タイトル: | 再公表特許(A1)_腎間質繊維化の抑制剤または予防剤 |
出願番号: | 2012059411 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 45/00,A61P 13/12,A61K 31/7105,A61P 43/00,A61K 31/403 |
佐野 元昭 伊藤 秀之 福田 恵一 中村 正孝 平井 博之 永田 欽也 JP WO2012137885 20121011 JP2012059411 20120405 腎間質繊維化の抑制剤または予防剤 学校法人慶應義塾 899000079 国立大学法人 東京医科歯科大学 504179255 株式会社ビー・エム・エル 591083336 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 佐野 元昭 伊藤 秀之 福田 恵一 中村 正孝 平井 博之 永田 欽也 JP 2011084120 20110405 A61K 45/00 20060101AFI20140701BHJP A61P 13/12 20060101ALI20140701BHJP A61K 31/7105 20060101ALI20140701BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140701BHJP A61K 31/403 20060101ALN20140701BHJP JPA61K45/00A61P13/12A61K31/7105A61P43/00 105A61K31/403 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN 再公表特許(A1) 20140728 2013508930 19 4C084 4C086 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZA812 4C084ZB212 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC10 4C086EA16 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA81 4C086ZB21 本発明は、主に腎間質線維化の抑制剤または予防剤に関する。また、本発明は腎間質線維化の抑制方法または予防方法にも関する。 腎臓は、血中に含まれる老廃物などを濾過し、これを尿として排出する機能を担う、人体の恒常性維持のために必須の臓器である。慢性腎臓病(chronic kidney disease(CKD))は、尿たんぱくが出ているなどの腎疾患の存在を示唆する所見があり中等度以上の腎機能低下が3カ月以上持続する病態を指す。CKDには、糖尿病性腎症、高血圧性腎症あるいは腎硬化症、慢性糸球体腎炎などの幅広い病態が含まれる。現在、世界にはCKD患者が5億人いると想定される。日本人のCKD患者は1330万人、予備軍も含めると2000万人になるとされている。 CKDが進行・増悪した際の共通な病像として、腎間質の線維化が生じる。間質の線維化が進行し腎不全へと至った患者においては、腎臓はもはやその機能を果たすことはできず、人工透析などの腎臓の機能を代替する処置が必要となる。日本において、人工透析患者数は約30万人に上り、医療費30兆円のうち人工透析医療に1兆円かかっている。たとえ人工透析に至らなくても、CKD自体が心血管疾患の独立した危険因子であることからCKDは「新たな国民病」といわれるようになっており、CKD発症および進展の予防が世界的課題となっている。 人工透析が必要となった患者は、定期的に人工透析を行なう必要が生じる。その結果、患者の生活における自由度が制限され、QOLが著しく低下してしまう。また、人工透析は定期的に行なう必要があり、莫大な医療費が発生する。すなわち、人工透析を必要とする患者の増大は社会保障費の増大につながるため、国家としても重大な問題でもある。 CKD患者における間質の線維化は、比較的病期の後期に観察される。従って、CKDの原疾患治療が困難である場合においても線維化の進行を抑制することができれば、当該患者における人工透析の導入を遅らせることができる。その結果、患者が高いQOLを維持する期間を延長することが可能となる。しかしながら、原疾患治療以外のオプションとして腎間質線維化の進展を直接的かつ効果的に抑制しうる薬剤は、臨床応用に至っていない。 CRTH2(Chemoattractant Receptor homologous molecule expressed on TH2)タンパク質は、プロスタグランジンD2(PGD2)受容体として知られている。PGD2は、CRTH2タンパク質を介して、Th2細胞(T helper type 2 cells)の遊走および活性化に関与することが知られている。 CRTH2タンパク質がTh2細胞に発現していることに関連して、PGD2やCRTH2タンパク質について、アレルギー疾患の治療などに関する研究が行なわれている。一方で、腎臓におけるこれらの生物学的意義は、PGD2の合成酵素であるL−PGDS(Lipocalin-type PGD2 Synthase)は腎障害の早期バイオマーカーとして注目されている程度に過ぎず、ほとんど分かっていない。このような状況下で、CRTH2タンパク質の腎臓における具体的な機能、特に腎間質線維化への関与は、一切知られていないのが現状である。特許第3144805号国際公開WO01/014882号特開2005-87164号公報特開2002-241282号公報 本発明は、腎間質線維化の抑制剤または予防剤を提供することを主な目的とする。また、本発明は腎間質線維化の抑制方法または予防方法を提供することをも目的とする。 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、驚くべきことに、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制することで、腎間質線維化を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてさらに改良を重ねることによって完成したものである。 すなわち、本発明は下記態様の発明を包含する。 項1、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物を含む、腎間質線維化の抑制剤または予防剤。 項2、腎臓病の患者に投与するための、項1に記載の治療薬。 項3、腎臓病における腎間質線維化の進行を抑制又は予防する、項1または2に記載の抑制剤または予防剤。 項4、前記腎臓病が、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、慢性糸球体腎炎、慢性間質性腎炎および多発性嚢胞腎からなる群から選択される、項2または3に記載の抑制剤または予防剤。 項5、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物が、CRTH2タンパク質のアンタゴニストおよびCRTH2遺伝子の発現を抑制できる核酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、項1〜4のいずれか1項に記載の抑制剤または予防剤。 項6、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物を、腎臓病の患者に投与する工程を含む、腎間質線維化の抑制方法または予防方法。 項7、腎間質線維化の抑制または予防に使用するための、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物。 項8、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物の、腎間質線維化の抑制剤または予防剤を製造するための使用。 本発明により、効果的な腎間質線維化の抑制剤または予防剤、ならびに、腎間質線維化の抑制方法または予防方法が提供される。本発明による腎間質線維化の抑制または予防により、患者のQOL(Quality of Life)の向上および必要となる医療費の低減が大いに期待される。 また、発明の抑制剤または予防剤は、腎間質線維化の発症メカニズムや治療方法の研究のためのツールとして用いることができ、さらなる医療技術の向上に貢献することも期待される。片側尿管結紮手術の模式図を示す。(A)CAY10471を投与した片側尿管結紮マウスの、施術後10日目の腎臓皮質組織のアザン染色像(100倍拡大)を示す。(B)Azan染色で陽性となる線維化領域面積の、観察間質領域面積に対する割合(Fibrotic Area)(%)の測定結果を示す。(A)施術後10日目の腎臓皮質組織のアザン染色像(100倍拡大)を示す。(B)Azan染色で陽性となる線維化領域面積の、観察間質領域面積に対する割合(Fibrotic Area)(%)の測定結果を示す。(A)I型コラーゲン遺伝子の発現量の測定結果を、18S rRNAの発現量1.0に対する相対量(mRNA Collagen I / 18S)により示す。(B)I型コラーゲンのタンパク質含有量(Tissue collagen content)の測定結果を、腎臓皮質組織1mgに対する、I型コラーゲンの含有量(マイクログラム)(μg Collagen / mg Cortex)により示す。(A)FACS解析の結果を示す。(B)CD3陽性CD4陽性細胞(CD3+CD4+ cells)の、腎臓の総細胞に対する割合(%)(% of total kidney cells)を示す。(A)施術後0日目、5日目および10日目(days)の、腎臓組織でのCRTH2遺伝子の発現量の測定結果を、18S rRNAの発現量1.0に対する相対量により示す。(B)施術後0日目、5日目および10日目(days)の、腎臓(Kidney)組織でのDP1遺伝子の発現量の測定結果を、18S rRNAの発現量1.0に対する相対量により示す。対照として、施術後0日目の脳(Brain)組織での発現量も示す。腎臓組織では、DP1遺伝子の発現は検出されなかった(undetected)。 なお、図中「*」は、t検定によるP<0.05の有意差があることを示す。「N.S.」は有意差がないことを示す。 また、図中の英語表記または省略標記は以下の通りである:WT:野生型(wild type)マウスCKO:CRTH2ノックアウト(CRTH2 knockout)マウスUUO:片側尿管結紮(unilateral urethral obstruction)UUO10d:片側尿管結紮施術後10日目(10 days)sham:sham手術 本発明のCRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物を含む、腎間質線維化の抑制剤または予防剤について、以下詳細に説明する。 CRTH2(Chemoattractant Receptor homologous molecule expressed on TH2)タンパク質(別名:DP2、GPR44、CD294、DL1R)は、プロスタグランジンD2に対する受容体タンパク質であり、公知のタンパク質である。CRTH2タンパク質は、Gαi型の受容体タンパク質であると考えられている。CRTH2タンパク質は、ヒトを含む哺乳類などにおいて発現していることが知られている。ヒトにおいては、CRTH2タンパク質は、Th2細胞、顆粒球(eosinophils)、好塩基球(basophils)において発現していることが知られている。CRTH2タンパク質配列およびこれをコードする遺伝子の塩基配列は公知であり、例えば米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information;NCBI)が公開するデータベースにおいて、それぞれアクセッション番号NP_004769およびNM_004778として登録されている。 なお、プロスタグランジンD2に対する受容体タンパク質は、上記CRTH2タンパク質およびDP1タンパク質(Gαi型の受容体タンパク質)が主要なものであると考えられている。 CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物は、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる範囲内において、あらゆる化合物を用いることができる。CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物として、CRTH2タンパク質に対する特異的な阻害剤およびCRTH2遺伝子の発現を抑制できる核酸などが例示されるが、これに限定されるものではない。 ここで、「CRTH2タンパク質の機能発現を抑制」とは、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制するあらゆる態様を指し、例えばCRTH2タンパク質の機能を阻害すること、CRTH2タンパク質の発現を抑制すること(CRTH2タンパク質をコードする遺伝子の転写の抑制、CRTH2タンパク質の翻訳の抑制など)などが例示されるが、これに限定されるものではない。なお、上記機能発現を抑制は、CRTH2タンパク質に対して特異的な物であることが好ましい。ここで、「特異的」とは、他のタンパク質に対して作用を示すことなく、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制することが可能な能力を指す。CRTH2タンパク質の機能を阻害する態様としては、受容体であるCRTH2タンパク質とリガンドとの結合を阻害する態様などが挙げられるが、これに限定されるものではない。CRTH2タンパク質とリガンドとの結合が阻害されると、シグナル伝達経路におけるCRTH2タンパク質を介した情報伝達が低減(好ましくは、遮断)される。 また、「CRTH2遺伝子の発現を抑制できる」とは、CRTH2遺伝子(CRTH2タンパク質をコードする遺伝子)から転写されるCRTH2タンパク質をコードするmRNAの破壊(RNA干渉作用)、CRTH2タンパク質ヘの翻訳の抑制などのCRTH2タンパク質の発現量が低減される態様が例示されるが、これに限定されるものではない。 上記CRTH2タンパク質に対する特異的な阻害剤としては、例えば、公知のおよび今後開発されるあらゆるCRTH2タンパク質のアンタゴニストを用いることができる。該アンタゴニストの具体例として、ラマトロバン(Ramatroban、3-((3R)-3-{[(4-fluorophenyl)sulfonyl]amino]-1,2,3,4-tetrahydro-9H-carbazol-9-yl)propanoic acid;製品名バイナス(Baynas);Bayer AG)、CAY10471(別名TM30089、(+)-3-[[(4-fluorophenyl)sulfonyl]methylamino]-1,2,3,4-tetrahydro-9H-carbazole-9-acetic acid;Cayman Chemical)、MK-7246({(7R)-7-[[(4-fluorophenyl)sulfonyl](methyl)amino]-6,7,8,9-tetrahydropyrido[1,2-a]indol-10yl}acetic acid;Merck Frosst )、TM30642(3-{3-[(4-fluoro-benzenesulfonyl)-methyl-amino]-1,2,3,4-tetrahydro-carbazol-9-yl}-propionic acid;7TM Pharma)、TM30643([3-(4-fluoro-benzenesulfonylamino)-1,2,3,4-tetrahydro-carbazol-9-yl]-acetic acid;7TM Pharma)などの化合物、および該化合物の薬学的に許容される塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、上記に例示したCRTH2タンパク質のアンタゴニストの作用機序は公知であるが、例えば、CRTH2タンパク質とリガンドとの結合を阻害する等の作用機序が含まれる。 CRTH2タンパク質のアンタゴニストの一態様として、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。式(1)[式中、X1は、メチレン基又はエチレン基を示す。X2は、水素原子又はメチル基を示す。] なお、上記式(1)でX1がエチレン基およびX2が水素原子である場合、化合物はラマトロバン(Ramatroban)である。X1がメチレン基およびX2がメチル基である場合、化合物はCAY10471(別名、TM30089)である。X1がエチレン基およびX2がメチル基である場合、化合物はTM30642である。X1がメチレン基およびX2が水素原子である場合、化合物はTM30643である。 その他の上記CRTH2タンパク質のアンタゴニストとして、下記の文献に開示されるCRTH2タンパク質のアンタゴニストを挙げるができる:特開平08-245587号公報、特開平08-175991号公報、特開平11-322600号公報、国際公開WO2006/037982号、国際公開WO2009/061676号、国際公開WO2010/057118号、国際公開WO2010/085820号、国際公開WO2010/042652号、国際公開WO2009/140642号、国際公開WO2010/008864号、国際公開WO2010/003127号、国際公開WO2010/054114号、国際公開WO2010/037059号、国際公開WO2010/039977号、国際公開WO2009/108720号、国際公開WO2009/145989号、国際公開WO2009/102893号、国際公開WO2009/099901号、国際公開WO2010/037054号、国際公開WO2010/003120号、国際公開WO2009/099902号、国際公開WO2010/054113号、国際公開WO2009/063202号、国際公開WO2007/107772号、国際公開WO2009/090414号、国際公開WO2009/093026号、国際公開WO2009/093029号、国際公開WO2005/040114号、国際公開WO2008/012511号、国際公開WO2005/044260号、国際公開WO2009/063215号、国際公開WO2005/121141号、国際公開WO2006/092579号、国際公開WO2005/040112号、国際公開WO2006/095183号、国際公開WO2006/063763号、国際公開WO2005/105727号、国際公開WO2005/123731号、国際公開WO2007/065924号、国際公開WO2007/065683号、国際公開WO2006/125596号、国際公開WO2007/065684号、国際公開WO2007/144127号、国際公開WO2007/068418号、国際公開WO2006/125593号、国際公開WO2005/102338号、国際公開WO2010/031184号、国際公開WO2010/031183号、国際公開WO2010/031182号、国際公開WO2007/019675号、国際公開WO2004/035543号、国際公開WO2008/074966号、国際公開WO2006/136859号、国際公開WO2007/045867号、国際公開WO2007/031747号、国際公開WO2007/036743号、国際公開WO2009/044134号、国際公開WO2008/078069号、国際公開WO2009/044147号、国際公開WO2009/060209号、国際公開WO2007/144625号、国際公開WO2007/062678号、国際公開WO2005/116001号、国際公開WO2007/062773号、国際公開WO2005/115374号、国際公開WO2005/115382号、国際公開WO2007/062677号、国際公開WO2007/062797号、国際公開WO2009/004379号、国際公開WO2005/018529号、国際公開WO2005/018529号、国際公開WO2004/106302号、国際公開WO2003/066047号、国際公開WO2003/066046号、国際公開WO2003/101961号、国際公開WO2004/007451号、国際公開WO2003/101981号、国際公開WO2011/017201号、国際公開WO2011/085033号、国際公開WO2009/049021号、国際公開WO2011/055270号、国際公開WO2009/042138号、国際公開WO2009/042139号、国際公開WO2008/156780号、国際公開WO2008/156781号、国際公開WO2010/027448号、国際公開WO2005/073234号、国際公開WO2004/096777号、国際公開WO2008/072784号、国際公開WO2010/055006号、国際公開WO2010/018112号、国際公開WO2010/018109号、国際公開WO2010/018113号、国際公開WO2010/006944号、国際公開WO2006/021418号、国際公開WO2006/070325号、国際公開WO2012/013566号、国際公開WO2008/113965号、国際公開WO2008/119917号、国際公開WO2012/009137号、国際公開WO2012/009134号、国際公開WO2011/079007号、国際公開WO2010/039982号、国際公開WO2006/034419号、国際公開WO2006/034418号、国際公開WO2009/102462号、国際公開WO2010/142934号、国際公開WO2010/099039号、国際公開WO2007/146838号、国際公開WO2007/0143745号、国際公開WO2010/075200号、国際公開WO2009/158426号(これらの開示全体が、参照により本明細書中に援用される。)。なお、これらの文献には、CRTH2タンパク質のアンタゴニストが、腎間質線維化の抑制または予防の効果を奏することについては、一切記載されていない。 また、上記CRTH2タンパク質に対する特異的な阻害剤の別の態様として、CRTH2タンパク質に対する特異的な抗体が挙げられる。該抗体は、好ましくはCRTH2タンパク質の細胞外ドメインに特異的に結合するもの、さらに好ましくはCRTH2タンパク質の細胞外ドメインに特異的に結合して、CRTH2タンパク質とプロストグランジンD2との結合を阻害できる抗体であるが、これに限定されるものではない。 上記抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。上記抗体がモノクローナル抗体である場合、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体などであってもよい。上記抗体は、公知の手法により作成することができる。あるいは、市販のものを用いることもできる。 上記CRTH2遺伝子の発現を抑制できる核酸は、好適にはsiRNA、shRNA、dsRNAなどのCRTH2タンパク質をコードするmRNAを標的としたRNA干渉(RNAi)作用を有するRNA分子や、CRTH2タンパク質をコードするmRNAの翻訳を抑制することができるmiRNAが挙げられる。あるいは、上記のRNA干渉(RNAi)作用を有するRNA分子または上記のmiRNAを発現できるベクター等のDNA分子であってもよい。上記CRTH2遺伝子の発現を抑制できる核酸は、CRTH2タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列に基づいて、公知の手法より作成することができる。あるいは、市販のものを用いることもできる。 なお、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物は、動物におけるCRTH2タンパク質をコードする遺伝子(CRTH2遺伝子)の欠損を有する動物(例えば、ノックアウト動物)と、CRTH2タンパク質の機能発現が抑制されるとの点で共通する。従って、後述の実施例で示すように、CRTH2遺伝子の欠損を有する動物でも、腎間質線維化の抑制または予防の効果が観察される。 また、CRTH2タンパク質は、DP1タンパク質とともに、プロスタグランジンD2に対する受容体として機能する。本発明の抑制剤または予防剤は、腎臓でその機能を発揮すると考えられるが、腎臓ではCRTH2タンパク質の発現は認められるが、DP1タンパク質の発現は検出限界以下である。さらに、尿管結紮後の腎間質の線維化が誘導される過程において、CRTH2の発現は増加するが、DP1タンパク質は発現誘導も認められない。つまり、腎臓におけるプロスタグランジンD2からのシグナルは、主にCRTH2タンパク質を介して伝達されるものと考えられる。以上のことから、腎間質線維化の抑制または予防は、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制することで達成されるものと考えられる。 上記CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。 本発明の抑制剤または予防剤は、腎間質線維化の抑制剤または予防剤である。腎間質線維化の治療剤と換言することもできる。上記抑制剤または予防剤は、好ましくは腎臓病における腎間質線維化の進行、特に好ましくは慢性腎臓病における腎間質線維化の進行を抑制または予防するものであるが、これに限定されるものではない。本発明の抑制剤または予防剤の好ましい態様の一つとして、直接的に腎間質線維化の進行を抑制または予防するものが挙げられる。ここで、「直接的に」とは、腎臓における原疾患(例えば、慢性腎臓病)の治療の有無に関わらず、腎間質線維化の進行を抑制または予防する態様を指す。 上記慢性腎臓病は、タンパク尿など腎疾患の存在を示唆する所見があり、かつ、中等度以上の腎機能低下が3か月以上持続する病態を指す。上記慢性腎臓病としては、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、慢性糸球体腎炎、慢性間質性腎炎、多発性嚢胞腎などが挙げられるが、これに限定されるものではない。腎疾患の存在を示唆する所見は、当業者に公知のものであり、例えば尿タンパクが検出されるなどが例示されるが、これに限定されるものではない。腎機能の低下は、例えばクレアチニンクリアランスなどの、公知の腎機能を推定する手段により確認することができるが、これに限定されるものではない。 慢性腎臓病の患者は、多くの場合において腎間質の線維化が誘導・進行する。腎間質線維化においては、コラーゲン、フィブリンなどの細胞外マトリックスタンパク質が、腎皮質組織に過剰量沈着する。腎間質の線維化が進行すると、最終的には腎硬化症に至る。腎硬化症に至った腎臓は、もはや機能不全(末期腎不全)となり、生体の恒常性を維持し尿毒症症状を予防するためには、人工透析などの腎臓の機能を代替する処置が必要となる。 ここで、本発明において「腎間質線維化の抑制」とは、腎間質線維化が既に誘導された患者において、腎間質線維化がさらに進行することを停止または抑制(通常は、抑制であるが、これに限定されない。)することを指す。また、「腎間質線維化の予防」とは、腎間質線維化がまだ誘導されていない患者において、腎間質線維化の発症を防ぐまたは発症時期を遅延させることを指す。本発明の治療薬により腎間質線維化の抑制または予防が達成されることで、人工透析などの腎臓の機能を代替する処置をしなくて済む、または、処置の開始時期を遅らせることが可能となる。腎臓の機能を代替する処置の導入の要否は、当業者に公知の手段、例えばクレアチニンクリアランスなどの腎機能を推定する手段により確認することができる。 本発明の抑制剤または予防剤は、その形態(投与形態)は特に限定されるものではない。好適には医薬組成物として提供される。さらに本発明の抑制剤または予防剤は、公知の手法により製剤化することができる。上記製剤の具体例として、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤などの固形製剤、および液剤、懸濁剤、乳剤、注射剤などの液体製剤が挙げられるが、これらに限定されない。製剤の形態に応じて、適宜薬学的に許容される担体および添加剤を加えることができる。上記担体および添加剤の具体例として、賦形剤、充填剤、結合剤、付湿剤、香料、着色剤などが挙げられるが、これらに限定されない。製剤が液体製剤である場合は、公知の薬学的に許容される溶媒、例えば生理食塩水、緩衝作用を有する溶液などを用いることができる。 本発明の抑制剤または予防剤の投与方法は、抑制剤または予防剤としての効果が得られることを限度として、当業者が適宜設定することができ、特に制限されるものではない。投与方法の好ましい態様として、注射投与(静脈注射、皮下注射、筋肉注射、腹腔注射、患部への注射など)、経口投与、座薬投与、経皮投与(塗布など)などが例示される。投与の簡便さや投与対象への負担が少ないとの観点から、投与方法として経口投与が特に好ましいが、これに限定されるものではない。 本発明の抑制剤または予防剤の投与対象は、腎間質の線維化が進行し得るヒト、非ヒト哺乳類(イヌ、ネコ、ネズミ、ラット、ハムスター、ウサギ、ウシ、類人猿など)、鳥類などとすることができる。投与対象がヒトである場合は、投与対象となるヒトは当業者が適宜選択することができる。好適なヒトとしては、腎臓病の患者、特に慢性腎臓病の患者が挙げられ、好ましくは慢性腎臓病の患者であって、腎間質線維化が誘導されていないもしくは進行が初期段階の患者である。腎間質線維化が誘導されていないもしくは進行が初期段階の患者は、腎臓の機能を代替する処置の導入が将来必要であることが予見される患者であってもよい。腎臓の機能を代替する処置の導入が将来必要であることが予見される患者は、本発明の抑制剤または予防剤を投与時には腎臓の機能を代替する処置を必要としていない患者であることが好ましいが、これに限定されるものではない。腎間質線維化が誘導されていないもしくは進行が初期段階の患者は、当業者に公知の手法(例えば、病理検査)により判定することができる。腎臓の機能を代替する処置の導入が将来必要であることが予見される患者であることは、腎疾患の存在を示唆する所見や、腎機能を推定する手段の結果を指標として判定することができる。また、投与対象がヒトである場合、体重、年齢、性別等は特に限定されるものではない。 本発明の抑制剤または予防剤の1日当りの投与量は、特に限定されるものではない。投与対象がヒトである場合、投与量は当該被投与対象(患者)の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜設定することができるが、通常成人1日当り約0.001mg〜10g程度、好ましくは約0.01mg〜5g程度の範囲から選ぶことができる。当該抑制剤または予防剤は1日1回投与に限らず、数回に分けて投与することができる。 本発明の抑制方法または予防方法は、前述のCRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物を、腎臓病の患者へ投与する工程を含む。上記化合物を投与する工程の具体的な投与形態、投与方法、投与対象、投与量等は、好適に前述のものとすることができる。 本発明は、腎間質線維化の抑制または予防に使用するための、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物をも提供する。CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物としては、前述のものを用いる。前述の腎間質の線維化が進行し得るヒトを含む哺乳類、鳥類などの投与対象へ、例えば、前述の投与形態、投与方法、投与対象、投与量等にて使用することで、腎間質線維化を抑制または予防することができる。 本発明は、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物の、腎間質線維化の抑制剤または予防剤を製造するための使用をも提供する。CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物としては、前述のものを用いる。医薬は医薬組成物であってもよく、好適には前述の投与形態のものである。製造される医薬は、前述の腎間質の線維化が進行し得るヒト、非ヒト哺乳類、鳥類などの投与対象へ、例えば、前述の投与形態、投与方法、投与対象、投与量等にて使用することで、腎間質線維化を抑制または予防することができる。 以下、本発明を更に詳しく説明するため、参考例および実施例を挙げるが本発明はこれに限定されるものではない。 [実施例1]マウス片側尿管結紮モデルにおける、CRTH2タンパク質に対する特異的な阻害剤を投与することの効果を検証した。 <実験方法および結果>1.CRTH2タンパク質のアンタゴニストの投与9〜11週齢の雄C57B6/Jマウスに、CAY10471(Cayman Chemical社、CRTH2タンパク質のアンタゴニスト)を投与した。具体的には、被投与マウスの体重に対して10mg/kgとなるように添加したCAY10471を、ビヒクルであるメチルセルロース(methyl cellulose、MC)に添加し、これを1日2回経口投与した。ビヒクルのみを投与したマウスを対照群とした。 2.片側尿管結紮投与後4日目のマウスを、2%イソフルランを用いて麻酔した。麻酔をしたマウスにおいて、正中切開により左尿管を露出させ、これを腎下極レベルにて2か所、絹糸を用いて結紮した。結紮を行なわない以外は上記術式と同様に施術(sham手術)したsham群を対照群とした。 片側尿管結紮手術の模式図を、図1に示す。なお、マウス片側尿管結紮モデルは、腎間質線維化の発症・進行機序を研究する動物モデルとして確立されているモデル系である。 3.腎間質線維化の観察 片側尿管結紮マウスの腎臓組織における腎間質線維化の様子を、コラーゲン沈着を指標として観察した。 施術後10日目のマウスの左側腎臓試料を摘出し、4%パラホルムアルデヒド固定の後にパラフィンに包埋した。パラフィン包埋試料から4マイクロメートル厚の切片を調製し、これを常法によりアザン染色した。 無作為に選択された腎臓皮質の組織切片の染色像を、BZ-9000顕微鏡(キーエンス社)により取得した。100倍拡大の染色像の例を、図2(A)に示す。 100倍拡大の染色像を用いて、アザン染色により可視化されたコラーゲン沈着が観察される面積割合(Fibrotic Area)を、顕微鏡システムに付属のソフトウェアにより算出した。Fibrotic Areaの測定結果を、図2(B)に示す。 <考察>図2に示されるように、CAY10471を投与したマウスにおいて、コラーゲン沈着が観察される領域が低減した。このことは、CRTH2タンパク質に対する特異的な阻害剤を投与することで、腎間質線維化の誘発および/または進行が抑制できることを示している。 [参考例1]マウス片側尿管結紮(unilateral ureteral obstruction(UUO))モデルにおける、CRTH2遺伝子欠損の効果を検証した。 <実験方法および結果>1.片側尿管結紮野生型マウスとして、実施例1と同様にC57B6/Jマウスを用いた。CRTH2ノックアウトマウス(CKOマウス)は、特開2005-87164号公報に記載のものを用いた。実施例1と同様に、9〜11週齢の雄C57B6/JマウスおよびCKOマウスに、片側尿管結紮またはsham手術を施術した。 2.腎間質線維化の観察実施例1と同様に、腎間質線維化の様子を、コラーゲン沈着を指標として観察した。100倍拡大の染色像の例を、図3(A)、Fibrotic Areaの測定結果を図3(B)にそれぞれ示す。 3.コラーゲンの遺伝子発現量およびタンパク質含有量の測定片側尿管結紮マウスの腎臓試料におけるコラーゲンの遺伝子発現量およびタンパク質含有量を測定した。 コラーゲンの遺伝子発現量は、定量RT-PCR法により測定した。具体的には、まず施術後10日目のマウスの左側腎臓試料を摘出し、SuperScript One-Cycle cDNA kit(インビトロジェン社)を用いて、添付の説明書に従いcDNAを調製した。次いで、調製したcDNAをもちいて、I型コラーゲン遺伝子の発現量を定量RT-PCR法により測定した。遺伝子の発現量は、18S rRNAの発現量に対する相対量として求めた。定量RT-PCR法は、市販のFAM (6-carboxy-fluorescein)で標識されたプローブをもちいて、7300 Real-Time PCR System(アプライドバイオシステムズ社)により、添付の説明書に従い行なった。I型コラーゲン遺伝子の発現量の測定結果を、図4(A)に示す。 I型コラーゲンのタンパク質含有量は、施術後10日目のマウスの左側腎臓試料において、Sircol collagen assay (Biocolor Ltd.)を用いて、添付の説明書に従い測定した。I型コラーゲンのタンパク質含有量の測定結果を、図4(B)に示す。 4.腎臓皮質へと浸潤したCD4陽性リンパ球の測定腎臓皮質へと浸潤したCD4陽性リンパ球の割合を、フローサイトメトリー法(FACS解析)により測定した。 施術後10日目のマウスの左側腎臓皮質試料を摘出し、まずRPMI1640培養液中で40 μg/mlのLiberase(ロシュ・ダイアグノスティックス社)で処理(37℃で25分間)し、細胞を分離した。次いで、分離された細胞をFACS buffer (1% BSA / 2mM EDTA / PBS)で再懸濁した。その後、一定量の再懸濁された細胞を、FITC標識抗CD45抗体、APC標識抗CD3抗体およびPE標識抗CD4抗体(いずれもeBioscience社)を用いて標識(4℃で30分間)した。 標識された細胞懸濁液から、FACS Aria II(BD Bioscience社)を用いてCD45陽性細胞、次いでCD3陽性細胞、最後にCD4陽性細胞を分取し、FACS Divaソフトウェア(BD Bioscience社)を用いて解析した。FACSの結果を図5(A)に、およびCD3陽性CD4陽性細胞の、総細胞に対する割合の測定結果を図5(B)に示す。 <考察>図3および図4に示されるように、片側尿管結紮施術後10日目の野生型マウスにおいては約15%程度の領域でコラーゲン沈着が観察された。これに対して、片側尿管結紮施術後10日目のCRTH2ノックアウトマウス(CKOマウス)では、コラーゲン沈着が観察された領域は約10%程度であった。さらに、図4に示されるように、CRTH2ノックアウトマウスでは、野生型マウスと比べてCKOマウスではコラーゲンの遺伝子発現量およびタンパク質含有量が有意に少なかった。これらの結果は、CRTH2遺伝子の欠損により、腎間質線維化の誘発および/または進行が抑制されたことを示している。 また、図5に示されるように、片側尿管結紮施術後10日目の野生型マウスとCKOマウスとの間では、腎臓皮質へと浸潤したCD4陽性リンパ球の数に有意差は観察されなかった(それぞれ、腎臓の総細胞に対して0.7%および0.6%)。CRTH2遺伝子の腎臓における生物学的意義は、必ずしも明らかではなく、またこれに拘束されるものではないが、上記の結果は、野生型マウスとCKOマウスとの間で、炎症の程度に差がないことを示唆していると考えられる。また、CRTH2がTh2細胞特異的に発現する分子として同定されている事実などから、単球やマクロファージが腎間質線維化へ関与する可能性は低いと考えられる。 [参考例2]マウス片側尿管結紮(unilateral ureteral obstruction(UUO))モデルにおける、CRTH2遺伝子およびDP1遺伝子の発現量を観察した。 <実験方法および結果>1.片側尿管結紮実施例1と同様に、9〜11週齢の雄C57B6/JマウスおよびCKOマウスに、片側尿管結紮またはsham手術を施術した。2.CRTH2遺伝子およびDP1遺伝子の発現量の測定参考例1と同様の手法により、cDNAを調製した。次いで、調製したcDNAをもちいて、CRTH2遺伝子およびDP1遺伝子の発現量を定量RT-PCR法により測定した。遺伝子の発現量は、18S rRNAの発現量に対する相対量として求めた。定量RT-PCR法は、市販のFAM (6-carboxy-fluorescein)で標識されたプローブをもちいて、7300 Real-Time PCR System (アプライドバイオシステムズ社)により、添付の説明書に従い行なった。 DP1遺伝子の発現量については、対照として、施術後0日目の脳組織での発現量も同様の手法により測定した。 CRTH2遺伝子およびDP1遺伝子の発現量の測定結果を、図6に示す。<考察>図6(A)に示されるように、片側尿管結紮施術前から腎臓ではCRTH2遺伝子が発現しており、施術後その発現量の増加が観察された。一方、図6(B)に示されるように、片側尿管結紮施術前および施術後のいずれにおいても、DP1遺伝子の発現は発現されなかった。 CRTH2タンパク質とDP1タンパク質の2つのタンパク質は、プロスタグランジンD2に対する主要な受容体タンパク質である。腎臓では、これら2種のうち、CRTH2タンパク質が主に機能していると考えられる。そして、実施例1及び参考例1の結果と総合すると、CRTH2タンパク質を介して、腎間質線維化がより一層進行、すなわち、増悪されることを強く示唆している。CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物を含む、腎間質線維化の抑制剤または予防剤。腎臓病の患者に投与するための、請求項1に記載の治療薬。腎臓病における腎間質線維化の進行を抑制または予防する、請求項1に記載の抑制剤または予防剤。前記腎臓病が、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、慢性糸球体腎炎、慢性間質性腎炎および多発性嚢胞腎からなる群から選択される、請求項1に記載の抑制剤または予防剤。CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物が、CRTH2タンパク質に対するアンタゴニストおよびCRTH2遺伝子の発現を抑制できる核酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の抑制剤または予防剤。CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物を、腎臓病の患者へ投与する工程を含む、腎間質線維化の抑制方法または予防方法。腎間質線維化の抑制または予防に使用するための、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物。CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物の、腎間質線維化の抑制剤または予防剤を製造するための使用。 本発明は、腎間質線維化の抑制剤または予防剤、および腎間質線維化の抑制方法または予防方法を提供することを課題とする。 かかる課題を解決する手段として、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物を含む、腎間質線維化の抑制剤または予防剤、および、CRTH2タンパク質の機能発現を抑制できる化合物を投与する工程を含む、腎間質線維化の抑制方法または予防方法を提供する。