タイトル: | 公開特許公報(A)_樹脂分解促進要因の判別方法 |
出願番号: | 2012066132 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 5/04 |
安藤 真規 JP 2013195391 公開特許公報(A) 20130930 2012066132 20120322 樹脂分解促進要因の判別方法 住友金属鉱山株式会社 000183303 小池 晃 100067736 伊賀 誠司 100096677 藤井 稔也 100106781 野口 信博 100113424 祐成 篤哉 100150898 安藤 真規 G01N 5/04 20060101AFI20130903BHJP JPG01N5/04 A 9 1 OL 11 本発明は、樹脂分解促進要因の判別方法に関し、より詳しくは、例えば積層セラミックコンデンサ等の電子材料に用いられている電極用の金属ペーストの焼結時に発生する不具合のもとになる樹脂分解促進要因の判別方法に関する。 積層セラミックコンデンサ等の電子材料では、電極として、Ni粉等の金属微粒子とバインダーとしてエチルセルロース等の樹脂を混合してなる金属ペーストを焼結することによって形成している(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。 ところが、その焼成時には、金属ペースト中の金属微粒子表面での触媒性が原因となったり、あるいは、金属微粒子表面に残存している微量添加剤の分解発生ガスが原因となって、バインダーである樹脂の分解を促進させることがある。そして、このように樹脂の分解が促進されると、発生する多量の分解ガスにより、電子材料の積層構造において層間剥離の問題が発生する場合がある。 このような樹脂の分解促進やそれに起因する電子材料の層間剥離の問題を解決するためには、その樹脂の分解促進の要因が上述した2つの要因のどちらであるかを的確に判断して、それに基づいて適切な対策をとることが重要となる。特開2008−226941号公報特開2007−95525号公報 従来、バインダーである樹脂の分解を評価する手段として、金属微粒子と樹脂とを混ぜ合わせて試料とし、その試料を熱天秤法(TG法)を用いて測定し、樹脂の分解開始温度をモニターすることで評価してきた。しかしながら、この従来の評価方法では、樹脂の分解が上述した2つの原因のどちらが主因であるかの判断は不可能であった。 そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、例えば積層セラミックコンデンサ等の電子材料に用いられる金属粉と樹脂との混合物において、その混合物に対する焼結等の熱処理に際して生じる樹脂の分解促進要因を的確に判別することができる樹脂分解促進要因の判別方法を提供することを目的とする。 本件発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、金属粉と樹脂とを混ぜ合わせた試料を熱分析により測定した分解開始温度と、不活性材料を介在させ、金属粉と樹脂とを接触しないようにした試料を熱分析により測定した分解開始温度との関係性から樹脂に対する分解促進要因を的確に判別できることを見出し本発明を完成させた。 すなわち、本発明に係る樹脂分解促進要因の判別方法は、金属粉と樹脂との混合物に対する熱処理時における該樹脂の分解促進要因の判別方法であって、上記金属粉と上記樹脂のそれぞれについて熱分析を行い、該それぞれの重量変化を測定する予備熱分析工程と、上記金属粉と上記樹脂とを所定の割合で混合して得られた試料を熱分析容器に投入し熱分析を行って重量変化を測定する混合物試料熱分析処理(A)、及び、熱分析容器に上記金属粉を投入し、該金属粉を覆うように不活性材料を介在させ、該不活性材料上に上記樹脂を配置して得られた試料に対して熱分析を行って重量変化を測定する非接触試料熱分析処理(B)、を行う試料熱分析工程と、上記予備熱分析工程にて測定された上記樹脂についての重量変化に基づく分解開始温度と、上記試料熱分析工程における上記混合物試料熱分析処理(A)並びに上記非接触試料熱分析処理(B)にて測定された重量変化に基づく上記樹脂の分解開始温度とをそれぞれ比較することにより、上記樹脂の分解促進要因を判別する判別工程とを有することを特徴とする。 本発明によれば、例えば金属ペースト等の金属粉と樹脂との混合物に対して焼結等の熱処理を施す際に生じる樹脂の分解促進について、その分解促進作用の有無だけでなく、樹脂に対する分解促進要因を的確に判別することができる。また、簡易的に判別することができるので、作業の効率化を図ることができる。 このような判別方法によれば、その判別された要因に基づいて適切な対策を講じることができ、樹脂の分解促進に起因する例えば積層電子材料等における層間剥離等の発生を防ぐことが可能となり、その工業的価値は極めて大きい。(a)が、混合物試料熱分析処理(A)における熱分析容器内の試料の配置の模式図であり、(b)が、非接触試料熱分析処理(B)における熱分析容器内の試料の配置の模式図である。実施例における各試験の熱分析測定に基づいて作製した、温度に対するセルロースの重量変化率で表した一次微分曲線のグラフ図である。 以下、本発明に係る樹脂分解促進要因の判別方法について、図面を参照しながら、以下の順序で詳細に説明する。 1.本発明の概要 2.樹脂分解促進要因の判別方法 2―1.予備熱分析工程 2−2.試料熱分析工程 2−3.判別工程 3.実施例 ≪1.本発明の概要≫ 本実施の形態に係る樹脂分解促進要因の判別方法は、例えば導電性ペースト等に構成される、金属粉とバインダーとしての樹脂との混合物(金属ペースト)に対して焼結等の熱処理を施す際に生じる樹脂の分解促進の要因を的確に判別することを可能にする判別方法である。 この判別方法は、例えば積層セラミックコンデンサ等の電子材料において用いられる電極用の導電性ペースト等の材料となる金属粉と樹脂とを対象とするものである。 具体的に、本実施の形態に係る樹脂分解促進要因の判別方法は、金属粉と樹脂のそれぞれについての熱分析を行う予備熱分析工程S1と、金属粉と樹脂とを2つの異なる配置方法にて熱分析容器内に配置させて得られた各試料について熱分析を行う試料熱分析工程S2と、予備熱分析工程S1における樹脂についての重量変化に基づく分解開始温度と、試料熱分析工程における各試料の重量変化に基づく樹脂の分解開始温度とをそれぞれ比較して樹脂の分解促進要因を判別する判別工程S3とを有する。 ここで、金属粉としては、特に限定されないが、銀、金、銅、アルミニウム、ニッケル、白金、及びパラジウムからなる金属元素群から選ばれる1種、又はこれらの金属元素群の2種類以上を組み合わせた合金粉とすることができる。これらの金属粉は、その製造過程において、金属粉の凝集防止やその金属粉を用いて作製したペースト中での分散性の向上を目的として分散剤や界面活性剤等の添加剤が添加されて製造される。これらの添加剤は、洗浄処理やペースト作製時の操作によって多くは除去されるものの、その金属粉表面には、それら分散剤や界面活性剤等に由来する有機成分や無機成分が微量に残存していることがある。 また、樹脂としては、例えば金属ペースト等の混合物において上述したような金属粉を混合させたときのバインダーとなる樹脂であり、セルロース系樹脂やアルリル系樹脂を挙げることができる。具体的に、セルロース系樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース等を挙げることができる。また、アクリル系樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。 上述した金属粉や樹脂を混合して得られる金属ペースト(導電性ペースト)等は、電子材料の電極等に用いるに際して焼結される。この焼結に際して、熱により樹脂が分解されていくが、しばしばその分解が促進されることがあり、その分解が促進されることによって発生するガスにより電子材料中の積層構造の層間を剥離させる等の問題が生じる。 その樹脂の分解促進の要因としては、金属粉表面に樹脂が物理的に接触することによる金属粉の触媒性に基づく分解促進要因と、金属粉表面に微量に残存した有機又は無機成分に由来するガスの発生に基づく分解促進要因とが考えられる。 従来では、金属粉と樹脂とを混合させた試料を熱重量分析等の熱分析を行うことによって、その分解促進の有無を評価してきたが、その方法では、分解促進の主な要因が具体的に何であるかについては的確に判別することができなかった。これにより、その分解促進に対する適切な対応を採ることができず、電子材料を製造する上で歩留まりを低下させる原因になっていた。 これに対して、本実施の形態に係る樹脂分解促進要因の判別方法によれば、金属粉と樹脂との混合物における樹脂の分解促進の有無だけでなく、その分解促進の要因を的確に判別することができる。これにより、その要因に基づいて適切な対策を採ることができるようになるので、例えばその金属粉と樹脂とによる金属ペーストを用いて作製する電子材料の品質を向上させることができるとともに歩留まりを改善することができる。 ≪2.樹脂分解促進要因の判別方法≫ 以下、本発明に係る樹脂分解促進要因の判別方法の各工程について、より詳細に説明する。 <2−1.予備熱分析工程> 予備熱分析工程S1では、例えば金属ペースト等の混合物に構成するための原料となる金属粉と樹脂のそれぞれについて、それぞれの原料単独での熱分析を行い、その重量変化を測定する。 これらの金属粉及び樹脂に対する熱分析の方法としては、例えば熱重量分析(以下、「熱天秤法」ともいう。)により行うことができる。この熱重量分析とは、一定の昇温速度で分析対象となる金属粉や樹脂を加熱し、このときの分析対象の重量変化を経時的に測定する分析方法である。熱重量分析において起こる重量変化は、重量の減少であり、これは測定対象が熱によって分解されることに起因する。 熱重量分析においては、分析対象となる金属粉を試料カップ等の所定の熱分析容器に投入し、分析条件として、例えば測定温度範囲を室温〜500℃程度とし、昇温速度を5℃/mimとして、窒素ガス雰囲気下で、試料カップに投入した分析対象を加熱することにより行う。なお、分析条件としては、これらの条件に限定されるものではなく、分析対象となる金属粉等の種類に応じて適宜変更することができる。 予備熱分析工程S1では、このようにして、予め樹脂について単独で熱分析をしてその重量変化を測定しておくことで、その重量変化を基準として、次工程の試料熱分析工程S2にて測定される各試料の熱分析により重量変化と比較することができる。 また、予備熱分析工程S1と次工程の試料熱分析工程S2における試料中の金属粉の重量は同量とする。これにより、予め金属粉について単独で熱分析をしてその重量変化を測定しておくで、その金属粉単独の熱分析結果を次工程の試料熱分析工程S2にて測定される金属粉を含む試料の熱分析結果から差し引くことによって、各試料中の樹脂についての重量変化として算出することができる。すなわち、最終工程となる判別工程S3において求められる樹脂の重量変化は、金属粉の重量変化に依存しない正味の重量変化として求めることができる。 <2−2.試料熱分析工程> 試料熱分析工程S2では、金属粉と樹脂とを2つの異なる配置方法にて熱分析容器内に配置させ、その2つの異なる配置方法で作成した各試料についてそれぞれ熱分析を行う。 具体的に、試料熱分析工程S2では、以下の2つの熱分析処理を行う。 [混合物試料熱分析処理(A)] 先ず、混合物試料熱分析処理(A)として、図1(a)の模式図に示すように、金属粉11と樹脂12とを所定の割合で混合して得られた金属粉と樹脂との混合物試料13を所定の熱分析容器20に投入し、上述の予備熱分析工程S1と同様の熱天秤等による熱分析を行って、その重量変化を測定する。 混合物試料熱分析処理(A)における金属粉と樹脂との混合割合としては、特に限定されないが、それら金属粉と樹脂とを用いて金属ペースト等を作製する際の混合割合とするとよい。具体的には、例えば金属粉と樹脂とをその重量比で20:1の割合で混合する。 このように、混合物試料熱分析処理(A)では、金属粉と樹脂とを混合させた混合物試料について熱分析を行うことによって、金属粉と樹脂とを接触させたときの重量変化、すなわち樹脂に対する金属粉の接触に起因する分解促進作用の有無の判断指標とすることができる。 [非接触試料熱分析処理(B)] 次に、非接触試料熱分析処理(B)として、所定の熱分析容器に金属粉を投入し、その金属粉を覆い被せるように不活性材料を介在させ、その不活性材料上に樹脂を配置して得られた試料に対して、上述の予備熱分析工程S1及び混合物試料熱分析処理(A)と同様の熱天秤等による熱分析を行って、その重量変化を測定する。 より具体的に、非接触試料熱分析処理(B)においては、図1(b)の模式図に示すように、先ず、熱分析容器20に金属粉11を投入して載置し、その金属粉11上に不活性材料14を載置する。このとき、不活性材料14によって、金属粉11を完全に覆い被せるようにする。そして次に、その不活性材料12上に樹脂12を載置させることによって、非接触試料15を準備する。このように、非接触試料熱分析処理(B)における試料としては、熱分析容器20の底部から、金属粉11、不活性材料14、樹脂12の順に積層させるようにして各材料を配置させ、金属粉11と樹脂12とを接触させない状態(非接触状態)とした非接触試料15を用いる。 ここで、金属粉と樹脂との間に介在させる不活性材料としては、特に限定されるものではないが、金属粉と樹脂に対して不活性であり、また金属粉に付着している微量の添加剤に起因する有機ガス又は無機ガスに対しても不活性であってそれらガス成分を透過させることができるものとする。具体的には、例えばアルミナ等を用いることができる。 また、非接触試料熱分析処理(B)における金属粉と不活性材料と樹脂の割合としては、特に限定されないが、例えば金属粉としてニッケル(Ni)粉、不活性材料としてアルミナ、樹脂としてエチルセルロースを使用し、Ni粉重量を50mg、容量0.1cm3の試料容器を用いる場合には、重量比で60:12:1の割合とする。このような割合とすることによって、金属粉を覆うように不活性材料を敷くことができ、かつ不活性材料の上に樹脂も敷くことができ、少量の試料で熱分析を行うことができる。 このように、非接触試料熱分析処理(B)では、金属粉11と樹脂12との間に不活性材料14を介在させた試料を用いて熱分析を行うことから、金属粉11の樹脂12に対する接触による分解促進を排除することができる。そして、非接触試料熱分析処理(B)では、上述のように金属粉11に付着した添加剤等からの有機ガスや無機ガスに不活性であってそれらガス成分を透過させる材料を介在させていることから、ガス成分の発生に起因する分解促進作用の有無の判断指標とすることができる。 <2−3.判別工程> 判別工程S3では、予備熱分析工程S1における樹脂についての重量変化に基づく分解開始温度と、試料熱分析工程S2における各試料の重量変化に基づく樹脂についての分解開始温度とをそれぞれ比較して樹脂の分解促進要因を判別する。 ここで整理すると、上述したように、予備熱分析工程S1では、金属粉と樹脂のそれぞれ単独での熱分析による重量変化(金属粉単独の重量変化(i)、樹脂単独の重量変化(ii))が求められている。また、試料熱分析工程S2では、金属粉と樹脂とを混合させた混合物の熱分析による重量変化(混合物試料の重量変化(iii))と、金属粉と樹脂とを接触させない状態で配置させた非接触試料の熱分析による重量変化(非接触試料の重量変化(iv))が求められている。 これらの熱分析結果のうち、混合物試料の重量変化(iii)から金属粉単独の重量変化(i)を差し引くことによって、混合物試料中における樹脂についての重量変化(iii’)を算出することができる。また同様にして、非接触試料の重量変化(iv)から金属粉単独の重量変化(i)を差し引くことによって、非接触試料中における樹脂についての重量変化(iv’)を算出することができる。そして、判別工程S3では、予備熱分析工程S1にて求めた樹脂単独の重量変化(ii)と、上述のようにして算出された混合物試料中の樹脂についての重量変化(iii’)、又は、非接触試料中の樹脂についての重量変化(iv’)とを比較する。 判別工程S3における各重量変化の比較に際しては、その各試料中の樹脂についての重量変化を一次微分して重量変化率に換算し、重量変化(変化率)が生じ始める温度を分解開始温度として、その分解開始温度を比較することによって行うことが好ましい。これにより、分解開始温度の違いに基づいて各試料の重量変化の相違の比較を明確に行うことができ、樹脂の分解促進の有無及びその分解促進要因の判別を的確に行うことができる。なお、熱天秤を用いた測定においては、重量変化が発生したことと試料が分解したこととをほぼ同一視することが従来から行われており、本実施の形態においてもこの考えに沿って、重量変化(変化率)が生じ始める温度を分解開始温度としている。 例えば、X軸を温度とし、Y軸を熱分析による重量変化を一次微分して換算した重量変化率として一次微分曲線のグラフを作製し、そのグラフにおける各試料のピークの立ち上がり時の温度である分解開始温度を比較することによって行うことができる。 具体的に、判別工程S3では、上述した各試料の樹脂の重量変化に基づく分解開始温度を比較することによって、以下の3パターンの何れかの評価をすることができる。[1]金属粉と樹脂とを混合させた混合物試料中の樹脂についての分解開始温度(iii’)と、樹脂単独の分解開始温度(ii)が同程度の場合には、その金属粉には樹脂に対して分解を促進する作用はないと評価することができる。[2]金属粉と樹脂とを混合させた混合物試料中の樹脂についての分解開始温度(iii’)の方が、樹脂単独の分解開始温度(ii)よりも低温の場合、その金属粉には樹脂に対して分解を促進する作用があると判断することができる。さらに、金属粉と樹脂とを接触させなかった非接触試料中の樹脂についての分解開始温度(iv’)が、樹脂単独の分解開始温度(ii)よりも低温の場合、その樹脂の分解を促進する作用は金属粉から発生する有機ガスあるいは無機ガスが要因であると判別することができる。[3]金属粉と樹脂とを混合させた混合物試料中の樹脂についての分解開始温度(iii’)の方が、樹脂単独の分解開始温度(ii)よりも低温の場合、その金属粉には樹脂に対して分解を促進する作用があると判断することができる。さらに、金属粉と樹脂とを接触させなかった非接触試料中の樹脂についての分解開始温度(iv’)が、樹脂単独の分解開始温度(ii)と同程度の場合、その樹脂の分解を促進する作用は金属粉との物理的な接触による触媒作用が要因であると判別することができる。 ここで、上述した各試料中の樹脂についての分解開始温度の比較において、その分解開始温度(重量変化率の一次曲線における立ち上がり時の温度)に有意な差があると判断できる温度差としては、例えば20℃程度とする。 具体的には、例えば、上述の評価パターンにおいて、混合物試料中の樹脂についての分解開始温度(iii’)の方が、樹脂単独の分解開始温度(ii)よりも20℃以上低温の場合に、その金属粉には樹脂に対して分解を促進する作用があると判断する(上記評価パターン[2])。一方で、混合物試料中の樹脂についての分解開始温度と、樹脂単独の分解開始温度(ii)との差が20℃未満の場合には、それぞれの温度が同程度と判断して、金属粉には樹脂に対して分解を促進する作用はないと評価する(上記評価パターン[3])。 なお、その有意な温度差としては、20℃程度に限定されるものではなく、試験対象として用いる金属粉や樹脂の種類等に応じて適宜設定することができる。 以上詳述したように、本実施の形態に係る樹脂分解促進要因の判別方法では、金属粉と樹脂とを混ぜ合わせた混合物試料に対して熱分析を行い分解開始温度を算出するとともに、不活性材料を介在させ金属粉と樹脂とを接触しないようにした非接触試料に対して熱分析を行い分解開始温度を算出する。そして、これらの分解開始温度と樹脂単独の試料を熱分析により測定した分解開始温度とを比較するようにしている。 このような方法によれば、例えば金属ペースト等の金属粉と樹脂との混合物に対して焼結等の熱処理を施す際に生じる樹脂の分解促進について、従来のようなその分解促進作用の有無だけでなく、樹脂に対する分解促進要因を的確に判別することができる。 また、この判別方法を適用することにより、その判別された要因に基づいて適切な対策を講じることができる。これにより、樹脂の分解促進に起因する例えば積層電子材料等における層間剥離等の発生を未然に防ぐことができ、品質とともに歩留まりを向上させることが可能となり、その工業的価値は極めて大きい。 以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。 (実施例1) 本実施例では、金属粉としてニッケル(Ni)粉を用い、樹脂としてエチルセルロースを用いて、その樹脂に対する分解促進要因を判別した。なお、以下の各試験においては試料を熱重量分析(熱天秤法)により測定して、その重量変化を求めた。なお、熱天秤法の測定条件は以下に示す通りである。 〔熱天秤法の測定条件〕 測定装置:マックサイエンス社製「TG-DTA2000SA」 条件:昇温速度:5℃/min 雰囲気ガス:窒素 (予備熱分析試験) 予備試験1として、予め、Ni粉50mgのみの試料を熱天秤法により測定した。また、予備試験2として、予め、エチルセルロースのみの試料を熱天秤法により測定しておき、解析の際の基準とした。 (試料熱分析試験) 次に、測定装置の所定の試料カップ(容量0.1cm3)に以下の(A)方法及び(B)方法に従って試料を準備し、それぞれの試料について熱天秤法による測定を行った。(A)Ni粉を50mgとし、Ni粉及びエチルセルロースを、それぞれ重量比で20:1の割合となるように混合し、その混合物を試料カップに投入して試料とした(混合物試料)。(B)Ni粉50mgを試料カップに投入して、それを覆うように不活性材料であるアルミナを載置し、そのアルミナを覆うようにエチルセルロースを配置して試料とした(非接触試料)。このとき、Ni粉とエチルセルロースとが接触しないようにアルミナを介在させた。Ni粉、アルミナ、及びエチルセルロースは、それぞれ重量比で60:12:1の割合で用いた。 (分解促進要因の判別) 分析試験データの処理として、先ず、試料熱分析試験において上記(A)及び(B)の試料に対して測定された重量変化から、予め予備熱分析試験にて測定しておいたNi粉のみの試料の重量変化を差し引き、上記(A)及び(B)の試料中のエチルセルロースについての重量変化を求めた。さらに、分解促進要因の評価解析のために、すべての試料におけるエチルセルロースの重量変化を一次微分して重量変化率に換算し、分解開始温度を判断した。 図2に各試料の一次微分曲線を示す。また、下記表1に各試料中のエチルセルロースの分解開始温度を示す。 図2及び表1に示すように、Ni粉とエチルセルロースとを混合させた混合物(混合物試料(A))中のエチルセルロースについての分解開始温度が250℃であり、エチルセルロースのみの分解開始温度が300℃であり、混合物試料中のエチルセルロースの方が、エチルセルロース単独の場合よりもその分解開始温度が低温であった。このことから、Ni粉にはエチルセルロースに対して分解を促進する作用があると判断することができた。 さらに、Ni粉とエチルセルロースとを接触させなかった試料(非接触試料(B))中のエチルセルロースについての分解開始温度が300℃であり、エチルセルロースのみの分解開始温度の300℃と同程度であった。このことから、エチルセルロースに対して分解を促進する作用の要因は、Ni粉のエチルセルロースに対する物理的な接触による触媒作用が要因であると判別することができた。 11 金属粉、12 樹脂、13 混合物試料、14 不活性材料、15 非接触試料、20 熱分析容器 金属粉と樹脂との混合物に対する熱処理時における該樹脂の分解促進要因の判別方法であって、 上記金属粉と上記樹脂のそれぞれについて熱分析を行って、該それぞれの重量変化を測定する予備熱分析工程と、 上記金属粉と上記樹脂とを所定の割合で混合して得られた試料を熱分析容器に投入し熱分析を行って重量変化を測定する混合物試料熱分析処理(A)、及び、熱分析容器に上記金属粉を投入し、該金属粉を覆うように不活性材料を介在させ、該不活性材料上に上記樹脂を配置して得られた試料に対して熱分析を行って重量変化を測定する非接触試料熱分析処理(B)、を行う試料熱分析工程と、 上記予備熱分析工程にて測定された上記樹脂についての重量変化に基づく分解開始温度と、上記試料熱分析工程における上記混合物試料熱分析処理(A)並びに上記非接触試料熱分析処理(B)にて測定された重量変化に基づく上記樹脂についての分解開始温度とをそれぞれ比較することにより、上記樹脂の分解促進要因を判別する判別工程と を有することを特徴とする樹脂分解促進要因の判別方法。 上記判別工程では、 上記試料熱分析工程における上記混合物試料熱分析処理(A)にて測定された上記樹脂についての分解開始温度と、上記予備熱分析工程にて測定された上記樹脂の分解開始温度とを比較することにより、上記樹脂に対する上記金属粉の分解促進作用の有無を判断し、 上記金属粉の分解促進作用が有ると判断された場合に、続いて、上記非接触試料熱分析処理(B)にて測定された上記樹脂についての分解開始温度と、上記予備熱分析工程にて測定された上記樹脂の分解開始温度とを比較することにより、上記樹脂に対する上記金属粉の分解促進要因を判別することを特徴とする請求項1記載の樹脂分解促進要因の判別方法。 上記判別工程では、 上記混合物試料熱分析処理(A)にて測定された上記樹脂についての分解開始温度が上記予備熱分析工程にて測定された上記樹脂の分解開始温度よりも低温の場合に、上記樹脂に対して上記金属粉の分解促進作用が有ると判断することを特徴とする請求項2記載の樹脂分解促進要因の判別方法。 上記非接触試料熱分析処理(B)にて測定された上記樹脂についての分解開始温度が上記予備熱分析工程にて測定された上記樹脂の分解開始温度よりも低温の場合に、上記金属粉から発生する有機又は無機ガスが上記樹脂の分解促進要因であると判別し、 上記非接触試料熱分析処理(B)にて測定された上記樹脂についての分解開始温度が上記予備熱分析工程にて測定された上記樹脂の分解開始温度と同程度の場合に、上記金属粉の物理的接触が上記樹脂の分解促進要因であると判別することを特徴とする請求項3記載の樹脂分解促進要因の判別方法。 上記分解開始温度は、上記熱分析により測定された重量変化を一次微分して重量変化率に換算して算出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の樹脂分解促進要因の判別方法。 上記熱分析測定を、熱重量分析(熱天秤)により行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の樹脂分解促進要因の判別方法。 上記金属粉は、銀、金、銅、アルミニウム、ニッケル、白金、及びパラジウムからなる金属元素群から選ばれる1種の金属粉又は2種類以上の合金粉であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の樹脂分解促進要因の判別方法。 上記樹脂は、セルロース系樹脂又はアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の樹脂分解促進要因の判別方法。 上記金属粉及び上記樹脂は、導電性ペーストの製造に用いられることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の樹脂分解促進要因の判別方法。 【課題】金属粉と樹脂との混合物において、その混合物に対する焼結等の熱処理に際して生じる樹脂の分解促進要因を的確に判別することができる樹脂分解促進要因の判別方法を提供する。【解決手段】金属粉と樹脂のそれぞれについての熱分析を行う予備熱分析工程S1と、金属粉と樹脂とを2つの異なる配置方法にて熱分析容器内に配置させて得られた各試料について熱分析を行う試料熱分析工程S2と、予備熱分析工程S1における樹脂についての重量変化に基づく分解開始温度と、試料熱分析工程における各試料の重量変化に基づく樹脂の分解開始温度とをそれぞれ比較して樹脂の分解促進要因を判別する判別工程S3とを有する。【選択図】 図1