タイトル: | 公開特許公報(A)_骨分化を誘導するための培地 |
出願番号: | 2012072818 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12N 5/02,C12N 5/071 |
福西 賢晃 田畑 泰彦 JP 2013201940 公開特許公報(A) 20131007 2012072818 20120328 骨分化を誘導するための培地 住友ベークライト株式会社 000002141 田畑 泰彦 599029420 特許業務法人セントクレスト国際特許事務所 110001047 福西 賢晃 田畑 泰彦 C12N 5/02 20060101AFI20130910BHJP C12N 5/071 20100101ALN20130910BHJP JPC12N5/02C12N5/00 202A 5 OL 10 4B065 4B065AA90X 4B065AC20 4B065BB13 4B065BB14 4B065BB19 4B065BB20 4B065CA44 本発明は、骨分化を誘導するための培地およびその利用に関する。 再生医療において、研究開発され一部実用化されている治療方法として、幹細胞移植が一般的に実施されている。細胞移植のための幹細胞としては、胚性幹細胞、骨髄や脂肪組織などから採取される間葉系幹細胞、造血幹細胞および各種組織幹細胞(肝幹細胞、神経幹細胞など)が用いられているが、これらのうち間葉系幹細胞は入手と培養が比較的容易である。このため、細胞移植においては、間葉系幹細胞を用いた生体組織再生の研究分野が最も進んでいる。 間葉系幹細胞を用いた再生治療の対象組織は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、腱、神経などが挙げられる。例えば、骨再生は、体外で培養し増殖させた間葉系幹細胞を、三次元スキャホールドに播種、増殖させた後、移植、治療する方法が用いられ、その治療応用例が存在する(例えば、特許文献1)。 通常、間葉系幹細胞を体外で培養するためには多種類の増殖因子を培養液中に加え続けなければならない。このためのアプローチとして、細胞に増殖因子の遺伝子を導入し、細胞に増殖因子を合成させ、オートクライン的に増殖因子を供給し続ける方法や、転写因子の遺伝子を組み込んだウイルスベクターを用いて、転写因子活性を持続的に発現させることにより、良好な骨・軟骨再生を可能とする方法などが開発されている(例えば、特許文献2) しかしながら、本来、生体は自然治癒力を有しており、実際、単純な骨折などはその自然治癒力を使って治療されている。一方、大きな骨欠損などには生体が本来もつ自然治癒力は十分な効力を発揮できていない場合もあるが、例えば、細胞の増殖や分化を促進する物質を投与して自然治癒力を高めることにより、幹細胞移植や遺伝子投与を行うことなく、生体組織の再生修復を実現することも可能である。また、このような作用を有する物質が体内に存在する物質である場合には、この物質を標的として、細胞の増殖や分化の状況を評価することも可能であると考えられる。 このような観点から、細胞の増殖や分化を促進しる細胞培養システムの開発が期待されている。特開2008-29317号公報国際公開2005/035014号公報 本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、骨分化を促進することが可能な培地を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、アスコルビン酸、β-グリセロフォスフェート、およびデキサメタゾンといった公知の分化誘導剤に加えて、グルコサミノグリカンを含む培地で細胞を培養することにより、飛躍的に骨分化を促進しうることを見出した。また、本発明者らは、上記分化誘導剤に加えて骨形成因子を添加することで、骨分化をさらに促進しうることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。 (1)グリコサミノグリカン、アスコルビン酸、β-グリセロフォスフェート、およびデキサメタゾンを含む、骨細胞への分化能力を有する細胞を骨細胞へ分化させるための培地。 (2)グリコサミノグリカンが、ヘパリン、ヘパラン硫酸、またはそれらの塩である、(1)に記載の培地。 (3)さらに、骨形成因子を含む、(1)または(2)に記載の培地。 (4)骨形成因子が、骨形成因子2(BMP-2)である、(3)に記載の培地。 (5)(1)から(4)のいずれかに記載の培地で骨細胞への分化能力を有する細胞を培養することを含む、骨細胞への分化能力を有する細胞を骨細胞へ分化させる方法。 本発明の培地を用いることにより、骨分化を飛躍的に促進することが可能となった。ヘパラン硫酸ナトリウム塩を添加した分化誘導培地を用いた培養において、骨分化を検出した結果を示すグラフである。ヘパラン硫酸ナトリウム塩およびrhBMP-2を添加した分化誘導培地を用いた培養において、骨分化を検出した結果を示すグラフである。ヘパリンナトリウム塩を添加した分化誘導培地を用いた培養において、骨分化を検出した結果を示すグラフである。ヘパラン硫酸ナトリウム塩固定化プレート上での、rhBMP-2を添加した分化誘導培地を用いた培養において、骨分化を検出した結果を示すグラフである。 本発明は、グリコサミノグリカン、アスコルビン酸、β-グリセロフォスフェート、およびデキサメタゾンを含む、骨細胞への分化能力を有する細胞を骨細胞へ分化させるための培地を提供する。 本発明の培地を用いて骨細胞へ分化させる「骨細胞への分化能力を有する細胞」としては、例えば、骨芽細胞、骨前駆細胞、間葉系細胞(間葉系幹細胞を含む)、それらの細胞株(例えば、MC3T3-E1、C3H10T1/2)、骨以外の組織から採取される、組織幹細胞または分化能力を持つ幹細胞若しくは前駆細胞などが挙げられる。 これら細胞を培養するための本発明の培地における「グリコサミノグリカン」としては、公知の分化誘導剤であるアスコルビン酸、β-グリセロフォスフェート、およびデキサメタゾンとともに培地に添加することによって、骨細胞への分化を促進しうるものであれば特に制限はない。培地に添加するグリコサミノグリカンとしては、例えば、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン、またはそれらの塩が挙げられるが、好ましくは、ヘパリン、ヘパラン硫酸、またはそれらの塩である。その由来(動物単離部位、あるいは単離方法など)と調製方法には関係なく、各種の硫酸化多糖を本発明に用いることができる。 グルコサミノグリカンの培地における濃度は適宜設定することができるが、通常、0.1〜100μg/mLであり、好ましくは1〜20μg/mLである。グリコサミノグリカンは、本実施例に示すように、培地に添加して培地中の成分とすることもできるが、培養器に結合させ、当該培養器に培地を入れることにより、培地中の成分とすることもできる。グリコサミノグリカンの培養器への結合方法は、単なるコーティング法および化学結合法の両方を用いることができる。化学結合法は、培養器の表面に化学処理および物理処理を施すことにより実施できるが、これら処理を施さない方法でもよい。化学結合法としては公知の化学結合法を利用することができる。 グルコサミノグリカンと併用する公知の分化誘導剤であるアスコルビン酸、β-グリセロフォスフェート、およびデキサメタゾンの培地における濃度は適宜設定することができるが、アスコルビン酸は、通常、1〜1000μg/mLであり、好ましくは10〜100μg/mLであり、β-グリセロフォスフェートは、通常、0.1〜100mMであり、好ましくは1〜20mMであり、デキサメタゾンは、通常、5x10-9〜5x10-8Mであり、好ましくは2x10-9〜2x10-8Mである。 本発明の培地においては、さらに骨形成因子を添加することにより、骨細胞への分化をさらに促進することができる。培地に添加する「骨形成因子」としては、グリコサミノグリカン、アスコルビン酸、β-グリセロフォスフェート、およびデキサメタゾンとともに培地に添加することによって、骨細胞への分化を促進しうるものであれば特に制限はない。培地に添加する骨形成因子としては、例えば、骨形成因子2(BMP-2)、骨形成因子3(BMP-3)、骨形成因子4(BMP-4)、骨形成因子7(BMP-7)が挙げられるが、好ましくは、骨形成因子2(BMP-2)である。 骨形成因子の培地における濃度は適宜設定することができるが、例えば、BMP-2の場合、通常、1〜500ng/mLであり、好ましくは5〜200ng/mLである。 本発明の培地においては、上記の成分以外は、公知の哺乳動物細胞用の基本培地に用いられる成分と同様の成分を用いることができる。本発明の培地に用いることができる周知の基本培地としては、例えば、アルファイーグル基本培地(αMEM)、イーグル基本培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムのF−12培地およびF-10培地、間葉系細胞基本培地(MSCBM)などが挙げられる。 本発明の培地においては、これら基本培地に含まれている各種アミノ酸、各種ビタミン類、各種無機塩類などを含むことができ、さらに他の成分を含むこともできる。 本発明の培地に含まれるアミノ酸類としては、例えば、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-シスチン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリンを挙げることができる。 無機塩類としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸銅、硝酸鉄(III)、硫酸鉄、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、硫酸亜鉛を挙げることができる。 ビタミン類としては、例えば、ビオチン、コリン、ビタミンB12、葉酸、イノシトール、ニコチンアミド、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB2、ビタミンB1などを挙げることができる。 本発明の培地においては、血清(例えば、ウシ胎児血清、自己血清、合成血清)を含んでいてもよく、また無血清若しくは低血清であってもよい。 本発明の培地に添加する他の成分としては、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)などの増殖因子、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシンなどの抗生物質、グルコースなどの炭素源、ヒポキサンチン、ピルビン酸ナトリウム、チミジン、フェノールスルホンフタレイン、プトレシンジヒドロクロリドなどが挙げられるが、これらに制限されない。 本発明は、また、上記培地で骨細胞への分化能力を有する細胞を培養することを含む、骨細胞への分化能力を有する細胞を骨細胞へ分化させる方法を提供する。 培養条件については、上記培地を用いること以外は、通常の条件を用いることができる。培養は、例えば、37℃、5%CO2の環境下で行うことができる。また、3〜4日に一度培地交換を行うと好ましい。分化誘導に必要な培養期間は、分化誘導に用いる細胞の種類等に応じて適宜設定することができる。通常、2〜3週間程度で骨細胞へ分化させることができる。 骨細胞への分化は、例えば、カルシウムの沈着やアルカリフォスファターゼ活性を指標に検出することができる。これらの検出には、市販のキット、例えば、カルシウム測定キット(カルシウムC-テストワコー、和光純薬工業株式会社)やアルカリホスファターゼ測定キット(ラボアッセイTMALP、和光純薬)を用いることができる。 なお、骨細胞への分化能力を有する細胞は、上記の分化誘導培地で培養する前に、上記の分化誘導成分を含まない通常の培地に播種し、2〜4日間培養することが好ましい。 以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 [実施例1] ヘパラン硫酸ナトリウム塩を添加した分化誘導培地 マウス由来骨前駆細胞MC3T3-E1を、α-MEMに10%ウシ胎児血清を加えた培地を入れた24ウェルプレート(Corning社製)に1.25×104細胞/ウェルとなるよう播種し、5%CO2インキュベート内で2日間、37℃で培養した。アスコルビン酸(ナカライテスク株式会社)50μg/mL、β-グリセロホスフェート(SIGMA社製)10mM、デキサメタゾン(ナカライテスク株式会社)10-8Mおよびヘパラン硫酸ナトリウム塩(生化学工業株式会社)10μg/mLとなるように培地に添加し骨分化誘導を開始した。3〜4日に一度培地交換を行い、5%CO2インキュベート内で2週間、37℃で培養し、細胞および培養上清をサンプリングした。 [実施例2] ヘパラン硫酸ナトリウム塩およびrhBMP-2を添加した分化誘導培地 マウス由来骨前駆細胞MC3T3-E1を、α-MEMに10%ウシ胎児血清を加えた培地を入れた24ウェルプレート(Corning社製)に1.25×104細胞/ウェルとなるよう播種し、5%CO2インキュベート内で2日間、37℃で培養した。アスコルビン酸(ナカライテスク株式会社)50μg/mL、β-グリセロホスフェート(SIGMA社製)10mM、デキサメタゾン(ナカライテスク株式会社)10-8M、ヘパラン硫酸ナトリウム塩(生化学工業株式会社)10μg/mLおよびrhBMP-2 10ng/mLとなるように培地に添加し骨分化誘導を開始した。3〜4日に一度培地交換を行い、5%CO2インキュベート内で2週間、37℃で培養し、細胞および培養上清をサンプリングした。 [実施例3] ヘパリンナトリウム塩を添加した分化誘導培地 マウス由来骨前駆細胞MC3T3-E1を、α-MEMに10%ウシ胎児血清を加えた培地を入れた24ウェルプレート(Corning社製)に1.25×104細胞/ウェルとなるよう播種し、5%CO2インキュベート内で2日間、37℃で培養した。アスコルビン酸(ナカライテスク株式会社)50μg/mL、β-グリセロホスフェート(SIGMA社製)10mM、デキサメタゾン(ナカライテスク株式会社)10-8Mおよびヘパリンナトリウム塩(和光純薬工業株式会社)10μg/mLとなるように培地に添加し骨分化誘導を開始した。3〜4日に一度培地交換を行い、5%CO2インキュベート内で2週間、37℃で培養し、細胞および培養上清をサンプリングした。 [実施例4] ヘパラン硫酸ナトリウム塩固定化プレートにおける、rhBMP-2を添加した分化誘導培地での培養 24ウェルプレート(住友ベークライト株式会社)を10分間酸素プラズマ処理し、UV照射した。DMT-MM(10当量/COOH、和光純薬工業株式会社)およびエチレンジオキシビスエチルアミン(50当量/COOH、SIGMA社製)の水溶液100μL/ウェルを加え、室温で2時間反応させた。滅菌水500μL/ウェルで2回洗浄後、DMT-MM(3当量/COOH)およびヘパラン硫酸ナトリウム塩(7μg/ウェル、生化学工業株式会社)の水溶液100μL/ウェルを加え、室温で2時間反応させた。1M NaCl in PBS(-)を100μL/ウェル加えて10min静置し除去後、さらに300μL/ウェルで洗浄し、PBS(-)500μL/ウェルで2回洗浄した。 マウス由来骨前駆細胞MC3T3-E1を、α-MEMに10%ウシ胎児血清を加えた培地を入れた上述のヘパラン硫酸固定化24ウェルプレートに1.25×104細胞/ウェルとなるよう播種し、5%CO2インキュベート内で2日間、37℃で培養した。アスコルビン酸(ナカライテスク株式会社)50μg/mL、β-グリセロホスフェート(SIGMA社製)10mM、デキサメタゾン(ナカライテスク株式会社)10-8MおよびrhBMP-2 100ng/mLとなるように培地に添加し骨分化誘導を開始した。3〜4日に一度培地交換を行い、5%CO2インキュベート内で1週間、37℃で培養し、細胞および培養上清をサンプリングした。 [比較例1] 分化誘導培地 マウス由来骨前駆細胞MC3T3-E1を、α-MEMに10%ウシ胎児血清を加えた培地を入れた24ウェルプレート(Corning社製)に1.25×104細胞/ウェルとなるよう播種し、5%CO2インキュベート内で2日間、37℃で培養した。アスコルビン酸(ナカライテスク株式会社)50μg/mL、β-グリセロホスフェート(SIGMA社製)10mMおよびデキサメタゾン(ナカライテスク株式会社)10-8Mとなるように培地に添加し骨分化誘導を開始した。3〜4日に一度培地交換を行い、5%CO2インキュベート内で2週間、37℃で培養し、細胞および培養上清をサンプリングした。 [比較例2] rhBMP-2を添加した分化誘導培地 マウス由来骨前駆細胞MC3T3-E1を、α-MEMに10%ウシ胎児血清を加えた培地を入れた24ウェルプレート(Corning社製)に1.25×104細胞/ウェルとなるよう播種し、5%CO2インキュベート内で2日間、37℃で培養した。アスコルビン酸(ナカライテスク株式会社)50μg/mL、β-グリセロホスフェート(SIGMA社製)10mM、デキサメタゾン(ナカライテスク株式会社)10-8MおよびrhBMP-2 10ng/mLとなるように培地に添加し骨分化誘導を開始した。3〜4日に一度培地交換を行い、5%CO2インキュベート内で2週間、37℃で培養し、細胞および培養上清をサンプリングした。 [比較例3] 分化誘導培地 マウス由来骨前駆細胞MC3T3-E1を、α-MEMに10%ウシ胎児血清を加えた培地を入れた24ウェルプレート(Corning社製)に1.25×104細胞/ウェルとなるよう播種し、5%CO2インキュベート内で2日間、37℃で培養した。アスコルビン酸(ナカライテスク株式会社)50μg/mL、β-グリセロホスフェート(SIGMA社製)10mMおよびデキサメタゾン(ナカライテスク株式会社)10-8Mとなるように培地に添加し骨分化誘導を開始した。3〜4日に一度培地交換を行い、5%CO2インキュベート内で2週間、37℃で培養し、細胞および培養上清をサンプリングした。 [比較例4] 滅菌水処理プレートにおける、rhBMP-2を添加した分化誘導培地での培養 24ウェルプレート(住友ベークライト株式会社)を10分間酸素プラズマ処理し、UV照射した。滅菌水100μL/ウェルを加え、室温で2時間静置した。滅菌水500μL/ウェルで2回洗浄後、滅菌水100μL/ウェルをさらに加え、室温で2時間静置した。1M NaCl in PBS(-)を100μL/ウェル加えて10分間静置し除去後、さらに300μL/ウェルで洗浄し、PBS(-)500μL/ウェルで2回洗浄した。 マウス由来骨前駆細胞MC3T3-E1を、α-MEMに10%ウシ胎児血清を加えた培地を入れた上述の24ウェルプレートに1.25×104細胞/ウェルとなるよう播種し、5%CO2インキュベート内で2日間、37℃で培養した。アスコルビン酸(ナカライテスク株式会社)50μg/mL、β-グリセロホスフェート(SIGMA社製)10mM、デキサメタゾン(ナカライテスク株式会社)10-8MおよびrhBMP-2 100ng/mLとなるように培地に添加し骨分化誘導を開始した。3〜4日に一度培地交換を行い、5%CO2インキュベート内で1週間、37℃で培養し、細胞および培養上清をサンプリングした。 [評価方法] カルシウム沈着量の測定 サンプリングした細胞を溶液(3M塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社)、0.3Mクエン酸三ナトリウム(ナカライテスク株式会社)、200mg/Lドデシル硫酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社))に溶解させ、等量の1MHCL水溶液(ナカライテスク株式会社)を加えて4℃で4時間以上静置した後、カルシウム測定キット(カルシウムC-テストワコー、和光純薬工業株式会社)を用いてカルシウム沈着量を測定した。マイクロプレートリーダー(VERSAmax、Molecular Devices)で570nmの吸光度を測定し得られた値を細胞数で割り、細胞あたりのカルシウム沈着量を求めた。 その結果、アスコルビン酸、β-グリセロフォスフェート、およびデキサメタゾンといった公知の分化誘導剤に加えて、ヘパラン硫酸ナトリウムやヘパリンナトリウム塩を含む培地で培養することにより、飛躍的に骨分化が促進された(図1、3)。また、培地にさらにrhBMP-2を添加することで、骨分化がさらに促進された(図2)。ヘパラン硫酸ナトリウム塩の培地への添加に代えて、ヘパラン硫酸ナトリウム塩固定化プレートを用いることによっても、骨分化を促進することができた(図4)。 本発明の培地によれば、骨分化を飛躍的に促進することが可能であるため、本発明は、例えば、骨分化に関する研究や骨細胞の移植による医療などに、大きく貢献しうるものである。 グリコサミノグリカン、アスコルビン酸、β-グリセロフォスフェート、およびデキサメタゾンを含む、骨細胞への分化能力を有する細胞を骨細胞へ分化させるための培地。 グリコサミノグリカンが、ヘパリン、ヘパラン硫酸、またはそれらの塩である、請求項1に記載の培地。 さらに、骨形成因子を含む、請求項1または2に記載の培地。 骨形成因子が、骨形成因子2(BMP-2)である、請求項3に記載の培地。 請求項1から4のいずれかに記載の培地で骨細胞への分化能力を有する細胞を培養することを含む、骨細胞への分化能力を有する細胞を骨細胞へ分化させる方法。 【課題】 骨細胞分化を促進することが可能な培地を提供すること【解決手段】 アスコルビン酸、β-グリセロフォスフェート、およびデキサメタゾンといった公知の分化誘導剤に加えて、グルコサミノグリカンを含む培地で細胞を培養することにより、飛躍的に骨細胞分化を促進しうることを見出した。また、上記分化誘導剤に加えて骨形成因子を添加することで、骨細胞分化をさらに促進しうることを見出した。【選択図】 なし