タイトル: | 公開特許公報(A)_薄膜転写シート、その製造方法、及び薄膜層の被着体への転写方法 |
出願番号: | 2012054361 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 8/02,A61Q 19/00,A61K 8/73 |
加茂 和幸 高根 信明 JP 2013184970 公開特許公報(A) 20130919 2012054361 20120312 薄膜転写シート、その製造方法、及び薄膜層の被着体への転写方法 日立化成株式会社 000004455 加茂 和幸 高根 信明 A61K 8/02 20060101AFI20130827BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20130827BHJP A61K 8/73 20060101ALI20130827BHJP JPA61K8/02A61Q19/00A61K8/73 13 1 OL 21 4C083 4C083AB012 4C083AC232 4C083AC302 4C083AD092 4C083AD112 4C083AD302 4C083AD322 4C083AD632 4C083BB33 4C083BB34 4C083CC01 4C083CC02 4C083DD12 4C083EE06 本発明は、薄膜転写シート、薄膜転写シートの製造方法、及び薄膜転写シートの薄膜層を被着体に転写する転写方法、薄膜層への有効成分を効果的に担持する方法に関する。 一般に、人は、外観を美しく整えることで、心が元気になり、豊かな気持ちになることができる。顔や身体の外観に悩みがある人にとっては勿論のこと、そのような悩みのない人にとっても、化粧によって外観を美しく整えることにより、心が元気になり、豊かな気持ちになることができる。したがって、化粧は、人が社会生活を送る上で重要な事項の一つである。化粧は、人が自分の中の元気を引き出す作業ともいえる。そのため、太古の昔から、様々な化粧が行われてきた。 近年では、生活の質の向上に伴って、皮膚のつや、潤い、白さの改善や、シワ防止などを目的とした化粧用シートが注目されている。そのような化粧用シートとして、従来、木材繊維由来の紙に保湿剤などを貼付してなるシワ改善シートが提供されていたが(例えば、特許文献1参照)、基材が紙であるために破れ易く、また皮膚に対する密着性が悪いうえ、装着時に違和感があるなど装着感に劣るものであった。 そのような背景のもと、シート状パックなどの化粧品材料として、カゼイン及びシルク由来の天然系原料の利用が検討されてきた。また、非特許文献1には、キトサン及びアルギン酸を交互に積層した薄膜層が記載されている。特許第3215852号公報T.Fujie et al.,Adv.Funct.Mater.,2009年,19巻,2560−2568頁 例えば化粧品分野では、使用者が一般人ということもあり、誰でも簡単に使用可能な化粧品の開発が望まれている。 非特許文献1に記載の薄膜層は、粘着剤などを一切必要とせずに皮膚に貼合可能であり、化粧料又は化粧料成分を保持させてなる化粧用シート、保湿シート、化粧補助貼合シート、及び化粧保護シートとしての使用を目的とする薄膜層に関するものである。しかしながら、厚みがおよそ100nmのフィルムであり、皮膚への貼合の際、フィルムが収縮することで、シワ、破損、脱落が発生し、均一に貼合が出来ないなど取扱いが非常に困難であった。 このように、化粧用の薄膜層には、肌に貼付した状態にある貼付剤自体が目立たないことや、被適用者が貼付状態に違和感を持たないことが求められている。一方で、誰でも簡単に使用可能な新たな薄膜層が求められている。さらに、上記薄膜層に有効成分を担持する方法も求められている。 そこで、本発明は有効成分を効率的に担持すること、および皮膚への貼合が非常に容易であり、かつ、貼付時に目立ちにくく、違和感がない薄膜転写シートを提供することを目的とする。さらに、本発明は、また、皮膚への貼合が非常に容易であり、かつ、貼付時に目立ちにくく、違和感がない薄膜転写シートの製造方法を提供すると共に、この薄膜転写シートの薄膜層を被着体へ転写する転写方法を提供することを目的とする。 本発明は、[1] 基材、薄膜層、溶解性支持層、浸透性基材を備えるシートであって、前記溶解性支持層に(a)薬物、(b)化粧料、(c)色素、(d)金属イオンのいずれかを含む薄膜転写シートに関する。 また、本発明は、[2] 浸透性基材が、繊維状,メッシュまたは、多孔質構造である上記[1]に記載の薄膜転写シートに関する。 また、本発明は、[3] 溶解性支持層が、水溶性またはアルコール可溶な高分子からなる上記[1]又は[2]に記載の薄膜転写シートに関する。 また、本発明は、[4] 薄膜層が、厚さ40nm以上、300nm以下である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の薄膜転写シートに関する。 また、本発明は、[5] 薄膜層が、ポリカチオンを含むA層と、ポリアニオンを含むB層とが交互に積層されたものである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の薄膜転写シートに関する。 また、本発明は、[6] 薄膜層が、ポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含む溶液を用いて形成されるB層と、を有する、上記[5]に記載の薄膜転写シートに関する。 また、本発明は、[7] 前記ポリカチオンが、1分子中に2個以上のアミノ基を有するカチオン性ポリマーである、上記[5]または[6]に記載の薄膜転写シートに関する。 また、本発明は、[8] 前記ポリアニオンが、1分子中に2個以上のカルボキシル基又はカルボキシレート基を有するアニオン性ポリマーである、上記[5]〜[7]のいずれか一項に記載の薄膜転写シートに関する。 また、本発明は、[9] 薄膜転写シートが、皮膚貼合用に用いられる上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の薄膜転写シートに関する。 また、本発明は、[10] 薄膜転写シートが、化粧用に用いられる上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の薄膜転写シートに関する。 本発明は、浸透性基材と、該基材上に溶解性支持層と薄膜層とを備え、前記薄膜層が、ポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含む溶液を用いて形成されるB層と、を有する、薄膜転写シートを提供する。 上記薄膜転写シートは、上記構成を有しているため、容易な取扱性、強靭性(機械的強度)、透明性及び保湿性に優れ、かつ皮膚に対する自己密着性を有する。このために、一般人が使用する際、皮膚への貼合が非常に容易であり、さらには貼付時に目立ちにくく、かつ貼付時の違和感が低減される。また、材料には生分解性又は生体適合性の高い材料を使用するため、上記薄膜層は安全性が高く、皮膚アレルギーを起こしにくいという利点がある。 上記薄膜層は、A層とB層とが交互に積層されたものであることが好ましく、A層とB層とが交互に積層されたものであることによって、機械的強度、及び自己密着性により優れた薄膜層となる。なお、A層とB層とが交互に積層されるとは、1層のA層と1層のB層とが交互に積層されている場合に限られず、複数の層からなるA層と、複数の層からなるB層とが交互に積層されている場合も含む。 さらに、本発明は、[11] ポリカチオンを含む溶液、又はポリアニオンを含む溶液に基材を接触させて、基材の表面にポリカチオン又はポリアニオンに由来する層を形成する工程と、(i)ポリカチオンに由来する層に、ポリアニオン溶液を接触させて、前記ポリカチオンに由来する層上にポリアニオンに由来する層を形成するステップと、(ii)ポリアニオンに由来する層に、ポリカチオンを含む溶液を接触させて、前記ポリアニオンに由来する層上にポリカチオンに由来する層を形成するステップと、さらに(i)、(ii)の工程を交互に繰り返して積層する薄膜層を形成する工程と、前記薄膜層の上に、溶解性支持層を形成する工程と、前記溶解性支持層上に浸透性基材を形成する工程と、を含む、薄膜転写シートの製造方法に関する。 また、本発明は、[12] 前記薄膜層を形成する工程において、(i)、(ii)の工程を交互に繰り返す回数が1〜300回である、上記[11]に記載の薄膜転写シートの製造方法に関する。 また、本発明は、[13] 上記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の薄膜転写シートの薄膜層を被着体へ面するように接触させる工程、浸透性基材側から、溶解性支持層を溶解する溶液を浸透、通過させる工程、浸透性基材を剥がす工程と含む、薄膜層の被着体への転写方法に関する。 上記薄膜層は、上述のような効果を奏するため、皮膚貼合用薄膜層として好適に使用することができる。また、化粧用薄膜層として好適に使用することができる。さらに、化粧用皮膚貼合用薄膜層としても好適に使用することができる。 本発明の薄膜転写シートは、浸透性基材を使用しているために取扱性が良好である。加えてナノメートルサイズの薄膜層であるため、皺や肌の細かな凹凸(微細な溝)にも適合し、さらに、透明であるために貼付箇所が目立つことがない。また、非常に薄い薄膜であるため、貼り付けた際の違和感がない。さらに、皮膚に対する自己密着性を有するため、接着剤(粘着剤)を用いる必要がなく、接着剤によるかぶれや肌荒れの心配がない。さらに、生分解性又は生体適合性ポリマーを使用しているため、皮膚に貼り付けた際に皮膚アレルギーが生じにくく、かつ廃棄後、環境に悪影響を及ぼさないという利点を有する。加えて、溶解性支持層に有効成分を溶解または分散させることで,有効成分が薄膜層へ浸透し、薄膜中へ有効成分が担持可能となるという利点を有する。 また、本発明の薄膜転写シートは、有効成分を保持させてなる化粧用シート、保湿シート、化粧補助貼合シート、及び化粧保護シート、化粧料成分の皮膚浸透性を高めるシート、化粧料の保持と溜めのシート、として好適に使用できる。薄膜層(キトサン、アルギン酸の交互積層膜)、溶解性支持層(ポリビニルアルコール+有効成分溶解または分散)、浸透性基材(ポリエチレンテレフタレートメッシュシート)が順次積層された、薄膜転写シートを示す図である。実施例1の薄膜層を皮膚に貼着し(左)、それに紫外線を照射中(右)の写真である。実施例3の透過型電子顕微鏡写真である。〔薄膜層〕 本実施形態に係るナノ薄膜層は、ポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含む溶液を用いて形成されるB層とを有する。〔ポリカチオン〕 本明細書において、ポリカチオンとは、1分子中に2個以上のカチオン性基を有する化合物をいい、カチオン性基とは、カチオン基又はカチオン基に誘導され得る基をいう。カチオン性基としては、例えば、アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;イミノ基;グアニジノ基等が挙げられる。なお、アミノ基はプロトンが配位結合した−NH3+であってもよい。 ポリカチオンとしては、カチオン性ポリマーが好ましい。なお、本明細書において、カチオン性ポリマーとは、1分子中に2個以上のカチオン性基を有するポリマーをいう。カチオン性ポリマーとしては、カチオン性基を有するモノマーを重合させたものであることが好ましい。 カチオン性ポリマーとしては、水の存在下で後述するアニオン性ポリマーとゲル状のポリイオンコンプレックスを形成することができ、そのポリイオンコンプレックスが生体組織接着作用を発揮することができ、生体に対して有害反応の少ないものが好ましい。また、カチオン性ポリマーとしては、患部の組織が治癒した後に生分解して生体内に吸収されるように、生体吸収性を有する物質であることがより好ましい。 カチオン性ポリマーとしては、水に溶解又は膨潤することが可能な程度の親水性を有し、水中でカチオン性基が解離することにより正電荷を帯びるという特性を有するものが好適に使用される。カチオン性ポリマーとしては、特に1分子中に2個以上のアミノ基を有するポリマーが好ましい。 カチオン性ポリマーの好ましい例としては、コラーゲン、ポリヒスチジン、アイオネン、キトサン、アミノ化セルロース等の塩基性多糖類;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンとの共重合体等の塩基性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジビニルピリジン等の塩基性ビニルポリマー;並びにそれらの塩類(塩酸塩、酢酸塩等)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。 さらに、上述のカチオン性ポリマーを架橋することによって得られる架橋ポリマーを用いることもできる。カチオン性ポリマーを架橋する方法としては、公知の方法のいずれも用いることができる。カチオン性ポリマーがアミノ基を有する場合には、カチオン性ポリマーのアミノ基をジカルボン酸と縮合反応させることにより架橋する方法が好適である。 カチオン性ポリマーとしては、塩基性多糖類若しくはその誘導体(例えば、アセチル化物等)又はそれらの塩が好適である。特に、塩基性多糖類としてはキトサンが好ましい。キトサンはキチンの脱アセチル化物であり、その脱アセチル化度としては、生体吸収性、水溶性がより優れることから、40〜100%の範囲内であることが好ましく、45〜90%の範囲内であることがより好ましく、50〜80%の範囲内であることがさらに好ましい。 カチオン性ポリマーの分子量は特に制限されないが、粘度平均分子量が大きくなるにしたがって、基材付き薄膜層の製造時に溶液の粘度が高くなり流延や積層が困難となる傾向があること、及び生体吸収性が低下する傾向があることから、カチオン性ポリマーの粘度平均分子量は、1,000〜500,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜400,000の範囲内であることがより好ましく、50,000〜200,000の範囲内であることがさらに好ましい。 本明細書において、「粘度平均分子量」とは、一般的な測定方法である粘度法により評価すればよく、例えば、JIS K 7367−3:1999に基づいて測定した極限粘度数[η]から算出することができる。 ポリカチオンとして、1分子中に2個以上のカチオン性基を有する低分子の化合物であっても好ましく用いることができる。1分子中に2個以上のカチオン性基を有する低分子の化合物としては、例えば、低分子のジアミン、ポリアミンが挙げられる。具体的には、例えば、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン等のジアミノアルカン類等のように1分子中に2個のアミノ基を有する化合物、N−(リジル)−ジアミノエタン、N,N´−(ジリジル)−ジアミノエタン、N−(リジル)−ジアミノヘキサン、N,N´−(ジリジル)−ジアミノヘキサン等のモノ又はジリジルアミノアルカン類等のように1分子中に3〜4個のアミノ基を有する化合物、1分子中に5個以上のアミノ基を有する化合物を挙げることができる。〔ポリカチオンを含む溶液〕 ポリカチオンを含む溶液中のポリカチオンの濃度は、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.02〜2.0質量%がより好ましく、0.05〜1.0質量%が特に好ましい。 ポリカチオンを含む溶液の粘度は、0.1〜1000mPa・sの範囲内であることが好ましく、0.5〜500mPa・sの範囲内であることがより好ましく、1〜100mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。本明細書において、粘度とは、株式会社エー・アンド・デー製音叉型振動式粘度計SV−10を用い、サンプル量10mL、20℃で測定した値である。 ポリカチオンを含む溶液には、2種類以上のポリカチオンを併用してもよい。 ポリカチオンを含む溶液の溶媒としては、ポリカチオンを溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、ポリカチオンの電荷量をより多くすることができるため、水又は無機塩類の水溶液が適当である。 ポリカチオンを含む溶液は、pHを調整する必要はなく、ポリカチオンを溶媒に溶解させたものをそのまま用いることができる。例えば、pHは1.2〜6.6にすることができる。〔ポリアニオン〕 本明細書において、ポリアニオンとは、1分子中に2個以上のアニオン性基を有する化合物をいい、アニオン性基とは、アニオン基又はアニオン基に誘導され得る基をいう。アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、硫酸基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられる。 ポリアニオンとしては、アニオン性ポリマーが好ましい。なお、本明細書において、アニオン性ポリマーとは、1分子中に2個以上のアニオン性基を有するポリマーをいう。アニオン性ポリマーとしては、アニオン性基を有するモノマーを重合させたものであることが好ましい。 アニオン性ポリマーとしては、水の存在下で上記カチオン性ポリマーとゲル状のポリイオンコンプレックスを形成することができ、そのポリイオンコンプレックスが生体組織接着作用を発揮することができ、生体に対して有害反応の少ないものが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、患部の組織が治癒した後に生分解して生体内に吸収されるように、生体吸収性を有する物質であることがより好ましい。 アニオン性ポリマーとしては、水に溶解又は膨潤することが可能な程度の親水性を有し、水中でアニオン性基が解離することにより負電荷を帯びるという特性を有するものが好適に使用される。アニオン性ポリマーとしては、特に1分子中に2個以上のカルボキシル基又はカルボキシレート基を有するポリマーが好ましい。 アニオン性ポリマーの好ましい例としては、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ペクチン、サクラン等のカルボキシル基、カルボキシレート基又は硫酸基等のアニオン性基を有する天然の酸性多糖類及びその誘導体;セルロース、デキストラン、デンプン等の天然ではカルボキシル基、カルボキシレート基又は硫酸基等のアニオン性基を有しない多糖類にアニオン性基を結合させて人工的に合成された酸性多糖類及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキトサン、硫酸化セルロース及び硫酸化デキストラン並びにそれらの誘導体);ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、グルタミン酸とアスパラギン酸との共重合体等の酸性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリアクリル酸等の酸性ビニルポリマー;並びにそれらの塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が挙げられる。 酸性多糖類の誘導体としては、例えば、水酸基の一部又は全部を、酢酸、硝酸、硫酸、リン酸等と反応させたもの;カルボキシル基又はカルボキシレート基の一部をエチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子アルコールでエステル化した化合物が挙げられる。 酸性多糖類の誘導体としては、具体的には、アルギン酸エチレングリコールエステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ヒアルロン酸エチレングリコールエステル、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられる。これらの誘導体におけるエステル化度は特に制限されないが、エステル化度が高くなりすぎると、カルボキシル基又はカルボキシレート基の割合、すなわちアニオン性が低下し、上記カチオン性ポリマーとの間に形成されるポリイオンコンプレックスの機械的強度が低下する傾向にある。そこで、上記誘導体におけるエステル化度は40〜100%の範囲内であることが好ましく、45〜90%の範囲内であることがより好ましく、50〜80%の範囲内であることがさらに好ましい。 酸性多糖類又は酸性多糖類の誘導体の塩としては、これらと1価のイオンとの塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩が挙げられる。 さらに上述のアニオン性ポリマーを架橋することによって得られる架橋ポリマーを用いることもできる。アニオン性ポリマーを架橋する方法としては、公知の方法のいずれも用いることができる。アニオン性ポリマーが、カルボキシル基又はカルボキシレート基を有する場合には、アニオン性ポリマーのカルボキシル基又はカルボキシレート基をジアミンと縮合反応させることにより架橋する方法が好適である。 アニオン性ポリマーとしては、酸性多糖類若しくはその誘導体又はそれらの塩が好適である。特に、天然の多糖類であり、生体適合性に優れ、かつ入手が容易であることから、アルギン酸若しくはその誘導体(具体的には、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)又はそれらの塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が好ましい。 アニオン性ポリマーの分子量は特に制限されないが、粘度平均分子量が大きくなるにしたがって、薄膜層の製造時に溶液の粘度が高くなり流延や積層が困難となる傾向があること、及び生体吸収性が低下する傾向があることから、アニオン性ポリマーの粘度平均分子量は1,000〜500,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜400,000の範囲内であることがより好ましく、50,000〜200,000の範囲内であることがさらに好ましい。 ポリアニオンとして、1分子中に2個以上のアニオン性基を有する低分子の化合物であっても好ましく用いることができる。1分子中に2個以上のアニオン性基を有する低分子の化合物としては、例えば、コハク酸、マロン酸等の1分子中に2個のカルボキシル基又はカルボキシレート基を有する化合物を挙げられる。 カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーの組合せは、水の共存下で混合した場合に、ポリイオンコンプレックスを形成し、ゲル化するものであれば、いずれの組合せでもよい。特に、安全性により優れることから、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーのうちの少なくとも1種が生体吸収性ポリマーであるのが好ましい。 生体吸収性ポリマーとは、生分解され得るポリマーを意味する。具体的には、カチオン性ポリマーとして、キトサン、コラーゲン、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、アイオネン等が挙げられ、アニオン性ポリマーとして、アルギン酸、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸、コンドロイチン硫酸及びその誘導体等が挙げられる。〔ポリアニオンを含み、pHが1.6〜5.4である溶液〕 ポリアニオンを含み、pHが1.6〜5.4である溶液(以下「ポリアニオンを含む溶液」ともいう。)中のポリアニオンの濃度は、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.02〜2質量%がより好ましく、0.05〜1.0質量%が特に好ましい。 ポリアニオンを含む溶液の粘度は、0.1〜1000mPa・sの範囲内であることが好ましく、1〜500mPa・sの範囲内であることがより好ましく、10〜100mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。 ポリアニオンを含む溶液のpHは、1.6〜5.4であるが、ポリアニオンの溶解性により優れることから、1.8〜5.0の範囲内であることが好ましく、2.0〜4.5の範囲内であることがより好ましく、2.5〜4.0の範囲内であることがさらに好ましい。 ポリアニオンを含む溶液のpHは、例えば、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、ギ酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、イソ吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、サリチル酸、安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、ピルビン乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、アミノ酸、L-アスコルビン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸を添加することで調整できる。 ポリアニオンを含む溶液には、2種類以上のポリアニオンを併用してもよい。 ポリアニオンを含む溶液の溶媒としては、ポリアニオンを溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、ポリアニオンの電荷量をより多くすることができるため、水又は無機塩類の水溶液が適当である。 本実施形態の薄膜層は、ポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含み、pHが1.6〜5.4である溶液を用いて形成されるB層と、を有する。また、本実施形態の薄膜層は、A層とB層が交互に積層された交互積層薄膜であることが好ましい。 A層とB層とが交互に積層されるものである場合、積層の数は特に限定されるものではないが、薄膜層の透明性を確保しやすい傾向にあることから、A層及びB層のそれぞれが1〜300層であることが好ましい。また、薄膜層が、自己密着性を有する程度の膜厚となりやすい傾向にあることから、A層及びB層のそれぞれが10〜100層とすることがより好ましく、20〜80層とすることがさらに好ましい。 本実施形態の薄膜層におけるA層とB層の積層構造は、例えば、薄膜層をIR、NMR、TOF−SIMS(飛行時間型2次イオン質量分析、Time-Of-Flight SIMS))等で観察することにより、確認することができる。 本実施形態の薄膜層の厚みは特に制限されないが、自己密着性、吸水性、乾燥状態での柔軟性等の特性がより優れたものとなることから、1〜300nmの範囲内であることが好ましく、40〜300nmであることがより好ましく、40〜250nmの範囲内であることがさらに好ましく、40〜200nmの範囲内であることが特に好ましい。〔溶解性支持層〕 本発明において、溶解性支持層とは、溶媒に溶解するものであれば、限定されないが、肌への刺激性を考慮すると、水やアルコールなどに可溶な高分子膜からなるものが好ましい。弱アルカリ性、弱酸性水溶液に可溶なものも含まれる。溶解性支持層は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸など高分子電解質、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、あるいはデンプン、セルロースアセテートなどの多糖類などの非イオン性の水溶性高分子、ノボラックあるいはポリ(N−アルキルシアノアクリレート)などの樹脂から形成されるものを例示することができる。溶解性支持層(可溶性支持膜)あるいは領域を作製する高分子溶液において、高分子の分子量は、100〜100万、好ましくは5000〜50万であり、濃度は1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%の溶液であることが望ましい。溶解性支持層(可溶性支持膜)は、薄膜層を構築した基体上に塗布して、10分〜24時間、好ましくは1〜12時間乾燥させることで形成させる。 基体上への塗布の方法としては、キャスト法、スピンコート法などがあるが、これらに限定されるものではない。溶解性支持層(可溶性支持膜)はピンセットなどを用いて、基材より薄膜層とともに剥離される。このとき、溶解性支持層(可溶性支持膜)と薄膜層との間には、静電的相互作用、水素結合、ファンデルワールス力などの2次結合力によって、剥離と同時に薄膜を支持層に移し取ることが可能となる。〔浸透性基材〕 浸透性基材は、溶解性支持層を溶かす溶液には溶けないものから選ばれれば、材質は限定しない。但し、溶液を浸透、透過する機能を有する。したがって、溶液を浸透、透過させる孔を有することが好ましく、繊維状、メッシュ状、多孔質であることが好ましい。そして、浸透性基材は、シート(フィルム)の形態であることが取り扱い性、入手の容易性から好ましい。 浸透性基材として使用可能な材料としては、例えば、樹脂、不織布が挙げられる。浸透性基材の形状はフィルム、シート、板、及び曲面を有する形状等任意の形状とすることができる。その中でも量産性を考慮すると、浸透性基材としてはフレキシブル性を有する樹脂フィルムが好ましい。 フレキシブル性を有する樹脂フィルムを用いる場合の樹脂フィルムの厚みは、特に制限はないが、実用的な観点から、5〜500μmが好ましい。 また、メッシュ状の樹脂フィルムを用いる場合、メッシュの目開きは1〜1000μmが好ましい。カバーフィルムからの剥離性および水の浸透性の観点から、5〜300μmがより好ましい。さらに、皮膚への貼合せが容易なことから10〜100μmがさらに好ましい。 溶液を浸透、透過させる孔を有する樹脂フィルムの樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリエチレン(高密度、中密度又は低密度)、ポロプロピレン(アイソタクチック型又はシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プレピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−ジメチレンシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂等、又はこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。 これらの樹脂フィルムの中でも特に、水の浸透性が良いことからポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがさらに好ましい。 不織布としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、硝子等の繊維からなる不織布が挙げられる。紙や不織布は、その繊維間若しくは他層との層間強度を強化したものでもよい。また、ケバ立ち防止のため、又は浸透性抑制のために、更に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)したものでもよい。〔基材〕 本発明で使用する基材は、薄膜層を製造する際の支持基板として機能する。基材として使用可能な材料としては、例えば、樹脂、紙が挙げられる。基材の形状はフィルム、シート、板、及び曲面を有する形状等任意の形状とすることができる。その中でも量産性を考慮すると、基材としてはフレキシブル性を有する樹脂フィルムが好ましい。 フレキシブル性を有する樹脂フィルムを用いる場合の樹脂フィルムの厚みは、特に制限はないが、実用的な観点から、5〜500μmが好ましい。 樹脂フィルムの樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、前記と同様、ポリエチレン(高密度、中密度又は低密度)、ポロプロピレン(アイソタクチック型又はシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プレピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−ジメチレンシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂等、又はこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。 これらの樹脂フィルムの中でも特に、積層膜の接着性により優れることからポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがさらに好ましい。 紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙等が挙げられる。 また、基材の表面に、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、オゾン処理、アルカリや酸等による化学的エッチング処理等を施してもよい。 基材は、基材上に樹脂膜、無機膜又は有機材料と無機材料とを含む膜(有機−無機膜)が積層されていてもよい。それら樹脂膜層、無機膜層又は有機−無機膜層からなる積層構造は基材表面の一部を覆っていればよい。また、積層構造中、最表面層に位置しない膜は、極性基を有する必要はない。 基材は、薄膜層を形成するための基材として機能することもでき、その両面に薄膜層を形成し、形成した両面の薄膜層上に、それぞれ溶解性支持層、さらに浸透性基材を設けて薄膜転写シートとすることもできる。基材(カバーフィルム)の両面に形成した薄膜層を、それぞれ用いることができるので便利である。〔溶解性支持層の(a)薬物、(b)化粧料、(c)色素、(d)金属イオン〕 実施形態に係る溶解性支持層には、(a)薬物、(b)化粧料、(c)色素、(d)金属イオンのいずれか含有させ、保持させる。溶解性支持層に保持された(a)薬物、(b)化粧料、(c)色素、(d)金属イオンが拡散し、溶解性支持層に隣接する薄膜層に達しており、これにより皮膚に貼付したとき(使用時)に、(a)薬物、(b)化粧料、(c)色素、(d)金属イオンが徐々に薄膜層から溶出し、皮膚に徐々に吸収させることができる。[(a)薬物] 本実施形態に係る薄膜層および溶解性支持層には、薬物を保持させることができる。これにより皮膚に貼付したとき(使用時)に、薬物が徐々に薄膜層から溶出し、皮膚に徐々に吸収させることができる。また、創傷治癒といった効果をもった薄膜層にすることができる。 薬物としては抗炎症剤、止血剤、血管拡張薬、血栓溶解剤、抗動脈硬化剤などが挙げられる。[(b)化粧料] 本実施形態に係る薄膜層および溶解性支持層には、保湿クリーム等の化粧料、又はビタミンC等の化粧料成分を保持させることもできる。これにより皮膚に貼付したとき(使用時)に、化粧料及び化粧料成分が徐々に薄膜フィルムから溶出し、皮膚に徐々に吸収させることができる。 化粧料としては、保湿クリーム、スキンクリーム、美白クリーム、乳液、化粧水、美容液、及び美容ジェル等のスキンケアに用いられる化粧料全般を用いることができる。化粧料成分としては、化粧品学的に許容される皮膚に有効な成分であればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、保湿剤、ホワイトニング成分、しみ取り成分、防皺成分、ビタミン類、抗炎症成分、血流促進成分、湿潤成分、油分、及び金属微粒子等の化粧料に用いられる成分を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 このような化粧料成分としては、例えば、アーモンド油、アクリル酸アルキルコポリマー、麻セルロース、アシタバエキス、アスコルビン酸、アスコルビン酸Na、キサンチン、アスタキサンチン、アスパラガスエキス、アスパラギン酸、アズレン、アセロラエキス、アデノシン三リン酸2Na、アボカド油、アマチャエキス、アミノ酪酸、アラニン、アラントイン、アルギニン、アルギン酸Na、アルジルリン、アルテアエキス、アルニカエキス、アルブミン、アロエベラエキス−2−キダチアロエエキス、安息香酸塩Na、イチョウエキス、イノシトール、ウコンエキス、ウワウルシエキス、エイジツエキス、塩化ナトリウム、オイスターエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オリーブ油、オリザノール、海塩、加水分解ケラチン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解コンキリオン、加水分解シルク、加水分解卵殻膜、加水分解卵白、褐藻エキス、カフェイン、カミツレエキス、カラミン、カリンエキス、カロチン、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カンフル、キイチゴエキス、キウイエキス、キシリトール、キトサン、キュウリエキス、クオタニウム‐73、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、グリコール酸、グリシン、グリセリン、グリチルリチン酸2K、グリチルレチン酸ステアリル、グルコース、グルタチオン、グルタミン酸、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、ケ−プアロエエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、コエンザイムQ10、コーヒーエキス、コーンスターチ、ココイル加水分解コラーゲンK、ココイル加水分解コラーゲンNa、ココベタイン、ゴボウエキス、ゴマ油、コムギデンプン、コムギ胚芽エキス、コメヌカエキス、コレステロール、コンフリーエキス、酢酸トコフェロール、酢酸レチノール、サザンカオイル、サフラワー油、サリチル酸、サリチル酸Na、酸化亜鉛、酸化チタン、サンザシエキス、シアノコバラミン、シイタケエキス、ジオウエキス、ジグリセリン、シコンエキス、シソエキス、ジヒドロコレステロール、ジフェニルジメチルメコン、シモツケソウエキス、酒石酸、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シルク、シルクエキス、水添レシチン、スクワラン、ステアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸スクロース、セイヨウキヅタエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、セタノール、セラミド3、セリン、セルロースガム、ソウハクヒエキス、ソルビトール、ダイズエキス、ダイズ発酵エキス、月見草油、ドクダミエキス、トコフェロール、トレハロース、ナイアシンアミド、ニコチン酸トコフェロール、乳酸、乳酸Na、尿素、バクガエキス、ハチミツ、パパイン、ハマメリスエキス、パルミチン酸レチノール、パンテノール、ヒアルロン酸Na、ビオチン、ヒキオコシエキス、ヒマシ油、ヒマワリ油、ピリドキシンHCl、ビワ葉エキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ種子油、プラセンタエキス、プルラン、ベタイン、ヘチマエキス、ボタンエキス、ホップエキス、ホホバオイル、メドウフォーム油、メトキシケイヒサンオクチル、メリッサエキス、メリロートエキス、メントール、モモ葉エキス、ヤグルマギクエキス、ヤシ油、ユーカリエキス、ユーカリ油、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨウ化ニンニクエキス、葉酸、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラズベリーケトン、ラクトフェリン、ラノリン、ラベンダーエキス、リシン、リシンHCl、リノール酸、リボフラビン、硫酸Na、リンゴエキス、レイシエキス、レシチン、レゾルシン、レタスエキス、レモンエキス、レモン油、ロイシン、ローズ水、ローズヒップ油、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリー、ワレモコウエキス、AHA、BG、DNA、PCA−Na、PCA−Naアラントイン、PG、PPG−28ブテス−35、RNA−NA、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、α−アルブチン、ムコ多糖、クレアチン、ジアセチルボルジン、ビタミンA及びその誘導体、リン酸リボフラビンナトリウム、リボフラビン、ヒドロキノン、リポ核酸及びその塩、アミノ酸及びその誘導体、各種植物エキス、各種動物由来抽出物、等が挙げられる。[(c)色素] 本実施形態に係る薄膜層および溶解性支持層には、色素を保持させることもできる。これにより皮膚に貼付したとき(使用時)に、どこに貼り合せたのか確認することができる。また、皮膚に貼付したとき(使用時)に、皮膚の色に合わせて薄膜層の存在を目立たなくさせることができる。 色素としては、ナフトール染料(アゾ染料)、モーブ、パラレッド、フルオレセイン、フクシン、フェノールフタレイン、ニュートラルレッド、フェナジン誘導体色素、メチレンブルー、ジヒドロイントール、コンゴーレッド、エオシン、インダンスレン、アニリンブラック、アクリジン、アゾ染料、アゾイック染料、ネオシアニン、クリプトシアニン、インドシアニングリーン、ヘモグロビン、ヘムエリトリン、フェオポルフィリン、フェオホルビド、チトクロム、バクテリオクロロフィル、クロロフィリド、クロロフィル、メラニン、カテキン、アントシアン、アントクロール、フラバノン、フラボン類、フラボノイド、ルテイン、リコピン、フコキサンチン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、キサントフィル、カロチン、カロチノイド、ゲニステイン、クロロクルオリン、クロリン、クロセチン、クルクミン、キサントンマチン、カルタミン、エリトロクルオリン、ウロビリン、インジゴ、アントラキノン、アントシアン、アリザリン、ビリルビン、ビリベルジン、フィトクロム、フィコエリスリン、フィコビリン、フィコシアニン、ミオグロビン、ポルフィン、ポルフィリン、ヘモシアニン、ヘモバナジン、ロドマチン、ロドキサンチン、ロドプシン、リトマス、レグヘモグロビン、ラミナラン、モリンジン、ホルビリン、マンゴスチン、ベルベリン、ベタシアニン、プルプリン、ブラジリン、ピンナグロビン、ヒペリシン、ビキシン、ツラシン、タンニン、ステルコピリン、シコニン、コンメリニン、ゴッシポール、コチニール等が挙げられる。その中でもイオン性の色素が、水およびアルコールに溶解するので好ましい。[(d)金属イオン] 本実施形態に係る薄膜層および溶解性支持層には、金属イオンを保持させることもできる。これにより皮膚に貼付したとき(使用時)に、金属イオンが徐々に薄膜層から溶出し、皮膚に徐々に吸収させることができる。また、金属イオンを利用して、抗菌、殺菌、消臭、制汗といった効果をもった薄膜層にすることができる。 金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカル金属イオン、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属イオン、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの遷移金属イオン、アルミニウム、鉛、スズイオンなどが挙げられる。その中でも、抗菌、消臭効果がある銀イオンがより好ましい。 これら(a)〜(d)の配合量は、それぞれの有効成分により配合量が異なり、薄膜層への移動を考慮し、決められるが、一般的には、溶解性支持層100質量部に対し、0.001〜300質量部、好ましくは、0.005〜100質量部、より好ましくは、0.01〜50質量部である。 本実施形態に係る薄膜層は架橋剤として、アルキルジイミデート類、アシルジアジド類、ジイソシアネート類、ビスマレイミド類、トリアジニル類、ジアゾ化合物、グルタルアルデヒド、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)アルキオネート、ブロモシアン等を用いて、薄膜層中の対応する官能基と架橋させてもよい。 さらに、薬物・化粧料等が疎水性の場合、薄膜層の疎水性領域に疎水性相互作用にて結合させる方法、薬物・化粧料等が水素結合性の場合、薄膜層の水素結合性領域に水素結合にて結合させる方法、薬物・化粧料等が電荷を有する場合、薄膜層の反対電荷領域に静電的相互作用にて結合させる方法を用いてもよい。 本実施形態に係る薄膜層は、保湿クリーム等の化粧料、又はビタミンC等の化粧料成分を皮膚に塗布し、その上に薄膜フィルムを貼り合わせるようにして用いることもできる。この場合、化粧料及び化粧料成分が保持され、剥がれ落ちにくいという効果が得られる。 本実施形態に係る薄膜層は、薄膜層を肌の上に貼り合せた後、その上に化粧料又は化粧料成分を塗布するように用いることもできる。この場合、皺、たるみ、しみ、あざ、そばかす、毛穴、傷跡、にきび跡、熱傷跡、又は皮膚疾患による変色等のある肌を目立たなくすることができる。(薄膜転写シートの製造方法) 本実施形態の薄膜層は、例えば、基材と、ポリカチオンを含む溶液(以下「溶液A」ともいう。)と、ポリアニオンを含み、pHが1.6〜5.4である溶液(以下「溶液B」ともいう。)とから、Langmuir,Vol.13,pp.6195−6203,(1997年)に記載された交互積層法によって製造することができる。 本実施形態の薄膜層の製造方法は、具体的には、溶液A又は溶液Bに後にカバーフィルムとなる基材を接触させて、基材の表面にポリカチオン又はポリアニオンに由来する層を形成する層形成工程と、 (i)ポリカチオンに由来する層に、溶液Bを接触させて、ポリカチオンに由来する層上にポリアニオンに由来する層を形成するステップと、 (ii)ポリアニオンに由来する層に、溶液Aを接触させて、ポリアニオンに由来する層上にポリカチオンに由来する層を形成するステップと、を繰り返す積層工程と、を備える。 この交互積層法によると、基材上に形成されるポリカチオンに由来する層(又はポリアニオンに由来する層)と、溶液B(又は溶液A)とが接触することで、ポリカチオン及びポリアニオンが交互に吸着して積層膜が形成される。また、上記接触によりポリカチオン又はポリアニオンの吸着が進行して表面電荷が反転すると、さらなる静電吸着は起こらなくなるため、溶液A又は溶液Bとの接触により形成される層の厚さは制御することができる。 層形成工程では、溶液Aに基材を接触させて、基材の表面にポリカチオンに由来する層を形成するか、又は溶液Bに基材を接触させて、基材の表面にポリアニオンに由来する層を形成する。基材の表面が負に帯電している場合は前者を、基材の表面が正に帯電している場合は後者を行うことが好ましい。また、基材の表面の少なくとも一部を、溶液A又は溶液Bに接触させればよい。溶液A又は溶液Bとの接触は、2回以上に分けて行ってもよい。 積層工程では、ステップ(i)又はステップ(ii)において、表面電荷が反転すればよい。また、接触の回数は特に限定されるものではない。例えば、ステップ(i)において、溶液Bとの接触を2回以上に分けて行ってもよく、ステップ(ii)において、溶液Aとの接触を2回以上に分けて行ってもよい。 積層工程において、ステップ(i)と、ステップ(ii)とを繰り返す回数に特に制限はないが、薄膜層の透明性を確保しやすい傾向にあることから、ポリカチオンに由来する層及びポリアニオンに由来する層のいずれもが1〜300層となるまで繰り返すことが好ましい。また、薄膜層が、自己密着性を有する程度の膜厚となりやすい傾向にあることから、ポリカチオンに由来する層及びポリアニオンに由来する層のいずれもが10〜100層となるまで繰り返すことがより好ましく、20〜80層となるまで繰り返すことが特に好ましい。なお、積層工程における繰り返し回数を制御することによって、薄膜層の膜厚を制御することができる。 上記製造方法においては、積層工程がステップ(i)で終わるよりも、ステップ(ii)で終わることが好ましい。これにより、ポリカチオンとして用いた物質の特性が発現しやすくなる。例えば、ポリカチオンとしてキトサンを用いた場合、キトサンの特性である抗菌性を発現しやすくなる。 上記製造方法においては、層形成工程又は積層工程における溶液A又は溶液Bとの接触後、吸着面をリンスすることが好ましい。これにより、吸着面から余分な材料を除去することができる。 リンスに用いるリンス液としては、水、有機溶媒又は、水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒が好ましい。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。 上記製造方法においては、基材、ポリカチオンに由来する層又はポリアニオンに由来する層を、溶液A又は溶液Bに浸漬することにより接触させることが好ましい。例えば、層形成工程においては、基材を溶液A又は溶液Bに浸漬することにより接触させることが好ましく、積層工程においては、ポリカチオンに由来する層(又はポリアニオンに由来する層)を溶液B(又は溶液A)に浸漬することにより接触させることが好ましい。これにより、より一層工業的に生産するのが容易となり、より一層汎用可能な製造方法とすることができる。 積層膜の形成装置として、J.Appl.Phys.,Vol.79,pp.7501−7509,(1996)、特願2000−568599号(特許第4302321号公報)等に記載されたディッパーと呼ばれる装置を用いてもよい。ディッパーを用いる場合、基材を固定したアームが自動的に動き、プログラムに従って基材等を溶液A中、溶液B中又はリンス液中に順次浸漬させることができる。 交互に浸漬する方法(以下「交互浸漬法」ともいう。)によれば、表面電荷が反転する限り、膜の形成を継続することができる。そのため、通常のディップコート法よりも、交互浸漬法で形成した薄膜の膜厚均一性は高く、かつ膜厚制御性も高い。 また、交互浸漬法によれば、基材の一部又は全部が筒状、糸状、繊維、発泡体等の形状を有していても、浸漬することにより溶液が入り込むことができるものであれば、積層膜がその表面に形成されるので使用することができる。また、基材の表面が凹凸形状を有していても、表面の構造に追従して積層膜を形成することができる。さらに、基材表面がナノメートルスケールやサブミクロンスケールの構造を有していても、その構造に追従して積層膜を形成することができる。 本実施形態の薄膜層は、基材に溶液A又は溶液Bを滴下又はスプレーするスピンコート法で積層膜を形成することにより製造してもよい。その際、リンス液は滴下、スプレー若しくはシャワー又はそれらを組み合わせた方法で供給されてもよい。基材は、搬送や回転等の運動を行っていてもよい。しかしながら、スピンコート法は溶液A、溶液B等の使用量が多く、また、一枚一枚の成膜になるため、量産性に優れないというデメリットがある。 いずれの製造方法を用いる場合も、溶液A又は溶液Bの溶媒としては、それぞれ、ポリカチオン又はポリアニオンを溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、ポリカチオン又はポリアニオンの電荷量をより多くすることができるため、水又は無機塩類の水溶液が適当である。ポリカチオン又はポリアニオンの溶液中の濃度は特に制限されるものではなく、各製造方法に応じて適宜設定すればよい。 さらに、ポリカチオン及びポリアニオンの少なくとも一方が塩であり、その塩におけるカチオン基又はアニオン基の対イオンを除去することによりポリカチオン又はポリアニオンの水への溶解性が低下する場合、薄膜層を形成した後に薄膜層に含まれる対イオンを除去することによって、薄膜層の力学的強度を向上させることができる。対イオンの除去は、例えば、洗浄工程の回数を増やす、pH調整液に浸す等の方法により行うことができる。 基材上に形成した薄膜層に、さらに、(a)薬物、(b)化粧料、(c)色素、(d)金属イオンのいずれかを含む溶解性支持層を形成し、溶解性支持層の上に浸透性基材を設けて薄膜転写シートを製造することができる。製造直後から溶解性支持層に配合した(a)薬物、(b)化粧料、(c)色素、(d)金属イオンが、隣接する薄膜層に拡散され、配合した物質の濃度が時間とともに高まり、使用するころには、一定の濃度になっている。 本発明の薄膜層の被着体への転写方法は、上記の薄膜転写シートの基材を剥離し、薄膜層を露出させ、その薄膜層を被着体へ面するように接触させる工程と、浸透性基材側から、溶解性支持層を溶解する溶液を浸透、通過させる工程、浸透性基材を剥がす工程とを含む。薄膜転写シートの基材を剥離して薄膜層が露出したシートは、薄膜層が、隣接する溶解性支持層と浸透性基材に支持されているので、ある程度の剛性を有し、薄膜層を被着体に容易に接触させ貼り付けることができる。そして、浸透性基材である例えばメッシュ状の樹脂フィルム側から水、アルコール等の溶液を用いて溶液を溶解性支持層に達するように浸透性基材面に溶液を接触させ、溶解性支持層を溶解させ、浸透性基材を剥離する。溶解性支持層が溶液に膨潤し薄膜層の界面で剥がれる場合は、そのまま剥がすことができる。また、溶解性支持層が溶液に溶解する場合は、溶解性支持層が溶解した溶解溶液を浸透性基材側からティッシュ、コットンなどを用いて付着させ、さらに溶液を浸透性基材側から溶解性支持層に供給し、溶解性支持層を溶解させ、溶解溶液を除去する操作を行うことで溶解性支持層と浸透性基材を除去し、被着体に薄膜層を転写することができる。この場合、溶解性支持層が溶液にある程度溶解し浸透性基材が剥離できる場合は、浸透性基材を剥離してから、必要に応じ薄膜層上に付着している溶解性支持層を除去することもできる。 以下、本発明を実施例及び参考例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 カチオン性ポリマーとしてキトサン水溶液(株式会社キミカ製:粘度平均分子量90,000、粘度12.5mPa・s(25℃)、濃度:0.3質量%)、アニオン性ポリマーとしてアルギン酸ナトリウム水溶液(株式会社キミカ製:粘度平均分子量100,000、粘度6.7mPa・s(25℃)、濃度:0.1質量%)、酸成分としてリンゴ酸(和光純薬工業株式会社製)、酢酸(和光純薬工業株式会社製)、塩酸(和光純薬工業株式会社製)又は硝酸(和光純薬工業株式会社製)を用いた。〔実施例1〕 キトサン水溶液は、上記0.3質量%のキトサン水溶液100質量部に対して酢酸(1質量%水溶液)3質量部をキトサン水溶液にて滴下したものを使用した。アルギン酸ナトリウム水溶液は、0.1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液100質量部に対して、リンゴ酸(1質量%水溶液)1質量部をアルギン酸ナトリウム水溶液に滴下したものを使用した。 ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、A4100、150mm×100mm×125μm厚)を基材として、これを(ア)キトサン水溶液に1分間浸漬した後、リンス用の超純水(比抵抗18MΩ・cm)に1分間浸漬し、(イ)アルギン酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬した後、リンス用の超純水に1分間浸漬した。 (ア)と(イ)を順番に行う手順を1サイクルとして、このサイクルを15回繰り返し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にキトサンとアルギン酸ナトリウムの薄膜層を得た。得られた薄膜層の膜厚をフィルメトリスクによって測定した。その結果、膜厚は75nmであった。続いて、溶解性支持層として、ポリビニルアルコール(関東化学株式会社製、重量平均分子量22000)を超純水に溶解した10質量%水溶液に化粧料としてリン酸リボフラビンナトリウム(補酵素型ビタミンB2、皮膚・粘膜の健康維持・回復)を0.1質量部溶解したものを用いて、乾燥後、5μmとなるように、バーコーターによって、薄膜層上に塗布した。その後、浸透性基材として、ポリエチレンテレフタレートメッシュシート(PETメッシュ、株式会社セミテックス製、PES45)を被覆し、室温(25℃)にて、水分を蒸発させた。その結果、基材(ポリエチレンテレフタレート)上に、薄膜層(キトサン、アルギン酸の交互積層膜)、溶解性支持層(ポリビニルアルコールにリン酸リボフラビンナトリウムを溶解したもの)、浸透性基材(ポリエチレンテレフタレートメッシュシート)が順次積層された、薄膜転写シートが形成できた。この、シートから、基材のPETフィルムを剥がし、薄膜層を露出させ、皮膚表面と面するように接触させ、貼合した。その後、PETメッシュに、水を垂らしかけながら、溶解性支持層である、ポリビニルアルコールを溶解させた。水を拭取り3分後、PETメッシュを剥がすと、薄膜層のみが、皮膚表面に転写した。転写した薄膜層に紫外線(256nm)を照射すると、ナノ薄膜層が光り、ナノ薄膜層を貼っている部分の観測が容易となった。〔実施例2〕 溶解性支持層に色素であるメチレンブルーを溶解する工程に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、メチレンブルーが溶解性支持層から薄膜層へ浸透し薄膜を青色に着色することが可能であった。〔実施例3〕 溶解性支持層に金属イオンとして硝酸銀を溶解する工程に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。その後、薄膜層に紫外線を照射すると、薄膜中の銀イオンが還元して微粒子(創傷被覆材など)となり、薄膜層が黄色に着色した。この薄膜層のTEM(透過型電子顕微鏡)写真を図3に示した。〔比較例1〕 ポリエチレンテレフタレートメッシュシート(PETメッシュ、株式会社セミテックス製、PES45)を被覆する工程を除いて、実施例1と同様にして、基材(ポリエチレンテレフタレート基材)上に、薄膜層(キトサン、アルギン酸の交互積層膜)、溶解性支持層(ポリビニルアルコールにリン酸リボフラビンナトリウムを溶解したもの)が順次積層された、シートを形成した。この、シートから、基材のPETフィルムを剥がし、薄膜層を露出させ、皮膚表面と面するように接触させ、貼合した。その後、表面に面した溶解性支持層であるポリビニルアルコール層に、水を垂らしかけながら、溶解させた。3分後、薄膜層の一部が、皮膚表面に転写したが、薄膜層の大部分は、ポリビニルアルコール層と一緒に皮膚表面から脱落した。〔比較例2〕 溶解性支持層にリン酸リボフラビンナトリウムを溶解する工程を除いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。「評価方法(UV照射による薄膜層の確認)」 皮膚上に転写した薄膜層に紫外線(256nm)を照射し、薄膜層が発光した様子が確認できれば「○」、できなければ「×」として評価した。「評価方法(目視による薄膜層の確認)」 皮膚上に転写した薄膜層を目視にて確認できれば「○」、できなければ「×」として評価した。 表1、2に実施例1、2、比較例2の評価結果をまとめて示した。 実施例1は、化粧料としてリン酸リボフラビンナトリウムを配合した例であり、比較例2は、配合しない例である。いずれの例でも、目視では、確認しづらいが、リン酸リボフラビンナトリウムを配合した実施例1では、紫外線をあてることで、その存在が確認できる。このように、貼付時に目立ちにくくすることはできるが、その存在を知るには不便である。これに他の有効成分を配合した場合の貼り付け後の存在を本実施例で示したように紫外線照射で確認することができる。図2に実施例1の紫外線照射前後の写真を示した。紫外線照射で薄膜層が、確認できる。 実施例2は、色素としてメチレンブルーを微量配合した例であり、比較例2は、配合しない例である。実施例1では、薄膜層の確認に紫外線照射装置を必要とするが、色素を配合した実施例2では、目立ちにくいが、薄い青色に着色しているので、その存在がどこでも目視で確認することができる。配合を調整することで一層目立たなく、違和感なく、そして目視で確認できる薄膜層とすることができる。 基材、薄膜層、溶解性支持層、浸透性基材を備えるシートであって、前記溶解性支持層に(a)薬物、(b)化粧料、(c)色素、(d)金属イオンのいずれかを含む薄膜転写シート。 浸透性基材が、繊維状,メッシュまたは、多孔質構造である請求項1に記載の薄膜転写シート。 溶解性支持層が、水溶性またはアルコール可溶な高分子からなる請求項1又は請求項2に記載の薄膜転写シート。 薄膜層が、厚さ40nm以上、300nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜転写シート。 薄膜層が、ポリカチオンを含むA層と、ポリアニオンを含むB層とが交互に積層されたものである、請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜転写シート。 薄膜層が、ポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含む溶液を用いて形成されるB層と、を有する、請求項5に記載の薄膜転写シート。 前記ポリカチオンが、1分子中に2個以上のアミノ基を有するカチオン性ポリマーである、請求項5または請求項6に記載の薄膜転写シート。 前記ポリアニオンが、1分子中に2個以上のカルボキシル基又はカルボキシレート基を有するアニオン性ポリマーである、請求項5〜7のいずれか一項に記載の薄膜転写シート。 皮膚貼合用に用いられる請求項1〜8のいずれか一項に記載の薄膜転写シート。 化粧用に用いられる請求項1〜8のいずれか一項に記載の薄膜転写シート。 ポリカチオンを含む溶液、又はポリアニオンを含む溶液に基材を接触させて、基材の表面にポリカチオン又はポリアニオンに由来する層を形成する工程と、(i)ポリカチオンに由来する層に、ポリアニオン溶液を接触させて、前記ポリカチオンに由来する層上にポリアニオンに由来する層を形成するステップと、(ii)ポリアニオンに由来する層に、ポリカチオンを含む溶液を接触させて、前記ポリアニオンに由来する層上にポリカチオンに由来する層を形成するステップと、さらに(i)、(ii)の工程を交互に繰り返して積層する薄膜層を形成する工程と、前記薄膜層の上に、溶解性支持層を形成する工程と、前記溶解性支持層上に浸透性基材を形成する工程と、を含む、薄膜転写シートの製造方法。 前記薄膜層を形成する工程において、(i)、(ii)の工程を交互に繰り返す回数が1〜300回である、請求項11に記載の薄膜転写シートの製造方法。 請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜転写シートの薄膜層を被着体へ面するように接触させる工程、浸透性基材側から、溶解性支持層を溶解する溶液を浸透、通過させる工程、浸透性基材を剥がす工程と含む、薄膜層の被着体への転写方法。 【課題】 有効成分を効率的に担持し、皮膚への貼合が非常に容易で、貼付時に目立ちにくく、違和感がない薄膜転写シートと、その製造方法、転写方法を提供する。【解決手段】 基材、薄膜層、溶解性支持層、浸透性基材を備えるシートであって、前記溶解性支持層に(a)薬物、(b)化粧料、(c)色素、(d)金属イオンのいずれかを含む薄膜転写シート。浸透性基材が、繊維状,メッシュまたは、多孔質構造であり、溶解性支持層が、水溶性またはアルコール可溶な高分子からなると好ましい。【選択図】 図1