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タイトル:公開特許公報(A)_エチレングリコール類の製造方法
出願番号:2012081454
年次:2013
IPC分類:C07C 41/42,C07C 43/13


特許情報キャッシュ

渡邊 明正 瀧波 孝広 JP 2013209329 公開特許公報(A) 20131010 2012081454 20120330 エチレングリコール類の製造方法 株式会社日本触媒 000004628 八田国際特許業務法人 110000671 渡邊 明正 瀧波 孝広 C07C 41/42 20060101AFI20130913BHJP C07C 43/13 20060101ALI20130913BHJP JPC07C41/42C07C43/13 D 5 OL 14 4H006 4H006AA02 4H006AD11 4H006BD20 4H006GP01 4H006GP10 本発明は、エチレングリコール類の製造方法に関する。より詳しくは、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールの製造方法に関する。 エチレングリコール類(たとえば、モノ、ジ、トリおよびテトラエチレングリコール)は、溶媒、不凍液、潤滑剤、ポリエステルなどの合成原料として用いられ、有用性の高い化合物である。これらの用途に用いる際、高純度で着色の少ないエチレングリコール類が望まれているが、エチレングリコール類は、製法上、副産物であるアルデヒドを含んでいることが多く、また、着色しやすいという問題があった。 そこで、たとえば、特許文献1には、エチレングリコール類に含まれるアルデヒド類を低減する方法として、エチレングリコール類の取得に使用される装置を部分的に、または全体的に還元性リン化合物で表面処理する方法が開示されている。 また、特許文献2には、着色物質を除去する方法として、有機溶剤を硫酸で処理した後蒸留する方法が開示されている。特表2000−503978号公報特開平10−218798号公報 しかしながら、特許文献1に記載の方法では、リン化合物が高価であることと、リン化合物を添加する工程が製造工程に別途追加されること、という点で、製造コストが上昇するという問題がある。また、特許文献2に記載の方法では、硫酸を添加し蒸留する工程が製造工程に別途追加されること、蒸留後に残留物が生じるため歩留まりが下がること、また残留物を廃棄する処理費用が必要であること、という点で、製造コストが上昇するという問題がある。さらに、特許文献1および特許文献2に記載の方法では、アルデヒド含量と着色という双方の観点から、長期的に高純度かつ高品質なエチレングリコール類が得られていないという問題もある。 そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、安価な手法によって、アルデヒド含量が低く、着色の少ないエチレングリコール類を製造する方法を提供することを目的とする。 本発明者は、鋭意研究を行った結果、エチレングリコール類を製造する際に用いる多管式リボイラの管内部表面に析出した析出物の析出量が、得られるエチレングルコール類のアルデヒド含量および着色度に相関していることを見出した。そして、かような知見のもと、多管式リボイラを備える精留装置を用いてエチレングリコール類を製造するに際し、所定量の析出物が該リボイラの管内部表面に析出した時点で、該リボイラの管内部表面を物理的処理により析出物を除去することで、上記目的を達することを見出し、本発明を完成した。すなわち、上記目的は、精留塔、多管式リボイラ、およびこれらを接続する配管を備えてなる精留装置を用いるトリまたはテトラエチレングリコールの製造方法であって、所定量の析出物が前記リボイラの管内部表面に析出した時点で、前記リボイラの管内部表面を、物理的処理することにより前記析出物を除去する除去工程を含むトリまたはテトラエチレングリコールの製造方法によって達成される。 本発明によれば、安価な手法によって、アルデヒド含量が低く、着色の少ないエチレングリコール類(トリまたはテトラエチレングリコール)の製造方法が提供される。エチレンオキシドの製造に用いられる製造装置の概略図である。本発明の一実施形態である製造方法に用いられるエチレングリコール類の装置構成の工程概略図である。 本発明は、精留塔、多管式リボイラ、およびこれらを接続する配管を備えてなる精留装置を用いるトリまたはテトラエチレングリコールの製造方法であって、所定量の析出物が前記リボイラの管内部表面に析出した時点で、前記リボイラの管内部表面を、物理的処理することにより前記析出物を除去する除去工程を含むトリまたはテトラエチレングリコールの製造方法に関する。 本発明の製造方法によれば、多管式リボイラ(以下、単に「リボイラ」と称する場合もある。)の管内部表面を、物理的処理することにより析出物を除去することで、アルデヒド含量が低く、着色の少ないトリまたはテトラエチレングリコールが得られる。 なお、本明細書中、ジ、トリまたは/およびテトラエチレングリコールを「エチレングリコール類」と称する場合がある。 トリまたはテトラエチレングリコールは、触媒の存在下、ジエチレングリコールとエチレンオキシドとを反応させることで得られる。この際、触媒として好ましく用いられるのは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。当該モノまたはジエチレングリコール、エチレンオキシドおよび触媒を含む反応液に蒸留操作を繰り返すことにより、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびトリエチレングリコールが分留される。この際、蒸留操作は、精留塔、多管式リボイラ、およびこれらを接続する配管を備えてなる精留装置で行われる。そして、反応液の加熱操作を行う多管式リボイラにおいて、アルカリ金属またはアルカリ土類金属由来の析出物を生じることが観測された。そして、本発明者らは、この析出物が高アルデヒド含量および高着色度の原因となっていること、および当該析出物を物理的処理により除去することで、品質の優れたエチレングリコール類が得られることを見出したものである。すなわち、本発明は、従来から問題とされていたアルデヒド含量と着色との課題について、リボイラの管内部表面に付着する析出物が影響することを初めて見出したことに基づくものである。 また、本発明の製造方法によれば、リボイラの管内部表面に付着する析出物に、物理的処理を行うだけで、連続稼働して少なくとも4年間、当該物理的処理を行う必要がない。たとえば、連続式で製造を行う場合であっても、4年間以上継続して連続製造が可能であり、その間、リボイラへの物理的処理を要せず、優れた品質のエチレングリコール類が継続して得られる。したがって、本発明の製造方法によれば、リボイラの管内部表面に所定量の析出物が析出した時点で物理的処理を実施すればよく、物理的処理の工程を製造工程に別途追加する必要がない。すなわち、本発明の製造方法によれば、製造コストが抑えられた、簡便な方法で、優れた品質のエチレングリコール類を得ることができる。 以下、本実施形態のエチレングリコール類の製造方法を順に説明する。 トリおよびテトラエチレングリコールの原料であるモノエチレングリコールは、エチレンオキシドの加水反応により製造される。エチレンオキシド製造プラントとエチレングリコール(モノ、ジ、トリおよびテトラエチレングリコール)製造プラントとは、併設されるのが一般的である。それらのプロセスについては、たとえば、化学工学会編「化学プロセス」121〜128頁、9.エチレンオキシド・エチレングリコール(東京化学同人、1998年3月25日発行)に解説されている。 エチレンオキシド/エチレングリコール製造プロセスの一例を図1に示す。図1に示されるように、エチレンを、銀系触媒存在下、分子状酸素で気相酸化して得られる生成ガスを、エチレンオキシド吸収塔に導き、水性媒体吸収液(たとえば、水)にて接触吸収処理し、塔底液としてエチレンオキシド水溶液を得る。なお、エチレンオキシド水溶液には、エチレンオキシドの低分子量重合体、エチレンオキシドと水との反応生成物であるエチレングリコール(この際、モノエチレングリコールの他に少量のジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールも生成する。)、およびエチレンオキシドと不純物との反応生成物が含まれる。当該エチレンオキシド水溶液を、エチレンオキシド放散塔に導き、エチレンオキシド放散塔底部を加熱蒸気で加熱することによってエチレンオキシドを水溶液から放散させ、該放散塔の塔頂より、エチレンオキシドを含む放散蒸気が得られる。該放散蒸気は、エチレンオキシド、水、二酸化炭素、不活性ガス(窒素、アルゴン、メタン、エタン等)の他にホルムアルデヒド等の低沸点不純物およびアセトアルデヒド、酢酸等の高沸点不純物を含むため、該放散蒸気が、脱水工程、軽質分分離工程および重質分分離工程の各々を経ることでで、精製エチレンオキシドが取得される。そして、エチレンオキシド放散塔底部より得られる実質的にエチレンオキシドを含まない水溶液は、エチレンオキシド吸収塔に供給される吸収液として循環使用される。 エチレングリコールは、エチレンオキシドを分離した後の水溶液(すなわち、実質的にエチレンオキシドを含まない水溶液)を、濃縮し脱水することで得られる。以下、エチレンオキシドを分離した後の水溶液を、「粗グリコール(1)」と称する。当該粗グリコール(1)は、モノエチレングリコールを主成分とし、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール等を含む組成物である。また、粗グリコール(1)には、エチレンオキシド水溶液に含有されていた不純物も含まれる。 粗グリコール(1)からモノエチレングリコールを分留するために、粗グリコール(1)をモノエチルグルコール(MEG)精留塔へ送る。精留塔に送られた粗グリコール(1)は、減圧蒸留され低沸点成分のモノエチレングリコールと、高沸点成分のジエチレングリコール等とに分留される。精留塔の塔頂部から留出するモノエチレングリコールの蒸気は、配管の経路上に設けられた凝縮器により全量凝縮液化されたモノエチレングリコールとする。このモノエチレングリコールの一部を、配管を通じて精留塔へ還流液として戻し、残りのモノエチレングリコールは配管を通じてMEG製品貯蔵タンク(図示せず)に回収する。一方、MEG精留塔の塔底部の粗グリコール(以下、「粗グリコール(2)」と称する。)には、モノ、ジおよびトリエチレングリコール等が含まれる。該粗グリコール(2)は、配管を通じてジエチレングリコール(DEG)精留塔へ送られ、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールの分留および回収工程(以下、当該工程を「エチレングリコール類の精留工程」とも称する。)を行う。本発明は、当該エチレングリコール類の精留工程に特徴を有するものである。 エチレングリコール類の精留工程は、粗グリコール(2)を、触媒の存在下、エチレンオキシドと反応させることで、トリまたはテトラエチレングリコールを製造し、これらを分留して、ジ、トリおよびテトラエチレングリコールのそれぞれが得られる。 図2に、粗グリコール(2)からジ、トリおよびテトラエチレングリコールの精留工程の概略図を示す。図2に示されるように、モノエチレングリコール(MEG)精留塔51と、第1のジエチレングリコール(DEG)精留塔52と、第2のDEG精留塔54と、トリエチレングリコール(TEG)精留塔56と、テトラエチレングリコール(TRAEG)精留塔58と、が接続されている。そして、これらの精留塔52、54、56、58は、それぞれ、多管式リボイラ53、55、57、59、およびこれらを接続する配管72、73、74、75、76、77、78、79を備える。第1のDEG精留塔52は、配管60によりトリエチレングリコール(TEG)合成反応器60と接続され、TEG合成反応器60から排出される反応液は配管63から、MEG精留塔51からDEG精留塔52へと接続される配管61を通り、第1のDEG精留塔52に導かれる。 粗グリコール(2)は、第1のDEG精留塔52へ導かれ、多管式リボイラ53で加熱されることによって蒸気を発生し、該蒸気がTEG合成反応器60に導かれてエチレンオキシドとアルカリ金属触媒と接触し、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールを生成する。当該反応より得られる反応液は配管63から、配管61を通り、第1のDEG精留塔52に導かれる。第1のDEG精留塔52で得られた反応液(以下、「粗グリコール(3)」と称する。)は、ジエチレングリコールを分留するために、第2のDEG精留塔54へ送る。第2のDEG精留塔54に送られた粗グリコール(3)は、減圧蒸留され低沸点成分のジエチレングリコールと、高沸点成分のトリおよびテトラエチレングリコール等とに分留される。第2のDEG精留塔54の塔頂部から留出するジエチレングリコールの蒸気は、配管の経路上に設けられた凝縮器により全量凝縮液化されたジエチレングリコール(DEG製品)とする。 第2のDEG精留塔54の塔底部の粗グリコール(以下、「粗グリコール(4)」と称する。)には、トリおよびテトラエチレングリコール等が含まれる。該粗グリコール(4)は、配管を通じてTEG精留塔56へ送られ、減圧蒸留され低沸点成分のトリエチレングリコールと、高沸点成分のテトラエチレングリコール等とに分留される。TEG精留塔56の塔頂部から留出するトリエチレングリコールの蒸気は、配管の経路上に設けられた凝縮器により全量凝縮液化されたトリエチレングリコール(TEG製品)とする。 TEG精留塔56の塔底部の粗グリコール(以下、粗グリコール(5))には、トリおよびテトラエチレングリコール等が含まれる。該粗グリコール(5)は、配管を通じてTRAEG精留塔58へ送られ、減圧蒸留され低沸点成分のテトラエチレングリコールと、高沸点成分や不純物等とに分留される。TRAEG精留塔58の塔頂部から留出するテトラエチレングリコールの蒸気は、配管の経路上に設けられた凝縮器により全量凝縮液化されたテトラエチレングリコール(TRAEG製品)とする。 以上のように、本発明で用いられる精留装置は、精留塔、多管式リボイラ、およびこれらを接続する配管を必須で備える。本発明は、リボイラの管内部表面において、所定量の析出物が析出した時点で、リボイラの管内部表面に物理的処理を実施することで、アルデヒド含量が低く、着色の少ないエチレングリコール類が得られることを見出したものである。すなわち、エチレングリコール類を連続して製造するにあたって、得られるエチレングリコール類が、製造量に比例して経時的に、アルデヒド含量が増加し、着色度が増加する傾向にあることを見出し、リボイラの管内部表面に析出する析出物と、エチレングリコール類のアルデヒド含量および着色度との関係を見出したのである。 本発明の製造方法の工程は、連続工程またはバッチ工程のいずれでもとることができるが、連続工程の方が効率的であり好ましい。粗グリコール(1)〜(5)の組成は、製造条件を設定することにより、適宜調整できる。連続工程の場合は、次の連続精留工程への粗グリコールの供給は、反応または蒸留を進行させながら、連続的に一部を配管を通じて次の精留塔へ導くことにより行われる。したがって、連続精留工程は、精留塔内の粗グリコールを、当該精留工程で蒸留されるグリコールを留去しつつ、次の精留工程の精留塔内に連続的に供給する製造工程である。また、バッチ工程で行う場合は、反応または蒸留終了後に、精留塔の塔底液である粗グリコールを、次の蒸留工程の精留塔へと、配管を通じて供給する。 本発明において用いられる精留塔の構造は、特に制限されず、棚段式精留塔、充填精留塔等が挙げられる。精留塔の理論段数は、特に制限されないが、好ましくは1〜50段、より好ましくは10〜20段である。 本発明において、第1のDEG精留塔52での粗グリコール(2)の蒸留は、好ましくは10〜550hPa、さらに好ましくは15〜70hPaで、蒸留温度が、好ましくは125〜225℃、より好ましくは135〜195℃で行われる。また、本工程では、粗グリコール(2)をTEG合成反応器へと導くが、TEG合成反応温度は、特に制限されず、好ましくは100〜200℃、より好ましくは140〜150℃である。 粗グリコール(2)と反応するエチレンオキシドの量は、粗グリコール(2)の組成と、ジ、トリまたはテトラエチレングリコールの目的とする製造量と、を考慮し、適宜調整できる。 また、粗グリコール(2)の蒸気がエチレンオキシドと反応する際に用いられるアルカリ金属触媒は、特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシドなどのアルコキシアルカリ金属塩;n−ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ナトリウムアミド;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物などが挙げられる。これらのアルカリ金属触媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、取り扱いやすさや経済性などの観点から、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシドが好ましく、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがさらに好ましい。アルカリ金属触媒の量としては、特に制限されないが、当該工程で用いられるエチレンオキシドに対して、好ましくは0.01〜0.1重量%、より好ましくは0.05〜0.06重量%である。 本発明において、第2のDEG精留塔54での粗グリコール(3)の蒸留は、好ましくは5〜640hPa、さらに好ましくは6〜50hPaで、蒸留温度が、好ましくは100〜230℃、より好ましくは110〜157℃で行われる。 本発明において、TEG精留塔56での粗グリコール(4)の蒸留は、好ましくは10〜220hPa、さらに好ましくは10〜22hPaで、蒸留温度が、好ましくは159〜230℃、より好ましくは159〜170℃で行われる。 本発明において、TRAEG精留塔58での粗グリコール(5)の蒸留は、好ましくは4〜57kPa、さらに好ましくは4〜10hPaで、蒸留温度が、好ましくは150〜230℃、より好ましくは150〜177℃で行われる。 本発明の製造方法は、エチレングリコール類を製造するのに際して、第1のDEG精留塔52、第2のDEG精留塔54、TEG精留塔56、またはTRAEG精留塔58において、それぞれ、配管を通じて接続された多管式リボイラ53、55、57、または59の管内部表面に析出した析出物を、物理的処理により除去することを特徴とする。その際、物理的処理を施す多管式リボイラとしては、多管式リボイラ53、55、57、および59から選択される少なくとも1つ以上であれば本願発明の効果は達成されるが、これらのうち、多管式リボイラ53に物理的処理を施すのが好ましい。より好ましくは多管式リボイラ53と、多管式リボイラ55、57、および59から選択される少なくとも1つ以上と、に物理的処理を施す形態であり、さらに好ましくは多管式リボイラ53、55、57、および59の全ての多管式リボイラに物理的処理を施す形態である。 本発明で精留装置に生じる析出物は、反応による副産物などの不純物であり、その成分は特に制限されないが、析出物の成分のひとつとして、トリおよびテトラエチレングリコールを製造する際に用いられるアルカリ金属塩由来であることが推測される。 多管式リボイラの管内部表面の物理的処理を実施する時期としては、所定量の析出物が多管式リボイラの管内部表面に析出した時点である。これは、所定のアルデヒド含量および着色度のエチレングリコール類が得られるタイミングを考慮して設定すればよい。所定のアルデヒド含量および着色度としては、たとえば、トリエチレングリコールとしては、アルデヒド含量が好ましくは0〜50ppm、より好ましくは0以上40ppm未満、さらに好ましくは0〜30ppmであり、硫酸着色が好ましくはAPHA No.0〜1000、より好ましくはAPHA No.0〜850、さらに好ましくはAPHA No.0〜700である。また、テトラエチレングリコールとしては、アルデヒド含量が好ましくは0〜120ppm、より好ましくは0以上70ppm未満、より好ましくは0〜50ppmあり、硫酸着色が好ましくはガードナーNo.0〜15、より好ましくはガードナーNo.0〜13、さらに好ましくはガードナーNo.0〜10である。この値を超える場合は多管式リボイラの管内部表面等に物理的処理を実施するのがよい。また、トリエチレングリコールのアルデヒド含量が50ppm以下、および硫酸着色がAPHA No.1000以下およびテトラエチレングリコールのアルデヒド含量120ppm以下、ガードナーNo.15以下というエチレングルコール類を連続して得るためには、好ましくは1〜8年/1回、より好ましくは3〜4年/1回行えばよい。 なお、蒸留量については、製造するエチレングリコール類のアルデヒド含量および着色度の所望の範囲により変化する。 物理的処理により除去される析出物の量としては、上述のように、所望のアルデヒド含量および着色度のエチレングリコール類となればよいため、特に制限されない。なお、トリ及びテトラエチレングリコールのアルデヒド含量は、「MBTH法」に準拠して測定された値である(E. Savicky et al, (1961) Analyt. Chem., 33, 92−96)。 本発明における物理的処理としては、研磨処理(ブラッシングなど)が挙げられる。研磨処理(ブラッシング)を行う際には、ワイヤーブラシ、チャンネルブラシ、ねじりブラシ(チューブブラシまたはコンデンサーブラシとも称される。)等の種々のブラシを用いてブラッシングをすることがより好ましい。ブラシの毛は特に制限されないが、真鍮、鋼、SUS、ポリエステル、またはナイロンなどの材質が挙げられる。これらのうち、真鍮、SUSが好ましい。ブラシのサイズは、特に制限されず、洗浄する箇所のサイズと析出物の量とに合わせて、適宜調整する。 研磨処理(ブラッシング)を実施する際の目安としては、たとえば、1〜100mmの塊状物等が除去される程度実施するのが好ましい。連続稼働を行った場合、たとえば、10年間の製造において除去されるリボイラの管内部の析出物の量は、3〜4kg程度である。 本発明の好ましい本実施形態としては、リボイラの管内部は、化学的処理により処理される。すなわち、本発明の製造方法は、除去工程後に、化学的処理により前記リボイラの管内部を処理する工程をさらに含むのが好ましい。その際、化学的処理を施す多管式リボイラとしては、物理的処理を施した多管式リボイラに化学的処理を施すことが好ましい。 化学的処理としては、酸洗浄、アルカリ洗浄、防錆処理等が挙げられる。これらのうち、酸洗浄、防錆処理が好ましく、酸洗浄および防錆処理を行うことがより好ましく、酸洗浄後に防錆処理を行うことがさらに好ましい。本発明のエチレングリコール類の製造においては、アルカリ金属触媒を用いるため、析出物として、アルカリ金属塩等の塩類が含まれると考えられる。そのため、化学的処理としては、酸洗浄が好ましく、酸洗浄により系内(リボイラの管内部や精留塔など)が酸性化されるため、酸洗浄後に防錆処理を行うことで、装置内のさびなどの劣化を抑制することができる。 酸洗浄としては、酸性水溶液を用いて、リボイラの管内部が酸性水溶液に浸漬されるような条件で行う。具体的には、酸性水溶液を、好ましくは25〜65℃、より好ましくは60〜65℃で、精留塔およびリボイラ内で循環する。したがって、本発明の好ましい実施形態としては、酸洗浄は、精留塔の内部およびリボイラの管内部に実施する。よって、当該精留塔およびリボイラを接続する配管も酸洗浄が実施される。 酸洗浄で用いられる酸性水溶液としては、特に制限されないが、塩酸、硝酸、過塩素酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、炭酸、リン酸、クエン酸、スルファミン酸等の水溶液が挙げられる。これらの酸は、1種単独でも2種以上併用してもよい。酸性水溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸、シュウ酸、スルファミン酸が好ましく、塩酸、硫酸、シュウ酸、スルファミン酸がより好ましく、塩酸、硫酸、シュウ酸、スルファミン酸がさらに好ましく、シュウ酸およびスルファミン酸を併用するのが特に好ましい。これらの酸性水溶液中の酸性物質の量は、特に制限されないが、たとえば、酸洗浄を行う際の系内の溶液(酸性水溶液)中、3〜5質量%の酸性物質を含むのが好ましい。 酸洗浄は、酸性物質を水等に溶解して調製してもよいし、市販品をそのまま、または適宜希釈して使用することもできる。 酸洗浄を行う目安としては、洗浄対象(たとえば、リボイラの管内部および精留塔の内部)の容量(1m3)に対して、好ましくは1kg〜100kg、さらに好ましくは5kg〜15kgの酸性水溶液を用いて行うことができる。 防錆処理としては、防錆処理剤を用いて、リボイラの管内部が防錆処理剤を含む水溶液に浸漬されるような条件で行う。具体的には、防錆処理剤を含む水溶液を、好ましくは40〜65℃、より好ましくは60〜65℃で、精留塔およびリボイラ内で還流する。したがって、本発明の好ましい実施形態としては、防錆処理は、精留塔の内部およびリボイラの管内部に実施する。よって、当該精留塔およびリボイラを接続する配管も防錆処理が実施される。 防錆処理で用いられる防錆処理剤としては、公知の防錆処理剤を用いることができ、たとえば、気化性防錆剤、水溶性防錆剤等を用いることができ、水溶性防錆剤が好ましい。 気化性防錆剤としては、たとえば、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト等の有機アミンの亜硝酸塩類;シクロヘキシルアンモニウムカプリレート、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、モノエタノールアミンベンゾエート、シクロヘキシルアンモニウムカーボネート等の有機アミンのカルボン酸塩または炭酸塩;ブチルモノエタノールアミン等のヒドロキシアミン類;ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、ニトロフェノール等のニトロ化合物;ベンゾトリアゾール等が挙げられる。 水溶性防錆剤としては、たとえば、ホウ酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、亜硝酸塩等を用いた無機化合物系、アルカノールアミン、脂肪酸、カルボン酸またはその塩等の水・油の両方に溶解可能な有機化合物系、および前記の無機化合物系と有機化合物系を組み合わせたものが挙げられる。具体的には、クエン酸アンモニウム、亜硝酸ソーダ、クエン酸等の無機化合物;トリエタノールアミン、エチレンジアミン、モルホリン、シクロヘキシルアミン等のアルカノールアミン等;カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ミリスチン酸等の脂肪族カルボン酸またはそのアミン塩;スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはそのアミン塩;ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、アミノ安息香酸、ケイ皮酸、ニトロケイ皮酸、トルイル酸、クミン酸、ブチル安息香酸等の芳香族カルボン酸またはそのアミン塩;フタル酸、ニトロフタル酸等の芳香族ジカルボン酸またはそのアミン塩;等が挙げられる。 防錆処理剤の使用量は、特に制限されず、防錆処理に用いる水溶液全量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%、さらに好ましくは1〜2質量%である。 防錆処理の際には、中和剤を用いてもよい。中和剤としては、特に制限されないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどの炭酸水素塩;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸塩;亜硝酸ナトリウム(これは防錆剤)、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸塩;等が挙げられる。これらの中和剤は、1種単独でも2種以上併用してもよい。中和剤の使用量は、特に制限されず、作業終了後、pHが中性となるよう適宜調整される。 防錆処理を行う目安としては、洗浄対象(たとえば、リボイラの管内部および精留塔の内部)の容量(1m3)に対して、好ましくは1kg〜100kg、さらに好ましくは5kg〜15kgの防錆処理剤を含む水溶液を用いて行うことができる。 これらの化学的処理は、得られるエチレングリコール類のアルデヒド含量および着色度の所望の範囲になるまで洗浄を行うのが好ましい。具体的には、トリエチレングリコールとしては、アルデヒド含量が好ましくは0〜50ppm、より好ましくは0〜30ppmであり、硫酸着色が好ましくはAPHA No.0〜1000、より好ましくはAPHA No.0〜600となるまで化学的処理を行うのがよい。また、テトラエチレングリコールとしては、アルデヒド含量が好ましくは0〜300ppm、より好ましくは0〜120ppmあり、硫酸着色が好ましくはガードナーNo.0〜20、より好ましくはガードナーNo.0〜9となるまで化学的処理を行うのがよい。 以上のように、本発明の製造方法における化学的処理は、精留塔の内部およびリボイラの管内部に実施することが好ましい。すなわち、化学的処理により精留塔の内部を処理する工程をさらに含むことが好ましい。化学的処理を精留塔の内部においても実施することで、低アルデヒド含量および低着色度のエチレングリコール類を得ることができ、さらに長期間その効果を維持することができる。 本実施形態において、リボイラの管内部表面に物理的処理のみを実施した場合でも、アルデヒド含量が低く、着色度の少ないエチレングリコール類が得られるが、物理的処理と化学的処理とを併用することで、さらにその効果が長期間維持される。また、物理的処理と化学的処理とを、この順に行うことが好ましく、すなわち、物理的処理の後に化学的処理を行うことで、本発明の効果をさらに長期間維持することができる。 本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。 <評価> 以下の実施例では、得られたエチレングリコール類を、下記測定法により評価した。 (アルデヒド含量) アルデヒド含量は、「MBTH法」に準拠して測定された値である。E. Savicky et al,(1961) Analyt. Chem., 33, 92−96に準拠し、測定を行った。 (硫酸着色) (1)トリエチレングリコール トリエチレングリコールの硫酸着色は、ASTM D5386−10に沿って測定を行った。 (2)テトラエチレングリコール テトラエチレングリコールの硫酸着色は、JIS K 0071−2(1998年版)に沿って測定を行った。 (実施例1) 図2に示される精留装置において、当該精留装置のDEG精留塔52のリボイラ53の内部表面を、ブラシを用いて、ブラッシングにより洗浄し、5mmの膜状の析出物を除去した。同様にして、DEG精留塔54のリボイラ55、TEG精留塔56のリボイラ57、TRAEG精留塔58のリボイラ59をブラッシングし、析出物を除去した。 その後、DEG精留塔52とそのリボイラ53、DEG精留塔54とそのリボイラ55、およびTEG精留塔56とそのリボイラ57、TRAG精留塔58とそのリボイラ59について、表1の組成の酸性水溶液を用いて、60℃で酸性水溶液を循環させ、酸洗浄を4時間行った。次に、表1の組成の防錆処理剤を用いて、60℃で防錆処理剤を循環させ、防錆処理を行った。また、防錆処理の作業終了後、防錆処理剤を含む水溶液に、表1に記載の中和剤を、pHが中性となるよう適宜添加した。なお、酸洗浄の際の酸性水溶液、および防錆処理の際の防錆処理剤を含む水溶液としては、洗浄対象(リボイラの管内部および精留塔の内部)の容量(1m3)に対して、10kgの量を用いて行った。また、化学的処理は、トリエチレングリコールとしては、アルデヒド含量が20ppm、硫酸着色がAPHA No.550、テトラエチレングリコールとしては、アルデヒド含量が43ppm、硫酸着色がガードナーNo.9となるまで行った。 防錆処理後、エチレングリコール類の製造を下記条件で、連続稼働した。 <エチレングリコール製造条件>第1のDEG精留塔52:蒸留温度147〜157℃、20〜50hPa第2のDEG精留塔54:蒸留温度122〜129℃、7〜15hPaTEG精留塔56:蒸留温度159〜170℃、10〜22hPaTRAEG精留塔58:蒸留温度162〜174℃、4〜10hPa 実施例1の処理を行った精留装置を用いて、エチレングリコール類を連続蒸留し、得られたエチレングリコール類のアルデヒド含量および硫酸着色を測定し、表2に示した。 実施例1の処理後、エチレングリコール類の品質は飛躍的に向上し、洗浄効果は1年以上続き、最大4年間持続した。 (比較例1) 図2に示される精留装置を用いて、エチレングリコール類の製造を実施例1と同様の条件で、連続稼働し、10年間経過後において、アルデヒド含量および硫酸着色を測定し、表2の「洗浄前」のエチレングリコールとして示す。 洗浄処理(物理的処理と化学的処理)を行わない場合は、エチレングリコール類のアルデヒド含有及び硫酸着色が悪く、この状態での連続運転では、高純度のエチレングリコール類が取得できないことを示唆している。 (比較例2) 図2に示される精留装置を用いて、ジエチレングリコール類を連続稼働により10年間蒸留した。その際、洗浄前に得られた各エチレングリコールのアルデヒド含量および硫酸着色の値を、表3の「洗浄前」のエチレングリコールとして示す。 当該精留装置のDEG精留塔52とそのリボイラ53、DEG精留塔54とそのリボイラ55、およびTEG精留塔56とそのリボイラ57について、表1の組成の酸性水溶液を用いて、60℃で酸性水溶液を循環させ、酸洗浄を行った。次に、表1の組成の防錆処理剤を用いて、60℃で防錆処理剤を循環させ、防錆処理を行った。なお、酸洗浄の際の酸性水溶液、および防錆処理の際の防錆処理剤を含む水溶液としては、洗浄対象(リボイラの管内部および精留塔の内部)の容量(1m3)に対して、10kgの量を用いて行った。 防錆処理後、エチレングリコール類の製造を実施例1と同様の条件で、連続稼働し、定期的に、得られたトリおよびテトラエチレングリコールのアルデヒド含量および硫酸着色について評価行い、表3に結果を示した。 化学的処理のみを行った場合は、洗浄前と洗浄後においてアルデヒド含有および硫酸着色に変化はなく、この状態での連続運転では、高純度のエチレングリコール類が取得できないことを示唆している。 以上のように、精留装置を比較例1および2の方法で処理した場合に比べて、実施例1の方法で精留装置を処理した場合は、アルデヒド含量が低く、着色度が少ないエチレングリコール類が、長期間にわたって製造できることがわかる。 51 MEG精留塔、 52 第1のDEG精留塔、 53、55、57、59 多管式リボイラ、 54 第2のDEG精留塔、 56 TEG精留塔、 58 TRAEG精留塔、 60TEG合成反応器、 61、62、63、64、65、66 配管、 67、69、71 配管、 72、73、74、75、76、77、78、79 配管。 精留塔、多管式リボイラ、およびこれらを接続する配管を備えてなる精留装置を用いるトリまたはテトラエチレングリコールの製造方法であって、 所定量の析出物が前記リボイラの管内部表面に析出した時点で、前記リボイラの管内部表面を、物理的処理することにより前記析出物を除去する除去工程を含む、トリまたはテトラエチレングリコールの製造方法。 前記物理的処理が、研磨処理である、請求項1に記載の製造方法。 前記除去工程後に、化学的処理により前記リボイラの管内部を処理する洗浄工程をさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。 前記化学的処理が、酸洗浄および防錆処理である、請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。 化学的処理により前記精留塔の内部を処理する工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。 【課題】安価な手法によって、アルデヒド含量が低く、着色の少ないエチレングリコール類を製造する方法を提供する。【解決手段】精留塔、多管式リボイラ、およびこれらを接続する配管を備えてなる精留装置を用いるトリまたはテトラエチレングリコールの製造方法であって、所定量の析出物が前記リボイラの管内部表面に析出した時点で、前記リボイラの管内部表面を、物理的処理することにより前記析出物を除去する除去工程を含む、トリまたはテトラエチレングリコールの製造方法。【選択図】なし


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