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タイトル:公開特許公報(A)_タングステンぺルオキシド化合物の製造方法及びエポキシ化合物の製造方法
出願番号:2012050936
年次:2013
IPC分類:C01B 15/047,C07D 301/12,C07D 303/04,C07D 493/04,B01J 31/22,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

水野 哲孝 鎌田 慶吾 岡崎 素也 松本 隆也 JP 2013184850 公開特許公報(A) 20130919 2012050936 20120307 タングステンぺルオキシド化合物の製造方法及びエポキシ化合物の製造方法 国立大学法人 東京大学 504137912 JX日鉱日石エネルギー株式会社 000004444 森田 順之 100103285 水野 哲孝 鎌田 慶吾 岡崎 素也 松本 隆也 C01B 15/047 20060101AFI20130827BHJP C07D 301/12 20060101ALI20130827BHJP C07D 303/04 20060101ALI20130827BHJP C07D 493/04 20060101ALI20130827BHJP B01J 31/22 20060101ALI20130827BHJP C07B 61/00 20060101ALN20130827BHJP JPC01B15/047C07D301/12C07D303/04C07D493/04B01J31/22 ZC07B61/00 300 15 OL 12 4C048 4C071 4G169 4H039 4C048AA05 4C048BB01 4C048BC01 4C048CC01 4C048XX02 4C048XX05 4C071AA01 4C071AA08 4C071BB01 4C071BB06 4C071CC12 4C071EE02 4C071FF12 4C071KK02 4G169AA02 4G169AA06 4G169AA08 4G169AA09 4G169BA21A 4G169BA21B 4G169BA21C 4G169BA27A 4G169BA27B 4G169BB06C 4G169BC60A 4G169BC60B 4G169BC60C 4G169BE06C 4G169BE17A 4G169BE17B 4G169BE17C 4G169BE41A 4G169BE41B 4G169CB07 4G169CB73 4G169DA05 4G169FA01 4G169FB06 4G169FB08 4G169FB27 4H039CA63 4H039CC40 本発明は、エポキシ化合物の製造方法において、アルケンのエポキシ化の触媒として有用なタングステンペルオキシド化合物の新規製造方法に関する。また本発明は、該触媒を用いたエポキシ化合物の製造方法に関する。 アルケンのエポキシ化反応では、様々な触媒系が開発されている。例えば、(1)相関移動触媒:ポリオキソメタレートの存在下、過酸化水素によりエポキシ化する方法(特許文献1、2)、(2)相関移動触媒:タングステン化合物、α−アミノメチルホスホン酸を触媒に用いてエポキシ化する方法(特許文献2)、(3)タングステン化合物とリン化合物の存在下、相関移動触媒無しに過酸化水素によりエポキシ化する方法(特許文献3)などが知られている。 中でも、タングステンペルオキシド触媒を用いたエポキシ化反応では、エポキシドの選択率が高い反応を進行させることができる(非特許文献1)。このタングステン2核触媒は、高過酸化水素中に分散させたタングステン酸に塩化テトラブチルアンモニウムを加えてできた沈殿を精製することで合成されるが、触媒の収率が低く、工業的に製造が難しいという問題があった。特開2004−115455号公報特開平8−27136号公報特開2010−168330号公報Inorg.Chem.,46巻,2007年,p.3768−3774 本発明の課題は、アルケンのエポキシ化反応において高い触媒活性を有するタングステンペルオキシド化合物の新規製造方法を提供することを目的とする。また製造された触媒を用いて、工業的に有用なエポキシ化合物の製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、原料として、タングステン酸および水酸化アンモニウム化合物を用いた合成法により製造すると、タングステンペルオキシド化合物の収率が著しく向上し、また該タングステンペルオキシド化合物をエポキシ化触媒として使用することによりエポキシ化合物の収率を著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下のとおりである。[1] (a)タングステン酸および(b)(H4N)(OH)、(H3R1N)(OH)、(H2R1R2)(OH)、(HR1R2R3N)(OH)および(R1R2R3R4N)(OH)から選ばれる水酸化アンモニウム化合物を反応させることを特徴とするタングステンペルオキシド化合物の製造方法。(R1〜R4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、炭素数が1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、またはベンジル基を示し、それらは窒素や酸素を含んでいても良い。)[2] 前記(b)が(R1R2R3R4N)(OH)で表される化合物であることを特徴とする前記[1]に記載の製造方法。[3] 前記(b)が[(R1)4N](OH)で表される化合物であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の製造方法。[4] 前記(b)が[(n−C4H9)4N](OH)であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。[5] 生成したタングステンペルオキシド化合物を貧溶媒および良溶媒の積層で精製することを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。[6] 生成したタングステンペルオキシド化合物を貧溶媒および良溶媒の蒸気拡散で精製することを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。[7] 貧溶媒がジエチルエーテルであることを特徴とする前記[5]または[6]に記載の製造方法。[8] 良溶媒がアセトンまたはアセトニトリルであることを特徴とする前記[5]または[6]に記載の製造方法。[9] 製造されるタングステンペルオキシド化合物が、(R1R2R3R4N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(R1R2R3HN)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(R1R2H2N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(R1H3N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、または(H4N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを特徴とする前記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。[10] 製造されるタングステンペルオキシド化合物が、(R1R2R3R4N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを特徴とする前記[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。[11] 製造されるタングステンペルオキシド化合物が、[(R1)4N]2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを特徴とする前記[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。[12] 製造されるタングステンペルオキシド化合物が、[(n−C4H9)4N]2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを特徴とする前記[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。[13] 前記[1]〜[12]のいずれかの方法で製造されたタングステンペルオキシド化合物を触媒として用いて、過酸化水素を酸化剤とするオレフィンのエポキシ化反応を行うことを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。[14] オレフィンが脂環式オレフィンであることを特徴とする前記[13]に記載のエポキシ化合物の製造方法。[15] 脂環式オレフィンがテトラヒドロインデンであることを特徴とする前記[14]に記載のエポキシ化合物の製造方法。 本発明の方法により、従来知られている合成方法と比較してはるかに高い収率で容易にタングステンペルオキシド化合物を得ることができる。 また、本発明の方法で得られたタングステンペルオキシド化合物を触媒として用いることにより、これまでにエポキシ化が難しかったアルケンのエポキシ化反応において、エポキシ化合物の収率を著しく向上することが可能となる。 また、本発明により得られるエポキシ化合物は、半導体封止材、硬化剤、レジスト材料を初め各種工業製品、医薬、農薬等の製造における中間体や原料として有用である。これらを過酸化水素を用いて製造することによって、収率良く、かつ副生成物も少ないことから環境負荷の少ないプロセスとして工業的に有用である。 以下、本発明について説明する。 本発明の方法は、原料として(a)タングステン酸と(b)水酸化アンモニウム化合物を用い、これらを反応させることによりタングステンペルオキシド化合物を製造する。 本発明において用いる(b)水酸化アンモニウム化合物は、(H4N)(OH)、(H3R1N)(OH)、(H2R1R2)(OH)、(HR1R2R3N)(OH)、または(R1R2R3R4N)(OH)で表される化合物である。 上記式中、R1〜R4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、炭素数が1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、ベンジル基などを示し、またそれらは窒素や酸素を含んでいても良い。 R1〜R4としては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシルなどのアルキル基が挙げられ、途中で分岐や環状になっていても良い。ほかにも、ベンジル基や水酸基が入ったものも可能であり、ベンジルトリメチル、ベンジルトリエチル、2−ヒドロキシエチルトリメチル、ヘキサデシルトリメチル、トリメチル−3−トリフルオロメチルフェニル、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルなどの官能基も挙げられる。また、セチルピリジニウム基なども使用可能である。より好ましくは、炭素数が1〜8の水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化アルキルピリジニウムである。 (b)水酸化アンモニウム化合物としては、特に(R1R2R3R4N)(OH)で表される化合物が好ましい。このR1〜R4は、各々異なっても又は全て同じでもよいが、全て同じアルキル基であることが好ましい。前記アルキル基は、炭素数が1〜12の直鎖及び/又は分岐を有するアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜12の直鎖のアルキル基がより好ましく、炭素数が1〜8の直鎖のアルキル基が更に好ましく、n−ブチルが最も好ましい。したがって、本発明において(b)水酸化アンモニウム化合物としては、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムが最も好ましい。 本発明の方法では、まずタングステン酸を過酸化水素水に加えて撹拌し、タングステン酸が懸濁ないし溶解した溶液を得る。次に、水酸化アンモニウム化合物を加えることにより反応を行わせる。 このとき使用する過酸化水素水の濃度は任意であるが、安全面や効率の観点から10%〜70%の過酸化水素水が好ましい。 タングステン酸の量は、過酸化水素水の濃度に応じて適宜設定し得るものであるが、例えば30%の過酸化水素水を用いた場合、その使用量は30%過酸化水素水100mlに対して、通常5〜50g、好ましくは10〜30gの量を添加する。撹拌時間については特に限定はないが、タングステン酸が過酸化水素水に十分に懸濁ないし溶解するに足りる時間であり、通常は10分〜10時間である。 タングステン酸と水酸化アンモニウム化合物の比率は特に限定されないが、イオン当量比で(タングステン酸のアニオン)/(カウンターカチオン)が0.01〜100の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10の範囲である。 反応後、不溶分をろ過し、反応生成物が溶解しているろ液を溶媒(以下、沈殿溶媒と称する。)に添加することにより、沈殿溶媒に不溶なタングステンペルオキシド化合物を沈殿物として析出させて回収することができる。 また、ろ液は沈殿溶媒に添加する前に濃縮しておくことが効率の面から好ましい。濃縮の程度は任意であるが、2〜10倍に濃縮しておくことが好ましい。 沈殿溶媒はタングステンペルオキシド化合物を析出させることができる溶媒であれば特に限定されるものではないが、ジエチルエーテルとイソプロピルアルコールの混合溶液が特に好ましく用いられる。 上記により得られた沈殿物は、精製処理を施すことが好ましい。精製方法としては、良溶媒および貧溶媒による積層法、または蒸気拡散法が好ましい。 良溶媒および貧溶媒による積層法とは、沈殿物を良溶媒に溶解させた溶液に貧溶媒を少しずつ加え、溶解度の差を利用して結晶成長させる手法である。 また蒸気拡散法とは、沈殿物を良溶媒に溶解させた溶液を、上部を開けた容器に入れ、その容器ごと貧溶媒の入った容器に入れ密封する。しばらくすると、両溶媒の蒸気圧平衡でどちらの容器も同じ比率の溶媒比になり、こちらも溶解度の差を利用して結晶成長させる方法である。 良溶媒としては、タングステンペルオキシド化合物が溶解する限りにおいて特に制限は無く用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルまたはイソプロパノール、第三級ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、安息香酸メチル等のエステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等、炭酸ジメチルのカーボネート類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の窒素化合物などが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、ノルマルまたはイソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、炭酸ジメチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリルが好ましく用いられ、アセトンおよびアセトニトリルが特に好ましい。 貧溶媒としては特に限定されるものではなく、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素;エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等のノルボルネン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタンが好ましく用いられ、ジエチルエーテルが特に好ましい。 良溶媒と貧溶媒の使用割合は任意であり、沈殿物を溶解する良溶媒の量は多すぎると結晶が析出しないため、良溶媒は多すぎない方が好ましい。一方貧溶媒は多すぎると十分な結晶成長ができないため、適度な量が必要である。従って、良溶媒/貧溶媒は容量比で0.001〜1000が好ましく、より好ましくは0.01〜100の範囲である。 従来知られている方法では、タングステンペルオキシド化合物以外にも不純物が生成し、顕微鏡などを用いて結晶形態を観察しながらの振り分けが必要だったため、工業的には製造が難しく、また収率も低かった。また、従来法ではハロゲンを含む原料を用いていたため、エポキシ化合物にハロゲンが含有するという工業的に使用が限られた触媒であった。 本発明の方法よりタングステンペルオキシド化合物を高い収率で容易に製造することができ、得られるタングステンペルオキシド化合物はハロゲンを含まないため、エポキシ化触媒として使用することにより、低ハロゲンの製品を容易に製造することができる。 本発明の方法により、例えば、(R1R2R3R4N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(R1R2R3HN)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(R1R2H2N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(R1H3N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(H4N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]などのタングステンペルオキシド化合物を製造することができるが、これらの化合物に限定されるものではない。なお、化学式中のμは架橋原子を表す。 本発明にかかるタングステンペルオキシド化合物は、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオンや四級アルキルアンモニウムカチオン等のカチオンを保有することができる。中でも四級アルキルアンモニウムカチオンが好ましい。不飽和結合化合物のエポキシ化反応において高い触媒活性を有するためである。 本発明の方法より製造されたタングステンペルオキシド化合物は、アルケンのエポキシ化反応の触媒として好適に用いられる。 以下に、本発明の方法より製造された触媒を用いたアルケンのエポキシ化反応について説明する。 アルケンのエポキシ化反応は、タングステンペルオキシド触媒の存在下に、アルケンと酸化剤を接触させることにより行われる。 本発明においてエポキシ化反応に用いるアルケンは特に限定されず、非環式であっても環式であっても使用可能である。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1,3−ブタジエン、イソプレン、イソブテン、ジイソブチレン、プロピレンのトリマー、テトラマー類、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の末端オレフィン、2−ブテン、2−オクテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン等の分子内オレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−メチル−1−シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロデカトリエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンシクロプロパン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、テトラヒドロインデン、インデン、4−ビニル−1−シクロへセン等の脂環式オレフィン、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、フェランドレン等のテルペン類が挙げられる。また、アルケンは様々な官能基を有していても良い。官能基の例としては、−CHO、−COOH、−CN、−COOR、−OR(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を表す。)が挙げられる。また、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボニル基、水酸基等の官能基を有していても良い。これらのアルケンのうち、脂肪族炭化水素を用いることが好ましく、中でも、本発明に係る触媒はシクロヘキセン環のエポキシドのような易加水分解性のアルケンのエポキシ化に対して使用可能であるため、脂環式オレフィン化合物がより好ましい。さらに好ましくはテトラヒドロインデンが挙げられる。また、オレフィン部位は、化合物中に1つでも2つでも任意に用いることができる。 エポキシ化反応の酸化剤は、過酸化物であれば特に限定は無く任意であるが、過酸化水素が好ましい。また、その濃度は任意であるが、安全面や効率の観点から10%〜70%の過酸化水素水が好ましい。過酸化水素とアルケンの比率は任意であるが、アルケンのオレフィンのモル数に対する過酸化水素のモル数の比が、0.1〜10の範囲が好ましい。 また、過酸化水素は最初から反応に必要な量を入れても構わないし逐次で投入しても構わない。 タングステンペルオキシド触媒の量は、アルケンのオレフィン量に対して、0.01mol%〜1000mol%の任意の量で使用することができる。より好ましくは、0.05mol%〜100mol%である。 エポキシ化反応は、水溶性有機化合物中で行なっても良く、また非水溶性有機化合物との二相系、またはこれらの混合物でも反応を行うことができる。使用可能な有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルまたはイソプロパノール、第三級ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、安息香酸メチル等のエステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等、炭酸ジメチルのカーボネート類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の窒素化合物;リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素;エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等のノルボルネン化合物等が挙げられる。 前記溶媒の中でも、炭素数1〜4のアルコール類、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、インダン、インデン、ヒドリンダン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、炭酸ジメチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等や、これらの混合物を用いることが好ましい。 また、上記化合物と水の混合物も使用可能であるし、溶媒を用いないでニートでの反応も行うことができる。 また、エポキシ化反応には相関移動触媒や界面活性剤を使用することも可能である。これらは任意の化合物であるが、より好ましくは、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロミド、メチルトリオクチルハイドロゲンサルフェートなどが挙げられる。 エポキシ化反応は、反応温度としては0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは10℃以上80℃以下である。反応時間は1分以上400時間以下が好ましい。より好ましくは60分以上300時間以下である。反応圧力は、任意であるが、20気圧以下が好ましく、より好ましくは10気圧以下であり、減圧下で反応を行うこともできる。 本発明の方法で得られるタングステンペルオキシド触媒はこれまでにエポキシ化が難しかった反応において、エポキシ化合物の収率を著しく向上することができるため、工業的に有用なエポキシ化合物を製造することが可能となる。 また、エポキシ化合物を原料とした工業製品では、含有ハロゲンが原因で寿命の劣化や故障することがあり、ハロゲンの低減が望まれている。本発明の方法で得られるタングステンペルオキシド触媒はハロゲンを含まないため、低ハロゲンのエポキシ化合物を容易に製造することができるため、この問題を解決できる。 したがって、本発明の方法で得られるエポキシ化合物に含まれるハロゲン含有量は通常100質量ppm以下であり、さらに蒸留等の精製方法を用いることにより、ハロゲン含有量を10質量ppm以下とすることが出来る。 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されることはない。(実施例1) タングステン酸1gを30%過酸化水素水10ml中で1時間半撹拌し、白色の懸濁溶液(A)を得た。この懸濁溶液(A)に水酸化テトラブチルアンモニウム1M水溶液4mlを加え薄黄色の懸濁溶液(B)を得た。これをmembrane cellulose acetateで不溶分をろ過し、ろ液を2mlに濃縮した。この溶液をジエチルエーテル/イソプロピルアルコール(150ml/20ml)溶液に滴下したところ淡黄色粉末(C)が生成した。粉末(C)をろ別し、ジエチルエーテルで洗ったところ、白色粉末(D)1.4gが得られた。 白色粉末(D)0.5gをアセトンに溶解させた後、この溶液をスクリュー管に入れ、ジエチルエーテルをゆっくりと積層させた。これを冷蔵庫で1日静置させたところ、板状結晶(E)0.37gが得られた。(D)に対する(E)の収率は75%、オーバーオール収率は52%であった。この結晶(E)を回収し、IRで測定したところ[(n−C4H9)4N]2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを確認した。触媒合成の収率比較を表1に示す。(実施例2) タングステン酸1gを30%過酸化水素水10ml中で1時間半撹拌し、白色の懸濁溶液(A)を得た。この懸濁溶液(A)に水酸化テトラブチルアンモニウム1M水溶液4mlを加え薄黄色の懸濁溶液(B)を得た。これをmembrane cellulose acetateで不溶分をろ過し、ろ液を2mlに濃縮した。この溶液をジエチルエーテル/イソプロピルアルコール(150ml/20ml)溶液に滴下したところ淡黄色粉末(C)が生成した。粉末(C)をろ別し、ジエチルエーテルで洗ったところ、白色粉末(D)1.4gが得られた。 白色粉末(D)16.9mgをアセトンに溶解させた後、この溶液をスクリュー管小(型番No.1容量4ml)に入れ、ジエチルエーテルを加えたスクリュー管(型番No.6 容量30ml)にスクリュー管小ごと加え蓋をして冷蔵庫で静置した。22日間放置したところ、板状結晶(F)が10.7mg得られた。(D)に対する(F)の収率は63%、オーバーオール収率は43%であった。この結晶(F)を回収し、IRで測定したところ[(n−C4H9)4N]2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを確認した。触媒合成の収率比較を表1に示す。(実施例3) 実施例1で得られた結晶(E)を用いてテトラヒドロインデン(以下、THIと記す。)のエポキシ化反応を行った。試験管中でTHI(1mmol)をアセトニトリル5mlに溶解し、30%過酸化水素水を2当量加え、その後触媒を5mol%加えた。反応装置は東京理科器械株式会社のChemiStationを用いて撹拌数800rpm、293Kで反応を行った。8h反応後にガスクロマトグラフィー(GC)を用いて定量すると、THI転化率67.8%、モノエポキシド収率25.2%、ジエポキシド収率13.8%となった。216h反応後ではTHI転化率94.7%、モノエポキシド収率23.9%、ジエポキシド収率65.7%となった。エポキシド収率比較を表2に示す。(実施例4) 実施例2で得られた結晶(F)を用いてTHIのエポキシ化反応を行った。試験管中でTHI(1mmol)をアセトニトリル5mlに溶解し、30%過酸化水素水を2当量加え、その後触媒を5mol%加えた。反応装置は東京理科器械株式会社のChemiStationを用いて撹拌数800rpm、293Kで反応を行った。8h反応後にGCを用いて定量すると、THI転化率66.2%、モノエポキシド収率25.0%、ジエポキシド収率12.5%となった。120h反応後ではTHI転化率87.4%、モノエポキシド収率33.0%、ジエポキシド収率45.1%となった。エポキシド収率比較を表2に示す。(比較例1) 触媒は非特許文献1に従い合成を行った。タングステン酸6gを30%過酸化水素水中で50℃で1時間撹拌した。塩化テトラブチルアンモニウム3.3gを加えた後、不溶分をろ過し、純水とジエチルエーテルで洗浄したところ、3.5gの薄黄色の粉末(G)を得た。粉末(G)1.5gをアセトンに溶解し、ジエチルエーテルを積層させ1週間静置することで板状結晶と粒状結晶を得た。両方が混ざった結晶を顕微鏡で見ながら板状結晶(H)のみをピンセットを用いて振り分けたところ0.2g回収することができた。(G)に対する(H)の収率は12%、オーバーオール収率は3.5%であった。この結晶(H)をIRで測定したところ[(n−C4H9)4N]2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを確認した。触媒合成の収率比較を表1に示す。(比較例2) 結晶(H)を用いた以外は、実施例3と同様に反応を行った。8h反応後にGCを用いて定量すると、THI転化率55.4%、モノエポキシド収率30.2%、ジエポキシド収率12.0%であった。292h反応後では、THI転化率98.4%、モノエポキシド収率12.8%、ジエポキシド収率60.9%であった。エポキシド収率比較を表2に示す。 本発明の方法により、従来知られている方法と比較してはるかに高い収率で容易にタングステンペルオキシド化合物が得られ、これを触媒とするエポキシ化反応により、これまでにエポキシ化が難しかったエポキシ化合物を高収率で製造できるため、工業的にきわめて有用である。 (a)タングステン酸および(b)(H4N)(OH)、(H3R1N)(OH)、(H2R1R2)(OH)、(HR1R2R3N)(OH)および(R1R2R3R4N)(OH)から選ばれる水酸化アンモニウム化合物を反応させることを特徴とするタングステンペルオキシド化合物の製造方法。(R1〜R4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、炭素数が1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、またはベンジル基を示し、それらは窒素や酸素を含んでいても良い。) 前記(b)が(R1R2R3R4N)(OH)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。 前記(b)が[(R1)4N](OH)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。 前記(b)が[(n−C4H9)4N](OH)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。 生成したタングステンペルオキシド化合物を貧溶媒および良溶媒の積層で精製することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。 生成したタングステンペルオキシド化合物を貧溶媒および良溶媒の蒸気拡散で精製することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。 貧溶媒がジエチルエーテルであることを特徴とする請求項5または6に記載の製造方法。 良溶媒がアセトンまたはアセトニトリルであることを特徴とする請求項5または6に記載の製造方法。 製造されるタングステンペルオキシド化合物が、(R1R2R3R4N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(R1R2R3HN)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(R1R2H2N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、(R1H3N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]、または(H4N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。 製造されるタングステンペルオキシド化合物が、(R1R2R3R4N)2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。 製造されるタングステンペルオキシド化合物が、[(R1)4N]2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。 製造されるタングステンペルオキシド化合物が、[(n−C4H9)4N]2[{WO(O2)2}2(μ−O)]であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。 請求項1〜12のいずれかの方法で製造されたタングステンペルオキシド化合物を触媒として用いて、過酸化水素を酸化剤とするオレフィンのエポキシ化反応を行うことを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。 オレフィンが脂環式オレフィンであることを特徴とする請求項13に記載のエポキシ化合物の製造方法。 脂環式オレフィンがテトラヒドロインデンであることを特徴とする請求項14に記載のエポキシ化合物の製造方法。 【課題】アルケンのエポキシ化の触媒として有用なタングステンペルオキシド化合物の新規製造方法を提供する。また該触媒を用いたエポキシ化合物の製造方法を提供する。【解決手段】(a)タングステン酸および(b)(H4N)(OH)、(H3R1N)(OH)、(H2R1R2)(OH)、(HR1R2R3N)(OH)および(R1R2R3R4N)(OH)から選ばれる水酸化アンモニウム化合物を反応させることを特徴とするタングステンペルオキシド化合物の製造方法。(R1〜R4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、炭素数が1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、またはベンジル基を示し、それらは窒素や酸素を含んでいても良い。)【選択図】なし


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