タイトル: | 公開特許公報(A)_シランカップリング剤皮膜の有無の判定方法 |
出願番号: | 2012085449 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 31/00,G01N 21/77,G01N 21/78,G01N 31/22,G01N 33/00 |
福島 瑞紀 JP 2013213800 公開特許公報(A) 20131017 2012085449 20120404 シランカップリング剤皮膜の有無の判定方法 日本ゼオン株式会社 000229117 福島 瑞紀 G01N 31/00 20060101AFI20130920BHJP G01N 21/77 20060101ALI20130920BHJP G01N 21/78 20060101ALI20130920BHJP G01N 31/22 20060101ALI20130920BHJP G01N 33/00 20060101ALI20130920BHJP JPG01N31/00 VG01N21/77 CG01N21/78 ZG01N31/22 121NG01N31/22 123G01N33/00 D 5 OL 11 2G042 2G054 2G042AA01 2G042BD20 2G042CB06 2G042DA08 2G042FA12 2G042FB02 2G054AA04 2G054AB10 2G054BB06 2G054BB11 2G054CE01 2G054EA06 2G054GB04 2G054JA02 本発明は、導体表面上のシランカップリング剤皮膜の有無の判定方法に関する。 近年の電子機器の小型化や通信の高速度化及び高密度化に伴い、電子回路に用いられる基板材料にも高い電気特性が求められている。特に、使用帯域の高周波化に伴い、10GHzを越えるような高い周波数領域において、エネルギー損失、すなわち誘電損失の極めて低い基板材料への要求が高まっている。エネルギー損失を少なくするには、該基板の絶縁層に用いられる樹脂の誘電損失の低下だけでなく、銅又は銅合金などの金属からなる導体の平滑性も重要である。一般的に、高周波信号を導体に通す際、周波数が高くなるに従って、信号は導体の断面を一様には流れず、表面に近いところを密集して流れる表皮効果という現象が発生する。その結果、表面が粗い導体では信号の損失が大きくなる。そのため、信号の損失を小さくするために表面が平滑な導体を使用する必要がある。しかし、このような平滑な導体ではアンカー効果の寄与が弱いため、樹脂と密着せずに剥がれてしまう。そこで、平滑な導体でも十分な引き剥がし強度を発現させるために、導体をシランカップリング剤で表面処理することが行われている。 この技術により、平滑な導体でも樹脂との密着性を発現させることが出来るが、当然、表面処理が不十分であると密着性は低下してしまう。そこで、導体上の表面処理状態の評価方法の確立が必要があると考えられる。 従来の表面処理状態の評価としては、銅張積層板の成形後に行う引き剥がし強度の測定や、X線光電子分光分析装置(ESCA)を用いたSi量の測定から導体上の表面処理量を分析し評価をしてきた。また、簡便かつ迅速な評価方法として、特許文献1には導体表面に形成されたシランカップリング剤皮膜上に酸塩基指示薬を含む溶液を滴下し、その変色を確認することでシランカップリング剤皮膜の有無、及び被覆状態を分析することが開示されている。特開2008−286602号公報 指示薬溶液を滴下してその変色を確認することによる分析方法は、各滴下点でしか変色を確認することができない。よって、より広範囲を分析するためには、滴下を繰り返さなくてはならず、時間がかかることに加え、導体表面の如き滴下対象の表面を隙間無く分析することは困難であり、導体表面に部分的にしかシランカップリング剤皮膜がない場合、その有無を正確に判定できない場合があった。 本発明の課題は、効率的かつ正確な、導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無の判定方法を提供することにある。 本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、各滴下点では指示薬層の厚みに偏りができ変色しない領域が発生して、色むらが生じることがあるが、酸塩基指示薬の濃度、溶媒種、及び酸塩基指示薬溶液の適用条件を最適なものにすることにより、導体表面に一定の厚みを有する指示薬層を形成することが可能となり、色むらを生じさせることなく、指示薬の変色(色相の変化)を目視観察により確認することで導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無を効率よく正確に判定できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明によれば、〔1〕導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無を、酸塩基指示薬を該皮膜に接触させた場合の変色を指標として判定する方法であって、導体表面に酸塩基指示薬溶液を0.1〜10μmの範囲で一定の膜厚で塗布し、乾燥する工程を含み、該指示薬溶液が以下の(i)及び(ii)の条件を満たすものである、シランカップリング剤皮膜の有無の判定方法、(i)酸塩基指示薬の濃度が0.5〜1重量%であること。(ii)溶媒が1気圧で100〜130℃の沸点を有する有機溶媒であること。〔2〕前記酸塩基指示薬溶液の塗布をバーコート法により行う、〔1〕に記載の判定方法、〔3〕前記酸塩基指示薬の変色pH域が2.5〜6.5の範囲である、〔1〕または〔2〕に記載の判定方法、〔4〕前記酸塩基指示薬が、ブロモクレゾールグリーンとメチルレッドとの混合物からなり、それらの重量比(ブロモクレゾールグリーン:メチルレッド)が5:95〜95:5である、請求項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の判定方法、並びに、〔5〕前記有機溶媒がアルコール類である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の判定方法、が提供される。 本発明によれば、導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無を効率的かつ正確に判定することができる。従って、例えば、本発明により、電子回路基板を製造する前段階で、銅箔にシランカップリング剤による表面処理が行われているか否かを的確に判定することができる。 本発明の判定方法は、導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無を、酸塩基指示薬を該皮膜に接触させた場合の変色を指標として判定する方法であって、導体表面に酸塩基指示薬溶液を0.1〜10μmの範囲で一定の膜厚で塗布し、乾燥する工程を含み、該指示薬溶液が以下の(i)及び(ii)の条件を満たすものである。(i)酸塩基指示薬の濃度が0.5〜1重量%であること。(ii)溶媒が1気圧で100〜130℃の沸点を有する有機溶媒であること。(導体) 本発明の適用対象となる導体は、電子回路に用いられる基板材料に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、銅、ニッケル、亜鉛、チタン及びこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、本発明の判別方法に適した導体は、電子回路基板の導体層に用いられる銅または銅合金である。 上記導体層形成に使用する銅または銅合金は、導体損失を小さくする観点より、表面が平滑である銅箔が好ましく、表面粗度(Rz)としては、AFM(原子間力顕微鏡)により測定される値で、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。また、かかる銅箔の厚さは、1〜250 μm 、好ましくは2〜100μm、より好ましくは3〜75μmである。(シランカップリング剤皮膜) 本発明において、シランカップリング剤皮膜は、銅または銅合金などの導体と絶縁樹脂との密着性を向上させるために導体表面に形成されるもので、導体表面に存在する水酸基と、加水分解したシランカップリング剤由来のシラノールとが脱水縮合反応し、形成される。 シランカップリング剤皮膜に酸塩基指示薬を接触させた場合、シランカップリング剤皮膜の酸塩基性による該指示薬の呈色反応により、該指示薬が変色する。それゆえ、酸塩基指示薬溶液を導体表面に塗布し乾燥して、該指示薬の変色を目視観察により確認することで、導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無を判定することができる。なお、酸塩基指示薬の変色については、導体表面に形成した、判定対象であるシランカップリング剤皮膜に酸塩基指示薬を予め接触させて確認しておけばよい。 ところで、導体表面にシランカップリング剤皮膜が形成されている領域では、形成されていない領域と比べて、導体表面の水酸基量が少ない。そのため、酸塩基指示薬が、導体表面に直接接触した場合と、導体表面に形成されたシランカップリング剤皮膜に接触した場合とでは、酸塩基指示薬の変色に違いが生ずる。導体表面の全面にシランカップリング剤皮膜が形成されている場合、シランカップリング剤皮膜との接触による酸塩基指示薬の変色のみが観察されることになるが、導体表面に部分的にシランカップリング剤皮膜が形成されている場合、シランカップリング剤皮膜との接触による酸塩基指示薬の変色領域とは異なる酸塩基指示薬の変色領域が観察されうる。この場合、導体表面上、シランカップリング剤皮膜との接触による酸塩基指示薬の変色領域の占める割合が多いことを指標として、シランカップリング剤による表面処理の程度が良好な導体を選定することができる。(シランカップリング剤) シランカップリング剤皮膜を形成するシランカップリング剤は、カップリング効果を示すシランカップリング剤であればどのようなシランカップリング剤でもよいが、例えば、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、及びビニル基などの官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。 アクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。 メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、β−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、δ−メタクリロキシブチルトリメトキシシランなどが挙げられる。 ビニル基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルトリクロロシラン等が挙げられる。(酸塩基指示薬) 本発明のシランカップリング剤皮膜の有無の判定方法は、酸塩基指示薬の呈色反応を利用したものである。よって、本発明においては、判定対象となるシランカップリング剤皮膜の酸塩基性により呈色反応し、その変色が目視観察できる酸塩基指示薬が用いられる。 呈色反応が目視できる酸塩基指示薬としては、特に限定されるものではないが、その変色pH域が2.5〜6.5であるものが好ましい。かかる変色pH域の酸塩基指示薬を使用することにより、変色がより明確に目視でき、本発明に特に適している。 変色pH域2.5〜6.5を有する酸塩基指示薬としては、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、コンゴーレッド、メチルオレンジ、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッドなどが挙げられ、メチルオレンジやブロモフェノールブルーが好ましい。 また、上記酸塩基指示薬を2種類以上混合して用いることで、幅広い変色域に対応することが可能となり、様々なシランカップリング剤皮膜の有無を判別できる。本発明に適した酸塩基指示薬の組み合わせとしては、メチレンブルーとメチルレッドや、ブロモクレゾールグリーンとメチルレッドなどの組み合わせが好ましく、ブロモクレゾールグリーンとメチルレッドとの組み合わせがより好ましい。 上記ブロモクレゾールグリーンとメチルレッドとの組み合わせにおいて、それらの重量比(ブロモクレゾールグリーン:メチルレッド)は、通常5:95〜95:5であり、好ましくは20:80〜90:10であり、より好ましくは20:80〜80:20である。かかる範囲内における組み合わせにより、安定した発色が期待でき、また、導体表面に直接接触した場合とシランカップリング剤皮膜に接触した場合との変色領域の違いを明確に見分けられる。(呈色反応) メチルオレンジは、銅または銅合金表面に接触した場合には橙色を示し、シランカップリング剤皮膜に接触した場合には赤色を示す。また、ブロモフェノールブルーは、銅または銅合金表面に接触した場合には青色を示し、シランカップリング剤皮膜に接触した場合には黄色を示す。また、ブロモクレゾールグリーンは、銅または銅合金表面に接触した場合には緑色を示し、シランカップリング剤皮膜に接触した場合には黄色を示す。また、メチルレッドは、銅または銅合金表面に接触した場合には黄色を示し、シランカップリング剤皮膜に接触した場合には赤色を示す。 メチレンブルーとメチルレッドとを混合して用いた場合には、銅または銅合金表面に接触した場合には緑色を示し、シランカップリング剤皮膜に接触した場合には灰青色を示す。ブロモクレゾールグリーンとメチルレッドとを混合して用いた場合には、銅または銅合金表面に接触した場合には緑色を示し、シランカップリング剤皮膜に接触した場合には黄色を示す。(酸塩基指示薬溶液) 本発明における酸塩基指示薬溶液の溶媒は、上述の酸塩基指示薬に対して溶解性を示す有機溶媒であって、その沸点が、1気圧で100〜130℃のものが用いられる。沸点が100℃未満であれば、酸塩基指示薬が呈色反応により変色する前に溶媒が揮散してしまい、シランカップリング剤皮膜の有無を正確に判別することができず、また、130℃超であれば、溶媒の揮散時間が長く非効率的である。 前記溶媒としては、1−ブタノール、2−メチルプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールの如きアルコール類;3−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノンの如きケトン類;ジブチルエーテル、1,4−ジオキサンの如きエーテル類;酪酸メチル、酪酸エチルの如きエステル類;等が挙げられるが、酸塩基指示薬に対する溶解性および沸点の観点から、アルコール類が適しており、2−メトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールが好ましい。 本発明における酸塩基指示薬の濃度は0.5〜1重量%である。酸塩基指示薬の濃度が0.5重量%未満であると、酸塩基指示薬の呈色反応によるシランカップリング剤皮膜の変色領域が目視できなくなり、1重量%超であると、、呈色反応に供しない酸塩基指示薬自体の色の影響が大きく、シランカップリング剤皮膜の変色領域を確認するのが困難である。(変色領域) 本発明において、シランカップリング剤皮膜との接触による酸塩基指示薬の変色領域とは、導体表面に形成されたシランカップリング剤皮膜に酸塩基指示薬が接触した場合に、該指示薬の呈色反応により、目的の色(該指示薬がシランカップリング剤皮膜に接触した場合に示す色)に変色した領域をいう。同様に、本発明において、シランカップリング剤皮膜との接触による酸塩基指示薬の変色領域とは異なる酸塩基指示薬の変色領域とは、導体表面に酸塩基指示薬が直接接触した場合に、該指示薬の呈色反応により、目的の色(該指示薬が導体に直接接触した場合に示す色)に変色した領域をいう。上述の通り、導体表面にシランカップリング剤皮膜が形成されている部分と形成されていない部分とでは、接触した酸塩基指示薬の呈色反応による変色に違いが生じるため、かかる変色領域から、シランカップリング剤皮膜が形成されている部分と形成されていない部分とを特定することが可能となり、1つの導体表面上でシランカップリング剤皮膜が有る部分と無い部分とを判別できる。(指示薬の塗布) 本発明の、導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無の判定方法は、導体表面に酸塩基指示薬溶液を0.1〜10μmの範囲で一定の膜厚で塗布し、乾燥する工程を含む。 導体表面への酸塩基指示薬溶液の塗布方法は、特に制限されないが、例えば、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法などの公知の塗布方法が挙げられる。酸塩基指示薬溶液を均一な厚みで効率よく塗布する観点から、本発明ではバーコート法が適している。 本発明では、酸塩基指示薬溶液を均一な厚みで導体表面に塗布する。酸塩基指示薬溶液を均一な厚みで塗布できないと、塗布直後の該溶液の塗布膜の膜厚が厚い部分と薄い部分とにおいて、溶媒の揮散速度に違いが生じ、溶媒揮散後に形成される酸塩基指示薬層の膜厚に異なる部分が発生し、均一な膜厚とはならない。その結果、指示薬の変色に色むらが発生しうる。色むらが発生した場合、シランカップリング剤皮膜の変色領域を正確に確認できず、シランカップリング剤皮膜の有無を正確に判定できない。 塗布された酸塩基指示薬溶液の溶媒の揮散方法は、溶媒の揮散速度を適度な速度に保つことができれば特に制限されないが、自然乾燥により揮散させることが好ましい。自然乾燥させることにより、溶媒の揮散速度を適度な速度に保つことができ、酸塩基指示薬の呈色反応時間を確保することができる。 本発明における酸塩基指示薬溶液の塗布膜の膜厚は、溶媒の揮散のしやすさ、酸塩基指示薬の呈色反応による変色の目視観察の容易さの観点から、好ましくは0.5〜5μmであり、より好ましくは2〜5μmである。 前記塗布膜の膜厚が前記範囲を超えて厚くなると、呈色反応しない酸塩基指示薬が、呈色反応し変色した酸塩基指示薬の層に重なるように積層する部分が生じ、酸塩基指示薬の変色を目視観察できなくなる領域が発生する。また、該膜厚が、前記範囲より薄いと、呈色反応し変色する指示薬がわずかな量となり目視観察が困難となる領域が発生する。(色むら) 本発明における色むらとは、酸塩基指示薬が呈色反応せず変色が起こらない部分の発生によって、変色状態が均一でなくなる様をいい、呈色反応しない酸塩基指示薬層が呈色反応による変色部分に積層される領域が生じることにより発生する。呈色反応により変色した酸塩基指示薬層の上に呈色反応しなかった酸塩基指示薬層が積層された領域では、変色していない酸塩基指示薬自体の色のみが観察され、その下にある変色部分の色は判別できない。かかる色むらが発生すると、色相の違いとして、呈色反応しなかった酸塩基指示薬自体の色による、縦すじの模様、泡状模様及び斑紋模様等の模様が目視で観察される。ここで、色相の違いとは、色あいや色調が異なる様をいう。かかる模様が観察された場合、その模様の領域について、シランカップリング剤皮膜が形成されているかどうかを正確に判定することができない。 例えば、酸塩基指示薬としてブロモクレゾールグリーンとメチルレッドとを特定の重量比で混合したものを用いた場合、呈色反応しなかった酸塩基指示薬部分(赤色)が、シランカップリング剤皮膜と酸塩基指示薬との呈色反応による変色部分(黄色)および導体と酸塩基指示薬との呈色反応による変色部分(緑色)に重なるように積層されることにより、黄色や緑色ではなく赤色の模様(縦すじ、泡状、斑紋模様)が観察される場合がある。かかる赤色の領域については、その下に黄色の領域があるのか、緑色の領域があるのか観察できず、結果として、シランカップリング剤皮膜の有無を判別できない。 色むらの発生を抑制しつつ、シランカップリング剤皮膜の有無を判別することは、上述の通り、酸塩基指示薬の濃度、溶媒種、及び酸塩基指示薬溶液の均一な膜厚での塗布といった適用条件を高度にバランスさせ、溶媒揮散後の酸塩基指示薬の塗布膜の膜厚を均一な厚みとすることで、はじめて達成される。酸塩基指示薬の色むら発生を抑制することによって、シランカップリング剤皮膜の有無を正確に判定できる。(評価方法) 本発明において、導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無は、溶媒揮散後の酸塩基指示薬の変色を目視で観察し、その変色を指標として、かかる皮膜の有無を判定する。導体表面に形成されたシランカップリング剤皮膜に酸塩基指示薬が接触した場合、該指示薬の呈色反応により、目的の色(該指示薬がシランカップリング剤皮膜に接触した場合に示す色)に変色する領域については、シランカップリング剤皮膜が形成されている領域であると判断する。また、該指示薬が導体に直接接触した場合、目的の色(該指示薬が導体に直接接触した場合に示す色)に変色する領域については、シランカップリング剤皮膜が形成されていない領域であると判断する。このように、本発明では、酸塩基指示薬の呈色反応による変色領域から、シランカップリング剤皮膜が形成されている部分と形成されていない部分とを特定することもでき、シランカップリング剤による表面処理の程度が良好な導体を選定することができる。 以下に実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。 実施例及び比較例における「変色の有無」と「色むらの抑制」は、以下の方法に従って評価した。(1)変色の有無 実施例及び比較例から得た目視の観察結果により、シランカップリング剤との接触による酸塩基指示薬の変色の有無を、以下の基準で評価した。 ○:酸塩基指示薬の変色が観察された。 ×:酸塩基指示薬の変色が観察されなかった。(2)色むらの抑制 実施例及び比較例から得た目視の観察結果により、色むら(縦すじの模様、泡状模様及び斑紋模様などの色相の違い)の有無を、以下の方法に従って評価した。 ○:色むらが観察されなかった。 ×:色むらが観察された。(実施例1) 厚さ12μmのF2銅箔(粗度Rz=1,600nm、古河電気工業社製)を縦30cm、横35cmに切断し、その粗面上に、ビニルトリメトキシシラン0.1%水溶液を塗布し、窒素雰囲気下、100℃で60秒間乾燥し、シランカップリング剤処理銅箔を得た。このシランカップリング剤処理銅箔の表面に、ブロモクレゾールグリーン40部とメチルレッド10部との混合酸塩基指示薬(ブロモクレゾールグリーン:メチルレッドの重量比=80:20)を溶媒の2−メトキシエタノール(沸点124℃、1気圧)に溶解して得た1%ブロモクレゾールグリーン/メチルレッド混合エタノール溶液を、バーコーター(テスター産業社製)で膜厚4.6μmに設定して塗布し、溶媒を自然乾燥で揮散させ、シランカップリング剤処理銅箔の表面上における酸塩基指示薬の変色、および色むらの有無を観察した。結果を表1に示す。(実施例2) 溶媒を1−メトキシ−2−プロパノール(沸点121.1℃、1気圧)に変更した以外は、実施例1と同様にして、指示薬の変色を観察した。結果を表1に示す。(実施例3) 指示薬をブロモフェノールブルーに変更した以外は、実施例1と同様にして、指示薬の変色を観察した。結果を表1に示す。(実施例4) 混合酸塩基指示薬濃度を0.5%に変更した以外は、実施例1と同様にして指示薬の変色を観察した。結果を表1に示す。(比較例1) 混合酸塩基指示薬濃度を1.5%に変更した以外は、実施例1と同様にして指示薬の変色を観察した。結果を表1に示す。(比較例2) 混合酸塩基指示薬濃度を0.1%に変更した以外は、実施例1と同様にして指示薬の変色を観察した。結果を表1に示す。(比較例3) 溶媒をエタノール(沸点78.4℃、1気圧)に変更した以外は、実施例1と同様にして、指示薬の変色を観察した。結果を表1に示す。(比較例4) 溶媒を2‐エトキシエタノール(沸点:135℃、1気圧)に変更した以外は、実施例1と同様にして、指示薬の変色を観察した。結果を表1に示す。(比較例5) バーコーターの膜厚設定を11.4μmに変更した以外は、実施1と同様にして、指示薬の変色を観察した。結果を表1に示す。(比較例6) バーコーターによる塗布を、ピペットによる滴下に変更した以外は、実施例1と同様にして指示薬の変色を観察した。結果を表1に示す。 表1における指示薬の略記を示す。BCG:ブロモクレゾールグリーンMR:メチルレッドBPB:ブロモフェノールブルー 表1により以下のことが分かる。 実施例1、2および4において、シランカップリング剤で表面処理されている部分は黄色、されていない部分は緑色への変色が観察された。また、実施例3において、シランカップリング剤で表面処理されている部分は黄色、されていない部分は青緑色への変色が観察された。これらの実施例において、色むらの発生は観察されず、シランカップリング剤皮膜の有無を正確に判定できた。 比較例1は、酸塩基指示薬濃度が濃すぎ、変色が観察されず、シランカップリング剤皮膜の有無を判定できなかった。 比較例2は、酸塩基指示薬濃度が薄すぎ、変色が観察されず、シランカップリング剤皮膜の有無を判定できなかった。 比較例3は、変色が観察されず、シランカップリング剤皮膜の有無を判定できなかった。溶媒の沸点が低すぎ、揮散速度が早まり、酸塩基指示薬が呈色反応できなかったと考えられる。 比較例4は、変色が観察されたが、色むらが発生した。溶媒の沸点が高すぎ、溶媒が揮散するのに時間がかかりすぎ、効率が悪くなるとともに、溶媒の揮散速度が異なる部分が生じ、色むらが発生したためと考えられる。 比較例5は、酸塩基指示薬溶液の塗布膜が厚すぎ、変色が観察されず、シランカップリング剤皮膜の有無を判定できなかった。 比較例6は、酸塩基指示薬溶液を塗布ではなく滴下したことにより、変色が観察されたものの、色むらが発生した。滴下に時間がかかったことにより、効率の悪化とともに、溶媒の揮散速度が異なる部分が生じ、色むらが発生したためと考えられる。また、全表面に隙間無く滴下できず、シランカップリング剤皮膜の有無を判定できない部分を残した。 導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無を、酸塩基指示薬を該皮膜に接触させた場合の変色を指標として判定する方法であって、導体表面に酸塩基指示薬溶液を0.1〜10μmの範囲で一定の膜厚で塗布し、乾燥する工程を含み、該指示薬溶液が以下の(i)及び(ii)の条件を満たすものである、シランカップリング剤皮膜の有無の判定方法。(i)酸塩基指示薬の濃度が0.5〜1重量%であること。(ii)溶媒が1気圧で100〜130℃の沸点を有する有機溶媒であること。 前記酸塩基指示薬溶液の塗布をバーコート法により行う、請求項1に記載の判定方法。 前記酸塩基指示薬の変色pH域が2.5〜6.5の範囲である、請求項1または2に記載の判定方法。 前記酸塩基指示薬が、ブロモクレゾールグリーンとメチルレッドとの混合物からなり、それらの重量比(ブロモクレゾールグリーン:メチルレッド)が5:95〜95:5である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の判定方法。 前記有機溶媒がアルコール類である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の判定方法。 【課題】効率的かつ正確な、導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無の判定方法を提供すること。【解決手段】導体表面におけるシランカップリング剤皮膜の有無を、酸塩基指示薬を該皮膜に接触させた場合の変色を指標として判定する方法であって、導体表面に酸塩基指示薬溶液を0.1〜10μmの範囲で一定の膜厚で塗布し、乾燥する工程を含み、該指示薬溶液が以下の(i)及び(ii)の条件を満たすものである、シランカップリング剤皮膜の有無の判定方法。(i)酸塩基指示薬の濃度が0.5〜1重量%であること。(ii)溶媒が1気圧で100〜130℃の沸点を有する有機溶媒であること。【選択図】なし