生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_化粧品原料または化粧品が皮膚に与える刺激性の検査方法
出願番号:2012041163
年次:2013
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/50,A61K 8/33,A61K 8/37,A61K 8/34,A61K 8/67


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関口 瑠名 JP 2013178114 公開特許公報(A) 20130909 2012041163 20120228 化粧品原料または化粧品が皮膚に与える刺激性の検査方法 株式会社ファンケル 593106918 長谷部 善太郎 100122954 佐藤 荘助 100150681 山田 泰之 100162396 児玉 喜博 100105061 関口 瑠名 G01N 33/53 20060101AFI20130823BHJP G01N 33/50 20060101ALI20130823BHJP A61K 8/33 20060101ALN20130823BHJP A61K 8/37 20060101ALN20130823BHJP A61K 8/34 20060101ALN20130823BHJP A61K 8/67 20060101ALN20130823BHJP JPG01N33/53 DG01N33/50 QA61K8/33A61K8/37A61K8/34A61K8/67 4 1 OL 9 2G045 4C083 2G045AA40 2G045CB01 2G045DA36 4C083AC12 4C083AC17 4C083AC48 4C083AD64 4C083EE10 本発明は、化粧品原料又は化粧品がヒト皮膚に与える微小刺激の検査方法に関する。 化粧品は日常的に、また長期間継続して皮膚に塗布するため、原料も含めてその安全性には細心の注意が必要とされる。化粧品や、化粧品原料の安全性を担保するための試験として、厚生労働省は、昭和62年に「新規原料の安全性確保のためのガイドライン」を通知し、確認すべき安全性試験を定めている(非特許文献1:厚生省薬務局審査第2課事務連絡)。これによれば、実施すべき試験として、1.急性毒性試験、2.皮膚一次刺激性、3.連続皮膚刺激性、4.感作性、5.光毒性、6.光感作性、7.目刺激性、8.変異原性9.ヒトパッチ以上の9項目の試験である。 しかし、このような多種多様な、安全性試験を実施しても、化粧品による炎症や肌荒れなどが発生することが良く知られている(非特許文献2:化粧品事典240〜251ページ、日本化粧品技術者協会編集、丸善株式会社、平成15年12月15日発行)。このような、従来の安全性試験で予測不能な皮膚のトラブルの原因は、たとえ安全な成分であるとして化粧品に配合されている成分であっても長期間の連用によって、皮膚に微小なストレスを与え続け、それらのストレスが蓄積されて皮膚トラブルにつながることが知られている。このような微小なストレスを与えるか否かは上記の一連の安全性試験では検出できない。 例えば、化粧品に通常防腐剤として配合される成分であるパラベン(パラヒドロキシ安息香酸エステル)はこのような微小ストレスの原因物質として良く研究されている。パラベンは上記試験ではいずれも安全と評価されている。しかし、パラベン配合化粧料ではしばしばパラベンアレルギーと呼ばれる症状が発生する(非特許文献3:日皮協情報、No.48 2002年5月)。このため、パラベンの使用を避けてフェノキシエタノールを使用する化粧品が多く見られる。フェノキシエタノールは、グリコールエーテルの一種であり、微かな芳香を有する化合物であり、上記のパラベンよりも皮膚刺激性が少ない防腐剤として知られている。しかし、このフェノキシエタノールを含む化粧品を塗布した皮膚に強い痛みと接触性蕁麻疹が発生する例が知られている(非特許文献3:Mitani T,香粧会誌,12(4),238-247,1998)。また、正常な皮膚を持つ11歳から64歳までの男女にフェノキシエタノールを含む化粧料を塗布したところ統計的有意にスティンギング(Stinging)と呼ばれる痛みを伴う微小刺激を皮膚に与えることを確認している(非特許文献3参照)。 このような健康な皮膚を持つ人より外界刺激に対する抵抗性が低く、容易に皮膚トラブルを生ずる皮膚を皮膚科学分野では敏感肌と呼ぶ。一般にもこの呼称が普及している(非特許文献4:伊藤正敏,Fragrance Jounal,30(10),11-16,2002)。 従来は、このような刺激に対しては皮膚のバリアー機能を増強することが有効とされ、そのような物質の探索が積極的に行われてきた(特許文献1:特開2011−162469号公報、特許文献2:特開2011−16718号公報等参照)特開2011−162469号公報特開2011−16718号公報厚生省薬務局審査第2課事務連絡「新規原料を配合した化粧品の製造、または輸入申請に添付すべき安全性資料の範囲について」 昭和62年6月18日付化粧品事典240〜251ページ、日本化粧品技術者協会編集、丸善株式会社、平成15年12月15日発行Mitani T,香粧会誌,12(4),238-247,1998伊藤正敏,Fragrance Jounal,30(10),11-16,2002) 本発明は、化粧品原料または化粧品が肌に与える微小な刺激を検出する検査方法を提供することを課題とする。 本発明は、従来の皮膚バリアー機能の強化という発想とはまったく異なるもので、皮膚の微小刺激の原因となる物質を化粧品原料または化粧品から除くための技術を提供するものである。 すなわち、本発明は以下の構成である。(1)皮膚由来の表皮角化細胞を培養し、この培養細胞に被検物質を添加し、ヒートショックプロテイン(HSP)27の発現量を被検物質無添加の表皮角化細胞中のHSP27の発現量と比較することにより、化粧品原料又は化粧品の肌に与える刺激を検出する方法。(2)表皮角化細胞の培養細胞に被検物質を添加する添加濃度が、当該被検物質が示す表皮角化細胞50%死濃度(EC50)の10分の1以下の濃度である(1)記載の方法。(3)HSP27の発現量の検出がウエスタンブロッティング法によるものである(1)又は(2)記載の方法。(4)被検物質添加後3日目に検査を実施する(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。 本発明の評価方法によれば、従来の検査方法では検出できなかった化粧品原料又は化粧品の肌に及ぼす微小な刺激を検出することが可能となる。またこのような刺激の有無を検査することによって、化粧品が肌に持続的に与える刺激のない、あるいは刺激を軽減した化粧品を設計することができる。さらにまた、敏感肌の患者に適した化粧品を提供することが可能となる。メチルパラベンによるHSP27産生量増加を示すグラフを示す図である。フェノキシエタノールによるHSP27産生量増加を示すグラフである。1,3−ブチレングリコールによるHSP27産生量増加を示すグラフである。アスコルビン酸2グルコシドによるHSP27産生量増加を示すグラフ図である。 以下、本発明について詳細に説明する。 HSP27とは一連のヒートショック蛋白質ファミリーの一つとして知られている分子量27KDの蛋白質で分子シャペロンとしての機能を有している。そして細胞の保護機能を担っているといわれている。 角層は、皮膚の一番上にある組織であって、角化細胞からなり、体の外からの異物や刺激から皮膚を守る働きを有している。 本発明の検査方法は、この角化細胞を培養し、角化細胞中に発現するHSP27の増加を検出することで、化粧品原料や化粧品などの皮膚に対する微小刺激の有無を判定する方法である。この試験に用いる表皮角化細胞としては、自己増殖性を有する正常な表皮角化細胞であれば使用可能であり、マウス、ブタ、ラットなどの異種の動物の皮膚角化細胞でも使用可能である。しかしヒト皮膚に対する刺激の有無を判断するものであり、ヒトの細胞を用いるのが好ましい。動物の表皮角化細胞を用いる場合には、動物より表皮角化細胞を採取し、常法に従って処理して用いることもできる。あるいは、既に市販されているものを購入して利用することもできる。 ヒト皮膚角化細胞としては、初代培養や継代培養されたものであってもよいが、ケラチノサイトとしての特性を失わないように注意しなければならない。好ましくは継代が10代以内、特に好ましくは4〜5代以内の培養細胞を用いると良い。多くのメーカーより凍結角化細胞が市販されておりこれを利用することができる。凍結細胞は、解凍後培養液で培養しコンフルエントになるまで増殖させ、これをトリプシン処理して培養容器から剥離、単細胞化したのちハーベストしてプラスチックの96穴ウエルあるいは6ウエルの細胞培養プレートなどに播種し、1〜2日培養し、このウエルを用いて試験を行う。培養液は表皮角化細胞の培養に適した複数の組成のものが市販されており、いずれのものであっても使用できる。代表的な培養液として、「Humedia−KG2」(倉敷紡績株式会社製)、「Epilife」(Life Technology社製)を例示することができる。 上述した細胞を播種した96ウエルプレートを二酸化炭素インキュベーター中で24時間培養し、その後培養溶液で希釈した被検物質を0.2〜20質量%の濃度範囲で、ウエルに添加し、約8〜24時間培養し、細胞毒性を確認する。被検物質の希釈濃度系列からそれぞれの被検物質のEC50(細胞が50%死亡する濃度)を求める。 次いで、細胞を播種した6ウエルの細胞培養プレートを二酸化炭素インキュベーター中で24時間培養し、その後培養溶液でこのEC50の10分の1の濃度になるように希釈した被検物質を6ウエルの細胞培養プレートに加え、3〜5日間培養を行う。培養終了後、細胞を回収しイムノアッセイ法又はウエスタンブロット法、あるいはPCR法などによって、HSP27の蛋白質又は遺伝子のコピー数を測定してHSP27の発現量を測定する。同様にして被検物質を添加しなかったウエル殻も細胞を回収して、HSP27を測定する。被検物質を添加したウエルのHSP27の発現量が、被検物質を添加しなかったウエルの発現量より高値を示した場合を皮膚の微小刺激が陽性であると判定する。 以下に試験例、実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。試験例 :メチルパラベンの示す微小刺激の限界確認試験 メチルパラベンを対象としてヒト表皮角化細胞に与える刺激のレベルを測定した。(1)細胞の調整 凍結ヒト皮膚角化細胞(Lonza社製)を解凍し、培養液としてEpifile(Life Technologies社製)用いてT−25フラスコに播種した。これを37℃の二酸化炭素インキュベーターでほぼコンフルエント状態になるまで培養した。 その後細胞をトリプシン処理して単細胞化し、96ウエル細胞培養プレートに1ウエルあたり104個になるように播種し24時間培養した。この96ウエルプレートを以下の細胞毒性確認試験に用いた。また、6ウエル細胞培養プレートに1ウエル当り105個になるように播種し、24時間培養した。この6ウエルプレートを以下の微小刺激試験に用いた。(2)細胞毒性確認試験 メチルパラベン(和光純薬株式会社、以下MPという)を上記の培養に用いた培養液で0.2%から8段階の希釈し、最大希釈濃度0.00015625%の濃度になるようにウエルに加え約24時間培養した。 24時間経過後培養液を交換しさらに、MTT(3-[4,5-Dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazoliumbromide; Thiazolyl blue)溶液を加え約3時間培養して生細胞を染色した。そしてリン酸緩衝液(PBS)で洗浄後、イソプロパノールを100μl/well添加して室温で10分間振とうした。このイソプロパノール溶液の着色度を570nmの吸光度(OD)を測定し、得られたODをMPを添加しなかったウエルのOD度で除した値を細胞生存率とした。段階希釈系列から求めたMPのEC50値は0.1質量%であった。(3)微小刺激試験 細胞を播種し、24時間培養した6ウエルのプレートの培養液を、0.01質量%、0.003質量%になるようMPが含まれるように上記の培養液で希釈したものと交換し、表皮角化細胞を低濃度のMPで刺激した。対照としてMPを添加しないウエルを置いた。3日後に培養液を除去し、PBSで洗浄後、界面活性剤(Igepal CA-630 SIGMA社製)を含む細胞溶解液を100μl/well加え、細胞をスクレーパーでこすって、細胞破砕液を回収した。 細胞回収液をウエスタンブロッティングプロトコール(CSTジャパン社)に従って、SDSゲル電気泳動を行った。このSDSゲルをHybond-P PVDFメンブレン(GEヘルスケア バイオサイエンス)へ転写した。メンブレンを5%スキムミルク溶液でブロッキングし、1次抗体としてHSP27:mouse monoclonal antibody (Stressgen社製)を4℃一晩で反応させ、翌日PBSで洗浄後、2次抗体Goat-Anti-IgG mouse(Invitrogen社製)で1時間反応させ、ECL plus western Blotting Detection system(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)を用いて検出した。 検出結果は3ウエルの平均値を求めさらに、MP無添加のウエルの測定値を100とする相対値で表した。結果を図1に示す。 この結果からMPは0.01質量%濃度(EC50値の10%)ではHSP27の発現を誘導するが0.003質量%濃度ではHSP27の発現を誘導しないことがわかった。すなわち、HSP27の発現を指標とする微小刺激試験では、細胞毒性を示すEC50の10分の1以上の濃度で引き起こされる影響を検出できることがわかった。従って、この試験方法を使用すれば低刺激性の物質を選別することが可能となる。化粧品原料の刺激性の検出例 上述したとおり、メチルパラベンは安全な防腐剤として広く普及しているが、所謂敏感肌の女性はメチルパラベンなどのパラベン類が原因となる肌荒れや痛みをしばしば感じている。このためメチルパラベンに代えてフェノキシエタノールが使用される。 このフェノキシエタノール(以下PEという)と同様に化粧品に配合される成分で、皮膚刺激や肌荒れの原因とならないことが良く知られている成分として、1,3−ブチレングリコール(以下BGという)が保湿剤や抗菌剤として使用されている。また美白化粧料にしばしば配合されるアスコルビン酸誘導体である安全性の高いアスコルビン酸2グルコシド(以下AA2Gという)がある。これらの3物質について、本発明の検査方法で行った。(1)評価濃度の設定 下記表1の段階希釈系列で希釈し、ヒト表皮角化細胞に対する細胞毒性を検査した。 試験例と同様にEC50値を測定し、さらに下記の表2とおりEC50値の10分の1並びに3分の1の濃度を試験濃度に設定した。(2)試験結果 試験例と同様にして各化粧品原料のヒト角化細胞のHSP27発現量を誘導する濃度を測定した。測定結果を図2〜図4に示す。 PEはEC50値の10分の1濃度でHSP27の発現を誘導し、BG及びAA2Gは誘導しなかった。この結果は従来経験的に言われている化粧品原料としての安全性の評価結果によく一致している。従って、本方法によって化粧品原料又は化粧品の微小刺激を細胞毒性の数値にもとづく具体的な作用濃度として数値化することが可能となった。 皮膚由来の表皮角化細胞を培養し、この培養細胞に被検物質を添加し、ヒートショックプロテイン(HSP)27の発現量を被検物質無添加の表皮角化細胞中のHSP27の発現量と比較することにより、化粧品原料又は化粧品の肌に与える刺激を検出する方法。 表皮角化細胞の培養細胞に被検物質を添加する添加濃度が、当該被検物質が示す表皮角化細胞50%死濃度(EC50)の10分の1以下の濃度である請求項1記載の方法。 HSP27の発現量の検出がウエスタンブロッティング法によるものである請求項1又は請求項2記載の方法。 被検物質添加後3日目に試験を実施する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 【課題】化粧品原料または化粧品が肌に与える微小な刺激を検出する検査方法を提供することを課題とする。【解決手段】ヒト皮膚角化細胞を培養し、この細胞を用いて、化粧品原料の細胞毒性毒性EC50を決定する。そしてEC50の10分の1の被検物質濃度で細胞を刺激し、細胞が発現するHSP27を測定し、微小刺激の有無を検査する。【選択図】図1


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