タイトル: | 公開特許公報(A)_ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する新規タンパク質、そのDNA、及びそれらの利用 |
出願番号: | 2012050444 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,A61K 39/02,A61P 31/04,A61K 48/00,C07K 14/46 |
堤 信幸 藤野 美由紀 鎌田 崇 JP 2013183673 公開特許公報(A) 20130919 2012050444 20120307 ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する新規タンパク質、そのDNA、及びそれらの利用 一般財団法人日本生物科学研究所 000173865 廣田 浩一 100107515 流 良広 100107733 松田 奈緒子 100115347 堤 信幸 藤野 美由紀 鎌田 崇 C12N 15/09 20060101AFI20130827BHJP C12N 1/15 20060101ALI20130827BHJP C12N 1/19 20060101ALI20130827BHJP C12N 1/21 20060101ALI20130827BHJP C12N 5/10 20060101ALI20130827BHJP A61K 39/02 20060101ALI20130827BHJP A61P 31/04 20060101ALI20130827BHJP A61K 48/00 20060101ALI20130827BHJP C07K 14/46 20060101ALN20130827BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 101A61K39/02A61P31/04 171A61K48/00C07K14/46 10 1 OL 25 4B024 4B065 4C084 4C085 4H045 4B024AA01 4B024AA10 4B024BA31 4B024CA20 4B024DA06 4B024EA04 4B024GA11 4B024GA19 4B065AA26X 4B065AA38Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA02 4B065BD14 4B065CA24 4B065CA43 4B065CA45 4C084AA13 4C084MA52 4C084MA66 4C084NA14 4C084ZB05 4C084ZB09 4C084ZB35 4C084ZC65 4C085AA03 4C085BA26 4C085BB11 4C085CC21 4C085DD62 4C085EE01 4C085GG01 4C085GG08 4H045AA11 4H045BA09 4H045CA11 4H045DA86 4H045EA05 4H045EA31 4H045FA73 4H045FA74 本発明は、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する新規タンパク質、該タンパク質をコードする新規DNA、該DNAを有する組換えベクター、及び該組換えベクターを含有する形質転換体、並びに、前記新規タンパク質、前記新規DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかを含有する魚類用ワクチンに関する。 近年、水産資源保護などの観点から魚類の養殖の必要性がますます高くなっている。そのため魚類は、高密度で養殖されることが多く、飼育される環境の悪化が進み、細菌感染症が多発する傾向がある。これらの中でも、養殖のハマチ、ブリ、カンパチなどにおいてはノカルジア症の被害が問題となっている。 ノカルジア症は、ノカルジア属に属する細菌を原因菌とする感染症であり、ノカルジア症に感染した魚体は、外観上、体外上部に小隆起が生じ、魚体を開くと、内臓各部に白色の粟粒結節が認められる。症状の進行に伴い、腫瘍内部の膿が増大し、潰瘍となり、死に至ることがある感染症である(例えば、非特許文献1参照)。その感染速度も非常に速いものであり、重大な問題となっている。 魚類の細菌感染症への対応策として、抗生物質や合成抗菌剤が使用されているが、これらの薬剤は、耐性菌の出願や細菌の多剤耐性菌化によって効力を失うことがあり、また養殖魚肉中に抗菌剤が残存するため、安全性の面で問題である。 この問題に対し、広範囲にわたる魚病原因菌への抗菌作用を有し、魚介類に適用して魚病の予防及び治療をすることができる甘草抽出物由来の魚病原因菌に対する抗菌剤(特許文献1参照)や、魚類表面又は内部に付着乃至繁殖する細菌類の駆除を目的とした、有機酸を主成分とする魚類の病原性細菌類の駆除剤(特許文献2参照)などが提案されている。 しかし、これらの抗菌剤や駆除剤は、相当長期間の連続投薬を行わなければ効果が期待できず、経済的理由などから使用されておらず、養殖現場においては、病死魚の除去処分、収容尾数の分散、栄養の改善などの消極的処置しかとられていないのが現状である。 したがって、ハマチやブリなどの魚類の養殖におけるノカルジア症に対して優れた予防作用を有し、安全性の高い新たな魚類用ワクチンの提供が強く望まれている。特開2004−292385号公報特開2007−254463号公報狩谷 貞治ら, 魚病研究, 1968.7, 3(1), p.16〜23 本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ハマチやブリなどの魚類の養殖におけるノカルジア症の原因菌であるノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する新規タンパク質、該タンパク質をコードする新規DNA、該DNAを有する組換えベクター、及び該組換えベクターを含有する形質転換体、並びに、前記新規タンパク質、前記新規DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかを含有し、ノカルジア属の細菌に対して優れた予防作用を有する安全性の高い魚類用ワクチンを提供することを目的とする。 本発明において、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、 <1> ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有することを特徴とする下記(A)から(F)のいずれかに記載のタンパク質である。 (A)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、 (B)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質、 (C)前記(A)及び(B)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質、 (D)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、 (E)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質、 (F)前記(D)及び(E)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質。 <2> (E)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質が、配列番号:6及び配列番号:8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するタンパク質である前記<1>に記載のタンパク質である。 <3> ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有することを特徴とする下記(a)から(k)のいずれかに記載のDNAである。 (a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (c)前記(a)及び(b)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (d)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (e)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (f)前記(d)及び(e)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (g)配列番号:3で表される塩基配列を有するDNA、 (h)配列番号:3で表される塩基配列の部分配列を有するDNA、 (i)配列番号:4で表される塩基配列を有するDNA、 (j)配列番号:4で表される塩基配列の部分配列を有するDNA、 (k)前記(a)から(j)のいずれかのDNA及び前記DNAの相補鎖のいずれかとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。 <4> (j)配列番号:4で表される塩基配列の部分配列が、配列番号:5及び配列番号:7のいずれかで表される塩基配列を有するDNAである前記<3>に記載のDNAである。 <5> 前記<3>から<4>のいずれかに記載のDNAを有することを特徴とする組換えベクターである。 <6> 前記<5>に記載の組換えベクターにより形質転換されたことを特徴とする形質転換体である。 <7> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のタンパク質を含有することを特徴とする魚類用ワクチンである。 <8> 前記<3>から<4>のいずれかに記載のDNAを含有することを特徴とする魚類用ワクチンである。 <9> 前記<5>に記載の組換えベクターを含有することを特徴とする魚類用ワクチンである。 <10> 前記<6>に記載の形質転換体を含有することを特徴とする魚類用ワクチンである。 <11> 前記<7>から<10>のいずれかに記載の魚類用ワクチンにより誘導されることを特徴とする抗体である。 <12> 前記<11>に記載の抗体を含有することを特徴とする医薬組成物である。 本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ハマチやブリなどの魚類の養殖におけるノカルジア症の原因菌であるノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する新規タンパク質、該タンパク質をコードする新規DNA、該DNAを有する組換えベクター、及び該組換えベクターを含有する形質転換体、並びに、前記新規タンパク質、前記新規DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかを含有し、ノカルジア属の細菌に対して優れた予防作用を有する安全性の高い魚類用ワクチンを提供することができる。図1は、試験例1においてノカルジア属細菌による攻撃後の各日数における生存率の結果を示す図である。縦軸:生存率(%)、横軸:攻撃後の日数(日)。(ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質) 本発明の新規タンパク質は、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質である。前記タンパク質には、下記(A)から(F)のいずれかに記載のタンパク質が含まれる。 (A)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、(B)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質、(C)前記(A)及び(B)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質、(D)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、(E)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質、(F)前記(D)及び(E)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質。 (A)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質は、配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよく、(B)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質は、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるタンパク質であってもよく、(C)前記(A)及び(B)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質は、前記(A)及び(B)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよく、(D)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質は、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよく、(E)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質は、配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるタンパク質であってもよく、(F)前記(D)及び(E)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質は、前記(D)及び(E)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。 本発明において、「アミノ酸配列の部分配列」とは、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 前記(B)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質又は前記(E)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質の部分配列としては、80アミノ酸残基〜180アミノ酸残基が好ましく、90アミノ酸残基〜173アミノ酸残基がより好ましい。 これらの中でも、前記(E)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列は、配列番号:2で表されるアミノ酸配列の、第27番目のアミノ酸残基から第199番目のアミノ酸残基、又は、第110番目のアミノ酸残基から第199番目のアミノ酸残基を有することが好ましく、配列番号:6で表されるアミノ酸配列又は配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有することが更に好ましく、配列番号:6で表されるアミノ酸配列又は配列番号:8で表されるアミノ酸配列からなることが特に好ましい。 本発明において、「数個のアミノ酸」とは、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、アミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加される領域としては、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 なお、前記タンパク質は、前記(A)から(F)のいずれかに記載のタンパク質におけるアミノ酸配列と配列同一性を有するものであってもよい。 前記配列同一性としては、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。 前記アミノ酸配列の同一性は、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:p.2264−2268, 1990、及びProc. Natl. Acad. Sci. USA 90:p.5873−5877, 1993参照)により決定することができる。このようなアルゴリズムを用いたBLASTプログラムがAltschulらによって開発されている(J. Mol. Biol. 215:p.403−410, 1990参照)。これらは、例えば、NCBIタンパク質データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)で利用することができる。 前記アミノ酸配列の同一性を分析するBLASTプログラムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、blastpプログラムが挙げられる。前記プログラムを用いて配列同一性を分析のする際のパラメーターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デフォルト値を用いることができる。<アミノ酸配列の決定> 前記タンパク質のアミノ酸配列を決定する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、プロテインシーケンサー(例えば、株式会社島津製作所製)を用いて決定する方法、塩基配列から遺伝情報処理ソフトウェア(例えば、Genetyx(登録商標)−MAC、株式会社ゼネティックス製)を用いて決定する方法などが挙げられる。<製造方法> 前記タンパク質の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ノカルジア属の細菌の培養物から製造する方法(以下、「第1の形態」と称することがある。)、後述する本発明の形質転換体を用いて製造する方法(以下、「第2の形態」と称することがある。)などが挙げられる。<<第1の形態>> 前記タンパク質の製造方法の第1の形態は、前記ノカルジア属の細菌を培養する工程(培養工程)と、前記培養物から前記タンパク質を採取する工程(採取工程)とを少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。−培養工程− 前記培養工程は、前記ノカルジア属の細菌を培養する工程である。 前記ノカルジア属の細菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ノカルジア・セリオレ(Nocardia seriolae)、ノカルジア アステロイデス(N.asteroides)、ノカルジア ガーデニー(N.gardnei)、ノカルジア カンパチ(N.Kampachi)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ノカルジア属の細菌は、ノカルジア・セリオレが好ましい。 前記ノカルジア属の細菌を入手する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、野外から採取した魚類の皮下組織、筋肉、鰓、鰓蓋、内臓器官等の魚体内外から分離する方法などが挙げられる。また、前記ノカルジア属の細菌は、市販品を用いてもよく、各種微生物の保存機関などから入手したものを用いてもよい。 前記市販品の具体的な例としては、ATCC、各県の水産試験場などが挙げられる。前記保存機関から入手可能な前記ノカルジア属の細菌としては、例えば、ATCC43993などが挙げられる。なお、前記ノカルジア属の細菌は、前記入手後、数回継代培養したものを用いてもよい。 前記分離したノカルジア属の細菌は、例えば、後述する形態的、生化学的特徴や、遺伝学的特徴によりノカルジア属の細菌であることを同定することができる。 前記培養方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振盪培養法、静置培養法などが挙げられる。これらの中でも、前記ノカルジア属の細菌は好気性菌である観点から、振盪培養法が好ましい。 前記培養に用いる培地としては、特に制限はなく、公知の栄養培地の中から適宜選択することができる。前記培地は、液体培地であってもよく、寒天培地であってもよいが、液体培地が、前記タンパク質を多く製造できる点で好ましい。 前記栄養培地に添加する栄養源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、窒素源、炭素源、血清などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 前記窒素源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販されている大豆粉、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、硫酸アンモニウムなどが挙げられる。 前記炭素源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トマトペースト、グリセリン、でん粉、グルコース、ガラクトース、デキストリン等の炭水化物や脂肪などが挙げられる。 前記血清としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウシ胎児血清(BSA)、ブタ血清などが挙げられる。 更に、前記窒素源、前記炭素源、前記血清以外にも、食塩、炭酸カルシウム等の無機塩を培地に添加することもでき、その他必要に応じて微量の金属塩を培地に添加することもできる。 これらの材料は、前記ノカルジア属の細菌が利用し得るものであればよく、公知の培養材料は全て用いることができる。 前記培地が無機塩を含有する場合、その塩濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0質量%〜4.5質量%が好ましく、0質量%〜0.5質量%がより好ましい。前記塩濃度が4.5質量%を超えると、前記ノカルジア属の細菌が十分に増殖せず、前記タンパク質を得ることができないことがある。 前記公知の栄養培地の具体的な例としては、小川培地、サブロー(SABOURAUD)培地、ベネット(BENNETT’S)培地、サウトン(SAUTON)培地、デュボス(DUBOS)培地、キルヒナー(KIRCHINER)培地、ハートインフュージョン(Heart Infusion)培地、TSB(トリプケースソイブロス)培地、PPLO(マイコプラズマ寒天基礎)培地、LB(ルリア−ベルターニ)培地などが挙げられる。 前記培養の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10℃〜37℃が好ましく、30℃〜20℃がより好ましく、23℃〜27℃が更に好ましい。前記温度が、10℃未満又は37℃を超えると、前記ノカルジア属の細菌が十分に増殖せず、前記タンパク質を得ることができないことがある。一方、前記温度が前記更に好ましい範囲であると、前記ノカルジア属の細菌が好適に増殖することができ、前記タンパク質を効率よく製造できる点で有利である。 前記培養の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、12時間〜120時間が好ましく、18時間〜96時間がより好ましい。前記培養の時間が12時間未満であると、前記ノカルジア属の細菌が十分に増殖せず、前記タンパク質を得ることができないことがあり、120時間を超えると、菌体量が増えすぎて菌が死滅してしまうことがあり製造効率が悪くなることや、製造された前記タンパク質が分解されてしまうことがある。一方、前記培養の時間が前記より好ましい範囲であると、前記タンパク質を効率よく製造できる点で有利である。−−形態的、生化学的特徴−− 前記ノカルジア属の細菌の一般的な菌体的性状は、以下のとおりである。 前記ノカルジア属の細菌は、魚類の患部から常法により採取し、3質量%小川培地に接種し、25℃で培養すると、4日間〜5日間後にコロニーが出現し、約2週間培養後では、淡黄色〜橙黄色に変化をする、いぼ状に隆起した緻密な固いコロニーを形成する。コロニー出現初期は、表面平滑で周辺は円形を画くが、成長するにつれて表面にはしわが生じ、周辺は、鋸歯状となる。このコロニーを小川培地を用いて再分離培養し、純粋培養すると、分枝した糸状となる。気中菌糸を有し、非運動性である。長期培養した菌体においては、長桿状、短桿状、球状などの形態が認められる多形態である。液体培地で培養すると、液面上層によく成育する好気性菌である。ZIEHL−NEELSEN染色で弱抗酸性を示し、グラム陽性である。その他の菌体学的特徴は、狩谷 貞治ら, 魚病研究, 1968.7, 3(1), p.16〜23に詳しく説明されている。 また、前記ノカルジア属の細菌は、PCR法などにより遺伝学的特徴を調べることで同定することができる。前記遺伝学的特徴としては、例えば、前記ノカルジア属の細菌がノカルジア・セリオレである場合、DDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp/)に登録されているノカルジア・セリオレの16SリボソームRNA遺伝子であるJF834066、JF834067、JF834068、JF834069との相同性が95%以上のものなどが挙げられる。−採取工程− 前記採取工程は、前記培養工程で得られた培養物からノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質を採取する工程である。 前記採取の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記タンパク質が、菌体内又は菌体表面に生産された場合は、培養物から菌体を分離し、その菌体を超音波破砕等の公知の処理をすることにより、前記タンパク質を採取することができる。また、例えば、前記タンパク質が、培養液中に生産された場合は、遠心分離やろ過等により菌体を除去することにより、前記タンパク質を採取することができる。 採取した前記タンパク質は、更に精製することが好ましい。前記精製の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫安分画法、各種クロマトグラフィー法、アルコール沈殿法、限外ろ過法などが挙げられる。−その他の工程− 前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記タンパク質を保存するために凍結乾燥する工程、前記タンパク質の濃度を上げるために濃縮する工程などが挙げられる。<<第2の形態>> 本発明のノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質の製造方法の第2の形態は、後述する本発明の形質転換体を培養する工程(培養工程)と、前記培養物から前記タンパク質を採取する工程(採取工程)とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。−培養工程− 前記培養工程は、後述する本発明の形質転換体を培養する工程である。 前記培養方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振盪培養法、静置培養法などが挙げられる。 前記形質転換体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピキア パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母や、大腸菌などが挙げられる。 前記培養に用いる培地としては、特に制限はなく、公知の栄養培地の中から適宜選択することができる。前記培地は、液体培地であってもよく、寒天培地であってもよいが、液体培地が、前記タンパク質を多く製造できる点で好ましく、また用いる形質転換体に応じて適宜選択することがより好ましい。 例えば、前記形質転換体として、組換えベクター中の発現制御配列がアルコール酸化酵素プロモータであるピキア パストリスを用いる場合、前記培地としては、例えば、酵母エキスと、ペプトンと、メタノールとを含む培地を用いることが好ましい。 また、例えば、形質転換体として、組換えベクター中の発現制御配列がGAL1プロモータであるサッカロミセス セルビシエ用いる場合、前記培地としては、例えば、ラフィノースを炭素源とする液体最少培地を前培養の培地として用い、その後の培養の培地としては、ガラクトース及びラフィノースを炭素源とする液体最少培地を用いることが好ましい。 また、例えば、形質転換体として、組換えベクター中の発現制御配列がlac(ラクトース)プロモータである大腸菌を用いる場合、前記培地としては、例えば、IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)を含有する液体培地を用いることが好ましい。 前記培養の温度及び時間としても、特に制限はなく、用いる形質転換体に応じて適宜選択することができる。−採取工程− 前記採取工程は、前記培養工程で得られた培養物からノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質を採取する工程である。 前記採取の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記タンパク質が、菌体内又は菌体表面に生産された場合は、培養物から菌体を分離し、その菌体を超音波破砕などの公知の処理をすることにより、前記タンパク質を採取することができる。また、例えば、前記タンパク質が、培養液中に生産された場合は、遠心分離やろ過等により菌体を除去することにより、前記タンパク質を採取することができる。 採取した前記タンパク質は、更に精製することが好ましい。前記精製の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫安分画、各種クロマトグラフィー、アルコール沈殿、限外ろ過などの方法が挙げられ、また、前記ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質に精製用のタグ配列が付加してある場合には、付加されたタグに対応する精製の方法を用いることもできる。 前記付加されたタグに対応する精製の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、付加されたタグが、ヒスチジン6残基の配列の場合、ニッケルカラムを用いた精製の方法を用いることができる。−その他の工程− 前記その他の工程としては、本発明の効果を害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記第1の形態に記載した工程などが挙げられる。<用途> 本発明の新規タンパク質は、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するため、後述する魚類用ワクチンに好適に用いることができる。 また、前記新規タンパク質は、ノカルジア症に対して優れた予防作用を有し、投与対象の免疫を賦活化することができ、投与対象に投与後、該投与対象の体内で抗体産生を誘導することができるため、予防組成物、免疫原性組成物、免疫賦活化組成物、ワクチン組成物などとしても好適に用いることができる。これらの予防組成物、免疫原性組成物、免疫賦活化組成物、ワクチン組成物には、後述する本発明の新規DNAが含まれていてもよい。 なお、本発明の新規タンパク質は、ノカルジア属の細菌において、病原性を発現するアミノ酸配列を含まないため、安全性が高い点で有利である。(ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するDNA) 本発明の新規DNAは、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するDNAである。 (a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、(b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質をコードするDNA、(c)前記(a)及び(b)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、(d)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、(e)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質をコードするDNA、(f)前記(d)及び(e)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、(g)配列番号:3で表される塩基配列を有するDNA、(h)配列番号:3で表される塩基配列の部分配列を有するDNA、(i)配列番号:4で表される塩基配列を有するDNA、(j)配列番号:4で表される塩基配列の部分配列を有するDNA、(k)前記(a)から(j)のいずれかのDNA及び前記DNAの相補鎖のいずれかとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。 (a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAは、配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであってもよく、(b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質をコードするDNAは、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるタンパク質をコードするDNAであってもよく、(c)前記(a)及び(b)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAは、前記(a)及び(b)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであってもよく、(d)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであってもよく、(e)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質をコードするDNAは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるタンパク質をコードするDNAであってもよく、(f)前記(d)及び(e)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAは、前記(d)及び(e)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであってもよく、(g)配列番号:3で表される塩基配列を有するDNAは、配列番号:3で表される塩基配列からなるDNAであってもよく、(h)配列番号:3で表される塩基配列の部分配列を有するDNAは、配列番号:3で表される塩基配列の部分配列からなるDNAであってもよく、(i)配列番号:4で表される塩基配列を有するDNAは、配列番号:4で表される塩基配列からなるDNAであってもよく、(j)配列番号:4で表される塩基配列の部分配列を有するDNAは、配列番号:4で表される塩基配列の部分配列からなるDNAであってもよい。 本発明において、「塩基配列の部分配列」とは、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 前記(h)配列番号:3で表される塩基配列の部分配列を有するDNA又は前記(j)配列番号:4で表される塩基配列の部分配列を有するDNAの部分配列としては、250塩基〜600塩基が好ましく、271塩基〜520塩基がより好ましい。 これらの中でも、前記(j)配列番号:4で表される塩基配列の部分配列を有するDNAは、配列番号:4で表される塩基配列の、第78番目の塩基から第598番目の塩基、又は、第327番目の塩基から第598番目の塩基を有することが好ましく、配列番号:5で表されるDNA配列又は配列番号:7で表されるDNA配列を有することが更に好ましく、配列番号:5で表されるDNA配列又は配列番号:7で表されるDNA配列からなることが特に好ましい。 なお、本発明のノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質をコードするDNAは、前記(a)から(k)のいずれかに記載のDNAと配列同一性を有するものであってもよい。 前記塩基配列の同一性としては、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。 前記塩基配列の同一性は、前記アミノ酸配列の同一性と同様にして決定することができる。前記塩基配列の同一性を分析するプログラムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、blastnプログラムが挙げられる。前記プログラムを用いて配列同一性を分析する際のパラメーターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デフォルト値を用いることができる。<製造方法> 前記DNAの調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイブリダイゼーション技術(Southern,EM.,J Mol Biol,1975,98,503.参照)を用いる方法、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki,RK.et al., Science, 1985, 230, p.1350、Saiki,RK.et al., Science, 1988, 239, p.487参照)を用いる方法、前記DNAに対し、site−directed mutagenesis法(Kramer,W.&Fritz,HJ., Methods Enzymol, 1987, 154, p.350参照)により変異を導入する方法、合成する方法などが挙げられる。 なお、自然界においても、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは起こり得ることである。一方、塩基配列が変異していても、その変異がタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わない場合もある。本発明の前記DNAには、このような人工的に調製されたDNA、又は天然の変異DNAが含まれる。 前記DNAの形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲノムDNA、cDNA、化学合成DNAなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 前記ゲノムDNAの調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ノカルジア症に感染した魚類等の本発明の前記タンパク質の遺伝子を有する生物からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリーを作製し、これを展開して、前記(a)から(k)のいずれかに記載のDNA、ゲノム上のその近傍の塩基配列などを基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製する方法などが挙げられる。 また、前記(a)から(k)のいずれかに記載のDNA、ゲノム上のその近傍の塩基配列などに特異的なプライマーを作製し、これを利用したPCRを行うことによって調製することもできる。 前記ゲノミックライブラリーに用いるベクターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC(大腸菌人工染色体)、PAC(P1ファージ由来人工染色体)などが挙げられる。 前記cDNAの調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ノカルジア症に感染した魚類などから抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製し、これを展開して、前記(a)から(k)のいずれかに記載のDNAの情報を基に作製したプローブやプライマーを用いて、コロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、また、PCRを行うことにより調製する方法などが挙げられる。 このように、ハイブリダイゼーション技術やPCR技術によって単離し得る、前記(a)から(k)のいずれかに記載のDNAもまた、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質をコードしている限り、本発明のDNAに含まれる。 前記ハイブリダイゼーション技術を用いる場合の反応条件としては、前記DNAを単離することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ストリンジェントな条件が好ましい。 前記ストリンジェントな条件としては、一般的なハイブリダイズ条件をいい、通常のPCRにおけるアニーリング条件下で、鋳型となる標的核酸にハイブリダイズし、プライマーとして機能する条件、又は、標的核酸とプローブとのハイブリダイズにより検出可能な電圧や電流に変化を及ぼす条件をいう。 前記一般的なハイブリダイズ条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナトリウム濃度が、25mM〜500mMが好ましく、25mM〜300mMがより好ましい。また、温度が、42℃〜68℃が好ましく、42〜65℃がより好ましい。このようなハイブリダイズ条件の具体的な例としては、5×SSC(83mM塩化ナトリウム、83mMクエン酸ナトリウム)、温度42℃などが挙げられる。 本発明において、「ハイブリダイズ」とは、一本鎖DNAやRNAの間で、互いに相補的な塩基配列を利用して人工的に二本鎖の雑種核酸分子を形成することをいう。 こうして単離されたDNAは、前記(a)から(k)のいずれかに記載のDNAと高い配列同一性を有すると考えられる。 高い配列同一性とは、塩基配列全体で、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。 このような塩基配列は、本発明の前記タンパク質と実質的に同等の活性を有するタンパク質をコードしていると考えられる。 なお、前記塩基配列の配列同一性や、コードするタンパク質のアミノ酸配列の配列同一性を示すようなDNAは、前記ようにハイブリダイゼーションを指標に得ることもできるが、ゲノム塩基配列解析等によって得られた機能未知のDNA群や公共データベースの中から、例えば、前述のBLASTプログラムを用いた検索により発見することも容易である。このような検索は、本技術分野の研究者が通常用いている方法である。 このようにして得られたDNAが、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質をコードしていることは、後述する適当なベクターに組み込み、適当な宿主を形質転換し、形質転換体を培養し、得られたタンパク質について、前記アミノ酸配列の決定などの方法を用いることにより確認することができる。<用途> 本発明の新規DNAは、ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するため、後述する魚類用ワクチンに好適に用いることができる。 また、前記新規DNAは、ノカルジア症に対して優れた予防作用を有し、投与対象の免疫を賦活化することができ、投与対象に投与後、該投与対象の体内で抗体産生を誘導することができるため、予防組成物、免疫原性組成物、免疫賦活化組成物、ワクチン組成物などとしても好適に用いることができる。これらの予防組成物、免疫原性組成物、免疫賦活化組成物、ワクチン組成物には、本発明の前記新規タンパク質が含まれていてもよい。 なお、本発明の新規DNAは、ノカルジア属の細菌において、病原性を発現する塩基配列を含まないため、安全性が高い点で有利である。<ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用の確認> 前記タンパク質又は前記DNAが、ノカルジア属の細菌による感染症に対して予防作用を有するか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、魚類を用いた攻撃試験、投与対象個体の血中抗体量を測定する方法などが挙げられる。 前記魚類を用いた攻撃試験について、ノカルジア症を具体例として説明する。通常、魚類をノカルジア・セリオレで攻撃するとノカルジア症に感染し、これにより攻撃後の魚類の生存率が低下する。一方、前記薬理組成物を魚類に投与すると、免疫力が高まり、ノカルジア・セリオレの攻撃に耐え、生存率は低下しない。したがって、この生存率により予防作用を確認することができる。(組換えベクター) 本発明の組換えベクターは、本発明の前記DNAを少なくとも含有し、必要に応じて、更にその他のDNAを含有する。 前記ベクターとしては、宿主中で複製可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 前記ベクターの具体的な例としては、酵母由来のプラスミド、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、λファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス等の動物ウイルス、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクターなどが挙げられる。 また、前記ベクターは、本発明の前記DNAを発現可能な発現ベクターであることが好ましい。 前記その他のDNAとしては、本発明の効果を害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マーカー遺伝子、制御配列、精製用配列などが挙げられる。 前記マーカー遺伝子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、URA3、niaD等のように宿主の栄養要求性を相補する遺伝子、アンピシリン、カナマイシン等の薬剤に対する抵抗遺伝子などが挙げられる。 前記制御配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロモータ配列、エンハンサー配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列などが挙げられる。前記プロモータ配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、天然状態において本発明のDNAの発現を制御している固有のプロモータ以外のプロモータも用いることができる。 前記精製用配列としては、例えば、ヒスチジンをコードする塩基配列などが挙げられる。 本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明の前記DNAや、必要に応じて、更にその他のDNAを連結(挿入)することにより得ることができる。 ベクターに前記DNAを挿入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが挙げられる。<用途> 本発明の組換えベクターは、本発明の前記ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するDNAを含むため、後述する魚類用ワクチンに好適に用いることができる。(形質転換体) 本発明の形質転換体は、本発明のベクター(発現ベクター)を宿主中に導入することにより得ることができる。 前記宿主としては、本発明のノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質を発現しうるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピキア パストリス、サッカロミセス セレビシエ、シゾサッカロミセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属に属する細菌、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞、Sf9等の昆虫細胞などが挙げられる。 前記ベクターを宿主中に導入する方法としては、特に制限はなく、前記宿主細胞の種類やベクターの大きさなどに応じて適宜選択することができる。 酵母へ組換えベクターを導入する方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法などが挙げられる。 細菌へ組換えベクターを導入する方法としては、例えば、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。 動物細胞へ組換えベクターを導入する方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法などが挙げられる。 昆虫細胞へ組換えベクターを導入する方法としては、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。 本発明の組換えベクターが宿主に導入されたか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法などが挙げられる。 前記PCR法としては、例えば、形質転換体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行い、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動などを行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、組換えベクターが宿主に導入されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。更に、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認することもできる。<用途> 前記形質転換体は、本発明の前記ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質の製造に用いることができ、得られたノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有するタンパク質は、後述する魚類用ワクチンに好適に用いることができる。(魚類用ワクチン) 本発明の魚類用ワクチンは、前記ノカルジア症への魚類の感染を予防するためのワクチンであり、本発明の前記タンパク質、前記DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかを含有し、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。 本発明の前記タンパク質、前記DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかは、前記各項目に記載したとおりである。本発明の前記タンパク質、前記DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかを含むワクチンを魚類に予防的に投与することにより、魚類体内に前記ノカルジア属の細菌に対する免疫を付与することができ、ノカルジア症を予防することができると考えられる。即ち、前記タンパク質、前記DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかは、前記魚類用ワクチンの有効成分となり得る。 前記魚類用ワクチンにおける、前記DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記魚類用ワクチンは、前記DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかそのものであってもよい。<その他の成分> 前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体などが挙げられる。 前記医薬的に許容され得る担体としては、特に制限はなく、例えば、後述する本発明の医薬の項目に記載されるような各種担体などが挙げられる。また、ビタミンEアセテート可溶化液、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、(鉱物)油エマルジョン、非イオン性界面活性剤、スクワレン、サポニン等のアジュバントを含んでいてもよい。 前記魚類用ワクチン中の、前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。<剤型> 前魚類用ワクチンの剤型としては、特に制限はなく、後述する所望の投与方法等に応じて適宜選択することができ、例えば、経口固形剤、経口液剤、注射剤などが挙げられる。−経口固形剤− 前記経口固形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などが挙げられる。 前記経口固形剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記有効成分に、賦形剤、更に必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造する方法などが挙げられる。 前記賦形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸などが挙げられる。 前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。 前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などが挙げられる。 前記滑沢剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。 前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。 前記矯味・矯臭剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。−経口液剤− 前記経口液剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内服液剤、混餌剤などが挙げられる。 前記経口液剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を加え、常法により製造する方法などが挙げられる。−注射剤− 前記注射剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤などが挙げられる。 前記注射剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造する方法などが挙げられる。 前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。 前記安定化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。 前記等張化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。<投与> 前記魚類用ワクチンの投与対象としては、魚類であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブリ、ハマチ、カンパチ、ヒラマサ等のブリ属に属する魚類、ヒラメ、マダイ、カワハギ、金魚、鯉などが挙げられる。 前記魚類用ワクチンの投与方法としては、特に制限はなく、前記魚類用ワクチンの剤型等に応じて適宜選択することができ、例えば、経口投与法、腹腔内投与法、鰓に投与する方法などが挙げられる。前記投与方法が、経口投与法である場合、前記魚類用ワクチンを、魚類を飼育する水槽等に溶かし、魚類を該水槽に浸漬して投与してもよく、餌に混合して投与してもよい。 前記魚類用ワクチンの投与量、投与回数、投与時期としては、特に制限はなく、投与対象である魚類の年齢、体重、症状、投与方法、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。<使用> 前記魚類用ワクチンは、1種単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併用されてもよい。また、前記魚類用ワクチンは、他の成分を有効成分とする医薬中に配合された状態で使用されてもよい。<用途> 前述のとおり、前記魚類用ワクチンは、前記DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかを含有するため、該魚類用ワクチンを魚類に投与することにより、魚類の体内に前記ノカルジア属の細菌に対する抗体を産生させることができ、その後のノカルジア症の発症を防ぐことができると考えられる。即ち、前記魚類用ワクチンは、ノカルジア症の魚類への感染を予防するための魚類への投与(予防接種)に好適に利用可能である。 なお、前記魚類用ワクチンを魚類に投与することを含む、ノカルジア症への魚類の感染を予防するための予防接種方法も、本発明の範囲内に含まれる。 また、前記魚類用ワクチンの投与により産生された抗体及び該抗体を含有する医薬組成物は、ノカルジア症の治療に好適に用いることができる。前記抗体及び前記医薬組成物も本発明の範囲内に含まれる。 前記医薬組成物としては、前記抗体を含んでいれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。必要に応じて、更にその他の成分を含有していてもよい。 前記医薬組成物における前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体などが挙げられる。前記医薬的に許容され得る担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、水、澱粉などが挙げられる。 前記医薬組成物における前記その他の成分としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記医薬組成物は、前記抗体そのものであってもよい。 以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。<ノカルジア・セリオレの分離> 大分県産の約3kgのブリの鰓の結節を1質量%小川寒天培地(組成:リン酸2水素カリウム3.2g/L、グルタミン酸ナトリウム3.2g/L、蒸留水320mL/L、全卵液641mL/L、グリセリン19mL/L、2%マラカイトグリーン19mL/L)に接種し、25℃で4日間〜5日間培養することにより、ノカルジア・セリオレを分離した。以下、この分離株を「分離株1」と称することがある。 分離株1を1質量%小川培地で25℃にて5日間培養し、単一のコロニーから同様の方法で6回の継代培養を繰り返し、7代目のコロニーを得た。以下、前記7代目のクローンを「NS001株」と称することがある。−染色試験− NS001株を用いて塗抹標本を作製した。この塗抹標本をグラム染色した。その結果、グラム陽性の糸状菌が観察された。−性状試験− NS001株を1質量%小川培地で25℃にて培養した。培養開始から4日後にコロニーが出現し、2週間後に淡黄色〜橙黄色のいぼ状の緻密な固いコロニーが形成された。−PCR分析− Miyoshi and Suzuki, Fish Pathology, 2003, Vol.38, pp.93−97に従い、NS−1プライマー及びNG−1プライマーを用いてPCRを行った。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロマイドを用いて可視化した。その結果、目的の大きさに単一のバンドが認められた。 これらの菌体学的特徴より、NS001株は、ノカルジア・セリオレであることが同定された。(製造例1:DNA及びタンパク質の製造)<NS001DNAの調製> NS001株をLB培地(組成:イーストエクストラクト5mg/mL、トリプトン10mg/mL、塩化ナトリウム10g/mL)で25℃にて4日間培養し、8,000rpmで30分間遠心分離することにより菌体を回収した。上清を除去し、菌体に20質量%塩化リゾチーム液を添加し、菌体を再浮遊させ、37℃で72時間反応させた。 反応後、フェノール・クロロホルム抽出法により定法に従いDNA抽出を行い、TEバッファー(組成:10mMトリス塩酸、1mM EDTA)に溶解した。抽出したDNAをRNase(東洋紡績株式会社製)で処理し、NS001DNAを調製した。 NS001DNA50μgを用い、制限酵素Sau3AI(東洋紡績株式会社製)で37℃、約20分間反応させた後、定法に従いフェノール・クロロホルム処理により酵素反応を停止した。 なお、塩化リゾチーム液は、塩化リゾチーム粉末(キューピー株式会社製)を20質量%になるよう精製水で溶解することで調製した。<プラスミドベクターの調製> プラスミドpGEM−3zf(+)(アプライドバイオシステムズ社製)1μgを用い、制限酵素BamHI(東洋紡績株式会社製)で37℃にて一晩反応させた後、定法に従いフェノール・クロロホルム処理により酵素反応を停止した。制限酵素消化後のpGEM−3zf(+)にアルカリフォスファターゼ(タカラバイオ株式会社製)を添加し、定法に従BAP処理を行い、プラスミドベクターを調製した。<発現ベクターの調製> 前記酵素消化したNS001DNAと、前記プラスミドベクターとを、T4 DNAリガーゼを含むライゲーションキット(タカラバイオ株式会社製)を用いて、4℃にて一晩ライゲーションさせ、発現ベクターを調製した。<形質転換体の調製> 大腸菌(JM109)に、前記発現ベクター0.15μgを添加し、氷上で30分間静置し、次いで42℃にて1分間静置し、再び氷上に3分間静置した。これを40mg/mLのアンピシリン(SIGMA社製)を含むLB培地(以下、「LB−Amp(+)」と称することがある。)に懸濁し、LB−Amp(+)の寒天培地に播種後、37℃にて一晩培養した。 滅菌済みのメンブレン(ミリポア社製)を10mM IPTG(タカラバイオ株式会社製)を含む2×YT液体培地(組成:トリプシン16mg/mL、イーストエクストラクト10mg/mL、塩化ナトリウム5mg/mL)に浸し乾燥させた。このメンブレンを、前記培養後のコロニーの生えた寒天培地に重ねて転写した後、該メンブレンを新しいLB−Amp(+)寒天培地に移し、37℃で4時間培養した。このメンブレンをクロロホルムで15分間処理し、lysis buffer(組成:100mMトリス塩酸、150mM塩化ナトリウム、5mM塩化マグネシウム、1.5質量%ウシ胎児血清(BSA))に入れ、室温(25℃)で一晩振盪した。次いで、メンブレンを5質量%スキムミルク液(BD社製)でブロッキングした後、500培に希釈した抗NSニワトリ血清(抗NSニワトリ血清の調製方法は、下記に示す。)に浸し1時間反応させた。メンブレンをTNT buffer(組成:10mMトリス塩酸、150mM塩化ナトリウム、0.05質量%Tween20)で洗浄後、2,000倍に希釈したHRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)標識抗ニワトリIgGヤギ血清(インビトロジェン株式会社製)に浸し、1時間反応させた。次いで、4クロロ1ナフトール発色液(シグマ社製)で20分間反応させた。発色した抗NSニワトリ血清陽性のコロニーから2株を釣菌した。以下、「クローン1」及び「クローン2」と称することがある。−抗NSニワトリ血清の調製− PBS(組成:塩化ナトリウム8g/L、塩化カリウム0.2g/L、リン酸水素二ナトリウム1.44g/L、リン酸水素二カリウム0.24g/L(pH7.0))に懸濁したNS001株を湿菌量で2mg/mL用い、これに前記湿菌量と等量のFCA(フロインドの完全アジュバント:和光純薬工業株式会社製)を添加してエマルジョン化し、22Gの注射針でニワトリ(雄雌混在、6週齢)の頸部後ろに、1羽当たり0.5mL皮下接種した。 PBSに懸濁したNS001株を湿菌量で2mg/mL用い、これに前記湿菌量と等量のFIA(フロインドの不完全アジュバント:和光純薬工業株式会社製)を添加してエマルジョン化し、ブースターを調製した。 このブースターを、最初のNS001株及びFCAの接種から3週後及び5週間後に、前記ニワトリの頸部後ろに、1羽当たり1mL皮下接種した。 2回目のブースターの接種から1週後に、前記ニワトリの翼から、1羽当たり10mL〜12mLの血液を採血し、37℃にて一晩凝血させ、血清を浸出させた。これを2,500rpmで10分間遠心分離し、上清を回収した。回収した上清を56℃にて30分間非働化し、−80℃で保存した。 クローン1及びクローン2をそれぞれLB−Amp(+)液体培地で37℃にて一晩培養後、15,000rpmで2分間遠心分離することにより回収し、1mM IPTGを含むLB培地に再浮遊した。これを37℃にて3時間振盪培養し、菌体を15,000rpmで2分間遠心分離することにより回収した。回収した菌体に超音波破砕を施すことにより菌体からタンパク質を抽出し、この超音波破砕を15,000rpmで30分間遠心分離することによりタンパク質を回収した。以下、クローン1より得られたタンパク質を「タンパク質1」、クローン2より得られたタンパク質を「タンパク質2」と称することがある。<タンパク質1及びタンパク質2のDNA塩基配列解析> クローン1由来のタンパク質1及びクローン2由来のタンパク質2の塩基配列は、以下の方法で解析した。 クローン1及び2から常法に従ってプラスミドを抽出し、下記に示すプライマー(配列番号:9〜20)を用いてサイクルシーケンス反応を行った。サイクルシーケンス反応は、98℃で2分間の反応後、98℃で10秒間、及び60℃で4分間を30サイクル行った。得られた反応物をそれぞれエタノール沈殿により精製した後、ABI PRISM(登録商標) 310 Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムズ社製)により塩基配列を決定した。 これにより、クローン1のDNA塩基配列は、配列番号:3で表される塩基配列からなり、クローン2のDNA塩基配列は、配列番号:4で表される塩基配列からなることがわかった。−プライマー配列− 5’−GTAAAACGACGGCCAGT−3’ (配列番号:9) 5’−GGAAACAGCTATGACCATG−3’ (配列番号:10) 5’−TCGCCATCGTGGTGTCGATGT−3’ (配列番号:11) 5’−TGTCGCATTGTCATATCG−3’ (配列番号:12) 5’−GACCAGTTTTCTCGGTTTGAT−3’ (配列番号:13) 5’−AGGTTCGCTGGGCAGGGC−3’ (配列番号:14) 5’−GGCGATATGACAATGCGA−3’ (配列番号:15) 5’−CTCACGGTTTCGAGTATCGCT−3’ (配列番号:16) 5’−GATCAGGTTGCCGTCCTTGGT−3’ (配列番号:17) 5’−GACGTCCTTGTCCTTGACCTC−3’ (配列番号:18) 5’−GCGGCAAGGACGTCAAGG−3’ (配列番号:19) 5’−TCCATGAAGATGGTGACG−3’ (配列番号:20)<タンパク質1及びタンパク質2のアミノ酸配列解析> 配列番号:3で表される塩基配列及び配列番号:4で表される塩基配列から、遺伝情報処理ソフトウェア(Genetyx(登録商標)−MAC、株式会社ゼネティックス製)によりアミノ酸配列を推定した。 これにより、タンパク質1のアミノ酸配列は、配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなり、タンパク質2のアミノ酸配列は、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなることがわかった。(製造例2:ワクチン1の製造) クローン1をLB−Amp(+)液体培地で37℃にて一晩培養後、8,000rpmで30分間遠心分離することにより回収し、1mM IPTGを含むLB培地に再浮遊した。これを37℃にて3時間振盪培養し、菌体を8,000rpmで30分間遠心分離することにより回収した。菌体をPBSに再浮遊後、超音波破砕を施し、12,000rpmで30分間遠心分離し、沈殿物を回収した。 クローン1由来の配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質1は、0.3質量%ホルマリンを含むPBSに再浮遊し、0.3質量%のホルマリン(30%ホルムアルデヒド水溶液)を含むPBSにより、OD630における濁度が約1.5になるように調製し、タンパク質1由来のワクチンを得た。以下、タンパク質1由来のワクチンを「ワクチン1」と称することがある。 なお、ワクチン1(OD630における濁度が約1.5)をSDS−PAGEで泳動し、CBB(Coomassie Brilliant Blue)染色によりバンドを視覚化し、画像解析により、ワクチン1に含まれる総タンパク質に占める該タンパク質の比率を明らかにした。DCプロテインアッセイキット(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)で測定した総タンパク質量より算出した該タンパク質濃度は、37.6μg/mLであった。(製造例3:ワクチン2の製造) 製造例2のワクチン1の製造において、クローン1に代えて、クローン2を用い、クローン2由来の配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質2を得たこと以外は、ワクチン1の製造と同様の方法で、タンパク質2由来のワクチン2を製造した。 なお、ワクチン1と同様の方法で測定したワクチン2の該タンパク質濃度は、109.3μg/mLであった。(製造例4:ワクチン3の製造) クローン2由来の配列番号:4で表される塩基配列を鋳型として、下記に示す配列番号:21で表されるプライマー配列及び配列番号:22で表されるプライマー配列を用いてPCR反応を行い、配列番号:5で表される塩基配列を増幅した。サイクルシーケンス反応は、98℃で2分間の反応後、98℃で10秒間、及び60℃で4分間を30サイクル行った。得られた反応物をエタノール沈殿により精製した。−プライマー配列− 5’−cggaattcGATCAGGTTGCCGTCCTT−3’ (配列番号:21) 5’−cggagctcGGATCCGTTCATGCACGGAC−3’ (配列番号:22) ただし、前記配列番号:21で表されるプライマー配列及び前記配列番号:22で表されるプライマー配列において、小文字は制限酵素サイトを表す。 精製した反応物を用いて、制限酵素EcoRI及びSacIにより37℃で一晩酵素消化を行った。次いで、この酵素消化物とプラスミドpET21a(メルク社製)とを用いて、製造例1と同様の方法でT4 DNAリガーゼを含むライゲーションキットにより発現ベクターを調製した。次いで、製造例1と同様の方法で形質転換体を調製した。この形質転換体を、以下、「クローン3」と称することがある。 製造例2のワクチン1の製造において、クローン1に代えて、クローン3を用い、クローン3由来の配列番号:6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質3を得たこと以外は、ワクチン1の製造と同様の方法で、タンパク質3由来のワクチン3を製造した。 なお、ワクチン1と同様の方法で測定したワクチン3の該タンパク質濃度は、91.7μg/mLであった。(製造例5:ワクチン4の製造) クローン2由来の配列番号:4で表される塩基配列を鋳型として、下記に示す配列番号:23で表されるプライマー配列及び前記配列番号:22で表されるプライマー配列を用いてサイクルシーケンス反応を行い、配列番号:7で表される塩基配列を増幅した。サイクルシーケンス反応は、98℃で2分間の反応後、98℃で10秒間、及び60℃で4分間を30サイクル行った。得られた反応物をエタノール沈殿により精製した。−プライマー配列− 5’−cggaattcGACGTCCTTGTCCTTGAC−3’ (配列番号:23) ただし、前記配列番号:23で表されるプライマー配列において、小文字は制限酵素サイトを表す。 精製した反応物を用いて、制限酵素EcoRI及びSacIにより37℃で一晩酵素消化を行った。次いで、この酵素消化物とプラスミドpET21a(メルク社製)とを用いて、製造例1と同様の方法でT4 DNAリガーゼを含むライゲーションキットにより発現ベクターを調製した。次いで、製造例1と同様の方法で形質転換体を調製した。この形質転換体を、以下、「クローン4」と称することがある。 製造例2のワクチン1の製造において、クローン1に代えて、クローン4を用い、クローン4由来の配列番号:8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質4を得たこと以外は、ワクチン1の製造と同様の方法で、タンパク質4由来のワクチン4を製造した。 なお、ワクチン1と同様の方法で測定したワクチン4の該タンパク質濃度は、80.9μg/mLであった。(試験例1:ノカルジア属の細菌に対するワクチン効果の検討)<安全性試験> 製造例2〜5で製造したワクチン1〜4を、ブリ(ニッスイ人工種苗、体重約67g)腹腔内に0.1mL投与し、エアレーションをした循環式水槽(200L容、水温度25℃±1℃)に入れ、14日間飼育した。 ワクチン1を投与した群を「ワクチン1投与群」(n=10)、ワクチン2を投与した群を「ワクチン2投与群」(n=30)、ワクチン3を投与した群を「ワクチン3投与群」(n=20)、ワクチン4を投与した群を「ワクチン4投与群」(n=20)とそれぞれ称する。 また、対照として、ブリ(ニッスイ人工種苗、体重約67g、n=50)にワクチンを投与することなく、ワクチン1投与群などと同様の条件で飼育したものを「対照群」とした。 なお、各群は、循環式水槽に(200L容)に対して10匹ずつ入れて試験を実施した。 対照群及び各投与群について、飼育期間中、投与部位、体色、摂餌、及び遊泳を観察したところ、ワクチン1投与群、ワクチン2投与群、ワクチン3投与群、及びワクチン4投与群は、対照群と同様であり、異常を示した個体は認められなかった。これより、ワクチン1〜4は、安全性が高いことがわかった。<攻撃試験> 攻撃用菌体としては、NS001株を、LB培地を用いて25℃で96時間培養した菌体を用いた。 前記安全性試験終了後(ワクチン投与から14日目)に、対照群及び各投与群に、前記攻撃用菌体を1尾当たり0.1mg投与することにより攻撃した。攻撃後、更に14日間前記安全性試験と同様の条件で飼育し、観察した。 攻撃0日目〜14日目の各日数における生存率(%)を次式により算出した結果を表1及び図1に示す。 生存率(%)=(各日数における各群の生存尾数/試験に用いた各群の尾数)×100 表1及び図1の結果より、ワクチン1〜4はそれぞれ、ノカルジア症に対して優れた予防作用を有し、ワクチンとして好適に使用できることがわかった。 本発明の新規タンパク質、該タンパク質をコードする新規DNA、該DNAを有する組換えベクター、及び該組換えベクターを含有する形質転換体は、ハマチやブリなどの魚類の養殖におけるノカルジア症による感染症に対する予防作用を有するため、本発明の魚類用ワクチンに好適に利用可能である。 また、本発明の魚類用ワクチンは、ノカルジア症に対して優れた予防作用を有し、安全性が高いため、ハマチやブリなどの魚類の養殖に好適に利用可能である。 ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有することを特徴とする下記(A)から(F)のいずれかに記載のタンパク質。 (A)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、 (B)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質、 (C)前記(A)及び(B)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質、 (D)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、 (E)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質、 (F)前記(D)及び(E)のいずれかのタンパク質において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質。 (E)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質が、配列番号:6及び配列番号:8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するタンパク質である請求項1に記載のタンパク質。 ノカルジア属の細菌による感染症に対する予防作用を有することを特徴とする下記(a)から(k)のいずれかに記載のDNA。 (a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (c)前記(a)及び(b)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (d)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (e)配列番号:2で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (f)前記(d)及び(e)のいずれかのDNAにおいて、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、 (g)配列番号:3で表される塩基配列を有するDNA、 (h)配列番号:3で表される塩基配列の部分配列を有するDNA、 (i)配列番号:4で表される塩基配列を有するDNA、 (j)配列番号:4で表される塩基配列の部分配列を有するDNA、 (k)前記(a)から(j)のいずれかのDNA及び前記DNAの相補鎖のいずれかとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。 (j)配列番号:4で表される塩基配列の部分配列が、配列番号:5及び配列番号:7のいずれかで表される塩基配列を有するDNAである請求項3に記載のDNA。 請求項3から4のいずれかに記載のDNAを有することを特徴とする組換えベクター。 請求項5に記載の組換えベクターにより形質転換されたことを特徴とする形質転換体。 請求項1から2のいずれかに記載のタンパク質を含有することを特徴とする魚類用ワクチン。 請求項3から4のいずれかに記載のDNAを含有することを特徴とする魚類用ワクチン。 請求項5に記載の組換えベクターを含有することを特徴とする魚類用ワクチン。 請求項6に記載の形質転換体を含有することを特徴とする魚類用ワクチン。 【課題】ハマチやブリなどの魚類の養殖におけるノカルジア症による感染症に対する予防作用を有する安全性の高い魚類用ワクチンを提供する。【解決手段】Nocardiaseriolae由来の、特定のアミノ酸配列、又はこれらの部分配列、若しくはこれらのアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列、これらのアミノ酸配列の部分配列、を有するタンパク質。該タンパク質をコードする新規DNA、該DNAを有する組換えベクター、及び該組換えベクターを含有する形質転換体、並びに、前記新規タンパク質、前記新規DNA、前記組換えベクター、及び前記形質転換体の少なくともいずれかを含有し、ノカルジア症に対して優れた予防作用を有する安全性の高い魚類用ワクチン。【選択図】図1配列表