タイトル: | 公開特許公報(A)_電解エッチング方法及び構造部材の保全方法 |
出願番号: | 2012022366 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 1/32,C25F 3/02 |
山田 政博 JP 2013160619 公開特許公報(A) 20130819 2012022366 20120203 電解エッチング方法及び構造部材の保全方法 三菱重工業株式会社 000006208 森 隆一郎 100134544 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 山崎 哲男 100126893 松沼 泰史 100149548 山田 政博 G01N 1/32 20060101AFI20130723BHJP C25F 3/02 20060101ALI20130723BHJP JPG01N1/32 BC25F3/02 BG01N1/32 A 6 2 OL 12 2G052 2G052AA11 2G052EC11 2G052EC13 2G052EC14 本発明は、Ni基超合金をはじめとする金属材料で構成された構造部材等(観察対象物)のマクロ組織を現出させるための電解エッチング方法、及びこの電解エッチング方法を適用した構造部材の保全方法に関するものである。 一般的に、Ni基超合金等で構成されたガスタービン翼等の構造部材は、高温環境下で使用され、さらには応力が作用していることから、長期運転に伴ってクリープ損傷などの各種劣化が生じる。このような劣化が進行すると構造部材が破損に至るため、構造部材の使用前後の金属組織の状態を正確に把握することが重要である。具体的には、構造部材の表面における結晶粒径や結晶粒の形状、結晶粒成長の方向、異結晶の分布状態、フレッケル欠陥(マクロ偏析)の分布状態等が、マクロ組織観察により把握される。 Ni基超合金で構成された構造部材をマクロ組織観察する場合、表面を機械研磨した後に、酸化力が強い王水を用いた化学エッチングが行われる。この王水を用いる理由は、Ni基超合金が耐腐食性に優れるため、エッチングに強い酸化力が必要とされるためである。なお、化学エッチングを行う前に実施される機械研磨は、表面の酸化層や変質層を除去するために行われるものである。 しかしながら、構造部材を王水で腐食させた場合には、王水中の塩素(Cl)が結晶粒界を優先的に腐食するので、粒界が破壊(割れ)の起点となることが懸念され、マクロ組織観察後にその構造部材を再使用する場合には、王水を用いることはできない。そのため、エッチング溶液中に塩素を含有しない硝酸水溶液等を用いた電解エッチングが実施されている。 電解エッチング方法としては、例えば特許文献1に示すような方法が知られている。その方法は、観察対象となる構造部材を陽(+)極(アノード)とし、観察対象とは別の金属を陰(−)極(カソード)として、両極を対向配置させ、両極間に電解液を介在させて電圧を印加するものである。特開平6−155166号公報 ところで、Ni基超合金等で構成された構造部材に対して、表面を機械研磨した後に、硝酸水溶液等を用いて電解エッチングを行う場合、マクロ組織が全体的にくすんだ金属組織となり、結晶粒界が不鮮明となるので、マクロ組織を正確に把握することが困難である。また、例えば一方向凝固法により作製されたガスタービン翼の結晶粒の幅や成長方向を検査する際には、結晶粒の一つ一つを把握することが難しく、検査に長時間を必要とする場合があり問題とされている。 さらには、特に最近では、構造部材の保全にかかる費用を低減する目的から、構造部材の寿命を正確かつ短時間で評価することが求めており、マクロ組織を精度良く短時間で把握することが要求されている。 この発明は前述した事情に鑑みてなされたものであって、Ni基超合金をはじめとする金属材料で構成された構造部材等に対して、一つ一つの結晶粒が鮮明に現出したマクロ組織を得ることが可能な電解エッチング方法、及びこのエッチング方法を適用した構造部材の保全方法を提供することを目的とする。 前述の課題を解決するために、本発明は、観察対象物のマクロ組織を現出させるための電解エッチング方法であって、前記観察対象物を陽極とし、該陽極と対向配置された陰極との間に電解液を介在させて電解エッチングを行う第一電解エッチング工程と、前記観察対象物を陰極とし、該陰極と対向配置された陽極との間に電解液を介在させて電解エッチングを行う第二電解エッチング工程と、を備えていることを特徴としている。 本発明の電解エッチング方法によれば、観察対象物を陽極とし、この陽極と対向配置された陰極との間に電解液を介在させて第一電解エッチングを行う。そして次に、観察対象物を陰極とし、この陰極と対向配置された陽極との間に電解液を介在させて第二電解エッチングを行う構成とされているので、一つ一つの結晶粒が鮮明に現出したマクロ組織を得ることができる。 また、前記第一電解エッチング工程の前に前記観察対象物の表面を機械研磨する機械研磨工程を備えていても良い。 この場合、観察対象物の表面に形成された酸化層や変質層及び傷や凹凸等を除去した後に、電解エッチングを行うので、結晶粒が鮮明に現出したマクロ組織を得ることが可能である。また、表面の酸化層や変質層及び傷や凹凸が予め除去されているので、電解研磨に要する時間を短縮することができる。 また、前記第一電解エッチング工程及び前記第二電解エッチング工程において、前記陽極及び前記陰極との間に電解液を吸液させた吸液物を介在させて電解エッチングを行う構成とされても良い。 このような構成の場合、電解液を吸液させた吸液物を介在させて電解エッチングを行うので、観察対象物のマクロ組織を現出させたい所望の箇所に対して、電解エッチングを行うことが可能である。 また、前記観察対象物はNi基超合金で構成されていても良い。 Ni基超合金は、高強度かつ耐熱性が良好であり、高温環境かつ高負荷応力において使用される場合があり、Ni基超合金の劣化の度合いを把握するためにマクロ組織の観察が必要とされている。このようなNi基超合金に対して上述の電解エッチング方法を適用することによって、結晶粒が鮮明なマクロ組織を現出させ、評価精度の高いマクロ組織観察を行うことができる。 さらに、本発明の構造部材の保全方法は、上述の電解エッチング方法を構造部材に適用することを特徴としている。 構造部材は、その使用環境により劣化が進行する場合があり、この劣化の度合いを把握するために、使用前後におけるマクロ組織の観察をすることが必要とされる。この場合に、上述のような電解エッチング方法を構造部材に適用することによって、マクロ組織を現出させることができる。そして、マクロ組織観察を行い、このマクロ組織の結晶粒径、結晶粒の成長方向等を解析して、構造部材の寿命を把握したり、適切な保全を行ったりすることができる。 また、前記構造部材は、Ni基超合金で構成されたガスタービン翼とされても良い。 Ni基超合金は、高強度かつ耐熱性が良好である。このNi基超合金で構成されたガスタービン翼は、一方向凝固で製造され鋳造後のマクロ組織を観察し、特性を評価される場合がある。この場合に、上述の電解エッチング方法を用いてマクロ組織を現出させ、結晶粒径、結晶の成長方向、異結晶の分布状態、フレッケル欠陥の分布状態等を把握し、予め寿命等を把握して効率的に保全を行うことができる。また、Ni基超合金で構成されたガスタービン翼は、高温環境かつ高応力が負荷される厳しい環境下で使用され、経年劣化が生じる。このようなガスタービン翼に上述の電解エッチング方法を適用することによって、良好なマクロ組織を現出させ、劣化の進行度合いを把握し、効率的に保全を行うことが可能となる。 本発明によれば、Ni基超合金をはじめとする金属材料で構成された構造部材等に対して、一つ一つの結晶粒が鮮明に現出したマクロ組織を得ることが可能な電解エッチング方法、及びこのエッチング方法を適用した構造部材の保全方法を提供することができる。本発明の一実施形態に係る電解エッチング装置の構成の概略を示す図である。一実施形態に係る電解エッチング方法を説明するフロー図である。本発明例1のマクロ組織を示す図である。比較例1のマクロ組織を示す図である。比較例2のマクロ組織を示す図である。 以下に、本発明の一実施形態について添付した図面を参照して説明する。 本実施形態は、ガスタービン翼(観察対象物)の表面に対して、マクロ組織観察を行うための電解エッチング方法、及びこの電解エッチング方法を適用したガスタービン翼(構造部材)の保全方法に関するものである。 図1に、本実施形態に係る電解エッチング装置1の概略図を示す。この電解エッチング装置1は、直流電源10と、直流電源10の正極または負極のいずれか一方に接続可能とされたガスタービン翼20(電極)と、直流電源10の正極または負極のいずれか他方に接続可能とされたピンセット30(電極)と、を備えている。そして、ピンセット30の先端には電解エッチング用の電解液を吸液させた吸液物40が配置されている。 なお、図1においては、ガスタービン翼20が直流電源10の正極と接続されて陽極(+極、アノード)とされ、ピンセット30が直流電源10の負極と接続されて陰極(−極、カソード)とされている場合を示している。 直流電源10は、時間によって電流の流れる方向(正負)が変化しない電流を発生する電源である。本実施形態では、電流及び電圧を制御可能な直流電源を用いている。 ガスタービン翼20は、電解エッチングの対象とされるものである。図1においては、直流電源10の正極と接続され陽極とされている。本実施形態においては、ガスタービン翼20は、直流電源10の正極または負極と選択的に接続可能とされている。 このNi基超合金で構成されたガスタービン翼20は、一方向凝固によって鋳造で製造され、その金属組織は鋳造方向に伸びた形状をした結晶粒を有している。このガスタービン翼20が実際に使用された際の寿命は、結晶粒径(結晶粒の幅)、結晶粒の成長方向、異結晶の分布状態、フレッケル欠陥(マクロ偏析)の分布状態によって異なることとなる。また、ガスタービン翼20は、高温環境かつ高負荷応力下で使用されるので、その表面が酸化層や変質層で覆われていたり、表面に傷や凹凸がついていたりしている。 ピンセット30は、電解エッチングの対象物に対して対極とされる電極である。図1においては、直流電源10の負極と接続され陰極とされている。本実施形態においては、ピンセット30は、直流電源10の正極または負極と選択的に接続可能とされている。また、本実施形態では、ピンセット30はステンレス鋼等で構成されている。 陽極は、電解エッチングにおいて電子が流出し、電気化学的に溶解(溶出)する電極であり、その表面がエッチング(溶出)される。Ni基超合金で構成されたガスタービン翼20を陽極とした場合には、電解エッチングによって表面からNi等の金属がイオン化し、その表面がエッチングされることとなる。 また、陰極は、電解エッチングにおいて電子が流入する電極である。陰極の形状は、陽極の形状に合わせて、例えば、板形状や円形状等、適宜最適な形状のものを用いれば良い。 吸液物40は、電解エッチング用の電解液を吸液(含有)させたものである。具体的には、例えば脱脂綿、ガーゼ、布等に電解液を吸液させたものが挙げられる。本実施形態では、脱脂綿に電解液を吸液させたものを用いており、ピンセットの先端に把持されている。 電解液は、電解エッチング用のエッチング液であり、電解エッチングの対象物(金属材料の種類)に応じて適宜最適な電解液を選択すれば良い。具体的には、酸性の電解液である硝酸、リン酸、過塩素酸酢酸、シュウ酸等が挙げられる。本実施形態においては、硝酸と純水を1対1の割合で混合した50%硝酸水溶液を用いている。 この電解エッチング装置1においては、直流電源10に接続される陽極と陰極を逆にすることで、容易に電流の流れる方向を逆にすることができるようになっている。 次に、このように構成された電解エッチング装置1を用いた電解エッチング方法の手順について説明する。本実施形態の電解エッチング方法は、図2で示すフロー図の手順に従って、まず機械研磨を行った後に、電解エッチングを行い、ガスタービン翼のマクロ組織を現出させるものである。この電解エッチング方法は、例えば、機械研磨工程S10と、第一電解エッチング工程S20と、第二電解エッチング工程S30と、を備えている。以下に、その手順の詳細について説明する。(機械研磨工程S10) まず、ガスタービン翼20の表面の酸化層や変質層及び表面の傷や凹凸を除去するために、マクロ組織観察を行う箇所において、表面の機械研磨を行う。本実施形態では、耐水ペーパー♯80〜♯4000を用いて、表面の傷や凹凸が無くなるまで機械研磨を行っている。 このようにして、マクロ組織の観察対象箇所において、表面の酸化層や変質層及び表面の傷や凹凸を除去されたガスタービン翼20を得る。(第一電解エッチング工程S20) 次に、図1で示したように、直流電源の正極にガスタービン翼20を接続し、直流電源の負極にピンセット30(電極)を接続し、ピンセットの先端には、硝酸水溶液を吸液させた吸液物40を把持させる。そして、直流電源から電圧を印加し、機械研磨工程S10で研磨したガスタービン翼20のマクロ組織の観察対象箇所に、ピンセット30を操作して、ピンセット30と吸液物40を接触させ電解エッチングを行う。この時に吸液物40をガスタービン翼20にこすりつけながら電解エッチングを行うと良い。また、必要に応じて吸液物40を、新しい吸液物に取り換えても良い。 この第一電解エッチング工程S20における直流電源10の電圧値は、3V以上4V以下、電流値は、3A以上4A以下とされることが好ましい。また、エッチング時間は、5分程度とされることが好ましい。 この第一電解エッチング工程S20が終了した段階においては、電解エッチングが施された観察対象箇所では、結晶粒がわずかに現出してくるものの、くもったような金属組織となっており、マクロ組織観察を正確に把握することが困難である。(第二電解エッチング工程S30) そして、直流電源10の電源をオフにした後に、ガスタービン翼20を直流電源10の負極に接続し、ピンセット30を直流電源10の正極に接続し直して、直流電源10の電圧を再び印加し、第一電解エッチング工程S20で電解エッチングした観察対象箇所に対して、さらに電解エッチングを行う。この第二電解エッチング工程S30では、第一電解エッチング工程S20と同様に、電解液を吸液した吸液物40をピンセット30で把持して、ガスタービン翼20にこすりつけながら行えば良い。第二電解エッチング工程S30を行うと、第一電解エッチング工程S20で現出したマクロ組織と比べて、結晶粒の一つ一つが鮮明なマクロ組織が得られるようになっている。 この第二電解エッチング工程S30における直流電源10の電圧値は、3V以上4V以下、電流値は、3A以上4A以下とされることが好ましい。また、エッチング時間は、10分程度とされることが好ましい。 上述のようにして本実施形態の電解エッチングは行われる。そして、この得られたマクロ組織を観察し、結晶粒径、結晶粒の形状、結晶粒の成長方向、異結晶の分布状態、フレッケル欠陥の分布状態等を解析し、ガスタービン翼20の寿命や適切な保全時期を判断できるようになっている。 本実施形態に係る電解エッチング方法によれば、ガスタービン翼20を陽極として電解エッチングを行う第一電解エッチング工程S20と、ガスタービン翼20を陰極として電解エッチングを行う第二の電解エッチング工程と、を備える構成とされている。このような構成にすることによって、結晶粒の一つ一つが明瞭に視認可能なマクロ組織(金属組織)を得ることができる。そして、このマクロ組織から、結晶粒径の大きさ、結晶粒径の形状、結晶粒の成長方向、異結晶の分布状態、フレッケル欠陥の分布状態等を把握することが可能となる。 ガスタービン翼20を陽極とし、ピンセット30(電極)を陰極として電解エッチングを行った場合、陽極とされたガスタービン翼20の表面から金属がイオン化し、表面がエッチングされる。しかしながら、この段階では、ガスタービン翼20の電解エッチングされた表面には、アク(生成物)が形成され、結晶粒界が現出した明瞭なマクロ組織は得られていない。 そして、本実施形態においては、さらにガスタービン翼20を陰極とし、ピンセット30(電極)を陽極として電解エッチングを行っている。この時に、ガスタービン翼20の表面からは水素(水素ガス)が発生することにより、表面のアク(生成物)が水素ガスによって剥がされて取り除かれ、結晶粒界が現出した明瞭なマクロ組織が得られているものと推測される。 このようなメカニズムにより、本実施形態の電解エッチング方法によって、ガスタービン翼20の結晶粒が鮮明に現出したマクロ組織が得られていると考えられる。 また、従来のマクロ組織の観察方法では、王水によってマクロ組織を現出させており、結晶粒界が優先的に腐食し破壊(クラック)の起点となる恐れがあった。しかしながら、本実施形態においては、硝酸水溶液による電解エッチングによってマクロ組織を現出させるので、結晶粒界を優先的に腐食することなくマクロ組織を現出させることができる。そのため、エッチングされた箇所が破壊(クラック)の起点となる恐れがなくなるので、マクロ組織を観察した後のガスタービン翼20を再度使用することができる。 また、本実施形態においては、第一電解エッチング工程S20を行う前に、機械研磨を行う機械研磨工程S10を備える構成とされている。このような構成によれば、ガスタービン翼20の表面に形成されている酸化物や変質層及び傷や凹凸などを除去した後に、電解エッチングを行うことができる。こうすることによって、ガスタービン翼20の表面に鮮明な結晶粒が現出したマクロ組織を得ることができる。また、電解エッチングに必要とする時間を短縮することができる。 また、本実施形態においては、電解液を吸液させた吸液物40を陽極と陰極との間に介在させて電解エッチングを行う構成とされているので、マクロ組織を把握したい箇所のみを選択して電解エッチングすることが可能である。さらには、電解エッチングの際に、吸液物40を、マクロ組織の観察対象箇所にこすりつけながら電解エッチングを行うので、一つ一つの結晶粒が鮮明なマクロ組織を得ることができる。 また、本実施形態のガスタービン翼20(構造部材)の保全方法によれば、上述の電解エッチング方法によって、ガスタービン翼20のマクロ組織の観察対象箇所にマクロ組織を現出させている。そして、結晶粒径、結晶粒の形状、結晶粒の成長方向、異結晶の分布状態、フレッケル欠陥の分布状態等の解析を行っている。これらのマクロ組織の解析結果から、ガスタービン翼(構造部材)の寿命や適切な交換時期や修繕時期を把握して、ガスタービン翼(構造部材)の保全を行うことできる。 以上、本発明の一実施形態である、電解エッチング方法及びガスタービン翼(構造部材)の保全方法について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、この発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。 上記実施の形態では、ガスタービン翼に対して電解エッチングを行う場合について説明したが、電解エッチング実施可能な構造部材であれば本発明を適用することが可能である。また、本発明の電解エッチング方法の対象物は、構造部材に限定されるものではなく、微小な実験サンプルや電子部品等の観察対象物であっても良い。 上記実施の形態では、Ni基超合金で構成されたガスタービン翼(構造部材)を電解エッチングの対象としてマクロ組織を得る場合について説明したが、Ni基超合金に限定されるものではなく、他の合金で構成された構造部材(観察対象物)であっても良い。また、この場合には、必要に応じて適宜最適な電解エッチング用の電解液を選択すれば良い。 上記実施の形態では、機械研磨を行った後に、電解エッチングを行う構成について説明したが、機械研磨を行わない構成とされても良い。また、電解エッチングを行う前に、電解脱脂等を行い、マクロ組織の観察対象箇所の表面を洗浄しても良い。 上記実施の形態では、電解液を吸液した脱脂綿を、陽極と陰極の間に介在させて電解エッチングを行う構成について説明したが、陽極と陰極とを電解液の中に浸漬して電解研磨を行う構成とされても良い。 以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されることはなく、技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。 本実施例においては、ガスタービン翼の周方向に対して電解エッチングを行い、マクロ組織を得た場合について説明する。 まず、ガスタービン翼のマクロ組織の観察対象箇所に対して、耐水ペーパー♯80〜♯4000を用いて、機械研磨を行った後に、本発明例1、比較例1、比較例2として以下のようにして電解エッチングを行った。なお、本実施例では、電解エッチング用の電解液として、硝酸と純粋を1対1の割合で混合した50%硝酸水溶液を用いた。(本発明例1) ガスタービン翼を陽極とし、ステンレス製のピンセットを陰極とし、さらにピンセットの先端に硝酸水溶液を吸液させた吸液物を配置し、マクロ組織の観察対象箇所に対して電解エッチング(第一電解エッチング)を5分間実施した。エッチングの条件は、電圧を3V〜4V、電流値を3A〜4Aの範囲に設定した。 次に、ガスタービン翼を陰極とし、ピンセットを陽極とし、さらにピンセットの先端に硝酸水溶液を吸液させた吸液物を配置し、観察対象箇所に対して電解エッチング(第二電解エッチング)を10分間実施した。エッチングの条件は、電圧を3V〜4V、電流値を3A〜4Aの範囲に設定した。 このようにして、本発明例1となるサンプルを作製した。(比較例1) ガスタービン翼を陰極とし、ステンレス製のピンセットを陽極とし、さらにピンセットの先端に硝酸水溶液を吸液させた吸液物を配置し、マクロ組織の観察対象箇所に対して電解エッチングを20分間実施して、比較例1となるサンプルを作製した。エッチングの条件は、電圧を3V〜4V、電流値を3A〜4Aの範囲に設定した。(比較例2) ガスタービン翼を陽極とし、ステンレス製のピンセットを陰極として、さらにピンセットの先端に硝酸水溶液を吸液させた吸液物を配置し、マクロ組織の観察対象箇所に対して電解エッチング(第一電解エッチング)を5分間実施した。エッチングの条件は、電圧を3V〜4V、電流値を3A〜4Aの範囲に設定した。 このようにして、比較例2となるサンプルを作製した。なお、比較例2においては、第二電解エッチングを実施していない。 本発明例1のマクロ組織写真を図3に示す。本発明例1のマクロ組織は、図3に示すように、一つ一つの結晶粒が鮮明に現出しており、結晶粒界を明確に確認することができる。また、ガスタービン翼は一方向凝固によって作製されており、本発明例1のマクロ組織では、ガスタービン翼の長手方向に結晶粒が伸びていることを確認することができる。 また、比較例1のマクロ組織写真を図4に示す。比較例1のマクロ組織は、図4に示すように、長時間電解エッチングしたにもかかわらず薄くエッチングされるのみであり、一つ一つの結晶粒を判別することが困難である。 比較例2のマクロ組織写真を図5に示す。比較例2のマクロ組織は、図5に示すように、全体的にくすんだ金属組織をしており、不明瞭であり、一つ一つの結晶粒を判別することが困難である。 以上のことから、本発明例によれば、結晶粒が鮮明に現出したマクロ組織を得ることができる電解エッチング方法を提供可能であることが確認される。20 ガスタービン翼(構造部材、観察対象物)40 吸液物 観察対象物のマクロ組織を現出させるための電解エッチング方法であって、 前記観察対象物を陽極とし、該陽極と対向配置された陰極との間に電解液を介在させて電解エッチングを行う第一電解エッチング工程と、 前記観察対象物を陰極とし、該陰極と対向配置された陽極との間に電解液を介在させて電解エッチングを行う第二電解エッチング工程と、を備えていることを特徴とする電解エッチング方法。 前記第一電解エッチング工程の前に前記観察対象物の表面を機械研磨する機械研磨工程を備える特徴とする請求項1に記載の電解エッチング方法。 前記第一電解エッチング工程及び前記第二電解エッチング工程において、前記陽極及び前記陰極との間に電解液を吸液させた吸液物を介在させて電解エッチングを行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解エッチング方法。 前記観察対象物は、Ni基超合金で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電解エッチング方法。 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電解エッチング方法を、構造部材に適用することを特徴とする構造部材の保全方法。 前記構造部材は、Ni基超合金で構成されたガスタービン翼であることを特徴とする請求項5に記載の構造部材の保全方法。 【課題】Ni基超合金をはじめとする金属材料で構成された構造部材等に対して、一つ一つの結晶粒が鮮明に現出したマクロ組織を得ることが電解エッチング方法、及びこのエッチング方法を適用した構造部材の保全方法を提供する。【解決手段】観察対象物のマクロ組織を現出させるための電解エッチング方法であって、前記観察対象物を陽極とし、該陽極と対向配置された陰極との間に電解液を介在させて電解エッチングを行う第一電解エッチング工程と、前記観察対象物を陰極とし、該陰極と対向配置された陽極との間に電解液を介在させて電解エッチングを行う第二電解エッチング工程と、を備えていることを特徴とする電解エッチング方法。【選択図】図2