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タイトル:公開特許公報(A)_蛍光性ウラン錯体を形成する化合物、その合成方法、ウラン測定用蛍光プローブ及びウランの測定方法
出願番号:2012034711
年次:2013
IPC分類:C07D 471/04,G21C 17/02,G01N 21/64


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原賀 智子 齋藤 伸吾 佐藤 義行 JP 2013170141 公開特許公報(A) 20130902 2012034711 20120221 蛍光性ウラン錯体を形成する化合物、その合成方法、ウラン測定用蛍光プローブ及びウランの測定方法 独立行政法人日本原子力研究開発機構 505374783 国立大学法人埼玉大学 504190548 森川 聡 100145920 小山 卓志 100139103 田中 貞嗣 100139114 南 義明 100157118 原賀 智子 齋藤 伸吾 佐藤 義行 C07D 471/04 20060101AFI20130806BHJP G21C 17/02 20060101ALI20130806BHJP G01N 21/64 20060101ALI20130806BHJP JPC07D471/04 112TC07D471/04G21C17/02 FG01N21/64 F 4 OL 12 2G043 2G075 4C065 2G043AA01 2G043BA07 2G043CA03 2G043DA01 2G043EA01 2G075AA18 2G075CA40 2G075DA07 2G075FC13 4C065AA04 4C065AA19 4C065BB09 4C065CC09 4C065DD02 4C065EE02 4C065HH08 4C065JJ01 4C065KK01 4C065KK08 4C065LL07 4C065PP03 4C065PP07 4C065PP18 4C065QQ04 4C065QQ05 本発明は、安定な蛍光性ウラン錯体を形成する化合物、その合成方法、当該化合物からなるウラン測定用蛍光プローブ及び当該プローブが使用されるウランの測定方法に関する。 原子力発電所、放射性同位元素を扱う研究施設等の放射性物質を扱う施設から排出される廃液及び廃棄物はウラン化合物を含有し得る。当該廃液及び廃棄物がウラン化合物を含有する場合、当該廃液及び廃棄物が処分される前に、当該廃液及び廃棄物中のウラン濃度が測定されなければならない。従来、当該廃液及び廃棄物中のウランが、イオン交換樹脂、溶媒抽出等の煩雑な分離方法で分離され、当該廃液及び廃棄物中のウラン濃度が質量分析法により定量されていた。質量分析によるウランの検出限界値はppq〜ppt(10-12〜10-10M)レベルであった。しかし、質量分析法で使用される機器は非常に高価であり、分析設備は廃液及び廃棄物に含まれる様々な放射性核種により広範に放射能汚染されやすい。 一方、「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造よりなる金属測定用蛍光プローブと金属を含む試料が混合され、蛍光性金属錯体が形成され、当該蛍光性金属錯体がゲル中を電気泳動されて、試料中の金属が定性分析及び定量分析される方法が検討された(例えば、特許文献1及び2参照)。本発明の発明者らは、当該方法で使用された2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン四酢酸(FTC−ABEDTA)、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(FTC−ABDOTA)、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸(FTC−ABDTPA)、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N′,N′,N′′,N′′−五酢酸(FTC−CHX−A”−DTPA)のそれぞれとUO22+イオンからなる蛍光性ウラン錯体を形成し、当該蛍光性ウラン錯体を電気泳動に付して、試料に含まれるウランの定性分析及び定量分析を試みた。しかしながら、こられの蛍光性ウラン錯体は不安定で、短時間プローブと金属に分解してしまい、試料に含まれるウランの定性分析及び定量分析は不可能であった。 ところで、UO22+イオンと安定な錯体を形成する化合物が検討された(例えば、非特許文献1参照)。特開2009−150650号公報特開2009−168450号公報Diane A. Blake 外5名、Biosensors & Bioelectronics 16, 2001, p799-809 近年、ウランを含む廃液及び廃棄物中のウランの安価な装置による定性分析法及び定量分析法が希求されていたが、このような方法は見出されていなかった。 本発明が解決しようとする課題は、安定な蛍光性ウラン錯体を形成する化合物とその合成方法の提供である。 本発明が解決しようとする別の課題は、上記化合物からなるウラン測定用蛍光プローブと当該プローブが使用されるウランの安価な定性及び定量分析方法の提供である。 本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の化合物がウランと安定な錯体を形成することを見出し、本発明を完成させた。 本発明の化合物は、下記式で示される5-(2-(3-(3-carboxy-4-(3-hydroxy-6-oxo-6H-xanthen-9-yl)phenyl)thioureido)acetamido)1,10-phenanthroline-2,9-dicarboxylic acid(FTC−PDA)である。 下記工程(a)〜(d)が、本発明の化合物の合成方法で実施される。 下記式(1)で示される化合物と水素が反応させられ、下記式(2)で示される化合物が得られる工程(a)、 上記式(2)で示される化合物とクロロアセチルクロリドが反応させられ、下記式(3)で示される化合物が得られる工程(b)、 上記式(3)で示される化合物とアンモニア水が反応させられ、下記式(4)で示される化合物が得られる工程(c)、 上記式(4)で示される化合物と下記式(5)で示されるフルオレセイン−4−イソチアネートが反応させられる工程(d) 本発明のウラン測定用蛍光プローブは上記化合物からなる。 下記工程(A)〜(C)が、本発明のウランの定性及び定量分析方法で実施される。 ウランを含む試料と上記ウラン測定用蛍光プローブが混合され、蛍光性ウラン錯体が混合液中に形成される工程(A)、 蛍光性ウラン錯体を含む混合液がキャピラリー中で電気泳動される工程(B)、 蛍光強度が測定される工程(C) 本発明の化合物は、UO22+イオンと安定な蛍光性ウラン錯体を形成する。本発明のウランの定性及び定量分析方法は、微量の試料と安価な機器で実施可能であり、ウランによる分析設備の汚染は少ない。本発明のウランの定性及び定量分析方法によるウランの検出限界値は数十pptレベルである。本発明の化合物の合成方法の一部を示す図本発明の化合物とUO22+イオンからなる蛍光性ウラン錯体を示す図本発明のウランの定性及び定量分析方法で使用されるキャピラリー電気泳動装置を示す図電気泳動図 本発明の化合物の合成方法を、図1により説明する。 まず、上記式(1)で示される化合物が、Bioconjugate Chem., Vol. 15, No. 5, 2004, p1125-1136に記載方法に基づいて合成される。 図1の式(A)で示される2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンと、硝酸及び硫酸からなる混酸が反応させられ、図1の式(B)で示される5−ニトロ−2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンが得られる。5−ニトロ−2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンは二酸化セレンと反応させられ、図1の式(C)で示されるジアルデヒド化合物が得られる。当該ジアルデヒド化合物が酸化され、上記式(1)で示される化合物が得られる。 上記式(1)で示される化合物は水素で還元され、上記式(2)で示される化合物が得られる。上記式(2)で示される化合物はクロロアセチルクロリドと反応させられ、上記式(3)で示される化合物が得られる。上記式(3)で示される化合物はアンモニア水と反応させられ、上記式(4)で示される化合物が得られる。上記式(4)で示される化合物は、上記式(5)で示されるフルオレセイン−4−イソチアネートと反応させられ、FTC−PDAが得られる。 FTC−PDAはUO22+イオンと安定な蛍光性ウラン錯体を形成する。光が当該錯体に照射されると、当該錯体は蛍光を発する。そこで、FTC−PDAはウラン測定用蛍光プローブとして使用される。当該錯体は、図2に示されるように、(蛍光部位)−(スペーサー)−(配位部位)からなると考えられる。 図3は、本発明のウランの定性及び定量分析方法で使用されるキャピラリー電気泳動装置を示す図である。最初に、キャピラリー3内が泳動液で洗浄され、キャピラリー3内は泳動液で満たされる。次に、FTC−PDAとUO22+イオンで形成された蛍光性ウラン錯体を含む試料溶液が入った容器が、+極側の泳動液が入った容器と交換され、圧力差又は落差により、当該試料溶液がキャピラリー3に注入された後、速やかに泳動液が入った容器が元の位置に戻される。その後、電源1に電荷が印加されると、当該錯体はキャピラリー3内の泳動液中を−極側の泳動液2’方向へ移動する。レーザー光が移動途中の当該錯体に照射されると、当該錯体は蛍光を発する。当該蛍光の強度が検出され、ウランの定性及び定量分析が実施される。 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。FTC−PDAの合成 硝酸(和光純薬工業(株)製特級原液)5mL及び硫酸(和光純薬工業(株)製特級原液)10mLが混合された混酸が、図1の式(A)で示される2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン(和光純薬工業(株)製)0.5gに加えられ、115℃で1時間加熱された。100gの氷が得られた溶液に加えられ、冷却された溶液のpHが水酸化ナトリウムで8.0に調整された。生成した沈殿が濾過され、110℃で乾燥され、図1の式(B)で示される5−ニトロ−2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンが得られた。 次に、1gの5−ニトロ−2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンと1gの二酸化セレンの混合物が5mLの96%ジオキサン水溶液に溶解され、3時間加熱還流され、セライトパッド(登録商標)(Celite Corporation製)で濾過された。図1の式(C)で示されるジアルデヒド化合物が黄赤色の沈殿として得られた。当該ジアルデヒド化合物が、10mLの硝酸(和光純薬工業(株)製特級原液)で3時間加熱還流され、得られた溶液が氷で冷却され、沈殿物が得られた。当該沈殿物がテトラヒドロフラン水溶液で再結晶させられ、上記式(1)で示される化合物が得られた。 110mgの上記式(1)で示される化合物が5mLのエタノールに溶解され、15mgのパラジウム触媒(Aldrich社製パラジウム炭素、パラジウムの担持率10%)が更に添加され、水素ガス圧60psiで水素化還元が実施され、上記式(2)で示される化合物が溶解する溶液が得られた。当該溶液が空気に触れると、当該溶液の色が黄色から鮮紅色に変色した。10mLの3M塩酸が変色した溶液に添加され、パラジウム触媒が濾過により除去された。次いで、0℃で減圧が実施され、エタノールが蒸発させられた。20mLのジクロロメタンで希釈された0.42mLのクロロアセチルクロリド溶液が、攪拌されている溶液に添加され、溶液は室温で一晩攪拌され続けた。得られた2相の混合物が減圧蒸留され、固体が得られた。当該固体が10mLの冷水で洗浄され、減圧下で乾燥され、上記式(3)で示される化合物が得られた。 上記式(3)で示される化合物100mgは20mLの25%アンモニア水とシールドチューブの密閉された系内で25℃で16時間反応させられ、上記式(4)で示される化合物が得られた。 60mgの上記式(4)で示される化合物が2mLの10-2Mマレイン酸緩衝水溶液に懸濁させられ、2mLのテトラヒドロフランが懸濁液に添加されて溶解された。更に、68mgの上記式(5)で示されるフルオレセイン−4−イソチアネート(Aldrich社製)が混合され、暗所にて40℃で12時間加熱された。そして、本発明の化合物であるFTC−PDAが、高速液体クロマトグラフィー装置(日本分光(株)製HPLC−2000)とカラム(サーモサイエンティフィック(株)製Hypersil BDS C18)により、反応生成物から分離された。アセトニトリル(A液)と0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(B液)が移動相として使用され、A液とB液の体積比(A/B)が、開始時5/95、開始時〜6分後まで5/95、6分〜15分後まで40/60、15分〜20分後まで90/10と変化するグラジエント法が採用され、移動相の流量は1.20mL/min、カラム温度は30℃とされた。ピークが開始から18.4分後に現れ、その時点で集められた溶液の溶媒が減圧下で蒸発させられ、本発明の化合物であるFTC−PDA52mgが精製された。各種溶液の調製(1)ウラン測定用蛍光プローブ水溶液の調製 精製されたFTC−PDAが秤量され、超純水に溶解されて、10-3M水溶液が調製された。なお、FTC−PDAが超純水に溶解されない場合、水酸化ナトリウム溶液(関東化学(株)製、等級 Ultrapur)が添加される。(2)ウラン溶液の調製 ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)で検定されたウラン標準溶液が希釈され、2.0×10-5Mのウランを含む0.1M硝酸溶液が調製された。(3)ホウ酸水溶液の調製 ホウ酸(MERCK社製、純度99.9999%)が超純水に溶解され、0.1Mホウ酸水溶液が調製され、当該水溶液のpHが水酸化ナトリム溶液(関東化学(株)製、等級 Ultrapur)で10.0に調整された。(4)トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸(CyDTA)水溶液の調製 CyDTA((株)同人化学研究所製、純度99.0%)が超純水に溶解され、10-3MのCyDTA水溶液が調製された。なお、CyDTAが超純水に溶解されない場合、水酸化ナトリウム水溶液が添加される。試料溶液の調製 上記ウラン測定用蛍光プローブ水溶液、ウラン溶液及びホウ酸水溶液が混合され、3M水酸化ナトリウム水溶液(関東化学(株)製、等級 Ultrapur)が添加され、ウラン測定用蛍光プローブ濃度が5.0×10-7M、ウラン濃度が5.0×10-8M、ホウ酸濃度が2.0×10-2M、pHが9.6〜10.0である試料溶液が調製された。泳動液の調製 上記ホウ酸水溶液及びCyDTA水溶液が混合され、上記3M水酸化ナトリウム水溶液が添加され、ホウ酸濃度が2.0×10-2M、CyDTA濃度が2.5×10-5M、pHが10.0である泳動液が調製された。キャピラリー電気泳動 電気泳動装置はAgilent Technologies社製G7100、検出器はレーザー励起蛍光検出器(Picometrics社製ZETALIF Discovery)、レーザー光源はMelles Griot社製Blue Solid-State Laser System 85-Z48804、励起波長は488nmであった。キャピラリーは集光レンズ付き溶融シリカキャピラリー(Picometrics社製、内径50μm、外径375μm、全長69cm、有効長50cm)であった。 キャピラリーが1M水酸化ナトリウム水溶液で20分間、超純水で20分間、上記泳動液で10分間順次洗浄された。次に、キャピラリー内が上記泳動液で満たされ、5nLの試料溶液が圧力50mbar、注入時間5秒で加圧法により+極側からキャピラリー内に注入され、20kVの電圧が印加され、電気泳動装置の温度が25℃とされて電気泳動が実施された。レーザー励起蛍光検出器のレーザー出力は8mA、光電子倍増管の電圧は570Vであった。図4は電気泳動図である。FTC−PDAとUO22+イオンで形成された蛍光性ウラン錯体のピーク(図4のUO22+)及びFTC−PDAのピーク(図4のL)が検出され、FTC−PDAがウラン測定用蛍光プローブとされるキャピラリー電気泳動法で、ウランの定性分析が可能であるとわかった。 更に、検量線法による定量分析も可能であるとわかった。検出限界値は3.5×10-10M程度であった。なお、上記泳動液による洗浄が分析と別の分析の間に5分間実施された。 本発明の化合物は、UO22+イオンと安定な蛍光性ウラン錯体を形成する。当該錯体はキャピラリー中で電気泳動され、当該錯体が発する蛍光の強度が測定される。従って、本発明の化合物は、安価な電気泳動装置が用いられるウランの定性及び定量分析方法で使用される蛍光プローブとして使用され得る。1…電源、2,2’…泳動液、3…キャピラリー 下記式で示される化合物。 下記式(1)で示される化合物と水素が反応させられ、下記式(2)で示される化合物が得られる工程(a)、 上記式(2)で示される化合物とクロロアセチルクロリドが反応させられ、下記式(3)で示される化合物が得られる工程(b)、 上記式(3)で示される化合物とアンモニア水が反応させられ、下記式(4)で示される化合物が得られる工程(c)、 上記式(4)で示される化合物と下記式(5)で示されるフルオレセイン−4−イソチアネートが反応させられる工程(d)が実施される、請求項1に記載された化合物の合成方法。 請求項1に記載された化合物からなるウラン測定用蛍光プローブ。 ウランを含む試料と請求項3に記載されたウラン測定用蛍光プローブが混合され、蛍光性ウラン錯体が混合液中に形成される工程(A)、 蛍光性ウラン錯体を含む混合液がキャピラリー中で電気泳動される工程(B)、 蛍光強度が測定される工程(C)が実施される、ウランの定性及び定量分析方法。 【課題】ウランを含む廃液及び廃棄物中のウランの安価な装置による定性分析法及び定量分析法で使用されるウラン測定用蛍光プローブとなる化合物を提供する。【解決手段】 下記式で示される化合物。【化1】【選択図】なし


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特許公報(B2)_蛍光性ウラン錯体を形成する化合物、その合成方法、ウラン測定用蛍光プローブ及びウランの測定方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_蛍光性ウラン錯体を形成する化合物、その合成方法、ウラン測定用蛍光プローブ及びウランの測定方法
出願番号:2012034711
年次:2015
IPC分類:C07D 471/04,G21C 17/02,G01N 21/64


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原賀 智子 齋藤 伸吾 佐藤 義行 JP 5834274 特許公報(B2) 20151113 2012034711 20120221 蛍光性ウラン錯体を形成する化合物、その合成方法、ウラン測定用蛍光プローブ及びウランの測定方法 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 505374783 国立大学法人埼玉大学 504190548 森川 聡 100145920 小山 卓志 100139103 田中 貞嗣 100139114 南 義明 100157118 原賀 智子 齋藤 伸吾 佐藤 義行 20151216 C07D 471/04 20060101AFI20151126BHJP G21C 17/02 20060101ALI20151126BHJP G01N 21/64 20060101ALI20151126BHJP JPC07D471/04 112TC07D471/04G21C17/02 FG01N21/64 F C07D CAplus/REGISTRY(STN) 特開2009−168450(JP,A) 特開2009−150650(JP,A) 国際公開第2011/014042(WO,A2) Kristy M. DiVittorio, et al.,Org. Biomol. Chem.,2006年,Vol.4,pp.1966-1976 4 2013170141 20130902 11 20141211 黒川 美陶 本発明は、安定な蛍光性ウラン錯体を形成する化合物、その合成方法、当該化合物からなるウラン測定用蛍光プローブ及び当該プローブが使用されるウランの測定方法に関する。 原子力発電所、放射性同位元素を扱う研究施設等の放射性物質を扱う施設から排出される廃液及び廃棄物はウラン化合物を含有し得る。当該廃液及び廃棄物がウラン化合物を含有する場合、当該廃液及び廃棄物が処分される前に、当該廃液及び廃棄物中のウラン濃度が測定されなければならない。従来、当該廃液及び廃棄物中のウランが、イオン交換樹脂、溶媒抽出等の煩雑な分離方法で分離され、当該廃液及び廃棄物中のウラン濃度が質量分析法により定量されていた。質量分析によるウランの検出限界値はppq〜ppt(10-12〜10-10M)レベルであった。しかし、質量分析法で使用される機器は非常に高価であり、分析設備は廃液及び廃棄物に含まれる様々な放射性核種により広範に放射能汚染されやすい。 一方、「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造よりなる金属測定用蛍光プローブと金属を含む試料が混合され、蛍光性金属錯体が形成され、当該蛍光性金属錯体がゲル中を電気泳動されて、試料中の金属が定性分析及び定量分析される方法が検討された(例えば、特許文献1及び2参照)。本発明の発明者らは、当該方法で使用された2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン四酢酸(FTC−ABEDTA)、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(FTC−ABDOTA)、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸(FTC−ABDTPA)、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N′,N′,N′′,N′′−五酢酸(FTC−CHX−A”−DTPA)のそれぞれとUO22+イオンからなる蛍光性ウラン錯体を形成し、当該蛍光性ウラン錯体を電気泳動に付して、試料に含まれるウランの定性分析及び定量分析を試みた。しかしながら、こられの蛍光性ウラン錯体は不安定で、短時間プローブと金属に分解してしまい、試料に含まれるウランの定性分析及び定量分析は不可能であった。 ところで、UO22+イオンと安定な錯体を形成する化合物が検討された(例えば、非特許文献1参照)。特開2009−150650号公報特開2009−168450号公報Diane A. Blake 外5名、Biosensors & Bioelectronics 16, 2001, p799-809 近年、ウランを含む廃液及び廃棄物中のウランの安価な装置による定性分析法及び定量分析法が希求されていたが、このような方法は見出されていなかった。 本発明が解決しようとする課題は、安定な蛍光性ウラン錯体を形成する化合物とその合成方法の提供である。 本発明が解決しようとする別の課題は、上記化合物からなるウラン測定用蛍光プローブと当該プローブが使用されるウランの安価な定性及び定量分析方法の提供である。 本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の化合物がウランと安定な錯体を形成することを見出し、本発明を完成させた。 本発明の化合物は、下記式で示される5-(2-(3-(3-carboxy-4-(3-hydroxy-6-oxo-6H-xanthen-9-yl)phenyl)thioureido)acetamido)1,10-phenanthroline-2,9-dicarboxylic acid(FTC−PDA)である。 下記工程(a)〜(d)が、本発明の化合物の合成方法で実施される。 下記式(1)で示される化合物と水素が反応させられ、下記式(2)で示される化合物が得られる工程(a)、 上記式(2)で示される化合物とクロロアセチルクロリドが反応させられ、下記式(3)で示される化合物が得られる工程(b)、 上記式(3)で示される化合物とアンモニア水が反応させられ、下記式(4)で示される化合物が得られる工程(c)、 上記式(4)で示される化合物と下記式(5)で示されるフルオレセイン−4−イソチアネートが反応させられる工程(d) 本発明のウラン測定用蛍光プローブは上記化合物からなる。 下記工程(A)〜(C)が、本発明のウランの定性及び定量分析方法で実施される。 ウランを含む試料と上記ウラン測定用蛍光プローブが混合され、蛍光性ウラン錯体が混合液中に形成される工程(A)、 蛍光性ウラン錯体を含む混合液がキャピラリー中で電気泳動される工程(B)、 蛍光強度が測定される工程(C) 本発明の化合物は、UO22+イオンと安定な蛍光性ウラン錯体を形成する。本発明のウランの定性及び定量分析方法は、微量の試料と安価な機器で実施可能であり、ウランによる分析設備の汚染は少ない。本発明のウランの定性及び定量分析方法によるウランの検出限界値は数十pptレベルである。本発明の化合物の合成方法の一部を示す図本発明の化合物とUO22+イオンからなる蛍光性ウラン錯体を示す図本発明のウランの定性及び定量分析方法で使用されるキャピラリー電気泳動装置を示す図電気泳動図 本発明の化合物の合成方法を、図1により説明する。 まず、上記式(1)で示される化合物が、Bioconjugate Chem., Vol. 15, No. 5, 2004, p1125-1136に記載方法に基づいて合成される。 図1の式(A)で示される2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンと、硝酸及び硫酸からなる混酸が反応させられ、図1の式(B)で示される5−ニトロ−2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンが得られる。5−ニトロ−2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンは二酸化セレンと反応させられ、図1の式(C)で示されるジアルデヒド化合物が得られる。当該ジアルデヒド化合物が酸化され、上記式(1)で示される化合物が得られる。 上記式(1)で示される化合物は水素で還元され、上記式(2)で示される化合物が得られる。上記式(2)で示される化合物はクロロアセチルクロリドと反応させられ、上記式(3)で示される化合物が得られる。上記式(3)で示される化合物はアンモニア水と反応させられ、上記式(4)で示される化合物が得られる。上記式(4)で示される化合物は、上記式(5)で示されるフルオレセイン−4−イソチアネートと反応させられ、FTC−PDAが得られる。 FTC−PDAはUO22+イオンと安定な蛍光性ウラン錯体を形成する。光が当該錯体に照射されると、当該錯体は蛍光を発する。そこで、FTC−PDAはウラン測定用蛍光プローブとして使用される。当該錯体は、図2に示されるように、(蛍光部位)−(スペーサー)−(配位部位)からなると考えられる。 図3は、本発明のウランの定性及び定量分析方法で使用されるキャピラリー電気泳動装置を示す図である。最初に、キャピラリー3内が泳動液で洗浄され、キャピラリー3内は泳動液で満たされる。次に、FTC−PDAとUO22+イオンで形成された蛍光性ウラン錯体を含む試料溶液が入った容器が、+極側の泳動液が入った容器と交換され、圧力差又は落差により、当該試料溶液がキャピラリー3に注入された後、速やかに泳動液が入った容器が元の位置に戻される。その後、電源1に電荷が印加されると、当該錯体はキャピラリー3内の泳動液中を−極側の泳動液2’方向へ移動する。レーザー光が移動途中の当該錯体に照射されると、当該錯体は蛍光を発する。当該蛍光の強度が検出され、ウランの定性及び定量分析が実施される。 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。FTC−PDAの合成 硝酸(和光純薬工業(株)製特級原液)5mL及び硫酸(和光純薬工業(株)製特級原液)10mLが混合された混酸が、図1の式(A)で示される2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン(和光純薬工業(株)製)0.5gに加えられ、115℃で1時間加熱された。100gの氷が得られた溶液に加えられ、冷却された溶液のpHが水酸化ナトリウムで8.0に調整された。生成した沈殿が濾過され、110℃で乾燥され、図1の式(B)で示される5−ニトロ−2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンが得られた。 次に、1gの5−ニトロ−2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンと1gの二酸化セレンの混合物が5mLの96%ジオキサン水溶液に溶解され、3時間加熱還流され、セライトパッド(登録商標)(Celite Corporation製)で濾過された。図1の式(C)で示されるジアルデヒド化合物が黄赤色の沈殿として得られた。当該ジアルデヒド化合物が、10mLの硝酸(和光純薬工業(株)製特級原液)で3時間加熱還流され、得られた溶液が氷で冷却され、沈殿物が得られた。当該沈殿物がテトラヒドロフラン水溶液で再結晶させられ、上記式(1)で示される化合物が得られた。 110mgの上記式(1)で示される化合物が5mLのエタノールに溶解され、15mgのパラジウム触媒(Aldrich社製パラジウム炭素、パラジウムの担持率10%)が更に添加され、水素ガス圧60psiで水素化還元が実施され、上記式(2)で示される化合物が溶解する溶液が得られた。当該溶液が空気に触れると、当該溶液の色が黄色から鮮紅色に変色した。10mLの3M塩酸が変色した溶液に添加され、パラジウム触媒が濾過により除去された。次いで、0℃で減圧が実施され、エタノールが蒸発させられた。20mLのジクロロメタンで希釈された0.42mLのクロロアセチルクロリド溶液が、攪拌されている溶液に添加され、溶液は室温で一晩攪拌され続けた。得られた2相の混合物が減圧蒸留され、固体が得られた。当該固体が10mLの冷水で洗浄され、減圧下で乾燥され、上記式(3)で示される化合物が得られた。 上記式(3)で示される化合物100mgは20mLの25%アンモニア水とシールドチューブの密閉された系内で25℃で16時間反応させられ、上記式(4)で示される化合物が得られた。 60mgの上記式(4)で示される化合物が2mLの10-2Mマレイン酸緩衝水溶液に懸濁させられ、2mLのテトラヒドロフランが懸濁液に添加されて溶解された。更に、68mgの上記式(5)で示されるフルオレセイン−4−イソチアネート(Aldrich社製)が混合され、暗所にて40℃で12時間加熱された。そして、本発明の化合物であるFTC−PDAが、高速液体クロマトグラフィー装置(日本分光(株)製HPLC−2000)とカラム(サーモサイエンティフィック(株)製Hypersil BDS C18)により、反応生成物から分離された。アセトニトリル(A液)と0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(B液)が移動相として使用され、A液とB液の体積比(A/B)が、開始時5/95、開始時〜6分後まで5/95、6分〜15分後まで40/60、15分〜20分後まで90/10と変化するグラジエント法が採用され、移動相の流量は1.20mL/min、カラム温度は30℃とされた。ピークが開始から18.4分後に現れ、その時点で集められた溶液の溶媒が減圧下で蒸発させられ、本発明の化合物であるFTC−PDA52mgが精製された。各種溶液の調製(1)ウラン測定用蛍光プローブ水溶液の調製 精製されたFTC−PDAが秤量され、超純水に溶解されて、10-3M水溶液が調製された。なお、FTC−PDAが超純水に溶解されない場合、水酸化ナトリウム溶液(関東化学(株)製、等級 Ultrapur)が添加される。(2)ウラン溶液の調製 ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)で検定されたウラン標準溶液が希釈され、2.0×10-5Mのウランを含む0.1M硝酸溶液が調製された。(3)ホウ酸水溶液の調製 ホウ酸(MERCK社製、純度99.9999%)が超純水に溶解され、0.1Mホウ酸水溶液が調製され、当該水溶液のpHが水酸化ナトリム溶液(関東化学(株)製、等級 Ultrapur)で10.0に調整された。(4)トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸(CyDTA)水溶液の調製 CyDTA((株)同人化学研究所製、純度99.0%)が超純水に溶解され、10-3MのCyDTA水溶液が調製された。なお、CyDTAが超純水に溶解されない場合、水酸化ナトリウム水溶液が添加される。試料溶液の調製 上記ウラン測定用蛍光プローブ水溶液、ウラン溶液及びホウ酸水溶液が混合され、3M水酸化ナトリウム水溶液(関東化学(株)製、等級 Ultrapur)が添加され、ウラン測定用蛍光プローブ濃度が5.0×10-7M、ウラン濃度が5.0×10-8M、ホウ酸濃度が2.0×10-2M、pHが9.6〜10.0である試料溶液が調製された。泳動液の調製 上記ホウ酸水溶液及びCyDTA水溶液が混合され、上記3M水酸化ナトリウム水溶液が添加され、ホウ酸濃度が2.0×10-2M、CyDTA濃度が2.5×10-5M、pHが10.0である泳動液が調製された。キャピラリー電気泳動 電気泳動装置はAgilent Technologies社製G7100、検出器はレーザー励起蛍光検出器(Picometrics社製ZETALIF Discovery)、レーザー光源はMelles Griot社製Blue Solid-State Laser System 85-Z48804、励起波長は488nmであった。キャピラリーは集光レンズ付き溶融シリカキャピラリー(Picometrics社製、内径50μm、外径375μm、全長69cm、有効長50cm)であった。 キャピラリーが1M水酸化ナトリウム水溶液で20分間、超純水で20分間、上記泳動液で10分間順次洗浄された。次に、キャピラリー内が上記泳動液で満たされ、5nLの試料溶液が圧力50mbar、注入時間5秒で加圧法により+極側からキャピラリー内に注入され、20kVの電圧が印加され、電気泳動装置の温度が25℃とされて電気泳動が実施された。レーザー励起蛍光検出器のレーザー出力は8mA、光電子倍増管の電圧は570Vであった。図4は電気泳動図である。FTC−PDAとUO22+イオンで形成された蛍光性ウラン錯体のピーク(図4のUO22+)及びFTC−PDAのピーク(図4のL)が検出され、FTC−PDAがウラン測定用蛍光プローブとされるキャピラリー電気泳動法で、ウランの定性分析が可能であるとわかった。 更に、検量線法による定量分析も可能であるとわかった。検出限界値は3.5×10-10M程度であった。なお、上記泳動液による洗浄が分析と別の分析の間に5分間実施された。 本発明の化合物は、UO22+イオンと安定な蛍光性ウラン錯体を形成する。当該錯体はキャピラリー中で電気泳動され、当該錯体が発する蛍光の強度が測定される。従って、本発明の化合物は、安価な電気泳動装置が用いられるウランの定性及び定量分析方法で使用される蛍光プローブとして使用され得る。1…電源、2,2’…泳動液、3…キャピラリー 下記式で示される化合物。 下記式(1)で示される化合物と水素が反応させられ、下記式(2)で示される化合物が得られる工程(a)、 上記式(2)で示される化合物とクロロアセチルクロリドが反応させられ、下記式(3)で示される化合物が得られる工程(b)、 上記式(3)で示される化合物とアンモニア水が反応させられ、下記式(4)で示される化合物が得られる工程(c)、 上記式(4)で示される化合物と下記式(5)で示されるフルオレセイン−4−イソチアネートが反応させられる工程(d)が実施される、請求項1に記載された化合物の合成方法。 請求項1に記載された化合物からなるウラン測定用蛍光プローブ。 ウランを含む試料と請求項3に記載されたウラン測定用蛍光プローブが混合され、蛍光性ウラン錯体が混合液中に形成される工程(A)、 蛍光性ウラン錯体を含む混合液がキャピラリー中で電気泳動される工程(B)、 蛍光強度が測定される工程(C)が実施される、ウランの定性及び定量分析方法。


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