タイトル: | 公開特許公報(A)_骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリング方法 |
出願番号: | 2012085215 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 33/68,C12Q 1/68,C12N 15/09 |
山本 健二 岡 慎一 丸岡 豊 潟永 博之 叶谷 文秀 星野 昭芳 JP 2013213786 公開特許公報(A) 20131017 2012085215 20120404 骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリング方法 独立行政法人国立国際医療研究センター 510192802 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 山本 健二 岡 慎一 丸岡 豊 潟永 博之 叶谷 文秀 星野 昭芳 G01N 33/68 20060101AFI20130920BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20130920BHJP C12N 15/09 20060101ALN20130920BHJP JPG01N33/68C12Q1/68 AC12N15/00 A 9 1 OL 15 2G045 4B024 4B063 2G045AA25 2G045DA36 4B024AA11 4B024CA02 4B024HA12 4B063QA19 4B063QQ53 4B063QR32 4B063QR55 4B063QR62 4B063QS14 4B063QS25 4B063QS34 本発明は、骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法、骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法、及び骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリングキットに関する。本発明によれば、骨減少症又は骨粗鬆症を早期に予測することができる。 骨粗鬆症は、骨量の減少又は骨密度の低下により、骨が脆くなり骨折が起きやすくなる疾患である。骨は、リモデリングと呼ばれる新陳代謝を繰り返し、常に骨新生が起こっている。具体的には、骨髄由来の単球系細胞が分化した破骨細胞が、酵素を分泌し、古くなった骨の骨基質を溶解及び吸収し、更に骨の周囲のコラーゲンを分解する。そして破骨細胞により古い骨が吸収された後に、骨芽細胞による骨形成が起こる。骨芽細胞は骨組織において骨形成を行う細胞であるが、アンドロゲンレセプター及びエストロゲンレセプターを有しており、アンドロゲンにより骨芽細胞の活動が低下し、エストロゲンによって骨芽細胞の活動が亢進する。 骨粗鬆症の最も一般的な原因は、加齢による骨のリモデリングのアンバランスであるが、例えば、閉経後の女性は、エストロゲンの分泌が減少するため、骨芽細胞の活動が低下し、そのため、急速に骨量が減少し骨粗鬆症を起こしやすくなる。 骨粗鬆症の診断としては、DEXA法(二重エネルギーX線吸収法)、MD法、又はpQCT法、超音波を利用した方法、CTなどがあるが、最も確実な方法はDEXA法である。DEXA法は、X線で脊椎、大腿骨頚、手首の骨密度を測定し、Tスコアを計算する。Tスコアで−2.5以下の場合、骨粗鬆症と診断され、Tスコアが−1〜−2.5を超えた場合、骨減少症と診断される(非特許文献1)。DEXA法は、信頼性の高い診断方法であるが、DEXA法の測定装置は、高額なためすべての医療機関が有しているわけではない。また、X線撮影を行うため、被爆の危険もある。従って、被爆の危険がなく、簡便で信頼性の高い骨粗鬆症の診断法の開発が期待されていた。 一方、骨粗鬆症の治療としては、ホルモン補充療法(例えば、エストロゲン投与、又はエストロゲン及びプロゲステロンの投与)、治療薬(例えば、ビスホスホネート、ラロキフェン(エビスタ)、カルシトニン、又はテリパラチド)の投与、日光浴、運動療法、食事療法(カルシウム、又はビタミンDの摂取)又は理学療法などがある。しかしながら、骨粗鬆症は特に痛みなどを伴うものではないため、治療効果の判定が困難であり、治療のモニタリングも前記DEXA法によらざるを得なかった。従って、被爆の危険がなく、簡便で信頼性の高い骨粗鬆症のモニタリング法の開発が期待されていた。「日本産科婦人科学会雑誌」2007年(日本)、59巻(10号)p.N−624〜N−629 従って、本発明の目的は、DEXA法に代わる簡便な骨減少症又は骨粗鬆症の検出(診断)方法を提供することである。また、本発明の目的は、DEXA法での骨減少症又は骨粗鬆症の確定診断の前に、骨減少症又は骨粗鬆症を予測することのできる予測方法を提供することである。 また、ヒト免疫不全ウイルス感染患者において、CCR5阻害剤による治療が開始されているが、本発明者らは、そのCCR5による治療を行った場合に、骨減少症又は骨粗鬆症の副作用が発生することを見いだした。しかし、ヒト免疫不全ウイルス感染患者におけるCCR5阻害剤によって発症する骨減少症又は骨粗鬆症は、骨粗鬆症の治療を行うことによって改善することが可能であった。そのため、CCR5阻害剤によって発症する骨減少症又は骨粗鬆症を予測、又は検出し、治療を行うことによって、CCR5阻害剤の副作用に十分対応できることを見いだした。従って、本発明の別の目的は、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者において、骨減少症又は骨粗鬆症を予測する方法、又は検出する方法を提供することである。 本発明者は、骨減少症又は骨粗鬆症の検出方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、骨減少症又は骨粗鬆症において、ランテスが上昇することを見いだした。また、ランテスの上昇は、DEXA法による骨減少症又は骨粗鬆症の確定診断の前に上昇するため、骨減少症又は骨粗鬆症を予測可能であることがわかった。更に、本発明者らは、ヒト免疫不全ウイルス感染患者おけるCCR5阻害剤によって発症する骨減少症又は骨粗鬆症においてランテスが上昇すること、及びランテスの上昇はDEXA法による骨減少症又は骨粗鬆症の確定診断の前に起こることを見いだした。 本発明は、こうした知見に基づくものである。 従って、本発明は、[1]ランテスを分析することを特徴とする、骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法、[2]ランテス分析のための被検試料が、ヒト免疫不全ウイルス感染患者、閉経後の女性、甲状腺機能亢進症患者、拒食症患者、クローン病患者、胃切除患者、ビタミンD欠乏症患者、糖尿病患者、及び癌患者から選択される被験者由来である、[1]に記載の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法、[3]ランテス分析のための被検試料が、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者由来である、[2]に記載の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法、[4]ランテスを分析することを特徴とする、骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法、[5]ランテス分析のための被検試料が、ヒト免疫不全ウイルス感染患者、閉経後の女性、甲状腺機能亢進症患者、拒食症患者、クローン病患者、胃切除患者、ビタミンD欠乏症患者、糖尿病患者、及び癌患者から選択される被験者由来の被検試料である、[4]に記載の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法、[6]ランテス分析のための被検試料が、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者由来である、[5]に記載の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法[7]骨減少症又は骨粗鬆症の予測用又はモニタリング用ランテス分析キット、[8]被検試料が、ヒト免疫不全ウイルス感染患者、閉経後の女性、甲状腺機能亢進症患者、拒食症患者、クローン病患者、胃切除患者、ビタミンD欠乏症患者、糖尿病患者、及び癌患者から選択される被験者由来である、[7]に記載の骨減少症又は骨粗鬆症の予測用又はモニタリング用ランテス分析キット、又は[9]被検試料が、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者由来である、[8]に記載の骨減少症又は骨粗鬆症の予測用又はモニタリング用ランテス分析キット、に関する。 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法によれば、骨減少症又は骨粗鬆症を早期に予測することができる。また、本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法によれば、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者の骨減少症又は骨粗鬆症を早期に予測することができる。更に、本発明の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法によれば、骨減少症又は骨粗鬆症の治療効果を的確にモニタリングできる。骨減少症又は骨粗鬆症の予測用又はモニタリング用ランテス分析キットによれば、骨減少症又は骨粗鬆症の予測、骨減少症又は骨粗鬆症の検出、及び骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリングを行うことができる。HIV感染者(患者A、患者B、及び患者C)にマラビロク(ヴィーブ社)を投与した後の、ランテス値の変動を示したグラフである。患者Aは1年後に骨粗鬆症を発症したため、治療剤であるビスホスホネート剤(フォサマック)を投与した。[1]骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法は、ランテスを分析することを特徴とするものである。本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法は、骨減少症又は骨粗鬆症の診断方法として用いることもできる。(骨粗鬆症及び骨減少症) 骨粗鬆症は、骨量の減少又は骨密度の低下により、骨が脆くなり骨折が起きやすくなる疾患を意味する。また、骨減少症は骨粗鬆症の前段階で、骨量又は骨密度が、通常よりも減少している状態を意味する。但し、骨粗鬆症は、閉経後の女性に多く、年齢差及び男女差があると言われているが、骨減少症は、年齢差及び男女差があまりないとも考えられている。すなわち、骨減少症であっても骨粗鬆症へ移行しない例も存在する。しかしながら、骨減少症を予測又は検出することは骨粗鬆症のリスクを予想する上で重要である。 骨粗鬆症、又は骨減少症の最も大きな原因としては、加齢によるホルモンのアンバランスが挙げられる。骨は、リモデリングと呼ばれる新陳代謝を繰り返し、常に骨新生が起こっている。骨を新しく形成する骨芽細胞は、アンドロゲンレセプター及びエストロゲンレセプターを有しており、アンドロゲンにより骨芽細胞の活動が低下し、エストロゲンによって骨芽細胞の活動が亢進する。女性では、閉経後に女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が、減少する。そのため、骨芽細胞の活動が低下し、急速に骨量が減少し骨粗鬆症を起こしやすくなる。すなわち、閉経後の女性において、骨減少症及び骨粗鬆症のリスクが高い。従って、閉経後の女性に対して、本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法により定期的な検査を行い、ランテス濃度が上昇した場合には、適切な治療を行うことが好ましい。 また、ホルモンのアンバランス以外の骨粗鬆症の原因としては、甲状腺機能亢進症、拒食症、クローン病、胃切除、ビタミンD欠乏症、糖尿病、及び癌などの疾患、又は骨量を低下させる薬剤(例えばメソトレキセート、抗けいれん薬、利尿薬、又は制酸剤)の投与を挙げることができる。これらの対象者においても、本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法により、定期的な検査を行うことが好ましい。 従って、本発明の骨粗鬆症、又は骨減少症の予測方法に用いられる被検試料は、限定されるものではないが、閉経後の女性、甲状腺機能亢進症患者、拒食症患者、クローン病患者、胃切除患者、ビタミンD欠乏症患者、糖尿病患者、及び癌患者から選択される被験者由来の被検試料であることが好ましい。(診断方法) 骨粗鬆症及び骨減少症の診断方法としては、限定されるものではないが、例えばDEXA法(二重エネルギーX線吸収法)、MD法、又はpQCT法、超音波を利用した方法、又はCTを挙げることができるが、最も信頼性のある方法はDEXA法である。 DEXA法(二重エネルギーX線吸収測定法;dual-energy X-ray absorptiometry)は、2種類のエネルギーレベルのX線(100及び140kV)の透過率の差を利用して骨量を測定する方法である。測定対象骨は、腰椎、大腿骨頸部、前腕骨ならびに全身骨であり、測定の精度が高いことが特徴である。特に、腰椎DXAは、骨量測定の標準方法として用いられ、骨粗鬆症の診断、経過観察、及び治療効果のモニタリングに用いられている。 DEXA法による測定値から、以下の計算式によりTスコアを計算することが可能である。[数1]Tスコア=(BMD−Reference BMD)/SD 前記の式より得られたTスコアが−2.5以下を骨粗鬆症と診断し、−1〜−2.5を骨減少症と診断する。また、DEXA法により骨密度を測定し、骨密度により骨減少症及び骨粗鬆症を診断することも可能である。DEXA法は、7〜8分の測定で検査が終了し、骨粗鬆症及び骨減少症の確定診断及び治療のモニタリングには必須であるが、X線被爆の欠点を有している。 ランテスの生体内での濃度は、前記DEXA法による骨粗鬆症及び骨減少症の確定診断の前に変動するため、ランテスの分析を、骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法として用いることができるが、ランテスの分析は骨減少症又は骨粗鬆症の検出方法、又は診断方法として用いることもできる。(ランテス(RANTES)) ランテス(RANTES)は、ケモカインの1種であり、単球、T細胞、及び線維芽細胞などによって産生される。ケモカインとは、Gタンパク質共役受容体を介してその作用を発現する一群の塩基性タンパク質を意味し、白血球の遊走などを引き起こし、炎症などを誘導する。ケモカインは、CCケモカイン、CXCケモカイン、Cケモカイン、及びCX3Cケモカインに分類される。ランテスはCCケモカインに分類され、CCL5とも称される。 ランテスが結合するGタンパク質共役受容体は、主としてCCR5である。すなわち、ランテスはCCR5のリガンドである。CCR5は、ヘルパーT細胞の1つであるTh1細胞に発現しており、ランテスはCCR5を刺激してTh1細胞の遊走を誘導する。 また、CCR5は、Th1細胞以外に、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び小グリア細胞に発現している。更に、ランテスはCCR5以外にも、Gタンパク質共役受容体であるCCR1又はCCR3にも結合することが可能であり、これらの受容体は、好酸球、好塩基球、又は単球にも発現している。そのため、ランテスは、Th1細胞の遊走以外の機能として、細胞間接着の増強、血管新生、又は好酸球の作用の増強などにも関与していると考えられている。(ランテス分析方法) ランテスの分析方法は、ランテスの存在の有無を分析できるか、又は定量的又は半定量的に分析できる限り、特に限定されるものではないが、例えば免疫学的分析方法(例えば酵素免疫測定法、ラテックス凝集免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、放射免疫測定法、免疫沈降法、免疫組織染色法、又はウエスタンブロット)、生化学的分析方法(例えば、酵素学的測定法)、及び分子生物学的分析方法を挙げることができる。免疫学的分析方法としては、市販のELISAキット(Amersham (h)RANTES Biotrak ELISA system;GEヘルスケア)を用いることもできる。 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法では、ランテスの存在の有無、あるいはランテスの量を測定することにより、骨減少症又は骨粗鬆症を予測、検出、又は診断することが可能である。例えば、骨減少症又は骨粗鬆症の疑いのある患者から被検試料を採取し、その中のランテス又はランテスのメッセンジャーRNAの発現量を測定し、健常者から採取した被検試料中のランテス又はランテスのメッセンジャーRNAの発現量と比較することにより、前記患者が骨減少症又は骨粗鬆症であるか否かを判定することができる。より具体的には、健常者のランテス又はランテスのメッセンジャーRNAの発現量と比べて、前記患者のランテス又はランテスのメッセンジャーRNAの発現量が有意に多い場合に前記患者は骨減少症又は骨粗鬆症であると判定することができる。(免疫学的分析方法) ランテスの分析方法として、免疫学的分析方法を用いる場合には、ランテスに対するモノクローナル抗体、若しくはポリクローナル抗体、又はそれらの抗原結合性断片を用いることができる。モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体は、免疫抗原としてランテスを用いること以外は、公知の方法によって作製することが可能であり、例えば、モノクローナル抗体は、KoehlerとMilsteinの方法(Nature 256:495−497,1975)に従って、作成することができる。また、ポリクローナル抗体は、例えば、ウサギの皮内に、ランテスのタンパク質を単独もしくはBSA、KLHなどと結合させた抗原として、フロイント完全アジュバント等のアジュバントと混合して定期的に免疫する。血中の抗体価が上昇した時点で採血し、そのまま抗血清として、又は抗体を公知の方法で精製して使用することができる。 モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を取得するために用いることのできるランテスの免疫抗原は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の全部又は一部のペプチドを免疫抗原として用いることができる。具体的には、生体試料から精製した抗原、遺伝子工学的に作成した組換え抗原、又は化学的に合成した部分ペプチドなどを用いることが可能である。 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法において、前記分析は、好ましくはランテスに特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片と、被検試料とを接触させる工程;及びランテスタンパク質と前記抗体又はその抗原結合性断片との結合体を検出する工程を含む免疫学的分析方法である。この免疫学的分析法は、酵素免疫測定法、ラテックス凝集免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、放射免疫測定法、免疫沈降法、免疫組織染色法、又はウエスタンブロット等を含む。(抗原結合性断片) 前記抗体の抗原結合性断片としては、例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、又はFv等を挙げることができる。これらの抗原結合性断片は、例えば、抗体を常法によりタンパク質分解酵素(例えば、ペプシン又はパパイン等)によって消化し、続いて、常法のタンパク質の分離精製の方法により精製することにより、得ることができる。 なお、本明細書において、「ランテスに特異的に結合する抗体」は、ランテスタンパク質に特異的に結合する抗体の抗原結合部位を有する抗体フラグメントを意味することがある。(サンドイッチ法) 免疫学的分析方法として、サンドイッチ法を用いる場合には、以下のように行うことが可能である。 まず、マイクロプレートやビーズなどの不溶性担体に、ランテスに結合する抗体(捕捉抗体、又は一次抗体)を固相化する。次に、捕捉抗体や不溶性担体への非特異的な吸着を防ぐために、適当なブロッキング剤(例えば、牛血清アルブミンやゼラチン等)で不溶性担体のブロッキングを行う。捕捉抗体が固相化されたプレートやビーズに、ランテスが含まれる被検試料を一次反応液と一緒に加え、捕捉抗体とランテスを接触させ、結合させる(一次反応工程)。この後、捕捉抗体に結合しなかった抗原や夾雑物を適当な洗浄液(例えば、界面活性剤を含むリン酸緩衝液)で洗浄する。次に、捕捉されたランテスと結合する抗体と西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素とが結合した標識抗体(2次抗体)を添加し、捕捉された抗原に標識抗体を結合させる(二次反応工程)。この反応により、捕捉抗体−ランテス−標識抗体の免疫複合体がマイクロプレート等の担体上に形成される。結合しなかった標識抗体を洗浄液で洗浄し、標識抗体の酵素に対する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質を反応させることによりシグナルを検出する。また、2次抗体を直接標識せずに、2次抗体に結合する抗体を標識し、シグナルを検出することも可能である。 抗体を標識する酵素としては、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びルシフェラーゼなどを挙げることができる。また酵素以外にも、標識物質として、アクリジニウム誘導体などの発光物質、ユーロピウムなどの蛍光物質、I125などの放射性物質などを使用することができる。また、標識物質に合わせて基質や発光誘導物質を適宜選択することができる。更に、本発明における標識抗体は、検出マーカーとしてハプテンや低分子量のペプチド、レクチンなどの抗原抗体反応のシグナルの検出に利用できる物質を結合させた抗体も含む。(分子生物学的分析方法) ランテスの分子生物学的分析方法としては、試料(例えば、単球、T細胞、又は線維芽細胞)中の遺伝子、例えばmRNA又はそれから得られたcDNAなどと、それらのヌクレオチドにハイブリダイズすることのできるプライマーやプローブとを用い、ハイブリダイズの原理を用いた方法で分析するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、サザンブロット法、ノザンブロット法、及びPCR法を挙げることができるが、特にはリアルタイムPCR法が正確で且つ簡便であり、好ましい。 リアルタイムPCR法としては、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマーセットを用い、二本鎖DNAに結合することで蛍光を発する化合物であるインターカレーター、例えば、SYBR Green IをPCRの反応系に加えるインターカレーター法、並びに前記プライマーセットと、5’末端をレポーター色素で、3’末端をクエンチャー色素で修飾したプローブ(TaqManプローブ)とをPCRの反応系に加えるTaqMan法等を挙げることができる。このようなリアルタイムPCR法自体は周知であり、そのためのキット及び装置も市販されているので、前記プライマーセット、又はプライマーセット及びプローブを合成すれば、市販のキット及び装置を用いて容易に実施することができる。 前記フォワードプライマー及びリバースプライマー、並びにプローブは、ランテスをコードするヌクレオチドの塩基配列に基づいて作成することができる。具体的には、ランテスのフォワードプライマー及びリバースプライマー、並びにプローブは、ランテスをコードする配列番号2で表されるcDNAの塩基配列(GenBank accession no.NM_002985)から、適当な塩基配列を選択し、作製することができる。 プライマーの長さは、特に限定する必要はないが、好ましくは、15mer〜35merであり、より好ましくは、16mer〜30merであり、最も好ましくは、19mer〜25merである。プローブの長さは、特に限定する必要はないが、好ましくは、12mer〜30merであり、より好ましくは、13mer〜29merであり、最も好ましくは、14mer〜18merである。(ヒト免疫不全ウイルス感染患者) ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodefiency virus;以下、HIVと称することがある)は、ヒトの免疫細胞に感染して免疫細胞を破壊するウイルスであり、HIV−1及びHIV−2に分類される。HIV−1及びHIV−2はヒトのT細胞に感染して、後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome;以下、AIDSと称することがある)を発症させる。 HIVの治療薬としては、多くの薬剤が開発され、主要なものとしては逆転写酵素阻害剤及びプロテアーゼ阻害剤を挙げることができる。逆転写酵素阻害剤には、核酸系逆転写酵素阻害剤及び非核酸系逆転写酵素阻害剤があり、核酸系逆転写酵素阻害剤としてザイアジェン(ABC)、コンビビル(AZT+3TC)、ゼリット(d4T)、エピビル(3TC)、ハイビット(ddC)、ヴァイデックス(ddl)、又はレトロビル(AZT/ZDV)などを挙げることができ、そして非核酸系逆転写酵素阻害剤として、ストックリン(EFV)、又はビラミューン(NVP)を挙げることができる。また、プロテアーゼ阻害剤としては、プローゼ(APV)、ビラセプト(NFV)、ノービア(RTV)、インビラーゼ(SQV)、又はクリキシバン(IDV)などを挙げることができる。しかしながら、HIVはRNAウイルスであるため、変異が起こりやすく、1つの治療薬では、HIVの変異が生じた場合に、効果が得られなくなるため、複数の薬剤を組み合わせて用いる、HAART療法(Highly Active Anti−Retroviral Therapy)が一般的に用いられている。 HIVは、CD4をレセプターとして用いてT細胞に感染するが、更に、CD4以外に、コレセプターとしてCCR5又はCXCR4を用いている。CCR5をコレセプターとして用いるHIVは、マクロファージ及び活性化T細胞に感染するHIVであり、CCR5指向性株と呼ばれている。HIV−1においては、CCR5指向性株が優勢であり、治療歴のない患者の80%はCCR5指向性HIV−1に感染している。 このようなCD4とCCR5を介して細胞に感染するHIVに対して、CCR5阻害剤により感染を防御することができることが示されてきている。実際にマラビロク(Celsentri又はSelzentry;ヴィーブ社)が、CCR5阻害剤として、初めて承認を受けている。 本発明者らは、CCR5阻害薬(例えば、マラビロク)が投与されたヒト免疫不全ウイルス感染患者において、骨粗鬆症又は骨減少症が発生しやすいことを見出した。従って、本発明の骨粗鬆症、又は骨減少症の予測方法に用いられる被検試料は、限定されるものではないが、ヒト免疫不全ウイルス感染患者由来の被検試料であることが好ましい。 CCR5阻害薬が投与されたHIV感染患者における、本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法では、ランテスの存在の有無、あるいはランテスのメッセンジャーRNAの発現量を測定することにより、マラビロク骨減少症又は骨粗鬆症を予測、検出、又は診断することが可能である。例えば、CCR5阻害薬が投与されたHIV感染患者から被検試料を採取し、その中のランテス又はランテスのメッセンジャーRNAの発現量を測定し、CCR5阻害薬が投与前のHIV感染患者から採取した被検試料中のランテス又はランテスのメッセンジャーRNAの発現量と比較することにより、前記患者の骨減少症又は骨粗鬆症への進行を予測することができる。より具体的には、CCR5阻害薬投与前のランテス又はランテスのメッセンジャーRNAの発現量と比べて、投与後の患者のランテス又はランテスのメッセンジャーRNAの発現量が1.2倍、より好ましくは1.3倍、更に好ましくは1.4倍、最も好ましくは1.5倍に上昇した場合に、前記患者は骨減少症又は骨粗鬆症に進行していると判定することができる。(CCR5阻害薬) 前記ヒト免疫不全ウイルス感染患者に投与されるCCR5阻害剤としては、特に限定されるものではないが、マラビロク、TAK−220、TAK−652、TBR−652、Vicriviroc(SCH−D/SCH 417690)、SCH−532706、706769、INCB9471及びINCB15050、PF−232、PF−798(ファイザー社)、Nonakine、HGS004、又はPRO140を挙げることができる。(被検試料) 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法において、ランテス又はランテス遺伝子の分析に用いる被検試料としては、骨減少症又は骨粗鬆症の疑いのある患者の被検試料であり限り、限定されない。より具体的には、ランテスを含有する可能性のある生体由来の組織又は液体試料(例えば、尿、血液、血清、血漿、リンパ液、組織液、髄液、唾液、尿、汗等)を挙げることができる。例えば、免疫学的分析方法を用いる場合は、ランテスのタンパク質が含まれている試料、例えば液体試料を用いることが好ましく、分子生物学的分析方法を用いる場合は、ランテスのmRNAが含まれている試料、例えば単球、T細胞、又は線維芽細胞を用いることが好ましい。[2]骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法は、ランテスを分析することを特徴とするものである。前記モニタリングは、骨減少症又は骨粗鬆症の経過のモニタリング、治療効果のモニタリング、骨減少症又は骨粗鬆症のハイリスクグループのモニタリングなどに用いることが可能である。更に、薬剤の治療において、モニタリングによって、治療薬の投与量の調整を行うことも可能である。 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の治療モニタリング方法における「ランテスの分析方法」は、前記「[1]骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法」の項に記載の方法を用いることができる。すなわち、免疫学的分析方法、又は分子生物学的分析方法を用いることができる。(治療方法) 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法は、治療効果のモニタリングに用いることができる。骨減少症又は骨粗鬆症の治療方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホルモン補充療法、治療薬の投与、日光浴、運動療法、食事療法(カルシウム、又はビタミンDの摂取)又は理学療法を挙げることができる。 ホルモン補充療法としては、例えば、エストロゲン投与、又はエストロゲン及びプロゲステロンの投与を挙げることができる。更に、治療薬としては、例えば、ビスホスホネート、ラロキフェン(エビスタ)、カルシトニン、又はテリパラチドを挙げることができる。 例えば、ビスホスホネートは、破骨細胞の機能を抑制することにより、骨減少症、又は骨粗鬆症を治療する薬剤である。しかしながら、破骨細胞の機能が抑制されると骨芽細胞が働かなくなり、骨のリモデリングが起こりにくくなる結果、骨が脆弱化することがある。ここに咬合による持続的な力が働くと、微小なひびが顎骨に形成されることになる。そこから口腔粘膜を介して侵入した細菌により顎骨に感染が生じる。現在、ビスホスホネート関連顎骨壊死といって非常に大きな問題となっている。本発明の治療のモニタリング方法は、ランテス値を測定することにより、ランテス値が低下しすぎることにより、破骨細胞の機能の過度な抑制による副作用を予測することも可能である。(被検試料) 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法において、ランテス又はランテス遺伝子の分析に用いる被検試料としては、特に限定されないが、骨減少症又は骨粗鬆症の確定診断された患者、前記治療を受けている患者、骨減少症又は骨粗鬆症のハイリスクグループの対象者の被検試料を挙げることができる。具体的には、それらの対象者の生体由来の組織又は液体試料(例えば、尿、血液、血清、血漿、リンパ液、組織液、髄液、唾液、尿、汗等)を挙げることができる。例えば、免疫学的分析方法を用いる場合は、ランテスのタンパク質が含まれている試料、例えば液体試料を用いることが好ましく、分子生物学的分析方法を用いる場合は、ランテスのmRNAが含まれている試料、例えば単球、T細胞、又は線維芽細胞を用いることが好ましい。 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法は、特にはヒト免疫不全ウイルス感染患者、閉経後の女性、甲状腺機能亢進症患者、拒食症患者、クローン病患者、胃切除患者、ビタミンD欠乏症患者、糖尿病患者、又は癌患者の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリングに有用に用いることができる。更には、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者の治療のモニタリングに有用である。[3]骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリングキット 本発明のキットは、骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリング用として用いるものである。本発明のキットは、本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法、又は骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法に用いることができる。更に、骨減少症又は骨粗鬆症の検出方法、又は診断方法に用いることが可能である。(ランテス分析方法) 本発明のキットは、「[1]骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法」の項に記載のランテスの分析方法を行うものであってもよい。 例えば、本発明のキットが免疫学的分析方法を行うものである場合、前記のランテスに対するモノクローナル抗体、若しくはポリクローナル抗体、又はそれらの抗原結合性断片を含むことができる。前記抗原結合性断片としては、ランテスへの特異的結合能を有する限り、特に限定されるものではなく、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、又はFvを用いることができる。 例えば、標識化抗体を用いる免疫学的手法、例えば、酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、又は放射免疫測定法などの場合には、標識物質で標識した標識化抗体又は標識化抗体断片の形態で含むことができる。標識物質の具体例としては、酵素としてペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、又はグルコースオキシダーゼ等を、蛍光物質としてフルオレセインイソチアネート又は希土類金属キレート等を、放射性同位体として3H、14C、又は125I等を、その他、ビオチン、アビジン、又は化学発光物質等を挙げることができる。酵素又は化学発光物質等の場合には、それ自体単独では測定可能なシグナルをもたらすことはできないことから、それぞれ対応する適当な基質等を選択して含むことが好ましい。 本発明のキットが分子生物学的分析方法を行うものである場合、例えばフォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマーセット、及び/又はプローブを含むことができる。キットの分析方法としては、特に限定されるものではないが、サザンブロット法、ノザンブロット法、又はPCR法の原理を用いた分析方法が挙げられる。プライマーセット及びプローブは、適用される測定原理に基づいて、修飾されてもよい。例えば、TaqMan法の場合、TaqManプローブは、5’末端をレポーター色素で、3’末端をクエンチャー色素で修飾される。 本発明のキットは、ランテス又はランテス遺伝子を標準物質として含むことができる。具体的には、生体試料から精製したランテス、又はランテス遺伝子、遺伝子工学的に作成した組換えランテス又はランテス遺伝子、又は化学的に合成したランテスの部分ペプチド又はランテス遺伝子の部分オリゴヌクレオチドを挙げることができる。 本発明のキットは、ランテス又はランテス遺伝子を分析することを特徴とする本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法又はモニタリング方法に用いることができる。従って、キットには骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリング用であることを明記した取り扱い説明書を含むことができる。包装容器に骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリング用であることを明記することもできる。また、本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリング用キットは、骨減少症又は骨粗鬆症の検出又は診断に用いることができる。 前記ランテス遺伝子に特異的に結合するフォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマーセット、及び/又はプローブは、骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリングキットに使用することができる。また、ランテス遺伝子に特異的に結合するフォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマーセット、及び/又はプローブは、骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリングキットの製造に使用することができる。 前記ランテスに特異的に結合する抗体、その抗原結合性断片、又はその組み合わせは、骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリングキットに使用することができる。また、ランテスに特異的に結合する抗体、その抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はその組み合わせは、骨減少症又は骨粗鬆症の予測又はモニタリングキットの製造に使用することができる。 更に、骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法、検出方法、診断方法、又はモニタリング方法に、本発明のキットを使用することができる。 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。《実施例1》 本実施例においては、CCR5阻害剤が投与されたHIV患者におけるランテスの血液濃度の測定を行った。 3名のHIV感染者(患者A、患者B、及び患者C)に、CCR5ブロッカーであるマラビロク(ヴィーブ社)を、それぞれ患者Aは1200mg/日、患者Bは600mg/日、及び患者Cは1200mg/日投与した。 投与開始後0、1、3、6、12、及び15ヶ月後に、血液を採取し、ランテスを測定した。ランテスの測定は、Quantikine Human RANTES Immunoassay(Eliza)(R&D SYSTEMS)を用い説明書に従い行った。ランテスの測定結果を表1に示す。また、HIV感染患者3名の0ヶ月(服用開始時)のランテスの平均値、1年投与後のランテスの平均値(服用1年後)、HIV感染患者B及び患者Cの18ヶ月投与後のランテスの平均値(服用18ヶ月)、HIV感染患者Aの18ヶ月投与後のランテス値(フォサマック併用6ヶ月)、及びコントロールとして健常者(非服用者)10名のランテスの平均値を図1に示す。平均値は、mean±SDで示した。 患者A、患者B、及び患者Cは健常者と比較すると、マラビロクの投与前(0ヶ月)においても、ランテスの値が比較的高値を示したが、CCR5阻害剤であるマラビロクを投与した患者3人の平均は、1年後に大きく上昇した。 患者Aはマラビロク服用開始時からランテスの値が上昇し始め、12ヶ月で0ヶ月の5倍以上に上昇した。また、骨密度はマラビロク投与開始後、12ヶ月で97%程度に低下し、更に15ヶ月では94%に低下した。12ヶ月の時点で骨代謝異常の指標である骨塩量を測定したところ、骨粗鬆症と診断されたため、骨粗鬆症の治療薬であるビスホスホネート剤(フォサマック;メルク)を、35mg/週投与した。フォサマックによる治療開始後6ヶ月(マラビロクの投与開始後18ヶ月)に、ランテス値はマラビロク導入前の値に低下した。 患者Bは6ヶ月まではランテス値の変動は見られなかったが、12ヶ月で0ヶ月の値の6倍程度に急上昇した。この時点で骨塩量を測定したところ、骨密度が97%程度に低下していた。骨減少症診断には至らないものの要注意モニター中で、特に治療を行わなかったところ、ランテス値は更に上昇し18ヶ月の時点で0ヶ月の5倍を超えた。 患者Cは、12ヶ月でランテス値は18,000程度に一時低下した。この時点で骨塩量を測定したところ骨に大きな変化はなかった。経過を観察し続けたところ、ランテス値は上昇し、18ヶ月の時点で0ヶ月の2倍を超えた。 なお、患者A、患者B、及び患者Cのマラビロク投与によるHIVに対する治療効果(CD4値、ウイルス量、及びCRP値)を、併せて表1に示す。患者Aは、18ヶ月でCD4の値が上昇し、免疫系が回復していることがわかる。また、患者Bは12ヶ月でCD4が上昇し、またウイルスも検出限界以下に低下している。患者Cは18ヶ月でウイルス量が検出限界以下に低下している。HIV患者では治療を行っても、1年後にウイルスが検出されることが多いが、患者A、B、及びCでは1年後にウイルスが検出されず、マラビロクによる治療効果が確認された。また、他のHIV治療薬では、激しい副作用があるものがあるが、マラビロクによる副作用である骨減少症又は骨粗鬆症については、ランテスの測定により、予測が可能であった。更に患者Aにおいては、骨粗鬆症の治療薬であるビスホスホネートを併用投与することにより骨粗鬆症を防ぐことが可能であった。 本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法は、骨粗鬆症のハイリスクグループにおいて骨減少症又は骨粗鬆症を早期に予測することができる。また、本発明の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法は、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者の骨減少症又は骨粗鬆症を早期に予測することができる。更に、本発明の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法によれば、骨減少症又は骨粗鬆症の治療効果を的確にモニタリングできる。 ランテスを分析することを特徴とする、骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法。 ランテス分析のための被検試料が、ヒト免疫不全ウイルス感染患者、閉経後の女性、甲状腺機能亢進症患者、拒食症患者、クローン病患者、胃切除患者、ビタミンD欠乏症患者、糖尿病患者、及び癌患者から選択される被験者由来である、請求項1に記載の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法。 ランテス分析のための被検試料が、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者由来である、請求項2に記載の骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法。 ランテスを分析することを特徴とする、骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法。 ランテス分析のための被検試料が、ヒト免疫不全ウイルス感染患者、閉経後の女性、甲状腺機能亢進症患者、拒食症患者、クローン病患者、胃切除患者、ビタミンD欠乏症患者、糖尿病患者、及び癌患者から選択される被験者由来の被検試料である、請求項4に記載の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法。 ランテス分析のための被検試料が、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者由来である、請求項5に記載の骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法。 骨減少症又は骨粗鬆症の予測用又はモニタリング用ランテス分析キット。 被検試料が、ヒト免疫不全ウイルス感染患者、閉経後の女性、甲状腺機能亢進症患者、拒食症患者、クローン病患者、胃切除患者、ビタミンD欠乏症患者、糖尿病患者、及び癌患者から選択される被験者由来である、請求項7に記載の骨減少症又は骨粗鬆症の予測用又はモニタリング用ランテス分析キット。 被検試料が、CCR5阻害剤が投与されているヒト免疫不全ウイルス感染患者由来である、請求項8に記載の骨減少症又は骨粗鬆症の予測用又はモニタリング用ランテス分析キット。 【課題】本発明の目的は、DEXA法に代わる簡便な骨減少症又は骨粗鬆症の検出(診断)方法を提供することである。また、本発明の目的は、DEXA法での骨減少症又は骨粗鬆症の確定診断の前に、骨減少症又は骨粗鬆症を予測することのできる予測方法を提供することである。【解決手段】前記課題は、ランテスを分析することを特徴とする骨減少症又は骨粗鬆症の予測方法、ランテスを分析することを特徴とする骨減少症又は骨粗鬆症のモニタリング方法、及び骨減少症又は骨粗鬆症の予測用又はモニタリング用ランテス分析キットによって解決することができる。【選択図】図1配列表