タイトル: | 公開特許公報(A)_鉄バクテリアによる金属イオンの除去方法および装置 |
出願番号: | 2012049763 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C02F 3/34,B09C 1/02,B09C 1/08,B09B 3/00,G21F 9/18,G21F 9/28,C12N 1/20 |
門上 洋一 JP 2013169546 公開特許公報(A) 20130902 2012049763 20120217 鉄バクテリアによる金属イオンの除去方法および装置 谷洋工業株式会社 512178477 門上 洋一 C02F 3/34 20060101AFI20130806BHJP B09C 1/02 20060101ALI20130806BHJP B09C 1/08 20060101ALI20130806BHJP B09B 3/00 20060101ALI20130806BHJP G21F 9/18 20060101ALI20130806BHJP G21F 9/28 20060101ALI20130806BHJP C12N 1/20 20060101ALN20130806BHJP JPC02F3/34 ZB09B3/00 304KB09B3/00 304JG21F9/18G21F9/28 ZG21F9/28 521AC12N1/20 A 10 3 書面 11 4B065 4D004 4D040 4B065AA01X 4B065AC20 4B065BA22 4B065BB02 4B065CA56 4D004AA32 4D004AA33 4D004AA41 4D004AB03 4D004AB09 4D004CA40 4D004DA03 4D004DA10 4D040DD05 4D040DD20 本発明は、鉄バクテリアによって、金属イオンを含む汚水を浄化する方法およびその装置に関する。 鉄バクテリアは2価の鉄イオンを酸化してエネルギーを獲得出来る一群のバクテリアを言う。発明者は、青函トンネルの作業抗のうち、最深部(海底から100メートル、水面から240メートル)付近の壁に開いた排水口付近に繁茂するバクテリアを見出し、鉄バクテリアの一種と同定した。 青函トンネルは海底にあるため、常時海水および淡水が湧水しており、そのままでは浸水してしまう。このため、トンネルの壁に排水口を設け、湧水を作業抗の排水溝に受け、北海道側の吉岡および青森県側の竜飛に集め、ポンプで排出している。排水口は数メートルおきに設置しているが、湧水が壁からしみ出している箇所も多い。このような排水口から排水溝にかけて、淡黄色もしくは黒色のマット様のスラリーがトンネル内の各所に形成されており、特に最深部に多く見られる。スラリーは、水の流れに沿って形成されており、排出口付近では厚さ数センチから10センチメートルに及ぶ。海水と淡水が混合しているため、塩分濃度は2.5%である。 スラリーを回収し、光学顕微鏡で観察すると、スラリーのほとんどが糸状のものであり、一見植物的であった。しかし、高倍率にすると、単独あるいは数珠繋がりの細胞も観察された。rRNA(リボゾームRNA)を抽出して高等植物およびバクテリアのrRNAと大きさを比較すると、バクテリアと同型であった。さらに、走査電子顕微鏡で詳細に観察すると、糸状のものは網状の筒として観察され、ケイ素、および鉄もしくはマンガンで構成されていることが判明した。グラム染色で染まらないグラム陰性であることと加え、鞘を持つ形態学的特徴とその成分から、スフェロティルス属(Sphaerotilus)、もしくはレプトスリックス属(Leptothrix)である鉄バクテリアと考えられたが、マンガンが見出されたことからマンガン酸化能も合わせ持つレプトスリックス属であると特定された。しかしながら、レプトスリックス属は淡水で生育するものがほとんどで、本バクテリアのように、海水で生育する例の報告は無い。 これまでに、多くの鉄バクテリアの知見があるが、レプトスリックス属のうち、鞘直径が約1μm、長さ20〜100μmであること、富栄養あるいは貧栄養条件下ともに生育が遅いこと、鞘の分岐が見られないことなどからレプトスリックス・オクラセア(Leptothrix ochracea)の海水性の新種であると思われる。 近代文明では多くの金属を工業的原料として用いている。重金属は半導体製造、電池製造には欠かせないが、生産途中での排水、製品の廃棄に伴う処理途中の排水には多く含まれ、環境の汚染を引き起こしており、環境中から除去する効率的な方法の確立が望まれている。 また、原子力発電所が先般のように災害によって破壊され、半減期の長い放射性物質(例えばセシウム−137)が環境中に飛散し、大規模な汚染を引き起こす事態があった。これらの汚染も例えばゼオライトのような無機物に吸着させ、除去する方法が一般に採られているが、吸着ゼオライトの容積、重量が膨大になり、より効率よく濃縮する技術が望まれている。さらに、汚染物質が広範囲の土壌を汚染しており、大量の土壌をいかに除染するかが解決すべき問題であった。 本発明の目的は、水溶液中あるいは土壌中に結合している金属イオンを、鉄バクテリアによって除去する方法、およびその装置を提供することである。 本発明者は、上記目的の達成に鋭意研究を重ねた結果、鉄バクテリアを貧栄養条件下で金属イオンに暴露することにより、金属イオンを吸着代謝することを突き止め、上記の問題を解決できるとの知見を得た。 本発明は、この知見に基づいて、1.鉄バクテリアを、金属カチオンを含む汚水に曝して鉄バクテリアに吸着除去することを特徴とする、金属浄化方法および装置、2.鉄バクテリアが、鞘を持ち、固体表面にスラリーを形成する形態的特徴を持ち、水溶液中で金属カチオンの種類を問わず、吸収し、酸化することでエネルギーを獲得し、酸化した金属を鞘表面に固定化する種類、好ましくはレプトスリックス属であることを特徴とする、1に記載の金属浄化方法および装置、3.鉄バクテリアが、水溶液中に含まれる放射性セシウム(セシウムー137)を吸収し、鞘表面に固定化することで、放射性物質で汚染された水溶液を浄化することを特徴とする、1および2に記載の、金属浄化方法および装置、4.金属カチオン、もしくは放射性セシウムを含む汚水を、1〜24時間、好ましくは12時間、直接鉄バクテリアと混合、撹拌し、汚水中から金属カチオン、もしくは放射性セシウムを除去することを特徴とする、1〜3のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置、5.金属カチオン、もしくは放射性セシウムを含む汚水を、鉄バクテリアを固定化した担体表面に薄く流すことで、汚水から金属カチオン、もしくは放射性セシウムを連続的に吸収させることを特徴とする、1〜3のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置、6.鉄バクテリアを多孔性素材に着床させ、金属カチオン、もしくは放射性セシウムを含む汚水に入れ、汚水から金属カチオン、もしくは放射性セシウムを一定時間接触させることで除去することを特徴とする、1〜3のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置、7.多孔性素材が、発泡性ポリウレタン、あるいは親水性のポリビニールアルコールを母体とし、気孔を生成させたものであり、軽く、かつバクテリアを多く保持できる多孔性であることを特徴とする、1〜3および6のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置、8.岩石、砂粒、土壌、あるいは粘土、もしくはセメントに結合した金属カチオン、もしくは放射性セシウムを、リン酸イオン0.5〜5mM、好ましくは1mMを含む水溶液中に溶出し、1〜7のそれぞれに記載の方法もしくは装置によって、汚水から金属カチオン、もしくは放射性セシウムを除去することを特徴とする、1〜7のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置、9.汚水を処理した鉄バクテリアの鞘を、自重で自然沈殿させる、もしくは遠心分離することで回収することを特徴とする、1〜4、および8のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置、10.汚水を処理した鉄バクテリアの鞘を、掻き取ることで回収することを特徴とする、1〜3、および5のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置。11.汚水を処理した鉄バクテリアを着床させた多孔性素材を、乾燥し水分を蒸発させた後、加熱溶融することで固体化し、回収することを特徴とする、1〜3、および6〜8のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置、12.金属カチオン、もしくは放射性セシウムを含む汚水を4〜5もしくは8に記載の方法で処理し、引き続き鉄イオンを含む水溶液を鉄バクテリアに与え、鞘を磁性化し、磁石で回収することを特徴とする、1〜6および8のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置、を提供する。 本発明者は、鉄バクテリアを培養し、単一なバクテリアとして増殖させ、同定を行なったが、鉄バクテリアの特殊な性質に着目し、様々な種類の金属イオンに対してどのように反応するかの検討を行なった。(実験1)[鉄バクテリアの培養] 青函トンネルから採取されたバクテリアは、寒天培養を行ない単一のバクテリアとした。寒天培地は、富栄養条件のポリペプトン0.25g、イーストエキストラクト0.25g、ブドウ糖0.25g、硫酸マグネシウム・7水和物0.60g、塩化カルシウム・2水和物0.07g、塩化ナトリウム16gを1Lの純水に溶かし、水酸化ナトリウムを滴下しpH7.6にしたものに寒天12gを入れ、オートクレーブで15分間加熱加圧滅菌した。これに別に滅菌した10mLの0.03g/Lの硫酸鉄溶液、0.5mLの0.1g/Lのモリブデン酸ナトリウム、および25μLの250g/Lビタミンミックス(ビタミンB1、B2、B6、およびB12、およびナイアシン、パントテン酸カルシウム、ビオチン、葉酸、イノシトール、メチルヘスペリジンを含む)を加え、常温で固化したものを用いた。これに採取したバクテリアを白金耳で広げ、単一コロニーを25℃で4日間培養し形成させた。 形成された単一コロニーは、白金線で採り、300mL三角フラスコ中の寒天培地から寒天を除いた培養液100mLに植え、スターラー(撹拌機)で撹拌しながら、25℃で4日間培養した。鉄バクテリアのコロニーは鉄を与えているため、茶褐色になり、他に混合されている黴等とは区別が出来た。以下の実験では単一コロニーを増殖させた菌液を用いた。 一方、培養液に鉄の代わりにマンガン(塩化マンガン)を与えた場合でも同様に増殖した。この際にはコロニーは濃い褐色となり、鉄を与えた場合と異なる色合いになった。このことより、マンガンも利用出来るバクテリアであることが判った。 青函トンネルに生育し回収された鉄バクテリアは、99.5%の割合で純粋存在し、他の雑菌(ほとんどが黴であった)は少ないことが判った。(実験2)[鉄バクテリアの同定] 実験1で培養された単一なコロニーから増殖させたバクテリアを用い、光学顕微鏡的な形態の観察、および走査電子顕微鏡による鞘の観察、および染色による方法により同定を行なった。 グラム染色を行なうと、陰性であったので、本バクテリアはグラム陰性菌と同定された。 形態学的な観察では、単一な細胞の他、数珠繋がりの糸状の細胞集団が見出された。走査電子顕微鏡観察では、鞘が認められ、その構成成分はケイ素および鉄であることが判った。また、マンガンで培養したバクテリアの鞘ではケイ素およびマンガンが構成成分であることが判明した。従って、鉄バクテリアのうち、Leptothrix属であり、細胞の形態および鞘の特徴からLeptothrix ochraceaの一種であると特定された。但し、本バクテリアは淡水性ではなく、海水性であり、新種の可能性がある。 実施例及び比較例 次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく、他の例又は変形は、当然本発明に包含されるものである。 [鉄イオンの除去] 塩化ナトリウム2.5%を含む培養液100mLに、硫酸第一鉄を20mg/L添加し、25℃で本バクテリア(湿重量で1g)を培養した。経時的に培養液を1mL採り、遠心分離し、上清、すなわち培養液中の鉄濃度を測定した。図1に結果をグラフで示した。培養液中の第一鉄イオン濃度は時間とともに減少し、1時間でほぼ0となった。このことにより本バクテリアは鉄イオンを効果的に消費することが判った。 [図1] [淡水での鉄イオンの除去] 本バクテリアは海水と淡水が混ざっている汽水(塩分濃度2.5%)の条件下で発見された。培養では塩分濃度を2.5%にして取り扱っていたが、金属除去として用いるためには淡水でも活性を示さなければならない。塩分濃度を変化させた時に鉄イオン除去が可能かどうかを次に検証した。塩化ナトリウムの濃度を、0%、0.25%、1%および2.5%にした培養液100mLに硫酸第一鉄を5mg/L添加し、また湿重量1gの本バクテリアを加えて、25℃で培養した。経時的に培養液を採り、遠心上清の鉄イオン濃度を測定した。結果は図2に示してある。塩分濃度が高いほど鉄の消費が速度が早いが、時間が経過すると急速に消費速度が上がり、いずれの塩濃度であってもほとんど1時間で消費することが判った。このことから、塩濃度に依存しない鉄イオン消費能力が存在することが判明した。 [図2] [他の金属イオンの除去] 環境中の様々な金属除去に、本バクテリアが利用できるかどうかを検討した。本実験では培養液を用いず、貧栄養条件にするため、純水で実験を行なった。エネルギー源として金属を有効に利用させるためである。 純水100mLに本バクテリアの湿重量1gと、5mg/Lの各金属すなわち硫酸第一鉄、塩化第一マンガン、硫酸銅、塩化コバルト・6水和物、クロム酸カリウム(六価クロム)、塩化ニッケル・6水和物、あるいは塩化カドミウムを添加し、経時的に培養液中の金属イオン濃度を測定した。結果を図3に示す。 鉄、マンガン、銅、クロムイオンは素早く消化するが、ニッケル、コバルト、カドミウムは比較的遅いなど、金属によってその消化速度は異なることが判明した。しかし、用いた金属は全て消化され、本バクテリアが金属イオン除去一般に利用出来ることが示された。 [図3] [セシウムの除去] 実施例3では様々な金属が鉄同様に本バクテリアのエネルギー源として利用されることが示されたが、アルカリ金属であるセシウムについても同様に利用できるかどうかを検証した。純水100mLに塩化セシウム10mg/Lおよび本バクテリア湿重量1gを添加し、25℃で培養した。経時的に培養液を1mL採り、遠心分離した上清および沈殿について測定を行なった。上清はそのまま、また沈殿については1mLの純水を添加加熱し、菌体を破壊しセシウムを抽出した。抽出後は再び遠心分離し、その上清について測定を行なった。測定は原子吸光度計を用いた。結果は図4に示してある。培養液中のセシウムイオンは時間とともに減少し、代わりに細胞内に吸収されて増加していくことが明白となった。すなわち、本バクテリアはセシウムイオンを消費する活性があることが示された。 [図4] [放射性セシウムの除去] 実際に放射性セシウムが本バクテリアのエネルギー源として利用出来るかどうかを、放射性物質で汚染されている地域の環境水を用いて検証を行なった。放射性物質が汚染されている地域は、福島県南相馬市内であり、ここは津波被害で炉心が露出した福島第一原子力発電所から30kmの位置にある。避難地域外ではあるが、原子力発電所から近い位置にあるため、ところどころに放射活性が高い地域が点在する。実験には汚染水が必要であったが、微量で測定できるほどの汚染水は無かったので、汚染土壌を水加え、水に放射性物質を溶出させて用いた。市内の空中放射線量は0.2〜0.4マイクロシーベルト/時(μSv/h)であったが、建屋の雨樋の真下一帯に高い放射線量(2〜4μSv/h)を示す場所があったため、30cmx30cmのエリアを深さ20cm程度掘り、全ての土壌を採取した。 採取した土壌をよく混合し、スパチュラで約5gを300mL三角フラスコに採り、純水200mLを添加しスターラーで撹拌した。懸濁液を30分間撹拌後、ピペットで懸濁液を1mLずつマイクロチューブ5本に採り、総計5mLを実験開始時の0時間試料とした。0時間試料を採取後、それぞれの三角フラスコに10mLの鉄バクテリアを添加し、室温で16時間撹拌を続けた。 放射性セシウムの測定は、線量計(アロカTGS−146B)を用い、プローブ前面1cmの距離に上清および沈殿の入ったマイクロチューブを並べ、線量を記録した。バックグラウンドは90±10cpmであった。測定結果はバックグラウンドを差引き、懸濁液200mL全体の放射線量(線量係数率:cpm)に換算して表わした。結果は図5に示してある。遠心上清は水中のセシウムの放射線量であり、沈殿はバクテリアの持つ放射線量である。図から明らかなように、上清の0時間では2000cpmであったものが、16時間後では600cpmに減少しており、一方、沈殿のバクテリア内部の放射線量は0時間の400cpmから16時間後には1600cpmに増加している。このことは、本バクテリアが水中の放射性セシウムイオンを吸収し、内部に取り込んだことを表わしている。本条件では約70%が吸収された。 しかしながら、0時間において上清と沈殿を比較すると2000cpmと400cpmであり、土壌から放射性セシウムを水のみで全量溶出することが出来なかったことを表わしている。 [図5] [土壌に結合した放射性セシウムの溶出と除去] 土壌粒は静電気的な力でセシウムイオンと結合するため、そのままでは水溶液中に溶出出来ない場合がある。特に粒子が細かい泥に含まれるセシウム(例えば水田の泥)では、水による溶出が困難である。リン酸は強い静電気力を持ち、汚染土壌懸濁液中に入れると、一価のセシウムイオンは容易にリン酸分子と結合すると思われ、土壌から剥離させる可能性が高い。これを実証するため、実施例5で示した地域の汚染土壌を用い、検証を行なった。 実施例5と同じ土壌から、スパチュラで約5gを300mL三角フラスコに採り、純水200mLおよびリン酸緩衝液を1mM添加し、スターラーで30分撹拌した。撹拌後、ピペットで懸濁液を1mLずつマイクロチューブ5本に採り、総計5mLを実験開始時の0時間試料とした。0時間試料を採取後、それぞれの三角フラスコに10mLの鉄バクテリアを添加し、室温で16時間撹拌を続けた。 測定は実施例5と同様に行なった。結果は図6に示してある。 0時間の上清と沈殿の放射線量はそれぞれ1400cpm、0cpmであった。このことはリン酸イオンによるセシウムイオンの溶出がほぼ完全に行なわれたことを表わしており、リン酸緩衝液の添加によって、土壌に結合したセシウムイオンが溶出出来ることが示された。 16時間後に上清が200cpm、沈殿が1400cpmとなり、リン酸イオンの存在下でも本バクテリアの活性に影響がないことが示された。 [図6] 発明の効果 本発明の鉄バクテリアによる金属イオンの除去方法および装置は、ほとんどの金属イオンを取り込み、エネルギー源として利用することが出来、代謝産物である金属は菌体の持つ鞘に排出され結合する。鞘からバクテリアは抜け出て、鞘だけ残ることが知られており、取り込んだ金属イオンは鞘の重い沈殿物として回収が可能である。すなわち、懸濁液は鞘の質量により素早く沈殿を作るため、自重による沈殿が容易である。さらに、鉄を一緒に取り込ませることにより、排出された鉄は磁性を帯びるため、鞘を磁石で回収することも可能である。特に放射性セシウムの除去が可能であるため、広範囲に放射性物質で汚染された地域の水系および土壌の汚染除去に安価で単純な方法として用いることが可能である。 鉄バクテリアの鉄イオンに対する活性 鉄バクテリアが鉄イオンを培養液に入れた時に消化する様子を表わしたグラフである。塩濃度を変化させた時、鉄バクテリアの鉄イオンに対する活性 培養液の塩濃度を変化させた時、鉄バクテリアが鉄を消化する様子を表わしたグラフである。様々な金属イオンを与えた時の鉄バクテリアの活性 純水中に様々な金属イオンを添加し、鉄バクテリアが消化する様子を表わしたグラフである。塩化セシウムを与えた時の鉄バクテリアの活性 純水中にセシウムイオンを添加し、鉄バクテリアが消化する様子を表わしたグラフである。放射性セシウムで汚染された水の、鉄バクテリアによる浄化を表わしたグラフである。放射性セシウムで汚染された土壌を、リン酸緩衝液で放射性セシウムを溶出させ、鉄バクテリアによる浄化を行なった結果を表わす棒グラフである。Supは遠心上清を、pptは遠心沈殿を示し、培養0時間と16時間の線量を示している。それぞれ誤差棒が記載されている。 符合の説明 [図1]横軸は時間(分)を、縦軸は鉄イオン濃度(mg/L)を示す。 [図2]横軸は時間(分)を、縦軸は鉄イオン濃度(mg/L)を示す。●:塩化ナトリウム濃度2.5%、■:塩化ナトリウム濃度1%、▲:塩化ナトリウム濃度0.5%、○:塩化ナトリウムなし、をそれぞれ表わす。 [図3] [図4]横軸は時間(時)を、縦軸はセシウムイオン濃度(mg/L)示す。●:遠心上清、○:遠心沈殿、をそれぞれ表わす。 [図5]横軸は時間(時)を、縦軸は放射線量(cpm)を表わす。Supは遠心上清を、pptは遠心沈殿を示し、培養0時間と16時間の放射線量を示している。それぞれ誤差棒が記載されている。 [図6]横軸は時間(時)を、縦軸は放射線量(cpm)を表わす。Supは遠心上清を、pptは遠心沈殿を示し、培養0時間と16時間の放射線量を示している。それぞれ誤差棒が記載されている。 鉄バクテリアを、金属カチオンを含む汚水に曝して鉄バクテリアに吸着除去することを特徴とする、金属浄化方法および装置。 鉄バクテリアが、鞘を持ち、固体表面に着床し、スラリーを形成する形態的特徴を持ち、様々な金属を酸化することでエネルギーを得、酸化金属を鞘表面に固着させる種類、好ましくはレプトスリックス属であることを特徴とする、請求項1に記載の金属浄化方法および装置。 鉄バクテリアが、水溶液中で金属カチオンの種類を問わず、吸収し、酸化することでエネルギーを獲得し、酸化した金属を鞘表面に固定化することを特徴とする、請求項1および2に記載の、金属浄化方法および装置。 鉄バクテリアが、水溶液中に含まれる放射性セシウム(セシウムー137)を吸収し、酸化することでエネルギーを獲得し、酸化したセシウムを鞘表面に固定化することで、汚染された水溶液を浄化することを特徴とする、請求項1および2に記載の、金属浄化方法および装置。 金属カチオン、もしくは放射性セシウムを含む汚水を、1〜24時間、好ましくは12時間、鉄バクテリアと混合、撹拌し、汚水中から金属カチオン、もしくは放射性セシウムを除去することを特徴とする、請求項1〜4のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置。 金属カチオン、もしくは放射性セシウムを含む汚水を、鉄バクテリアを固定化した担体表面に流すことで、汚水から金属カチオン、もしくは放射性セシウムを連続的に吸収させることを特徴とする、請求項1〜5のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置。 岩石、砂粒、土壌、あるいは粘土、もしくはセメントに結合した金属カチオン、もしくは放射性セシウムを、リン酸イオン0.5〜5mM、好ましくは1mMを含む水溶液中に溶出し、請求項1〜6のそれぞれに記載の方法もしくは装置によって、汚水から金属カチオン、もしくは放射性セシウムを除去することを特徴とする、請求項1〜6のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置。 汚水を処理した鉄バクテリアの鞘を、自重で自然沈殿させる、もしくは遠心分離することで回収することを特徴とする、請求項1〜5、および7のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置。 汚水を処理した鉄バクテリアの鞘を、掻き取ることで回収することを特徴とする、請求項1〜4、および6〜7のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置。 金属カチオン、もしくは放射性セシウムを含む汚水を請求項5もしくは6に記載の方法で処理し、引き続き鉄イオンを含む水溶液を鉄バクテリアに与え、鞘を磁性化し、磁石で回収することを特徴とする、請求項1〜7のそれぞれに記載の金属浄化方法および装置。 【課題】 金属イオンの混入した水溶液あるいは土壌において、鉄バクテリアに金属イオンを消化させ、鉄バクテリアの生成する鞘に排出させ、鞘を回収することで、金属イオンを水溶液あるいは土壌から除去し、濃縮する方法および装置を提供する。【解決手段】 鉄バクテリアを、金属イオンを含む水溶液に添加し、一定時間撹拌するか、固体あるいは多孔質素材に固定化した鉄バクテリアに金属イオンを含む水溶液を通過させ、消化させて水溶液から金属イオンを除去し、鉄バクテリアの鞘に排出させることである。金属イオンは鞘に濃縮され自重で沈殿するので、これを回収するか、固定化した鉄バクテリアをそのまま回収することである。【選択図】図3