タイトル: | 公開特許公報(A)_ショ糖芳香族モノカルボン酸エステル |
出願番号: | 2012094637 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07H 13/08,C09J 4/04,C09J 11/06 |
泉野 諭 松尾 陽 畑 俊一郎 藤瀬 圭一 JP 2013221021 公開特許公報(A) 20131028 2012094637 20120418 ショ糖芳香族モノカルボン酸エステル 第一工業製薬株式会社 000003506 河村 洌 100098464 加藤 敬子 100110984 三嶋 眞弘 100111279 泉野 諭 松尾 陽 畑 俊一郎 藤瀬 圭一 C07H 13/08 20060101AFI20131001BHJP C09J 4/04 20060101ALI20131001BHJP C09J 11/06 20060101ALI20131001BHJP JPC07H13/08C09J4/04C09J11/06 7 OL 12 4C057 4J040 4C057AA17 4C057AA18 4C057BB03 4C057DD03 4C057HH04 4J040FA121 4J040HB18 4J040HB33 4J040KA17 4J040KA23 4J040KA25 4J040KA26 4J040KA27 4J040KA29 4J040KA31 4J040KA35 4J040KA42 4J040LA06 4J040LA11 4J040MA02 4J040MA08 4J040MA10 本発明は、2−シアノアクリレート系接着剤の増量剤に関し、より詳しくは、該接着剤の接着性能を低下させることなく臭気を改善することができる、所定の不純物の含有量が一定割合以下のショ糖芳香族モノカルボン酸エステル、該エステルを臭気改善・増量剤として含んでなる2−シアノアクリレート系接着剤、および、該エステルの製造方法に関する。 2−シアノアクリレート系接着剤は、木材、プラスチックス、金属を問わず大部分の材料に対して接着力が大きくかつ異種材料間の接着にも適用でき、しかも秒速接着が可能であるという特性を有している。該接着剤は、他の汎用の接着剤に比すれば高価であるが、上記のような大きなメリットがあるので、その使用量は年々着実に増加している。 2−シアノアクリレート系接着剤には、コストダウンおよび臭気の改善を目的として、ショ糖安息香酸エステルが増量剤として使用されている(特許文献1)。しかし、臭気の改善については、決して満足のいくものではなかった。特開平5−222340号公報 本発明は、2−シアノアクリレート系接着剤について、増量してもその接着性能を低下させることなく、かつ、臭気を改善することができる、ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルを提供しようとするものである。 本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意研究を進めた結果、ショ糖芳香族モノカルボン酸エステル中の所定の不純物の含有量を低く抑えることにより、2−シアノアクリレート系接着剤の増量剤として、その接着性能を低下させることなく臭気を改善できることを見出し、更に検討を重ねて本発明を完成した。 すなわち、本発明は、ショ糖と、一般式(I)(式中、R1〜R5は、独立に、水素原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される基である。)で示される芳香族モノカルボン酸とのエステルであって、フルフラールの含有量が50ppm以下かつヒドロキシメチルフルフラールの含有量が500ppm以下であるショ糖芳香族モノカルボン酸エステルに関する。 前記ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルは、平均エステル化度が6.0以下であるものが好ましい。 また、本発明は、前記ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルを臭気改善・増量剤として含んでなる、2−シアノアクリレート系接着剤に関する。 さらに、本発明は、フルフラールの含有量が50ppm以下かつヒドロキシメチルフルフラールの含有量が500ppm以下であるショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの製造方法であって、該ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルが、ショ糖と、一般式(I)(式中、R1〜R5は、独立に、水素原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される基である。)で示される芳香族モノカルボン酸とのエステルであり、該ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの有機溶媒溶液を、厚さ10cm以下の液膜の状態で加熱面と接触させて乾燥することを含んでなる、ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの製造方法に関する。 前記乾燥は、減圧乾燥であることが好ましい。 前記減圧乾燥は、機内圧力0.01〜15KPa・abs、加熱温度90〜300℃の条件下実施されるものであることが好ましい。 前記減圧乾燥は、真空式ドラムドライヤー、真空式ベルトドライヤー、薄膜蒸留機、フラッシュ蒸留機および真空式エクストルーダーから選択される、1または2以上の機械を用いて実施されるものであることが好ましい。 本発明に係るショ糖芳香族モノカルボン酸エステルは、2−シアノアクリレート系接着剤の増量剤として、その接着性能を低下させることなく臭気を改善できるという優れた特長を併せ持つ。したがって、該接着剤の臭気改善・増量剤として用いることができる。 また、本発明の製造方法によれば、このような優れた特性を示すショ糖芳香族モノカルボン酸エステルを、容易にかつ効率的に製造することができるため、工業的に有利である。 本発明を構成する各要素について、以下説明する。<目的物> 本発明の目的物は、フルフラールの含有量が50ppm以下かつヒドロキシメチルフルフラール(HMF:5−(ヒドロキシメチル)−2−フルアルデヒド)の含有量が500ppm以下である、上記所定のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルである。すなわち、上記所定のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルにおいて、これら二つの不純物の含有量を低く抑えることにより、増量剤として2−シアノアクリレート系接着剤に配合した際の、該接着剤組成物の臭気が著しく改善される。フルフラールの含有量は、好ましくは5ppm以下、より好ましくは0.5ppm以下である。一方、HMFの含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは5ppm以下である。 本発明のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルにおいて、ショ糖のアルコール部分のエステル化の割合の平均値(以下、「平均エステル化度」という)は、6.0以下が好ましく、より好ましくは5.0以下である。平均エステル化度が6.0を超えると臭気低減効果が小さくなる傾向がある。一方、平均エステル化度は、3.0以上が好ましく、より好ましくは4.5以上である。平均エステル化度が3.0未満の場合には、接着性が低下する傾向がある。 ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの芳香族モノカルボン酸(I)において、R1〜R5は、それぞれ、独立に水素原子またはアルキル基であるものが好ましく、全てが水素原子である安息香酸またはその一つ(好ましくは、R3)がアルキル基で残りが水素原子であるものがより好ましい。 アルキル基としては、炭素数1〜20のものが挙げられ、このうち、炭素数1〜5のものが好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。アルコキシ基としては、炭素数1〜20のものが挙げられ、このうち、炭素数1〜5のものが好ましく、より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基またはイソプロピルオキシ基である。<製法>(精製工程) 本発明に係るショ糖芳香族モノカルボン酸エステルは、フルフラールを50ppm以下かつHMFを500ppm以下とすることができる限り、いかなる公知の方法を用いて製造してもよく、そのような方法としては、例えば、ショ糖と芳香族モノカルボン酸とを通常のエステル化反応に付して得られるエステル体を精製することが挙げられる。該精製は、先にフルフラールのみを50ppm以下とした後に、HMFを500ppm以下とすることにより実施してもよいし、またはその逆でもよいが、簡便性および効率性の観点からは、両者を同時に所定濃度以下とすることが好ましい。 両者を同時に所定濃度以下とする、すなわち、フルフラールを50ppm以下かつHMFを500ppm以下とする方法としては、例えば、ショ糖と芳香族モノカルボン酸とを通常のエステル化反応に付して得られるエステル体を、トルエン、o−キシレン、m−キシレンなどの有機溶媒に溶解し、該溶液を、乾燥することが挙げられる。有機溶媒中のエステル体の濃度は、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは30重量%以上である。該濃度が10重量%未満では、工業的に非効率である。一方、該濃度は、80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは50重量%以下である。該濃度が、80重量%を超えると非常に粘度が高く、減圧濃縮装置に適応し難い傾向がある。該有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。 ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの有機溶媒溶液を乾燥する手段としては、従来公知のいかなる方法も利用することができるが、具体的には、例えば、該溶液を、加熱面に接触させ、溶媒等を留去することが挙げられる。加熱面への接触に際しては、該溶液を厚さ10cm以下の液膜の状態で接触させることが好ましく、より好ましくは5cm以下、さらに好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。該液膜の厚さが10cmを超えると、乾燥中にフルフラールやHMFが増加する傾向がある。一方、該液膜の厚さの下限値については実施可能な厚さである限り特に限定はないが、厚みが薄ければそれだけ精製コストが上昇するため、工業的に不利となる傾向がある。なお、ここで、ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの有機溶媒溶液の「液膜の厚さ」とは、具体的には、加熱面に接している該液膜の下面から、反対側の面である上面までの距離をいう。 乾燥は、減圧下で実施する減圧乾燥であることが好ましい。減圧乾燥の条件は、原料の使用量、求められる乾燥効率、使用する有機溶媒の種類など諸条件により変動するが、通常、圧力としては、0.01KPa・abs以上であることが好ましい。圧力を0.01KPa・abs未満とするには設備が高価となる傾向がある。一方、圧力は、15KPa・abs以下であることが好ましく、より好ましくは4KPa・abs以下である。圧力が15KPa・absを超えると乾燥効率が低くなる傾向がある。また、乾燥における加熱面の温度(「加熱温度」という。)は、90℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上である。加熱温度が90℃未満では乾燥効率が低くなる傾向がある。一方、加熱温度は、300℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。加熱温度が300℃を超えるとフルフラールやHMFが増加する傾向がある。 ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの有機溶媒溶液の、加熱面への接触は、例えば、真空式ドラムドライヤー、真空式ベルトドライヤー、薄膜蒸留機、フラッシュ蒸留機、真空式エクストルーダー、攪拌槽などの機器を使用して実施することができる。これら機器は、単独で用いてもよいし、同一もしくは異なる機器を二つ以上組み合わせて用いてもよい。二つ以上を組み合わせて用いる場合、連結する、特に、直列に連結することにより、精製のレベルが向上するので好ましい。連結の具体例としては、例えば、薄膜蒸留機と薄膜蒸留機との連結、フラッシュ蒸留機と薄膜蒸留機との連結、攪拌槽と薄膜蒸留機の連結、攪拌槽と真空式エクストルーダーの連結などが挙げられる。なお、モノチューブ式濃縮型の装置を使用する場合(実施例では、モノチューブ式濃縮型フラッシュ蒸留機を使用)には、有機溶媒溶液を導入する配管の径(導入配管径)を、有機溶媒溶液の「液膜の厚さ」とみなすことができる。 乾燥は、バッチ式または連続式のいずれの態様でも実施することができるが、加熱時間の延長にともなってフルフラールやHMFが増加する傾向があるので、熱履歴を抑制できる連続式が好ましい。(エステル合成) 本発明において、上記精製工程の原料となるショ糖芳香族モノカルボン酸エステル(本明細書においては、便宜上、「粗ショ糖芳香族モノカルボン酸エステル」または「粗エステル」という。)は、ショ糖と、芳香族モノカルボン酸(I)とを、常法により、エステル化反応に付すことにより製造することができ、該エステル化反応は、例えば、特開昭61−4839号や特公昭40−5688号に記載の蔗糖ベンゾエートの製造方法に準じて、ショ糖と芳香族モノカルボン酸(I)の塩化物とを、反応させることにより実施することができる。 例えば、特開昭61−4839号記載の方法に準じる場合には、ショ糖と芳香族モノカルボン酸(I)の塩化物とを、親水性溶媒と水との混液中、アルカリ性化合物の存在下、反応させる。 親水性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジオキサン、テトラハイドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸メチル等のエステル系溶媒、三級ブタノール等のアルコール系溶媒をいずれも好適に用いることができる。 アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。 親水性溶媒と水との混合比率は、両者からなる均一液層の含水率が7〜80%となるようにすることが好ましい。なぜなら、これら親水性溶媒は、原料の一方である芳香族モノカルボン酸の塩化物や生成物である粗エステルは溶解するものの、原料のもう一方であるショ糖は、単独では全く溶かさないかまたは反応効率の観点から実用に供さない程度にしか溶かさないところ、ショ糖の良溶媒である水を混合させることにより、該混液が実用に供する程度のショ糖を溶解することができるようになるからである。したがって、親水性溶媒のこのような性質を利用することにより、ショ糖と芳香族モノカルボン酸塩化物の反応速度を律することができ、その結果、ショ糖/芳香族モノカルボン酸の塩化物の仕込み量(モル比)に応じて、低置換体の割合や平均エステル置換度の異なる粗エステルを製造することができる。例えば、芳香族モノカルボン酸塩化物の仕込量をショ糖の仕込量に対して多くすることにより、低置換体の割合の相対的に少ないまたは平均エステル置換度の相対的に大きい粗エステル体を得ることができ、反対に、芳香族モノカルボン酸塩化物の仕込量をショ糖の仕込量に対して少なくすることにより、低置換体の割合の相対的に多いまたは平均エステル置換度の相対的に小さい粗エステル体を得ることができる。 反応の方法としては、親水性溶媒と水からなる混液に、ショ糖および芳香族モノカルボン酸塩化物を溶解または懸濁させ、芳香族モノカルボン酸塩化物と等量ないしは若干過剰のアルカリ性化合物を滴下するか、または混液にショ糖とアルカリ性化合物を溶解または懸濁させ、芳香族モノカルボン酸塩化物を滴下するか、または混液にショ糖を溶解または懸濁させ、芳香族モノカルボン酸塩化物とアルカリ性化合物とを同時または交互に滴下することができる。 反応温度は、−15℃〜100℃まで採用することができるが、より好ましくは、−10℃〜30℃である。ただし、全反応原料を滴下し終えた後は、反応の完結を促進させるため、高温域で加熱してもよい。 反応中のpHは弱アルカリ性に保つことが望ましい。一方、強アルカリ性下(例えば、反応温度等にもよるが、pH13以上など)では、芳香族モノカルボン酸の加水分解の副反応が著しいため、たとえば、pH8〜13程度で行うことが好ましい。 反応時間としては、原料同士の反応が十分反応を完結できる限り特に限定はない。具体的な時間は、原料化合物の量や種々の条件に依存するが、通常、1時間程度行えば十分である。 一方、特公昭40−5688号記載の方法に準じる場合には、エステル化反応は、上記親水性溶媒を、別の溶媒、すなわち、芳香族もしくは置換芳香族炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素、低級脂肪族エーテルから選択される1または2以上の溶媒に替えて、実施することができる。ここで、芳香族もしくは置換芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、クロロトルエンなどが挙げられ、塩素化脂肪族炭化水素としては、二塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエチレンなどが挙げられ、低級脂肪族エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどが挙げられる。 反応温度は、−15℃〜50℃まで採用することができ、反応時間は、種々の条件に依存するが、通常、3時間程度行えば十分である。<用途> 本発明のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルは、2−シアノアクリレート系接着剤の増量剤および臭気改善剤として用いることができる。2−シアノアクリレート系接着剤の接着成分としては、2−シアノアクリル酸メチルエステル、2−シアノアクリル酸エチルエステル、2−シアノアクリル酸プロピルエステル、2−シアノアクリル酸ブチルエステル、2−シアノアクリル酸アリルエステル、2−シアノアクリル酸メトキシエチルエステル、2−シアノアクリル酸エトキシエチルエステル、2−シアノアクリル酸2−クロロエチルエステル、2−シアノアクリル酸シクロヘキシルエステルをはじめとする種々の2−シアノアクリレートが用いられるが、特に、2−シアノアクリル酸エチルエステルが好ましい。 接着剤組成物を調製する際の、本発明のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの、2−シアノアクリレート系接着剤への配合量は、接着剤100部に対して、5部以上であることが好ましく、より好ましくは15部以上である。該配合量が5部未満ではショ糖芳香族モノカルボン酸エステルを添加することによる効果が不足する傾向がある。一方、該配合量は、60部以下であることが好ましく、より好ましくは30部以下である。該配合量が60部を超えると接着性能が低下する傾向がある。但し、ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの割合が極端に大きくなって接着力が低下することがあっても、仮接着目的にはむしろ好ましいので、上記の上限値は、ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの配合割合を限定するものではない。 本発明の接着剤組成物には、2−シアノアクリレート系接着成分および本発明のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルのほか、従来使用されている各種の添加剤、たとえば、保存安定剤、有機溶剤、可塑剤、増粘剤(ポリマー類)、充填剤、チクソトロピー性改善剤、耐熱性付与剤、極性低下剤、接着強化剤、硬化促進剤、硬化抑制剤、着色剤、カーボネート化合物などの添加剤を適宜添加することができる。 本発明のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルは、2−シアノアクリレート系接着成分に添加すると、任意の割合で2−シアノアクリレート系接着成分に容易に溶解し、しかもその際、ショ糖安息香酸エステルは、2−シアノアクリレート系接着成分の速接着性、接着力、安定性、粘度等をほとんど変化させないという優れた作用を示す。 本明細書において、単に「部」というときは、「重量部」を意味する。ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルにおける「フルフラール」および、「HMF」の量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、「トルエン」の量は、ガスクロマトグラフィー(GC)により、それぞれ、求めた値である。ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルにおける「平均エステル化度」は、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)によって求めた値である。 実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。1.粗ショ糖安息香酸エステルの合成製造例1(粗ショ糖安息香酸エステル(1)(平均エステル化度:5.5)) 撹拌棒、温度計、冷却コンデンサー、滴下漏斗、pHメーターに接続したpH電極を備えた1L五つ口フラスコにショ糖30.0部と水70.0部を仕込み溶解させた後、水浴で10℃以下に冷却しながら塩化ベンゾイル67.7部を含むシクロヘキサノン100部を徐々に加えた。その後、20℃以下の温度に保ちながら、48%苛性ソーダ水溶液42.9部を滴下漏斗よりpHが10〜11に保たれるような速度で加えた。水浴を取り去り20〜30℃の室温で1時間撹拌を続け熟成して反応を完結させた後、若干量の炭酸ソーダを加え加熱して、微量に残っている塩化ベンゾイルを安息香酸ソーダに変換した。その後、約30分間静置させて、水相を分離させ、除去した。 新たに水100部を加え、湯浴で40〜50℃に昇温させ、30分撹拌した後、約30分間静置させて、水相を分離させ、除去した。減圧下溶媒を留去し、標記化合物(粗SB(1))を得た。製造例2(粗ショ糖安息香酸エステル(2)(平均エステル化度:4.9)) ショ糖50.0部および塩化ベンゾイル60.3部を使用した以外は製造例1と同様に処理して、標記化合物(粗SB(2))を得た。製造例3(粗ショ糖安息香酸エステル(3)(平均エステル化度:4.5)) ショ糖30.0部および塩化ベンゾイル55.4部を使用した以外は製造例1と同様に処理して、標記化合物(粗SB(3))を得た。製造例4(粗ショ糖安息香酸エステル(4)(平均エステル化度:5.7)) ショ糖30.0部および塩化ベンゾイル70.2部を使用した以外は製造例1と同様に処理して、標記化合物(粗SB(4))を得た。製造例5(粗ショ糖安息香酸エステル(5)(平均エステル化度:4.8)) ショ糖30.0部および塩化ベンゾイル59.1部を使用した以外は製造例1と同様に処理して、標記化合物(粗SB(5))を得た。2.精製工程(フルフラールおよびHMFの除去)実施例1 上記で得られた粗SB(1)をトルエンに溶解し、50重量%粗ショ糖安息香酸エステル(粗SB)のトルエン溶液を調製した。該溶液を、モノチューブ式濃縮型フラッシュ蒸留機を用い、50重量%粗SBトルエン溶液の流量1.5L/h、機内における同溶液からなる液膜の厚み10cm、機内の圧力13KPa・absおよび加熱面の温度130℃の条件の下、乾燥し、ショ糖安息香酸エステル(1)(SB(1))を得た。SB(1)について、フルフラール量(ppm)、HMF量(ppm)、トルエン量(ppm)および平均エステル化度を、それぞれ測定した。実施例2〜8 対応原料化合物を、表1記載の条件に従う以外は、実施例1と同様に処理して、ショ糖安息香酸エステル(2)〜(8)(SB(2)〜SB(8))を得た。それぞれについて、不純物の量およびエステル化度を測定した。比較例1 対応原料化合物を、表1記載の条件に従う以外は、実施例1と同様に処理して、ショ糖安息香酸エステル(I)(SB(I))を得た。不純物の量およびエステル化度を測定した。 結果を表1に示す。3.接着剤組成物の製造 上記で得られた各SBを増量剤として使用して、各接着剤組成物を調製した。すなわち、少量の安定剤(SO2およびハイドロキノン)を含む2−シアノアクリル酸エチルエステル100部に対して、各SB30部を添加して溶解し、それぞれ接着剤組成物(1)〜(8)および接着剤組成物(I)を得た。4.接着剤の性能評価(促進試験) 各接着剤組成物を、容量20mlのポリエチレン製容器に充填して密封し、70℃で5日間保持した。表1において、「常態」は促進試験実施前の状態のものを示し、「試験後」は促進試験実施後の状態のものを示す。(セットタイム) セットタイムは、25mm×100mm×1.6mmの冷間圧延鋼板を用い、JIS K−6861に準じて測定した。(引張剪断強度) 引張剪断強度は、研磨、脱脂した25mm×100mm×1.6mmの冷間圧延鋼板を用い、接触面積12.5mm×25mmで重ね合わせ、24時間養生後引張試験機で測定した。(臭気) 臭気は、ショ糖安息香酸エステル無添加の場合をベースとし(C)、以下の基準により判断した。 A:臭気の減少が顕著な場合 B:臭気の減少が認められる場合 C:ショ糖安息香酸エステル無添加の場合 D:逆に臭気が強くなる場合 結果を表1に示す。 上記のとおり、本発明のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルを増量剤として用いた場合、セットタイムや引張剪断強度に殆ど影響を与えることなく、臭気を顕著に減少させることができるという優れた効果を奏する。 本発明に係るショ糖芳香族モノカルボン酸エステルは、2−シアノアクリレート系接着剤の増量剤として、その接着性能を低下させることなく臭気を改善できるという優れた特長を併せ持つので、該接着剤の臭気改善・増量剤として有用である。ショ糖と、一般式(I)(式中、R1〜R5は、独立に、水素原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される基である。)で示される芳香族モノカルボン酸とのエステルであって、フルフラールの含有量が50ppm以下かつヒドロキシメチルフルフラールの含有量が500ppm以下であるショ糖芳香族モノカルボン酸エステル。平均エステル化度が6.0以下である、請求項1記載のショ糖芳香族モノカルボン酸エステル。請求項1または2記載のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルを臭気改善・増量剤として含んでなる、2−シアノアクリレート系接着剤。フルフラールの含有量が50ppm以下かつヒドロキシメチルフルフラールの含有量が500ppm以下であるショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの製造方法であって、該ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルが、ショ糖と、一般式(I)(式中、R1〜R5は、独立に、水素原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される基である。)で示される芳香族モノカルボン酸とのエステルであり、該ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの有機溶媒溶液を、厚さ10cm以下の液膜の状態で加熱面と接触させて乾燥することを含んでなる、ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの製造方法。前記乾燥が減圧乾燥である、請求項4記載のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの製造方法。前記減圧乾燥が、圧力0.01〜15KPa・abs、加熱温度90〜300℃の条件下実施されるものである、請求項5記載のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの製造方法。前記減圧乾燥が、真空式ドラムドライヤー、真空式ベルトドライヤー、薄膜蒸留機、フラッシュ蒸留機および真空式エクストルーダーから選択される、1または2以上の機械を用いて実施されるものである、請求項5または6記載のショ糖芳香族モノカルボン酸エステルの製造方法。 【課題】本発明は、2−シアノアクリレート系接着剤について、増量してもその接着性能を低下させることなく、かつ、臭気を改善することができる、ショ糖芳香族モノカルボン酸エステルを提供しようとするものである。【解決手段】ショ糖と、一般式(I)(式中、R1〜R5は、独立に、水素原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される基である。)で示される芳香族モノカルボン酸とのエステルであって、フルフラールの含有量が50ppm以下かつヒドロキシメチルフルフラールの含有量が500ppm以下であるショ糖芳香族モノカルボン酸エステル。【選択図】なし