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タイトル:再公表特許(A1)_熱中症に対する発症感受性や発症耐性の判定方法
出願番号:2012004209
年次:2015
IPC分類:C12Q 1/68,C12N 15/09,A61K 31/195,A61P 3/00,A61K 31/205,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

木戸 博 JP WO2013005403 20130110 JP2012004209 20120628 熱中症に対する発症感受性や発症耐性の判定方法 応用酵素医学研究所株式会社 511161373 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 東海 裕作 100096482 松田 一弘 100188352 堀内 真 100131093 山内 正子 100150902 藤本 昌平 100177714 園元 修一 100141391 木戸 博 JP 2011147227 20110701 C12Q 1/68 20060101AFI20150127BHJP C12N 15/09 20060101ALI20150127BHJP A61K 31/195 20060101ALI20150127BHJP A61P 3/00 20060101ALI20150127BHJP A61K 31/205 20060101ALI20150127BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150127BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 AA61K31/195A61P3/00A61K31/205A61P43/00 121 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA 再公表特許(A1) 20150223 2013522452 25 4B024 4B063 4C206 4B024AA11 4B024CA04 4B024HA12 4B063QA12 4B063QA13 4B063QA18 4B063QQ02 4B063QQ03 4B063QQ26 4B063QQ44 4B063QR06 4B063QR24 4B063QR32 4B063QR40 4B063QR55 4B063QR62 4B063QR72 4B063QS25 4B063QS34 4C206AA01 4C206AA02 4C206FA59 4C206GA07 4C206GA28 4C206MA01 4C206MA02 4C206MA04 4C206NA05 4C206NA14 4C206ZC01 4C206ZC75 本発明は、熱中症の起こりやすい体質としての遺伝子多型の検査に関する。さらには、患者血液中のATP量を測定することで、熱中症が起きやすい体質であるか、どの程度の重篤状態であるかを検査する方法に関する。さらには、遺伝子多型の検査を背景とした熱中症の治療に関する薬剤に関する。すなわち、熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法や、熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性検出キットや、熱中症の治療・予防薬に関する。 熱中症は、外気の熱さによって引き起こされる症状の総称であり、高温高湿下の環境で発汗による脱水と末梢血管拡張によって体内血液の循環不全が生じた結果起きる全身性の疾患で、重篤な場合は多臓器不全となって死亡する。通常一定に保たれる体温の調節機能に障害が引き起こされ、体温が上昇し時には死に至ることもある極めて危険な病態である。特に近年の気候の熱帯化、都市部のヒートアイランド現象などにより、スポーツ中や屋外活動中だけでなく室内の日常生活中においても熱中症となる例が増加しており社会問題ともなっており、対策が急がれている。熱中症の治療は主に、脱水を解消するための輸液や食塩水、スポーツドリンクなどの経口投与、体温を下げるための冷温療法などの対症療法である。例えば、水分を補給し、熱中症等の脱水症状を予防するスポーツ飲料(特許文献1)や、体温上昇又は運動後の体温上昇抑制、又は予防に効果を有する清涼用組成物(特許文献2)や、深部体温を低下させるための深部体温低下剤(特許文献3)や、基礎代謝の抑制又は体温の低下のための基礎代謝抑制剤(特許文献4)などが開示されているが、いずれも対症療法であり、原因療法はないのが現状である。また、熱中症の予防法は外気の温度や湿度、体温に注意を払い、水分と塩分の摂取を心がけるなどであるが、熱中症の罹患は個人の体力、体質、体調によるところも多いため明確な基準も設定されにくいという問題もある。したがって、体質的な熱中症へのかかりやすさや、熱中症になった場合の回復の容易さ、すなわち熱中症への耐性を調べることができれば、効果的に熱中症の予防及び治療を行うことができる。 Carnitine palmitoyl transferase II(CPTII)はカルニチン回路で働く酵素の一つであり、ミトコンドリア内のマトリックスに入ったアシルカルニチンをカルニチンとアシル−CoAに分離する。ついでアシル−CoAはβ−酸化によりアセチル−CoAに変換され、オキサロ酢酸と結合してTCA回路(クエン酸回路)に取り込まれ、ATPが生成される。本発明者らは、CPTIIを含む、ミトコンドリアでのエネルギー代謝に関与する各種トランスポーター、カルニチン回路、長鎖β酸化回路、中鎖・短鎖β酸化回路、電子伝達、ケトン体合成およびATP産生のいずれかに関与する少なくとも1種、好ましくは複数の酵素の酵素活性が37℃を100%としたとき、39℃以上では健常者よりも有意に低下するか否かを調べ、高熱時に致死的又は後遺症の残る中枢神経症状、あるいは多臓器不全などの疾患を発症する可能性の高さを診断する方法を開示している(特許文献5)。前記疾患としては、インフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群、RSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、ライノウイルス感染症、風疹、日本脳炎、マラリア感染症、乳幼児突然死症候群、川崎病が挙げられるが、熱中症との関連明らかではない。 一般名ベザフィブラート(Bezafibrate、2- (4- {2- [ (4 - Chlorobenzoyl) amino] ethyl} phenoxy) -2- methylpropanoic acid)は、血清トリグリセリド低下作用とともに血清コレステロール改善作用を有するフィブラート系の高脂血症治療剤である。また、ベザフィブラートはPPAR(pan-peroxisome proliferator activated receptor)のアゴニストであり、さらにCPTIIのmRNAレベルを上昇させ、CPTIIの発現を亢進することが知られている(非特許文献1及び2)。特開2003−169642号公報特開2011−32239号公報特開2009−235050号公報特開2005−247743号公報再表2006−054722号公報Zolkipli Z. et al., PLoS One. 1; 6 (4): e17534 1-10 (2011)Djouadi F. et al., J Clin Endocrinol Metab. Mar; 90 (3): 1791-1797 (2005) 本発明の課題は、熱中症に対する発症感受性及び/又は発症耐性の判定方法や、熱中症に対する発症感受性及び/又は発症耐性検出キットや、熱中症の治療・予防薬を提供することにある。 熱中症は、高温高湿下の環境で発汗による脱水と末梢血管拡張によって体内血液の循環不全が生じた結果起きる全身性の疾患で、重篤な場合は多臓器不全となって死亡する。近年熱中症で死亡する患者が多発する傾向にあり、酵素と疾患との関係を長年解析している本発明者の研究機関に、疾患発症の背景としての体質に関する遺伝子解析の依頼が多く寄せられている。本発明者が行った熱中症に関する遺伝子多型解析の結果、熱中症患者の約半数にミトコンドリアの長鎖脂肪酸代謝酵素Carnitine palmitoyltransferase II(CPTII)の遺伝子多型が高頻度に集中していることを見いだし、熱中症の原因遺伝子の一つであることが解明された。 見いだされたCPTIIの遺伝子多型は、新規の遺伝子多型を含めていずれもCPTIIの先天性酵素欠損症として報告されている遺伝子変異ではなく、これまで疾患との関係が明らかでなかった遺伝子多型であり、本発明者がこれまでに明らかにしてきた熱不安定性遺伝子多型のうちの一つであった。CPTIIは、CPTIと共にミトコンドリアの長鎖脂肪酸代謝に由来するATP産生を調節している最も重要な酵素で、遺伝子変異としてはCPTIIの遺伝子欠損が最も頻度が高い(Ref. 1, 2, 3)。熱不安定性遺伝子多型の場合、体温上昇に伴ってCPTIIが熱失活して後天性遺伝子欠損状態になってしまうため、突如としてATP産生量が低下して全身の臓器、細胞の機能不全が生じることが原因と考えられた。中でもATPの消費量の高い臓器、細胞は脳、心臓、血管内皮細胞で、これらの臓器と細胞が機能不全に陥り易いことが予想される。特に、細胞のエネルギー源の約70%を脂肪に依存している血管内皮細胞 (Ref. 4) では、CPTIIの熱不安定性遺伝子多型は発症に大きな影響を与えることが推測される。脳の血管内皮細胞はミトコンドリア含量が高くATP産生の高い細胞 (Ref. 5) で、強く影響を受けることが推定される。 以下にこれまでに発明者等が明らかにした熱不安定性CPTII遺伝子多型のアミノ酸変異を示す。1) c.1055T>G (p.Phe352Cys) (Ref. 6,7,8)2) c.1102G>A (p.Val368Ile) (Ref. 6,7,8)3) c.1511C>T (p.Pro504Leu) (Ref. 7)4) c.1813G>C (p.Val605Leu) (Ref. 7)5) c.647A>G (p.Glu216Arg) (Ref.9)Ref. 1: McGarry JD, Foster DW. 1980. Systemic carnitine deficiency. N Engl J Med 303:1413-1415.Ref. 2: Bieber LL. 1988. Carnitine. Annu Rev Biochem 57: 261-283.Ref. 3: Bonnefont JP, Djouadi F, Prip-Buus C, Gobin S, Munnich A, Bastin J. 2004. Carnitine palmitoyltransferase 1 and 2: biochemical, molecular and medical aspects. Mol Aspects Med 25: 495-520. Ref. 4: Z. Dagher, N. Ruderman, K. Tornheim, Y. Ido. 2001. Acute regulation of fatty acid oxidation and AMP-activated protein kinase in human umbilical vein endothelial cells. Circ. Res. 88:1276-1282.Ref. 5: W.H. Oldendorf, M.E.Cornford, W.J. Brown. 1977. The large apparent work capability of the blood-brain barrier: a study of the mitochondrial content of capillary endothelial cells in brain and other tissues of the rat. Ann. Neurol. 1 :409-417.Ref. 6: Y. Chen, H. Mizuguchi, D. Yao, M. Ide, Y. Kuroda, Y. Shigematsu, S. Yamaguchi, M. Yamaguchi, M. Kinoshita, H. Kido. 2005. Thermolabile phenotype of carnitine palmitoyltransferase II variations as a predisposing factor for influenza-associated encephalopathy. FEBS Lett. 579:2040-2044.Ref. 7: D. Yao, H. Mizuguchi, M. Yamaguchi, H. Yamada, J. Chida, K. Shikata, H. Kido. 2008. Thermal instability of compound variants of carnitine palmitoyltransferase II and impaired mitochondrial fuel utilization in influenza-associated encephalopathy. Hum. Mutat. 29:718-727.Ref. 8: M. Kubota, J. Chida, H. Hoshino, H. Ozawa, A. Koide, H. Kashii, A. Koyama, Y. Mizuno, A. Hoshino, M. Yamaguchi, D. Yao, M. Yao, H. Kido. 2011. Thermolabile CPT II variants and low blood ATP levels are closely related to severity of acute encephalopathy in Japanese children. Brain Dev. PMID: 21277129Ref.9: D. Yao, M. Yao, M. Yamaguchi, J. Chida, H. Kido. 2011. Characterization of compound missense mutation and deletion of carnitine palmitoyltransferase II in a patient with adenovirus-associated encephalopathy. J. Med. Invest. In press. 以上の通り、熱不安定性遺伝子多型を持つ患者は日常生活では何も症状を持たないで生活できているが、インフルエンザ脳症への罹患など体温上昇と共に発症していることから、発明者の見いだした熱不安定性遺伝子多型は潜在的に高熱を伴う疾患との関連を示唆するものの、外因的な、主に高温及び湿度に起因するとされてきた熱中症との関連はまったく明らかではなかった。さらに、熱中症とATPなどのエネルギー枯渇との関連も明らかではなく、熱不安定性遺伝子多型の中でもCPTII、特にCPTII単独の一塩基多型が熱中症の発症や病態と関連することは、まったく予想できないものであった。 本発明者らは、CPTIIにおける一塩基多型が熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性に関与することを見出し、熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法や、熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性検出キットや、熱中症の治療及び/又は予防薬を提供することにより本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は[1](a)被検者のCarnitine palmitoyltransferase II (CPTII) 遺伝子における1種又は2種以上の一塩基多型の有無を検出する工程;(b)工程(a)において一塩基多型があった場合、熱中症に対する発症感受性が高い、又は発症耐性が低いと判定する工程;の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とする熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法や、[2]一塩基多型が、i)CPTII遺伝子における塩基番号1102番目がG/A又はA/A;ii)CPTII遺伝子における塩基番号1055番目がT/G又はG/G;iii)CPTII遺伝子における塩基番号1511番目がC/T又はT/T;iv)CPTII遺伝子における塩基番号1813番目がG/C又はC/C;v)CPTII遺伝子における塩基番号1939番目がA/G又はG/G;のi)〜v)から選ばれる1種又は2種以上の一塩基多型である前記[1]記載の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法や、[3]さらに(c)血中ATP濃度を測定する工程;を備えたことを特徴とする、前記[1]又は[2]記載の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法や、[4]一塩基多型の有無の検出が、PCR法を用いたシークエンシングによる方法で行われる前記[1]〜[3]のいずれか記載の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法に関する。 また、本発明は[5]CPTII遺伝子における一塩基多型を検出するためのプライマー又はプローブを含むことを特徴とする熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性検出キットや、[6]CPTII遺伝子における一塩基多型を検出するためのプライマーが、配列番号3〜24から選ばれる前記[5]記載の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性検出キットや、[7]フィブラート系薬物を有効成分とすることを特徴とする熱中症の治療・予防薬や、[8]カルニチン(carnitin)と合わせて使用することを特徴とする、前記[7]記載の熱中症の治療・予防薬に関する。 本発明によれば、熱中症に対する発症感受性や発症耐性の判定することができ、また熱中症の治療・予防薬を提供することができる。CPTII一塩基多型の解析結果を示す図である。野生型、FI−FI(F352F及びV368I)、CI−FI(F352C及びV368I/F352F及びV368I)のCPTII遺伝子型の繊維芽細胞におけるCPTIIタンパク質発現量を示す。野生型、FI−FI、CI−FIのCPTII遺伝子型の繊維芽細胞に、熱(41℃)及びベザフィブラートを与えた場合の、CPTII、PPARδ、及びCPTIAのmRNA発現量、並びにCPTIIタンパク質発現量を示す。野生型、FI−FI、CI−FIのCPTII遺伝子型の繊維芽細胞に、熱(41℃)、ベザフィブラート又はカルニチンを与えた場合のCPTII酵素活性、FAOレベル、ATPレベルを示す。 本発明における熱中症は、熱射病、日射病、高温障害とも呼ばれる、高温や多湿などの環境が原因となって起こるとされる症状を指す。体温調節機能の失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの連続的な病態であり、熱射病、熱疲労、熱痙攣、熱失神、熱障害による多臓器不全などの症状も含み、具体的にはめまい、疲労感、虚脱感、頭重、嘔吐、意識の消失、脱水症状、過呼吸、ショック症状、体温の上昇、発汗の増減、皮膚の温度変化や乾燥、意識障害、不随意性有痛性痙攣と硬直、脳障害、多臓器不全等による死亡を挙げることができる。 本発明における「熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性」としては、熱中症に対する発症感受性及び/又は発症耐性であり、熱中症へのかかりやすさ、及び/又は、熱中症にかかった場合の回復の容易さを指す。「熱中症に耐性がある」とは、温度や湿度が高い条件の環境の中に置かれても熱中症を発症しにくいことをいい、又は熱中症を発症してしまった場合にも、回復しやすいことをいう。したがって、熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性が小さいと判定される個体は、特に高温や多湿の環境において熱中症への備えが必要であるといえるし、熱中症にかかった場合も、熱中症が重篤化しないか、特に注意して経過を見守る必要があるといえる。したがって、本発明の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法は、熱中症罹患前後、罹患の恐れがある場合などにも好適に利用することができる。特に、体調変化をうまく他者に伝えられない乳幼児や、体調変化の感知が鈍くなった高齢者や、基礎疾患を有し基礎体力が少ないと予測される者が、本発明の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性を調べておくことは特に有用である。また、かかる熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性が弱い者が熱中症にかかっている場合には、特に注意して経過を観察したり、後遺症、重篤化に備えるなどの方策を講じることができる。 本発明の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法は、(a)被検者のCarnitine palmitoyl transferase II (CPTII) 遺伝子における1種又は2種以上の一塩基多型の有無を検出する工程;及び(b)工程(a)において一塩基多型があった場合、熱中症に対する発症感受性が高い、又は発症耐性が低いと判定する工程;を備えた熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法であればよく、実施の一形態として、上記工程(a)及び(b)を備えた熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定のためのデータを収集する方法や、上記工程(a)及び(b)を備えた熱中症の治療方針決定のためのデータを収集する方法を例示することもできる。他に公知の血液検査等の検査結果のデータも合わせて、熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法とすることも、熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定のデータとすることもできる。一塩基多型の有無の検出においては、DNAを含む被検者の試料(例えば血液、毛髪、爪、口腔粘膜等)を試料として用いることができる。 CPTII遺伝子の塩基配列やアミノ酸配列情報は、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)、HGMD(http://www.hgmd.cf.ac.uk/hgmd0.html)などのデータベースを用いて適宜入手することができ、例えばアクセッション番号NM_000098、バージョンNM_000098.2、GI:169790951のCPTII塩基配列や、アクセッション番号NP_000089、バージョンNP_000089.1、GI:4503023のCPTIIアミノ酸配列を挙げることができる。配列番号1に前記データに基づくCPTII遺伝子のコード領域の塩基配列を、配列番号2にCPTIIタンパク質のアミノ酸配列を示す。 集団内で1%以上の頻度で見られる、一塩基変異は一塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)と呼ばれ、ゲノム塩基配列中の一塩基が変異した多様性をいう。本発明においてCPTIIの一塩基多型(SNP)としては、CPTII遺伝子における一塩基置換変異であれば特に制限されず、挿入、置換、欠失であってもよい。CPTII遺伝子コード領域における一塩基多型は、タンパク質のアミノ酸配列が変化するミスセンス変異であり、タンパク質の安定性が損なわれる一塩基多型が好ましく、CPTII遺伝子の5’上流や3’下流の領域における一塩基多型としては、CPTII遺伝子の発現が減少する一塩基多型が好ましい。工程(a)において検出するかかる一塩基多型は、1種類でもよいが、好ましくは複数の一塩基多型を検出する例を挙げることができる。本発明の熱中症に対する発症感受性又は発症耐性の判定方法においては、i)CPTII遺伝子における塩基番号1102番目がG/A又はA/Aii)CPTII遺伝子における塩基番号1055番目がT/G又はG/Giii)CPTII遺伝子における塩基番号1511番目がC/T又はT/Tiv)CPTII遺伝子における塩基番号1813番目がG/C又はC/Cv)CPTII遺伝子における塩基番号1939番目がA/G又はG/Gのi)〜v)から選ばれる1種又は2種以上の一塩基多型を検出することが好ましい。上記一塩基多型により、i)F352C、ii)V358I、iii)F504L、iv)V605L、v)M647Vのタンパク質のアミノ酸変異が起こる。ここで、塩基配列におけるA,T,C,Gはそれぞれ塩基の1文字表記でありアデニン、チミン、シトシン、グリシンを表し、タンパク質アミノ酸配列におけるF,C,V,I,L,Mはアミノ酸の一文字表記でありフェニルアラニン、システイン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンを表す。また一塩基置換のジェノタイプとして例えば1055T/Gは、ゲノムDNA上のCPTII遺伝子における塩基番号1055番目の塩基TがGであることを表し、1055T>Gとして表すこともある。なお、一塩基多型の記載において、例えば「1055番目がT/G又はG/G」の表記は、塩基TがGであることにおいて、片方が変異したヘテロ型でも、両方が変異したホモ型でも発症する、つまりドミナントネガティブであることを意味する。また、この変異によりアミノ酸番号352番目のアミノ酸がFからCに変異したことをF352Cとして表す。また352番目のアミノ酸Fを、352Fと表すこともある。上記変異の中でも、i)F352C及び/又はii)V368Iを検出することを好適に例示することができる。 本発明の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法は、さらに(c)血中ATP濃度を測定する工程を備えることもできる。かかる血中ATP(アデノシン三リン酸)の測定方法は特に制限されず、各種血液成分分析機器を用いて測定することも、公知のいかなるATP測定方法を用いることもできる。例えば国際公開公報WO2009/096429のフェノールを用いた方法を使用することにより効率よくATPを試料から抽出しATP量を解析することができる。試料血液の由来は特に制限されず、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、トリ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスターなどを挙げることができ、好ましくはヒトである。また血液の採取部位や種類は制限されず、末梢血、組織から採取した血液、臍帯血、静脈血、動脈血いずれでもよいが、入手の容易さから末梢血が好ましい。かかる血液試料は、ゲノムDNAの解析やATPの測定を阻害しない限りは防腐剤や防カビ剤、EDTAやヘパリンなど抗血液凝固剤などの添加物を含んでもよく、また血液成分の一部を除去したり、成分の一部のみを取り出して使用してもよい。 本発明における一塩基多型の有無の検出方法は特に制限されず、ある一定のゲノムDNAをPCR反応で増幅し、サンガー法により塩基配列を調べて一塩基多型を同定することもできるが、特定の一塩基置換を検出するプローブを用いて一塩基置換を検出することもでき、ダイレクトシーケンシング法、一塩基プライマー伸長法、PCR−単鎖高次構造多型(SCPS)分析、PCR−制限酵素断片長多型(RFLP)分析、インベーダー法、および質量分析計を用いて実施することができる。かかる一塩基多型の検出のテンプレートは、DNAに限らず、RNAを材料にした遺伝子多型解析も可能であり、定量的リアルタイムPCR検出法による遺伝子発現定量法も実施することができる。また、アミノ酸置換を伴う遺伝子多型に関しては、ラジオイムノ抗体アッセイ、酵素免疫測定法(ELISA)なども可能である。以上の方法は、効率的に実施するうえでは、ビーズ、チップ、膜等の固相支持体に固定化し、多型を測定する方法を挙げることができる。 本発明の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性検出キットとしては、CPTII遺伝子における一塩基多型を検出するためのプライマー又はプローブを含んでいれば特に制限されず、例えばプライマーとしては配列番号3〜24のプライマーを挙げることができる。さらに、これらのプライマーは適宜標識されていてもよく、標識物質としては蛍光標識タンパク質、放射性同位体、ペプチド、酵素、タンパク質、ステロイドなどを挙げることができる。 本発明の熱中症の治療・予防薬としては、フィブラート系薬物を有効成分とするものであればよく、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。本発明の治療・予防薬は、経口的又は非経口的に投与することができ、例えば粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することができる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできる。 フィブラート系薬物としては、例えば、ベザフィブラート、ベクロブラート、ビニフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、クロフィブラートアルミニウム、クロフィブリン酸、エトフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、ニコフィブラート、ピリフィブラート、ロニフィブラート、シムフィブラート、テオフィブラート、AHL−157等が挙げられ、ベザフィブラートが好ましい。ベザフィブラートは2-(4-{2-[(4-Chlorobenzoyl)amino]ethyl}phenoxy)-2-methylpropanoic acidの一般名であり、例えば特開平10−204047の方法で合成することも、市販品を購入して入手することもできる。 経口的に投与する製剤の場合、薬理学的に許容される担体としては、慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、例えば錠剤には乳糖、デンプン等の賦形剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤等を配合することができ、懸濁液製剤には生理的食塩水アルコール等の溶剤、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の溶解補助剤、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、レシチン等の懸濁化剤、グリセリン、D−マンニトール等の等張化剤、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩等の緩衝剤などを配合することができる。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を配合することもできる。非経口的に投与する製剤の場合、蒸留水、生理的食塩水等の水溶性溶剤、サリチル酸ナトリウム等の溶解補助剤、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等の等張化剤、ヒト血清アルブミン等の安定化剤、メチルパラベン等の保存剤、ベンジルアルコール等の局麻剤を配合することができる。 また、本発明の熱中症の治療・予防薬の投与量は、疾病の種類、患者の体重や年齢、投与形態、症状等により適宜選定することができるが、例えば成人に投与する場合、有効成分としてベザフィブラートを含む本発明の熱中症の治療・予防薬の投与量は、一日あたり1〜10,000mg、好ましくは10〜2,000mg、さらに好ましくは100〜1,000mgであり、この量を1日1回〜3回投与するのが望ましい。本発明の熱中症の治療・予防薬を非経口的に投与するには、たとえば、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、骨髄腔内投与、経粘膜投与などを挙げることができるが、静脈内投与や皮下投与が好ましい。 さらに本発明の熱中症の治療・予防薬は、カルニチン(carnitine)と合わせて使用することもでき、L−カルニチン及びD−カルニチン、DL−カルニチンでもよいが、好ましくはL−カルニチンであり、本発明の熱中症の治療・予防薬と合わせて使用する方法としては、本発明の熱中症の治療・予防薬が一成分としてカルニチンを含んでもよく、また本発明の熱中症の治療・予防薬を投与する前後、又は投与している間に同じ投与方法又は別の投与方法でカルニチンを投与してもよい。(材料及び方法) 東京医科大学施設に直送され熱中症の診断で入院となった、連続した11症例を対象とした。熱中症は体温40℃以上で意識障害又はけいれんを認める症例とした。被検者又は最も近い家族から書面で同意を得て、遺伝子解析を行った。なお研究に先立ち、遺伝子解析を扱う研究として倫理委員会による審査が行われ、承認を得た(東京医科大学医学研究倫理審査799号)。被検者から採取した全血よりゲノムDNAを抽出し(Genomics Volume 68, Issue 2, 1 September 2000, Pages 144-151に記載の方法)、以下の表1を含む配列番号3〜24のプライマーを用いてエクソン1〜5をPCR反応により増幅した。かかる増幅産物をDyeDeoxi(商標)Terminator Cycle Sequencing Kit及びABI-PRISM(登録商標)3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)を用いてCPTII遺伝子の塩基配列を解析し、各患者において塩基番号1102番目(アミノ酸番号352番目)及び塩基番号1055番目(アミノ酸番号368番目)における一塩基多型の有無を同定した。結果を表2に示す。(結果) 11症例中、5例(45.5%)でCPTII遺伝子における塩基番号1055番目のチミン(T)がグリシン(G)に置換され[1055T>G]、アミノ酸番号352番目のフェニルアラニン(F)がシステイン(C)に置換された[F352C]の一塩基多型が認められた。また、この5例のうち1例は、集中治療にかかわらず、多臓器不全で死の転帰をとった(表2)。F352Cの対立遺伝子頻度(allelic frequency)は0.32であり、これは日本人で確認されている0.198(NCBI:Single nucleotide polymorphism (Accessed Apr 7, 2011, at http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/snp_ref.cgi?locusId=1376))の1.62倍に相当した。 一塩基多型[1055T>G/F352C]の変異CPTII[F352C]は、高温に伴い酵素活性が低下し、40℃を超えると野生型CPTIIの25−30%程度の活性となる。また、別の一塩基多型[1102G>A/V368I]の変異CPTII[V368I]は、[V368I]単独では41℃の熱にさらされた後の酵素活性は野生型とほぼ同じであるが、[V368I]に加えて[F352C]の多型を伴った場合、41℃の熱にさらされた後野生型CPTIIの25−30%程度の活性となることが判っている(WO2006/054722号公報参照)。 以上の結果から、熱により機能が阻害されるCPTIIの一塩基多型を持つ場合は熱中症になりやすいことが確認された。すなわち、熱により機能が阻害されるCPTIIの一塩基多型を調べることにより、熱中症のなりやすさを予測することができる。また、熱中症患者に、熱により機能が阻害されるCPTIIの一塩基多型を持つ場合が多いということは、すなわち熱中症ではエネルギー要求値が高まっており、血管内皮細胞や心筋など、特に脂肪酸をエネルギー基質として使用している組織において‘エネルギー危機’を生じた結果、多臓器不全、症状の重篤化が進行している可能性が考えられる。したがって、CPTIIの一塩基多型によるCPTII機能低下を補えば、熱中症を効果的に治療することができることが示唆される。 CPTIIの一塩基多型によるCPTII機能低下を補う方法を調べるために、以下の実験を行った。(細胞) ホモ一塩基多型[1102G>A/V368I](患者1:FI−FI allels:相同染色体共に352F、368Iである)及び、ヘテロ一塩基多型[1055T>G/F352C]かつホモ一塩基多型[1102G>A/V368I](患者2:CI−FI allels:352C及びV368I、352F及びV368Iの相同染色体の組み合わせである)の遺伝子型の繊維芽細胞は大阪大学医学部小児より提供を受けた。これらの繊維芽細胞のCPTII遺伝子型は前記と同じ方法にて調べた結果を図1に示す。遺伝型[F352F+V368V]の野生型繊維芽細胞(FV−FVallels)は、RIKEN cell bankより購入した。繊維芽細胞は10%FCS(ロシュ社製)を含むMEM(インビトロジェン社製)中で、5%CO2、37℃で培養、維持した。ベザフィブラート処理又はL−カルニチン処理を行う場合は、血清を含まないMEMで6時間プレインキュベーションし、ベザフィブラート(DMSO溶解液)は100〜800μM、カルニチン(DMSO溶解液)は50μMの濃度で行った。(CPTIIのタンパク質発現レベル) 前記野生型並びに、FI−FI及びCI−FI一塩基多型の繊維芽細胞のCPTIIのタンパク質発現レベルを調べた。繊維芽細胞のlysateを10−20%gradient gelを用いてSDS−PAGEを行い、PVDFメンブレンに転写し、0.4μg/mlの抗CPTII抗体(H-300, sc-20671, Santa Cruz社製)を用いたウェスタンブロッティングに供した。FI−FI及びCI−FIの一塩基多型の繊維芽細胞ではCPTII発現が低いことが確認された(図2)。(熱とベザフィブラートによるCPTII発現の亢進) 37℃又は41℃で6時間培養した後、RNeasy Mini Kit(キアゲン社製)を用いてtotal RNAを抽出し、リアルタイム定量PCRを行った。第一鎖cDNAテンプレートをSuper Script(登録商標) III First-Strand kit(インビトロジェン社製)で合成し、以下のプライマーとreal-time PCR using SYBR Green PCR kit(キアゲン社製)を用いて、CPTII、PPAR−δ、CPTIAのmRNA発現量を調べた。PCRサイクルは95℃の変性ステップ30秒、59℃のアニーリングステップ30秒、72℃の延長ステップ50秒を、CPTII、PPAR−δ、CPTIAでそれぞれ30,35,40サイクル行った。β−アクチンを内部標準として用い、結果を標準化した。使用したプライマーは以下の通りである(配列番号25〜32)。<real-time PCR primers>CPTII−F;5'-acttgaaccctgcaaaaagtgacac-3'CPTII−R;5'-catcagtcagctcgaagttgagttt-3'PPAR−δ−F;5'-atgtcacaacgctatccgttttg-3'PPAR−δ−R;5'-agcagcccgtccttgttgacgatag-3'CPTIA−F;5'-tgcgctactccctgaaagtgctgct-3'CPTIA−R;5'-tgatttcctcccggtccagtttgcg-3'β-actin−F;5'-tcaccattggcaatgagcggttccg-3'β-actin−R;5'-cgccgatccacacggagtacttgcg-3' その結果、熱によりCPTII、PPAR、CPTIAのmRNA発現が誘導されることが確認された。さらに、CPTIIタンパク質も熱により量が増加することが示された。しかしながら、上記2一塩基多型の変異を有するFI−FI、CI−FI繊維芽細胞においては、いずれも野生型繊維芽細胞に比べてCPTIIタンパク質量が少ないことが確認された。また、ベザフィブラートの添加によりCPTIIのmRNA及びタンパク質発現量が増加することが確認された(図3)。さらに、野生型及びFI−FI、CI−FI一塩基多型の繊維芽細胞におけるATP量を調べたところ、FI−FI、CI−FI一塩基多型の繊維芽細胞におけるATP量は、野生型繊維芽細胞よりも少なかった。すなわち、通常野生型細胞では熱にさらされることによりCPTII量が増加し、体にかかる負荷にそなえるが、熱中症関連一塩基多型細胞においてはCPTIIタンパク質が低いため、熱にさらされた場合にエネルギー不足に陥り、それが熱中症の全身的な症状を引き起こしたり、悪化させたり、回復を遅らせる原因のひとつと考えることができる。そこで、CPTII発現量を増加させるベザフィブラートや、エネルギー産生におけるCPTIIの産生物であるL−カルニチンを添加して細胞内ATP量を調べたところ、ベザフィブラートやL−カルニチンによりFI−FI、CI−FI一塩基多型の繊維芽細胞における細胞内ATP量が増加することがわかった(図4)。すなわち、熱中症により引き起こされるエネルギー不足を、ベザフィブラートやL−カルニチンにより補う、又はベザフィブラートやL−カルニチンによりエネルギー不足を補うことにより熱中症を予防することができると考えられる。 以上の結果より、熱中症の病態を物理的な刺激による外因性疾患としてのみ捉えるのではなく、熱中症をエネルギー危機が関与する疾病であると考え、さらにCPTII遺伝子多型は高温をきっかけとしてエネルギー危機が生じるリスク因子とすることができる。本知見に基づき、予防及び治療戦略を考え直すことができる。すなわち、従来の熱中症対策の脱水症状治療及び体温を下げる事後的な治療だけでなく、熱中症が予想される場合に事前に本発明の熱中症予防・治療薬を服用することにより熱中症を防ぐ、又はかかるリスク因子を有する者が熱中症に罹患した場合は慎重に経過観察を行うなどの対応をとることができる。そして、CPTII機能を補う薬剤、ベザフィブラート及びカルニチン投与は、熱中症を治療に有効であるといえる。 本発明は、熱中症に対する判定方法や、熱中症の予防・治療薬の分野で好適に利用することができる。 以下の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とする熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法。(a)被検者のCarnitine palmitoyltransferase II (CPTII) 遺伝子における1種又は2種以上の一塩基多型の有無を検出する工程;(b)工程(a)において一塩基多型があった場合、熱中症に対する発症感受性が高い、又は発症耐性が低いと判定する工程; 一塩基多型が、以下のi)〜v)から選ばれる1種又は2種以上の一塩基多型である請求項1記載の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法。i)CPTII遺伝子における塩基番号1102番目がG/A又はA/Aii)CPTII遺伝子における塩基番号1055番目がT/G又はG/Giii)CPTII遺伝子における塩基番号1511番目がC/T又はT/Tiv)CPTII遺伝子における塩基番号1813番目がG/C又はC/Cv)CPTII遺伝子における塩基番号1939番目がA/G又はG/G さらに(c)血中ATP濃度を測定する工程;を備えたことを特徴とする、請求項1又は2記載の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法。 一塩基多型の有無の検出が、PCR法を用いたシークエンシングによる方法で行われる請求項1〜3のいずれか記載の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法。 CPTII遺伝子における一塩基多型を検出するためのプライマー又はプローブを含むことを特徴とする熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性検出キット。 CPTII遺伝子における一塩基多型を検出するためのプライマーが、配列番号3〜24から選ばれる請求項5記載の熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性検出キット。 フィブラート系薬物を有効成分とすることを特徴とする熱中症の治療・予防薬。 カルニチン(carnitin)と合わせて使用することを特徴とする、請求項7記載の熱中症の治療・予防薬。 本発明は、熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法や、熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性検出キットや、熱中症の治療・予防薬を提供することを課題とした。解決手段として、(a)被検者のCarnitine palmitoyl transferase II遺伝子における1種又は2種以上の一塩基多型の有無を検出する工程;(b)工程(a)において一塩基多型があった場合、熱中症に対する発症感受性が高い、又は発症耐性が低いと判定する工程;の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とする熱中症に対する発症感受性、又は発症耐性の判定方法を行うことである。配列表


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