タイトル: | 再公表特許(A1)_プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1による流産、早産治療薬 |
出願番号: | 2012007348 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 33/86,G01N 33/68,G01N 33/53,G01N 33/536,C07K 14/81,C12N 15/09,A61K 38/55,A61P 15/06 |
金山 尚裕 梅村 和夫 岩城 孝行 浦野 哲盟 伊熊 ことみ JP WO2013073191 20130523 JP2012007348 20121115 プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1による流産、早産治療薬 国立大学法人浜松医科大学 504300181 大野 聖二 230104019 田中 玲子 100105991 松任谷 優子 100119183 北野 健 100114465 伊藤 奈月 100156915 金山 尚裕 梅村 和夫 岩城 孝行 浦野 哲盟 伊熊 ことみ JP 2011249523 20111115 G01N 33/86 20060101AFI20150306BHJP G01N 33/68 20060101ALI20150306BHJP G01N 33/53 20060101ALI20150306BHJP G01N 33/536 20060101ALI20150306BHJP C07K 14/81 20060101ALI20150306BHJP C12N 15/09 20060101ALI20150306BHJP A61K 38/55 20060101ALI20150306BHJP A61P 15/06 20060101ALI20150306BHJP JPG01N33/86G01N33/68G01N33/53 DG01N33/536 CC07K14/81C12N15/00 AA61K37/64A61P15/06 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC 再公表特許(A1) 20150402 2013544140 26 2G045 4B024 4C084 4H045 2G045AA25 2G045CA26 2G045DA36 4B024AA01 4B024BA19 4B024CA01 4B024CA11 4C084AA02 4C084BA44 4C084DC32 4C084NA14 4C084ZA812 4H045BA10 4H045CA40 4H045DA56 4H045EA20 本発明は、血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度を測定することを特徴とする、早産または流産の発症危険度を診断する方法に関する。詳しくは、プラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度が正常妊婦のものよりも低いときに早産または流産を起こす危険性が高いと判断することを特徴とする、早産または流産の発症危険度を診断する方法、早産または流産の発症危険度診断用キット、およびプラスミノゲンアクチベータインヒビター−1を含む早産または流産を予防するための医薬組成物に関する。 早産および流産の主たる原因として、絨毛膜下血腫が知られている。現在、絨毛膜下血腫に対しては、超音波断層法による画像診断が行われているが、血液学的診断法や治療法は確立されていない。したがって、いったん絨毛膜下血腫が発生し進行すると、早産および流産は回避することができなかった。 プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1(Plasminogen activator inhibitor−1(PAI−1))は、セリンプロテアーゼインヒビター(serine protease inhibitor(SERPIN))スーパーファミリーの一つであり、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータおよび組織型プラスミノゲンアクチベータの主要な生理的な制御因子である。PAI−1のレベルの上昇が動脈血栓(非特許文献1)やガン患者の予後不良(非特許文献2)等いくつかの病態に関連することが多くの研究によって示されているが、PAI−1欠損の症例数が少ないことから、PAI−1欠損に関する知見は未だに限られている。本発明者らは、近年、ヒトにおいて遺伝的に同定された完全なPAI−1欠損のケースについて報告した(非特許文献3)。係る患者は大出血する傾向を示したが、これはこれまでの報告においてPAI−1欠損患者にも見られた傾向である(非特許文献4)。 出血の素因となり得る遺伝子の変化は、妊娠中の合併症に関連する。そのような関連の最も顕著な実例は、先天性の無フィブリノゲン血症や先天性の凝固因子XIII(FXIII)欠損であり、これらは治療しないままでいると、性器出血や妊娠6〜8週での自然流産を引き起こす(非特許文献5および6)。Semin Thromb Hemost 2009; 35: 468-77Immunol Lett 2008; 118: 116-24J Thromb Haemost 2011; 9: 1200-6N Engl J Med 1992; 327: 1729-33Curr Drug Targets 2005; 6: 535-9Obstet Gynecol Surv 2007; 62: 255-60 本発明の目的は、絨毛膜下血腫の簡便かつ精度の高い新たな診断方法および絨毛膜下血腫を治療する方法を提供し、それらの方法により絨毛膜下血腫に起因する早産および流産の発症危険度を早期診断することにより、早産および流産を予防することである。 本発明者らは、PAI−1欠損症の患者は、妊娠すると絨毛膜下血腫を発症して流産すること、および係る患者にPAI−1を含む新鮮凍結血漿を投与すると絨毛膜下血腫の進行を阻止し、妊娠維持が可能であることを見出した(Thrombosis Research 129:4, e161-e163)。さらに、本発明者らはこれら知見に基づき、PAI活性に基づいて絨毛膜下血腫に起因する流早産の発症危険性を判定できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、以下の[1]〜[14]を提供する。[1]被検者より単離された血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度を測定することを特徴とする、早産または流産の発症危険度を診断する方法。[2]血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性を、ユーグロブリン溶解時間を指標として測定する、[1]に記載の方法。[3]ユーグロブリン溶解時間が500分以下であるときに早産または流産を起こす危険性が高いと判断する、[2]に記載の方法。[4]ユーグロブリン溶解時間が350分以下であるときに早産または流産を起こす危険性が高いと判断する、[2]または[3]に記載の方法。[5]血漿にカルシウムを添加してユーグロブリン溶解時間を測定する工程、および、カルシウムを添加しない場合のユーグロブリン溶解時間とカルシウムを添加した場合のユーグロブリン溶解時間との比率を求める工程をさらに含み、当該比率に基づいて早産または流産を起こす危険性が高いと判断する、[2]〜[4]のいずれかに記載の方法。[6]血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度を、プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に結合する抗体を用いた免疫学的な測定方法によって測定する、[1]に記載の方法。[7]血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度をELISA法によって測定する、[6]に記載の方法。[8]血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度をAlphaLISA法によって測定する、[6]に記載の方法。[9]早産または流産が、絨毛膜下血腫に起因する早産または流産である、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。[10]α−トロンビン、およびカルシウムイオンまたはカオリンを含む水溶液を含む、早産または流産の発症危険度診断用キット。[11]プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に結合する抗体を含む、早産または流産の発症危険度診断用キット。[12]早産または流産が、絨毛膜下血腫に起因する早産または流産である、[10]または[11]に記載のキット。[13]プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1を含む、早産または流産を予防するための医薬組成物。[14]早産または流産が、絨毛膜下血腫に起因する早産または流産である、[13]に記載の医薬組成物。 本発明を用いると、従来、超音波断層法による画像診断でしか診断できなかった絨毛膜下血腫および早産または流産の発症危険度を、血液学的かつ定量的に診断することが可能となる。そのため、早産または流産の発症危険度を早期に診断することおよび診断の精度を向上させることができる。また、本発明により、絨毛膜下血腫が発生した場合であっても妊娠を維持し、流早産を防ぐことができる。図1は、PAI−1欠損症の患者の3回の妊娠経過中に観察された性器出血(G.B.)(g)、投与した新鮮凍結血漿(FFP)(U:1U=200mLの血液から分離された血漿)、および血漿D−ダイマー濃度(μg/mL)を示す。黒い矢印は流産した日を示し、白い矢印は緊急帝王切開を行ったときを示す。1.定義 「プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1(Plasminogen activator inhibitor−1(PAI−1))」は、セリンプロテアーゼインヒビター(serine protease inhibitor(SERPIN))スーパーファミリーの一つであり、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(urokinase type plasminogen activator(uPA))および組織型プラスミノゲンアクチベータ(tissue type plasminogen activator(tPA))の主要な生理的な制御因子である。 「プラスミノゲンアクチベータインヒビター−2(Plasminogen activator inhibitor−2(PAI−2))」は、SERPINスーパーファミリーの一つであり、uPAおよびtPAの生理的な制御因子である。PAI−2は胎盤由来であり、非妊娠時にはほとんど発現されていない。 本発明において、「プラスミノゲンアクチベータインヒビター活性」、「PAI活性」および「PAIの活性」とは、PAI−1およびPAI−2が有する、プラスミノゲンアクチベータを不活化して線維素溶解系(線溶系)を抑制する活性のことをいい、PAI−1およびPAI−2が有する線溶抑制活性の総和を意味する。妊娠中は胎盤よりPAI−2も分泌されるが、線溶抑制活性は妊婦でもPAI−1活性が主たるものであることから、本発明において測定されるPAI活性は、主にPAI−1に起因する活性を示す。なお、プラスミノゲンアクチベータインヒビター活性が高いほど、線溶系が強く抑制される。 「絨毛膜下血腫」とは、妊娠初期から中期にかけてしばしば見られる、胎盤と脱落膜との間に現れる血腫で、胎盤の辺縁に沿って形成されるのが特徴である。妊娠初期に見られる絨毛膜下血腫のほとんどは自然退縮するが、妊娠中期まで持続する場合もある。絨毛膜下血腫が持続した場合、子宮収縮抑制不能、性器出血の増加、子宮内感染等により、胎盤機能不全や流早産の確率が高くなる。 本発明において、「早産」とは妊娠22週以降37週未満での出産をいい、「流産」とは妊娠22週未満における妊娠喪失をいう。また、本明細書においては、早産および流産を指して、「流早産」とも記載する。 本発明において、「早産または流産の発症危険度」または「流早産の発症危険度」とは、被検者が流早産するか否かを判断するための、検査判定基準をいう。流早産の発症危険度が高いほど流早産する可能性が高いと判断され、低いほど流早産する可能性が低いまたは正常な妊娠であると判断される。2.早産または流産の発症危険度を判定する方法 本発明は、血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度を測定することを特徴とする、早産または流産の発症危険度を判定する方法に関する。(1)血漿の単離 本発明において測定される試料は、被検者より通常採取した血液から、血漿を調製して用いる。採血は、本分野において周知の方法を用いることができ、当業者であれば適宜選択できるが、凝固系因子の保存が良好な、抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムを用いる方法が好ましい。本発明は、末梢血を試料として用いることができる。血漿を調製する方法としては、遠心等、本分野において周知の方法を用いることができる。取得した血漿は、測定するまで凍結保存してもよい。(2)プラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度の測定 本発明において、プラスミノゲンアクチベータインヒビター活性を測定する方法として、当業者に周知の方法である、ユーグロブリンクロット溶解時間(euglobulin clot lysis time(ECLT))の測定方法を使用することができる。ここで、ユーグロブリンクロット溶解時間とは、血漿ユーグロブリン分画中で作製されたクロットが自然溶解するまでの時間を測定したものであり、主にPAI−1とtPAとのバランスにより決まる血漿の有する線溶活性を包括的に表すものとされている。ただし妊娠中は胎盤よりプラスミノゲンアクチベータインヒビター−2も分泌されるので、妊婦のECLTで得られた結果は厳密にはプラスミノゲンアクチベータインヒビター−1の活性とプラスミノゲンアクチベータインヒビター−2の活性の総和である。しかし線溶抑制活性は妊婦でもプラスミノゲンアクチベータインヒビター−1活性が主たるものであることから、本発明においてECLTを用いて測定されるPAI活性は、主にPAI−1に起因する活性を示す。 ユーグロブリンクロット溶解時間の測定方法は、アンチプラスミンを除いて、フィブリンの溶解時間を測定する方法であり、当業者であれば適宜実施することができる。具体的には、血漿を酢酸緩衝液で希釈して静置した後、遠心して沈渣を採取し、その沈渣をトリス緩衝液で混和してユーグロブリン分画を得る。そしてα−トロンビンおよびカルシウムイオンあるいはカオリンを含む溶液にユーグロブリン分画のサンプルを添加し、沈渣の溶解時間を測定する。本発明においては、この溶解時間をPAI活性の指標とする。ユーグロブリンクロット溶解時間が短いほどPAI活性が低い、すなわち、線溶活性が高いことを示す。 本発明の一態様においては、カルシウムイオンを添加せずに測定したユーグロブリンクロット溶解時間(RegularECLT)と、カルシウムイオンを添加して測定したユーグロブリンクロット溶解時間(Ca添加ECLT)との比率を求め、当該比率をPAI活性の指標とすることもできる。なお、カルシウムイオンを添加しない場合のユーグロブリン溶解時間は、上記と同様に調製したユーグロブリン分画のサンプルを、α−トロンビンを含む溶液に添加し、沈渣の溶解時間を測定することにより求められる。 プラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度を測定する方法として、当業者に周知の方法である、抗PAI−1抗体を用いた免疫学的な測定方法を使用することができる。具体的には、ウエスタンブロッティング法、免疫沈降法、酵素免疫測定法(EIA)、酵素結合免疫測定法(ELISA法)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、およびAlphaLISA法(登録商標、PerkinElmer)などを使用することができる。 Alphalisa法は、ドナービーズに結合した分子がアクセプタービーズに結合した分子と生物学的に相互作用して2つのビーズが近接した状態の時にのみ検出される発光シグナルを利用したアッセイ方法である。具体的には、抗原の存在下でこれら2つのビーズは緊密に接近し、レーザーによるドナービーズの励起が一重項酸素分子の放出を惹起し、これがアクセプタービーズ内のチオキシン誘導体と反応して化学発光反応が開始され、この反応から生じた発光エネルギーが同じビーズ内にある蛍光物質に転移されることで光が放出される。よって、本発明において、抗PAI−1抗体を結合したドナービーズおよびアクセプタービーズを使用してAlphaLISA法を行うと、PAI−1濃度を定量することができる。また、本発明において、抗PAI−1抗体およびuPAをドナービーズまたはアクセプタービーズにそれぞれ結合させて、抗PAI−1抗体を結合したドナービーズおよびuPAを結合したアクセプタービーズ、またはuPAを結合したドナービーズおよび抗PAI−1抗体を結合したアクセプタービーズを調製し、係るビーズを用いてAlphaLISA法を実施することができる。この場合、サンプル中の活性をもったPAI−1のみがのドナービーズおよびアクセプタービーズと結合するので、結果としてPAI−1活性を測定することが可能である。 プラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度の測定は、上記の方法に限定されず、当該活性または濃度を測定できる当業者に周知の方法を使用することができる。また、それらの測定方法を複数利用してもよい。(3)流早産の発症危険度の判定 本発明者らは、PAI−1欠損症の患者は、妊娠すると絨毛膜下血腫を発症して流産すること、および係る患者にPAI−1を含む新鮮凍結血漿を投与すると絨毛膜下血腫の進行を阻止し、妊娠維持が可能であることを見出した。また、係る患者においては、PAI−1欠損により血液の線溶系が異常亢進し卵膜と子宮の接着性が低下し絨毛膜下血腫が発生することを明らかにした。さらに、本発明者らはこれら知見に基づき、PAI活性または濃度に基づいて絨毛膜下血腫の診断ができること、および絨毛膜下血腫に起因する流早産の発症危険性を判定できることを見出した。 これらの知見に基づき、本発明では、上述の方法により測定したプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度が正常妊婦の標準値−標準誤差よりも低い場合に、絨毛膜下血腫発症のおそれがあり、被検者の流早産の発症危険度が高いと判断する。 具体的には、ユーグロブリンクロット溶解時間を指標として用いる場合には、PAI活性が正常妊婦血漿よりも低い場合、例えばユーグロブリンクロット溶解時間が約500分以下、約400分以下、約350分以下、または約200分以下であるときに、被検者の流早産の発症危険度が高いと判断する。カルシウムイオンを添加せずに測定したユーグロブリンクロット溶解時間(RegularECLT)と、カルシウムイオンを添加して測定したユーグロブリンクロット溶解時間(Ca添加ECLT)との比率(RegularECLT/Ca添加ECLT)を指標として用いる場合には、例えば、約5.0以下、約4.0以下、約3.0以下、または約1.5以下であるときに、被検者の流早産の発症危険度が高いと判断する。 また、プラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度を指標として用いる場合には、プラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度が正常妊婦血漿よりも低い場合、例えば、正常妊婦の0.75倍未満、0.5倍未満、0.25倍未満、または0.1倍未満であるときに、被検者の流早産の発症危険度が高いと判断する。ELISA法に従ってPAI−1濃度を測定する場合、PAI−1濃度が例えば約4ng/ml以下、約3ng/ml以下、約2ng/ml以下、約1.6ng/ml以下、または約1ng/ml以下であるときに、被検者の流早産の発症危険度が高いと判断する。AlphaLISA法に従ってPAI−1濃度を測定する場合、PAI−1濃度が例えば約60ng/ml以下、約40ng/ml以下、約20ng/ml以下、または約10ng/ml以下であるときに、被検者の流早産の発症危険度が高いと判断する。 本発明においては、1つの測定方法によって得られたPAI−1活性または濃度に基づいて被検者の流早産の発症危険度を判定してもよく、複数の測定方法によって得られたPAI−1活性または濃度に基づいて被検者の流早産の発症危険度を判定してもよい。3.流早産の発症危険度判定用キット 本発明に係るキットは、上記2.欄で説明した流早産の発症危険度を判定する方法を実施するためのものであればよく、これに含まれる具体的な構成、材料、機器などは、特に限定されるものではない。 本発明の一態様において、本発明のキットは、α−トロンビン、および塩化カルシウム等のカルシウムイオンを含む水溶液またはカオリンを含む。さらに、本発明のキットは、酢酸緩衝液、トリス緩衝液、およびリン酸緩衝液等の緩衝液を含んでもよい。また、本発明のキットは、クエン酸ナトリウム緩衝液入りの採血管も含んでもよい。 本発明の別の態様において、本発明のキットは、抗プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に対する抗体(一次抗体)を含む。抗体は、プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1を認識できる抗体であればよく、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。また、場合によっては、抗体フラグメント、例えばFab、Fab’、F(ab’)2などを用いることもできる。さらに、本発明のキットは、固相担体、標準物質、および二次抗体を含んでもよい。また、本発明のキットは、さらに、プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1の標準、希釈液、緩衝液、ならびに、抗原抗体複合体の検出反応のための基質および停止溶液を含むこともできる。 固相担体としては、例えば、ガラス、プラスチック、天然もしくは修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、マグネタイト、または当業者によく知られているその他適した材料からなるものが挙げられ、該固相担体の形状としては、例えば、プレート、ウェル、スライド、ビーズ、粒子、チューブ、ファイバー、メンブレンの形としてもよい。また、標準物質としては、免疫学的方法において使用可能な物質であれば使用することができ、例えば、酵素、蛍光物質、発光物質等が挙げられる。抗体は、固相担体に固定されていてもよい。 本発明のキットは、さらに、二次抗体として、プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に対する抗体に結合する抗体、または一次抗体とは異なるエピトープを認識するプラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に対する抗体を含んでもよい。二次抗体は、酵素、放射性同位体、蛍光色素、アビジン、ビオチンなどで標識されていてもよい。4.プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1を含む、流早産を予防するための医薬組成物 本発明の医薬組成物は、主成分として、プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1(PAI−1)を含む。また、本発明の医薬組成物は、PAI−1と同等以上の活性を有する変異型プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1(変異型PAI−1)を主成分としてもよい。ここで、「同等の活性」とは、PAI−1が有する、プラスミノゲンアクチベータを不活化して線溶系を抑制する活性の強さが、実質的に同一であることを指し、「変異型プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1」とは、野生型PAI−1のアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、付加又は挿入を有するものを指す。上記「1個若しくは数個」とは、10以下の整数個、例えば1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度である。 また、本発明の医薬組成物は、早産および/または流産を予防するという効果を損なわない限り、薬学的に許容可能な担体、または剤型によって当該技術分野において一般的に使用される添加剤をさらに含んでもよい。添加剤として、例えば、着色剤、保存剤、風味剤、香り改善剤、呈味改善剤、甘味剤、または安定剤、その他薬学的に許容される添加剤を含有することができる。 本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て参照として本明細書に組み込まれる。また、本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2011-249523号(2011年11月15日出願)の明細書および図面に記載の内容は全て参照として本明細書に組み込まれる。 以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。1.PAI−1欠損症の患者における妊娠経過(1)1回目の妊娠 患者は、頻回の大量出血の発作を経験している47歳の女性である。最初の妊娠は26歳である。妊娠経過は順調で、胎児の成長は16週まで正常であった。妊娠16週の終わりに、少量の性器出血が観察され、患者は入院した。患者のプロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、および血漿フィブリノゲン濃度は通常の範囲内であった(それぞれ13.0秒、34.9秒、および165mg/dL)。しかし、血漿D−ダイマー濃度が少し上昇していた(2.4μg/mL、通常の範囲は <0.5μg/mL)。なお、D−ダイマーは、プラスミンによるフィブリン分解産物であり、D−ダイマーのモニタリングは、臨床病態において用いられる線溶動態解析法の一つである。新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma(FFP))を週に2回投与して、性器出血をコントロールし、妊娠を維持した。血漿D−ダイマー濃度は、妊娠18週の終わりに突然上昇し、妊娠19週に大量の性器出血が観察された。胎盤後方および周辺にエコーフリースペース(echo-free space)は観察されなかったが、胎児の心拍は停止し、患者の子宮頸部が完全に開いているのが発見された。血漿D−ダイマー濃度は減少し、性器出血は、胎児(220g)の除去から1週間後に止まった。流産した胎児は男児で、外見は正常だった。(2)2回目の妊娠 2回目の妊娠は27歳の時である。妊娠7週に妊娠を確認後すぐに、患者は本発明者らの病院に入院した。妊娠8週に少量の性器出血が観察されたが、この妊娠は11週まで順調だった。妊娠11週の終わりから、持続的ではあるが少量の性器出血が観察されたため、週に2〜3回のFFP投与を開始した。性器出血は妊娠20週で止まったが、FFPの投与を継続して妊娠を安定化した。妊娠28週で血漿D−ダイマー濃度が少し上昇したので、FFPの投与頻度を週に2〜3回から一日おきに変更した。しかし、血漿D−ダイマー濃度は上昇を続け、妊娠32週で128μg/mLに達し、超音波検査により、胎盤剥離を伴うコントロールできない子宮収縮が起きていると診断した。よって、緊急帝王切開を行い、患者は1736gの女児を出産した。手術前後の失血量は4500mLであり、これは42U FFPの投与によってコントロールした。(3)3回目の妊娠 3回目の妊娠は29歳の時である。以前の妊娠において成功した管理に基づいて、患者は妊娠8週で入院し、継続的なFFPの投与を開始した。FFPは妊娠16週まで週2回投与し、妊娠19週まで徐々に増やした。妊娠20週の後、FFPの投与を毎日行った。今回の妊娠は、妊娠24週まで安定していたが、血漿D−ダイマー濃度は妊娠25週から継続的に上昇し、妊娠27週で57.9μg/mLに達し、胎盤剥離を伴うコントロールできない子宮収縮が起きていると診断した。そこで再度緊急帝王切開を行い、患者は978gの女児を出産した。手術前後の失血量は1037mLだった。これら二人の娘は健康で、症状はなかった。(4)小括 これらの結果から、PAI−1はヒトの妊娠維持のために重要な役割を果たすことが示された。したがって、PAI−1が低濃度であることは、ヒトにおける自然流産および/または早産のリスクファクターとなり得ると考えられる。2.PAI活性の測定A.ユーグロブリンクロット溶解時間の測定方法(1)PAI活性の測定法 クエン酸採血した患者血液を3000gで10分遠心して上清を採取し、これを血漿サンプルとした。この血漿を10mM、pH4.5の酢酸緩衝液で20倍に希釈し、4℃で1時間静置した。その後4℃、1500gで10分遠心し、沈渣を採取し、その沈渣を0.1M、pH7.4のトリス緩衝液で混和した。これをユーグロブリン分画とする。 α−トロンビン12.5U/ml(最終濃度)にユーグロブリン分画のサンプル150μlを添加した。その沈渣の溶解時間を測定した(RegularECLT)。α−トロンビン2.5.U/ml(最終濃度)、カルシウムイオン10mM(最終濃度)の溶液にユーグロブリン分画のサンプル150μlを添加した。そしてその沈渣の溶解時間を測定した(Ca添加ECLT)。なお、カルシウムイオンの代替としてカオリン(カルシウムと同じ濃度)を添加しても可能である。(2)PAI活性(ユーグロブリン溶解時間) 絨毛膜下血腫により切迫早産または切迫流産をした患者および正常妊婦について、上記(1)の方法に従ってPAI活性(Ca添加ECLT)を測定した。結果を表1にまとめる。上記患者血液は、いずれも妊娠初期(〜15週)の患者から採血したものである。 さらに、絨毛膜下血腫の患者7名(うち、早産歴および/または流産歴のある患者は4名)、正常妊婦5名について、上記(1)と同じ方法に従ってPAI−1活性(ユーグロブリン溶解時間)を測定した結果を表2にまとめる。表2の測定値は、それぞれユーグロブリン溶解時間(RegularECLT)と、カルシウムを添加した場合のユーグロブリン溶解時間(Ca添加ECLT)、ECLT比率(RegularECLT/Ca添加ECLT)である。患者血液は、いずれも妊娠初期(〜15週)の患者から採血したものである。(3)測定結果について 以上の結果より、絨毛膜下血腫による流産・早産の既往または検体採取時に絨毛膜下血腫と診断されている症例(症例1〜7)では、正常妊娠経過の症例と比較してユーグロブリン溶解時間が短い傾向がうかがわれた。 妊婦は一般に、凝固系が亢進し線溶系が抑制されており、これが妊娠維持と分娩時の止血に寄与していることがよく知られている。また、線溶系の抑制傾向は妊娠週の増加にともない強くなることも知られており、正常妊娠症例のRegularECLTの値が非常に大きいこと(>1200を示すこと)および妊娠週の増加に伴いCa添加ECLTが大きくなることは、この線溶抑制を反映したものと考えられる。 対して症例1〜7ではユーグロブリン溶解時間は比較的短く、線溶抑制効果が正常妊娠症例ほどみられていない。Ca添加ECLTが短いことからも、PAI−1の活性が低く線溶抑制が働いていないことが推測される。 これより、ユーグロブリン溶解時間が500分以下の患者は、PAI−1活性が低く、絨毛膜下血腫を発症している可能性が高く、早産・流産の発症危険度があると考えられる。また、ユーグロブリン溶解時間が350分以下の患者については早産・流産の発症危険度が高いと考えられる。 また、ユーグロブリン溶解時間とカルシウム添加時の短縮された溶解時間の比率(RegularECLT/Ca添加ECLT)が4.0以下の患者は、PAI−1活性が低く、絨毛膜下血腫を発症している可能性が高く、早産・流産の発症危険度があると考えられる。上記比率が1.5以下の患者については早産・流産の発症危険度が高いと考えられる。B.ELISA法(1)PAI活性の測定法 クエン酸採血した患者血液を3000gで10分遠心して上清を採取し、これを血漿サンプルとした。R&D Systems社のhuman Serpin E1/PAI−1 DuoSet Kitを使用し、下記の通りPAI−1濃度(抗原値)を測定した。 捕獲抗体(マウス由来抗ヒトSerpin E1抗体)をリン酸緩衝生理食塩水で4μg/mLに希釈し、この捕獲抗体でマイクロプレートの各ウェルをコーティングした。キット添付のリコンビナントhuman Serpin E1を1%ウシ血清アルブミン含有リン酸緩衝生理食塩水(以下、R.D.)で希釈し20ng/mL〜0.3125ng/mLに希釈し、PAI−1標準溶液とした。この標準溶液と患者血漿サンプルを捕獲抗体でコーティングしたマイクロプレートの各ウェルに100μLずつ滴下し、室温で2時間静置した後、洗浄バッファーで3回洗浄した。キット添付のビオチン化ヤギ由来抗ヒトSerpin E1抗体をR.D.で希釈し、加熱処理後正常ヤギ血清を2%添加し、400ng/mLの検出抗体溶液を調整した。この検出抗体溶液を各ウェルに100μLずつ滴下し、室温で2時間静置した後、洗浄バッファーで3回洗浄した。ストレプトアビジン(Streptavidin)つきHRP溶液を各ウェルに100μLずつ滴下し、遮光して室温で20分間静置した後、洗浄バッファーで3回洗浄した。その後、20分間プレートを発色させ、反応停止液を添加した。マイクロプレートリーダーを用い、540nmの波長でフィルターし450nmの波長で吸光度を測定した。PAI−1標準溶液の既知濃度と吸光度からPAI−1濃度標準曲線を作成し、血漿サンプルのPAI−1濃度を算出した。(2)PAI活性(PAI−1濃度) 絨毛膜下血腫により早産または流産をした患者および正常妊婦について、上記(1)の方法に従ってPAI−1濃度(抗原値)を測定した結果を表3にまとめる。上記患者血液は、いずれも妊娠初期(〜15週)の患者から採血したものである。なお、症例1はPAI−1欠損症の患者である。(3)測定結果について 以上の結果より、絨毛膜下血腫による流産・早産の既往または検体採取時に絨毛膜下血腫と診断されている症例(症例1〜7)では、正常妊娠経過の症例と比較してELISA法により測定されたPAI−1濃度が低い傾向がうかがわれた。 これより、ELISA法を用いてPAI−1濃度(抗原値)を測定する場合、PAI−1濃度が4ng/ml以下の患者は、PAI−1活性が低く、絨毛膜下血腫を発症している可能性が高く、早産・流産の発症危険度があると考えられる。また、PAI−1濃度(抗原値)が1.6ng/ml以下の患者については早産・流産の発症危険度が非常に高いと考えられる。C.AlphaLISA法(1)PAI活性の測定法 AlphaLISAは、ビオチン化抗PAI−1抗体が結合したストレプトアビジンドナービーズと抗PAI−1抗体が化学結合したAlphaLISAアクセプタービーズを用いた濃度測定法である。PAI−1が両者のビーズに結合すると、2種のビーズが近接し、励起光680nmを照射するとドナービーズ中の光感受性物質が周囲の酸素を一重項励起状態にし、近接したアクセプタービーズ内で化学反応を起こし、波長615nmの発光が検出される。発光シグナルはサンプ中のPAI−1量に比例するため、標準曲線を用いた解析によりPAI−1濃度の定量が可能となる。 クエン酸採血した患者血液を3000gで10分遠心して上清を採取し、これを血漿サンプルとした。この血漿をPerkinElmer社のAlphaLISA Human Plasminogen Activator Inhibitor−1 (PAI−1) Kitを用いて、下記通りPAI−1濃度を測定した。 キット添付のAlphaLISA human PAI−1をウシ胎児血清で希釈し1000ng/mL〜0.003ng/mLのPAI−1標準溶液を調整した。また、患者血漿サンプルをウシ胎児血清で2倍希釈した。マイクロプレートに5μLのPAI−1標準溶液と希釈済血漿サンプルを滴下した。さらに10μLのAlphaLISA Anti−PAI−1 Acceptor beads(最終濃度10μg/mL)を滴下し23℃で30分間静置した。その後、10μLのBiotynylated Antibody Anti−PAI−1(最終濃度1nM)を滴下し60分間静置した。最後に25μLのStreptavicin−coated Donor beads(最終濃度40μg/mL)を滴下し、遮光したうえ23℃で30分間静置した後、680nmの励起光を照射し検出された615nmの発光シグナルを得た。PAI−1標準溶液からの発光シグナルをもとにPAI−1濃度の標準曲線を作成し、血漿サンプルのPAI−1濃度を算出した。(2)PAI活性(PAI−1濃度) 絨毛膜下血腫により早産または流産をした患者(2名)および正常妊婦(2名)、非妊婦(2名)について、上記(1)の方法に従ってPAI−1濃度(抗原値)を測定した結果を表4にまとめる。上記患者血液は、いずれも妊娠初期(〜20週)の患者から採血したものである。なお、症例1はPAI−1欠損症の患者である。(3)測定結果について 以上の結果より、非妊婦と比較して妊婦ではPAI−1濃度が高く、絨毛膜下血腫による流産・早産例ではPAI−1濃度が明らかに低いことがわかる。これより、AlphaLISA法を用いてPAI−1濃度(抗原値)を測定する場合、PAI−1濃度が60ng/Lg以下の患者は、PAI−1活性が低く、絨毛膜下血腫を発症している可能性が高く、早産・流産の発症危険度があると考えられる。また、PAI−1濃度(抗原値)が20ng/Lg以下の患者については早産・流産の発症危険度が非常に高いと考えられる。(4)AlphaLISA法の改変 AlphaLISAでのPAI−1濃度測定法を改変し、ビオチン化抗PAI−1抗体の代わりにビオチン化uPAを用いることで、サンプル中の活性をもったPAI−1のみがドナービーズ・アクセプタービーズの2種のビーズと結合し、結果としてPAI−1活性を測定することが可能である。この方法を用いることで、PAI−1活性をより高感度に測定することが可能となり、これまで記した他の測定法同様、絨毛膜下血腫に起因する流産・早産の早期発見に有用であると考えられる。D.小括 以上より、ユーグロブリン溶解時間を測定する方法、PAI−1抗原値を測定する方法のいずれの結果においてもPAI活性と絨毛膜下血腫による流早産とには相関があり、正常妊婦よりもPAI活性が低い場合に線溶系が亢進し、絨毛膜下血腫に起因する流早産が起こりやすいことがわかる。 今回の結果では、ELISA法とAlphaLISA法との間でPAI−1濃度の測定値に誤差を認める。これは測定法の違いにより良好な感度を得られる範囲(測定可能域)が異なること、測定時の標準曲線が異なること、免疫学的手法における使用抗体が同一でないことなどの理由が考えられる。今回、ELISA法による測定で利用したR&D Systems社のhuman Serpin E1/PAI−1 DuoSet KitのPAI−1濃度の測定領域は2ng/ml以上であり、今回の症例サンプルの測定結果はいずれもその領域から外れたものとなっている。 しかしながらいずれの測定法においてもPAI−1活性と絨毛膜下血腫による流早産に相関がある点については矛盾なく示されているので、PAI活性または濃度の測定は絨毛膜下血腫による流早産の予知には有用な検査であると考えられる。 実施例においては、本発明の早産または流産の発症危険度を判定する方法として、ユーグロブリンクロット溶解時間、Caを添加しない場合とCaを添加した場合のユーグロブリンクロット溶解時間の比、ELISA法により測定したPAI−1濃度、およびAlphaLISA法により測定したPAI−1濃度に基づいてPAI−1活性を評価し、早産または流産の発症危険度を判定する方法を例示したが、妊婦のPAI−1活性または濃度を測定できる方法であればよく、上記方法に限定されるものではない。 また、早産または流産の発症危険度を判定する方法は、上記した1つの測定方法で得られたPAI−1活性に基づいて判定を行うものであっても、複数の測定方法で得られたPAI−1活性に基づいて判定するものであってもよい。 本発明を用いると、従来、超音波断層法による画像診断でしか診断できなかった絨毛膜下血腫を、血液学的に診断することが可能となるため、早期に診断することおよび診断の精度を向上させることができる。また、本発明を用いると、絨毛膜下血腫が発生した場合であっても、妊娠を維持し、流早産を防ぐことができる。 被検者より単離された血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度を測定することを特徴とする、早産または流産の発症危険度を診断する方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性を、ユーグロブリン溶解時間を指標として測定する、請求項1に記載の方法。 ユーグロブリン溶解時間が500分以下であるときに早産または流産を起こす危険性が高いと判断する、請求項2に記載の方法。 ユーグロブリン溶解時間が350分以下であるときに早産または流産を起こす危険性が高いと判断する、請求項2または3に記載の方法。 血漿にカルシウムを添加してユーグロブリン溶解時間を測定する工程、および、カルシウムを添加しない場合のユーグロブリン溶解時間とカルシウムを添加した場合のユーグロブリン溶解時間との比率を求める工程をさらに含み、当該比率に基づいて早産または流産を起こす危険性が高いと判断する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度を、プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に結合する抗体を用いた免疫学的な測定方法によって測定する、請求項1に記載の方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度をELISA法によって測定する、請求項6に記載の方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度をAlphaLISA法によって測定する、請求項6に記載の方法。 早産または流産が、絨毛膜下血腫に起因する早産または流産である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。 α−トロンビン、およびカルシウムイオンまたはカオリンを含む水溶液を含む、早産または流産の発症危険度診断用キット。 プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に結合する抗体を含む、早産または流産の発症危険度診断用キット。 早産または流産が、絨毛膜下血腫に起因する早産または流産である、請求項10または11に記載のキット。 プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1を含む、早産または流産を予防するための医薬組成物。 早産または流産が、絨毛膜下血腫に起因する早産または流産である、請求項13に記載の医薬組成物。 本発明は、血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度を測定することを特徴とする、早産または流産の発症危険度を診断する方法に関する。詳しくは、プラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度が正常妊婦のものよりも低いときに早産または流産を起こす危険性が高いと判断することを特徴とする、早産または流産の発症危険度を診断する方法、早産または流産の発症危険度診断用キット、およびプラスミノゲンアクチベータインヒビター−1を含む早産または流産を予防するための医薬組成物に関する。20130228A16333全文3 被検者より単離された血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度を測定する手順と、前記活性または前記濃度が所定値よりも低い場合に早産または流産を起こす危険性が高いと判断する手順と、を含む、早産または流産の発症危険度を診断する方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性を、ユーグロブリン溶解時間を指標として測定する、請求項1に記載の方法。 ユーグロブリン溶解時間が500分以下であるときに早産または流産を起こす危険性が高いと判断する、請求項2に記載の方法。 ユーグロブリン溶解時間が350分以下であるときに早産または流産を起こす危険性が高いと判断する、請求項2または3に記載の方法。 血漿にカルシウムを添加してユーグロブリン溶解時間を測定する工程、および、カルシウムを添加しない場合のユーグロブリン溶解時間とカルシウムを添加した場合のユーグロブリン溶解時間との比率を求める工程をさらに含み、当該比率に基づいて早産または流産を起こす危険性が高いと判断する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度を、プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に結合する抗体を用いた免疫学的な測定方法によって測定する、請求項1に記載の方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度をELISA法によって測定する、請求項6に記載の方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度をAlphaLISA法によって測定する、請求項6に記載の方法。 早産または流産が、絨毛膜下血腫に起因する早産または流産である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。 α−トロンビン、およびカルシウムイオンまたはカオリンを含む水溶液を含む、早産または流産の発症危険度診断用キット。 プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に結合する抗体を含む、早産または流産の発症危険度診断用キット。 早産または流産が、絨毛膜下血腫に起因する早産または流産である、請求項10または11に記載のキット。 プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1を含む、早産または流産を予防するための医薬組成物。 早産または流産が、絨毛膜下血腫に起因する早産または流産である、請求項13に記載の医薬組成物。 20140520A16333全文3 被検者より単離された血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度を測定する手順と、前記活性または前記濃度が所定値よりも低い場合に早産または流産を起こす危険性が高いと決定する手順と、を含む、早産または流産の発症危険度を判定する方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性を、ユーグロブリン溶解時間を指標として測定する、請求項1に記載の方法。 ユーグロブリン溶解時間が500分以下であるときに早産または流産を起こす危険性が高いと決定する、請求項2に記載の方法。 ユーグロブリン溶解時間が350分以下であるときに早産または流産を起こす危険性が高いと決定する、請求項2または3に記載の方法。 血漿にカルシウムを添加してユーグロブリン溶解時間を測定する工程、および、カルシウムを添加しない場合のユーグロブリン溶解時間とカルシウムを添加した場合のユーグロブリン溶解時間との比率を求める工程をさらに含み、当該比率に基づいて早産または流産を起こす危険性が高いと決定する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度を、プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に結合する抗体を用いた免疫学的な測定方法によって測定する、請求項1に記載の方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度をELISA法によって測定する、請求項6に記載の方法。 血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター濃度をAlphaLISA法によって測定する、請求項6に記載の方法。 早産または流産が、絨毛膜下血腫または胎盤剥離に起因する早産または流産である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。 α−トロンビン、およびカルシウムイオンまたはカオリンを含む水溶液を含む、早産または流産の発症危険度診断用キット。 プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1に結合する抗体を含む、早産または流産の発症危険度診断用キット。 早産または流産が、絨毛膜下血腫または胎盤剥離に起因する早産または流産である、請求項10または11に記載のキット。 プラスミノゲンアクチベータインヒビター−1を含む、早産または流産を予防するための医薬組成物。 早産または流産が、絨毛膜下血腫または胎盤剥離に起因する早産または流産である、請求項13に記載の医薬組成物。 抗PAI−1抗体を結合したドナービーズおよびuPAを結合したアクセプタービーズ、またはuPAを結合したドナービーズおよび抗PAI−1抗体を結合したアクセプタービーズを用いてAlphaLISA法を実施する、請求項8に記載の方法。 uPAを結合したドナービーズおよび抗PAI−1抗体を結合したアクセプタービーズを用いてAlphaLISA法を実施する、請求項15に記載の方法。 被検者より単離された血漿中のプラスミノゲンアクチベータインヒビター活性または濃度を測定する方法であって、抗PAI−1抗体を結合したドナービーズおよびuPAを結合したアクセプタービーズ、またはuPAを結合したドナービーズおよび抗PAI−1抗体を結合したアクセプタービーズを用いてAlphaLISA法を実施する、該方法。 uPAを結合したドナービーズおよび抗PAI−1抗体を結合したアクセプタービーズを用いてAlphaLISA法を実施する、請求項17に記載の方法。A1633000643(3)測定結果について 以上の結果より、非妊婦と比較して妊婦ではPAI−1濃度が高く、絨毛膜下血腫による流産・早産例ではPAI−1濃度が明らかに低いことがわかる。これより、AlphaLISA法を用いてPAI−1濃度(抗原値)を測定する場合、PAI−1濃度が60ng/mL以下の患者は、PAI−1活性が低く、絨毛膜下血腫を発症している可能性が高く、早産・流産の発症危険度があると考えられる。また、PAI−1濃度(抗原値)が20ng/mL以下の患者については早産・流産の発症危険度が非常に高いと考えられる。