タイトル: | 公開特許公報(A)_層間剥離試験片 |
出願番号: | 2012048311 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 19/04,G01N 3/00 |
山本 尚樹 JP 2013181969 公開特許公報(A) 20130912 2012048311 20120305 層間剥離試験片 株式会社IHI 000000099 寺本 光生 100175802 志賀 正武 100064908 高橋 久典 100167553 山本 尚樹 G01N 19/04 20060101AFI20130826BHJP G01N 3/00 20060101ALI20130826BHJP JPG01N19/04 DG01N3/00 T 4 1 OL 8 2G061 2G061AA01 2G061AB03 2G061BA03 2G061CA16 2G061CB20 2G061EA01 2G061EB05 本発明は、複合材の層間剥離試験片に関するものである。 複合材の特有の破壊形態に層間剥離現象がある。複合材は、内部にボイド(空洞)等の初期欠陥が内在する場合があり、これが時間と共に成長して層間剥離として材料内部を進展すると、構造に大きなダメージを与えることになる。このため、従来、層間剥離現象を把握するために、人工的に初期欠陥を内在させた複合材の試験片を作製して層間剥離試験を実施することが行われている。 特許文献1には、異物混入を想定した複合材の層間強度評価を行うために、複合材の層間内部に初期欠陥を模擬したチップ状のフィルム材を埋め込んだ層間剥離試験片を作製し、複合材の種々の破壊のモード(モードI(開口型)、モードII(面内せん断型)、モードIII(面外せん断型))における層間剥離強度を評価する方法が開示されている。特開2011−122885号公報 ところで、上記形態の試験片に荷重を加えて層間剥離試験を実施すると、同じ形態の試験片であっても、剥離が進展を開始する荷重に大きなばらつきが生じることが確認され、定量的な強度評価に問題があった。これは、複合材の破壊のモードが様々な形をとるためと推測される。しかしながら、上記従来の試験片では、人工欠陥を起点として剥離が進展したのか、あるいは他の部位から剥離が進展したのかを把握することが困難であった。 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、層間剥離試験において定量的な評価が可能な層間剥離試験片の提供を目的とする。 上記の課題を解決するために、本発明は、複合材の層間に人工欠陥を内在させた層間剥離試験片であって、上記人工欠陥は、上記複合材の幅方向の端面の少なくとも一方に露出している、という構成を採用する。 また、本発明においては、上記人工欠陥は、上記複合材の幅方向に貫通している、という構成を採用する。 また、本発明においては、上記人工欠陥は、上記複合材の長さ方向における大きさが3.2mm以上である、という構成を採用する。 また、本発明においては、上記人工欠陥は、フィルム材を複数枚重ねて形成されている、という構成を採用する。 本発明によれば、複合材の幅方向の端面の少なくとも一方に人工欠陥が露出しているため、外部から層間剥離の進展を観察することが可能となる。このため、人工欠陥を起点として剥離が進展したのか、あるいは他の部位から剥離が進展したのかを容易に把握することができ、破壊のモードに応じた定量的な評価が可能となる。 また、本発明によれば、人工欠陥を幅方向に貫通させることにより、人工欠陥を起点として層間剥離が進展し易くなり、層間剥離試験において意図した破壊のモードを付与することできる。このため、試験片間での計測結果のばらつきを小さくすることができ、定量的な評価が可能となる。 したがって、本発明では、層間剥離試験において定量的な評価が可能な層間剥離試験片が得られる。本発明の実施形態における層間剥離試験片の構成を示す図である。本発明の実施形態における層間剥離試験片のL字引張試験による荷重‐変位曲線を示すグラフである。本発明の実施形態におけるL字引張試験を実施したときの層間剥離試験片の様子を示す図である。比較例としての層間剥離試験片の構成を示す図である。比較例の層間剥離試験片のL字引張試験による荷重‐変位曲線を示すグラフである。本実施例の層間剥離試験片によるL字引張試験の剥離進展開始荷重Pcを示すグラフである。本実施例の層間剥離試験片の繊維配向構造を示す図である。本実施例の層間剥離試験片による人工欠陥の複合材の長さ方向における大きさを変更したときのL字引張試験の剥離進展開始荷重Pcを示すグラフである。本発明の別実施形態における層間剥離試験片の構成を示す要部拡大図である。 以下、本発明の実施形について図面を参照して説明する。 図1は、本発明の実施形態における層間剥離試験片1の構成を示す図である。 層間剥離試験片1は、図1に示すように、複合材2の層間に人工欠陥3を内在させたものである。複合材2は、強化繊維が多層に積層された繊維強化複合材(FRP:Fiber Reinforced Plastics)からなる。本実施形態の複合材2は、強化材として炭素繊維を有するCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)からなる。 複合材2は、図1(a)の側面図に示すように、直方体をL字に曲げたようなL字型をなしている。複合材2は、直線状の直線部4,5と、湾曲した湾曲部6と、を有する。なお、本実施形態の複合材2の曲げ角度は、直角であるが、これに限定されず、鋭角であっても鈍角であっても良い。直線部4には、不図示の引張試験機に固定可能とするための複数の固定穴7が設けられている。湾曲部6には、初期欠陥として複合材2の作製過程で人工的に導入された人工欠陥3が設けられている。 人工欠陥3は、複合材2の幅方向(図1(a)において紙面奥行き方向、図1(b)において紙面左右方向)の端面8A,8Bの少なくとも一方に露出している。本実施形態の人工欠陥3は、端面8A,8Bの両方に露出している。このため、端面8A,8Bのそれぞれから人工欠陥3の端を視認できるようになっている。 人工欠陥3は、図1(b)の正面図に示すように、複合材2の幅方向に貫通している。人工欠陥3は、ポリテトラフルオロエチレン等のフィルム材からなり、複合材2の層間に挟まれ幅方向に横切るようにして配置されている。なお、本実施形態の人工欠陥3は、フィルム材を複数枚重ねて形成されているが、厚みが十分であればフィルム材は一枚でも構わない。 上記構成の層間剥離試験片1は、複合材2となる強化繊維を熱硬化性樹脂で被覆した樹脂フィルム(プリプレグ)を複数枚積層していき、その過程において、ある層とある層との間に人工欠陥3を挟みこみ、その後、熱硬化させることで作製される。複合材2の厚さ方向における人工欠陥3の位置は、層間剥離試験の一つである後述するL字引張試験における条件下で応力解析を実施し、その解析結果から板厚方向の応力が最大となる箇所としている。 図2は、本発明の実施形態における層間剥離試験片1のL字引張試験による荷重‐変位曲線を示すグラフである。図3は、本発明の実施形態におけるL字引張試験を実施したときの層間剥離試験片1の様子を示す図である。なお、図2の横軸は、図3に示す引張治具8の上方への変位量を示し、図2の縦軸は、不図示のロードセルにより計測した図3に示す引張治具8にかかる荷重を示す。 本引張試験は、層間剥離試験片1を引張試験機にセットし、L字を開くような荷重を付与することで、複合材2の層間剥離の強度評価をするものである。図3に示すように、本引張試験は、直線部4を垂直姿勢で固定した状態で、引張治具8で直線部5を上方に引き上げることによって、層間剥離試験片1に対して荷重を付与する。図2に示すように、引張治具8を徐々に引き上げていくと、はじめは荷重と変位量が比例関係になるが、その後、最初に荷重が低下したポイント(図2において符号Pで示す)で、層間剥離の進展が始まる。 本実施形態の層間剥離試験片1においては、人工欠陥3が複合材2の幅方向の両方の端面8A,8Bに露出している。このため、層間剥離の進展を外部から観察することが可能となる。したがって、例えば、層間剥離の進展が開始したポイントPにおいて、図3に示すように、人工欠陥3を起点として層間剥離(図3において符号Cで示す)が入ったか否かを容易に把握することができる。 このため、本引張試験において意図している破壊のモード、すなわち、人工欠陥3から剥離が進展したものが判別できるため、意図している破壊のモードのみを層間剥離の強度評価の対象とすることができる。したがって、意図しない破壊のモードによる影響を排除でき、層間剥離の定量的な強度評価が可能となる。 このように、本実施形態によれば、複合材2の層間に人工欠陥3を内在させた層間剥離試験片1であって、人工欠陥3は、複合材2の幅方向の端面8A,8Bの少なくとも一方に露出している、という構成を採用することによって、層間剥離試験において定量的な評価が可能な層間剥離試験片1が得られる。 (実施例) 以下、実施例により本発明の効果をより明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。 上述した実施形態の層間剥離試験片1においては、図1に示すように、人工欠陥3が複合材2の幅方向に貫通している。この構成の層間剥離試験片1によれば、従来のチップを埋め込んだ試験片と比べて、同じ試験片間における破壊のモードのばらつきを小さくすることができる。以下、この効果について説明する。 本実施例の層間剥離試験片1の構成は以下の通りである。なお、引張試験機としては、インストロン製100kN試験機を用いた。 <試験片の実施例> 複合材:東レ製プリプレグ T700SC/2592(製品名 3252S-12) 人工欠陥:日東電工製ニトロンフィルム No.900UL 厚さ50μmの2枚重ね 長さL1(図1参照):100mm 長さL2(図1参照):45mm 幅W(図1参照):38mm 厚みT(図1参照):8.5mm 曲率半径R(図1参照):5mm 図4は、比較例としての層間剥離試験片100の構成を示す図である。 図4に示す比較例は、人工欠陥101の複合材2の幅方向における大きさを除き、上記実施例と同じ構成を有している。比較例における人工欠陥101は、6.4mm四方のチップ状となっており、複合材2の湾曲部6における幅方向の中央に埋め込まれている従来型である。なお、この比較例は、繊維配向角度が0度の一方向強化材である。 図5は、比較例の層間剥離試験片100のL字引張試験による荷重‐変位曲線を示すグラフである。 図5に示すように、比較例の層間剥離試験片では、同じ試験片(A‐01〜A‐04)間であっても剥離進展荷重に大きなばらつきがあることが分かる。具体的に、試験片A‐01、試験片A−02では、ポイントP1で層間剥離の進展が始まるのに対し、試験片A‐03、試験片A−04では、ポイントP2で層間剥離の進展が始まっており、両者の間に大きな開きがある。また、破壊のモードにもばらつきがあることが確認された。具体的に、試験片A‐01、試験片A−02は、人工欠陥101が導入された位置に剥離が生じた意図したケースであり、試験片A‐03、試験片A−04は、湾曲部6全体で破壊が生じた意図しないケースであり、2つのパターンが存在した。 図6は、本実施例の層間剥離試験片1によるL字引張試験の剥離進展開始荷重Pcを示すグラフである。なお、図6の縦軸の数値目盛は、上述した図2に示す縦軸の数値目盛と同じ単位(荷重)で示しており、図6の横軸は試験片の繊維配向角度を示している。 図7は、本実施例の層間剥離試験片1の繊維配向構造を示す図である。繊維配向角度[0//0]とは、図7(a)に示すように、上側の繊維層9と下側の繊維層9が、積層角が共に0度(平行:一方向強化材)で積層する構造をいう。繊維配向角度[0//90]とは、図7(b)に示すように、上側の繊維層9と下側の繊維層9が、積層角0度、90度で積層する構造をいう。繊維配向角度[45//-45]とは、図7(c)に示すように、上側の繊維層9と下側の繊維層9が、積層角45度、−45度で積層する構造をいう。 図6に示すように、比較例と同じ繊維配向角度[0//0]の実施例の剥離進展開始荷重Pcにおいては、図5に示す比較例と比較して、ばらつきが0.5程度と約四分の1に低減されていることが分かる。また、図6に示すように、どの繊維配向角度に対しても小さなばらつきで剥離進展開始荷重Pcを得ることができるようになることが分かる。このように、実施例の層間剥離試験片1によれば、同じ試験片間における破壊のモードのばらつきを小さくすることができ、層間剥離強度の定量的な評価ができることが分かる。 図8は、本実施例の層間剥離試験片1による人工欠陥3の複合材2の長さ方向における大きさを変更したときのL字引張試験の剥離進展開始荷重Pcを示すグラフである。 図8に示すように、人工欠陥3の複合材2の長さ方向における大きさ(換言すると人工欠陥3の幅)を3.2mm(図6のときの大きさの半分)にしたときであっても、図6に示す結果と同様に、どの繊維配向角度に対しても小さなばらつきで剥離進展開始荷重Pcを得ることができるようになることが分かる。層間剥離は、人工欠陥3が大きければ大きいほど、そこを起点としやすいので、人工欠陥3の複合材2の長さ方向における大きさは、3.2mm以上であることが好ましい傾向にあることが分かる。 なお、図6と図8の比較から分かるように、人工欠陥3の複合材2の長さ方向における大きさに応じて、繊維配向角度毎のばらつきの大きさが変化する。したがって、複合材2の繊維配向角度が、例えば[45//-45]であれば、それに応じた人工欠陥3の複合材2の長さ方向における大きさ(例えば6.4mm)を選択しても良い。 上記実施例によれば、人工欠陥3を複合材2の幅方向に貫通させることにより、人工欠陥3を起点として層間剥離が進展し易くなり、層間剥離試験において意図した破壊のモードを付与することできる。このため、試験片間での計測結果のばらつきを小さくすることができ、定量的な評価が可能となる。 したがって、この層間剥離試験片1によれば、上述した観察の容易さに加え、試験片間での破壊のモードのばらつきが低減できるため、層間剥離試験においてより精度の高い定量的な評価が可能となる。 以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。 図9は、本発明の別実施形態における層間剥離試験片1の構成を示す要部拡大図である。 例えば、図9(a)に示すように、人工欠陥3が、複合材2の幅方向の端面8A,8Bの一方(端面8A)だけに露出している、という構成であっても良い。 また、例えば、図9(b)に示すように、人工欠陥3が、複合材2の幅方向の端面8A,8Bの両方に露出しているが、複合材2の内部で2分されており、複合材2の幅方向においては貫通していない、という構成であっても良い。 また、例えば、本発明は、CFRP複合材料だけでなくその他の複合材料製品全般の層間剥離試験にも用いることができる。 1…層間剥離試験片、2…複合材、3…人工欠陥、8A,8B…端面 複合材の層間に人工欠陥を内在させた層間剥離試験片であって、 前記人工欠陥は、前記複合材の幅方向の端面の少なくとも一方に露出している、ことを特徴とする層間剥離試験片。 前記人工欠陥は、前記複合材の幅方向に貫通している、ことを特徴とする請求項1に記載の層間剥離試験片。 前記人工欠陥は、前記複合材の長さ方向における大きさが3.2mm以上である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の層間剥離試験片。 前記人工欠陥は、フィルム材を複数枚重ねて形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の層間剥離試験片。 【課題】層間剥離試験において定量的な評価が可能な層間剥離試験片の提供。【解決手段】複合材2の層間に人工欠陥3を内在させた層間剥離試験片1であって、人工欠陥3は、複合材2の幅方向の端面8A,8Bの少なくとも一方に露出している、という構成を採用する。【選択図】図1