タイトル: | 再公表特許(A1)_心筋トロポニンの測定法 |
出願番号: | 2012054541 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 33/53,G01N 33/531 |
岡村 佳和 JP WO2012115221 20120830 JP2012054541 20120224 心筋トロポニンの測定法 株式会社LSIメディエンス 591122956 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 岡村 佳和 JP 2011039625 20110225 G01N 33/53 20060101AFI20140610BHJP G01N 33/531 20060101ALI20140610BHJP JPG01N33/53 DG01N33/531 B AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN 再公表特許(A1) 20140707 2013501135 17 本発明は、検体中の心筋トロポニンの高精度な測定方法およびキットに関する。 トロポニンは3つのタンパク質、トロポニンI、トロポニンTおよびトロポニンCからなる筋原繊維タンパク質複合体であることが知られ、ミオシンおよびアクチンと相互作用することによって、カルシウムイオンによる筋収縮の調節に寄与している。詳しくは、インパルスが筋肉の運動終板のレベルに到達することで活動電位が生成し、筋小胞体に伝達される。そして、カルシウムイオンが細胞質ゾルに放出され、トロポニンCに結合する。これはトロポニンIとトロポニンCの相互作用を強化させることで、トロポニンI、T、C複合体のコンホメーションの変化が起き、アクチン−ミオシンの相互作用で筋収縮運動を可能にしている。 心筋が不可逆的に損傷されると、放出された心筋トロポニンが血流中に出現する。血液中では、心筋トロポニンI、心筋トロポニンC及び心筋トロポニンTの3つのサブユニットが単独、又は2つ若しくは3つの異なるサブユニットからなる複合体(心筋トロポニン)を形成して存在する。 種々の心筋トロポニンを評価するために、血液試料(血清、血漿または全血)が通常使用される。しかし、この選択は使用する方法によって制限され得る。例えば、血清は心筋トロポニンの迅速な評価のための方法に不適切な生物学的試料であること、または全血は定量的アッセイの実施を困難にさせることが知られているからである。ヘパリン加血漿又はヘパリン加全血を用いて実施する免疫学的測定において、使用する方法の性能が非常に高い場合でさえ、信頼性に乏しい結果がしばしば得られる。一般に、血漿中の心筋トロポニン濃度がさほど高くない場合に、この問題に遭遇する(非特許文献1)。実際、血液試料中のヘパリンの存在が種々の免疫学的測定の間に干渉し測定結果に影響を与え、それによって医師の臨床診断を修飾し得ることが知られている。 抗凝固剤としてEDTA採血管もよく用いられるが、EDTA加血漿又はEDTA加全血についても、信頼性が高くない結果を与え得る。一般的に、血漿中の心筋トロポニンIはカルシウムイオンの存在下で、心筋トロポニンCや心筋トロポニンTと複合体を形成している。しかし、EDTAの存在下ではカルシウムイオンがキレートされてしまうため、心筋トロポニンIを含む複合体が分解されてしまう。そのため、EDTA加血漿又はEDTA加全血は心筋トロポニンIの血中存在様式の変化により、免疫学的測定に影響を与える事が知られている(非特許文献2)。 今までに心筋トロポニンアッセイで検体中の干渉物質の影響を回避する方法に関して、ヘパリン含有生物学的試料に対しヘキサジメトリンブロミド(ポリブレン)の存在下で実施されることを特徴とする免疫学的測定法が開示されている(特許文献1)。そこでは、ヘパリンに起因する干渉を回避する方法であって、EDTAについては言及されていない。 また、心筋トロポニンに対し2価陽イオンを添加することにより、心筋トロポニン複合体の安定化に効果的であることが開示されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。 例えば、特許文献2は、トロポニン複合体の安定組成物の緩衝液として100μmol/L〜100mmol/Lの塩化カルシウムまたは塩化マグネシウム濃度を含有する組成物が挙げられ、好ましい組成物としては、2mmol/L塩化カルシウムを含有している態様が開示されている(段落[0013])。しかし、特許文献2には、トロポニンアッセイ時の反応液中(すなわち、免疫複合体形成時)の塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムに関して濃度の記載はなく、従って、心筋トロポニンの免疫学的測定の反応液中においても高濃度を維持しなければならないこと、また、低濃度(例えば、2mmol/L)では、検体の種類によって、正確な値を得られない場合があることは示唆も記載もない。 特許文献3は、安定化されたトロポニンIの好ましい組成物として、塩化カルシウムや塩化マグネシウムの濃度が0.01mmol/L〜10mmol/Lであることが記載されている。また、実施例14には抗原抗体反応を行う前に血清または血漿に塩化カルシウムを最終濃度6mmol/Lになるように添加し、得られた溶液を室温で2時間インキュベートした後、4℃で一晩中インキュベートすること、続いて、インキュベートしたサンプルを無金属アッセイ緩衝液で、希釈倍数2から最大希釈倍数256で希釈する工程が開示されている。すなわち、反応液中では約3mmol/L以下の塩化カルシウムが存在することになる。しかし、心筋トロポニンの免疫学的測定の反応液中においても高濃度を維持しなければならないこと、また、低濃度(例えば、約3mmol/L)では、検体の種類によって、正確な値を得られない場合があることの示唆も記載もない。なお、特許文献3の実施例で使用されているトロポニンアッセイ緩衝液中の塩化カルシウム濃度は2mmol/Lである(例えば、実施例10〜12)。 特許文献4は、トロポニン複合体の調製の際の緩衝液として、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの濃度は重要ではないが、好ましくは、約20μmol/L〜約20mmol/Lであるべきであり、カルシウムおよび/またはマグネシウムの代表的な量は、約2〜5mmol/Lであることが開示されている。また、明確では無いが、実施例1および実施例2において、複合体調製用の反応液中に、1リットルあたり約225ミリグラムの塩化カルシウムまたは1〜3mmol/Lカルシウムイオンを提供するための他のカルシウム塩を含むことが記載されている。しかし、特許文献4には、トロポニンアッセイ時の反応液中の塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムに関して濃度の記載はなく、心筋トロポニンの免疫学的測定の反応液中においても高濃度を維持しなければならないこと、また、低濃度(例えば、3mmol/L)では、検体の種類によって、正確な値を得られない場合があることの示唆も記載もない。 このように、特許文献2、特許文献3、特許文献4は、塩化カルシウムや塩化マグネシウムが、トロポニン複合体含有試料の安定化のために約1〜6mmol/Lの濃度で添加されることが一般的であることを開示するものであり、免疫反応中の測定値の信頼性を向上させるものではない。特表2002−502979号公報特開平9−21804号公報特表平11−505605号公報特表2002−508839号公報P.O.Collison et al.,Ann.Cli.Biochem.,(1995),32,pp.454−458Morijana.N et al.,Biotechnol.Appl.Biochem.(2001),33,107−115 本発明者らは、後述する実施例でも詳述するが、免疫学的手法により生体試料中の心筋トロポニンを測定することを試みたところ、該生体試料から調製された測定用の検体の種類が異なることによって、測定値に違いが生じることを発見した。 本発明は、生体試料中の心筋トロポニンを検出する場合に、異なる血液凝固阻害剤の使用による全血、血清、血漿といった検体の種類に関わらず、検体中の干渉物質の影響を受けることなく安定的で高精度な測定値を得ることができる測定方法及びキットを提供することを目的とする。 本発明者らは、上記のような現状に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、生体試料中の心筋トロポニンを免疫学的に測定する方法において、反応液中に高濃度の2価陽イオンが添加された条件下で、該心筋トロポニンを測定することによって、検体の種類に関わらず、検体中の干渉物質の影響を受けることなく安定的で高精度な測定値を得ることを見出して、本発明を完成した。 よって、本発明は、(1)生体試料中の心筋トロポニンを免疫学的に測定する方法において、心筋トロポニンとそれに特異的に結合する抗体との免疫複合体の形成を4mmol/L以上の2価陽イオンの存在下で行うことを特徴とする、該心筋トロポニンを測定する方法、(2)生体試料中の心筋トロポニンの免疫学的測定において、抗凝固剤としてEDTAを添加した血液試料を用いた場合の測定値と、それ以外の血液試料を用いた場合の測定値との乖離を減少させる方法であって、心筋トロポニンとそれに特異的に結合する抗体との免疫複合体の形成を2価陽イオンの存在下で行うことを特徴とする、前記方法、(3)前記2価陽イオンが、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンである、(1)又は(2)の方法、(4)前記2価陽イオンを検体希釈液及び/又は抗体溶液に含有する、(1)〜(3)のいずれかの方法、(5)心筋トロポニンに特異的に結合する第1抗体と第2抗体を接触させ、抗原抗体反応により形成された免疫複合体を測定する、(1)〜(4)のいずれかの方法、(6)前記第1抗体と前記第2抗体が、異なるエピトープを認識する抗体である、(5)の方法、(7)(1)〜(6)のいずれかの方法のための、心筋トロポニンに特異的に結合する抗体と、高濃度の2価陽イオンを含有する緩衝液を含む、該心筋トロポニン測定キットに関する。 本発明の方法、及び試薬キットを用いることにより、生体試料中の心筋トロポニンを、検体の種類に関わらず、検体中の干渉物質の影響を受けることなく安定に精度よく測定することができる。同一健常人から取得した血清、ヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの71〜116番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化カルシウム濃度が0mmol/L、3.3mmol/L、6.7mmol/L、10.0mmol/L、13.3mmol/L、16.7mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。同一健常人から取得した血清、ヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの71〜116番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化マグネシウム濃度が0mmol/L、3.3mmol/L、6.7mmol/L、10.0mmol/L、13.3mmol/L、16.7mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。同一健常人から取得したヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの21〜30番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化マグネシウム濃度が0mmol/L、10.0mmol/L、16.7mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。同一健常人から取得したヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの24〜40番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化マグネシウム濃度が0mmol/L、10.0mmol/L、16.7mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。同一健常人から取得したヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの71〜116番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化マグネシウム濃度が0mmol/L、10.0mmol/L、16.7mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。同一健常人から取得したヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの163〜209番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化マグネシウム濃度が0mmol/L、10.0mmol/L、16.7mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。同一健常人から取得したヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの175〜190番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化マグネシウム濃度が0mmol/L、10.0mmol/L、16.7mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。同一健常人から取得したヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの24〜40番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化カルシウム濃度が0mmol/L、6.7mmol/L、10mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。同一健常人から取得したヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの71〜116番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化カルシウム濃度が0mmol/L、6.7mmol/L、10mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。同一健常人から取得したヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニンIが添加された検体を、第1抗体に心筋トロポニンIの41〜49番目のアミノ酸配列を認識する抗体と、第2抗体に心筋トロポニンIの163〜209番目のアミノ酸配列を認識する抗体を用いて、塩化カルシウム濃度が0mmol/L、6.7mmol/L、10mmol/Lの条件下で、各検体を測定した結果を示すグラフである。 本発明における生体試料とは、ヒト等から採取された心筋トロポニンを含む可能性がある試料である。生体試料としては、全血、血清、血漿などの血液試料などが挙げられる。生体試料が採取される対象は、心筋トロポニンの測定が望まれるかぎり限定されないが、好ましくは、心筋梗塞、心不全などの心筋疾患を有することが疑われる患者である。 本発明に使用可能な検体としては、前記生体試料から調製することができる測定用試料であれば良く、例えば、血液試料を対象とした場合には、血液凝固阻害剤を使用して得た全血、血清、血漿などの検体が挙げられる。血液凝固阻害剤としては、例えば、ヘパリン、EDTA、クエン酸等を用いることができる。これらは、好ましくは、ヒト等の測定対象から採血を行う際に、あらかじめ採血管等に添加して用いることができる。 本発明で対象とする心筋トロポニンは、遊離型の心臓型トロポニンI(cTnI又はIと略することがある)または心臓型トロポニンT(cTnT又はTと略することがある)または心臓型トロポニンC(cTnC又はCと略することがある)、およびそれらのダイマー(IT、ICもしくはTC)の形態、またはそれらのトリマー(ITC)の形態が挙げられる。本明細書で断りのないかぎり、心筋トロポニンとは、前記の形態のいずれかを総称し、心筋トロポニン複合体とは、前記ダイマーや前記トリマーを総称する。 本発明で使用可能な免疫学的測定方法は、心筋トロポニンに特異的な抗体を使用する公知の方法であれば良い。例えば、免疫比濁法(TIA)、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ラテックス凝集反応法、蛍光免疫測定法、イムノクロマト法等が挙げられる。具体的には、反応液中で、検体中の心筋トロポニンと該心筋トロポニンに特異的な抗体との免疫複合体を形成させ、その形成されたことによるシグナルを適宜検出することで該心筋トロポニンの存在を検出する方法である。測定系によって使用する抗体は決定することができるが、高感度に定量的に測定する際には、2種類以上の抗体を使用するサンドイッチ免疫学的測定法(サンドイッチイムノアッセイ)を選択することができる。サンドイッチ免疫学的測定法の方法は、1以上の段階(2段階、3段階など)で実施してもよい。 例えば、生体試料中に含まれる心筋トロポニンを被検物質として、これを測定する場合には、前述のように該生体試料から調製された検体を、更に検体希釈液で測定用検体として調製し、心筋トロポニンに特異的に結合する抗体(第1抗体)を担持させた不溶性担体、および標識物質で標識化された第1抗体とは異なる心筋トロポニンに特異的に結合する抗体(第2抗体)とを混合して免疫複合体を形成させ、洗浄によって未反応の抗体および心筋トロポニンを除去(B/F分離)した後、不溶性担体に結合した標識物質の量を測定することによって行うことができる。 上記の不溶性担体は、当該技術において通常用いられるものを用いることができる。不溶性担体の材料としては、例えば、ラテックス、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、シリコーンなどのポリマー材料;アガロース;ゼラチン;赤血球;シリカゲル、ガラス、不活性アルミナ、磁性体などの無機材料などが挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせてもよい。 また、不溶性担体の形状としては、マイクロタイタープレート、試験管、ビーズ、粒子、ナノ粒子などが挙げられる。粒子としては、磁性粒子、ポリスチレンラテックスのような疎水性粒子、粒子表面にアミノ基、カルボキシル基などの親水基を有する共重合ラテックス粒子、赤血球、ゼラチン粒子などが挙げられる。中でも、迅速簡便なB/F分離を実現する観点においては磁性粒子が特に好ましく、具体的には、例えば、四酸化三鉄(Fe3O4)、三酸化二鉄(Fe2O3)、種々のフェライト、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属、コバルト、ニッケル、マンガンなどの合金からなる微粒子等の磁性粒子が好ましく用いられる。また、これらの磁性粒子を、ポリスチレン等の高分子のラテックスや、ゼラチン、リポソーム等の内部に含まれる形で調製したり、表面に固定化したものを好ましく用いることができる。 これらの不溶性担体に第1抗体を固定化させる方法は、当該技術において公知である。該固定化は、例えば物理的吸着法、共有結合法、イオン結合法、これらの組み合わせなどにより行うことができる。 標識物質は、通常の免疫学的測定法において用い得る標識物質であれば特に限定されず、例えば、酵素、蛍光物質、放射性同位元素、不溶性粒状物質などが挙げられる。該標識用の酵素としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼなどが上げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェリンなどが上げられる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが挙げられる。 また、標識物質が酵素である場合、該酵素に対する基質を用いて発光、蛍光又は発色反応を行うことにより、標識物質を測定できる。例えば、酵素がアルカリホスファターゼである場合、基質としては、CDP−star(登録商標)(4−クロロ−3−(メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2'−(5'−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2−(5'−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、AMPPD(登録商標)(アダマンチルメトキシフェニルホスホリルジオキシセタン)、APS−5などの化学発光基質;4−メチルウンベリフェリルフォスフェート(4−methylumbelliferylphosphate)などの蛍光基質;p−ニトロフェニルホスフェート、BCIP(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−リン酸)、NBT(4−ニトロブルーテトラゾリウムクロリド)、INT(ヨードニトロテトラゾリウム)などの発色基質を用いることができる。 本発明において用いられる心筋トロポニンに特異的に結合する抗体は、心筋トロポニンのアミノ酸配列をエピトープとして認識するモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体であれば特に限定するものではないが、例えば、心筋トロポニンIの13〜22番目、15〜25番目、18〜22番目、16〜20番目、18〜28番目、21〜30番目、22〜31番目、23〜29番目、24〜40番目、25〜35番目、25〜40番目、26〜35番目、27〜32番目、27〜39番目、27〜40番目、27〜73番目、30〜100番目、31〜34番目、41〜49番目、41〜56番目、56〜61番目、71〜116番目、80〜110番目、83〜93番目、85〜92番目、85〜95番目、87〜91番目、88〜94番目、117〜126番目、122〜139番目、130〜145番目、137〜148番目、143〜152番目、148〜158番目、163〜209番目、163〜210番目、169〜178番目、175〜190番目、186〜192番目、又は190〜196番目のアミノ酸配列を認識する抗体が挙げられる。好ましくは、心筋トロポニンIのアミノ酸配列21〜30番目、24〜40番目、41〜49番目、71〜116番目、163〜209番目、175〜190番目を認識する抗体が挙げられる。 これらの抗体は、公知の方法に従って、例えば、ヒト心臓から精製したトロポニンIやトロポニン複合体、in vitroで作製したリコンビナントのトロポニンIなどを抗原とし、動物に免疫して作製し、更に、エピトープを決定することができる。エピトープとは、抗体が認識する最少の領域だけでなく、抗体が認識可能な領域として同定されたものを意味する。また、公知の方法で調製可能なFabなどの抗体フラグメントであってもよい。また、これらの抗体は、Hytest社、MedixBiochemica社、Meridian Life science社、DAKO社、Fitzgerald社、Biospacific社などから適宜購入することができる。 本発明の測定において、2種類の抗体を使用する場合、生体試料中の心筋トロポニンと免疫複合体を形成することが可能であれば、限定するものではないが、第1抗体と第2抗体が認識するエピトープが異なる方が好ましい。また、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体は適宜組み合わせて使用することができる。また、第1抗体および第2抗体は、それぞれ1種類に限定することなく2種類以上を併用することができる。 本発明における2価陽イオンの添加は、上記の免疫学的測定法において、心筋トロポニンと該心筋トロポニンに特異的に結合する抗体の少なくとも第一回目の免疫複合体形成時(反応液中)に存在するように行われば良い。具体的には、免疫複合体形成時(反応液中)に同時に添加されても良いが、複合体形成前(前記抗体と心筋トロポニン含有検体が接触する前)に、検体に添加されても良い。 また、添加される2価陽イオンは、公知の緩衝液に溶解されて溶液として調製される。緩衝剤の他、単独で調製されても良いが、検体の前処理や、反応時に必要な公知の物質と共に調製されても良い。2価陽イオンは、前記のように、少なくとも免疫複合体形成時(反応液中)に添加されていれば良いので、その際に存在させることが可能な緩衝液等に含有させることができる。免疫複合体形成時に存在させることが可能な緩衝液等とは、使用する測定法や装置によって適宜設定可能であるが、例えば、検体希釈液や、抗体溶液(抗体固相粒子液や、標識抗体液など)などが挙げられる。また、複数の緩衝液に添加させても良い。 本発明における2価陽イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが挙げられる。該イオンが、反応液中でイオンとして存在できるように供給されればどのような形態で添加されても良いが、好ましくは塩である。具体的には、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが挙げられる。 本発明における2価陽イオンの濃度としては、前記免疫複合体形成時の濃度として、4mmol/L以上、好ましくは5mmol/L以上、より好ましくは6mmol/L以上、より好ましくは8mmol/L以上、より好ましくは10mmol/L以上、より好ましくは12mmol/L以上、より好ましくは15mmol/L以上、また、500mmol/L以下、好ましくは100mmol/L以下、より好ましくは50mmol/L以下、更に好ましくは20mmol/L以下の範囲から適宜組み合わせて選択される。本発明では、生体試料中の2価陽イオンの存在にかかわらず、反応液中の2価陽イオンが上記の濃度範囲となるように存在させておくものである。尚、反応液中の2価陽イオン濃度をあまり高めると、抗原抗体反応が抑制(阻害)されて目的の測定が精度よく行うことができなくなるので、注意が必要である。また、本発明に従って検体の種類に関係なく安定して高精度に生体試料中の心筋トロポニンを測定するために、検体に含まれる心筋トロポニンの量や使用する2価陽イオンによって、添加する濃度を決定することは設計の範囲である。 本発明における2価陽イオンの前記濃度は、従来法における心筋トロポニンの免疫学的測定の反応液中に含まれる2価陽イオンの濃度よりも高濃度である。従来法のように、免疫複合体形成時に2価陽イオンが含まれていないか、あるいは、含まれていても低濃度である場合には、後述の実施例に具体的実験データを示すとおり、抗凝固剤としてEDTAを添加した血液試料(例えば、EDTA加血漿、EDTA加全血、特にはEDTA加血漿)を用いた場合の測定値と、それ以外の血液試料(例えば、血清、ヘパリン加血漿、クエン酸加血漿、全血)を用いた場合の測定値との間に乖離が生じる。一方、免疫複合体形成時に高濃度の2価陽イオンが存在する場合には、測定値の違いが小さくなるか、あるいは、実質的に一致する。本発明者が今回初めて見出した、EDTA添加の有無に基づく検体の種類の違いによって生じるこのような挙動の差異は、エピトープの異なる複数種のモノクローナル抗体を用いても共通に認められる現象であって(後述の実施例3及び4参照)、特別なモノクローナル抗体に特有の現象ではない。 本発明における2価陽イオンの濃度は、後述の実施例に示すように、EDTAを添加した血液試料と、それ以外の血液試料とを用意し、複数の異なる濃度の2価陽イオンの存在下で、各血液試料中の心筋トロポニン量を測定し、両試料の測定値が一致する2価陽イオンの濃度範囲を把握することにより、容易に決定することができる。すなわち、本発明における2価陽イオンの濃度は、抗凝固剤としてEDTAを添加した血液試料を用いた場合の測定値と、それ以外の血液試料を用いた場合の測定値とが一致する濃度範囲から選択することができる。 本発明のキットは、本発明の方法を実施するために用いることができ、心筋トロポニンに特異的に結合する抗体と、2価陽イオンを含有する緩衝液を含む。 心筋トロポニンに特異的に結合する抗体とは、前述した公知の抗体を使用することができるし、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のいずれであることもできる。また、心筋トロポニンへの特異的結合能を保持する抗体断片、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、又はFvとして、キットに用いることもできる。 更に、前記抗体は、そのままの状態でキットに用いることもできるし、利用する免疫学的手法に基づいて、それに適した形態、例えば、ラテックス凝集免疫測定法を利用するのであれば、ラテックス担体に固定した状態で、磁性粒子などを利用した高感度測定法を利用するのであれば、磁性粒子に固定した状態で、イムノクロマトグラフ法などの基板を利用する方法であれば、基板に固定した状態で、標識物質(例えば、酵素、蛍光物質、化学発光物質、放射性同位体、ビオチン、アビジン)による標識の必要があれば、標識化した状態で、キットに用いることもできる。 前記2価陽イオンを含む緩衝液としては、前述を参照すれば良いが、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの塩で調製された溶液である。好ましくは、検体希釈液として調製されていると良い。 また、本発明のキットには、本発明のキットを使用する免疫学的測定法の実施手順に関する説明、キット自体の保存・取り扱いなどに関する注意事項などが記載された取扱説明書を含むことができる。 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。《実施例1:心筋トロポニン測定用試薬の作製と測定法》実施例1−1:心筋トロポニン測定用試薬の作製と被検試料の調製 心筋トロポニンの測定用試薬として、心筋トロポニンI(cTnI)測定用の試薬を作製した。・第1抗体溶液:磁性粒子(JSR社)にcTnIのアミノ酸配列41〜49番目をエピトープとして認識する抗体(19C7:Hytest社)を結合した磁性粒子溶液を用いた。・第2抗体溶液:cTnIのアミノ酸配列71〜116番目をエピトープとして認識する抗体(DAKO社)をマレイミド法によりアルカリホスファターゼ(ALP)標識した標識抗体溶液を用いた。・発光基質溶液:CDP−star(アプライドバイオシステム社製)を使用した。・検体希釈液:0.1mol/L Tris・HCl(8.2)、0.1% BSA、0.15mol/L NaCl、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムを含む緩衝液を使用した。・B/F洗浄液:0.01mol/L MOPS(7.5)、0.15mol/L NaCl、0.05% Triton X−100を含む緩衝液を使用した。 次にこれらの溶液を、後述の自動免疫測定装置に収載されるように該自動免疫測定装置の自動測定用カートリッジに封入した。 被検試料は、健常人から取得した血清、ヘパリン加血漿、EDTA加血漿に心筋トロポニン複合体(I−T−C)(Hytest社)を約0.7ng/mLになるように添加し作製した。実施例1−2:心筋トロポニン測定用試薬の測定法 心筋トロポニンの測定には、特許第3115501号公報等に開示されているものと同様の磁性粒子を用いた免疫測定を自動的に行うことのできる自動免疫測定装置を用いた。該装置は、液体の吸引・吐出ラインとして配設されたチップ内で磁力により効果的にB/F分離を行うことができ、高い洗浄効率を示す。該装置の測定ステップは下記のとおりである。 なお、検出は、光電子増倍管(PMT)により検出される化学発光基質の発光カウントを測定結果とした。自動免疫測定装置による測定 自動測定用カートリッジに、試料、試料希釈液、磁性粒子溶液(第1抗体が担持されている)、B/F分離用の洗浄液、第2抗体溶液、基質溶液等を充填し、装置にセットする。以下、通常の運転方法に従い、各操作が行われる。(1)希釈液を用いて任意の希釈倍率に調整された試料溶液、磁性粒子溶液、および、第2抗体溶液を混合し、抗原抗体反応を行わせて免疫複合体を生成させる。(2)未反応の物質を除去するためにB/F分離を行う。まず、液体吸引ラインとしてセットされたチップを通じて反応液を吸引し、磁石をチップ外壁面に接触させて磁性粒子を捕集する。次に、磁性粒子がチップ内壁面に吸着保持された状態で溶液を吐出して分離を行った後、別の反応容器に充填されたB/F分離用の洗浄液を吸引・吐出して洗浄を行う。(3)前記チップの外壁面から磁石を離脱させて磁力の影響をなくした後に、基質溶液を吸引・吐出し、チップ内壁面に吸着保持された磁性粒子を分散させ、酵素反応を行わせる。(4)PMTにより発光量を測定する。《実施例2:反応液への塩化カルシウム又は塩化マグネシウム添加による心筋トロポニンの反応性への影響》 塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムを、反応液中に各濃度(0、3.3、6.7、10.0、13.3、16.7mmol/L)になるように試料希釈液に添加したこと以外は、実施例1に従って行った。 塩化カルシウムの結果を図1、塩化マグネシウムの結果を図2に示す。その結果、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムの添加が従来使用されている低濃度だと、血清およびヘパリン加血漿とEDTA加血漿では、心筋トロポニンの反応性が異なることがわかった。さらに、塩化カルシウムは6.7mmol/L以上、塩化マグネシウムは13.3mmol/L以上、添加されることにより、血清およびヘパリン加血漿はEDTA加血漿の心筋トロポニンの反応性が一致することが確認された。 以上より、高濃度の塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムを反応液中に添加することにより、いずれの被検試料においても、同様に安定して心筋トロポニンを測定できることがわかった。また、心筋トロポニン複合体(I−T−C)は、EDTA加血漿ではカルシウムイオンがキレート化してしまうため、複合体が分解していると考えられる。血清およびヘパリン加血漿は、心筋トロポニン複合体(I−T−C)が分解されていない状態にもかかわらず、反応液中の2価陽イオン濃度を上げることによってEDTA加血漿の反応性と一致することから、ここで得られた結果は予想外の結果であると考えられる。カルシウムイオンは心筋トロポニンCに結合することが知られているが、その結合部位は複数存在する。そのため、心筋トロポニンI、心筋トロポニンTおよび心筋トロポニンCの相互作用は、カルシウムイオンの濃度によって結合状態が変化するものと考えられる。本発明の効果は、2価陽イオンを過剰に添加することで、心筋トロポニン複合体の分子構造の変化を与え、遊離型心筋トロポニンIと同様の効果が得られる構造に変化させた可能性も考えられる。《実施例3:酵素標識抗体の違いにおける反応液への塩化マグネシウム添加による心筋トロポニンの反応性への影響》 第2抗体溶液を以下の抗体に変更したこと及び反応液に添加する塩化マグネシウム濃度以外は、実施例1の方法に従い行った。第2抗体溶液として、心筋トロポニンIのアミノ酸配列21〜30番目(MedixBiochemica社)、24〜40番目(Biospacific社)、71〜116番目(DAKO社)、163〜209番目(DAKO社)、175〜190番目(MedixBiochemica社)をエピトープとして認識する抗体溶液5つをそれぞれ作製した。反応液に添加する塩化マグネシウム濃度は、0、10、16.7mmol/Lで実施した。 第2抗体溶液として、心筋トロポニンIのアミノ酸配列21〜30番目、24〜40番目、71〜116番目、163〜209番目、175〜190番目をエピトープとする抗体を使用した結果をそれぞれ、図3、図4、図5、図6、図7に示す。なお、図2と図5は同じ抗体の組合せ結果である。その結果、実施例2とは抗原認識部位の異なる第2抗体溶液を用いた場合においても、実施例2の組み合わせと同じように、塩化マグネシウム濃度を10mmol/L以上にすることで、血清およびヘパリン加血漿はEDTA加血漿の心筋トロポニンの反応性を一致させることができることが確認された。《実施例4:酵素標識抗体の違いにおける反応液への塩化カルシウム添加による心筋トロポニンの反応性への影響》 第2抗体溶液を以下の抗体に変更したこと及び反応液に添加する塩化カルシウム濃度以外は、実施例1に従い行った。第2抗体溶液として、心筋トロポニンIのアミノ酸配列24〜40番目、71〜116番目、163〜209番目をエピトープとして認識する抗体溶液3つをそれぞれ作製した。反応液に添加する塩化カルシウム濃度は0、6.7、10mmol/Lで実施した。 第2抗体溶液として、心筋トロポニンIのアミノ酸配列24〜40番目、71〜116番目、163〜209番目をエピトープとする抗体を使用した結果をそれぞれ、図8、図9、図10に示す。なお、図1と図9は同じ抗体の組合せ結果である。その結果、実施例2とは抗原認識部位の異なる第2抗体溶液を用いた場合においても、実施例2の組み合わせと同じように、塩化カルシウム濃度を6.7mmol/L以上にすることで、血清およびヘパリン加血漿はEDTA加血漿の心筋トロポニンの反応性を一致させることができることが確認された。 実施例3および実施例4の結果から、反応液への2価陽イオンの添加は、心筋トロポニンIのアミノ酸配列21〜30番目、24〜40番目、71〜116番目、163〜209番目、175〜190番目のいずれかに特定された構造変化によるものではないことが示唆された。従って、従来考えられていた2価陽イオンの添加による心筋トロポニン複合体の安定化とは異なる作用によって、高濃度の2価陽イオンの添加が、血清およびヘパリン加血漿はEDTA加血漿の心筋トロポニンの反応性を一致させることができると推測された。 本発明は、心筋トロポニンを検出する場合に、検体の種類に関わらず、検体中の干渉物質の影響を受けることなく安定して高精度に測定結果を得ることができる。心筋トロポニンは、心筋梗塞等の心筋障害の指標として用いられるため、簡便・迅速に測定される必要があり、検査室だけでなくPOCT分野等においても測定される。例えば、血液試料を対象とすると、該試料の採取に用いられる容器は多岐にわたるため、得られた検体の種類に関わらず、安定して高精度に測定結果を得ることが可能となる本発明は特に有用である。 以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。 生体試料中の心筋トロポニンを免疫学的に測定する方法において、心筋トロポニンとそれに特異的に結合する抗体との免疫複合体の形成を4mmol/L以上の2価陽イオンの存在下で行うことを特徴とする、該心筋トロポニンを測定する方法。 生体試料中の心筋トロポニンの免疫学的測定において、抗凝固剤としてEDTAを添加した血液試料を用いた場合の測定値と、それ以外の血液試料を用いた場合の測定値との間の乖離を減少させる方法であって、心筋トロポニンとそれに特異的に結合する抗体との免疫複合体の形成を2価陽イオンの存在下で行うことを特徴とする、前記方法。 前記2価陽イオンが、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンである、請求項1又は2に記載の方法。 前記2価陽イオンを検体希釈液及び/又は抗体溶液に含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 心筋トロポニンに特異的に結合する第1抗体と第2抗体を接触させ、抗原抗体反応により形成された免疫複合体を測定する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 前記第1抗体と前記第2抗体が、異なるエピトープを認識する抗体である、請求項5に記載の方法。 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法のための、心筋トロポニンに特異的に結合する抗体と、高濃度の2価陽イオンを含有する緩衝液を含む、該心筋トロポニン測定キット。 心筋トロポニンとそれに特異的に結合する抗体との免疫複合体の形成を4mmol/L以上の2価陽イオンの存在下で行う、生体試料中の心筋トロポニンを免疫学的に測定する方法、及び、心筋トロポニンに特異的に結合する抗体と、高濃度の2価陽イオンを含有する緩衝液を含む、心筋トロポニン測定キットを開示する。当該方法又はキットによれば、検体の種類に関わらず、検体中の干渉物質の影響を受けることなく安定的で高精度な測定値を得ることができる。