生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_植物に含まれるリグニン量を低減する方法
出願番号:2012045173
年次:2013
IPC分類:C12N 15/09,C12N 5/10,A01H 5/00


特許情報キャッシュ

園木 和典 飯村 洋介 梶田 真也 伊藤 幸博 小口 太一 JP 2013179877 公開特許公報(A) 20130912 2012045173 20120301 植物に含まれるリグニン量を低減する方法 国立大学法人弘前大学 504229284 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 国立大学法人東京農工大学 504132881 辻田 幸史 100106611 清水 善廣 100087745 阿部 伸一 100098545 園木 和典 飯村 洋介 梶田 真也 伊藤 幸博 小口 太一 C12N 15/09 20060101AFI20130826BHJP C12N 5/10 20060101ALI20130826BHJP A01H 5/00 20060101ALI20130826BHJP JPC12N15/00 AC12N5/00 103A01H5/00 A 5 3 OL 9 2B030 4B024 4B065 2B030AA02 2B030CA17 2B030CB02 4B024AA08 4B024AA17 4B024CA04 4B024CA20 4B024DA01 4B024EA10 4B024GA11 4B065AA01Y 4B065AA88X 4B065AB01 4B065AC20 4B065BA02 4B065CA54 本発明は、植物に含まれるリグニン量を低減する方法に関する。 化石燃料の減少や地球環境の悪化が進む今日、地球上で最も多量に存在する有機物であるリグノセルロースをバイオマスとして利用することに注目が集まっている。リグノセルロースは、構造性多糖であるセルロースと芳香族化合物の重合体であるリグニンから構成されており、植物の茎葉の主成分であって、個体・組織・細胞を堅固にすることで、植物に外界の物理的ストレスに対する抵抗性を付与したり病原菌の侵入を阻止したりして、その正常な生育に欠かせない役割を担っている。バイオマスとしてリグノセルロースを利用する場合、その糖化効率を向上させることが重要であるが、これは必ずしも容易なことではない。その理由の一つとして糖化効率の向上を妨げるリグニンの存在がある。リグニンは、リグノセルロースの物理的強度を高めてセルロースの単離を困難にするだけでなく、セルロース分解酵素を非特異的に吸着することでその不活性化を引き起こすことが知られている。 上記の点に鑑み、植物に含まれるリグニン量を低減する方法についての研究が行われている。例えば非特許文献1や非特許文献2では、植物体内におけるリグニン生合成酵素の発現を抑制することで植物に含まれるリグニン量を低減する方法が提案されている。しかしながら、その効果は必ずしも十分なものではなく、より優れた方法が望まれている。Chen F.et al.,Nature Biotechnology,2007,vol.25,pp.759−761Berthet S.et al.,Plant Cell,2011,vol.23,pp.1124−1137 そこで本発明は、植物に含まれるリグニン量を効果的に低減する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、リグニン分解酵素とセルロース分解酵素が有するセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させることで、植物に含まれるリグニン量を効果的に低減することができることを見出した。 上記の点に鑑みてなされた本発明の植物に含まれるリグニン量を低減する方法は、請求項1記載の通り、リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させることによるものである。 また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの間にHinge領域を有する融合タンパク質を植物体内で発現させるものである。 また、本発明のベクターは、請求項3記載の通り、リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させるための遺伝子構築物を含むものである。 また、本発明の形質転換植物は、請求項4記載の通り、請求項3記載のベクターを使用してリグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させるための遺伝子構築物を体内に導入したものである。 また、本発明は、請求項5記載の通り、請求項4記載の形質転換植物のバイオマスとしての利用である。 本発明によれば、リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させることで、植物に含まれるリグニン量を効果的に低減することができる。実施例におけるLac−CBDを発現するpCS005の構築図である。同、形質転換イネの稈のラッカーゼ活性の測定結果である。同、形質転換イネの稈のリグニン含量の測定結果である。 本発明の植物に含まれるリグニン量を低減する方法は、リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させることによるものである。 本発明において、植物体内で発現させる融合タンパク質を構成するリグニン分解酵素は、リグニンを分解する作用を有するものであればその由来や種類などは限定されるものではない。具体的には、糸状菌や担子菌などに由来する、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼなどの一電子酸化酵素の他、細菌に由来し、可溶化したリグニン化合物に対して特異的に作用する、β−エーテラーゼ、デメチラーゼ、デカルボキシラーゼ、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼなどが挙げられる。 本発明において、植物体内で発現させる融合タンパク質を構成するセルロース結合ドメインは、セルロース分解酵素がセルロースに結合するために有するドメインであればその由来や種類などは限定されるものではない。具体的には、セルロソーム、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼなどが有するセルロース結合ドメインが挙げられる。こうしたセルロース分解酵素は、各種の微生物が生産する。セルロース分解酵素を生産する微生物としては、Clostridium cellulovorans、Clostridium thermocellum、Clostridium josui、Acetivibrio cellulolyticus、Bacteroices cellulosolvens、Bacillus subtilis、Bacillus amyoliquefaciens、Rumonococcus flavefaciens、Ruminococcus albus、Fibrobacter succinogenes、Cellulomonas fimi、Cellulomonas thermocellum、Cellulomonas uda、Cellulomonas flavigena、Pyrococcus horikoshi,Pyrococcus furiosus、Sulfolobus solfataricus、Trhichoderma reesei、Trichoderma viride、Trametes versicolor、Phanerochaete crysosporium、Phanerochae sordida、Aspergillus oryzae、Aspergillus niger、Penicillium funiculosum、Penicillium verruculosum、Penicillium decumbensなどが挙げられる。 リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの間にはHinge領域を存在させることが望ましい。Hinge領域はリグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの間のリンカーとしてリグニン分解酵素の活性発現に寄与する。Hinge領域の具体例としては、セルロース分解菌であるCellulomonas fimiが産生するエンドグルカナーゼがドメイン間リンカーとして有するPT配列(必要であれば例えばQi M.et al.,Biopolymers,2008,vol.90,pp.28−36やYeh M.et al.,J.Biotechnol.,2005,vol.116,pp.233−244やGreenwood J.M.et al.,FEBS Lett.,1989,vol.244,pp.127−131やGreenwood J.M.et al.,Protein Eng.,1992,vol.5,pp.361−365やXu Y.et al.,J.Biotechnol.,2008,vol.135,pp.319−325などを参照のこと)が挙げられる。Hinge領域は、セロビオヒドロラーゼが有するドメイン間リンカー(必要であれば例えばTakkinen K.et al.,Protein Eng.,1991,vol.4,pp.837−841を参照のこと)やM13phage由来のLHSリンカー(必要であれば例えばLevy I.et al.,J.Pep.Sci.,2001,vol.7,pp.50−57を参照のこと)などであってもよい。 リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質の植物体内での発現は、例えばリグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させるための遺伝子構築物を含むベクターを使用して遺伝子構築物を植物体内に導入することで行うことができる。リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させるための遺伝子構築物を含むベクターは、リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を体内で発現させたい植物の種類や遺伝子構築物の植物体内への導入方法などに応じて、自体公知の遺伝子工学的手法によって作製することができる。遺伝子構築物の植物体内への導入は、例えばベクターをAgrobacterium tumefacience EHA101株などのアグロバクテリウムに導入した後、ベクターを保持したアグロバクテリウムを植物に感染させることで行うことができる(必要であれば例えばCurrent Protocols in Molecular Biology(Frederick M.Ausubel et al.,1987)やHiei Y.et al.,Plant Mol.Biol.,1994,vol.35,pp.201−218などを参照のこと)。 本発明によれば、リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を体内で発現させることによって植物に含まれるリグニンを分解することで、その含量を効果的に低減することができる。よって、リグノセルロースの糖化効率を向上させることできるので、バイオマスとしてリグノセルロースを効率的に利用することができる。なお、リグノセルロースはあらゆる高等植物に含まれているので、本発明はあらゆる高等植物に適用することができるが、中でも、バイオマスとしての有効利用が期待されている、イネ、ススキ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、ダイズ、サトウキビ、ポプラ、ユーカリなどに適用することが望ましい。 以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。(1)ラッカーゼ−セルロース結合ドメイン融合タンパク質(Lac−CBD)発現ベクターの作製 ラッカーゼ(Lac)はTrametes versicolor由来のLacIIIをコードする遺伝子cvL3を使用した。セルロース結合ドメイン(CBD)はClostridium cellulovorans由来のCBDをコードする遺伝子領域(cbd)を使用した。cvL3とcbdの連結はオーバーラップPCRにより行った。まず、Lacについて、pT7GPTLac(Kajita S.et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.,2004,vol.66,pp.194−199)を鋳型として、配列番号1で表される5’−ATGCGGATCCATGTCGAGGTTTCACTCTCTTCTC−3’と配列番号2で表される5’−TTGTAAAATTCAACTGACATTGCGGCCGCCTGGTCGCTCGGGTCGAGCGCATCGTAG−3’からなるプライマーセットを用いたPCRにより、約1.5kbpのDNA断片を増幅した。また、CBDについて、pET35b(+)(Merck KGaA,Darmstadt,Germany)を鋳型として、配列番号3で表される5’−ATGTCAGTTGAATTTTACAACTCTAAC−3’と配列番号4で表される5’−ATGCGGATCCTTATGGTGCTGTACCAAGAACTTT−3’からなるプライマーセットを用いたPCRにより、約0.5kbpのDNA断片を増幅した。次に、これらの2種類のDNA断片に、配列番号1で表される5’−ATGCGGATCCATGTCGAGGTTTCACTCTCTTCTC−3’と配列番号4で表される5’−ATGCGGATCCTTATGGTGCTGTACCAAGAACTTT−3’からなるプライマーセットを用いてオーバーラップPCRを行い、2つのDNA断片が連結された約2.0kbpのDNA断片を回収した。こうして得られた約2.0kbpのDNA断片をBamHIで消化し、pUC118(TaKaRa Bio.Inc.,Shiga,Japan)にクローニングすることでpCS003を構築した。続いて、cvL3とcbdの間のHinge領域として、Cellulomonas fimi Endoglucanase A由来のPT配列(Qi M.et al.,Biopolymers,2008,vol.90,pp.28−36)を選択し、配列番号5で表される5’−AGCTGCGGCCGCACCCACGCCGACCCCGACGCCGACGACCCCCACGCCGACGCCGAC−3’と配列番号6で表される5’−AGCTGCGGCCGCCGTCGGCGTGGGGGTGGGGGTCGGGGTCGGCGTCGGCGTGGGGGT−3’からなるオリゴヌクレオチドを混合して互いにアニールさせた後ポリメラーゼ反応を行い、約0.1kbpのDNA断片(5’−AGCTGCGGCCGCACCCACGCCGACCCCGACGCCGACGACCCCCACGCCGACGCCGACCCCGACCCCCACCCCCACGCCGACGGCGGCCGCAGCT−3’:配列番号7)を調製した。得られたDNA断片をNotIで消化し、同様にNotIで消化したpCS003と連結し、pCS004を構築した。pCS004をBamHIで消化して得られる約2.1kbpのDNA断片を、イネにおける高発現プロモーターとして知られているトウモロコシ由来のユビキチンプロモーターを遺伝子発現プロモーターとして使用した、バイナリーベクターpBUH4(Nigorikawa M.et al.,Rice,In press,2012)に連結し、Lac−CBDを発現するpCS005を構築した(図1)。(2)イネの形質転換 pCS005とpBUH4をそれぞれ使用してAgrobacterium tumefaciens EHA101株を形質転換した。形質転換は、Current Protocols in Molecular Biology(Frederick M.Ausubel et al.,1987)に記載のエレクトロポレーションによる大腸菌の形質転換方法に準じて行った。得られたアグロバクテリウム形質転換体を介してイネ(Oryza sativa L.)台中65号を形質転換した(Hiei Y.et al.,Plant Mol.Biol.,1994,vol.35,pp.201−218)。形質転換イネは隔離温室(自然光、27℃)で栽培した。その結果、Lac−CBDをコードする遺伝子がゲノムに挿入された形質転換イネを7系統獲得した。(3)形質転換イネの稈のラッカーゼ活性の測定 乳鉢を用いて十分にすりつぶした形質転換イネ(pCS005使用個体7系統、コントロール(pBUH4)使用個体1系統)の稈を、60mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁し、氷中で10分間静置した。遠心分離により上清を回収し、回収した上清をCentrifugal Devices Description 30K(Pall Life Science,Ann Arbor,MI,USA)を用いて濃縮した溶液を粗酵素液とした。この粗酵素液から調製した10μgのタンパク質を含む60mM酢酸緩衝液450μLにカタラーゼ溶液(1mg/mL)5μLを加え、25℃で3時間静置した。続いて、10mMの2,2−azino−bis−(3−ethyl benzothiazoline−6−sulfonic acid)diammonium salt(ABTS)(Sigma Aldrich Co.LLC.,St.Louis,MO,USA)溶液を50μL添加して混合した後、さらに25℃で24時間静置してから、405nmの吸光度を測定した。pCS005を使用した3つの系統(CS005−2,CS005−3,CS005−4)のそれぞれから調製した粗酵素液を用いた実験結果を図2に示す。図2から明らかなように、いずれの系統においてもコントロールよりも高いラッカーゼ活性が検出された。中でもCS005−4は高いラッカーゼ活性を示した。(4)形質転換イネの稈のリグニン含量の測定 形質転換イネの稈の細胞壁を、石井らにより報告された方法(2001,Plant Physiol.,126,1698−1705)を改良して調製した。稈を粉砕し80%エタノールに懸濁して5分間静置した後、遠心分離により沈殿物を回収した。得られた沈殿物を再度80%エタノールに懸濁して5分間静置した後、遠心分離により沈殿物を回収した。得られた沈殿物を95%エタノールに懸濁して5分間静置した後、遠心分離により沈殿物を回収した。得られた沈殿物を100%エタノールに懸濁して5分間静置した後、遠心分離により沈殿物を回収した。得られた沈殿物をクロロホルム−メタノール(1:1、v/v)溶液に懸濁して5分間静置した後、遠心分離により沈殿物を回収した。得られた沈殿物を脱水アセトンに懸濁して5分間静置した後、遠心分離により沈殿物を回収した。得られた沈殿物を十分に乾燥し、細胞壁画分とした。この細胞壁画分を2M trifluoroacetic acid(TFA)に懸濁した後121℃で1時間処理し、ヘミセルロースなどの非結晶性多糖を加水分解して可溶化した。TFAに不溶性の残渣を濃度が72%(wt/wt)の硫酸に懸濁して室温で2時間静置した後、純水を用いて硫酸濃度を3%(wt/wt)に希釈した。3%硫酸懸濁液を100℃で3時間処理し、結晶性セルロースを加水分解して可溶化した。3%硫酸に不溶性の残渣を105℃で12時間以上処理してから乾燥させ、乾燥重量を測定した。乾燥した残渣を750℃で6時間処理し、得られた残渣量(灰分量)を測定し、揮発して減少した重量分をリグニン量(Klasonリグニン量)とした。pCS005を使用した3つの系統(CS005−2,CS005−3,CS005−4)のそれぞれについてのリグニン含量の測定結果を図3に示す。図3から明らかなように、いずれの系統においてもリグニン含量はコントロールよりも少なかったが、ラッカーゼ活性が高い系統ほど、リグニン含量は少なかった。(5)まとめ 以上の結果から、本発明によれば、セルロース結合ドメインと融合させたリグニン分解酵素を植物体内で発現させることで、植物に含まれるリグニン量を効果的に低減することができることがわかった。 本発明は、植物に含まれるリグニン量を効果的に低減する方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。 リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させることによる植物に含まれるリグニン量を低減する方法。 リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの間にHinge領域を有する融合タンパク質を植物体内で発現させる請求項1記載の方法。 リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させるための遺伝子構築物を含むベクター。 請求項3記載のベクターを使用してリグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させるための遺伝子構築物を体内に導入した形質転換植物。 請求項4記載の形質転換植物のバイオマスとしての利用。 【課題】 植物に含まれるリグニン量を効果的に低減する方法を提供すること。【解決手段】 本発明の植物に含まれるリグニン量を低減する方法は、リグニン分解酵素とセルロース結合ドメインの融合タンパク質を植物体内で発現させることによるものである。【選択図】 図3配列表


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