タイトル: | 再公表特許(A1)_金属粒子粉末およびそれを用いたペースト組成物 |
出願番号: | 2012050956 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | B22F 1/00,B22F 1/02,B22F 9/00,H01B 1/00,H01B 5/00,H01B 1/22,B22F 9/24,H05K 1/09,G01N 27/416 |
上山 俊彦 佐々木 信也 JP WO2012099161 20120726 JP2012050956 20120118 金属粒子粉末およびそれを用いたペースト組成物 DOWAエレクトロニクス株式会社 506334182 廣幸 正樹 100118924 上山 俊彦 佐々木 信也 JP PCT/JP2011/050750 20110118 B22F 1/00 20060101AFI20140603BHJP B22F 1/02 20060101ALI20140603BHJP B22F 9/00 20060101ALI20140603BHJP H01B 1/00 20060101ALI20140603BHJP H01B 5/00 20060101ALI20140603BHJP H01B 1/22 20060101ALI20140603BHJP B22F 9/24 20060101ALN20140603BHJP H05K 1/09 20060101ALN20140603BHJP G01N 27/416 20060101ALN20140603BHJP JPB22F1/00 KB22F1/02 BB22F9/00 BH01B1/00 FH01B5/00 FH01B1/22 AB22F9/24 EH05K1/09 AG01N27/46 353Z AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN 再公表特許(A1) 20140630 2012553748 25 4E351 4K017 4K018 5G301 5G307 4E351AA01 4E351AA16 4E351BB01 4E351BB31 4E351CC11 4E351DD05 4E351DD52 4E351EE03 4E351EE11 4E351EE13 4E351EE15 4E351EE16 4E351EE24 4E351EE25 4E351EE26 4E351EE27 4E351GG16 4E351GG20 4K017AA03 4K017BA02 4K017CA08 4K017DA01 4K017EJ01 4K017FB07 4K018BA01 4K018BB05 4K018BB10 4K018BC29 4K018BD04 4K018KA33 5G301DA03 5G301DA42 5G301DD01 5G301DE01 5G307AA08 本発明は、微細配線や接合体等に好適に用いられる微細な金属粒子(特に銀ナノ粒子)および該粒子を含有するペーストに関する。 金属ナノ粒子は、特に粒子径が小さくなるに伴って、比表面積が大きくなり通常の性質とは異なってくることが広く知られており、利用の用途が広がりつつある。特に、微細な粒子を用いる場合には、反応性が高く融解しやすいという特徴があるため、導電性接着剤や物質間接合ならびに導電性配線の形成といった用途への使用が検討されるようになってきた。 特に最近では電子機器の小型化が進むにつれ、配線の微細化が指向されてくるようになってきた。とりわけ、配線の微細化を図るためには、描かれる配線が導電性を確保しつつ、より繊細に形成される必要がある。 本発明者らは、一次粒子径がナノオーダーでありながらも大気中で安定であり、大量生産に適した粒子を開発し、特許文献1あるいは2に開示している。 なお、金属粒子を溶媒に分散させ、ペーストあるいはインクとする場合には、金属粒子の表面性がインクの性状に大きく影響を及ぼす。とりわけ平均一次粒子径の小さい金属ナノ粒子はその比表面積が大きい値を示すため、その影響は顕著である。従って、表面性を制御しペーストの安定性や粒子の分散性を確保することはきわめて重要な技術と言える。 本出願人は、金属銅粉表面の表面に存在するプロトン数と表面に存在する表面官能基との関係を見いだし、特許文献3として開示した。特許文献3では、酸性水溶液をアルカリ性試薬で滴定し、各pHにおける銅粉表面の表面官能基に引き寄せられているプロトン個数を算出する。算出されたプロトン個数は、銅粉の表面を脂肪酸で処理した時の表面状態を表していると考えられる。そこでこの算出されたプロトン個数から、脂肪酸による表面処理に好適な銅粉か否かを判定する。つまり、特許文献3は、脂肪酸による表面処理に適した銅粉を提供する方法を開示している。 また、粒子の表面性を評価する方法としてはこのほかに、従来より粉体pH(JISK5101−17−2など)が知られており、その指標に絡めて粒子の表面特性を検討し好ましいインク・ペーストを提供する例も多い(例えば、特許文献4ないし6参照)。特許第4344001号公報国際公開2010/073705号パンフレット特開2009−084614号公報特開2007−204817号公報特開2005−179096号公報特開2004−327669号公報 金属粒子およびその製造方法に関しては、上記の他にも多くの提案がある。また、それらが提供している金属粒子の大きさもナノサイズからミクロンサイズまで多岐に及ぶ。しかし、導電性の配線用として利用するには、単に大きさを規定した金属粒子だけでは実用には耐えない。 確かに、粒子径が小さければ、高精度の印刷が可能になり、微細な配線を実現できる可能性はある。しかし、実際の印刷方法で印刷できる塗料(インク)に調製することができなければ、実用性に乏しい。 より具体的には、スクリーン印刷やインクジェットといった微細印刷が可能な印刷方法に使用できるインクとして要求される特性である粘度、乾燥性、接着性、保存性そして焼結温度といった特性を持ち得るインクに仕上げることができるか否かという点が問題となる。 これらのインクとしての特性は、金属粒子だけでは達成することはできず、インクを構成する他の材料と容易に混合できることが必要となる。その際には、テルピネオールやオクタンジオールといった極性溶媒に分散できる特性を有しているか否かという点が重要な特性となる。極性溶媒中に分散して用いられる材料は、すでに豊富に用意されており、またそれらの材料は実績も多いからである。言い換えると、塗料化しやすい金属粒子という観点からは、極性溶媒に分散しやすい特性を有することが実用的には重要となる。 また、従来知られている粒子の表面性を粉体pHにより評価する手法は、その測定方法から明確なとおり、「pH調整をしていない水」に対し、粉末を添加した状態で煮沸あるいは常温での金属からの溶出によりもたらされるpH値を評価するものである。しかしながら、金属ナノ粒子は表面に有機物からなる被覆層が形成されている場合が多く、水に対しては浮力が生じてしまう、あるいは十分に粉体がぬれないため、誤差が大きく適切な評価結果が得られにくいことがわかってきた。そのため、金属ナノ粒子の表面状態を的確に評価できる方法を提示することは、ナノ粒子の産業上利用可能性を拡大するためには必要不可欠である。 なお、ここで「極性溶媒に分散しやすい」というのは、極性溶媒(分散媒)に対して分離し、凝集沈降しないことを指す。分散媒に対して、分離し凝集沈降してしまうと、インクにした際に、インク中に均一に金属粒子が存在しているとは言えず、均一な配線を印刷することができないからである。 極性溶媒に分散しやすいか否かという特性は、金属粒子の表面状態(例えば、水酸基の結合量等)に関係すると考えられる。しかし、これまで金属粒子のそのような表面状態と分散性について、定量的な指標が与えられた報告は少なかった。金属ナノ粒子に関して言うと皆無であった。つまり、金属粒子の表面特性の評価指標の一手法を提案し、その指標に基づいた、極性溶媒に分散しやすい金属粒子を提供することは、なされていなかったという課題があった。 本発明者らはその検討により、上述の課題はpH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)とエチルアルコールを10mL混合した溶液に、評価すべき金属粒子の粉末(以後「試料粉末」ともいう)0.5gを添加した溶液に対して、試料粉末を添加しない状態でpH=5となる量の0.10mol/Lの硝酸水溶液を添加したときにその値がpH=6以下を示すような粉末であれば解決できうることを見いだし、本発明を完成させた。すなわち、上記の指標に基づく金属粒子粉末は、極性溶媒に分散しやすい。なお、本明細書において、「pH=11」とは、水酸化カリウムとエチルアルコールの混合溶液を、「pH=11±0.5の範囲に調整した」ことを示す。測定はリファレンス(ブランク溶液)に、測定すべき粉末を添加し行うので、初期のpHがこの範囲で変動しても、解析結果には影響を与えない。 より具体的には、本発明の金属粒子粉末は、pH=11の水酸化カリウム溶液100mLとエチルアルコール10mL(ブランク溶液)に対して、0.10mol/Lの硝酸を添加してpH=5となる量の硝酸水溶液を、pH=11の水酸化カリウム溶液100mLに0.5gの試料粉末を加えてから、上記量の0.10mol/Lの硝酸を加えたときに指示されるpH値がpH=6以下の値を示す、金属粒子粉末である。 また、pH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)に対して、0.10mol/Lの硝酸を添加して、pHが4.5〜5.0となる量の硝酸量を、pH=11の水酸化カリウム溶液100mLに0.5gの試料粉末を加えたものに添加した際に算出される評価すべき金属粒子から放出されるプロトン(H+)が3.0×1019(個/m2)以下である、金属粒子粉末である。 さらに、上記の金属粒子の粒子表面が総炭素数8以下の有機物で構成されている金属粒子粉末である。 加えて、金属粒子の平均一次粒子径は10〜1000nmである金属粒子粉末である。 さらには、上述の金属粒子粉末を使用し、金属粉末、有機溶媒、樹脂等を組み合わせることで、その用途に適した金属粒子を含む金属ペーストを得ることができる。 上述の粉末の構成とすることにより、アルコール類、ケトン類、エステル類に対する粒子分散性が優れた、金属粒子粉末を得ることが出来るようになる。本発明の指標を得るための測定装置の概略の構成を示す図である。図1の測定装置による測定結果を例示する図である。pH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)に対して、0.10mol/Lの硝酸を添加したときのブランク溶液の示すpH値(基準pH値)と、粉末を0.5g添加したpH=11の水酸化カリウム溶液100mLに対して、0.10mol/Lの硝酸を添加したときに示すpH値(指示pH値)の相関を示した図である。pH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)に対して、0.10mol/Lの硝酸を添加したときのブランク溶液の示すpH値(基準pH値)と、式(1)で算出される粒子から放出/吸着されるプロトン量(個/m2)との相関を示した図である。 本発明では、極性溶媒に分散しやすい金属粒子か否かという点を以下の表面性評価方法で評価した。なお、金属粒子は、単に「粒子」とも呼び、また通常粉末状態で取り扱われるので、「金属粒子粉末」若しくは単に「粉末」とも呼ぶ。なお、「評価すべき金属粒子の粉末」は「試料粉末」と呼ぶ。(金属粒子の表面性評価方法) 500メッシュで解粒した試料粉末0.5gを、0.01モル/Lの硝酸カリウムを含む(ここで、硝酸カリウムは滴定時に生じるイオン濃度増加に伴う液中の導電性の急激な上昇を抑える緩衝剤として添加する)pH=11の水酸化カリウム溶液100mLとエチルアルコールを10mL混合した溶液に添加した後、この溶液に0.10モル/Lの硝酸水溶液を0.02mL/分の速度で添加して、試料粉末の試料溶液のpHの変化を測定する。ここで、水酸化カリウム水溶液もしくはその代替溶液は空気中の炭酸を吸収する作用があることから、作製してから数日以上経過した液を使用することは好ましくない。 ここで、本発明者らが検討したところによれば金属からなる粒子に対して、特許文献3で開示したような、酸性側からの解析では、十分に表面性を把握できない可能性があることが判明した。具体的には、酸性側からの滴定を行うと、粒子の材質により、粒子の溶解が生じて溶解によって生じた金属イオン(特許文献3であれば銅イオン)が、滴定の妨害になる可能性があった。特許文献3のようなミクロンオーダーの粒子であれば、比較的溶解が生じないため適切な値を示すが、ナノあるいはサブミクロンオーダーの金属粒子では、溶解が進行しやすく、適切な評価手法にはならないことがわかった。そのため、本発明における評価はアルカリ性側から滴定を行う手法を採用している。 硝酸水溶液の添加によるpHの変化は、例えば、流動電位自動滴定装置(京都電子工業製のAT−510Win/PCD−500型流動電位自動滴定装置)を用いて測定することができる。試料粉末の分散性が保たれた状態での測定を行う方が好ましいことから、本測定は、マグネチックスターラーを使用して溶液を撹拌しつつpH測定を行うのがよい。 また、上記と同様の硝酸水溶液と水酸化カリウム水溶液を使用し、試料粉末を添加しない水酸化カリウム水溶液に上記と同濃度の硝酸水溶液を添加して、ブランク溶液へ硝酸水溶液を添加した際のpH変化を予め測定し、試料粉末分散液に対して硝酸水溶液を添加した際のpH変化を規定する基準として使用する。 図1には、流動電位自動滴定装置1の構成図を示す。流動電位自動滴定測定装置1は、水酸化カリウム溶液を保持するタンク2と、pHを測定する電位計(pH計)3と、硝酸水溶液の滴定装置4を含む。また、タンク2には、空気中の炭素を吸収することでpHが変化しないように、窒素ガスの導入管5が配置されていてもよい。また、マグネチックスターラー6と攪拌子7によってタンク2内の溶液を攪拌した。マグネチックスターラー6は、交流磁界8を発生させ、磁石性の攪拌子7を回転運動させる。本件の滴定装置4と、電位計(pH計)3は図示しない制御装置が制御し、滴定量とpH値が順次記録される。 このようにして、ブランクの溶液のpH変化と粉を入れた溶液のpH変化が例えば図2のように得られる。図2では、白丸のライン10はブランクの溶液のpH変化を表し、黒三角のライン11は試料粉末が入った溶液のpH変化である。図2では横軸は滴定した硝酸溶液の総量(ml)であり、縦軸はpH計3によるpH値である。後述する判断基準では、ブランクの溶液のpHを「基準pH」とし、試料粉末が入った溶液のpHを「指示pH」として、これらの関係を用いて極性溶媒に分散しやすい金属粒子か否かを判断する。 また、こうして試料粉末の存在の有無により測定されるpH値から、金属粒子に対して放出あるいは吸収されるプロトン(H+)量を算出することができる。具体的には次のように算出する。試料粉末とした金属粒子がプロトンを放出する時には、プロトン量の値はマイナス(−)の値を取り、プロトンを吸収するときには(+)の値を取る。pH値で見れば金属粒子からプロトンが放出されるとき、pHはもとのリファレンスよりも酸性側(小さい)値をとり、プロトンを吸収するときにはリファレンスよりも塩基性側(大きい)値を取る。 液に対して放出/吸収(蓄積)される単位面積当たりのプロトン量(H+)は、次の(1)式より計算される。ここで、NAはアボガドロ数(=6.02×1023)である。ただし、この計算時に使用するpH値は同じ濃度で同じ量の硝酸を添加したときのpH値を使用する。 (1)式で算出されるプロトンの放出/吸収プロトン量は、溶液に対して同じプロトン量を添加した環境において、粉末を添加したことに伴って、どの程度のプロトンの授受が発生するかを示す。よって、この値は粉末のプロトンに対する感受性を示すといっても良い。 なお、この測定は、等電点の測定と類似しているが、少し異なる。等電点とは、粉体の表面荷電がゼロとなるpHのことで、等電点では電気泳動移動度がゼロとなる。一方、等酸点は溶液に粉体を懸濁させてもpHが変化しないpHのことである。すなわち、等電点は粉末に含まれる(基本的には表面において)すべてのイオンの影響をトータルで見るものであり、等酸点は粉末によるプロトンの授受のみに着目したものである。たとえば、テフロン(登録商標)の表面の等電点は測定できるが、等酸点は測定できない。ここでは、粒子と樹脂の分散性についての関係を知りたいので、等電点では意味がなく、等酸点付近の値を目印とする。 なお、本発明の「分散性の良い金属粒子(粉末)」とは、塗料とした際に一次粒子の形態を保ち、粒子間の凝集が少ない金属粒子を言う。具体例を示すと、「JISK−5600−2−5:1999 塗料一般試験方法 第2部:塗料の性状・安定性−第5節:分散度」にあるようなグラインドゲージ法を用いて評価することが出来る。 本明細書では、凝集体の評価としてスクレーパーを引いた際にその径の部分に粒子が存在することを示す筋の占める割合が溝全体の半分となるポイントを、平均粒径D50として評価した。なお、表1では、「グラインドゲージ」として表した。この評価に付すペーストは、例えば試料粉末70g、ブチルカルビトールアセテート8.9g、熱可塑性ポリウレタン樹脂22.3g(例えば、荒川化学工業株式会社製ユリアーノ8001)、高分子系顔料分散剤0.35g(例えば、味の素ファインテクノ株式会社製アジスパーPA−111)を混合して、三本ロールで混練したペーストを評価することが出来る。そうして作製したペーストは、その凝集径(D50値)が5.0μm以下、好ましくは3.0μm以下の値を示すようなものである。この凝集径を確認するためには、溝の最大深さが50μm以下のものを用いるとより詳細に確認できる。 また、視認による分散性評価として、粉末1.0gを50mLのガラス製容器に加えた後に、α−テルピネオール20mLを注ぎ込み、5分間超音波分散器(例えば、ヤマト科学株式会社製 超音波洗浄器 1510J−MT型)にかけ12時間静置したのち、水平方向から液を見たときの液の状態により、評価した。具体的な判断基準としては、粒子により視野が遮蔽される状態を○とし、透過光が確認される状態(粉末がところどころで空隙を作っている状態)を△とし、粒子が完全に沈降もしくは浮遊して、光の透過を妨げないような状態になっている場合を×として評価した。 後述する実施例が示すように、上記の評価によれば、リファレンス(ブランク溶液)におけるpHの値が5になるような量の硝酸を、金属粒子の試料粉末が入った水酸化カリウム溶液に投入すると、その時のpHが6.0以下であるような表面特性を有する金属粒子であれば、極性溶媒に分散され、インク化が可能であることを見出した。また、これはプロトンの放出量で言い換えると、3.0×1019(個/m2)以下であるような金属粒子粉末である。 なお、特許文献3の銅粒子は、本発明が示す値とは異なる値を示す。特許文献3に掲載されている滴定曲線を参照すると、リファレンスとなる滴定曲線がpH=5を示す状態時(正確な滴定値は不明であるが、0.1mol/LのKOHをおおよそ1.0mLと確認される)において、粉体を添加したときに示している値はいずれもpH=6よりも大(pH=8近傍)であることから、特許文献3で開示されている金属粒子と本発明に係る粒子は異なっている。 次に本発明が目的とする極性溶媒に分散する金属粒子について説明する。<金属粒子>(平均一次粒子径) 本発明のような表面性を有する粒子は特に、TEM(透過型電子顕微鏡)による粒子観察法による平均一次粒子径が10〜1000nm、好ましくは20〜500nm、一層好ましくは30〜300nm、なお一層好ましくは30〜150nmである金属粒子である。この粒子径の最小値はあくまで用途による便宜のために定めた値であり、本明細書に記載の方法によってはさらに微粒子を得ることもできる。一方、上限である1000nmを超えると、例えば低温焼結性が発現しにくくなるので好ましくない。なお、ここでいう粒子径はTEM写真の直接測定法で求めても良いし、画像処理で平均一次粒径を求めることもできる。この時の平均一次粒径は少なくとも200粒子を測定した結果から算出することが好ましい。また、粒子同士の重なり等が無い個々が独立した粒子で求め出すことが好ましい。 このような粒子径を有する粒子を得る方法は大別して二種類ある。第一の方法としては、銀塩と総炭素数8以下の有機保護剤である有機物と還元剤を水中にて混合することにより、総炭素数8以下の有機保護剤で被覆された銀ナノ粒子を直接合成する方法(ただしこの後に有機保護剤を置換することを排除しない)である。 第二の方法は一旦脱離しやすい高分子物質で被覆されたナノ粒子を合成した後、本発明に従う炭素数8以下の有機保護剤で被覆(置換)する方法である。 概説すると、第一の方法は平均一次粒子径が200nm以下である粒子を得るのに好適であり、第二の方法は平均一次粒子径が200nm以上の粒子を得るのに好適である。 第一の方法により直接合成する方法においては、炭素原子間が単一結合のみで構成された有機保護剤を用いると、とりわけ30nm以下の微細な粒子が得られ、二重結合、あるいはカルボキシル基などの官能基を2つ以上その構造中に持つ場合(以後「二重結合等を有する有機保護剤」と呼ぶ。)には、30nm以上の微細な粒子を得やすい。 特に、平均一次粒子径200nm以下の粒子について、単一結合のみを有する脂肪酸を用いれば比較的小さい粒子径のものが得られ、二重結合等を有する有機保護剤を採用した際には、平均一次粒子径が30nm以上の粒子が得られやすくなる。このような相違が生じることについては不明な点が多いが、発明者らは、以下のように推測している。金属イオンの還元析出時においては、金属表面に対して吸着する速度がこうした炭素−炭素間二重結合を有するカルボン酸化合物やカルボキシル基を有する化合物は通常のカルボン酸よりはやや遅くなる。そのため、公知のカルボン酸を使用する方法で析出させる場合に比較して金属粒子の成長が進み、粒子径を大きくすることができるようになったのであろう。 なお、かような効果を持つ有機物としては、具体的にはカルボン酸の中で炭素−炭素間二重結合を有する化合物、ジヒドロキシル化合物、ジカルボキシル化合物とすることができる。これら構造を有するものを例示すれば、炭素−炭素間二重結合を有する化合物としてはソルビン酸が例示でき、ジカルボキシル化合物としてはアジピン酸が例示できる。これらの構造を有する化合物により、金属ナノ粒子の表面を構成するとよい。なお、本明細書中では平均一次粒径が1nmから1000nmまでの金属粒子を「ナノ粒子」若しくは「金属ナノ粒子」と呼ぶ。特に、金属を「銀」とした場合は「銀ナノ粒子」とも呼ぶ。 第二の方法を採用する際には、一旦脱離のしやすい高分子を被覆し、その高分子を置換して、総炭素数8以下の有機物により被覆する。このときに用いられる高分子としてイミン化合物(高分子イミン)であるとよく、特にポリエチレンイミンであるのがよい。ここで用いられる高分子イミンは分子量300以上のものが好適に使用できる。なお、後の操作によって置換することを想定していることから、ここでの分子量の上限値には特段の制限はない。(粒子表面に存在する有機物) 金属粒子表面は総炭素数8以下の有機物により表面が被覆されているのがよい。この程度の分子数の有機物で覆われていることにより、特に微細な100nm以下の平均一次粒子径を有するような粉末の場合でも、室温・大気中で保管しても変化を生じにくく、保管安定性に優れた粒子を得ることが出来る。 粒子表面を構成する有機物は、複数の炭素数の異なる有機物で被覆されていてもよい。どちらかと言えば単一の炭素数の有機物で被覆されている方が、溶媒に対する分散度合がまちまちにならないので好ましい。粒子の安定性を考慮すると有機物を構成する炭素数が2〜8、より好ましくは3〜7、一層好ましくは4〜6であるのがよい。 上記のような有機物で被覆される粒子は、ナノ粒子(重複のため削除)とした場合にも、大気中で安定して存在することができるため、粉末として得ることができる。そうした形態をとる粒子は、従来のケーキ状あるいは分散液状にて提供されていた粒子と比較してきわめて使用しやすい粒子となる。 また取扱に便がよいため、第二の方法を用いて作成した粒子の表面も、総炭素数8以下の有機物で被覆しておくことが望ましい。こうした構成とした粒子とするには、一旦形成させた高分子イミンにより被覆された粒子に、総炭素数8以下の所望する有機物成分(主としてカルボン酸)を添加して置換することにより得ることができる。<粒子の製造法>(第一の方法による粒子の形成) 具体的に、第一の方法により粒子を析出させる場合、原料である金属の水溶液及び還元液を調整する調液工程、溶液の温度を上昇させる昇温工程、原料である金属水溶液を還元液に添加し反応を行う反応工程、液中の金属粒子(特に銀ナノ粒子)を成長させる熟成工程、濾過・水洗・分散を繰り返し余分な有機物質を除去する洗浄工程、及び乾燥により液中の水分を除去する乾燥工程、また必要に応じて置換工程を付加した工程群によってなる。(調液工程) 第一の方法による調液工程は原料水溶液(以降、原料液という)と還元液を準備する工程からなる。原料液としては、水に溶解性のある銀塩、特に好ましくは硝酸銀を純水に溶解する。この時の銀濃度は、0.01mol/L以上3.0mol/L以下、好ましくは0.01mol/L以上2.0mol/L以下、一層好ましくは0.01mol/L以上1.0mol/L以下とする。あまりに濃度が薄すぎる場合には、反応効率が悪くなりすぎるので好ましくない。一方濃度が濃すぎる場合には、本発明の方法であれば反応が一度に進みすぎてしまい、粒子径が不均一になりすぎることがあるので好ましくない。 還元液は、水とアンモニア水と表面を被覆する有機物(特に好ましいのは有機酸)とヒドラジン水和水溶液とを混合したものとする。この時、還元剤は銀に対して当量以上、好ましくは銀に対して2当量以上とするのがよい。 ここで、前記ヒドラジン水和物とあるのは、還元剤として金属を還元可能なものであればよい。ヒドラジン水和物以外の還元剤、具体的には、ヒドラジン、水素化ホウ素アルカリ塩(NaBH4など)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH4)、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、L−アスコルビン酸、ヒドロキノン、没食子酸、ホルマリン、ホスフィン、グルコン酸やそれらの誘導体などを併用することもできる。 還元剤の添加量は金属に対する当量にして0.5〜9.0の範囲、好ましくは0.5〜8.0、一層好ましくは1.0〜7.0の範囲とすることが好ましい。0.5未満の場合、未還元の金属が残存する可能性があるので好ましくない。一方、9.0を超える場合は還元剤量が多くなり、反応が過剰に早くなり過ぎることがある。そのため、凝結粒子が増加し最終的に粒子径のバラつきが大きくなる可能性があるので好ましくない。 さらに、還元液の中に添加するアンモニア水は、表面を被覆する総炭素数8以下の有機物を溶解する溶解促進剤として働くので、作業の効率化の観点から見て添加することが好ましい。すなわち、アンモニア水の添加で有機物が溶けやすくなる。特に炭素数の多い有機物を利用する場合において、添加なき場合には有機物の溶解が生じがたいことから、アンモニア水の添加は必須である。 第一の方法において、金属ナノ粒子表面を保護する界面活性剤の金属成分に対するモル比は、界面活性剤/金属成分とすれば4.0以下、好ましくは0.1〜3.0、更に好ましくは0.3〜2.0の範囲とすればよい。ここで、4.0を超える場合は銀の周囲を被覆する保護剤が多すぎるものが得られる。このことは最終的に生成する銀組成物中において、不純物が多く残存する虞が高いことを示し、高純度の銀膜を得にくくなる虞があるので好ましくない。(昇温工程) 上記原料液、還元液を共に加熱して、おおよそ40〜80℃にする。この時共に加熱するのは、後の工程で銀の還元反応を起こさせる際に、急激な温度差による事故を防止し、安全を確保するのに重要である。これは本反応は急激に進む反応であるので、出来る限り反応にばらつきが生じないよう注意を払う必要があるためである。なお、反応槽中の温度が前記温度範囲から外れると、40℃未満では、金属の過飽和度が上昇し、核発生が促進されるため、微粒が多くなりやすい。80℃超では、核発生は抑制されるが、粒子成長、粒子凝集が促進されやすい。(反応工程) 原料液および還元液が設定の温度で安定させた後、還元液に原料液を添加して反応を一度に進める。この時出来るだけ均一に進めることが好ましく、スケール(製造規模)によっては加圧して反応を均一にしても良い。なお、反応中には出来るだけ液を均一な状態とするために、高速攪拌を行っても良い。 ここで、一挙に添加しないと溶液内が不均一系になり、核発生と粒子凝集が同時並行的に起こるようになり、結果的に粒度分布の大きな、不均一な銀ナノ粒子が得られることがある。したがって、ここでいう「一挙に添加する」とは、還元剤や保護剤の濃度若しくはpH、温度といった反応要因が、硝酸銀水溶液の添加時期によって実質的に変化しない態様をいう。また、反応要因が硝酸銀水溶液の添加時期によって実質的に変化しない態様であれば、具体的方法は特に限定されるものではない。(熟成工程) 反応液を混合した後、10〜30分程度攪拌を続け、粒子の成長を完結させる。このときの反応は、サンプリングした反応液に対し、ヒドラジン水和物を滴下することにより、未還元銀の反応が生じるかどうか確認することによって、終点を判断する。(洗浄工程) 得られたスラリーについて濾過、あるいは遠心分離を行って、液中の生成物と母液を分離する。本発明に従う粒子は緩やかに凝集した形で得られるので、通常知られている濾過、あるいはスケールの大きな場合にはフィルタープレスといった方法であっても固液分離することが可能である。 そして、この濾過により固液分離をした後、余分な有機成分や還元剤あるいは硝酸根等を水洗により除去する。この濾過に関しては十分に水洗できればよい。水洗が十分であるか否かについては、例えば水洗後の液の導電率測定により確認する方法が採用できる。すなわち、水洗できていれば、液の導電率は下がるからである。(乾燥工程) 得られた金属塊(銀塊)を、100℃以下、好ましくは80℃以下、一層好ましくは60℃以下の温度条件に設定し、少なくとも0.5時間以上、好ましくは2時間以上、一層好ましくは6時間以上乾燥させる。この乾燥時には定温に保持した乾燥機中に入れ乾燥することも出来るが、真空乾燥としても良い。(置換工程) 得られた有機物により被覆された金属粉末(被覆金属粉末)をイソプロピルアルコール等の溶媒に添加し攪拌したところに、置換する目的である有機物を溶解させた処理液を添加して、常温にて1〜6時間程度攪拌すれば、表面に存在する有機物を置換することができる。ここで、本発明に従う被覆金属粉末のような粒子であれば、置換対象物質であるカルボン酸と容易に置換することが可能となる。このような構成とすることで、所望の表面性状あるいは物性を有するような金属粉末を得ることができるようになる。(第二の方法による粒子の形成) 第二の方法により粒子を得ようとする場合には、第一段階の高分子イミンにより被覆された銀ナノ粒子の形成する工程(この工程は、大別して原料の調液工程、反応工程からなる)と、第二段階として表面を被覆する高分子イミンを総炭素数8以下の有機物への置換する工程を経て形成させるという経路を通り形成させる。具体的には下記のようにして提供する。(調液工程) 硝酸銀をはじめとする原料成分を水溶液中に溶解し、アンモニア水あるいはアンモニウム塩を添加することで、銀のアンミン錯体を形成させる。銀に対するアンモニウム基の配位数は2であることから、ここでのアンモニウム添加量は銀に対して2当量以上とするのがよい。これを錯体溶液と呼ぶ。 銀を還元する還元剤は、第一の方法で用いたもののいずれでも採用し得るが、とくにヒドラジン溶液を使用すると好適である。ヒドラジンは比較的処理手法が色々と検討されており、その種類を適宜選択することでニーズにあった処理方法を選択することが出来るためである。なお、還元液の調整時においては、存在する銀量に対して1当量以上とするのがよい。 高分子イミン化合物は、還元の時点で共存していればよいことから、還元前に銀原料液へ添加しておいてもよいし、還元液に添加しておいても構わない。添加量は液中の銀の質量に対して、0.1質量%以上の添加量とすればよい。(反応工程) こうして得られた錯体溶液と、上述の高分子イミンとが共存した環境下で還元剤を作用させることで高分子イミンが表面を被覆した銀ナノ粒子を得ることができる。還元剤(場合によっては高分子イミン化合物が共存している)の添加速度は可能な限り早いことが好ましく、1当量/分以上とするのがよい。これは、たとえば還元剤を銀に対して1当量比で設定した場合には、その還元剤が含まれる溶液を1分以内で添加混合することを示す。このとき反応を急速に進める観点から、攪拌を生じさせていても構わない。(置換工程) 反応は急速に進むので、反応後10分程度熟成させ反応を完結させた後、総炭素数8以下の有機物(主としてカルボン酸)を添加して、表面に形成された高分子イミンを置換する。なお、反応の完結の有無はたとえば、反応液の一部を抽出し、該溶液にベンシルを添加して反応が確認されるか否かで判断することができる。置換に用いる有機物は銀の存在量に対して0.02当量以上の添加を行えばよい。置換物質添加後は10分以上攪拌し、表面を被覆する高分子イミンを総炭素数8以下のカルボン酸の置換を行い、総炭素数8以下の有機物で被覆された平均一次粒子径200nm以上の粒子を得ることができる。 こうして得られた銀ナノ粒子のスラリーは公知の濾過、水洗(スケールによってはフィルタープレスを用いる)後、乾燥処理を行うことで銀ナノ粒子粉末を得ることができる。(BET値) 本発明に従う金属粒子粉末のBET法で測定した比表面積は0.1〜60m2/g、より好ましくは0.3〜55m2/g、一層好ましくは0.5〜50m2/gである。この範囲に合致する金属粒子であれば、ペースト化する際の粘度調整が容易になるので好ましい。 次に本発明の金属粒子を用いたインク(以下「導電性ペースト」とも呼ぶ。)について説明する。<分散媒> 導電性ペーストとしては、上述の銀ナノ粒子を分散媒に分散させることで得られる。この時に使用する分散媒は極性溶媒である。極性溶媒を選択することにより、蒸気圧が低く取扱に好適になる。 特に、熱硬化樹脂と相溶する性質を有するものを使用すればよいが、エステル系、エーテル系、ケトン系、エーテルエステル系、アルコール系、炭化水素系、アミン系などの有機溶剤を使用するのが好ましい。 具体例としては、水、オクタンジオールなどのジオール類、アルコール、ポリオール、グリコールエーテル、1−メチルピロリジノン、ピリジン、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、フェノキシプロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、1−オクタノールなどがあげられる。 特に、導電性ペーストは、一般に印刷によって回路を形成するために使用されるので、印刷時の揮発性が低い高沸点溶剤を使用するのが好ましく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテート、オクタンジオールを使用するのがさらに好ましい。また、複数種類の溶剤を組み合わせて使用してもよい。この溶剤の量は、熱硬化樹脂と金属成分の総量に対して30質量%以下であるのが好ましく、25質量%以下であるのがさらに好ましく、20質量%以下であるのが最も好ましい。<分散剤> 本発明にかかる導電性ペーストには銀ナノ粒子粉末をほどよく分散させる分散剤を添加しても良い。本発明の金属粒子はもともと極性溶媒中に分散する表面特性を有するが、さらに分散剤を使用することで、導電性ペースト中では銀ナノ粒子の独立性を確保することができる。その性質としては、銀ナノ粒子表面と親和性を有するとともに分散媒に対しても親和性を有するものであればよく、市販汎用のものであってもよい。また、単独の種類のみならず、複数種類を併用使用しても構わない。この添加する際の量は、銀ナノ粒子の添加重量に対して6.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下、一層好ましくは1.0質量%以下である。 こうした性質を有する分散剤としては、脂肪酸塩(石けん)、α−スルホ脂肪酸エステル塩(MES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルキル硫酸塩(AS)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、アルキル硫酸トリエタノールといった低分子陰イオン性(アニオン性)化合物、脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APE)、ソルビトール、ソルビタンといった低分子非イオン系化合物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジニウムクロリド、といった低分子陽イオン性(カチオン性)化合物、アルキルカルボキシルベタイン、スルホベタイン、レシチンといった低分子両性系化合物や、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸系単量体の共重合体塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどに代表される高分子水系分散剤、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミンといった高分子非水系分散剤、ポリエチレンイミン、アミノアルキルメタクリレート共重合体といった高分子カチオン系分散剤が代表的なものであるが、本発明の粒子に好適に適用されるものであれば、ここに例示したような形態のもの以外の構造を有するものを排除しない。 分散剤として、具体的名称を挙げると次のようなものが知られているが、上述の性質を有する場合には、本欄に記載のもの以外のものの使用を排除するものではない。たとえば、三洋化成株式会社製のビューライトLCA−H、LCA−25Hなど、共栄社化学株式会社製のフローレンDOPA−15Bなど、日本ルーブリゾール株式会社製のソルプラスAX5、ソルスパース9000、ソルシックス250など、エフカアディティブズ社製のEFKA4008など、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPA111など、コグニクスジャパン株式会社製のTEXAPHOR−UV21など、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperBYK2020やBYK220Sなど、楠本化成株式会社製のディスパロン1751N、ハイブラッドED−152など、株式会社ネオス製のFTX−207S、フタージェント212Pなど、東亞合成株式会社製のAS−1100など、花王株式会社製のカオーセラ2000、KDH−154、MX−2045L、ホモゲノールL−18、レオドールSP−010Vなど、第一工業製薬株式会社製のエパンU103、シアノールDC902B、ノイゲンEA−167、プライサーフA219Bなど、DIC株式会社製のメガファックF−477など、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG503A、ダイノール604など、サンノプコ株式会社製のSNスパーズ2180、SNレベラーS−906など、AGCセイミケミカル社製のS−386などが例示できる。<樹脂> 本発明にかかる導電性ペーストとしては、銀ナノ粒子粉末および分散媒に加えて、樹脂を加えることで樹脂型ペーストとすることが出来る。樹脂を添加することで、印刷後の形状維持性や、基材との接着性を高めることができる。添加されるべき樹脂は、広く知られている熱硬化型もしくは熱可塑型のいずれの樹脂も採用することが出来る。樹脂の添加量としては、銀ナノ粒子を合わせた総銀質量と樹脂の合計質量に対して2〜20質量%、好ましくは2〜15質量%の添加量とするのがよい。添加をする樹脂量が多すぎると、焼成後に樹脂が必要以上に配線中に残ってしまい、導電性にも多大な影響を与えるため好ましくない。一方添加量を少なくすると配線と基板との密着性が確保できないため、樹脂型(配線)ペーストとして利用するには、少なくとも2質量%程度の添加は必要である。(熱可塑性樹脂) 本発明においては、知られている熱可塑性樹脂のいずれも使用することが出来るが、なかでも、アクリル樹脂やポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂を添加するのが好ましい、一般的に知られているものとして、次のようなものが知られているが、上述の性質を有する場合には、本欄に記載のもの以外のものの使用を排除するものではない。 ポリウレタン樹脂は、通常市販されている熱可塑性ウレタン樹脂であれば特に制限されることはない。例えば、ポリオール成分と有機ポリイソシアネートを必須成分とし、任意成分として鎖伸長剤、停止剤等を用いて重合させて得られる熱可塑性ウレタン樹脂といったものが挙げられる。 ここで、上記に用いられるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI(H6−XDI)、水添MDI(H12−MDI)、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等やこれらの誘導体があげられ、なかでも、黄変性が少ない等の点で、HDI、IPDI、H6−XDI、H12−MDIがより好適である。 また、上記ポリイソシアネートとともに用いられるポリオールとしては、ポリオールとしての結晶性の低いものが好ましいと考えられる。具体的には、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリカーボネート(PCD)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリカプロラクトンポリエステル(PCL)、ポリプロピレングリコール(PPG)等が例示できる。 アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または(メタ)アクリル酸単位を構成単位として有する樹脂のことを指す。(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸の誘導体に由来する構成単位を有しているようなものでもよい。 ここで、(メタ)アクリル酸エステル単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの単量体に由来する構成単位のことをいう。 一方、(メタ)アクリル酸単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの単量体に由来する構成単位のことをいう。 ポリエステル樹脂としては通常知られている樹脂のいずれも使用することが出来る。その製造方法を例示すると、低分子ジオールをポリカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル、酸ハライド等]との縮合重合により形成させたものや低分子ジオールを開始剤としてラクトンモノマーを開環重合したもの等を上げることが出来る。またこれらの2種以上の混合物を使用することも妨げない。(熱硬化型樹脂) 本発明においては、知られている熱硬化性樹脂のいずれも使用することが出来る。具体例としては、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、イソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂などから選択することができる。ここでは、エポキシ樹脂とフェノール樹脂について説明する。 本発明にかかるエポキシ樹脂としては、塗膜の耐候性を改善する効果がある。具体的に、エポキシ樹脂としては、モノエポキシ化合物、多価エポキシ化合物のいずれか又はそれらの混合物が用いられる。ここでモノエポキシ化合物としては、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート等を挙げることができる。 多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。 上述のエポキシ樹脂の中でも、貯蔵安定性を高めるという観点から、多価エポキシ化合物が好ましい。多価エポキシ化合物のなかでも、生産性が圧倒的に高いので、グリシジル型エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくは、硬化物の接着性や耐熱性が優れることから、多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が好ましい。いっそう好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂であるのがよく、とりわけ、ビスフェノールAをグリシジル化したエポキシ樹脂とビスフェノールFをグリシジル化したエポキシ樹脂がよい。 また、樹脂の形態としては液状を呈しているものが好ましい。なお、エポキシ当量としては300以下であることが好ましい。エポキシ当量が300よりも大きい値になると、組成物が固形になり抵抗値が高くなるとともに使用する際に取扱が不便であるので好ましくない。 熱硬化性のフェノール樹脂としては、例えば、液状ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、テルペン系フェノール樹脂、トリフェノールメタン系樹脂、フェノールアラルキル樹脂などが挙げられる。<その他、添加可能成分> 分散剤に加えて、ペーストの安定性や印刷性を改善するための各種添加剤を添加しても良い。例えば、レベリング剤、粘度調整剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、ダレ防止剤などがあげられる。以上のような構成により金属粒子を主構成成分とする導電性ペーストを形成することが出来る。<実施例1> 実施例に示す粒子の作製例として、ソルビン酸被覆の銀ナノ粒子を製造する例について示す。500mLビーカーへ硝酸銀(東洋化学株式会社製)13.4gを純水72.1gへ溶解させ、銀溶液を作製した。 続いて5Lビーカーに1.34Lの純水を仕込み、窒素を30分間通気させることで、溶存酸素を除去しつつ60℃まで昇温させた。ソルビン酸(和光純薬工業株式会社製)17.9gを添加した。そうしてから、pH調整のため28%アンモニア水(和光純薬工業株式会社製)2.82gを添加した。このアンモニア水添加により反応開始とする。これを撹拌しながら、反応開始5分経過後に含水ヒドラジン(純度80%/大塚化学株式会社製)5.96gを添加した。 反応開始9分経過後に、銀溶液を添加し反応させた。その後30分熟成してソルビン酸で被覆された銀ナノ粒子を形成させた。その後No5Cのろ紙で濾過し、純水で洗浄して、銀ナノ粒子凝集体を得た。その凝集体を真空乾燥機にて大気中80℃12時間の条件で乾燥させ、銀ナノ粒子乾燥粉の凝集体を得た。 得られた粒子は、SEM像による平均一次粒子径が60nmであり、BETが6.5m2/gの銀ナノ粒子粉末であることが確認された。そして、上述の表面性評価方法、すなわちpH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)とエチルアルコールを10mL混合した溶液に対して、0.10mol/Lの硝酸を添加してpH=5となる量の硝酸量を、pH=11の水酸化カリウム溶液100mLとエチルアルコールを10mL混合した溶液に0.5gの試料粉末を加えてから、上記量の0.10mol/Lの硝酸を加えたときに指示されるpH値はpH=4.96であった。なお、この粉末を半年にわたって常温環境下で経時変化をBET法による変化で確認したが1%未満の変化にとどまり、粒子間焼結が生じていないことが確認された。 加えて、上述の(1)式に基づく試料粉末から放出されるプロトン(H+)の値は、1.1×1018(個/m2)と算出された。分散性評価は目視によるもので○となる評価、グラインドゲージによる凝集粉の状況を確認すると5.0μm未満と確認され、インク状態とした際には、分散性に優れた粉末となっていることが確認された。特性等については表1にあわせて示す。<実施例2> 反応温度を40℃に変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、かつ実施例1と同様の評価を行った。得られた粒子は、SEM像による平均一次粒子径が100nmであり、BETが4.4m2/gの銀ナノ粒子粉末であることが確認された。得られた物質の物性等の評価結果を表1に示す。なお、この粉末を半年にわたって40℃環境下で経時変化をBET法による変化で確認したが1%未満の変化にとどまり、粒子間焼結が生じていないことが確認された。<実施例3> 実施例2により得られたソルビン酸で被覆された金属粉末25gをソルミックス(混合アルコールの商品名)中に添加し、25℃で攪拌しながら溶媒中でかき混ぜた。そこに、酢酸10gをソルミックス125ml中に加えている処理液を添加することで、銀ナノ粒子の表面を被覆する有機物をソルビン酸から酢酸に置換した。なお、粒子表面の置換ができているか否かについてはGC−MS(Gas Chromatgragh−Mass Spectrometry:ガスクロマトグラフ−質量分析計)を用いて、加熱によりガスを捕集し表面を構成する成分が交換されていることは確認している。得られた物質の物性等の評価結果を表1に示す。なお、この粉末を半年にわたって40℃環境下で経時変化をBET法による変化で確認したが1%未満の変化にとどまり、粒子間焼結が生じていないことが確認された。<実施例4〜10> 実施例3において置換する物質を、オクタン酸(実施例4)、マロン酸(実施例5)、ブタン酸(実施例6)、乳酸(実施例7)、プロピオン酸(実施例8)、ヘキサン酸(実施例9)、オレイン酸(実施例10)とした以外は同様にして、実施例3の操作を繰り返し、かつ実施例1と同様の評価を行った。得られた物質の物性等の評価結果を表1に示す。なお、これらの粉末を半年にわたって40℃環境下で経時変化をBET法による変化で確認したが1%未満の変化にとどまり、粒子間焼結が生じていないことが確認された。<実施例11> 300nm粒子の作製例として、ソルビン酸被覆の銀ナノ粒子を製造する例について示す。5Lビーカーへ硝酸銀(東洋化学株式会社製)35.0gと硝酸銅二水和物(和光純薬工業株式会社製)0.04gを純水3700gへ溶解させ、銀溶液を作製した。 続いて、500mLビーカーに200mLの純水を仕込み、含水ヒドラジン(純度80%/大塚化学株式会社製)4.5gとポリエチレンイミン(平均分子量約600:和光純薬工業製)0.546gを混合し還元剤溶液を調整した。 銀溶液を60℃まで昇温させた後、28%アンモニア水(和光純薬工業株式会社製)49.06gを添加し銀のアンミン錯体を形成させた。このアンモニア水添加により反応開始とする。これを撹拌しながら、反応開始3分経過後還元剤溶液を添加した。 反応開始13分経過後に、ソルビン酸(和光純薬工業株式会社製)を23.11g添加し、さらに10分熟成してソルビン酸で被覆された銀ナノ粒子を形成させた。その後No.5Cのろ紙で濾過し、純水で洗浄して、銀ナノ粒子凝集体を得た。その凝集体を真空乾燥機にて大気中80℃12時間の条件で乾燥させ、銀ナノ粒子乾燥粉の凝集体を得た。 得られた物質の物性等の評価結果を表1に示す。なお、これらの粉末を半年にわたって40℃環境下で経時変化をBET法による変化で確認したが1%未満の変化にとどまり、粒子間焼結が生じていないことが確認された。<比較例1> 反応媒体兼還元剤としてイソブチルアルコール(和光純薬工業株式会社製特級試薬)32.1g、オレイルアミン(和光純薬工業株式会社製、分子量=267)55.3g、銀化合物としての硝酸銀結晶(関東化学株式会社製) 6.89gを用意し、これらを混合してモーターに接続された攪拌羽根にて攪拌し、硝酸銀を溶解させた。この溶液を還流器のついた容器に移してオイルバスに載せ、容器内に不活性ガスとして窒素ガスを500mL/minの流量で吹込みながら、該溶液をモーターに接続された攪拌羽根により攪拌しながら110℃まで昇温した。110℃の温度で5時間の還流を行なった後、還元補助剤として2級アミンのジエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製、分子量=106)を4.30g添加した。その状態で1時間保持した後、反応を終了した。 反応終了後のスラリーを上澄みを除去できるデカント槽に移液して、一昼夜放置した。その後上澄みを除き、500mLビーカーに移液した後、メチルアルコールを200mL添加して、マグネチックスターラーにて1時間攪拌した。 そののち2時間静置して、オレイルアミンで被覆された銀ナノ粒子の凝集塊を沈降させ、再度デカンテーションにより洗浄液と銀ナノ粒子の凝集塊を分離した。こうした洗浄作業を2回繰り返して、洗浄操作を完結させた。 こうして得られた粒子を、真空乾燥して洗浄溶媒を除くことで、オレイルアミンで被覆された金属ナノ粒子粉末を得た。得られた粒子は、TEM像による平均一次粒子径が10nmであり、BETが0.45m2/gの銀ナノ粒子粉末であることが確認された。そして、上述の表面性評価方法、すなわちpH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)に対して、0.10mol/Lの硝酸を添加してpH=5となる量の硝酸量を、pH=11の水酸化カリウム溶液100mLに0.5gの試料粉末を加えてから、上記量の0.10mol/Lの硝酸を加えたときに指示されるpH値はpH=6.18であった。 加えて、上述の(1)式に基づく試料粉末から放出されるプロトン(H+)の値は、3.5×1019(個/m2)と算出された。分散性評価は目視によるもので×となる評価、グラインドゲージによる凝集粉の状況を確認すると5.0μmよりも大と確認され、インク状態とした際には、液になじまないような粉末となっていることが確認された。特性等については表1にあわせて示す。なお、この粉末を半年にわたって40℃環境下で経時変化を確認したが、目視で判別できる程度に焼結が進んでいることが確認された。 図3には、pH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)に対して、0.10mol/Lの硝酸を添加したときのブランク溶液の示すpH値(基準pH値)と、試料粉末を0.5g添加したpH=11の水酸化カリウム溶液100mLに対して、0.10mol/Lの硝酸を添加したときに示すpH値(指示pH値)の相関を示した図を示す。横軸は基準pHの値であり、縦軸は指示pHの値である。本発明の表面特性の測定を行うと、図1のようなプロファイルを得る事ができた。本発明による極性溶媒に分散する金属粒子は、基準pHが5の時に、指示pHが6.0以下のものである。なお、図3で、基準pH5の時の指示pHは、基準pH5.0の前後の測定値からpH]5.0の時の値を補間して求める。図3では、基準pH5.0の前後のデータを補完した直線を二点鎖線で示した。 また、図4には、pH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)とエチルアルコールを10mL混合した溶液に対して、0.10mol/Lの硝酸を添加したときのブランク溶液の示すpH値(基準pH値)と、式(1)で算出される粒子から放出/吸着されるプロトン量(個/m2)との相関を示した図を示す。横軸は基準pHの値であり、縦軸は(1)式で求めたプロトン量(個/m2)を示す。本発明の極性溶媒に分散する金属粒子は、基準pHが5の時に、放出されるプロトン(H+)が3.0×1019(個/m2)以下(直線12より下)である。 本発明により、極性溶媒への再分散性に優れた金属粒子粉末、及びその金属粒子含有組成物を用いたペースト等を得ることができるため、該微小銀ナノ粒子含有組成物又は分散液を用いる各用途に好適に利用することができる。例えば、FPD・太陽電池・有機EL用の電極形成、RFIDの配線形成、また微細なトレンチ、ビアホールコンタクトホールなどの埋め込みなどの配線、車や船の塗装用色材、医療、診断、バイオテクノロジー分野での生化学物質を吸着させるキャリア、抗菌作用を利用した抗菌塗料、触媒、導電性接着剤、樹脂との混合により導電性ペーストやそれを用いたフレキシブルプリント回路、高屈曲性シールド、コンデンサ等といった各用途に利用できる。 1 流動電位自動滴定装置 2 タンク 3 pH計 4 硝酸水溶液の滴定装置 5 窒素ガスの導入管 6 マグネチックスターラー 7 撹拌子 8 交流磁界 pH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)とエチルアルコールを10mL混合した溶液に、0.5gの評価すべき金属粉末を加えてから、0.10mol/Lの硝酸を添加してpH=5となる量の硝酸量を0.10mol/Lの硝酸を加えたときに指示されるpH値が6.0以下を示す金属粒子粉末。 pH=11の水酸化カリウム溶液100mL(ブランク溶液)とエチルアルコールを10mL混合した溶液に、0.10mol/Lの硝酸を添加して、pHが4.5〜5.0となる量の硝酸量を、pH=11の水酸化カリウム溶液100mLに0.5gの試料粉末を加えたものに添加した際に算出される評価すべき金属粒子から放出されるプロトン(H+)が3.0×1019(個/m2)以下である、金属粒子粉末。 粒子表面が総炭素数8以下の有機物で構成されている、請求項1または2に記載の金属粒子粉末。 前記金属粒子粉末は大気中40℃で保持しても粒子間焼結を生じない性質を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の金属粒子粉末。 請求項1ないし4のいずれかに記載の金属粒子粉末と分散溶媒を含む、金属ペースト。 請求項1ないし4のいずれかに記載の金属粒子粉末と分散溶媒および少なくとも一種の樹脂を含む、導電性ペースト。 配線用として用いる導電性ペーストに利用する金属粒子としては、樹脂等のペーストに利用される他の材料との組合せで極性溶媒に分散しやすい特性を有していることが重要となる。pH=11の水酸化カリウム溶液100mLとエチルアルコール10mL(ブランク溶液)に対して、0.10mol/Lの硝酸を添加してpH=5となる量の硝酸水溶液を、pH=11の水酸化カリウム溶液100mLに0.5gの評価すべき金属粒子を加えてから、上記量の0.10mol/Lの硝酸を加えたときに指示されるpH値がpH=6以下の値を示す、金属粒子粉末を提供する。