生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_3次元細胞培養プレートとその製造方法
出願番号:2012089780
年次:2013
IPC分類:C12M 1/00,C12M 3/00


特許情報キャッシュ

児玉 亮 JP 2013215152 公開特許公報(A) 20131024 2012089780 20120411 3次元細胞培養プレートとその製造方法 ベセル株式会社 508026559 前田 純博 100077263 児玉 亮 C12M 1/00 20060101AFI20130927BHJP C12M 3/00 20060101ALI20130927BHJP JPC12M1/00 AC12M3/00 A 6 1 OL 7 4B029 4B029AA01 4B029AA23 4B029BB11 4B029CC02 4B029GA01 4B029GA03 4B029GB09本発明は、酸素透過性の3次元細胞培養プレートとその製造方法に関する。今日、物質産生用や再生医療用などの用途分野で、細胞培養等に関する技術開発が盛んに行われている。例えば、生体を構成する細胞は、微生物細胞とは異なり、接着依存性細胞が多いので、細胞が接着し易く且つ細胞増殖を促進する素材が必要である。その素材の1つとして、生物の構成タンパク質であるコラーゲンが挙げられる。そして、従来は、哺乳動物等のコラーゲンが使用される場合が多かった。しかし、最近、哺乳動物コラーゲンの中でも最もポピュラーな牛皮コラーゲンではBSEの問題が発生し、牛皮コラーゲン等の哺乳動物コラーゲンに代わり、魚類コラーゲン等のオーシャンコラーゲン(海洋性コラーゲン又はマリンコラーゲン)が注目され始めている(例えば、非特許文献1参照)。ところが、オーシャンコラーゲンは、哺乳動物コラーゲンと異なり、熱変性し易いという問題がある。例えば、魚類コラーゲンは、37℃以下の低温で熱変性し細胞接着性が低下するという欠点を有する。そこで、オーシャンコラーゲンを改良・改善して、細胞接着と増殖効果を発揮する安定なコラーゲンとする方法の開発が望まれている。一方、細胞等が接着し易く且つ細胞等の増殖を促進する素材として、コラーゲンの他に、従来、合成物質であるポリスチレンやポリメチルメタクリレート等が良く用いられている。中でも、ポリスチレンは細胞毒性が低く、経済性、加工性の点で優位性があるため、現在組織培養にはポリスチレンを親水化処理したものが多用されている。しかし、これらにより形成された培養床では、細胞等の伸展、増殖が認められるものの、生体内と同じような細胞形態で接着、増殖し、かつ3次元培養まで行うことは困難であった。そこで、本発明者らは、かかる問題点を解決するために、細胞接着性に優れたポリアミノ酸に抗血栓性に優れているポリウレタン(又はウレタン)を共重合することにより、細胞培養膜として使用したときに細胞の接着性に優れ、且つ、ポリアミノ酸に比べて抗血栓性が大幅に優れた細胞培養膜が得られることを見い出し、かかるポリマー(特許文献1)、それを利用した人工血管(特許文献2)及び培養プレートや3次元培養用ディッシュ(特許文献3)について既に提案した。前記特許文献3では、具体的には、ポリアミノ酸ウレタン共重合体とコラーゲンをコーティングした多孔性のシート状物(細胞培養用シート)を用いて、3次元培養用ディッシュを作製すること、及び、該細胞培養用シートを、通常の4穴、6穴、24穴、96穴等のプラスチックプレートの底面に密着させ貼り付けることによって培養プレートを作製することができることを示した。かかる3次元培養用ディッシュは、生体と同じような3次元培養に近い培養が可能である点で優れたものではあるが、酸素要求性の高い細胞の培養等の場合には、細胞の活性の促進という点では必ずしも十分ではなく、また、製造コストの面でもより簡便な製法の開発が望まれていた。特開2001−136960号公報特開2006−68401号公報特開2008−79598号公報棟方正信、高分子、55巻、7月号、498-499頁(2006年)本発明の目的・課題は、本発明者が既に提案したものを含む3次元培養用シートの特性を改善し、細胞等の接着と増殖を生体内と同じような条件で手軽に行うことができ、かつ、その製法も容易な3次元細胞培養プレートを提供することにある。上記課題は、特許請求の範囲の請求項1〜6に記載した本発明の各態様によって達成できる。請求項1に記載された発明は、ウェルプレートのウェルの底壁が、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜で、多孔質膜の側をウェルの内側にして構成されていることを特徴とする3次元細胞培養プレートである。請求項2に記載された発明は、細胞親和性物質がコラーゲンであることを特徴とする請求項1記載の3次元細胞培養プレートである。請求項3に記載された発明は、コラーゲンが、オーシャンコラーゲンである請求項1又は2記載の3次元細胞培養プレートである。請求項4に記載された発明は、多孔質膜が、膜厚が10〜100μmで、孔径が20〜500μmの穴を多数有する含フッ素樹脂の多孔質膜である請求項1〜3のいずれか1項記載の3次元細胞培養プレートである。請求項5に記載された発明は、酸素透過性膜がシリコーン膜である請求項1〜4のいずれか1項記載の3次元細胞培養プレートである。請求項6に記載された発明は、上記3次元細胞培養プレートの製造方法に係る発明である。即ち、細胞培養用のマルチウェルプレートを製造するに際し、先ず、ウェルの側壁をプラスチックで形成し、次いで、ウェルの底面に、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜を、多孔質膜の側をウェルの内側にして貼り付けることを特徴とする3次元細胞培養プレートの製造方法である。本発明においては、含フッ素樹脂等の多孔質膜は、コラーゲン等の細胞親和性物質でコーティングされており、この多孔質膜は、シリコーン膜等の酸素透過性と均一に接着させ複合膜とすることができる。得られた複合膜は、細胞接着性と増殖性に優れており、かつ、酸素透過性も有しているので、ウェルプレートの底壁に用いることによって、細胞等の3次元培養が可能な培養プレートが得られる。従来の、96穴等のプラスチック培養プレートに入れて用いるタイプの3次元培養ディッシュに比べ、本発明の3次元細胞培養プレートは、製造コスト的にも安価であり、かつ、取扱性にも優れている。図1は、本発明の3次元細胞培養プレートの一つのウェルの断面を、模式的に示す図である。本発明は、ウェルプレートのウェルの底壁が、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜で、多孔質膜の側をウェルの内側にして構成されていることを特徴とする3次元細胞培養プレートである。即ち、ウェルの底部に、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜が、多孔質膜の側をウェルの内側にして配置されていることを特徴とする3次元細胞培養プレートである。本発明は、従来の、96穴等のウェル型の細胞培養プレートであって、その底部の性質に特徴があるものである。図1に、本発明の3次元細胞培養プレートの一つのウェルの断面を模式的に示したが、1はポリスチレン等のプラスチックのプレートであり、2は穴、3は培養されている細胞、4は多孔質膜、5は酸素透過性膜を示している。4と5から本発明の複合膜が形成されている。図1に示したようなウェルが多数配置された、マルチウエル細胞培養シートで培養すると、培養細胞は、コラーゲン等の細胞親和性物質でコーティングされた多孔質膜4の上で、生体と変わらない形態で増殖、機能発現をすることができる。多孔質膜4は、その裏面(図1の下側)に酸素透過性のあるシリコーン膜等5があるので、外部から、酸素ガスが通過して、細胞に供給できる。また、細胞から出る二酸化炭素ガスを外に放出することもできる。即ち、ガス交換、酸素供給ができる、従来見られなかった画期的な細胞培養プレートである。更に、本発明の細胞培養プレートの特徴は、従来のプラスチックディッシュではできない、細胞培養断面の染色観察ができるという特徴もある。即ち、本発明で用いられる複合膜は、培養液が漏れないような耐水性はあるが、容易にプレートから引きはがすこともができるだけでなく、また、容易に切断して、断面を観察できる。本発明の、例えば、96ウェルプレートは、通常の96ウェルプレートと全く同じサイズなので、通常のプレート播種、観察ができるだけでなく、オート操作にも対応させることができる。本発明において用いられる多孔質膜は、細胞の接着及び細胞の通過を許容するものであれば、その材質や形態に特に制限はないが、好ましいのは、公知の有機ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの含フッ素樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、セルロース、再生セルロース、ポリアミド、ポリイミドから形成された多孔性フィルム、シートあるいは不織布である。特に、含フッ素樹脂からなる多孔性の膜が好ましい。前記多孔質膜は、細胞の通過を可能にするのに十分な孔径を有しているため、細胞の移動が可能であり、多量に細胞、微生物、組織を保持しても目詰まりが起こり難い。孔径としては5〜500μm、好ましくは5〜20μm程度のものが適当である。膜厚としては10〜100μm、好ましくは10〜70μm程度のものである。本発明において、多孔質膜にコーティングされる細胞親和性物質としては、コラーゲン、ポリアミノ酸・ウレタン共重合体、キチン、キトサン等が挙げられる。コラーゲンは牛、豚等の動物性コラーゲンでも、あるいは魚類等のオーシャンコラーゲンであってもよい。しかし、本発明において特に好ましいのは、オーシャンコラーゲンである。オーシャンコラーゲンとは、哺乳動物由来のものではない、魚類コラーゲン等の海洋性コラーゲン(あるいはマリンコラーゲン)を意味する。工業的な入手のし易さという観点からは鮭コラーゲン等の魚類コラーゲンが好ましい。本発明において用いられる酸素透過性膜としては、シリコーン膜、ポリビニルアルコール膜、ポリウレタン膜等が挙げられるが、本発明において好ましいのはシリコーン膜である。本発明の3次元細胞培養プレートは、例えば、公知のウェルプレートを製造する際に、ウェルの底壁が、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜で、多孔質膜の側をウェルの内側にして構成されるようにして製作すればよい。作り方は特に制限されるものではないが、ウェルの側壁がプラスチックで形成されたマルチウェルプレートの底部に、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜を貼り付ける方法が便利である。この際、前記複合膜は、多孔質膜の側をウェルの内側になるように配置する必要がある。細胞培養に際し、前記複合膜は酸素透過性の性質を有するので、細胞の機能を維持したままでの増殖を可能とする特徴がある。前記コラーゲン等をコーティングしてなる多孔質膜は、細胞等の3次元培養を可能とする特徴があり、これを、プラスチックプレートに適用することにより、細胞接着性と細胞の増殖性を、生体内と同じような条件で手軽に行うことができる。そして、得られた3次元細胞培養プレートは、従来の3次元培養ディッシュに比べ、その製造コストの大幅な削減が可能となるという特徴を有する。本発明の3次元細胞培養プレートの製造方法については、特に制限はないが、例えば、細胞培養用のマルチウェルプレートを製造するに際し、先ず、ウェルの側壁をプラスチックで形成し、次いで、ウェルの底面に、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜を、多孔質膜の側をウェルの内側にして貼り付けることからなる3次元細胞培養プレートの製造方法が好ましい。多孔質膜を酸素透過性膜に均一に接着させ複合膜を形成する方法は、何ら特別な方法である必要はなく、例えば、多孔質膜と酸素透過性膜を加熱下に張り合わせる方法、多孔質膜の表面に酸素透過性膜成分をコーティングする方法等で得ることができる。以下、実施例により本発明を詳述する。本発明の3次元細胞培養プレートの製造について説明する。先ず、PTFE多孔質膜を作製した。即ち、PTFE多孔性シートの表面に、0.2%のオーシャンコラーゲン水溶液をコーティング処理後、乾燥し、オーシャンコラーゲンが積層・コートされたPTFE多孔質膜を作製した。このPTFE多孔質膜の膜厚は約50μmで、孔径が平均10μmの孔が開けられている、繊維長10〜50μm、繊維間は2〜5μmである。次に、96個のウェルの底に穴が開いている96ウェルプレートの底の部分に、前記コラーゲン修飾されたPTFE多孔質膜と酸素透過性のシリコン(ポリジメチルシロキサン)膜をラミネートさせたものを貼り付けて、本発明の3次元細胞培養プレートを得た。実施例1で得られた本発明の3次元細胞培養プレートと、比較のために特許文献3に記載された公知の3次元培養用ディッシュ(ベクトン・デッキンソン(BD)社製)、又は通常のポリスチレンの組織培養プレート(96穴)を用いて、ラット肝細胞を培養しアルブミン分泌の促進効果を調べた。結果は表1に示した。なお、培養条件は次の様であった。ラットから採取した初代培養肝細胞を、培養表面に2.0×105cells/cm2で播種し、培養1日目までは10%牛胎児血清や上皮成長因子(10−4M)・デキサメサゾン(10−3M)・インスリン(10−4M)を含む培養液で培養し、1日後からは血清を含まず1%のITS混合溶液(インスリン・トランスフェリン・セレニウムを含むBD社製添加物)とデキサメサゾン(10−6M)を含む培養液で培養終了まで培養した。表1より、本発明の酸素透過性の複合膜を用いた3次元細胞培養プレートの場合には、細胞の活性が促進されるため、ラット肝細胞によるアルブミンの分泌が著しく促進されていることが分かる。実施例1と同じ3次元細胞培養プレートを用いて、ラット肝細胞を実施例2と同様に培養し、その形態を観察した。本発明の酸素透過性の複合膜を用いた3次元細胞培養プレートの場合には、(a)播種した細胞の形が、播種後10日経っても全く変化なく、細胞が互いに凝集したり融合したり扁平化することはなかった。ほぼ生体内と変わらない形を保っていた。そして、(b)10日後も、トリパンブルーにより調べた生存率は80%以上であり、播種したときと殆ど変わらなかった。このことは、本発明の酸素透過性3次元細胞培養プレートが優れた酸素透過性により、酸素要求性の細胞、特に肝細胞の機能を維持し、また、多孔質構造により、その形態を保っているものと考えられる。1 プラスチックプレート2 穴3 培養細胞4 コラーゲンがコーティングされた多孔質膜5 酸素透過性膜ウェルプレートのウェルの底壁が、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜で、多孔質膜の側をウェルの内側にして構成されていることを特徴とする3次元細胞培養プレート。細胞親和性物質がコラーゲンであることを特徴とする請求項1記載の3次元細胞培養プレート。コラーゲンが、オーシャンコラーゲンである請求項2記載の3次元細胞培養プレート。多孔質膜が、膜厚が10〜100μmで、孔径が5〜500μmの穴を多数有する含フッ素樹脂の多多孔質膜である請求項1〜3のいずれか1項記載の3次元細胞培養プレート。酸素透過性膜がシリコーン膜である請求項1〜4のいずれか1項記載の3次元細胞培養プレート。細胞培養用のマルチウェルプレートを製造するに際し、先ず、ウェルの側壁をプラスチックで形成し、次いで、ウェルの底面に、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜を、多孔質膜の側をウェルの内側にして貼り付けることからなる3次元細胞培養プレートの製造方法。 【課題】細胞等の接着と増殖を生体内と同じような条件で手軽に行うことができ、かつ、その製法も容易な3次元細胞培養プレートを提供すること。【解決手段】ウェルプレートのウェルの底壁が、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜で、多孔質膜の側をウェルの内側にして構成されていることを特徴とする3次元細胞培養プレートである。【選択図】図1


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