から構成されたフィルム状の構造物がオーロラ(カーテン状)の様に液中に生育する場合もある。本発明では、この様な状態でも回収を行うことが可能であり、このような方法による、回収法、培養法も本発明に含めることができる。[基板] 本発明でいうところの基板とは、図11の(d)又は図11の(f)で使用する液面上の微細藻類から構成されたバイオフィルムを、転写又は回収するために使用する基板のことを言う。 第一の基板の表面及び第二の基板の表面とは、基板のあらゆる表面のことを言い、基板の上面、基板の底面、基板の側面のことをいうものとする。なお、これらの表面に微細藻類が付着していても、培養容器などに接触しており、基板と培養容器などの表面との間に形成される層から微細藻類が培養溶液中に出ることができない場合には、本発明の表面ではないものとする。 基板の形状は、フィルム状、板状、繊維状、多孔質状、凸状、波状などいかなる形状のものでも良いが、付着や沈着、転写などのしやすさ、および基板からの微細藻類の回収のしやすさから、フィルム状又は板状であることが好ましい。 第一の基板及び第二の基板はそれぞれ同一の形状でもよいし、それぞれ別の形状でもよい。第一の基板及び第二の基板の面積は、好ましくは培養容器中の培養溶液液面の面積よりも小さい方が好ましい。[素材] 本発明で使用可能な培養容器、第一の基板、及び第二の基板の素材は、特に限定することはなく、公知のものを使用することができる。例えば、有機高分子化合物や無機化合物、それらの複合体から構成された素材を使用することができる。また、それらの混合物を用いることも可能である。 有機高分子化合物としては、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル誘導体、ポリエステル誘導体、ポリアミド誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリプロピレン誘導体、ポリアクリル誘導体、ポリエチレンテレフタレート誘導体、ポリブチレンテレフタレート誘導体、ナイロン誘導体、ポリエチレンナフタレート誘導体、ポリカーボネート誘導体、ポリ塩化ビニリデン誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリエーテルスルホン誘導体、ポリアリレート誘導体、アリルジグリコールカーボネート誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体誘導体、フッ素樹脂誘導体、ポリ乳酸誘導体、アクリル樹脂誘導体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等などを用いることができる。 無機化合物としては、ガラス、セラミックス、コンクリートなどを用いることができる。 金属化合物としては、鉄、アルミニウム、銅やステンレスなどの合金を用いることができる。 上記の中でも、第一の基板、第二の基板、若しくは培養容器の素材の一部は、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリエステルの中から選ばれる少なくとも一つから構成されていることが好ましい。 また、培養容器、第一の基板、第二の基板の素材が同一であっても良く、異なっていても良い。 また、閉鎖型の培養容器を用いる場合には、受光面は、光が透過する素材である方が良く、透明材料であれば更に良い。[基板の表面凹凸] 本発明では、基板の表面に凹凸を形成させることもできる。基板の表面に凹凸を形成させることによって、付着表面積が増加すること及び藻体の付着、転写、回収安定性が向上する場合がある。[底面] 本発明で言う底面には、培養容器の底面以外の部分も含めることができる。例えば、培養容器の側面や液中に浸漬したセンサーなどの表面をあげることができる。側面の影響は、培養容器が小さくなればなるほど大きくなる。[バイオマス及びオイル] 本発明は、本発明の微細藻類により液面上に形成されたバイオフィルムから得られるバイオマス及びオイルにも関する。 本発明において、「バイオマス」とは、化石資源を除いた再生可能な生物由来の有機性資源をいい、例えば、生物由来の物質、食料、資材、燃料、資源などが挙げられる。 本発明において、「オイル」とは、可燃性の流動性物質のことであり、主として、炭素、水素から構成された化合物のことであり、場合によっては、酸素、窒素などを含む物質のことである。オイルは、一般的に混合物であり、ヘキサンやアセトンなどの低極性溶媒を用いて抽出される物質である。その組成は、炭化水素化合物や脂肪酸、トリグリセリドなどから構成されている。また、エステル化して、バイオディーゼルとして使用するものもある。 本発明に係るバイオフィルムに含まれるバイオマス及びオイルを採取する方法としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に制限されない。 バイオマスの一例であるオイルの一般的な回収方法は、バイオフィルムを加熱乾燥させて、乾燥藻体を得た後、必要に応じて細胞破砕を行い、有機溶媒を用いてオイルを抽出する。抽出されたオイルは、一般的に、クロロフィルなどの不純物を含むため、精製を行う必要がある。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによるもの、蒸留(例えば、特表2010−539300に記載の蒸留方法)によるものなどがある。 また、高濃度の微細藻類の溶液を調製した後、超音波処理によって微細藻類を破砕したり、プロテアーゼや酵素などによって微細藻類を破砕したりした後、有機溶媒を用いて藻体内のオイルを抽出する方法もある(例えば、特表2010−530741に記載の方法)。 このように、本発明に係るバイオフィルムは、バイオマス燃料として有用である。すなわち、本発明は、本発明に係るバイオフィルムの回収方法により回収されたバイオフィルムを燃料として使用する、バイオマス燃料の製造方法にも関する。[乾燥藻体] 本発明における乾燥藻体は、本発明にかかるバイオフィルムを乾燥させたものである。 当該バイオフィルムを乾燥させる方法としては、バイオフィルム中の水分を除去できる方法であれば特に制限されない。例えば、バイオフィルムを天日干しにする方法、バイオフィルムを加熱乾燥させる方法、バイオフィルムを凍結乾燥(フリーズドライ)する方法、バイオフィルムに乾燥空気を吹き付ける方法等が挙げられる。これらのうち、バイオフィルムに含まれる成分の分解を抑制できる観点からは、凍結乾燥する乾燥方法が、短時間で効率的に乾燥できる観点からは、加熱乾燥する方法が好ましい。 以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。[実施例1]<AVFF007株による液面上でのバイオフィルム(フィルム状の構造物)の形成> 純菌化を行ったAVFF007株を含む溶液全量を5mLのホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM−655S)に入れ、ビーズ式細胞破砕装置(MS−100、トミー精工株式会社)にセットし、4200rpmで20秒間のホモジナイズ処理を3回行うことで、AVFF007株の懸濁溶液を得た。 この溶液を40mLのCSi培地を入れた三角フラスコに全量入れ、5%CO2雰囲気下のデシケーター中で静置培養(以下、前培養とも言う)した。なお、培養は、温度23℃、光量2000ルクスで行った。 前記の三角フラスコから微細藻類を含む溶液を採取し、5mLのホモジナイズ用チューブに入れ、ビーズ式細胞破砕装置にセットし、4200rpmで20秒間のホモジナイズ処理を3回行った。なお、ここでは細胞破砕用ビーズは使用していない。 この溶液から50μLの微細藻類懸濁液を採取し、予めCSi培地を950μL添加しておいたホモジナイズ用マイクロチューブの中に入れ、ビーズ式細胞破砕装置にセットし、5500rpmで20秒間のホモジナイズ処理を行った。なお、ここでも細胞破砕用ビーズは使用していない。この溶液を約10μL採取し、血球計数板上でカウントしたところ、5mLホモジナイズ用チューブ内の藻体濃度が695×104個/mLであった。 50mL遠沈管(MS−57500, 住友ベークライト株式会社)にCSi培地を50mL入れ、前記5mLチューブ内の微細藻類懸濁液を720μL添加し、これを良く攪拌させた後、6穴プレートに8mLずつ添加した。 培養は、プラントバイオシェルフ組織培養用(株式会社池田理化、AV152261−12−2)を用いて行い、前記6穴プレートを真空デシケーター(アズワン株式会社、1−070−01)内に設置することで行った。4000ルクス、室温(23℃)、光照射ONとOFFとを12時間毎に切り替える条件下(以下、“12時間ON−OFF照射”、“12時間のON−OFF制御”ともいう)で、静置培養を行った。また、真空デシケーター内のCO2濃度は、10%である。 液面浮遊培養途中で6穴プレートを真空デシケーターから取り出し、光学顕微鏡を用いて液面上を直接観察した。観察結果を図14に示した。図14の左側が光学顕微鏡の倍率4倍で観察した結果であり、図14の右側が光学顕微鏡の倍率40倍で観察した結果である。液面浮遊培養1日目までは、液面上にAVFF007株はほとんど存在しておらず、培養2日目で若干存在しだし、培養6日目では、顕微鏡で見る限りは液面上をほぼAVFF007株が覆い尽くしていた。培養7日目には、目視でしっかりとしたフィルム状の構造物が液面上に形成されているのを確認することができ、培養12日目には、液面上のAVFF007株は増殖のための表面積を稼ぐために、しわがよったような状態にまで増殖した。 以上の結果から明らかのように、本発明の微細藻類であるAVFF007株は液面上にバイオフィルムを形成可能である。[実施例2]<AVFF007株による液面上でのバイオフィルム(フィルム状の構造物の一部又は複数の部分において気泡状に盛り上がり形成された立体的な三次元状の構造物)の形成> 実施例1と同様の方法で微細藻類AVFF007株の前培養を28日間行った。前培養後、液面上のAVFF007株を回収し、ホモジナイズ用5mLチューブの中に全量入れることで、3mLのAVFF007株の懸濁溶液を調製した。調製したAVFF007株の懸濁溶液の藻体濃度を、実施例1と同様にカウントしたところ、32389×104個/mLであった。 500mLガラス製三角フラスコに図15に示すCSiFF04培地を350mL、前記藻類AVFF007株の懸濁溶液を540μL添加することで、AVFF007株の濃度が50×104個/mLの溶液を調製した。 この溶液をPS製ケース28型(アズワン株式会社、素材はポリスチレン)のそれぞれの容器に40mL(水深1.5cm)ずつ入れたものを3個準備した。真空デシケーターの中に、すべてのPS製ケース28型のフタをしない状態で入れ、5%CO2雰囲気下にして、真空デシケーターの扉を閉めた。なお、二酸化炭素は、評価日ごとに新たに調製した。 これをプラントバイオシェルフに設置し、15000ルクス、23℃、光照射ONとOFFとを12時間毎に切り替える条件下、静置培養による液面浮遊培養を行った。 4、7、10日間の液面浮遊培養後、図12について説明した方法と同様の方法で、液面上のバイオフィルムを回収し、バイオフィルムを加熱乾燥することで乾燥重量を測定した。なお、14日間の液面浮遊培養後における、液面上のバイオフィルムは、図16に示した様に、気泡状に盛り上がり形成された立体的な構造物が重なり合い、三次元状の構造物を形成していた。また、液面から離れた位置の微細藻類は、水分量が減少している様に思われ、更に、黄色から薄茶色に変色していた。ボツリオコッカスなどのオイル蓄積藻類は、オイルを蓄積すると緑色から茶色や黄色、赤色などに着色することが知られており、これらのことから、上記バイオフィルム中のAVFF007株はオイルを蓄積していると考えられた。 液面浮遊培養日数と、各液面浮遊培養日数におけるバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を図17に示した。液面浮遊培養開始から10日後には、乾燥藻体重量は12.6mg/cm2に達していた。液面浮遊培養開始から10日目の間では、13g/m2/day、4日目から10日目の間では、20g/m2/day、7日目から10日目の間では、32g/m2/dayの増殖速度に達していた。なお図17から明らかのように、実施例2における液面上のAVFF007株の対数増殖期は4日目から10日目の間である。 また、液面浮遊培養日数と、各液面浮遊培養日数におけるバイオフィルムの最大高さ(cm)との関係を図18に示した。バイオフィルムの最大高さは、液面上に形成されたバイオフィルムにおいて、液面からの高さが最大であった位置におけるバイオフィルムの高さを測定した値である。図18から明らかのように、4日目以後に最大高さが急激に増加しており、この間にフィルム状の構造物から三次元状の構造物へと構造が変化していったことが分かる。 更に、形成したバイオフィルムにおいて、液面から離れた位置に存在していた微細藻類は水分量が低下しているように思えたため、実施例2におけるバイオフィルムの含水率は低いものと考え、その含水率を算出した。バイオフィルムの含水率は、乾燥前の藻体の重量から乾燥後の藻体の重量を差し引いた値に対して、乾燥前の藻体の重量で割って、100を掛けたものである。 液面浮遊培養日数と、各液面浮遊培養日数におけるバイオフィルムの含水率との関係を図19に示した。一般的に、浮遊培養での培養を行った後、凝集剤によって微細藻類を培養容器底面に沈降させ、これを回収した後に遠心分離器によって回収可能な藻体の含水率は約90質量%である。本微細藻類AVFF007株の場合、基板を用いた回収を行うだけで、含水率は約90質量%となる。更に液面浮遊培養が進行するに伴って、液面上の三次元状の構造物が発達し、液面から離れた位置の微細藻類中の水分が蒸発しだし、基板によって回収したバイオフィルムの含水率を更に低下させた。 この様に、本発明での液面浮遊培養法によって回収したバイオフィルムの含水率は、遠心分離機(通常、含水率約90質量%)によって得られた微細藻類の回収物よりも含水率を低くすることができる。換言すると、本発明の微細藻類により液面上に形成したバイオフィルムは、回収が容易であるだけでなく、含水率が低く、水分を除去する工程の省力化が可能となり、続くオイル抽出工程(乾燥工程などを含む)等の工程でのコストダウンを期待することができる。[実施例3]<液面培養を行った場合のオイル含有量> 純菌化を行ったAVFF007株を含む溶液を、40mLのC培地とCSi培地との混合培地(体積比1:1)を入れた乾熱滅菌済みの100mL三角フラスコの中に入れ、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で静置培養(以下、前培養とも言う)を行った。 前記の三角フラスコから微細藻類を含む溶液を採取し、5mLのホモジナイズ用チューブに入れ、ビーズ式細胞破砕装置にセットし、4200rpmで20秒間のホモジナイズ処理を、細胞破砕用ビーズを用いずに3回行った。 この溶液から50μLの微細藻類懸濁液を採取し、予めCSi培地を950μL添加しておいたホモジナイズ用マイクロチューブの中に入れ、ビーズ式細胞破砕装置にセットし、5500rpmで20秒間のホモジナイズ処理を、細胞破砕用ビーズを用いずに行った。この溶液を約10μL採取し、血球計数板上でカウントしたところ、5mLホモジナイズ用チューブ内の藻体濃度が4975×104個/mLであった。 50mL遠沈管にCSi培地を50mL入れ、前記5mLチューブ内の微細藻類懸濁液を361.8μL添加し、これを良く攪拌させた後、6穴プレートに8mLずつ添加し、プラントバイオシェルフ組織培養用上で、4000ルクスの蛍光灯による連続光照射下、培養を行った。なお、室温は23℃に設定し、培養は静置培養である。 培養30日後に、培養を停止し、ナイロンフィルムを用いて液面上のバイオフィルムを回収した。 上記の方法によって得られたバイオフィルムを、50mLの遠沈管に入れ、スピンドライヤー型遠心機(VC−96R、タイテック株式会社)にセットし、2000r/min(440×g)で遠心処理を行った。得られた沈殿物を全量、予め重量を測定しておいた2mLのガラス製サンプル瓶に入れ、これを再度、前記遠心機を用いて遠心処理を行った後、上清を除去し、100℃に設定した送風定温恒温器(DKM600、ヤマト科学株式会社)の乾燥オーブン中で乾燥した。 乾燥後、乾燥微細藻類を含むサンプル瓶の重量を測定し、空のサンプル瓶の重量と、溶媒量から計算される10分の1に希釈した培地中の固形成分の重量とを差し引くことによって、微細藻類の乾燥重量とした。なお、溶媒量は、加熱乾燥前後の重量差から推定した。 上記のサンプル瓶に1mLの5%塩酸−メタノール混合溶液を添加し、100℃に設定した送風定温恒温器を用いて、反応を行った。 室温まで冷却させた後、全量を10mLのサンプル瓶に移し、さらに、1.5mLのヘキサンおよび0.5mLの蒸留水を添加した。ボルテックスミキサーを用いて激しく攪拌した後、静置することで二相に分離させ、ヘキサン相を予め重量を測定しておいた2mLサンプル瓶の中に入れた。 上記の2mLサンプル瓶をスピンドライヤー型遠心機にセットし、2000r/min(440×g)で遠心しながら、減圧下にて有機溶媒を蒸発させた。 蒸発後、55℃に設定した送風定温恒温器の中で加熱し、室温にまで冷却させた後、2mLサンプル瓶の重量を測定し、試料を入れていない時の重量との差をオイル重量とした。また、前記のオイル重量を乾燥藻体重量で割ることによって、乾燥藻体あたりのオイル含有量を計算した。 オイル含有量は、AVFF007株の場合、11.72質量%となった。[実施例4]<オイル成分の分析結果> 純菌化を行ったAVFF007株を1×104cells/mLによるように調製したC培地を5L、幅60cm、奥行き45cm、高さ45cmの水槽に入れ、温度25℃、光照射強度65μmol/m2/sの条件下で静置培養による液面浮遊培養を行った。 培養開始から30日後、パラフィルムに液面上のバイオフィルムを付着させて回収し(すなわち、第一の基板による回収方法)、回収物を6000×gで10分間、さらに、8000×gで10分間遠心操作を行い、上清を除去後、凍結乾燥を行った。 得られた乾燥物を乳鉢・乳棒を用いて破砕し、ヘキサン4mLを添加した後、全量を遠沈管に移し、1500×gで10分間遠心操作を行った。上清のヘキサン相を回収し、別の容器に入れた。固形物には、5%塩酸−メタノール溶液を添加し、100℃で1時間加熱処理を行った後、室温まで冷却し、ヘキサンおよび蒸留水を添加した。この溶液を攪拌後、8500×gで5分間の遠心操作を行い、水相を除去した後、残ったヘキサン相に対して、再度、蒸留水を添加し、攪拌後、8500×gで5分間遠心操作を行った。上清のヘキサン相を、先ほど回収したヘキサン相に混合し、GC−MSによる分析を行った。 GC−MSの分析条件は、カラムとして、Rtx−5MS (Restek社製)を用い、90℃1分間保持した後、10℃/minで昇温した。 結果を図20に示した。主として、C16、C21をオイル成分として含んでいることが明らかとなった。 また、得られたヘキサン相の溶媒を除去し、使用した乾燥藻体量から算出したオイル含有量は、25質量%であった。[実施例5]<液面上に形成されたバイオフィルムの回収> 培地としてCSiFF04培地を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、220mLのCSiFF04培地にAVFF007株を分散させることで、50×104個/mLの藻体濃度の溶液を調製し、これをスチロール角型ケース8型に全量入れた。 これをケースのフタを外した状態で真空デシケーターの中に入れ、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、5%CO2雰囲気下、蛍光灯で15000ルクス(12時間ON−OFF照射)、23℃での静置液面浮遊培養を行った。21日間培養を行い、スチロール角型ケース8型を真空デシケーターから取り出した。液面上に形成されたバイオフィルムの様子を図21の(a)に示した。図21の(a)に示した様に、液面上に微細藻類が盛り上がる様に増殖し、立体的な三次元状の構造物が形成された。 次に、該ケースの短辺と同一の長さのナイロン6フィルムを用い、図12に示した方法で液面上のバイオフィルム(立体的な三次元状の構造物)を回収した。回収後の液面の様子を図21の(b)に示した。図21の(b)に示した様に、液面上の微細藻類は目視では全く見られなかった。さらに、ポリエチレンフィルムを用いて、転写によって液面上の微細藻類の回収を試みたが、回収量は0gとなり全く回収することはできなかった。なお、培養容器の底面や側面には、微細藻類が存在しているが、回収対象とはしていない。[実施例6]<液面浮遊培養の温度依存性> 実施例1と同様の方法で、微細藻類AVFF007株の前培養を行った。 実施例1と同様の方法で、6穴プレート液面上のAVFF007株を回収し、ホモジナイズ用5mLチューブの中に全量入れることで、AVFF007株の懸濁溶液を約3mL調製した。 50mLの遠沈管に、図22に示すCSiFF01培地を50mL、前記藻類AVFF007株の懸濁溶液を添加することで、AVFF007株の濃度(初期藻体濃度)が10×104個/mLの溶液を調製した。この溶液を良く攪拌した後、6穴プレートに8mLずつ、AVFF007株の懸濁溶液を入れた。これを、真空デシケーターの中に入れて培養を行った。 培養は、室温培養又は温調培養にわけて、各培養温度下で同時に行った。 室温培養は、真空デシケーターの中に入れた6穴プレートをプラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、CO2濃度は5%とし、真空デシケーターのフタをロックし、液面浮遊培養を開始した。なお、培養条件は、光量4000ルクス(12時間のON−OFF制御)、温度23℃での静置培養による液面浮遊培養である。 温調培養は、真空デシケーターの中に入れた6穴プレートを振盪培養機(RGS−20RL、株式会社サンキ精機)に設置し、CO2濃度は5%とし、真空デシケーターのフタをロックし、液面浮遊培養を開始した。なお、培養条件は、光量4000ルクス(連続光)、各設定温度(具体的には、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、38℃、39℃及び40℃)での静置培養による液面浮遊培養である。 液面浮遊培養は、7日間行った。液面上のバイオフィルムの回収は、図11の第一の基板による回収法(転写による回収法)と同様の方法で行った。バイオフィルムの乾燥藻体量の測定は、実施例2における方法で行った。 液面浮遊培養温度と、各液面浮遊培養温度におけるバイオフィルムの乾燥藻体量比(温度23℃の室温培養によるバイオフィルムの乾燥藻体量が基準)との関係を図23に示した。液面浮遊培養温度が37℃までは、温度が高ければ高いほど乾燥藻体量比は高くなり、37℃においては室温(23℃)と比較して約3倍の乾燥藻体量比となった。しかし、40℃では、液面上にバイオフィルムが形成されなかった。以上から、AVFF007株を用いた液面浮遊培養の場合、38℃以下の培養温度で増殖を行うことが好ましいことがわかった。[実施例7]<培地の水深が液面浮遊培養に及ぼす影響> 実施例1と同様にして、AVFF007株の藻体濃度が9726×104個/mLのAVFF007株の懸濁溶液を準備した。 高さ45、60、90mmの腰高シャーレ(品番1−4402、アズワン株式会社)に対して、CSiFF01培地をそれぞれ以下の量で添加して、異なる水深の培地を準備した。 高さ45mmの腰高シャーレ:9.5mL(水深0.4cm)、19mL(水深0.8cm)、47.5mL(水深2cm)、71.3mL(水深3cm) 高さ60mmの腰高シャーレ:107mL(水深4.5cm) 高さ90mmの腰高シャーレ:178mL(水深7.5cm) それぞれのガラス製腰高シャーレに対して、前記のAVFF007株の懸濁溶液を195μLずつ添加し、攪拌した(すなわち、添加したAVFF007株の藻体数を一定にして、攪拌した)。また、培地液量が異なっているがAVFF007株の懸濁溶液の添加量が同一であることから、各腰高シャーレ中の総藻体数は同一であるが、藻体濃度は異なり、水深が深いほど藻体濃度は薄くなる。腰高シャーレのフタをせずに、真空デシケーター中に入れた。なお、CO2濃度は、5%になるようにした。 次に、AVFF007株の懸濁液を含む腰高シャーレをプラントバイオシェルフ組織培養用へと移動し、4000ルクスの蛍光灯による光照射下、培養を行った。なお、室温は23℃に設定し、培養は静置培養による液面浮遊培養である。光は、12時間のON−OFF制御を行った。培養日数は、7日間及び14日間である。 液面のバイオフィルムの回収は、実施例3と同様の方法で行った。 培地の水深と、各水深の培地におけるバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を図24に示した。図において、白丸は7日間の培養日数における結果であり、黒丸は14日間の培養日数における結果である。培地の水深が深ければ深いほど、液面上のバイオフィルムの乾燥藻体量は多くなった。水深が、0.8cmから2cmに増えると急激に乾燥藻体量が多くなり、その後水深を増しても乾燥藻体量は微増しただけであった。 以上から、AVFF007株を用いた液面浮遊培養では、培地の水深が0.4cm以上あれば培養可能であり、水深が2cm以上あれば、増殖速度が速くなり、回収されるバイオフィルムの乾燥藻体量が増えることが分かった。[実施例8]<光量、培値濃度、培養日数が液面浮遊培養に及ぼす影響> 実施例1と同様にして、AVFF007株の藻体濃度が16.7×104個/mLのAVFF007株の懸濁溶液を準備した。 液体培地として、図22に示すCSiFF01培地(1000mL)の他に、2×CSiFF01培地及び5×CSiFF01培地をそれぞれ調製した。なお、2×CSiFF01培地及び5×CSiFF01培地は、それぞれ1×CSiFF01培地の2倍及び5倍の濃度であるという意味である。 調製後、121℃、10分間のオートクレーブ処理を行った。6穴プレートに上記で調製した16.7×104個/mLの濃度のAVFF007株の懸濁溶液200mLを1つのウェルにつき、8mLずつ入れた。なお、1つの実験条件につき、2つのウェルを使用し、合計54穴のウェルを使用した。なお、6穴プレートのフタはせずに、真空デシケーター中に入れ、CO2濃度5%で培養を開始した。 次に、プラントバイオシェルフ組織培養用へと移動し、4000ルクス、8000ルクス又は16000ルクスの蛍光灯による光照射下、培養を行った。なお、室温は23℃に設定し、培養は静置培養による液面浮遊培養である。光は、12時間のON−OFF制御を行った。 液面上のバイオフィルムの回収は、実施例3と同様の方法で行った。 各培地濃度及び光量における培養日数と、バイオフィルムの乾燥藻体量との関係を図25に示した。また培養日数14日における、各培地濃度における光量と、バイオフィルムの乾燥藻体量との関係を図26に示した。なお図26における横軸の1、2及び5は、それぞれ1×CSiFF01培地、2×CSiFF01培地及び5×CSiFF01培地を使用した際の結果を意味し、その上に記載の数値は光量を意味する。光量が多いほど、また培地濃度が高いほど、増殖速度が速くなり、回収されるバイオフィルムの乾燥藻体量が増える傾向にあった。[実施例9]<カルシウムが液面浮遊培養に及ぼす影響> 図22に示すCSiFF01培地(1000mL)中の硝酸源(具体的には、CSiFF01培地におけるCa(NO3)2・4H2O及びKNO3)を、図27に示す種々の硝酸源に等モルとなるように変えた培地を4種調製した。 実施例1と同様にして、AVFF007株の藻体濃度が10×104個/mLのAVFF007株の懸濁溶液を50mL準備した。この溶液を、6穴プレートのウェル内にそれぞれ8mLずつ入れ、静置培養による液面浮遊培養を開始した。なお、6穴プレートは、フタをせずに真空デシケーターの中に入れ、CO2ガスを真空デシケーター内が5%になる様にし、培養を開始した。光量は、4000ルクスを用いた。培養は、7日間及び14日間の培養日数で行った。 液面上のバイオフィルムの回収は、実施例3と同様の方法で行った。 7日間及び14日間の培養日数における、各種硝酸源と、液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を図27に示した。なお、標準のCSiFF01培地の硝酸源は、Ca(NO3)2・4H2OとKNO3との混合物である。硝酸源がNaNO3、KNO3、NH4NO3の場合と比べて、Ca(NO3)2・4H2Oが入っていると14日後の乾燥藻体量が大幅に高くなった。この結果は、培地中のカルシウム源の存在が、液面浮遊培養にとって重要であることを示している。[実施例10]<カルシウム濃度が増殖速度に及ぼす影響> 図22に示すCSiFF01培地中の中からCa(NO3)2・4H2Oを添加しない培地に対して、CaCl2・2H2Oを0、0.32、0.64、1.27、3.18mMになる様にカルシウム濃度の異なる5種の培地を調製した。 実施例1と同様にして、AVFF007株の藻体濃度が10×104個/mLのAVFF007株の懸濁溶液を準備した。この溶液を、6穴プレートのウェル内にそれぞれ8mLずつ入れ、静置培養による液面浮遊培養を開始した。なお、6穴プレートは、フタをせずに真空デシケーターの中に入れ、CO2ガスを真空デシケーター内が5%になる様にし、培養を開始した。光量は、4000ルクスを用いた。培養は、7日間及び14日間の培養日数で行った。 液面上のバイオフィルムの回収は、実施例3と同様の方法で行った。 7日間及び14日間の培養日数における、カルシウム濃度と、液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を図28に示した。カルシウム濃度が0の場合には、液面上の微細藻類藻体量がほとんどなかったのに対して、0.32mM以上の濃度では、液面上に微細藻類からなるバイオフィルムの形成が見られた。これらの結果は、カルシウムの存在が、液面上のバイオフィルムの形成に重要であることを示している。[実施例11]<pHが液面浮遊培養に及ぼす影響> 実施例1と同様にしてAVFF007株の藻体濃度が19713×104個/mLのAVFF007株の懸濁溶液を準備した。 図29に示すCSiFF03培地のpHを5〜9に調製したそれぞれの培地を50mL、50mL遠沈管に入れ、前記AVFF007株の懸濁溶液を25.4μL添加することで、初期藻体濃度10×104個/mLのAVFF007株の懸濁溶液を調製した。これを良く攪拌した後、6穴プレートに8mLずつ、AVFF007株の懸濁溶液を入れた。 この6穴プレートを真空デシケーターの中に入れ、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、真空デシケーターのフタをロックし、5%のCO2雰囲気下、培養を開始した。なお、培養条件は、光量4000ルクス(12時間のON−OFF制御)、温度23℃での静置培養による液面浮遊培養である。 培養は、14日間行った。実施例3に記載の方法と同様の方法により、バイオフィルムの回収を行った。乾燥藻体量の測定は、実施例2における方法で行った。 pHと、液面上に形成されたバイオフィルムの乾燥藻体量との関係を図30に示した。従来の培養方法では、pH7での培養を一般的に行っていたが、より低いpHの方が好適に培養可能であることが分かった。 以上から、AVFF007株を用いた場合、液面浮遊培養の培地のpHは7以下にするのが好ましいことが分かった。[実施例12]<大気(気相)中の二酸化炭素量が液面浮遊培養に及ぼす影響> 純菌化を行ったAVFF007株を含む溶液を、40mLのC培地とCSi培地の混合培地(体積比1:1)を入れた100mL三角フラスコの中に入れ、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。なお、100mLの三角フラスコは、予め180℃で10分間乾熱滅菌したものを使用した。また、培養は静置培養である。 パラフィルムの代わりにポリエチレンフィルムを使用した以外は実施例4と同様の方法で液面上のバイオフィルムを採取し、実施例1と同様の方法で、微細藻類の懸濁溶液を準備した。なお、藻体カウント数は、13900×104個/mLとなったため、10×104個/mLの濃度の微細藻類分散溶液を250mL調製するため、179.9μLの前記微細藻類懸濁溶液を使用した。 6穴プレートに上記で調製した10×104個/mLの濃度のAVFF007株の懸濁溶液を1つのウェルにつき、8mLずつ入れた。なお、1つの実験条件につき、2つのウェルを使用し、合計30穴のウェルを使用した。6穴プレートのフタはした。 次に、微細藻類の懸濁溶液を含む6穴プレートをプラントバイオシェルフ組織培養用へと移動し、4000ルクスの蛍光灯による光照射下、培養を行った。なお、室温は23℃に設定し、培養は静置培養による液面浮遊培養である。光は、12時間のON−OFF制御を行った。また、CO2雰囲気下での培養のため、真空デシケーターに、CO2発生剤、上記の微細藻類を入れた6穴プレートを入れ、目的のCO2の濃度となるようにCO2を発生させるとともに、真空デシケーターのフタを閉め、培養を開始した。培養は7日間、14日間又は21日間行った。 液面のバイオフィルムの回収は、パラフィルムの代わりにポリエチレンフィルムを使用した以外は実施例4と同様の方法で行い、藻体数のカウントは実施例1と同様の方法で行った。 気相中のCO2濃度(体積%)と、液面上に形成されたバイオフィルムの藻体数との関係を図31に示した。 以上のように、AVFF007株を用いた液面浮遊培養では、大気中のCO2濃度以上、20体積%未満のCO2濃度で培養可能であることが分かった。 なお、CO2濃度0体積%とは、6穴プレートの本体とフタとをパラフィルムでシールしたもののことである。一方、CO2濃度0.04体積%とは、大気中のCO2濃度のことであり、6穴プレートの本体とフタとをパラフィルムでシールしていないもののことである。また、前二者は、真空デシケーター中で培養したが、CO2発生剤は使用していない。 また、本実施例でのCO2濃度は、培地中にCO2をバブリングしていないことから、大気中のCO2を利用してAVFF007株が増殖したものと考えられる。[実施例13]<他の微細藻類の液面浮遊培養> 図32に示した微細藻類4種と培地を用いて、AVFF007株以外に液面浮遊培養を行うことができる微細藻類の探索を行った。なお、図32に記載の培地が混合培地の場合には、該混合培地は1:1の液量比率で各培地を混合したものである。 継代培養していたそれぞれの微細藻類をクリーンベンチ内に入れ、三角フラスコ内の微細藻類を底面に沈めるためにしばらく放置した。なお、継代培養においては、どの微細藻類も大部分が液面上には存在していなかった。微細藻類が三角フラスコの底面に沈んだ後、ピペットを用いて微細藻類を含む溶液を採取し、5mLのホモジナイズ用チューブ(TM−655S)に入れビーズ式細胞破砕装置(MS−100)にセットし、4200rpmで20秒間のホモジナイズ処理を3回行った。 次に、50mLの遠沈管に、図32に示した培地を20mL入れ、上記の微細藻類の懸濁溶液を添加することで、培養用の微細藻類懸濁溶液を調製した。 上記の溶液を攪拌した後、6穴プレートの1つのウェルにつき、8mLずつ入れた。なお、1つの実験条件につき、2つのウェルを使用した。 次に、微細藻類の懸濁液を含む6穴プレートをプラントバイオシェルフ組織培養用へと移動し、真空デシケーター中に6穴プレートを入れ、4000ルクスの蛍光灯による光照射下、7日間培養を行った。なお、室温は23℃に設定し、培養は静置培養である。また、光照射は、12時間間隔でON−OFFを行った。 液面上で微細藻類が培養できたかどうかは、顕微鏡観察(倍率4倍)によって判断した。 なお図32中、+がほとんど液面上に微細藻類が存在しない場合、++が若干液面上に微細藻類が存在する場合、+++がかなりの数の微細藻類が存在する場合、++++が液面上に明確なバイオフィルムを形成した場合である。++の代表例として、図33にAVFF004株の例を、+++の代表例として、図34にNIES−2249株の例を、++++の代表例として図35にAVFF007株の例を示した。 また液面上の微細藻類の単位面積あたりの密度を、顕微鏡写真を直接カウントすることで測定した。その結果を上述の+〜++++の評価と共に以下に示す。 ASFF001株 63万個/cm2(+++) AVFF004株 1400個/cm2(++) AVFF007株 100万個/cm2(++++) NIES−2249 50万個/cm2(+++) なお、NIES−2249株は、独立行政法人国立環境研究所で購入したクロロコッカム エチノジゴタム(Chlorococcum echinozygotum Starr)である。AS、AVシリーズは、それぞれ、静岡県、京都府の淡水から採取し、純菌化したものである。 本発明では、++、+++と判定した微細藻類が、本願に記載の知見に基づき培養条件を工夫し、好適な培養条件にすることによって、++++の様に液面上に明確なバイオフィルムを形成できるものと考えられる。[実施例14]<光量が液面浮遊培養に及ぼす影響> 6穴プレート上で、図29に示すCSiFF03培地を使用して前培養していたAVFF007株を第一の基板を用いて転写することによって微細藻類を回収した。CSiFF03培地を含む5mLのホモジナイズ用チューブの中に全量添加し、該チューブに対して、高速振盪処理および分光光度計による濁度測定の結果、藻体濃度は、19816×104個であることが判明した。 予め図15に示すCSiFF04培地を52mL入れておいた容器に、前記AVFF007株の分散溶液を131μL添加し、良く攪拌することで、50×104個/mLの溶液を調製した。 この溶液をPS製ケース23号(アズワン株式会社、4−5605−04、外寸30×30mm)に、5mLずつ入れたものを10個準備した。 光源として、ルミナエース(アズワン株式会社、1−7373−01、ハロゲンランプ)を用いて、2600ルクスから90800ルクスの光を12時間間隔のON−OFF制御で照射し、14日後に、第二の基板を用いて、液面上のフィルム状の構造物を回収した。なお、他の実験条件は、温度23℃、静置培養、CO2濃度は大気濃度、液体培地の水深0.8cmである。また、一つの光量に対して二つの試料容器を準備し、光量は、ルミナエース本体の光量設定及び光源と試料との距離を調整することで可能な限り同一のものとした。 評価は、乾燥重量の測定によって行った。第二の基板、すなわちナイロンフィルムを用いて得られた微細藻類をセルスクレーパーを用いて、予め重量を測定しておいたカバーガラス上に全量移し、120℃で30分間加熱乾燥させた後、その重量差から乾燥重量を算出した。乾燥重量は、二つの試料の平均値を用いた。 結果を図36に示した。太陽光の晴天下光量に相当する10万ルクスのような高光量下での微細藻類の培養は、一般的に光障害によると考えられる増殖速度の低下が見られ、微細藻類の種類によっては、ほぼ増殖しなくなる場合もある。AVFF007株の増殖速度は、22900ルクスが最大増殖速度であり、90800ルクスでも最大増殖速度に対して、約半分の増殖速度を確保することができ、高光量下での培養が可能であることが示された。[実施例15][静置培養及び振盪培養] 実施例12と同様の方法により、藻体濃度1×104個/mLの懸濁液を準備した。なお、カウント数は、3350×104個/mLとなったため、10×104個/mLの濃度の微細藻類分散溶液を170mL調製するため、507.5μLの前記微細藻類分散溶液を使用した。 4個の100mLガラス製三角フラスコに上記で調製した10×104個/mLの濃度の微細藻類分散溶液20mLずつ入れた。なお、1つの実験条件につき、2個の三角フラスコを使用した。三角フラスコはシリコセン(アズワン株式会社)を用いて栓をした。 静置培養を行う場合には、微細藻類の懸濁液を含む三角フラスコをプラントバイオシェルフ組織培養用へと移動し、4000ルクスの蛍光灯による光照射下、培養を行った。なお、室温は23℃に設定した。光は、連続光である。 振盪培養を行う場合には、微細藻類の懸濁液を含む三角フラスコを振盪培養機(RGS−20RL、株式会社サンキ精機)へと移動し、4000ルクスの蛍光灯による光照射下、100rpmの振盪速度で培養を行った。なお、培養容器内の温度は23℃に設定した。光は、連続光である。 培養期間は、いずれの場合も1週間である。 液面の微細藻類の回収及は、実施例4と同様の方法で行った。液中の微細藻類の回収は、液面上の微細藻類の回収後、ピペットを用いて、液面と底面との中間あたりの培地を採取することで行った。これらのカウントは、実施例1と同様の方法で行った。底面の微細藻類の回収及びカウントは、液面上の微細藻類の回収後、培地を除去し、新しい培地を添加して分散した後、実施例1と同様の方法でカウントを行った。ただし、パラフィルムの代わりにポリエチレンフィルムを使用した。 結果を図37に示した。液面上の藻体数は、静置培養が788×104個/mL、振盪培養が127×104個/mLとなり、静置培養の方が大幅に大きくなった。従って、本発明では、静置培養を行うことが好ましいが、振盪培養でも液面上に藻体バイオフィルムが形成されていることから、振盪培養を行ってもかまわないとしている。なお、本実験の振盪培養でも、液面上のバイオフィルムは、はっきりと目視できる。なお、振盪培養の場合には、液中及び底面上の微細藻類の数が静置培養よりも多い。また、前記の液中と底面上の微細藻類の数は、振盪停止からカウント用に試料を採取するまでの時間によって、その比率は変わるものと考えられる。 また、静置培養において、これまでの結果よりも、大幅に藻体数が増加したのは、シリコセンによる大気中CO2の利用及び培養容器の素材による影響と考えている。 なお図37から明らかのように、静置培養を行った場合には、大部分の微細藻類が液面及び底面に存在していた。 アオコの増殖は、水面から3m程度の水深でもかなりの量が存在していることが知られており、本発明の静置培養における微細藻類の増殖とは異なっていることが明らかである。 本発明にかかる微細藻類の培養方法は、液面上にバイオフィルムを形成可能であり、従来の微細藻類の回収と比べて、回収コストを大幅に低下できる。また液面上に形成されたバイオフィルムは高い回収率で回収することができ、かつ、その含水率が低い。更に回収されたバイオフィルムからオイルを得ることができ、バイオフィルムは地球温暖化防止を志向したバイオマスとしても期待できる。 液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、液体培地の液面上でバイオフィルムを形成させるように培養する、微細藻類の培養方法。 液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、静置培養することを含む、請求項1に記載の微細藻類の培養方法。 前記液体培地が、カルシウムを含む、請求項1又は2に記載の微細藻類の培養方法。 前記液体培地中のカルシウム濃度が、0.3mM以上である、請求項3に記載の微細藻類の培養方法。 気相中の二酸化炭素濃度が、大気中の二酸化炭素濃度以上、20体積%未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 培養開始直後の前記液体培地のpHが、2以上11以下の範囲内である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 培養温度が、20℃以上、40℃未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 前記液体培地の水深が、0.4cm以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 前記液体培地の水深が、2.0cm〜1mである、請求項8に記載の微細藻類の培養方法。 前記微細藻類が、18S rRNAの遺伝子領域をコードする塩基配列のうち、一部の領域の、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)に相当する塩基配列との相同性が95.0%以上99.9%以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 前記微細藻類が、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus) AVFF007株(受託番号FERM BP−11420)である、請求項10に記載の微細藻類の培養方法。 前記バイオフィルムの含水率が95質量%以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法。 請求項1〜12のいずれか1項に記載の微細藻類の培養方法により、液面上に形成されたバイオフィルム。 請求項13に記載のバイオフィルムから得られるバイオマス。 請求項13に記載のバイオフィルムから得られるオイル。 請求項13に記載の液面上に形成されたバイオフィルムを、基板に堆積させて回収する、バイオフィルムの回収方法。 請求項13に記載の液面上に形成されたバイオフィルムを、基板に転写させて回収する、バイオフィルムの回収方法。 前記液面上に形成されたバイオフィルムの70%以上を回収する、請求項16又は17に記載のバイオフィルムの回収方法。 前記液面上に形成されたバイオフィルムの80%以上を回収する、請求項18に記載のバイオフィルムの回収方法。 前記液面上に形成されたバイオフィルムの90%以上を回収する、請求項18又は19に記載のバイオフィルムの回収方法。 請求項16〜20のいずれか一項に記載のバイオフィルムの回収方法により回収されたバイオフィルムを燃料として使用する、バイオマス燃料の製造方法。 【課題】微細藻類由来のバイオマス製造コストを低減させることが可能な、微細藻類の培養方法を提供すること。【解決手段】液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、液体培地の液面上でバイオフィルムを形成させるように培養する、微細藻類の培養方法。【選択図】なし