タイトル: | 公開特許公報(A)_打圧感受性薬物を含有する錠剤 |
出願番号: | 2012095931 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 45/00,A61K 47/38,A61K 9/20,A61K 31/4184,A61P 9/12 |
熊谷 忠浩 大生 和博 JP 2013224265 公開特許公報(A) 20131031 2012095931 20120419 打圧感受性薬物を含有する錠剤 旭化成ケミカルズ株式会社 303046314 特許業務法人浅村特許事務所 110000855 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 渡邉 義敬 100163485 池田 幸弘 100102897 熊谷 忠浩 大生 和博 A61K 45/00 20060101AFI20131004BHJP A61K 47/38 20060101ALI20131004BHJP A61K 9/20 20060101ALI20131004BHJP A61K 31/4184 20060101ALI20131004BHJP A61P 9/12 20060101ALI20131004BHJP JPA61K45/00A61K47/38A61K9/20A61K31/4184A61P9/12 2 OL 12 特許法第30条第2項適用申請有り 集会名:2011 AAPS Annual Meeting and Exposition 開催日:平成23年10月24日 4C076 4C084 4C086 4C076AA36 4C076CC11 4C076DD67 4C076EE31 4C076FF04 4C076FF63 4C076GG14 4C084AA17 4C084MA35 4C084NA03 4C084ZA42 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC62 4C086GA01 4C086GA07 4C086MA02 4C086MA05 4C086MA35 4C086NA03 4C086ZA42 本発明は打圧感受性薬物を含有する錠剤の保存安定性に関するものであり、医療分野で利用される。 医薬品では、製剤中の類縁物質の量が厳しく制限されている。 2003年6月に厚生労働省より発表された非特許文献1には、製剤の規格設定、つまり、安定性試験において認められる製剤中の分解生成物(不純物)に関する考え方が記されている。これによると、1日に投与される原薬の量が2gを超える場合には製剤中の分解生成物の安全性確認が必要とされる閾値は、原薬中に含まれる分解生成物の百分率が0.15%であり、1日に投与される原薬の量が10mgを超え2g以下の場合には製剤中の分解生成物の安全性確認が必要とされる閾値は、原薬中に含まれる分解生成物の百分率が0.2%あるいは分解生成物の1日総摂取量3mgのいずれか低い方と記されている。 安定性試験や安全性確認には膨大な時間がかかるため、製薬メーカーでは分解生成物の発生により、安全性確認が必要となった場合に厚生労働省への医薬品の申請が遅れることを懸念している。 類縁物質の主な発生原因としては、[1]薬物自体の熱に対する不安定性、[2]薬物自体の光に対する不安定性、[3]保存雰囲気下に存在する水分との反応、[4]薬物と賦形剤の反応性、2種以上の薬物を含む場合は[5]薬物同士の反応性であると一般にいわれている。 ところが、薬効成分を含んだ原料粉体を圧縮成型して、錠剤化する際の圧力が原因で、薬物が不安定化する場合もあることが、特許文献1、2、3、非特許文献2、3に記載されている。 高血圧症の治療においてアンジオテンシンI変換酵素阻害薬に続く高血圧症治療薬として、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるカンデサルタンシレキセチルが注目を集めている。カンデサルタンシレキセチルは単独で固体状態では、温度、湿度、光に対して安定である。しかしながら、他成分を配合した製材処方で錠剤化した場合、製剤過程における造粒あるいは加圧成形の際に加えられる圧力、摩擦、熱などにより結晶の歪みが生じ、経日的な含量低下を引き起こすことが知られている(特許文献3)。 特許文献1には、ショ糖脂肪酸エステルや硬化油を添加することにより、類縁物質の発生を抑制する技術が記載され、特許文献2には、ポリエチレングリコールなどの低融点油状物質を添加することにより、類縁物質の発生抑制する技術が記載されている。 カンデサルタンシレキセチルの類縁物質発生防止技術に関していえば、特許文献3において、低融点油状物質を配合する方法が開示されており、特許文献4ではカンデサルタンシレキセチルと添加剤の混合物を湿潤させ圧縮成形して、錠剤を製造する方法が開示されている。 非特許文献2には、薬物に対し、ステアリルアルコールの添加により、圧縮成型時に薬物の結晶の損傷を防ぎ、類縁物質発生を抑制することが記載されており、同様の手法は特許文献1、特許文献2でも利用されている。 非特許文献3では、原薬を高濃度で含む顆粒を用いた低圧圧縮法と適量の水分を含んだ湿潤顆粒を低圧で圧縮成型後に乾燥する湿製法を用いることで、類縁物質の発生を防止している。 このように、打圧感受性を有する薬物を製剤化するには、ポリエチレングリコールやステアリルアルコールなどの低融点油脂状物質を添加して、圧縮成形する際に薬物の結晶に掛る歪みを弱めるか、薬物と各種添加剤の混合物を湿潤させたのちに低圧で圧縮成型して錠剤を製造する手法を用いることが一般的になっている。特開平8−175996号公報特開平5−194218号公報特許第2682353号特開2012−25715号公報医薬審発第0624001号(平成15年6月24日)、別紙1粉体の圧縮成型技術、日刊工業新聞社(平成10年6月30日)、p156平成9年度標準処方研究会講演要旨集、粉体工業会・製剤と粒子設計部会・標準処方研究会(平成9年10月15日)、p13 特許文献1〜3、非特許文献2では薬物の結晶の損傷を防ぐために、低融点油脂状物質を添加し、打錠する必要がある。さらに、非特許文献3では薬物と低融点物質の相性が悪く、安定性が認められなかったことが報告されており、低融点物質を添加する手法が万能でないことを示している。 また、低融点油状物質を添加すると、薬物粒子の滑りが向上し、薬物の結晶の損傷を防ぐことができるが、錠剤を構成する粒子間の結合(粒子同士の絡み合い等)が弱くなって成形性が悪化し、実用的な錠剤硬度とするために高い打錠圧力が必要となり、打圧感受性物質の発生原因ともなる。このように、低融点油状物質の添加量と打錠圧力の調整が難しく、高い打錠圧力による熱や強いせん断力を受けると、薬物の非晶化が進行し、薬物の非晶化が薬物の安定性を低下させ、かえって類縁物質を発生させる恐れがある。 特許文献4、非特許文献3では類縁物質の発生を抑えるために、低圧での打錠を行う必要があり、湿製法(湿潤粉体または顆粒を打錠後に乾燥させて、十分な硬度の錠剤を得る方法)が用いられているが、原料粉体を混合して、そのまま圧縮成型する直接打錠法に比べ、温度や水分に弱い薬物を用いた場合には、製造条件下で薬物を不安定化させ、類縁物質が発生してしまうため、広く一般的に適応するのが困難である。 本発明は、打圧感受性薬物を含む錠剤であり、高い硬度を有するとともに、直接打錠法を用いても類縁物質の発生を抑制でき、長期間保存後も安定して類縁物質の発生を抑制できる錠剤を提供することを目的とする 本発明者らは成形性に優れる添加剤である特定のセルロースと打圧感受性薬物を含む錠剤の類縁物質発生量について、鋭意研究を行ったところ、意外にも、平均L/Dが2.0−4.5のセルロース粉末を配合した錠剤では、薬物結晶の損傷を防ぐための低融点油状物質を添加しなくても、直接打錠法を用いて、実用硬度以上となる錠剤の類縁物質発生を抑制できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、[1]打圧感受性薬物及び平均L/Dが2.0−4.5のセルロースを含有し、低融点油状物質を含有しない、直接打錠により得られた錠剤、[2]打圧感受性薬物がカンデサルタンシレキセチルである、[1]に記載の錠剤、である。 本発明の錠剤は、打圧感受性薬物を含む錠剤であり、高い硬度を有するとともに、直接打錠法を用いても類縁物質の発生を抑制でき、長期間保存後も安定して類縁物質の発生を抑制できるという効果を有する。 以下に本発明の詳細を説明するが、本発明の範囲はこれらに限定するものではない。 本発明の錠剤は、打圧感受性薬物を含有する。 打圧感受性薬物とは、薬効成分を含んだ原料粉末を圧縮成型して錠剤化する際に、圧縮成型の圧力増加に伴い、薬効成分が分解し、類縁物質が増加する薬物をいう。具体的には試験例1に示すように、打錠時の打圧を変えて、打錠した錠剤を保存安定試験に供すると、打圧の増加とともに、類縁物質が蓄積する薬物である。 類縁物質とは、化学合成法により製造される原薬を用いて製造される製剤中の不純物のうち、原薬の分解生成物又は原薬と医薬品添加剤若しくは直接容器/施栓系との反応による生成物をいう。 代表的な打圧感受性薬物としてはカンデサルタンシレキセチル、N−(2−ヒドロキシエチル)ニコチン酸アミド硝酸エステル、(E)−1−[4−(2−ジアミノ)エトキシ]フェニル−2−(4−イソプロピルフェニル)−1−(4−ホスホノオキシ)フェニル−1−ブテン、5、6、7、8−テトラヒドロ−3−(5−メトキシ−1、3、4−オキサジアゾール−2−イル)−6−ベンジル−1、6−ナフチリジン−2(1H)−オン(SX−3228)などが挙げられる。 これらの中でも、類縁物質の発生原因として挙げた熱、光、水分、賦形剤との反応性、薬物同士の反応性、打圧のうち、打圧の影響を受けやすい薬物であるカンデサルタンシレキセチルを含んでいることが好ましい。 本発明の錠剤は、低融点油脂状物質の添加を配合しない。 低融点油状物質を添加すると、薬物粒子の滑りが向上し、薬物の結晶の損傷を防ぐことができるが、錠剤を構成する粒子間の結合(粒子同士の絡み合い等)が弱くなって成形性が悪化し、実用的な錠剤硬度とするために高い打錠圧力が必要となり、打圧感受性物質の発生原因ともなる。このように、低融点油状物質の添加量と打錠圧力の調整が難しく、高い打錠圧力による熱や強いせん断力を受けると、薬物の非晶化が進行し、薬物の非晶化が薬物の安定性を低下させ、かえって類縁物質を発生させる恐れがある。 本発明でいう低融点油状物質とは、油脂状を呈し、通常その融点が20〜90℃程度のものである。たとえば炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの高級アルコールエーテル、アルキレンオキサイドの重合体もしくは共重合体などである。これらは、打錠の際に粉体内部の薬物粒子の滑りを向上させ、結晶の損傷を防ぐことを目的として添加されることのある物質である。 炭化水素としては、たとえばn−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−エイコサン、n−ヘンエイコサン、n−ドコサン、n−トリコサン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、n−トリアコンタン、n−ペンタトリアコンタン、n−テトラコンタン、n−ペンタコンタン等の炭素数17〜50のn−アルカンおよびこれらの混合物(ペトロレイタム、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等)などがあげられる。高級脂肪酸としては、たとえばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、およびそれらの混合物、天然油脂から採取される高級脂肪酸などが挙げられる。 高級アルコールとしては、たとえばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコールおよびそれらの混合物、天然油から採取される高級アルコールなどがあげられる。多価アルコールの脂肪酸エステルとしては分子内に2個以上の水酸基を有するアルコール(たとえばエチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールあるいはこれらの共重合物などのポリアルキレングリコール、ソルビトール、蔗糖、フライノースなどの糖類、1、5−ソルビタン、1、4−ソルビトール、3、6−ソルビタンなどのソルビトールの分子内脱水化合物、グリセリン、ジエタノールアミン、ペンタエリスリトールなど)と脂肪酸(たとえば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸など)とのエステル、具体的にはたとえばソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノパルミテートなど分子量400〜900のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリパルミテートなど分子量1000〜1500のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールトリステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトララウレートなどのポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール密ロウ誘導体などのポリオキシアルキレンソルビトール密ロウ誘導体、ポリオキシエチレンラノリン誘導体などのポリオキシアルキレンラノリン誘導体、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジパルミテート、プロピレングリコールジステアレートなど分子量200〜700のプロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコールモノラウレート、エチレングリコールパルミテート、エチレングリコールマーガレート、エチレングリコールステアレート、エチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジミリステート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジマーガレートなど分子量500〜1200のエチレングリコール脂肪酸エステルなどのアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体など分子量3500〜4000のポリオキシアルキレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンリノレートなど分子量1900〜2200のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリンモノアセテート、グリセリンモノプロピオネート、グリセリンモノステアレート、グリセリ ンモノオレエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノリノレートなど分子量300〜600のグリセリンモノ脂肪酸エステル、蔗糖モノラウレート、蔗糖モノミリステート、蔗糖モノパルミテート、蔗糖モノステアレート、蔗糖トリミ リステート、蔗糖トリパルミテート、蔗糖トリステアレートなど分子量400〜1300の蔗糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。 多価アルコールの高級アルコールエーテルとしては、多価アルコール(上記多価アルコールの脂肪酸エステルのアルコール成分として挙げたもの)と高級脂肪酸アルコール(たとえばセチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール)とのエーテル、具体的にはたとえばポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンセチルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンデシルアルコールエーテルなどのポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンセチルアルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンステアリルアルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテルなどのポリオキシプロピレンポリオキシエチレン高級アルコールエーテルなどが挙げられる。 アルキレンオキサイドの重合体としては分子量1、000〜10、000のもの(例、ポリエチレングリコール6000)が用いられる。アルキレンオキサイドとしては、たとえばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等(好ましくは、エチレンオキサイド)が挙げられる。 アルキレンオキサイドの共重合体としては、上記アルキレンオキサイドの二種以上のものの共重合体であって分子量1、000〜10、000のものが挙げられる。これらの低融点油脂状物質は固体状または液状で有効成分に添加されることのある物質である。 この中でも、ポリエチレングリコールや脂肪酸エステル、高級アルコールは薬物結晶の非晶化を引き起こす場合があり、添加は好ましくない。 本発明の錠剤は、平均L/Dが2.0〜4.5のセルロースを含有する必要がある。 本発明用いるセルロースとは、結晶セルロース、粉末セルロースのいずれでも良いが、成形性に優れることからより好ましくは結晶セルロースである。 L/Dは、エアージェットシーブ(ALPINE製、A200LS型)を用い、JIS標準篩75μmで篩過した粒子について、個々の粒子が絡まらないように、予めばらけた状態として、粒子の光学顕微鏡像を画像解析処理し((株)インタークエスト製、Imagehyper)、粒子に外接する長方形のうち面積が最小となる長方形の長辺と短辺の比(長辺/短辺)として求められる。粒子の平均L/Dは、少なくとも粒子400個のL/Dを求め、その平均値とする。 平均L/Dが2.0未満の場合には類縁物質の発生を抑制できず、平均L/Dが4.5を超える場合には、セルロースの繊維性が高くなり、成形性が低下し、十分な錠剤硬度が得られなくなる。また、無理に打圧を上げると類縁物質の発生が抑制できなくなる。 好ましくは平均L/Dが2.5〜4.5であり、より好ましくは3.0〜4.5である。 平均L/Dが2.5〜4.5の結晶セルロースとしては、(商品名)セオラスKG−802(旭化成ケミカルズ)、(商品名)セオラスKG−1000(旭化成ケミカルズ)等が挙げられる。 本発明における打圧感受性薬物の含量は、0.1〜99重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜95重量%、さらに好ましくは0.1〜70重量%である。0.1重量%以上であれば、十分な治癒効果が得られやすく、99重量%以下であれば、賦形剤の量が十分であり、実用的な硬度となりやすい。 本発明における平均L/Dが2.0〜4.5のセルロースの含量は、1〜99.9重量%が好ましく、より好ましくは5〜99.9重量%、さらに好ましくは30〜99.9重量%である。打圧感受性薬物の類縁物質発生を抑える効果が大きいため、セルロース含量は多いほど好ましい。 本発明では、崩壊剤、滑沢剤など上記以外の医薬品添加剤を、発明の効果を損なうことのない範囲で添加してもよい。 打圧感受性薬や配合する成分はタンブラー混合機、V型混合機など、医薬品の製造に一般的に使用される混合機で混合操作を行うことができる。また、実験室レベルの実験であれば、ポリ袋を用いた混合でもよい。 混合した粉体は打錠機で圧縮成型し、錠剤とする。打錠機としては、一般的に錠剤の製造に用いられるロータリー打錠機、実験室レベルの実験に用いられる単発打錠機を用いることができる。なお、打錠時の打圧は実用硬度となる錠剤硬度が得られる条件とする必要がある。実用硬度が得られていない錠剤は摩損が起こりやすく、実用に適さない。 錠剤の製造方法としては、直接打錠法、乾式顆粒打錠法、湿式顆粒打錠法などの方法があるが、湿式顆粒打錠法は、水分に不安定な薬物に用いると薬物が分解し、類縁物質が発生することがある。また乾式顆粒打錠法は、薬効成分と賦形剤を圧縮後に、破砕整粒し所望の粒度としたものを打錠するため、製造工程中で薬物の結晶が何度も強い力を受け、結晶に歪みが掛り、類縁物質が発生しやすい。薬効成分と各種賦形剤の混合粉体を直接圧縮成型する直接打錠法を用いると、これらを防止することができる。 実用硬度とは直径4〜6mmでは錠剤硬度30N以上;直径6〜9mmでは錠剤硬度50N以上;直径9〜11mmでは錠剤硬度70N以上;直径11〜15mmでは錠剤硬度100N以上、直径15mm以上では150N以上の錠剤をいう。実用硬度を満たしている錠剤では、製造中あるいは輸送中に破損しない。 類縁物質の発生量は少なければ少ない方が良いとされており、厚生労働省のガイドライン(非特許文献1)によれば、類縁物質の量が0.15%を超える場合には、類縁物質の安全性を確認する必要があるため、0.15%以下であることが好ましい。 本発明の錠剤は、従来の錠剤に比べて類縁物質の発生量を低減することができる。特に、カンデサルタンシレキセチルを含む錠剤においては、温度25℃、湿度58%RHの環境で6か月保存した後の類縁物質発生量を0.15%以下に抑制できる。 本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。 本発明で用いられている物性の測定方法及び条件は以下の通りである。<類縁物質量の測定> 錠剤を薬物濃度が160mg/Lとなるように移動相に溶解させ、空孔0.45μmのPTFEシリンジフィルターでろ過して不溶物を除き、HPLC(型式LC−10ADVP、島津製作所製)を用いて測定する。 分析条件は、以下の通りである。 カラム:Phenomenex Luna C18(2)、Φ4.6mm×250mm カラム温度:35℃ 移動相:アセトニトリル:0.1Mリン酸2水素ナトリウム水溶液:トリエチルアミン=65:35:0.1[vol.%]の混合溶液にリン酸を加えて、pH3.9に調整して使用した。 流速:1.0mL/min 注入量:5μL/分析 検出:UV検出器(型式SPD−10AVP、島津製作所製)、波長262nm 上記の条件で得られたクロマトグラムから、薬物本体のピーク(保持時間13.5分)と主類縁物質のピーク(保持時間6.5分)の面積を求め、(主類縁物質のピーク面積)÷(薬物本体のピーク面積)により、類縁物質量を求める。<類縁物質発生量> 上記と同じ測定方法により、打錠直後の類縁物質量(A)と、温度25℃、湿度58%RHに設定した恒温恒湿機中で6ヶ月間保存した後の類縁物質量(B)を測定し、下記の式から求めた。類縁物質発生量=B−A<錠剤硬度の測定> シュロインゲル硬度計(型式8M、PHARMATRON製)で、錠剤を破壊するために必要な荷重を求め、錠剤3個の平均値を算出し、以下の範囲であれば実用可能な硬度とする。なお、剤形がカプレット(楕円形)のように円形でない錠剤では、錠剤の最長部分の直線距離を錠剤の直径とする。錠剤の直径4〜6mm :錠剤硬度30N以上錠剤の直径6〜9mm :錠剤硬度50N以上錠剤の直径9〜11mm :錠剤硬度70N以上錠剤の直径11〜15mm:錠剤硬度100N以上錠剤の直径15mm以上 :錠剤硬度150N以上[試験例1](打圧感受性薬物であることの確認) カンデサルタンシレキセチル粉末5gと結晶セルロースとして、セオラスPH−102(旭化成ケミカルズ)を4g、乳糖(SuperTAB 11SD、DMV−Fonterra Excipients)を1gポリ袋に入れ、3分間混合し、単発打錠機で打圧2kN、3kN、4kN、5kNで打錠し、直径8mm、錠剤重量200mgの錠剤を得た。得られた錠剤をガラス瓶で密栓し、周囲の雰囲気を25℃、湿度58%RHとして、3か月保存し、類縁物質発生量を求めると、表1のようになり、打圧感受性があることが確認できた。[実施例1] 打圧感受性薬物であるカンデサルタンシレキセチル粉末5gと平均L/Dが3.2の結晶セルロース(セオラスKG−1000、旭化成ケミカルズ)4g、乳糖(SuperTAB 11SD、DMV−Fonterra Excipients)1gをポリ袋に入れ、3分間混合して、200mgを量りとり、臼に充填して、単発打錠機(型式1321DW、アイコーエンジニアリング製)を用いて打錠圧2.5kNを10秒間保持して打錠し(直接打錠)、直径8mm、200mgの平錠を得た。得られた錠剤の硬度は55Nであり、実用硬度を満たしていることを確認した。得られた錠剤の物性を表2に示す。[実施例2] 実施例1における結晶セルロースを平均L/Dが2.8の結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ)に変更した。打圧3.0kNで、錠剤硬度52Nである、実用硬度を満たした錠剤を得た。得られた錠剤の物性を表2に示す。[実施例3] 実施例1における打圧感受性薬物と結晶セルロースの配合比を変更した。 打圧感受性薬物であるカンデサルタンシレキセチル粉末6gと平均L/Dが3.2の結晶セルロース(セオラスKG−1000、旭化成ケミカルズ)4gを実施例1と同様に混合し、単発打錠機にて打錠した(直接打錠法)。打圧2.0kNで、錠剤硬度51Nである、実用硬度を満たした錠剤を得た。得られた錠剤の物性を表2に示す。[実施例4] 実施例3における結晶セルロースを平均L/Dが2.8の結晶セルロース(セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ)に変更した。打圧2.75kNで、錠剤硬度53Nである、実用硬度を満たした錠剤を得た。得られた錠剤の物性を表2に示す。[比較例1] 実施例1における結晶セルロースを平均L/Dが1.3の結晶セルロース(セオラスPH−102、旭化成ケミカルズ)に変更した。打圧4.0kNで、錠剤硬度58Nである、実用硬度を満たした錠剤を得た。得られた錠剤の物性を表2に示す。[比較例2] 実施例1における結晶セルロースを平均L/Dが1.2の結晶セルロース(セオラスPH−200、旭化成ケミカルズ)に変更した。打圧4.5kNで、錠剤硬度55Nである、実用硬度を満たした錠剤を得た。得られた錠剤の物性を表2に示す。[比較例3] 実施例3における結晶セルロースを平均L/Dが1.3の結晶セルロース(セオラスPH−102、旭化成ケミカルズ)に変更した。打圧4.0kNで、錠剤硬度54Nである、実用硬度を満たした錠剤を得た。得られた錠剤の物性を表2に示す。[比較例4] 実施例3における結晶セルロースを平均L/Dが1.2の結晶セルロース(セオラスPH−200、旭化成ケミカルズ)に変更した。打圧4.7kNで、錠剤硬度55Nである、実用硬度を満たした錠剤を得た。得られた錠剤の物性を表2に示す。[比較例5] 実施例1において、乳糖の配合量を1.0gから0.5gに変更し、さらにポリエチレングリコール6000を0.5g添加する処方に変更した。打圧6kNで、錠剤硬度54Nである、実用硬度を満たした錠剤を得た。得られた錠剤の物性を表2に示す。[比較例6] カンデサルタンシレキセチル1.0g、D−マンニトール11.4g及びトウモロコシデンプン2.5gを乳鉢に投入し、ポビドン0.1gを純水1.9gに溶解した液を加えて練り、造粒した。得られた造粒品を、打錠圧力1.0kNで直径8mm、重量225mgで圧縮成型した後、40℃の棚式乾燥機にて乾燥し、重量200mgの錠剤を得た。得られた錠剤の硬度は65Nであり、実用硬度を満たしていることを確認した。得られた錠剤の物性を表2に示す。 本発明の錠剤は、打圧感受性がある薬物を含有する医薬品製剤の分野で好適に利用できる。 打圧感受性薬物及び平均L/Dが2.0−4.5のセルロースを含有し、低融点油状物質を含有しない、直接打錠により得られた錠剤。 打圧感受性薬物が、カンデサルタンシレキセチルである、請求項1に記載の錠剤。 【課題】高い硬度を有するとともに、直接打錠法を用いても類縁物質の発生を抑制でき、長期間保存後も安定して類縁物質の発生を抑制できる錠剤を提供する。【解決手段】打圧感受性薬物及び平均L/Dが2.0−4.5のセルロースを含有し、低融点油状物質を含有しない、直接打錠により得られた錠剤とする。【選択図】なし